説明

ジチアノンに基づく殺菌混合物

【化1】


本発明は、A)式(I)の化合物およびB)少なくとも1種の式(II)のイミダゾール誘導体を相乗的に有効な量で含む殺菌混合物に関し、ここでR1およびR2は、ハロゲンおよび、ハロゲンまたはアルキルで置換されていてもよいフェニルを表すか、またはR1およびR2は架橋C=C二重結合と一緒に3,4-ジフルオロメチレンジオキシフェニル基を形成し;R3はシアノまたはハロゲンを表し、かつR4は、ジアルキルアミノ、または2個のアルキル基を有していてもよいイソオキサゾール-4-イルを表す。本発明はまた、化合物(I)および(II)の混合物を用いて有害菌を抑制するための方法ならびに、化合物(I)および(II)をこの種の混合物を製造するのに使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A) 式I:
【化1】

【0002】
の化合物と、
B) 少なくとも1種の式II:
【化2】

【0003】
(ここで、R1およびR2は、ハロゲンおよび、ハロゲンまたはC1-C4-アルキルで置換されていてもよいフェニルであるか、または
R1およびR2は架橋C=C二重結合と一緒に3,4-ジフルオロメチレンジオキシフェニル基を形成し;
R3はシアノまたはハロゲンであり、かつ
R4は、ジ-( C1-C4-アルキル)アミノ、または2個のC1-C4-アルキル基を有していてもよいイソオキサゾール-4-イルである)
のイミダゾール誘導体とを相乗的に有効な量で含む殺菌混合物に関する。
【0004】
さらに本発明は、化合物IおよびIIの混合物を用いて有害菌を抑制するための方法ならびに、化合物IおよびIIをそのような混合物を製造するために使用することに関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、施用割合を減らし、公知の化合物の活性スペクトルを改善するために、施用される活性化合物(相乗作用的混合物)の全量を減らすことと組合わせた、有害菌に対する活性が改善された混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、この目的は、最初に定義された混合物によって達成されることを見出した。さらには、本発明者らは、化合物IおよびIIを同時に、すなわち一緒にもしくは別々に施用すること、または化合物IおよびIIを連続して施用することは、個々の化合物を単独で用いて可能であるより良好な有害菌の抑制を提供することを見出した。
【0007】
式Iの化合物(一般名:ジチアノン)およびその製造方法は、GB-A 857 383に記載されている。
【0008】
式IIのイミダゾール誘導体、その製造および有害菌に対するその作用がまた、文献から公知である(EP-A 298 196, WO-A 97/06171)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式IIは特に、R1がハロゲン、特に塩素であり、R2がトリル、特にp-トリルである式IIのイミダゾール誘導体を表す。
【0010】
R4がジメチルアミノである式IIの化合物がまた好ましい。
【0011】
特に好ましくは、式IIaの化合物(一般名:シアゾファミド)である。この化合物は、EP-A 298 196から公知である。
【化3】

【0012】
更に好ましくは、R1およびR2が架橋C=C二重結合と一緒に3,4-ジフルオロメチレンジオキシフェニル基を形成する式IIの化合物である。
【0013】
その他に、R4が3,5-ジメチルイソオキサゾール-4-イルである式IIの化合物が好ましい。
【0014】
特に好ましくは、Xがハロゲンである式IIbの化合物である。
【化4】

【0015】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を示す。特に好ましくは、Xが臭素(IIb.1)または塩素(IIb.2)の式IIbの化合物である。
【0016】
混合物を製造するときには、精製活性化合物IおよびIIを使用するのが好ましく、それと、有害菌または他の有害生物、例えば昆虫、しゅ形類または線虫類に対するさらなる活性化合物、または除草もしくは成長調節活性化合物または肥料とを、必要に応じて混合してもよい。
【0017】
通常、化合物Iとイミダゾール誘導体IIとの混合物が使用される。しかしながら、ある場合には、化合物Iと2種以上のイミダゾール誘導体IIとの混合物が有利であり得る。
【0018】
化合物IおよびIIの混合物、または化合物IおよびIIの同時共同、または別々の使用は、広範囲の植物病原菌、特にAscomycetes、Deuteromycetes、OomycetesおよびBasidiomycetesの種類からの菌に対する顕著な作用を有する。
【0019】
それらは、種々の作物植物、例えば綿、野菜種(例えばキュウリ、豆およびウリ)、コーヒー、果物種、大豆、ブドウの木、観賞植物ならびに種々の種子において、多数の菌類を抑制するために特に重要である。
【0020】
それらは、以下の植物病原菌:ウリ科におけるErysiphe cichoracearumおよびSphaerotheca fuliginea、リンゴにおけるPodosphaera leucotricha、ブドウの木におけるUncinula necator、穀類およびスイートコーンにおけるUstilago種、リンゴにおけるVenturia inaequalis (scab)、イチゴ、野菜、観賞植物およびブドウの木におけるBotrytis cinerea (灰色カビ菌)、塊根植物におけるCercospora arachidicola、ジャガイモおよびトマトにおけるPhytophthora infestans、ウリ科およびホップにおけるPseudoperonospora種、ブドウの木におけるPlasmopara viticola、野菜および果物におけるAlternaria種ならびに、FusariumおよびVerticillium種を抑制するために特に適当である。
【0021】
化合物IおよびIIは、同時に、すなわち一緒にまたは別々に施用することができるかまたは連続して施用することができ、別々の施用の場合には、順序は一般に、抑制の結果へのいかなる効果もない。
【0022】
化合物IおよびIIは通常、100:1〜1:10、好ましくは10:1〜1:1、特に5:1〜1:1の重量比で施用される。
【0023】
化合物Iの施用割合は、一般に5〜2,000g/ha、好ましくは10〜1,000g/ha、特に50〜750g/haであり、化合物IIの施用割合は、一般に5〜500 g/ha、好ましくは50〜500 g/ha、特に50〜200g/haである。
【0024】
種子の処理のためには、混合物の施用割合は、一般に0.001〜1g/種子1kg、好ましくは0.01〜0.5g/種子1kg、特に0.01〜0.1g/種子1kgである。
【0025】
植物病原性の有害菌が抑制されるべきであるなら、化合物IおよびIIの別々もしくは一緒の施用、または化合物IおよびIIの混合物の施用は、播種の前もしくは後または植物の出現の前もしくは後に、種子、植物または土壌に噴霧するかまたは振りかけることによって行なわれる。
【0026】
以下は、処方物の例である:
1. 水で希釈するための生成物
A) 水溶性濃縮物(SL)
10重量部の活性化合物を水または水溶性の溶媒に溶かす。他の方法としては、湿潤剤または他の補助剤を添加する。活性化合物は、水で希釈すると溶ける。
【0027】
B) 分散性濃縮物(DC)
20重量部の活性化合物を、分散剤、例えばポリビニルピロリドンを添加したシクロヘキサノンに溶かす。水で希釈すると、分散物を与える。
【0028】
C) 乳化性濃縮物(EC)
15重量部の活性化合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムおよびひまし油エトキシレートを添加したキシレンに溶かす(各場合、5%濃度)。水で希釈すると、エマルジョンを与える。
【0029】
D) エマルジョン(EW、EO)
40重量部の活性化合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムおよびひまし油エトキシレートを添加したキシレンに溶かす(各場合、5%濃度)。この混合物を、乳化機(Ultraturrax)によって水に導入し、均質なエマルジョンにする。水で希釈すると、エマルジョンを与える。
【0030】
E) 懸濁物(SC、OD)
撹拌したボールミル中で、20重量部の活性化合物を、分散剤、湿潤剤および水または有機溶媒を加えて粉砕して、細かい活性化合物懸濁物を与える。水で希釈すると、活性化合物の安定懸濁物を与える。
【0031】
F) 水分散性顆粒および水溶性顆粒(WG、SG)
50重量部の活性化合物を、分散剤および湿潤剤を添加して、細かく粉砕し、専門の器具(例えば押出し、噴霧塔、流動床)によって、水分散性または水溶性の顆粒にする。水で希釈すると、活性化合物の安定な分散物または溶液を与える。
【0032】
G) 水分散性粉末および水溶性粉末(WP、SP)
75重量部の活性化合物を、分散剤、湿潤剤およびシリカゲルを添加して、ローター-ステーターミルで粉砕する。水で希釈すると、活性化合物の安定な分散物または溶液を与える。
【0033】
2. 希釈されずに施用される生成物
H) 散布可能な粉末(DP)
5重量部の活性化合物を細かく粉砕し、95%の細かく分けたカオリンと完全に混合する。これは、散布可能な生成物を与える。
【0034】
I) 顆粒(GR、FG、GG、MG)
0.5重量部の活性化合物を細かく粉砕し、95.5%担体と会合させる。現行の方法は、押出し、噴霧乾燥または流動床である。これは、希釈されずに施用される顆粒を与える。
【0035】
J) ULV溶液(UL)
10重量部の活性化合物を、有機溶媒、例えばキシレンに溶かす。これは、希釈されずに施用される生成物を与える。
【0036】
活性化合物は、そのままで、その処方物の形態またはそれから製造される使用形態で、例えば直接に噴霧可能な溶液、粉末、懸濁物または分散物、エマルジョン、油分散物、ペースト、散布可能な生成物、散布のための材料または顆粒の形態で、噴霧、霧状化、振りかけ、散布または注ぐことによって、使用することができる。使用形態は全く、意図される目的に依存し、それらは、各場合に、本発明の活性化合物の最良可能な分布を保証することを意図される。
【0037】
水性の使用形態は、エマルジョン濃縮物、ペーストまたは湿潤可能な粉末(噴霧可能な粉末、油分散物)から、水を添加することによって製造することができる。エマルジョン、ペーストまたは油分散物を製造するために、物質をそのまま、または油もしくは溶媒に溶かして、湿潤剤、粘着性付与剤、分散剤または乳化剤によって、水中に均質化することができる。しかしながら、活性物質、湿潤剤、粘着性付与剤、分散剤または乳化剤および、適当なら溶媒または油からなる濃縮物を製造することがまた可能であり、そのような濃縮物は、水で希釈するのに適当である。
【0038】
即時使用可能な製剤中の活性化合物濃度は、比較的広い範囲内で変化し得る。一般に0.0001〜10%、好ましくは0.01〜1%である。
【0039】
活性化合物はまた、超低容量法(ultra-low volume process)(ULV)でうまく使用することができ、95重量%を超える活性化合物を含む処方物を施用するか、または添加剤なしで活性化合物を施用することさえ可能である。
【0040】
種々のタイプの油、湿潤剤、補助剤、殺草剤、殺菌剤、他の農薬または殺菌剤を、適当なら、使用直前まででなく、活性化合物に添加することができる(タンク混合)。これらの剤は、1:10〜10:1の重量比で、本発明の組成物と混合することができる。
【実施例】
【0041】
化合物または混合物の殺菌作用は、以下の実験によって証明することができる:
活性化合物は、別々または一緒に、アセトンまたはDMSO中に0.25重量%の活性化合物を含むストック溶液として製造された。1重量%の乳化剤Uniperol(商標)EL(エトキシル化アルキルフェノールに基づく乳化および分散の作用を有する湿潤剤)がこの溶液に添加され、混合物は、所望の濃度まで水で希釈された。
【0042】
使用例1-Phytophthora infestansに起因するトマトの葉枯れ病に対する活性
「Large Fruited St. Pierre」品種のトマトの鉢植えの植物の葉が、以下に記載した活性化合物濃度を有する水性懸濁物を流れ落ちる程度に噴霧された。次の日、葉は、0.25 x 106個の胞子/mlの密度を有するPhytophthora infestansの冷水性精胞子懸濁物を用いて、感染させられた。次に植物は、18〜20℃の水蒸気飽和室に置かれた。6日後、未処理であるが感染させた対照植物における葉枯れ病は、%で視覚的に感染を決定することができる程度に展開した。
【0043】
感染した葉の領域をパーセントで決定することによって、評価が行なわれる。これらの百分率は、効力に換算される。
【0044】
効力(E)は、アボットの式(Abbot’s formula)を用いて、以下のように計算される:
E = ( 1 − α/β)・100
αは、%で表した、処理した植物の菌感染に相当し;
βは、%で表した、未処理(対照)植物の菌感染に相当する。
【0045】
0の効力は、処理した植物の感染レベルが、未処理の対照植物の感染レベルに相当することを意味し;100の効力は、処理した植物が感染しなかったことを意味する。
【0046】
活性化合物混合物の予想される効力は、コルビーの式(Colby’s formula)[R.S. Colby, Weeds 15, 20-22 (1967)]を用いて決定され、観察された効力と比較される。
【0047】
コルビーの式:
E = x + y + z − x・y・z/100
Eは、%で表した、濃度a、bおよびcで活性化合物A、BおよびCの混合物を使用したときの未処理の対照の予想される効力であり、
xは、%で表した、濃度aで活性化合物Aを使用したときの未処理の対照の効力であり;
yは、%で表した、濃度bで活性化合物Bを使用したときの未処理の対照の効力であり;
zは、%で表した、濃度cで活性化合物Cを使用したときの未処理の対照の効力である。
【表1】

【表2】

【0048】
使用例2:Plasmopara viticolaに起因するぶどうの木のperonosporaに対する活性
「Muller-Thurgau」品種の鉢植えのぶどうの木の葉が、以下に記載した活性化合物濃度を有する水性懸濁物を流れ落ちる程度に噴霧された。物質の残存率を査定することができるように、噴霧コーティングを乾燥した後に植物を、3日間温室に置いた。その後、葉は、Plasmopara viticolaの水性精胞子懸濁物を接種された。次にぶどうの木は、最初に24℃の水蒸気飽和室に48時間に置かれ、次いで20〜30℃の温度の温室に5日間置かれた。この期間後、植物は、胞子嚢柄萌出を促進するために、再び湿った部屋に16時間置かれた。次に、葉の裏面への感染の展開の程度が視覚的に決定された。
【表3】

【表4】

【0049】
試験結果は、全ての混合比について、観察された効力は、コルビーの式を用いて予想される効力より高いことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) 式I:
【化1】

の化合物と、
B) 少なくとも1種の式II:
【化2】

(ここで、R1およびR2は、ハロゲンおよび、ハロゲンまたはC1-C4-アルキルで置換されていてもよいフェニルであるか、または
R1およびR2は架橋C=C二重結合と一緒に3,4-ジフルオロメチレンジオキシフェニル基を形成し;
R3はシアノまたはハロゲンであり、かつ
R4は、ジ-( C1-C4-アルキル)アミノ、または2個のC1-C4-アルキル基を有していてもよいイソオキサゾール-4-イルである)
のイミダゾール誘導体とを相乗的に有効な量で含む殺菌混合物。
【請求項2】
イミダゾール誘導体IIとして、化合物IIa:
【化3】

を含む請求項1記載の殺菌混合物。
【請求項3】
イミダゾール誘導体IIとして、式IIb:
【化4】

(ここでXはハロゲンである)
の化合物を含む請求項1記載の殺菌混合物。
【請求項4】
化合物I対化合物IIの重量比が、100:1〜1:10である請求項1〜3のいずれか1項記載の殺菌混合物。
【請求項5】
固体または液体の担体と請求項1〜3のいずれか1項記載の混合物とを含む殺菌組成物。
【請求項6】
有害菌を抑制するための方法であって、有害菌、その生息場所、またはその菌のない状態に保たれるべき植物、種子、土壌、領域、材料または空間を、請求項1〜3のいずれか1項記載の式Iの化合物および式IIのイミダゾール誘導体ならびに、適当なら請求項4記載の活性化合物IIIで処理することを含む方法。
【請求項7】
有害菌、その生息場所、またはその菌のない状態に保たれるべき植物、種子、土壌、領域、材料または空間を、5〜2,000g/haの請求項1記載の化合物Iで処理することを含む請求項7記載の方法。
【請求項8】
有害菌、その生息場所、またはその菌のない状態に保たれるべき植物、種子、土壌、領域、材料または空間を、5〜500g/haの少なくとも1種の請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物IIで処理することを含む請求項7記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) 式I:
【化1】

の化合物と、
B) 式IIa:
【化2】


のイミダゾール誘導体とを相乗的に有効な量で含む殺菌混合物。
【請求項2】
化合物I対化合物IIaの重量比が、100:1〜1:10である請求項1記載の殺菌混合物。
【請求項3】
固体または液体の担体と請求項1記載の混合物とを含む殺菌組成物。
【請求項4】
有害菌を抑制するための方法であって、有害菌、その生息場所、またはその菌のない状態に保たれるべき植物、種子、土壌、領域、材料または空間を、請求項1記載の式Iの化合物および式IIaのイミダゾール誘導体で処理することを含む方法。
【請求項5】
有害菌、その生息場所、またはその菌のない状態に保たれるべき植物、種子、土壌、領域、材料または空間を、5〜2,000g/haの請求項1記載の化合物Iで処理することを含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
有害菌、その生息場所、またはその菌のない状態に保たれるべき植物、種子、土壌、領域、材料または空間を、5〜500g/haの請求項1記載の化合物IIaで処理することを含む請求項4記載の方法。

【公表番号】特表2006−504648(P2006−504648A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520431(P2004−520431)
【出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006889
【国際公開番号】WO2004/006676
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】