説明

ジッタ測定回路および半導体回路装置

【課題】回路規模を大きくすることなく、ジッタ量の測定精度を高くする。
【解決手段】ストローブ発生部2は、許容ジッタ値に相当するパルス幅を有するクロック信号FRを入力して、クロック信号FRを基準に、位相の異なる複数のストローブ信号Stb1〜Stbnを出力し、タイミング検出部3は、トリガ選択部5によってトリガ信号Fとして選択されたストローブ信号Stb1〜Stbnのいずれか一つに基づいて、被試験信号CKのエッジタイミングを検出し、ジッタ判別部4は検出されたエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲内か否かを判別する。トリガ選択部5は、ジッタ判別部4でエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲外と判定された場合、別のストローブ信号Stb1〜Stbnをトリガ信号Fとして選択して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験信号のジッタ値を設定された許容ジッタ値に基づいて測定するためのジッタ測定回路および半導体回路装置に関し、とくに出荷試験等の外部試験装置が使いにくい環境でジッタに関する試験を実施可能なジッタ測定回路および半導体回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路装置で生成されるクロック信号などは、ノイズをはじめとして様々な原因によってジッタが発生する。ジッタとは、クロック信号やサンプリングデータなどのように、周期的に立ち上がりと立下りを繰り返す信号において、エッジタイミングが前後する“揺らぎ”を意味する。ここでジッタが問題となるのは、たとえば、クロック信号のパルス幅に生じる揺らぎの大きさによっては、回路動作に不具合が生じるからである。こうしたジッタの大きさは、周期的なクロック信号などに加わるノイズ要因としての変調波の振幅によって表現することができる。
【0003】
従来から、このようなジッタ量の測定方法としては、オシロスコープなどを用いて被測定信号のサンプリングを行って測定していたが、オシロスコープの操作には時間を要することや、その測定結果に誤差が生じやすいことから、専用の試験装置などが開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、被測定信号のジッタを測定する場合、被測定信号を複数回出力し、それぞれの被測定信号に対してわずかずつ位相の異なる多相ストローブ信号を生成し、被測定信号を位相の異なるストローブにより走査して被測定信号のエッジを検出している。ところが、この手順を繰り返し行い、被測定信号のエッジを複数回検出することにより、被測定信号のジッタを測定するやり方では、膨大な測定時間が必要であり、しかも複数回出力した被測定信号から、一つのエッジを検出するため、被測定信号のジッタを精度よく測定できなかった。
【0005】
そこで、たとえば、特許文献2に記載されたジッタ測定装置では、それぞれクロック信号の値の変化点を、マルチストローブにより検出することで、一の変化点を検出するだけで複数回クロック信号を測定する必要がなくなって、ジッタ測定にかかる時間を大幅に短縮するようにしている。このジッタ測定装置は、一のクロック信号から一の変化点を検出するため、精度よく変化点を検出することができ、精度よく被測定信号のジッタを測定することができ、試験装置は電子デバイスの良否を精度よく判定することができるというものである。
【0006】
ところで、こうしたジッタ量を解析する測定装置では、その測定精度を決めるものは主に多相ストローブ発生回路の性能であって、この回路部分からできるだけ狭い間隔でストローブ信号を出力することが必要である。また、検出可能なジッタの振幅値が制御クロックの周波数に依存していること、そして検出対象とするジッタ振幅値(ジッタ量)は容易に変更することができない。
【0007】
こうしたことから、たとえば、特許文献3には、変化点検出回路によって生成された入力データの変化点信号と、入力データと周波数が同一の入力クロックからm相クロック生成回路によって生成されたm相クロックとの位相比較を行うジッタ検出回路の発明が開示されている。このジッタ検出回路は、位相比較回路により入力データの変化点位相情報を数値化(m値に変換)し、その数値の変動量をジッタ振幅値算出回路により求め位相比較回路と同様にm値で表す方式であるために、検出対象とするジッタ振幅値を容易に変更することを可能にするものである。
【特許文献1】特開2005−189093号公報(段落番号[0009]〜[0017]、図1〜3)
【特許文献2】特開2004−125552号公報(段落番号[0016]〜[0019]、図1)
【特許文献3】特開2000−111587号公報(段落番号[0019]〜[0025]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術において、ジッタ検出の精度を高めるためにストローブ信号の間隔を小さくするには、信号一周期当たりのストローブ信号の数を増やさなければならない。したがって、そのためには多相ストローブ信号を生成する回路だけではなく、同時にサンプリング回路や、ジッタ判別回路等の回路要素の規模も大きくしなければならない。このように、ジッタ量の測定精度を高めるためには、その回路規模が大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
また、半導体回路装置から出力されるクロック信号などを出荷試験等に際してジッタ量を測定して、それが一定の許容値に収まっているかどうかによって、製品の良否を判断することがある。こうした半導体回路装置の試験では、短時間に大量のデータを測定する必要があるため、外部の測定装置によってジッタ量を計測するのは現実的でない。そこで、半導体回路装置に従来のジッタ測定回路を入れ込むことになるが、そうした場合にはジッタ量の測定精度か、あるいは半導体回路装置の回路規模のどちらかを優先して設計する必要があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、回路規模を大きくすることなしにジッタ量の測定精度を高くすることができるジッタ測定回路および、そのようなジッタ測定回路を内蔵した半導体回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明者は、図1に示すような、被試験信号CKのジッタ値を、設定された許容ジッタ値に基づいて測定するためのジッタ測定回路を提案する。このジッタ測定回路は、許容ジッタ値に相当するパルス幅を有するクロック信号FRを入力して、クロック信号FRを基準に、位相の異なる複数のストローブ信号Stb1〜Stbnを出力するストローブ発生部2と、ストローブ信号Stb1〜Stbnのいずれか一つに基づいて被試験信号CKのエッジタイミングを検出するタイミング検出部3と、タイミング検出部3で検出されたエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲内か否かを判別するジッタ判別部4と、タイミング検出部3へのトリガ信号Fとしてストローブ信号Stb1〜Stbnのいずれか一つを選択するとともに、ジッタ判別部4でエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲外と判定された場合、選択されたトリガ信号Fとは別のストローブ信号Stb1〜Stbnを選択して出力するトリガ選択部5と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、ストローブ発生部2は、許容ジッタ値に相当するパルス幅を有するクロック信号FRを入力して、クロック信号FRを基準に、位相の異なる複数のストローブ信号Stb1〜Stbnを出力し、タイミング検出部3は、トリガ選択部5によってトリガ信号Fとして選択されたストローブ信号Stb1〜Stbnのいずれか一つに基づいて、被試験信号CKのエッジタイミングを検出し、ジッタ判別部4は検出されたエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲内か否かを判別する。トリガ選択部5は、ジッタ判別部4でエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲外と判定された場合、別のストローブ信号Stb1〜Stbnをトリガ信号Fとして選択して出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のジッタ測定方法と同等の精度でジッタの判定をすることができるだけでなく、その回路規模を縮小することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態のジッタ測定回路の概略の構成を示すブロック図である。
ジッタ測定回路は、クロック信号生成部1、ストローブ発生部2、タイミング検出部3、ジッタ判別部4、トリガ選択部5を有している。
【0015】
クロック信号生成部1は、許容ジッタ値に相当するパルス幅でクロック信号FRを生成する。なお、クロック信号FRは、ジッタ測定回路の外部で生成して入力するようにしてもよい。
【0016】
ストローブ発生部2は、クロック信号FRを基準に、位相の異なる複数のストローブ信号Stb1〜Stbnを出力する。
タイミング検出部3は、トリガ選択部5によってストローブ信号Stb1〜Stbnから選択されたトリガ信号Fに基づいて、被試験信号CKのエッジタイミングを検出する。
【0017】
ジッタ判別部4は、タイミング検出部3で検出されたエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲内か否かを判別する。具体的な判別方法については、後述する。
図2は、本実施の形態のジッタ測定回路におけるジッタ判別部の概略の構成を示すブロック図である。
【0018】
ジッタ判別部4は、判定部4aと、カウンタ部4bを有している。
判定部4aは、エッジタイミングの検出信号A,Bに基づいてジッタ値が許容ジッタ値の範囲内か否かの判定信号Cを繰り返し出力する。
【0019】
カウンタ部4bは、判定信号Cを検出するとともに、選択されたストローブ信号Stb1〜Stbnであるトリガ信号Fの波数をカウントして、波数が所定数(m)を超えても、ジッタ値が許容ジッタ値の範囲外とする判定信号Cを検出しないとき、被試験信号CKの合格信号Dを出力する。
【0020】
図1のトリガ選択部5は、タイミング検出部3へのトリガ信号Fとしてストローブ信号Stb1〜Stbnのいずれか一つを選択するとともに、エッジタイミングが許容ジッタ値の範囲外と判定された場合、当該選択されたトリガ信号Fとは別のストローブ信号Stb1〜Stbnを選択して出力する。
【0021】
図3は、本実施の形態のジッタ測定回路におけるトリガ選択部の概略の構成を示すブロック図である。
トリガ選択部5は、複数のストローブ信号Stb1〜Stbnから特定位相のものをトリガ信号Fとしてタイミング検出部3およびジッタ判別部4に出力するセレクタ部5aと、ジッタ判別部4でエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲内とされたときセレクタ部5aから出力されるトリガ信号Fを維持するとともに、許容ジッタ値の範囲外とされたときトリガ信号Fとしてストローブ信号Stb1〜Stbnの中から別の位相を有するものに切り替えるコントロール部5bとを備えている。
【0022】
また、エッジタイミングが複数のストローブ信号Stb1〜Stbnのすべてについて許容ジッタ値の範囲外と判定されたとき、コントロール部5bからエラー信号Eを出力するようにしてもよい。
【0023】
また、コントロール部5bからセレクタ部5aに、セレクタ信号Sが出力されている。このセレクタ信号Sによって、複数のストローブ信号Stb1〜Stbnから順次、位相の遅れたトリガ信号Fが選択される。
【0024】
以下、図1で示したジッタ測定回路の動作の概略を説明する。
まず、クロック信号生成部1は、仕様に基づいた許容ジッタ値に相当するパルス幅でクロック信号FRを生成する。ストローブ発生部2は、クロック信号FRを入力すると、クロック信号FRを基準に、位相の異なる複数のストローブ信号Stb1〜Stbnを出力する。トリガ選択部5は、入力されたストローブ信号Stb1〜Stbnのいずれかをトリガ信号Fとして選択して出力する。タイミング検出部3は、トリガ信号に基づいて、被試験信号CKのエッジタイミングを検出する。そして、ジッタ判別部4は、タイミング検出部3で検出されたエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲内か否かを判別し、範囲外であると判定された場合には、その旨の判定信号Cをトリガ選択部5に送る。これにより、トリガ選択部5は、トリガ信号Fとして選択中のストローブ信号Stb1〜Stbnを変更して、別の一つを選択して出力する。
【0025】
上記の構成によれば、従来のジッタ測定方法と同等の精度でジッタの判定をすることができるだけでなく、ストローブ信号Stb1〜Stbnを一つずつ扱えるので、タイミング検出部3やジッタ判別部4などの回路規模を抑えることができ、全体の回路規模を縮小することができる。
【0026】
つぎに、このジッタ測定回路を内蔵した半導体回路装置を例にして、本実施の形態のジッタ測定回路を詳細に説明する。
図4は、実施の形態に係る半導体回路装置に内蔵されたジッタ測定回路を示す回路ブロック図である。
【0027】
ジッタ測定回路10は、ジッタ成分を含む被試験信号CKが供給される入力端子CKINとクロック信号FRが供給される入力端子FRIN、および2つの出力端子OUT,ERROUTを備えている。このジッタ測定回路10は、被試験信号CKに基づいて所定の動作を実行する半導体回路装置内部に形成されており、この被試験信号CKのジッタ値を、クロック信号FRによって設定された許容ジッタ値に基づいて測定して、その測定結果が合格信号Dとして出力端子OUTから出力される。また、出力端子ERROUTからはエラー信号Eが出力される。
【0028】
このようなジッタ測定回路10を内蔵した半導体回路装置では、特別の外部試験装置を用意しなくても、半導体回路装置で生成された被試験信号CKのジッタに関する試験が行えるものである。
【0029】
入力端子FRINからジッタ測定回路10に供給されているクロック信号FRは、半導体回路装置内部の図示しないクロック信号生成回路によって生成されているか、あるいは半導体回路装置の外部から供給されている。このクロック信号生成回路は、図1のクロック信号生成部1に相当するものであって、クロック信号FRのパルス幅は、半導体回路装置の外部から調整可能であり、適宜に被試験信号CKに応じた周期、およびパルス幅の信号波形として生成できる。
【0030】
いま、このクロック信号FRは、被試験信号CKに対応する周期で、かつ被試験信号CKの許容ジッタ値に相当するパルス幅を有する信号として多相ストローブ発生回路21に供給されているものとする。
【0031】
多相ストローブ発生回路21は、図1のストローブ発生部2に相当するものであって、ここからクロック信号FRを基準とするn通りに、位相の異なるn本のストローブ信号Stb1〜Stbnが出力されている。これらのストローブ信号Stb1〜Stbnは、図1のトリガ選択部5に相当するトリガ選択回路50のセレクタ回路51に出力され、後述するセレクタ信号Sによって特定の位相を有するストローブ信号がトリガ信号Fとして選択される。
【0032】
タイミング検出回路30は、図1のタイミング検出部3に相当するものであって、2つのNOR回路31,32から構成されている。このタイミング検出回路30は、NOR回路31,32によって被試験信号CKの立ち上がりエッジのタイミングを検出する論理回路を構成している。
【0033】
タイミング検出回路30のNOR回路31には、その一方の入力端子から反転された被試験信号CKが供給され、他方の入力端子からトリガ信号Fが供給されている。また、もう一つのNOR回路32には、一方の入力端子から被試験信号CKがそのまま供給され、他方の入力端子からトリガ信号Fが供給されている。そして、NOR回路31から出力されるエッジタイミングの検出信号AとNOR回路32から出力される検出信号Bが、それぞれジッタ判別回路40の判定回路41に供給されている。この判定回路41は図2のジッタ判別部4の判定部4aに相当する。
【0034】
タイミング検出回路30では、被試験信号CKの立ち上がりエッジがトリガ信号Fのハイパルスの区間に存在していなければ、NOR回路31,32からの検出信号A,Bのいずれか一方が、一周期の間に2つの立ち上がりエッジを有する波形として判定回路41に出力される。しかし、トリガ信号Fのハイパルスの区間に被試験信号CKの立ち上がりエッジが存在する場合、タイミング検出回路30のエッジタイミングの検出信号A,Bは、いずれもその一周期の間に立ち上がりエッジを1つだけ持った波形として生成され、判定回路41に出力される。
【0035】
ジッタ判別回路40は、判定回路41とカウンタ回路42とから構成されている。判定回路41は、そこに検出信号A,Bとともにトリガ信号Fが供給されており、トリガ信号Fの一周期内におけるこれらの検出信号A,Bが有する立ち上がりエッジの数を判別するものである。
【0036】
判定回路41は、トリガ信号Fの一周期内で2つの立ち上がりエッジが検出された場合、判定信号Cをハイパルスの信号として出力し、一つだけであれば判定信号Cをロウレベルの状態に保持して出力している。すなわち、ジッタ判別回路40ではエッジタイミングの検出信号A,Bに基づいて立ち上がりエッジの数をカウントすることにより、被試験信号CKのジッタ値が許容ジッタ値の範囲内か否かについての判定信号Cを繰り返し出力している。
【0037】
カウンタ回路42は、リセット端子に判定回路41からの判定信号Cが供給されるとともに、セレクタ回路51からトリガ信号Fが供給され、その波数をカウントするものである。このカウンタ回路42では、判定信号Cがハイパルスの信号として供給されたとき、それまでのトリガ信号Fの計数値がリセットされる。また、カウンタ回路42にはあらかじめ所定数(m)が設定されていて、判定信号Cが連続してロウレベルの状態であれば、その間に供給されたトリガ信号Fの波数をカウントし、それが所定数(m)を超えたときに、被試験信号CKのジッタ値が許容ジッタ値の範囲内であるとするハイレベルの合格信号Dを、出力端子OUTから出力するように構成されている。トリガ信号Fの波数が所定数(m)になる以前に、判定回路41からハイパルスの判定信号Cが出力されると、カウンタ回路42の係数値は「0」にリセットされる。
【0038】
トリガ選択回路50は、多相ストローブ発生回路21からの信号を選択するセレクタ回路51と、このセレクタ回路51を制御する図3のコントロール部5bに相当するカウンタ回路52から構成されている。
【0039】
カウンタ回路52には、判定回路41から判定信号Cが供給されている。カウンタ回路52から出力されるセレクタ信号Sは、判定回路41でエッジタイミングが許容ジッタ値の範囲内と判定されると更新されない。したがって、セレクタ回路51からのトリガ信号Fは、同じ位相のものが継続して選択される。逆に、判定回路41で許容ジッタ値の範囲外と判定されたとき、判定信号Cによってセレクタ信号Sが更新されることによって、トリガ信号Fとしてストローブ信号Stb1〜Stbnの中から、つぎの遅れ位相を有するものを選択するように構成されている。
【0040】
また、このカウンタ回路52には、あらかじめ多相ストローブ発生回路21のストローブ信号数nに対応する数値(n)が設定されている。カウンタ回路52は、判定回路41から供給されるエッジタイミングの判定信号Cが、複数のストローブ信号Stb1〜Stbnのすべてについて許容ジッタ値の範囲外であれば、出力端子ERROUTにエラー信号Eを出力するように構成されている。
【0041】
すなわち、トリガ選択回路50では、許容ジッタ値の範囲外であるとする判定信号Cを受けると、カウンタ回路52によってセレクタ回路51を制御して、セレクタ回路51から出力されるトリガ信号Fを変更する。このとき、トリガ信号Fは複数のストローブ信号Stb1〜Stbnから順次に位相の遅れたものが選択される。そして、すべてのストローブ信号Stb1〜Stbnを使用しても判定回路41で許容ジッタ値の範囲外であるとされた場合には、タイミング検出回路30に供給された被試験信号CKのジッタ値がクロック信号FRに設定された許容ジッタ値を満足していないと判定し、出力端子ERROUTにハイレベルのエラー信号Eを出力する。
【0042】
このように、実施の形態の半導体回路装置では、内部にサンプリング回路を備えていなくてもジッタ測定回路10を構成することができる。このため、多相ストローブ発生回路21で生成されるストローブ信号Stb1〜Stbnの精度を高くして、nを大きな値に設定した場合でも、従来のジッタ測定回路のようにサンプリング回路部を構成するフリップフロップなどを増設する必要がないから、全体の回路規模を固定したまま任意の測定精度に設定することができる。
【0043】
つぎに、上述したジッタ測定回路10の各部の信号波形に基づいて、その回路動作を説明する。
図5は、トリガ信号Fに対して被試験信号CKが遅れて立ち上がる場合の各部信号波形を示す図である。
【0044】
(a)に示すクロック信号FRは、そのハイレベルのパルス幅Jsが被試験信号CKについての許容ジッタ値に等しい。また、(b)に示すトリガ信号Fは、トリガ選択回路50のセレクタ回路51によって、複数のストローブ信号Stb1〜Stbnから選択されたものであって、クロック信号FRを基準にして遅延時間DL(k)(単位遅延時間のk倍)だけ位相が異なっている。この単位遅延時間は、そのn倍がクロック信号FRの周期Tに相当するように設定される。
【0045】
(c)に示す被試験信号CKは、その立ち上がりエッジのタイミングが、トリガ信号Fのハイレベルのパルスの右側に位置している。被試験信号CKがこのような立ち上がりエッジのタイミングで供給されていれば、タイミング検出回路30の2つのNOR回路31,32からは、(d),(e)に示すタイミング波形を有する検出信号A,Bが出力される。
【0046】
すなわち、NOR回路32では被試験信号CKとトリガ信号Fとがともにロウレベルのタイミングを検知して、その検出信号Bがハイレベルになる。そのため、検出信号Bはトリガ信号Fの1周期Taの間で2つの立ち上がりエッジを有する信号波形となるから、その2つ目の立ち上がりエッジを判定回路41で検知したとき、(f)に示すようなタイミングで判定信号Cがハイレベルに立ち上がる。
【0047】
(g)に示すカウンタ回路42のカウンタ値は、判定信号Cが立ち上がる都度、リセットされて「0」となる。(h)に示す合格信号Dは、カウンタ回路42から出力されるものであるが、前述したようにカウンタ回路42のカウンタ値が所定数(m)になるまでは出力されない。
【0048】
一方、(i)に示すカウンタ回路52は、判定信号Cがハイレベルで供給されると、そのカウンタ値が「k」から「k+1」に更新される。このとき、カウンタ回路52からセレクタ回路51に出力されるセレクタ信号Sによって、複数のストローブ信号Stb1〜Stbnから、さらに単位遅延時間だけ遅れた位相、すなわち遅延時間DL(k+1)のトリガ信号Fが選択される。このとき、トリガ信号Fの1周期Taは、クロック信号FRの周期Tより単位遅延時間だけ長くなっている。
【0049】
図6は、トリガ信号Fに対して被試験信号CKの立ち上がりが先行している場合の各部信号波形を示す図である。
ここでは、複数のストローブ信号Stb1〜Stbnから図5の場合より大きな遅延位相を有するトリガ信号F、すなわち(b)のように、クロック信号FRを基準にして遅延時間DL(h)〜DL(h+2)のものが選択されている。また、被試験信号CKは、(c)に示すように、その立ち上がりエッジのタイミングがトリガ信号Fのハイレベルのパルス幅Jsに対して、左側に位置するものとなる。
【0050】
このとき、タイミング検出回路30のNOR回路31の検出信号Aは、被試験信号CKがハイレベルで、かつトリガ信号Fがロウレベルであるタイミングを検知することで、(d)に示すタイミングでハイレベルとなる。こうして、検出信号Aがトリガ信号Fの1周期Tの間で2つの立ち上がりエッジを有することになり、検出信号Aの2回目に立ち上がるタイミングを検出した時点で、(f)に示すように判定信号Cがハイレベルに立ち上がる。
【0051】
したがって、図5の場合と同様に、(g)に示すカウンタ回路42は「0」にリセットされる。また、(i)に示すカウンタ回路52のカウンタ値も、「h+1」から「h+2」に更新されるから、つぎの周期では遅延時間DL(h+2)のトリガ信号Fが選択されることになる。
【0052】
このように、被試験信号CKが図5および図6に示すタイミングで立ち上がって、その後もすべてのストローブ信号Stb1〜Stbnが選択されて、カウンタ回路52のカウンタ値がnとなったとすれば、その時点で図4の出力端子ERROUTからエラー信号Eが出力される。
【0053】
しかし、図5のように被試験信号CKが入力する場合でも、カウンタ回路52のカウンタ値がnになる以前に、被試験信号CKがトリガ信号Fのパルス幅に対応したタイミングで立ち上がるようになれば、つぎに説明する手順に従って被試験信号CKのジッタ値が測定できる。
【0054】
図7は、トリガ信号Fのパルス幅に対応したタイミングで被試験信号CKが立ち上がる場合の各部信号波形を示す図である。
この場合、(b)に示すように、クロック信号FRを基準にして同じ遅延時間DL(j)を有するトリガ信号が連続して複数のストローブ信号Stb1〜Stbnから選択されている。このときの被試験信号CKは、(c)に示すように、トリガ信号Fのハイレベルのパルスに対応して立ち上がるエッジタイミングとなる。また、図7の遅延時間DL(j)は、図5、図6のトリガ信号Fの遅延時間DL(k),DL(h)との間で、DL(k)<DL(j)<DL(h)の関係となっている。
【0055】
ここで、NOR回路31,32から出力される検出信号A,Bが、いずれもトリガ信号Fの1周期Tの間に1つだけしか立ち上がりエッジを含まないため、判定信号Cは継続してロウレベルとなる。このため、(g)に示すようにカウンタ回路42のカウンタ値が1ずつ更新され、それが所定数(m)になったとき、(h)に示す合格信号Dが出力される。
【0056】
出力端子OUTから合格信号Dが出力されることで、その時点の被試験信号CKに含まれるジッタ値が、少なくともクロック信号FRのパルス幅Jsで設定された許容ジッタ値以内であると判断できる。その後、たとえば、クロック信号FRのパルス幅Jsをそれまでの1/2に再設定するなどして、被試験信号CKに含まれるジッタ値を、さらに絞り込んで測定することも可能である。
【0057】
なお、図7に示すような測定経過であっても、ジッタ測定回路10に供給される被試験信号CKのジッタ値が、クロック信号FRのパルス幅Js(すなわち、許容ジッタ値)を超えて変動することがある。その場合、カウンタ回路42のカウンタ値が所定数(m)になる以前に「0」にリセットされる。さらに、ジッタ値を測定するには、たとえば、クロック信号FRのパルス幅Jsを、それまでの2倍の大きさに再設定することによって、ジッタ測定回路10による測定が可能となる。
【0058】
また、上述した実施の形態では、被試験信号のジッタ値を、その立ち上がりタイミングで測定する場合を説明したが、本発明のジッタ測定回路によれば、立ち下がりのタイミングを変化点のエッジタイミングとして測定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態のジッタ測定回路の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態のジッタ測定回路におけるジッタ判別部の概略の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態のジッタ測定回路におけるトリガ選択部の概略の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る半導体回路装置に内蔵されたジッタ測定回路を示す回路ブロック図である。
【図5】トリガ信号Fに対して被試験信号CKが遅れて立ち上がる場合の各部信号波形を示す図である。
【図6】トリガ信号Fに対して被試験信号CKの立ち上がりが先行している場合の各部信号波形を示す図である。
【図7】トリガ信号Fのパルス幅に対応したタイミングで被試験信号CKが立ち上がる場合の各部信号波形を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 クロック信号生成部
2 ストローブ発生部
3 タイミング検出部
4 ジッタ判別部
4a 判定部
4b カウンタ部
5 トリガ選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験信号のジッタ値を、設定された許容ジッタ値に基づいて測定するためのジッタ測定回路において、
前記許容ジッタ値に相当するパルス幅を有するクロック信号を入力して、前記クロック信号を基準に、位相の異なる複数のストローブ信号を出力するストローブ発生部と、
前記ストローブ信号のいずれか一つに基づいて前記被試験信号のエッジタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記タイミング検出部で検出された前記エッジタイミングが前記許容ジッタ値の範囲内か否かを判別するジッタ判別部と、
前記タイミング検出部へのトリガ信号として前記ストローブ信号のいずれか一つを選択するとともに、前記ジッタ判別部で前記エッジタイミングが前記許容ジッタ値の範囲外と判定された場合、選択された当該トリガ信号とは別の前記ストローブ信号を選択して出力するトリガ選択部と、
を備えたことを特徴とするジッタ測定回路。
【請求項2】
前記ジッタ判別部は、
前記エッジタイミングの検出信号に基づいて前記ジッタ値が前記許容ジッタ値の範囲内か否かの判定信号を繰り返し出力する判定部と、
前記判定信号を検出するとともに、選択された前記ストローブ信号の波数をカウントし、前記波数が所定数を超えても、前記ジッタ値が前記許容ジッタ値の範囲外であるとする前記判定信号を検出しないとき、前記被試験信号の合格信号を出力するカウンタ部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のジッタ測定回路。
【請求項3】
前記トリガ選択部は、
複数の前記ストローブ信号から特定位相のものを前記トリガ信号として前記タイミング検出部および前記ジッタ判別部に出力するセレクタ部と、
前記ジッタ判別部で前記エッジタイミングが前記許容ジッタ値の範囲内と判定されたとき前記セレクタ部から出力される前記トリガ信号を維持するとともに、前記許容ジッタ値の範囲外と判定されたとき前記トリガ信号として前記ストローブ信号の中から別の位相を有するものに切り替えるコントロール部と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のジッタ測定回路。
【請求項4】
前記コントロール部は、複数の前記ストローブ信号のすべてについて、前記エッジタイミングが前記許容ジッタ値の範囲外と判定される場合、エラー信号を出力することを特徴とする請求項3記載のジッタ測定回路。
【請求項5】
被試験信号のジッタ値を設定された許容ジッタ値に基づいて測定するためのジッタ測定回路が内蔵されている半導体回路装置において、
前記ジッタ測定回路は、
前記許容ジッタ値に相当するパルス幅を有するクロック信号を入力して、前記クロック信号を基準に、位相の異なる複数のストローブ信号を出力するストローブ発生部と、
前記ストローブ信号のいずれか一つに基づいて前記被試験信号のエッジタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記タイミング検出部で検出された前記エッジタイミングが前記許容ジッタ値の範囲内か否かを判別するジッタ判別部と、
前記タイミング検出部へのトリガ信号として前記ストローブ信号のいずれか一つを選択するとともに、前記ジッタ判別部で前記エッジタイミングが前記許容ジッタ値の範囲外と判定された場合、選択された当該トリガ信号とは別の前記ストローブ信号を選択して出力するトリガ選択部と、
を備えたことを特徴とする半導体回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−275435(P2008−275435A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119118(P2007−119118)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)