ジヒドロクマリン類の製造方法
【課題】本発明は、簡易な方法で、高収率なジヒドロクマリン類の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体を反応させて得られるジヒドロクマリン類の製造方法に関するものである。
具体的には、テルペン骨格含有フェノール化合物として、p−メンチルフェノールが挙げられる。
【解決手段】本発明は、テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体を反応させて得られるジヒドロクマリン類の製造方法に関するものである。
具体的には、テルペン骨格含有フェノール化合物として、p−メンチルフェノールが挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料工業や農薬、医薬あるいは染料の中間体として有用なジヒドロクマリン類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ジヒドロクマリン類の製造方法としては、3−(2−オキソシクロヘキシル)プロピオン酸エステル類を加熱して環化脱水素反応させて製造する方法等(特許文献1)があるが、ジヒドロクマリン類の他にクマリン類も生成されたり、また、製造条件も、高温や気相反応であったりして、製造工程が複雑になり、また、十分な収率を確保出来ることはできない。
また、特殊な酸化方法により、カルボニル化合物を過酸により酸化しエステルを得る方法により、2,3,3a、7a−テトラヒドロ−1H−インデン−1−オンからジヒドロクマリンを得る方法(特許文献2)も特許出願されてはいるが、市販されていない特殊な原料と、特殊で高価な触媒が必要であり、実用化するには難しい。
【特許文献1】米国特許第3442910号
【特許文献2】特開平11−269130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたもので、簡易な方法で、高収率なジヒドロクマリン類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体を反応させて得られるジヒドロクマリン類の製造方法に関するものである。
具体的には、テルペン骨格含有フェノール化合物として、式(I)で示すp−メンチルフェノールが挙げられる。
【0005】
【化2】
【発明の効果】
【0006】
本発明のジヒドロクマリン類の製造方法を使用することにより、香料工業、化粧品や農薬、医薬あるいは染料の中間原料として有用なジヒドロクマリン類を、簡易な方法で、高収率で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ここで、本発明のテルペン骨格含有フェノール化合物について説明する。
本発明で使用されるテルペン骨格含有フェノール化合物は、テルペン化合物とフェノール化合物の反応物で、テルペン化合物1モルとフェノールまたは炭素数1〜5のアルキル基の置換したフェノール化合物(以下フェノール類と表す)1モルが付加したテルペン/フェノール類1モル/1モル付加物、あるいは、テルペン化合物1モルとフェノールまたは炭素数1〜5のアルキル基の置換したフェノール化合物(以下フェノール類と表す)2モルが付加したテルペン/フェノール類1モル/2モル付加物である。例えば、テルペン/フェノール類1モル/1モル付加物としては、下記一般式(a)、(b)、(c)で表される化合物が挙げられる。
【0008】
【化3】
【0009】
なお、先に示した式(I)で表されるp−メンチルフェノールは、式(a)に該当する化合物である。
【0010】
【化4】
【0011】
【化5】
【0012】
テルペン/フェノール類1モル/2モル付加物としては、市販品として、ヤスハラケミカル(株)製YP−90、ヤスハラケミカル(株)製YP−90 1,3体、ヤスハラケミカル(株)製YP−90 2,8体がある。
【0013】
ヤスハラケミカル(株)製YP−90の化学式は化6の通りである。
【0014】
【化6】
【0015】
テルペン化合物は、一般に植物の葉、樹、根などから得られる植物精油に含まれる化合物である。
ここでテルペンについて説明する。テルペンとは一般的に、イソプレン(C5H8)を1単位として、このイソプレンが頭と尾で結合(head to tail)した化合物をいい、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)等に分類される。炭素骨格は、鎖状のものや、環状のものがある。
本発明で使用されるテルペン骨格含有フェノール化合物を製造するための原料のテルペン化合物は、鎖状のテルペン化合物であってもよいし、単環のテルペン化合物であってもよいし、双環のテルペン化合物であってもよい。その具体的な例として例えば次のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
テルペン化合物の具体的な例として、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレイン、α−テルピネン、、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類、カンフェン、Δ2−カレン、Δ3−カレン、トリシクレン、フェンチェン、シルベストレン等が挙げられる。
【0017】
また、これらの環状テルペン化合物は単独で使用することもできるし2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0018】
本発明で使用されるテルペン骨格含有モノフェノール化合物を製造するための原料であるフェノール類としては、フェノールまたは炭素数1〜5のアルキル基の置換したフェノール化合物が挙げられる。
【0019】
炭素数が1〜5のアルキル基が付加したフェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4キシレノール、プロピルフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4ーキシレノール、3,6−キシレノール、p−フェニルフェノール等の化合物が挙げれるが、これらの化合物に限定されない。
【0020】
本発明で使用されるテルペン骨格含有フェノール化合物の製造方法は、テルペン/フェノール類1モル/1モル付加物である場合は、例えば、テルペン化合物1モルに対してフェノール類を0.1〜6モル、好ましくは0.5〜4モル使用し、酸性触媒の存在下で20〜150℃の温度で1〜10時間反応させることにより得られる。その酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化硼素もしくはその錯体、陽イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、活性白土等が挙げられる。その際、反応溶媒は使用しなくてもよいが、芳香族系炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の溶媒を使用することもできる。
【0021】
本発明で使用されるテルペン骨格含有モノフェノール化合物の1つであるp−メンチルフェノールは、市販品として、ヤスハラケミカル(株)製PMP(p−メンチルフェノール、純度100%)がある。
【0022】
テルペン/フェノール類1モル/2モル付加物である場合は、環状テルペン化合物1モルに対して、フェノール類を好ましくは、2〜8モル使用し、酸性触媒の存在下、40〜160℃の温度で1〜10時間行われる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、ポリ燐酸、三フッ化硼素もしくはその錯体、活性白土などがあげられる。
【0023】
反応溶媒は使用しなくてもよいが、通常、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類などの溶媒が使用される。
【0024】
ここで、本発明で使用されるけい皮酸誘導体について説明する。
本発明で使用されるけい皮酸誘導体の一般式は次の通りである。
【0025】
【化7】
【0026】
Rは、水素原子あるいはアルキル基CnH2n+1である。
nは1〜20である。好ましくは、1〜6である。
【0027】
Arは、フェニル基類である。具体的には、化8〜化12のようなものが挙げられる。
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
上記、p−メトキシけい皮酸、2,5−ジメトキシけい皮酸、3,4−ジメトキシけい皮酸、2,3,4−トリメトキシけい皮酸、3,4,5−トリメトキシけい皮酸は、市販品として、和光純薬工業(株)製のもの等々がある。
【0034】
本発明のジヒドロクマリン類の製造方法である、テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体の反応について説明する。ただし、製造方法は、下記記載の製造方法に限定はされない。
例えば、テルペン骨格含有モノフェノール化合物1モルに対してけい皮酸誘導体を0.1〜6モル、好ましくは0.5〜4モル使用し、溶媒中、15〜150℃の温度で10〜36時間反応させることにより得られる。溶媒は、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ハロ酢酸等を使用する。
反応温度は、好ましくは20〜100℃、反応時間は好ましくは、10〜30時間である。溶媒としては、具体的には、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、トリフルオロ酢酸等が使用できる。触媒は、使用しなくてもよいが、酸触媒等を使用してもよい。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液等の弱塩基性水溶液で中和し、生成物を抽出し、生成物を分離する。
【実施例】
【0035】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記実施例における分析は、下記の機器を使用した。
【0036】
実施例1
p−メンチルフェノール(ヤスハラケミカル(株)製PMP、p−メンチルフェノール、純度100%)1ミリモルとp−メトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製p−メトキシけい皮酸、純度99%以上)1ミリモルを試験管に量り取り、攪拌子を入れ、ジクロロメタン0.5ml、トリフルオロ酢酸(TFA)1.0mlを加えて室温で攪拌した。
24時間攪拌後、反応混合物をビーカーに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を弱塩基性になるまで加えた。反応溶液をすべて分液漏斗に移し、ジクロロメタンで20ml×4回、抽出した。
抽出したジクロロメタン水溶液を水30ml、飽和食塩水30mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて、乾燥させた。
溶媒をロータリーエバポレーターで留去した後、関東化学株式会社製シリカゲル60(球状、63−210μm)を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて生成物を分離した。ジクロロメタンで溶出させると、ジヒドロクマリン誘導体が100%収率で得られた。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化13に記載した。
また、使用したp−メンチルフェノールおよび生成物を、NMR(日本電子株式会社製JEOL AL300型)を使用して測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図1〜5に、その説明を、表1、表2に掲載している。また、GC−MS(島津製作所製GCMS−QP5050A型)による構造解析データも表2に記載している。
【0037】
【化13】
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
実施例2
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、2,5−ジメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度99%以上)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、61%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化14に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図6〜8に、その説明およびGC−MSデータを、表3に掲載している。
【0041】
【化14】
【0042】
【表3】
【0043】
実施例3
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、3,4−ジメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度95%以上)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、96%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化15に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図9〜11に、その説明およびGC−MSデータを表4に掲載している。
【0044】
【化15】
【0045】
【表4】
【0046】
実施例4
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、2,3、4−トリメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度99%)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、79%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化16に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図12〜14に、その説明およびGC−MSデータを表5に掲載している。
【0047】
【化16】
【0048】
【表5】
【0049】
実施例5
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、3,4,5−トリメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度99%)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、67%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化17に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図15〜17に、その説明およびGC−MSデータを表6に掲載している。
【0050】
【化17】
【0051】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のジヒドロクマリン類の製造方法を使用して、高収率で、安価にジヒドロクマリン類が製造でき、得られたジヒドロクマリン類は、香料工業、化粧品や農薬、医薬あるいは染料の中間原料として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ヤスハラケミカル(株)製p−メンチルフェノールの1H−NMRチャートである。
【図2】ヤスハラケミカル(株)製p−メンチルフェノールの13C−NMRチャートである。
【図3】実施例1で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図4】実施例1で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図5】実施例1で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図6】実施例2で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図7】実施例2で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図8】実施例2で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図9】実施例3で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図10】実施例3で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図11】実施例3で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図12】実施例4で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図13】実施例4で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図14】実施例4で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図15】実施例5で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図16】実施例5で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図17】実施例5で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料工業や農薬、医薬あるいは染料の中間体として有用なジヒドロクマリン類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ジヒドロクマリン類の製造方法としては、3−(2−オキソシクロヘキシル)プロピオン酸エステル類を加熱して環化脱水素反応させて製造する方法等(特許文献1)があるが、ジヒドロクマリン類の他にクマリン類も生成されたり、また、製造条件も、高温や気相反応であったりして、製造工程が複雑になり、また、十分な収率を確保出来ることはできない。
また、特殊な酸化方法により、カルボニル化合物を過酸により酸化しエステルを得る方法により、2,3,3a、7a−テトラヒドロ−1H−インデン−1−オンからジヒドロクマリンを得る方法(特許文献2)も特許出願されてはいるが、市販されていない特殊な原料と、特殊で高価な触媒が必要であり、実用化するには難しい。
【特許文献1】米国特許第3442910号
【特許文献2】特開平11−269130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたもので、簡易な方法で、高収率なジヒドロクマリン類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体を反応させて得られるジヒドロクマリン類の製造方法に関するものである。
具体的には、テルペン骨格含有フェノール化合物として、式(I)で示すp−メンチルフェノールが挙げられる。
【0005】
【化2】
【発明の効果】
【0006】
本発明のジヒドロクマリン類の製造方法を使用することにより、香料工業、化粧品や農薬、医薬あるいは染料の中間原料として有用なジヒドロクマリン類を、簡易な方法で、高収率で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ここで、本発明のテルペン骨格含有フェノール化合物について説明する。
本発明で使用されるテルペン骨格含有フェノール化合物は、テルペン化合物とフェノール化合物の反応物で、テルペン化合物1モルとフェノールまたは炭素数1〜5のアルキル基の置換したフェノール化合物(以下フェノール類と表す)1モルが付加したテルペン/フェノール類1モル/1モル付加物、あるいは、テルペン化合物1モルとフェノールまたは炭素数1〜5のアルキル基の置換したフェノール化合物(以下フェノール類と表す)2モルが付加したテルペン/フェノール類1モル/2モル付加物である。例えば、テルペン/フェノール類1モル/1モル付加物としては、下記一般式(a)、(b)、(c)で表される化合物が挙げられる。
【0008】
【化3】
【0009】
なお、先に示した式(I)で表されるp−メンチルフェノールは、式(a)に該当する化合物である。
【0010】
【化4】
【0011】
【化5】
【0012】
テルペン/フェノール類1モル/2モル付加物としては、市販品として、ヤスハラケミカル(株)製YP−90、ヤスハラケミカル(株)製YP−90 1,3体、ヤスハラケミカル(株)製YP−90 2,8体がある。
【0013】
ヤスハラケミカル(株)製YP−90の化学式は化6の通りである。
【0014】
【化6】
【0015】
テルペン化合物は、一般に植物の葉、樹、根などから得られる植物精油に含まれる化合物である。
ここでテルペンについて説明する。テルペンとは一般的に、イソプレン(C5H8)を1単位として、このイソプレンが頭と尾で結合(head to tail)した化合物をいい、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)等に分類される。炭素骨格は、鎖状のものや、環状のものがある。
本発明で使用されるテルペン骨格含有フェノール化合物を製造するための原料のテルペン化合物は、鎖状のテルペン化合物であってもよいし、単環のテルペン化合物であってもよいし、双環のテルペン化合物であってもよい。その具体的な例として例えば次のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
テルペン化合物の具体的な例として、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレイン、α−テルピネン、、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類、カンフェン、Δ2−カレン、Δ3−カレン、トリシクレン、フェンチェン、シルベストレン等が挙げられる。
【0017】
また、これらの環状テルペン化合物は単独で使用することもできるし2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0018】
本発明で使用されるテルペン骨格含有モノフェノール化合物を製造するための原料であるフェノール類としては、フェノールまたは炭素数1〜5のアルキル基の置換したフェノール化合物が挙げられる。
【0019】
炭素数が1〜5のアルキル基が付加したフェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4キシレノール、プロピルフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4ーキシレノール、3,6−キシレノール、p−フェニルフェノール等の化合物が挙げれるが、これらの化合物に限定されない。
【0020】
本発明で使用されるテルペン骨格含有フェノール化合物の製造方法は、テルペン/フェノール類1モル/1モル付加物である場合は、例えば、テルペン化合物1モルに対してフェノール類を0.1〜6モル、好ましくは0.5〜4モル使用し、酸性触媒の存在下で20〜150℃の温度で1〜10時間反応させることにより得られる。その酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化硼素もしくはその錯体、陽イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、活性白土等が挙げられる。その際、反応溶媒は使用しなくてもよいが、芳香族系炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の溶媒を使用することもできる。
【0021】
本発明で使用されるテルペン骨格含有モノフェノール化合物の1つであるp−メンチルフェノールは、市販品として、ヤスハラケミカル(株)製PMP(p−メンチルフェノール、純度100%)がある。
【0022】
テルペン/フェノール類1モル/2モル付加物である場合は、環状テルペン化合物1モルに対して、フェノール類を好ましくは、2〜8モル使用し、酸性触媒の存在下、40〜160℃の温度で1〜10時間行われる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、ポリ燐酸、三フッ化硼素もしくはその錯体、活性白土などがあげられる。
【0023】
反応溶媒は使用しなくてもよいが、通常、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類などの溶媒が使用される。
【0024】
ここで、本発明で使用されるけい皮酸誘導体について説明する。
本発明で使用されるけい皮酸誘導体の一般式は次の通りである。
【0025】
【化7】
【0026】
Rは、水素原子あるいはアルキル基CnH2n+1である。
nは1〜20である。好ましくは、1〜6である。
【0027】
Arは、フェニル基類である。具体的には、化8〜化12のようなものが挙げられる。
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
上記、p−メトキシけい皮酸、2,5−ジメトキシけい皮酸、3,4−ジメトキシけい皮酸、2,3,4−トリメトキシけい皮酸、3,4,5−トリメトキシけい皮酸は、市販品として、和光純薬工業(株)製のもの等々がある。
【0034】
本発明のジヒドロクマリン類の製造方法である、テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体の反応について説明する。ただし、製造方法は、下記記載の製造方法に限定はされない。
例えば、テルペン骨格含有モノフェノール化合物1モルに対してけい皮酸誘導体を0.1〜6モル、好ましくは0.5〜4モル使用し、溶媒中、15〜150℃の温度で10〜36時間反応させることにより得られる。溶媒は、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ハロ酢酸等を使用する。
反応温度は、好ましくは20〜100℃、反応時間は好ましくは、10〜30時間である。溶媒としては、具体的には、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、トリフルオロ酢酸等が使用できる。触媒は、使用しなくてもよいが、酸触媒等を使用してもよい。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液等の弱塩基性水溶液で中和し、生成物を抽出し、生成物を分離する。
【実施例】
【0035】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記実施例における分析は、下記の機器を使用した。
【0036】
実施例1
p−メンチルフェノール(ヤスハラケミカル(株)製PMP、p−メンチルフェノール、純度100%)1ミリモルとp−メトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製p−メトキシけい皮酸、純度99%以上)1ミリモルを試験管に量り取り、攪拌子を入れ、ジクロロメタン0.5ml、トリフルオロ酢酸(TFA)1.0mlを加えて室温で攪拌した。
24時間攪拌後、反応混合物をビーカーに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を弱塩基性になるまで加えた。反応溶液をすべて分液漏斗に移し、ジクロロメタンで20ml×4回、抽出した。
抽出したジクロロメタン水溶液を水30ml、飽和食塩水30mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて、乾燥させた。
溶媒をロータリーエバポレーターで留去した後、関東化学株式会社製シリカゲル60(球状、63−210μm)を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて生成物を分離した。ジクロロメタンで溶出させると、ジヒドロクマリン誘導体が100%収率で得られた。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化13に記載した。
また、使用したp−メンチルフェノールおよび生成物を、NMR(日本電子株式会社製JEOL AL300型)を使用して測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図1〜5に、その説明を、表1、表2に掲載している。また、GC−MS(島津製作所製GCMS−QP5050A型)による構造解析データも表2に記載している。
【0037】
【化13】
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
実施例2
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、2,5−ジメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度99%以上)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、61%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化14に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図6〜8に、その説明およびGC−MSデータを、表3に掲載している。
【0041】
【化14】
【0042】
【表3】
【0043】
実施例3
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、3,4−ジメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度95%以上)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、96%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化15に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図9〜11に、その説明およびGC−MSデータを表4に掲載している。
【0044】
【化15】
【0045】
【表4】
【0046】
実施例4
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、2,3、4−トリメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度99%)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、79%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化16に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図12〜14に、その説明およびGC−MSデータを表5に掲載している。
【0047】
【化16】
【0048】
【表5】
【0049】
実施例5
実施例1のp−メトキシけい皮酸の代わりに、3,4,5−トリメトキシけい皮酸(和光純薬工業(株)製、純度99%)を使用して、実施例1と同様にして反応させ、生成物を分離した。収率は、67%であった。得られたジヒドロクマリン誘導体の化学構造式を化17に記載した。また、実施例1と同様に、生成物のNMRを測定し、その1H−NMRチャート、13C−NMRチャートを図15〜17に、その説明およびGC−MSデータを表6に掲載している。
【0050】
【化17】
【0051】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のジヒドロクマリン類の製造方法を使用して、高収率で、安価にジヒドロクマリン類が製造でき、得られたジヒドロクマリン類は、香料工業、化粧品や農薬、医薬あるいは染料の中間原料として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ヤスハラケミカル(株)製p−メンチルフェノールの1H−NMRチャートである。
【図2】ヤスハラケミカル(株)製p−メンチルフェノールの13C−NMRチャートである。
【図3】実施例1で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図4】実施例1で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図5】実施例1で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図6】実施例2で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図7】実施例2で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図8】実施例2で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図9】実施例3で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図10】実施例3で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図11】実施例3で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図12】実施例4で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図13】実施例4で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図14】実施例4で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【図15】実施例5で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図16】実施例5で得られた生成物の1H−NMRチャートである。
【図17】実施例5で得られた生成物の13C−NMRチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体を反応させて得られるジヒドロクマリン類の製造方法。
【請求項2】
テルペン骨格含有フェノール化合物が、式(I)で表されるp−メンチルフェノールである請求項1記載のジヒドロクマリン類の製造方法。
【化1】
【請求項1】
テルペン骨格含有フェノール化合物とけい皮酸誘導体を反応させて得られるジヒドロクマリン類の製造方法。
【請求項2】
テルペン骨格含有フェノール化合物が、式(I)で表されるp−メンチルフェノールである請求項1記載のジヒドロクマリン類の製造方法。
【化1】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−188481(P2006−188481A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28214(P2005−28214)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
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