説明

ジメトモルフ及びジチオカルバメートを含む植物保護製剤

本発明は、a)活性成分Aとしてジメトモルフと、b)ジチオカルバメートの群の少なくとも一つの活性成分Bとを含み、炭化水素、植物油、脂肪酸エステル及びこれらの混合物から選択される液体有機希釈剤Cにおいて活性成分A及びBの油性懸濁剤として製剤され、少なくとも一つの表面活性物質Dを更に含む、殺菌植物保護製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)活性物質Aとしてジメトモルフと、
b)ジチオカルバメートの群から選択される少なくとも一つの活性物質Bと
を含む、殺菌植物保護製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、殺菌活性物質は、純粋な形態では用いられず、製剤の形態で用いられる。施用分野及び施用様式に応じて、並びに物理的、化学的及び生物学的パラメーターに応じて、活性物質は、慣用の担体、補助剤及び添加剤と混合した形態の活性物質製剤として用いられる。作用の範囲を広げ、且つ/又は作物を保護する更なる活性物質との組合せも知られている。農業化学活性物質の製剤は、一般に、良好な化学的及び物理的安定性、良好な施用特性及び使用し易さ、並びに高い選択性と組み合わされた良好な生物学的活性を有するべきである。
【0003】
ジメトモルフ[IUPAC: 4-[3-(4-クロロフェニル)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)アクリロイル]モルホリン]は、浸透性殺菌活性物質であり、市販されている(例えば、「The Pesticide Manual」第14版(2006)、The British Crop Protection Council、347頁以降を参照されたい)。
【0004】
マンコゼブ、マンネブ、ジネブ、プロピネブ及びメチラムなどのジチオカルバメートは、接触殺菌剤であり、これらも市販されている(例えば、「The Pesticide Manual」第14版(2006)、The British Crop Protection Councilにおいて、マンコゼブについては646頁〜649頁、メチラムについては714頁以降を参照されたい)。
【0005】
WO88/05630は、更なる植物保護活性物質、例えばマンコゼブと一緒にした、ジメトモルフなどの3,3-ビス(フェニル)アクリル酸モルホリドの活性物質組成物を記載する。提案された可能な製剤は、乳剤(emulsifiable concentrates)であり、水和剤(water-dispersible powders)である。
【0006】
水分の存在下での高温のジチオカルバメートの知られている化学的不安定性のため、ジチオカルバメート活性物質は、原則として、分散性粉末剤及び顆粒剤などの固体製剤として製剤される。個別の場合において、マンコゼブの水性懸濁剤(aqueous suspension concentrates)も利用可能である。
【0007】
殺菌ジチオカルバメートのマンコゼブと一緒にしたジメトモルフの製剤は、Acrobat(登録商標)Plus WGの名称で顆粒水和剤(water-dispersible granules)の形態で市販されている。
【0008】
固体製剤の欠点は、粉塵又は摩耗物質の発生であり、使用時に使用者にとって有害となり得る。更なる問題は、従来技術製剤の水分に対する耐性の欠如である。したがって、特に高温での水分の存在は、固体製剤であってもジチオカルバメートの部分的分解をもたらす。エチレンチオ尿素の同時放出は、作業衛生上の理由により問題である。更に、高温で保存された固体製剤は、多くの場合、水に再懸濁することが困難になる可能性があり、このことは施用時の取扱いを更に困難にする。ジメトモルフ及びジチオカルバメートの従来技術製剤は、更に、生物学的活性の観点から必ずしも満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO88/05630
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「The Pesticide Manual」第14版(2006)、The British Crop Protection Council、347頁以降
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、ジチオカルバメート、特にマンコゼブと一緒にしたジメトモルフの製剤を提供することであり、この製剤は従来技術の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、この目的は、ジメトモルフと、ジチオカルバメートの群から選択される少なくとも一つの活性物質とを、炭化水素、脂肪酸エステル及び植物油、並びにこれらの混合物のうちから選択される液体有機希釈剤Cにおいて油性懸濁剤として製剤することによって達成できることが見出された。
【0013】
したがって、本発明は、活性物質として、
a)活性物質Aとしてジメトモルフと、
b)ジチオカルバメートの群の少なくとも一つの活性物質Bと
を含み、炭化水素、植物油、脂肪酸エステル及びこれらの混合物のうちから選択される液体有機希釈剤Cにおいて活性物質A及びBの油性懸濁剤として製剤され、少なくとも一つの表面活性物質Dを更に含む殺菌植物保護製剤に関する。
【0014】
本発明は一連の利点を伴う。本発明の製剤は、高温及び/又は長期保存においても安定しており、すなわち、特に長期保存の際に従来の顆粒剤では多くの場合に当てはまるエチレン(チオ)尿素は観察されず、水での希釈における沈降物の形成もない。
【0015】
本発明の殺菌製剤は、経済的に有意に有害な広範囲の菌類、特に卵菌類(Oomycetes)に対して顕著な殺菌活性を有する。更に、本発明の製剤は、作用の素早い発生及び持続的な殺菌活性によって特徴付けられる。更に、殺菌活性に対する雨の悪影響は、これらの活性物質の伝統的な製剤よりもはるかに少ない。更に、ジメトモルフの治癒活性はこの製剤により増強される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の製剤において、活性物質は、有機希釈剤に懸濁している微細粒子として主に存在する。したがって本発明の活性物質製剤は、油性懸濁剤(oil suspension concentrate)とも呼ばれる。本発明の油性懸濁剤は、溶解形態の少量の活性物質A及び少量の活性物質Bを含むこともできる。溶解した活性物質Aの量は、原則として、製剤に存在する活性物質Aの総量に基づいて、20重量%、特に10重量%を超えない。溶解した活性物質Bの量は、原則として、製剤に存在する活性物質Bの総量に基づいて、10重量%、特に5重量%を超えない。懸濁粒子の粒径は、油性懸濁剤において典型的な範囲である。原則として、粒子は、0.5〜20μmの範囲、特に0.8〜10μmの範囲の平均粒子直径を有する。本明細書において特定される粒径は、特に指定のない限り、D50値であり、すなわち光散乱により決定され得る重量平均粒子直径である。好ましくは、少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%の粒子は、記述された範囲の粒径を有する。特に少なくとも90重量%の粒子は、20μm以下、特に10μm以下の粒子直径を有する。特に、少なくとも50重量%、特に80重量%の粒子は、8μm以下、さらには5μm以下の粒子直径を有する。
【0017】
本発明の製剤は、植物保護活性物質ジメトモルフを成分Aとして含む。ジメトモルフの量は、製剤の総重量に基づいて、典型的には1〜30重量%の範囲、特に1.5〜20重量%の範囲、とりわけ2〜10重量%の範囲である。
【0018】
本発明の製剤は、少なくとも一つの殺菌活性ジチオカルバメートを成分Bとして含む。殺菌活性ジチオカルバメートの例は、マンネブ、ジネブ、マンコゼブ、プロピネブ及びメチラム、並びにこれらの混合物であり、マンコゼブ及びメチラム、並びにこれらの混合物が好ましい。マンコゼブは、特に好ましい殺菌剤である。ジチオカルバメートの量は、製剤の総重量に基づいて、典型的には10〜50重量%の範囲、特に15〜45重量%の範囲、とりわけ20〜40重量%の範囲である。
【0019】
活性物質A:Bの重量比は、典型的には1:50〜1:1の範囲、特に1:20〜1:2の範囲、とりわけ1:10〜1:3の範囲である。
【0020】
上記の活性物質の他に、本発明の製剤は、更なる農業化学活性物質、特に殺菌剤を含むこともできる。一般に、製剤の総重量に基づいて、50重量%、特に30重量%、とりわけ10重量%を超えない。存在する場合、更なる農業化学活性物質の量は、0.1〜50重量%、特に0.5〜30重量%又は1〜20重量%である。好ましい実施形態において、製剤は、更なる活性物質を何も含まないか又は製剤の重量に基づいて5重量%以下若しくは活性物質Aと一つ以上の更なる活性物質のBの総量に基づいて10重量%以下を含む。
【0021】
活性物質A、B及び任意の更なる活性物質の総量は、原則として、本発明の製剤の総重量に基づいて、60重量%、特に50重量%を超えず、本発明の製剤の総重量に基づいて、典型的には11〜60重量%の範囲、特に17〜55重量%の範囲、とりわけ22〜50重量%の範囲である。
【0022】
好ましい更なる活性物質は、特に、
-ストロビルリン、例えば、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、オリサストロビン、メチル-(2-クロロ-5-[1-(3-メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル-(2-クロロ-5-[1-(6-メチルピリジン-2-イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバメート、メチル-2-(オルト-(2,5-ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)-3-メトキシアクリレートなど;
-スルホンアミド、例えばシアゾファミド及びアミスルブロムなど;
-フタルイミド、例えば、カプタン、カプタホール、ホルペット及びチオクロルフェンフィムなど;並びに
-キノン殺菌剤、例えば、クロラニル、ベンキノクス、ジチアノン及びジクロンなど
の群からの殺菌活性物質である。
【0023】
本発明の製剤は、成分Cとして、炭化水素及び植物油、脂肪酸エステル、特に脂肪酸アルキルエステル、並びにこれらの混合物のうちから選択される少なくとも一つの液体有機希釈剤を含む(炭化水素に関しては、例えばRompp Lexikon Chemie、第10版、第3巻、2202頁(1997)、Georg Thieme Verlag Stuttgart / New Yorkを参照されたい)。これらのうち、好ましい希釈剤及び希釈剤混合物は、標準状態(T=273.15K、p=101.325kPa)で液体であるものである。
【0024】
液体とは、希釈剤が、標準状態(標準圧p=101.325kPa)で、原則として、1Pa.s以下、好ましくは500mPa.s以下、例えば150mPa.s以下、特に100mPa.s以下、とりわけ50mPa.s以下、特に1〜150mPa.sの範囲、好ましくは2〜100mPa.sの範囲、特に3〜50mPa.sの範囲の20℃(293.15K)での動力学粘度を有する(ASTM D 445に指定されているように決定する)ことを意味する。
【0025】
炭化水素は、非環式(脂肪族)炭化水素、そうでなければ環式炭化水素、例えば芳香族又は脂環式(alicyclic)(環式脂肪族(cycloaliphatic))炭化水素であることができる。炭化水素は、典型的には液体であり、原則として、150mPa.s以下、特に100mPa.s以下、とりわけ50mPa.s以下の20℃での動力学粘度を有する。特に1〜150mPa.sの範囲、好ましくは1.2〜100mPa.sの範囲、特に1.5〜50mPa.sの範囲である(ASTM D 445に指定されているように決定する)。
【0026】
炭化水素の例は下記である:
1)芳香族炭化水素、例えば一つ以上のアルキル置換基で置換されている芳香族化合物(例えばC1〜C10アルキルで一、二又は三置換されている芳香族化合物、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼンなどのベンゼン類)、ナフタレンなどの縮合芳香族環系を有する炭化水素(例えば1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン若しくはジメチルナフタレン)、又はインダン若しくはテトラリンなどの他の縮合芳香族炭化水素、
2)脂環式炭化水素、例えば、シクロアルカン、シクロアルケン又はシクロアルキン、例えばシクロヘキサン又はメチルシクロペンタンなどの、一つ以上のアルキル置換基で場合により置換されている飽和又は不飽和脂環式化合物(例えばC1〜C10アルキルで一、二又は三置換されている脂環式化合物)、
3)脂肪族炭化水素、例えば直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和脂肪族化合物、好ましくはC5〜C16脂肪族化合物(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、2-メチルブタン又は2,2,4-トリメチルペンタンなどのアルカン、アルケン又はアルキン)。
【0027】
一つ以上の芳香族炭化水素及び/又は一つ以上の脂環式炭化水素及び/又は一つ以上の脂肪族炭化水素の混合物も、炭化水素として存在することができる。例は、複数の脂肪族炭化水素の混合物、例えばExxsoL(登録商標)Dシリーズ、ISOPAR(登録商標)シリーズ、特にIsopar(登録商標)H、Isopar(登録商標)K又はBAYOL(登録商標)シリーズ、例えばBayol(登録商標)85(EXXONMOBIL CHEMICALS)、ISANE(登録商標)IPシリーズ又はHYDROSEAL(登録商標)Gシリーズ(TOTAL FINA ELF)の市販の希釈剤、或いは芳香族及び脂肪族炭化水素の混合物、例えばSolvesso(登録商標)100、Solvesso(登録商標)150若しくはSolvesso(登録商標)200(EXXONMOBIL CHEMICALS)のSolvesso(登録商標)シリーズ、SOLVAREX(登録商標)/SOLVARO(登録商標)シリーズ(TOTAL FINA ELF)、又はCaromax(登録商標)シリーズ、例えばCaromax(登録商標)28(Petrochem Carless)の市販の希釈剤である。
【0028】
炭化水素のうち、脂肪族炭化水素が好ましく、特に、例えばExxsoL(登録商標)Dシリーズ、ISOPAR(登録商標)シリーズ、BAYOL(登録商標)シリーズ、ISANE(登録商標)IPシリーズ、MARCOL(登録商標)シリーズ又はHYDROSEAL(登録商標)Gシリーズ(TOTAL FINA ELF)の、C5〜C16アルカンなどの飽和脂肪族炭化水素である。
【0029】
適切な植物油は、一般に知られており、市販されている。本発明の意味の範囲内の植物油という用語は、例えば、ダイズ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、綿実油、アマニ油、ヤシ油、パーム油、ベニバナ油、クルミ油、ピーナッツ油、オリーブ油又はヒマシ油、特にトウモロコシ油などの油産生植物種からの油を意味することが理解される。
【0030】
好ましい植物油は、C10〜C22脂肪酸の液体トリグリセリド、特にダイズ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、綿実油、アマニ油、ヤシ油、パーム油、ベニバナ油、クルミ油、ピーナッツ油、オリーブ油又はヒマシ油(これら全て精製され得るか又は非精製であり得る)、特にトウモロコシ油などの油産生植物種からの油である。
【0031】
脂肪酸エステルのうちで適しているものは、植物油として記述されている上記のC10〜C22脂肪酸の天然(未変性)トリグリセリドの他に、特にグリセロール又はグリコールとC10〜C22脂肪酸とのジ及びトリエステル、特にC1〜C4アルキルエステル、とりわけC10〜C22脂肪酸のメチル又はエチルエステルでもある。脂肪酸エステルのうちで適しているものは、特にC1〜C4アルキル-C10〜C22脂肪酸エステル、特にC10〜C22脂肪酸のメチル又はエチルエステルであり、上記のグリセロール-又はグルコール-C10〜C22脂肪酸エステルとC1〜C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノール)とのエステル交換により得ることができる。エステル交換は、既知の方法により実施することができ、例えばRompp Chemie Lexikon、第9版、第2巻、1343頁、Thieme Verlag Stuttgartに記載されている。原則として、脂肪酸エステルは液体であり、原則として、150mPa.s以下、特に100mPa.s以下、とりわけ50mPa.s以下の20℃での動力学粘度を有する。特に1〜150mPa.sの範囲、好ましくは1.2〜100mPa.sの範囲、特に1.5〜50mPa.sの範囲である(ASTM D 445に指定されているように決定する)。
【0032】
好ましい希釈剤は、炭化水素であり、特に脂肪族炭化水素及び炭化水素(特に脂肪族炭化水素)の混合物であり、並びに炭化水素(特に脂肪族炭化水素)と植物油又は脂肪酸エステル(特にC1〜C4アルキル-C10〜C22脂肪酸エステル)との混合物である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、希釈剤における芳香族化合物の率は、希釈剤総量に基づいて1重量%未満である。
【0034】
製剤中の希釈剤の総量は、製剤の総重量に基づいて、典型的には20〜80重量%の範囲、特に30〜70重量%の範囲、とりわけ35〜60重量%の範囲である。
【0035】
好ましい実施形態において、有機希釈剤Cは、
C.1 20℃で10〜150mPa.s、特に12〜120mPa.s、とりわけ12〜60mPa.sの粘度を有する脂肪族炭化水素及び脂肪族炭化水素混合物、植物油、並びに脂肪酸エステルのうちから選択される少なくとも一つの第一有機希釈剤と、
C.2 炭化水素から、特に20℃で10mPa.s未満、例えば1〜<10mPa.s、特に1.5〜5mPa.sの粘度を有する脂肪族炭化水素及び脂肪族炭化水素混合物のうちから選択される少なくとも一つの第二有機希釈剤と
を含む混合物である。
【0036】
好ましい希釈剤C.1は、20℃で10〜150mPa.s、特に12〜120mPa.s、とりわけ12〜60mPa.sの粘度を有する流動パラフィンなどのパラフィン系炭化水素であり、例えばExxsoL(登録商標)D、BAYOL(登録商標)、lSANE(登録商標)IP、MARCOL(登録商標)又はHYDROSEAL(登録商標)Gの名称で市販されている。
【0037】
好ましい希釈剤C.2は、20℃で10mPa.s未満、典型的には0.4〜10mPa.s未満、例えば1〜<10mPa.s、より好ましくは1〜5mPa.s、特に1.5〜5mPa.sの粘度を有する流動パラフィンなどのイソパラフィン系炭化水素であり、例えばIsopar(登録商標)H、K、L及びMの名称で市販されている。
【0038】
希釈剤C.1及びC.2の混合物が用いられる場合、C.1とC.2の重量比は、典型的には1:2〜20:1の範囲、特に1:1〜10:1の範囲である。希釈剤C.1の量は、製剤の総重量に基づいて、典型的には15〜75重量%の範囲、特に20〜60重量%の範囲、とりわけ25〜50重量%の範囲である。製剤中の希釈剤C.2の量は、製剤の総重量に基づいて、典型的には1〜50重量%の範囲、特に4〜40重量%の範囲、とりわけ5〜25重量%の範囲である。
【0039】
本発明の植物保護製剤は、少なくとも一つの表面活性物質Dを更に含む。表面活性物質は、本明細書下記において界面活性剤とも呼ばれる。適切な表面活性物質は、原則的に、植物保護製品の製造に従来使用される全ての表面活性物質(界面活性剤)である。これらには、非芳香族化合物、例えば、オレフィン、脂肪族化合物、複素環又は脂環式化合物、例えば表面活性アルカン若しくはアルケノール又はアルカノール若しくはアルケノールの誘導体(例えばアルコキシル化、硫酸化、スルホン化又はリン酸化されたアルカノール又はアルケノール)、一つ以上のアルキル基で置換され、次に誘導体化される複素環式化合物、例えばアルコキシル化、硫酸化、スルホン化又はリン酸化複素環式化合物(例えばピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、ピロリジン、フラン、チオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール及びトリアゾール化合物)に基づいた界面活性剤ばかりでなく、芳香族化合物、例えば、一つ以上のアルキル基で置換され、次に誘導体化されるベンゼン又はフェノール、例えばアルコキシル化、硫酸化、スルホン化又はリン酸化されたベンゼン又はフェノールに基づいた界面活性剤も含まれる。
【0040】
適切な表面活性物質Dは、一般に、希釈剤相において可溶性であり、水で希釈されたとき、それに懸濁されている活性物質と一緒に後者を乳化又は分散する(噴霧混合物を与える)のに適している。
【0041】
表面活性物質Dの例は、本明細書下記に提示されている。本明細書下記において、EOは、エチレンオキシドから誘導される反復単位を表し、POは、プロピレンオキシドから誘導される反復単位を表し、BOは、ブチレンオキシドから誘導される反復単位を表す。非芳香族化合物に基づいた界面活性剤の群からの表面活性物質の例は、本明細書下記に記述される群d1)〜d23)の界面活性剤であり、好ましくは群d1)、d2)、d3)、d4)、d12)及びd17)、並びにこれらの混合物の界面活性剤である。
【0042】
d1)例えば1〜60個のアルキレンオキシド単位、好ましくは1〜60個のEO及び/又は1〜30個のPO及び/又は1〜15個のBOにより任意の順番でアルコキシル化され得る脂肪族C8〜C24アルコール。これらの化合物の末端ヒドロキシル基を、1〜24個、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアシル基で末端をキャップすることができる。そのような化合物の例は、以下のものである:ClariantのGenapol(登録商標)C、L、O、T、UD、UDD、X製品、BASF SEのLutensol(登録商標)A、AT、ON、TO製品、CondeaのMarlipal(登録商標)24及び013製品、HenkelのDehypon(登録商標)製品、Berol(登録商標)50及びEthylan(登録商標)CD 120などのAkzo-NobelのBerol(登録商標)製品及びEthylan(登録商標)製品;
d2)エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エーテルスルフェート及びエーテルホスフェートの形態のd1)に記載された製品のアニオン性誘導体、並びにClariantのGenapol(登録商標)LRO、Sandopan(登録商標)製品、Hostaphat/Hordaphos(登録商標)製品などのそれらの無機塩(例えば、アルカリ及びアルカリ土類金属塩)及び有機塩(例えば、アミン又はアルカノールアミン塩基)のアニオン性誘導体;
d3)EO、PO及び/又はBO単位からなるコポリマー、特に、分子量400〜106ダルトンを有する、BASF SEのPluronic(登録商標)製品及びUniquemaのSynperonic(登録商標)製品などのEO/POブロックコポリマー、並びにUniquemaのAtlox(登録商標)5000又はClariantのHoe(登録商標)-S3510などのC1〜C9アルコールのアルキレンオキシド付加物;
d4)CondeaのSerdox(登録商標)NOG製品などの脂肪酸アルコキシレート及びトリグリセリドアルコキシレート、並びにダイズ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、綿実油、アマニ油、ヤシ油、パーム油、ベニバナ油、クルミ油、ピーナッツ油、オリーブ油又はヒマシ油、特にナタネ油などのアルコキシル化植物油、例えばClariantのEmulsogen(登録商標)製品;
d5)脂肪族、脂環式又はオレフィン性カルボン酸及びポリカルボン酸の塩、並びにHenkelから入手可能なアルファ-スルホ-脂肪酸エステル;
d6)HenkelのComperlan(登録商標)製品又はRhodiaのAmam(登録商標)製品などの脂肪酸アミドアルコキシレート;
d7)Air ProductsのSurfynol(登録商標)製品などのアルキンジオールのアルキレンオキシド付加物。Clariantのアミノ及びアミド糖などの糖誘導体。Clariantのグルシトール、HenkelのAPG(登録商標)製品の形態のアルキルポリグルコシド又は例えばUniquemaのSpan(登録商標)若しくはTween(登録商標)製品の形態のソルビタンエステル又はWackerのシクロデキストリンエステル若しくはエーテル;
d8)ClariantのTylose(登録商標)製品、KelcoのManutex(登録商標)製品及びCesalpinaのグアー誘導体などの、表面活性セルロース誘導体、アルギン誘導体、ペクチン誘導体及びグアー誘導体;
d9)ClariantのPolyglykol(登録商標)製品などの、ポリオールに基づいたアルキレンオキシド付加物;
d10)Clariantの表面活性ポリグリセリド及びそれらの誘導体;
d11)アルキルポリグルコシド及びそれらのアルコキシル化誘導体;
d12)Clariantの Netzer IS(登録商標)、Hoe(登録商標)S1728、Hostapur(登録商標)OS、Hostapur(登録商標)SASなどの、スルホスクシネート、アルカンスルホネート、パラフィンスルホネート及びオレフィンスルホネート;
d13)脂肪アミンのアルキレンオキシド付加物;
d14)例えばClariantのGenamin(登録商標)C、L、O、T製品などの、8〜22個の炭素原子(C8〜C22)を有する第四級アンモニウム化合物;
d15)GoldschmidtのTegotain(登録商標)製品、ClariantのHostapon(登録商標)T及びArkopon(登録商標)T製品の形態の、タウリド、ベタイン及びスルホベタインなどの表面活性双性イオン性化合物;
d16)GoldschmidtのTegopren(登録商標)製品及びWackerのSE(登録商標)製品、並びにRhodiaのBevaloid(登録商標)、Rhodorsil(登録商標)及びSilcolapse(登録商標)製品(Dow Corning、Reliance、GE、Bayer)などの、シリコーン又はシランに基づいた表面活性化合物;
d17)ClariantのFluowet(登録商標)製品、BayerのBayowet(登録商標)製品、DuPontのZonyl(登録商標)製品、並びにDaikin及びAsahi Glassのこの種類の製品などの、ペルフルオロ化又はポリフルオロ化表面活性化合物;
d18)表面活性スルホンアミド、例えばBayerからのもの;
d19)カルボキシレート基を有する表面活性ポリマー、例えば、BASFのSokalan(登録商標)製品などの、場合によりポリエチレンオキシド側鎖を有するポリアクリル酸及びポリメタクリル酸ポリマー、無水マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の反応生成物に基づいたポリマー、並びにISPのAgrimer(登録商標)-VEMA製品などの、ポリエチレングリコールとの無水マレイン酸-及び/若しくは無水マレイン酸反応生成物含有コポリマー、Bayerの修飾ゼラチン又は誘導体化ポリアスパラギン酸などの表面活性ポリアミド、並びにこれらの誘導体;
d21)BASFのLuviskol(登録商標)製品及びISPのAgrimer(登録商標)製品などの修飾ポリビニルピロリドン又はClariantのMowilith(登録商標)製品などの誘導体化ポリビニルアセテート又はBASFのLutonal(登録商標)製品、WackerのVinnapas(登録商標)及びPioloform(登録商標)製品などの誘導体化ポリビニルブチレート又はClariantのMowiol(登録商標)製品などの修飾ポリビニルアルコール、並びにClariantのHoechst(登録商標)ロウ若しくはLicowet(登録商標)製品などのモンタンロウ、ポリエチレンロウ及びポリプロピレンロウの表面活性誘導体などの、中性界面活性ポリビニル化合物:
d22)ClariantのFluowet(登録商標)-PLなどの、ポリハロゲン化又はペルハロゲン化ホスホネート及びホスフィネート;
d23)ClariantのEmulsogen(登録商標)-1557などのポリハロゲン化又はペルハロゲン化中性界面活性剤。
【0043】
芳香族化合物に基づいた界面活性剤の群からの表面活性物質の例は、本明細書下記に記述される群d24)〜d28)、好ましくは群d24)、d26)、d27)及びd28)の界面活性剤である。
【0044】
d24)(ポリ)アルコキシル化、特にポリエトキシル化芳香族化合物、例えば(ポリ)アルコキシル化フェノール[=フェノール(ポリ)アルキレングリコールエーテル](例えば(ポリ)アルキレンオキシ部分に1〜50個のアルキレンオキシ単位を有し、アルキレン部分が好ましくはそれぞれの場合に2〜4個のC原子を有し、好ましくはフェノールが3〜10molのアルキレンオキシドと反応する)、又は(ポリ)アルキルフェノールアルコキシレート[=ポリアルキルフェノール(ポリ)アルキレングリコールエーテル](例えばアルキル基一つ当たり1〜12個のC原子及びポリアルキレンオキシ部分に1〜150個のアルキレンオキシ単位を有し、好ましくはトリ-n-ブチルフェノール若しくはトリイソブチルフェノールが1〜50molのエチレンオキシドと反応する)、又はポリアリールフェノール若しくはポリアリールフェノールアルコキシレート[=ポリアリールフェノール(ポリ)アルキレングリコールエーテル](例えばポリアルキレンオキシ部分に1〜150個のアルキレンオキシ単位を有し、好ましくはトリスチリルフェノールが1〜50molのエチレンオキシドと反応するトリスチリルフェノールポリアルキレングルコールエーテル)、並びにホルムアルデヒドとのこれらの縮合物-これらのうちで好ましいものは、例えばAgrisol(登録商標)製品(Akcros)の形態で市販されている、アルキルフェノールが4〜10molのエチレンオキシドと反応したもの、例えばSapogenat(登録商標)T製品(Clariant)の形態で市販されている、トリイソブチルフェノールが4〜50molのエチレンオキシドと反応したもの、例えばArkopal(登録商標)製品(Clariant)の形態で市販されている、ノニルフェノールが4〜50molのエチレンオキシドと反応したもの、例えばSoprophor(登録商標)FL、Soprophor(登録商標)3D33、Soprophor(登録商標)BSU、Soprophor(登録商標)4D-384、Soprophor(登録商標)CY/8(Rhodia)などのSoprophor(登録商標)シリーズの、トリスチリルフェノールが4〜150molのエチレンオキシドと反応したもの;
d25)形式的には、d24)に記載された分子と硫酸又はリン酸との反応生成物である化合物及び適切な塩基で中和されたそれらの塩、例えば2〜10molのエチレンオキシドでエトキシル化されたC1〜C16アルキルフェノールの酸性リン酸エステル、例えば3mol又は9molのエチレンオキシドと反応したノニルフェノールの酸性リン酸エステル、及び20molのエチレンオキシドと1molのトリスチリルフェノールの反応生成物のトリエタノールアミン中和リン酸エステル;
d26)アルキル-又はアリールベンゼンスルホネートなどのベンゼンスルホネート、例えば、適切な塩基により中和されている酸性(ポリ)アルキル-及び(ポリ)アリールベンゼンスルホネート(例えばアルキル基一つ当たり1〜12個のC原子を有するか又はポリアリール基の三つ以下のスチレン単位を有するもの)、好ましくは(直鎖)ドデシルベンゼンスルホン酸及び例えばアルカリ土類金属塩などのその油溶性塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸のカルシウム塩)、ドデシルベンゼンスルホン酸のイソプロピルアンモニウム塩、並びに例えばMarlon(登録商標)製品(Huls)の形態で市販されている酸性(直鎖)ドデシルベンゼンスルホネート;
d27)リグノスルホネート、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属リグノスルホネート(ナトリウムリグノスルホネート若しくはカルシウムリグノスルホネートなど)、又はUfoxane(登録商標)3A、Borresperse AM(登録商標)320若しくはBorresperse(登録商標)NAなどのアンモニウムリグノスルホネート;
d28)フェノールスルホン酸又はナフタレンスルホン酸などのアリールスルホン酸とホルムアルデヒド及び場合により尿素との縮合物、特にこれらの塩、とりわけアルカリ金属塩及びカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩(例えばWettol(登録商標)D1などのBASF SEのTamol(登録商標)及びWettol(登録商標)ブランド)。
【0045】
エチレンオキシ、プロピレンオキシ及びブチレンオキシ単位、特にエチレンオキシ単位及びエチレンオキシ単位とプロピレンオキシ単位の混合物がアルキレンオキシ単位のうちで好ましい。
【0046】
好ましい非イオン性表面活性物質D.2は、d1)に記述された物質であり、特に群d4)に記述された生成物であるアルコキシル化C8〜C24アルカノール、特に群d24)に記述された生成物であるアルコキシル化植物油、特にエトキシル化アルキルフェノール及びエトキシル化トリスチリルフェノールである。
【0047】
本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、非イオン性表面活性物質は、少なくとも一つのアルコキシル化脂肪族C8〜C24アルコール、好ましくは少なくとも一つのアルコキシル化脂肪族C8〜C24アルカノール、特に少なくとも一つのエトキシル化及び/又はプロポキシル化C10〜C20アルカノール、とりわけ少なくとも一つのエトキシル化及び/又はプロポキシル化C12〜C16アルカノール、特に、式I:
Alk-O-(A-O)m-R (I)
[式中、
Alkは、8〜24個、特に10〜20個のC原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は8〜24個、特に10〜20個のC原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルケニル基であり、
基(A-O)mのAは、同一又は異なっていることができ、エタンジイル、プロパンジイル又はブタンジイル、特にエタン-1,2-ジイル又はエタンジイルとプロパン-1,2-ジイルの組み合わせであり、
mは、2〜50、特に3〜30、とりわけ好ましくは4〜20であり、
Rは、水素又はC1〜C10アルキル、特に水素又はとりわけ好ましくはC1〜C6アルキル、とりわけ水素、メチル又はエチルである]
の少なくとも一つのアルコキシル化C8〜C24アルカノールを含む。
【0048】
本発明の別のとりわけ好ましい実施形態によると、非イオン性表面活性物質は、少なくとも一つのアルコキシル化トリスチリルフェノール、特に少なくとも一つのエトキシル化及び/又はプロポキシル化トリスチリルフェノール、とりわけ少なくとも一つのエトキシル化トリスチリルフェノール、特に、式I′:
TST-O-(A-O)m-R (I′)
[式中、
TSTは、トリスチリル基であり、
基(A-O)mのAは、同一又は異なっていることができ、エタンジイル、プロパンジイル又はブタンジイル、特にエタン-1,2-ジイル又はエタンジイルとプロパン-1,2-ジイルの組合せであり、
mは、2〜50、特に3〜30、とりわけ好ましくは4〜20であり、
Rは、水素又はC1〜C10アルキル、特に水素又はとりわけ好ましくはC1〜C6アルキル、とりわけ水素、メチル又はエチルである]
の少なくとも一つのアルコキシル化トリスチリルフェノールを含む。
【0049】
好ましいアニオン性表面活性物質D.1は、群d26)に記述されている、好ましくは8〜22個のC原子を有するアルキルベンゼンスルホネート(特にそれらのアルカリ金属塩及びカルシウム塩)、群d27)に記述されているリグノスルホネート(特にそれらのアルカリ金属塩及びカルシウム塩)、並びに群d28)に記述されている縮合物(特にそれらのアンモニウム塩(NH4+)、アルカリ金属塩及びカルシウム塩)である。
【0050】
製剤中の表面活性物質Dの総量は、製剤の総重量に基づいて、典型的には1〜50重量%の範囲、特に2〜30重量%の範囲、とりわけ5〜25重量%の範囲である。
【0051】
好ましい実施形態によると、本発明の製剤は、少なくとも一つのアニオン性表面活性物質D.1、特に、群d26)、d27)及びd28)に記述された物質のうちから選択される少なくとも一つのアニオン性表面活性物質(特にそれらのアンモニウム塩(NH4+)、アルカリ金属塩及びカルシウム塩)を含む。本発明の特定の実施形態によると、アニオン性表面活性物質は、特にアルカリ金属塩の形態の、少なくとも一つのリグノスルホネートを含む。本発明の別の特定の実施形態によると、アニオン性表面活性物質は、特にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態の、少なくとも一つのアルキルベンゼンスルホネート(例えばカルシウムドデシルベンゼンスルホネート)を含む。
【0052】
製剤中のアニオン性表面活性物質D.1の総量は、製剤の総重量に基づいて、典型的には0.5〜20重量%の範囲、特に1〜15重量%の範囲、とりわけ2〜10重量%の範囲である。
【0053】
とりわけ好ましい実施形態によると、本発明の製剤は、少なくとも一つのアニオン性表面活性物質D.1の他に、追加的に少なくとも一つの非イオン性表面活性物質D.2を含む。好ましい更なる非イオン性表面活性物質は、d1)に記述された物質であり、特に群d4)に記述された生成物であるアルコキシル化C8〜C24アルカノール、特に群d24)に記述された生成物であるアルコキシル化植物油、特にエトキシル化フェノールである。本発明のとりわけ好ましい実施形態によると、少なくとも一つの更なる非イオン性表面活性物質は、少なくとも一つのアルコキシル化脂肪族C8〜C24アルカノール、特に少なくとも一つのエトキシル化及び/又はプロポキシル化C10〜C20アルカノール、とりわけ少なくとも一つのエトキシル化及び/又はプロポキシル化C12〜C16アルカノール、特に上記で定義された式Iの少なくとも一つのアルコキシル化C8〜C24アルカノール、特にAlk、A、R及びmが好ましいものとして又はとりわけ好ましいものとして上記に提示された意味を有する式Iの物質を含む。本発明の別のとりわけ好ましい実施形態によると、少なくとも一つの更なる非イオン性表面活性物質は、少なくとも一つのアルコキシル化トリスチリルフェノール、特に少なくとも一つのエトキシル化及び/又はプロポキシル化トリスチリルフェノール、特に上記で定義された式I′の少なくとも一つのアルコキシル化トリスチリルフェノール、特にTST、A、R及びmが好ましいものとして又はとりわけ好ましいものとして上記に提示された意味を有する式I′の物質を含む。
【0054】
別の好ましい実施形態によると、本発明の製剤は、表面活性物質として、少なくとも二つ、特に二又は三つの、互いに異なる非イオン性表面活性物質D.2の混合物を含む。この場合、少なくとも二つの互いに異なる表面活性物質D.2は、低いHLB値を有する少なくとも一つの第一非イオン性表面活性物質D.2.1及びより高いHLB値を有する少なくとも一つの表面活性物質D.2.2を含む。用語「HLB値」(親水性-親油性バランスに由来する)は、表面活性物質の親水性又は親油性の程度の尺度である。ここ及び本明細書の下記において、HLB値は、Griffin (W. C. Griffin, J. Soc. Cosmet. Chem 第1巻, (1950) p. 311; 同誌、第5巻 (1954), p. 249)により定義されたHLB値を意味することが理解される。非イオン性表面活性物質の場合、特に非イオン性エトキシレートの場合、HLB値は、以下の式:
HLB=20*(MH/M)+C
を使用して計算され、
式中、MHは、親水性分子(オリゴエチレンオキシド基)のモル質量であり、Mは、表面活性物質のモル質量であり、Cは、修正係数であり、脂肪族アルキルエトキシレートの場合は、-1.2であり、芳香族アルキルエトキシレートの場合は、-1.9(一つのアルキル基)又は-4.4(二つのアルキル基)である。非イオン性表面活性物質のHLB値及び修正係数Cは知られている(例えば、H. Molletら, Formulation Technology, Wiley VCH, Weinheim 2001, p. 70-78を参照されたい)。更に、HLB値は、当業者に周知の式を介して、そうでなければ実験を介して決定することができる(H. Mollet、前掲箇所を参照されたい)。
【0055】
非イオン性表面活性物質D.2.1のHLB値は、原則として、12以下、特に11以下、とりわけ10以下の量であり、例えば4〜12の範囲、多くの場合5〜11の範囲、とりわけ6〜10の範囲である。非イオン性表面活性物質D.2.2のHLB値は、原則として、12超、特に少なくとも13、とりわけ少なくとも14の量であり、例えば12.5〜18の範囲、多くの場合13〜17.5の範囲、とりわけ13.5〜17の範囲である。
【0056】
12以下のHLB値を有する非イオン性表面活性物質D.2.1は、12以下、特に4〜12又は5〜11又は6〜10のHLB値を有する全ての上記の非イオン性表面活性物質のうちから選択することができる。適切な表面活性物質D.2.1は、特にC2〜C3アルコキシル化C8〜C22アルキルフェノール、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、C2〜C3アルコキシル化モノ-、ジ-又はトリスチリルフェニルエーテル及びmが2〜12の範囲であり、Aがそれぞれの場合に独立してエタン-1.2-ジイル又はプロパン-1,2-ジイルであり、Alkが直鎖又は分枝鎖のC8〜C24アルキル又はC8〜C24アルケニルであり、RがH又はC1〜C10アルキルである式Iの化合物を含む。
【0057】
とりわけ好ましい非イオン性表面活性物質D.2.1は、直鎖又は分枝鎖C8〜C22アルカノールのエトキシレート及びエトキシレート/コ-プロポキシレートのうちから選択される式Iのものである。そのような好ましい表面活性物質の例は、Berol(登録商標)50、Berol(登録商標)532、Berol(登録商標)533、Berol(登録商標)535、Berol(登録商標)OX 91-4(Akzo); Lutensol(登録商標)TO3、Lutensol(登録商標)TO5及びLutensol(登録商標)TO7(BASF SE)の商品名で市販されている直鎖又は分枝鎖C8〜22アルコールのエトキシレート、並びにPlurafac(登録商標)LF 221、Plurafac(登録商標)LF 300、Plurafac(登録商標)LF 401及びPlurafac(登録商標)LF 1200(BASF)の商品名で市販されている脂肪アルコールのエトキシレート/コ-プロポキシレートである。
【0058】
12を超えるHLB値を有する非イオン性表面活性物質D.2.2は、12を超える、特に12.5〜18、又は13〜17.5若しくは13.5〜17のHLB値を有する全ての上記の非イオン性表面活性物質のうちから選択することができる。適切な表面活性物質D.2.2は、特に、10〜50の範囲のエトキシル化度を有するエトキシル化C8〜C22アルキルフェノール、mが8〜50、特に10〜40の範囲であり、Aがそれぞれ互いに独立してエタン-1.2-ジイルであり、Alkが直鎖又は分枝鎖のC8〜C24アルキル若しくはC8〜C24アルケニルであり、Rが水素である式Iの化合物、並びにエトキシル化トリスチリルフェノール(特にmが10〜50、特に12〜40の範囲の数であり、Rが水素であり、Aがエタン-1,2-ジイルである式I′のもの)を含む。
【0059】
そのような好ましい表面活性物質の例は、Soprophor(登録商標)(Rhodia)、特にSoprophor(登録商標)BSU、Soprophor(登録商標)S25及びSoprophor(登録商標)S40の商品名で市販されているトリスチリルフェノールのエトキシレート、並びにLutensol(登録商標)(BASF)、特にLutensol(登録商標)TO10、Lutensol(登録商標)TO15の商品名で市販されている分枝鎖C10〜C22アルコールのエトキシレートである。
【0060】
上記の表面活性物質は、当業者に知られており、市販されている。概説は、例えば、McCutcheonの「Detergents and Emulsifiers Annual」、MC Publ. Corp.、Ridgewood N.J.; Sisley及びWood、「Encyclopedia of Surface active Agents」、Chem. Publ.Co.Inc, N.Y. 1964; Schonfeldt、「Grenzflachenaktive Athylenoxidaddukte」[Interface-active ethylene oxide adducts]、Wiss. Verlagsgesellschaft、Stuttgart 1976; Winnacker-Kuchler、「Chemische Technologie」[Chemical technology]、第7巻、C. Hauser-Verlag、Munich、第4版、1986において見出すことができる。
【0061】
製剤中の非イオン性表面活性物質の総量は、存在する場合、製剤の総重量に基づいて、典型的には0.5〜30重量%の範囲、特に1〜20重量%の範囲、とりわけ5〜15重量%の範囲である。そのような製剤におけるアニオン性表面活性物質と非イオン性表面活性物質の重量比は、典型的には10:1〜1:10の範囲、特に5:1〜1:5の範囲である。
【0062】
本発明の組成物は、更なる成分Eとして、一般に増粘剤とも呼ばれる、製剤のレオロジー特性を改変させる一つ以上の物質を含むことができる。これらには、少量が使用される場合でも、製剤のレオロジー特性、換言すると粘度を増加させることが知られている全ての物質が含まれる。これらには、特に、油の粘度を増加させる全ての物質、とりわけ植物保護製剤に適しているものが含まれる。
【0063】
成分Eに適した物質の例は、下記である:
e1)化学的に改質されたベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、スメクタイトなどの天然ケイ酸塩及び改質天然ケイ酸塩又はBentone(登録商標)(Elementis)、Attagel(登録商標)(Engelhard)、Agsorb(登録商標)(Oil-Dri Corporation)若しくはHectorite(登録商標)(Akzo Nobel)、好ましくはBentone(登録商標)などの他のケイ酸塩鉱物、
e2)合成ケイ酸塩又はケイ酸、特に、Sipernat(登録商標)、Aerosil(登録商標)又はDurosil(登録商標)シリーズ(Degussa)、 CAB-O-S I L(登録商標)シリーズ(Cabot)又はVan Gelシリーズ(RT. Vanderbilt)の高分散ケイ酸塩及びケイ酸、
e3)有機増粘剤、例えばThixin(登録商標)又はThixatrol(登録商標)シリーズ(Elementis)の増粘剤などの水素化脂肪酸及び脂肪酸誘導体に基づいたもの、並びに合成ポリマーに基づいた増粘剤、例えばポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアミド増粘剤、ポリウレタン増粘剤、キサンタンガム(例えばRhodopol(登録商標)(Rhodia)及びKelzan(登録商標)S(Kelco Corp.)の名称で販売されている製品)。
【0064】
好ましい増粘剤は、天然又は合成ケイ酸塩及びケイ酸に基づいたものであり、例えば群e1)及びe2)に記述された物質である。
【0065】
製剤中の成分Eの物質の総量は、存在する場合、製剤の総重量に基づいて、典型的には0.1〜10重量%の範囲、特に0.2〜8重量%の範囲、とりわけ0.3〜5重量%の範囲である。
【0066】
上記の成分A〜Eの他に、本発明の製剤は、植物保護製剤に従来用いられている更なる慣用の添加剤Fを含むこともできる。これらには、抗飛散剤、固着剤、浸透剤、防腐剤、並びに不凍剤、抗酸化剤、着色剤、芳香族物質及び消泡剤が含まれる。そのような補助剤の量は、典型的には製剤の10重量%を超えない。
【0067】
適切な不凍剤は、尿素、ジオール及びポリオール(エチレングリコール及びプロピレングリコールなど)の群からのものである。適切な消泡剤は、シリコーンに基づいたものである。適切な防腐剤、着色剤及び香料は、当業者に知られており、例えば、表面活性物質に関連する上記の文献からのもの、及びWatkins、「Handbook of Insecticide Dust Diluents and Carriers」、第2版、Darland Books、Caldwell N.J.、H.v. Olphen、「Introduction to Clay Colloid Chemistry」;第2版、J. Wiley & Sons、N.Y.; C. Marsden、「Solvents Guide」;第2版、Interscience、N.Y. 1963からのものである。
【0068】
本発明の油性懸濁剤(oil suspension concentrate)は、油性懸濁剤の調製のためのそれ自体既知の方法により、例えば成分A〜E及び場合によりFを混合することにより調製することができる。したがって、例えば、成分Cを最初に導入し、更なる成分A、B、D、E、場合によりCの残りの量、そして場合によりFを加えることが可能である。場合により、Cを、残りの成分を加える前に増粘剤と混合することもできる。得られた油懸濁液を、続いて、場合により予備混練の後に微細混練に付すことができる。
【0069】
場合により加熱され得る慣用の混合装置を、混合物の調製に使用することができる。例えば、予備混練工程では、例えばIKAのUltraturaxホモジナイザー又は例えばPuckの歯付きコロイドミルなどの回転子-固定子の原理で稼働する高圧ホモジナイザー又はミルを使用することが可能である。例えば、微細粉砕工程に使用することができる装置は、例えばDraisのバッチ様式稼働ビーズミル、又は例えばBachofenの連続稼働ビーズミルであることができる。用いられる成分の特性、並びにプロセス工学面、安全面及び経済的な理由に応じて、調製プロセスを適合させることができ、場合により、前粉砕工程、そうでなければ微細粉砕工程を省くことができる。
【0070】
調製に用いられる成分A〜E及び場合によりFは、第二成分として水を含むことができ、これは本発明の油性懸濁剤中に回収される。したがって、本発明の油性懸濁剤は、少量の水(製剤の総重量に基づいて、一般に5重量%以下、特に1重量%以下)を含むことができる。
【0071】
使用される場合、本発明の製剤は、経済的に有意に有害な広範囲の菌類、特に卵菌類に対して顕著な殺菌活性を有する。したがって本発明は、更に、特に作物に対する有害な菌類を防除するための本発明の製剤の使用に関する。
【0072】
上記の特性及び利点は、農作物、とりわけブドウの木及び果実、並びに野菜(例えばジャガイモ、トマト、鱗茎菜類(ニラネギ、ネギ及びタマネギなど)、多様な種類のレタス;マメ、ハツカダイコン及びダイコン;キュウリ;野菜の幼植物体など)及び観賞植物を、菌類の攻撃から、特にツユカビ(Peronospora)、プッシニア(Puccinia)、プラスモパラ(Plasmopara)及び/又はフィトフトラ(Phytophtora)種による攻撃から保護するため、菌防除の実施に有用であり、菌感染の低減を達成するため及び/又は菌感染の増加を防止するため、病害植物を処置するのに有用である。この方法によって、収穫量を品質及び量の観点から保証及び/又は増加させることができる。本発明の製剤は、野外での使用及び温室での使用の両方に適している。記載された特性に関して、これらの新規組成物は従来技術より著しく優っている。
【0073】
本発明は、また、特に作物に有害な菌類を防除する方法であって、好ましくは水性希釈液の形態の本発明の植物保護製剤を施用することを含む前記方法に関する。
【0074】
使用時には、本発明の製剤は、場合により、慣用的な方法、例えば水により希釈され、それによって、水性乳剤又はサスポエマルジョン(suspoemulsion)が得られる。得られた噴霧混合物に、更なる農業化学活性物質(例えば、適切な製剤の形態のタンクミックス成分)並びに/又は従来使用されている助剤及び添加剤(例えば植物油又は流動パラフィンなどの自己乳化油及び/若しくは肥料)を加えることが有利であり得る。したがって本発明は、また、本発明の製剤を希釈することによって得られる、そのような液体殺菌組成物に関する。
【0075】
以下の実施例は、制限する性質を有することなく、本発明を説明することを意図する。
【実施例】
【0076】
-アニオン性表面活性物質AOS1(群d27)):ナトリウムリグノスルホネート(Ufoxane(登録商標)3A)。
【0077】
-アニオン性表面活性物質AOS2(群d28)):カルシウムドデシルスルホネート(Wettol(登録商標)EM1)。
【0078】
-アニオン性表面活性物質AOS3(群d12)):ジオクチルスルホスクシネートナトリウム塩。
【0079】
-非イオン性表面活性物質NOS1(群d1)):6個のエチレンオキシド(EO)単位を有し、メチルで末端をキャップされているイソトリデシルアルコール(Genapol(登録商標)X060メチルエーテル、Clariant)。
【0080】
-非イオン性表面活性物質NOS2(群d1)):3個のEO単位、HLB値8.0を有するC12〜16アルコール。
【0081】
-非イオン性表面活性物質NOS3(群d1)):7個のEO単位、HLB値11〜12を有するC13アルコール。
【0082】
-非イオン性表面活性物質NOS4(群d1)):7個のEO単位、HLB値13を有するC10アルコール。
【0083】
-非イオン性表面活性物質NOS5(群d24)):16個のEO単位を有するトリスチリルフェノールオリゴエトキシレート(Soprophor(登録商標)BSU, Rhodia)。
【0084】
-非イオン性表面活性物質NOS6(群d1)):10個のEO単位、HLB値13.5を有するC13アルコール。
【0085】
-非イオン性表面活性物質NOS7(群d1)):脂肪アルコールアルコキシレート(BASF SEのPLURAFAC(登録商標)LF 221)。
【0086】
-非イオン性表面活性物質NOS8(群d1)):15個のEO単位、HLB値15.5を有するC13アルコール。
【0087】
-消泡剤:シリコーン油(Rhodorsil(登録商標)416, Clariant)。
【0088】
-希釈剤1:25℃で<2mPa.sの粘度を有するイソパラフィン系炭化水素(Isopar(登録商標)H, Exxon)。
【0089】
-希釈剤2:20℃で27〜37mPa.sの粘度を有する流動パラフィン(Bayol(登録商標)85, Exxon)。
【0090】
-希釈剤3:ナタネ油。
【0091】
-希釈剤4:メチルオレエート。
【0092】
[実施例1]
37.3gの希釈剤1を、受容容器に導入し、5.1gのジメトモルフを加えた。Ultra-Turax(登録商標)で混合した後、懸濁液をDynomill(登録商標)ミルを用いて、およそ3000分-1の速度及び25〜30℃の出口温度で混練した。その後、8.5gの非イオン性表面活性物質1及び8.5gの希釈剤2を、Ultra-Turax(登録商標)を使用して導入した。並行して、85重量%のマンコゼブ及び15重量%のUfoxane(登録商標)3Aからなるマンコゼブプレミックスを調製し、一定分量(40.2g)を油懸濁液の中に入れて撹拌した。その後、Rhodorsil(登録商標)416を、撹拌しながら加えた。混練した後、油性懸濁剤を更に20分間撹拌し、次に包装した。
【0093】
製剤は、以下の組成を有した:5.1%のジメトモルフ、b)34.2%のマンコゼブ、c)37.3重量%の希釈剤1、c)8.5重量%の希釈剤2、d)6重量%のAOS1、d)8.5重量%のNOS1、f)0.4重量%のRhodorsil 416。
【0094】
[実施例2]
油性懸濁剤を実施例1と同様に調製したが、希釈剤1の代わりに37.3gのトウモロコシ油を用いた。
【0095】
[実施例3〜9]
実施例3〜9の油性懸濁剤を実施例1と同様に調製した。製剤の成分を本明細書下記の表1に詳述する。
【表1】

【0096】
適用試験:接触角の測定:
本発明の実施例1の油性懸濁剤を、確定された水の硬度(CIPAC標準水D(342ppm))を有する水で希釈して、使用濃度(97gの水中3gの油性懸濁剤)にし、次に一滴をパラフィンフィルムに適用した。並行して、懸濁液も、顆粒水和剤(98gのCIPAC標準水D中2gの顆粒剤(9%のジメトモルフ+60%のマンコゼブ+3%のナトリウムアルキルスルホネート: BASF SEのAcrobat(登録商標)Plus))により調製し、次に一滴をパラフィンフィルムに適用した。二つの液滴の接触角を、顕微鏡によって決定し、互いに比較した。顆粒水和剤に基づいた懸濁液の接触角は、純水の接触角(=90°超)に匹敵する。希釈油懸濁液の接触角は、僅かに35°であったので、著しく良好な湿潤を示す。
【0097】
化学安定性の決定:
実施例1及び2の油性懸濁剤の化学安定性は、個別の試料を40℃で4〜8週間にわたって保存し、更なる実験において、40℃で4週間、次に50℃で4週間保存することによって決定した。保存試料を、研究の初め及び保存後に、ETU含有量(ETU=エチレンチオ尿素(ジチオカルバメートの毒性分解産物);0.05%テトラヒドロフランを有する溶出水のHPLCにより決定される)について分析した。4〜8週間保存した後、ETU含有量を再び測定した。ここでは、上記の保存温度のいずれにおける保存後であっても、ETU含有量の増加は観察されなかった。全ての場合において、ETU含有量は、0.05重量%未満であった。
【0098】
生物学的実験:
生物学的実験を、保護及び治癒条件下でトマト及びブドウの木で実施した。ここでは、とりわけこれらの条件下では、ジメトモルフは油と組み合わせて良好に作用する傾向があることが明らかになった。
【0099】
したがって、野外での病原体プラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)によるパトリシアのブドウの木の葉面攻撃の研究により、市販の顆粒水和剤を、最後の施用(350〜400l/haの水をそれぞれ7日の間隔で合計4回の施用時)の5日後に、1380g/ha(180g/haのジメトモルフ及び1200g/haのマンコゼブ)の総施用率で使用したとき、18%の病害レベルが明らかになった。実施例1の油性懸濁剤を同じ総施用率及び同じ日数で使用したとき、病害レベルは13%であった。
【0100】
実施例1の油性懸濁剤を、畑に人工的に接種したフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)により引き起こされるジャガイモの葉枯れ病に対する活性について研究した。
【0101】
実験は、Rheinland-Pfalzにおいて、十分な水及び養分が供給される条件の畑の二か所で実施した。両方の実験において、ジャガイモの品種「Bintje」を使用した。製剤を特定の濃度により17日及び9日の間隔で3日間施用した。最初の処置の2日前に、病原体の人工的な感染を実施した。施用日には、植物は33〜69の成長段階であった。この研究により、第三処置の7日後に1040g/ha及び1380g/haの総施用率の実施例1の油性懸濁剤で処置した植物が、4%の病害レベルを示し、一方、同じ日数及び同じ施用率で、顆粒水和剤で処置が実施された場合は、病害率が10%であったことを示した。
【0102】
実施例3〜9の製剤を、予防的及び治癒的処置による、フィトフトラ・インフェスタンスにより引き起こされるトマトの葉枯れ病に対する活性について研究した。
【0103】
鉢植えトマト植物体の葉に、記載された活性物質濃度の実施例の製剤の水性希釈液を、流れ落ちるまで噴霧した。予防処置では、葉に、フィトフトラ・インフェスタンスの胞子嚢水性懸濁液を処置の7日後に接種した。治癒処置では、植物に、活性物質の施用の1日前に接種した。その後、植物を、18〜20℃の温度で100%大気湿度を有するチャンバーに入れた。5日後、未処置であるが感染した対照植物の葉枯れ病は、病害レベルを%で目視により決定することが可能な程度まで進行した。結果を表2a及び2bにまとめる。
【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質として、
-活性物質Aとしてジメトモルフと、
-ジチオカルバメートの群からの少なくとも一つの活性物質Bと
を含み、炭化水素、植物油、脂肪酸エステル及びこれらの混合物のうちから選択される液体有機希釈剤Cにおいて活性物質A及びBの油性懸濁剤として製剤され、少なくとも一つの表面活性物質Dを更に含む殺菌植物保護製剤。
【請求項2】
有機希釈剤Cが、
C.1 20℃で10〜150mPa.s、特に12〜120mPa.s、とりわけ12〜60mPa.sの粘度を有する脂肪族炭化水素及び脂肪族炭化水素混合物、植物油、並びに脂肪酸エステルのうちから選択される少なくとも一つの第一有機希釈剤C.1と、
C.2 20℃で10mPa.s未満、特に1.5〜5mPa.sの粘度を有する炭化水素及び炭化水素混合物のうちから選択される少なくとも一つの第二有機希釈剤C.2と
を含む混合物である、請求項1に記載の植物保護製剤。
【請求項3】
製剤の総重量に基づいて1〜30重量%の量でジメトモルフを含む、請求項1又は2に記載の植物保護製剤。
【請求項4】
製剤の総重量に基づいて10〜50重量%の量で活性物質Bを含む、請求項1から3のいずれかに記載の植物保護製剤。
【請求項5】
少なくとも一つのアニオン性表面活性物質D.1を含む、請求項1から4のいずれかに記載の植物保護製剤。
【請求項6】
アニオン性表面活性物質が少なくとも一つのリグノスルホネートを含む、請求項5に記載の植物保護製剤。
【請求項7】
非イオン性表面活性物質D.2を追加的に含む、請求項5又は6に記載の植物保護製剤。
【請求項8】
非イオン性表面活性物質が、式I又はI′:
Alk-O-(A-O)m-R (I)
TST-O-(A-O)m-R (I′)
[式中、
Alkは、8〜24個のC原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は8〜24個のC原子を有する直鎖若しくは分枝鎖アルケニル基であり、
TSTは、トリスチリルフェニル基であり、
基(A-O)mのAは、同一又は異なっていることができ、エタンジイル、プロパンジイル又はブタンジイルであり、
mは2〜50であり、
Rは、水素又はC1〜C10アルキルである]
の少なくとも一つの表面活性物質を含む、請求項7に記載の植物保護製剤。
【請求項9】
少なくとも一つの増粘剤Eを含む、請求項1から8のいずれかに記載の植物保護製剤。
【請求項10】
増粘剤が、天然及び合成ケイ酸塩の群から選択される、請求項9に記載の植物保護製剤。
【請求項11】
ストロビルリン、スルホンアミド、フタルイミド及びキノン殺菌剤の群からの殺菌活性物質のうちから選択される少なくとも一つの更なる農業化学活性物質を含む、請求項1から10のいずれかに記載の植物保護製剤。
【請求項12】
作物に対する有害菌類を防除するための、請求項1から11のいずれかに記載の植物保護製剤の使用。
【請求項13】
果実作物、野菜作物及びブドウの木において有害菌類を防除するための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
作物において有害菌類を防除する方法であって、作物に対して請求項1から11のいずれかに記載の植物保護製剤の水性希釈液を施用することを含む方法。

【公表番号】特表2012−511509(P2012−511509A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539057(P2011−539057)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066644
【国際公開番号】WO2010/066744
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】