説明

ジャイロトロン

【課題】RF吸収体12と冷却構造体15の接合部品16とのろう接を良好にでき、セラミック製のRF吸収体12に割れが発生するのを防止できるジャイロトロンを提供する。
【解決手段】ビームトンネル11にセラミック製のRF吸収体12を設け、RF吸収体12の端部に金属製のフランジ13,14を配置する。RF吸収体12およびフランジ13,14にろう材23によって冷却構造体15の接合部品16をろう接する。ろう材23がRF吸収体12とフランジ14との間へ流出するのを阻止するろう材流出阻止部27を設ける。ろう材流出阻止部27は、RF吸収体12およびフランジ14の接合箇所と接合部品16およびフランジ14の接合箇所との間で、フランジ14に設けた凹状のトラップ26で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波発振機であるジャイロトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
核融合等において、プラズマを加熱、制御する手段として、例えばミリ波帯の電磁波を用いる方法が知られている。このミリ波帯の電磁波を発振させるための発振源としてジャイロトロンが有望視されている。
【0003】
このジャイロトロンは、高磁場中の空胴に電子ビームを入射することによって発振を行っている。電子ビームが通過するビームトンネルにおいて不要なRF(Radio Frequency)が存在すると、空胴での発振効率を下げる原因になると考えられているため、ビームトンネルにはRFを吸収する円筒状でセラミック製のRF吸収体を配置することが一般的に行われている。
【0004】
また、ジャイロトロンのパルス幅の伸長に伴い、RF吸収体の温度上昇が問題とされてきた。このため、RF吸収体の外側に冷却構造体をろう材によって接合し、この冷却構造体に冷媒を流して除熱する技術が必要とされてきた。
【0005】
このろう接については、ジャイロトロンにおいて、各種の部品間の接合に用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、一般的には、ろう材の量を調整することにより、ろう接面を限定している。
【特許文献1】特公平8−17082号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
RF吸収体と冷却構造体の加工精度や炉中での温度により、RF吸収体とフランジとをろう接する際に、RF吸収体とフランジとの間へろう材が流出することがある。
【0007】
一般的に、ろう材の量を調整することによりろう接面を限定しているが、RF吸収体と冷却構造体とのろう接が良好になるようにろう材の量を調整した場合には、RF吸収体とフランジとの間へろう材が流出しやすくなる。
【0008】
このように、RF吸収体とフランジとの間へろう材が流出し、RF吸収体とフランジとがろう接されると、これらの熱膨張差に起因して、セラミック製のRF吸収体に割れが発生する問題がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、RF吸収体と冷却構造体とのろう接を良好にできるとともに、セラミック製のRF吸収体に割れが発生するのを防止できるジャイロトロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ビームトンネルに設けられるセラミック製のRF吸収体と、このRF吸収体の端部に配置される金属製のフランジと、前記RF吸収体および前記フランジにろう材によって接合される冷却構造体と、前記ろう材が前記RF吸収体と前記フランジとの間へ流出するのを阻止するろう材流出阻止部とを具備しているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ろう材がRF吸収体とフランジとの間へ流出するのを阻止するろう材流出阻止部を設けたため、RF吸収体と冷却構造体とをろう材によって良好に接合できるとともに、そのろう材がRF吸収体とフランジとの間に流出するのを阻止し、セラミック製のRF吸収体に割れが発生するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、ジャイロトロンのビームトンネルの断面図を示す。
【0014】
ジャイロトロンは、高磁場中の空胴に電子ビームを入射することによって発振を行うものであり、ビームトンネル11は電子ビームが通過する部分である。
【0015】
ビームトンネル11には、RFを吸収する円筒状でセラミック製のRF吸収体12が配置されている。このRF吸収体12の軸方向の両端には環状で例えばステンレスなどの金属製のフランジ13,14がそれぞれ配置され、RF吸収体12の外周には冷却構造体15が配置されている。
【0016】
冷却構造体15は、RF吸収体12の外周およびフランジ13,14にろう接される筒状で例えば銅などの金属製の接合部品16、この接合部品16との内側間に空間部17を形成して接合部品16に密閉接合された環状で金属製の外側部品18を備えている。外側部品18には、一対のパイプ19が取り付けられ、これらパイプ19を通じて空間部17に冷媒などが流通される。
【0017】
接合部品16は、RF吸収体12の肉厚に比べて薄くそのRF吸収体12の外周にろう接されるRF吸収体接合部20、およびこのRF吸収体接合部20の両端部でフランジ13,14にろう接されるフランジ接合部21,22を有している。
【0018】
RF吸収体12と接合部品16とをろう接するろう材23にはシート状のろう材23aが使用され、また、フランジ13,14と接合部品16とをろう接するろう材23にはワイヤー状のろう材23bが使用される。
【0019】
また、RF吸収体12の外周面の両端部には、環状の溝部24,25が形成されている。
【0020】
また、図1において下側に位置するフランジ14には、接合部品16との接合箇所とRF吸収体12との接合箇所との間で、RF吸収体12の溝部24に対向する位置に、環状で凹状のトラップ26が形成されている。
【0021】
そして、RF吸収体12の下部側においては、トラップ26が、ろう材がRF吸収体12とフランジ14との間へ流出するのを阻止するろう材流出阻止部27として構成され、また、RF吸収体12の上部側においては、溝部24が、ろう材がRF吸収体12とフランジ14との間へ流出するのを阻止するろう材流出阻止部27として構成されている。
【0022】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0023】
まず、製造するには、RF吸収体12と接合部品16との間にシート状のろう材23aを介在させ、フランジ13,14と接合部品16との間にワイヤー状のろう材23bを介在させ、炉内に入れる。
【0024】
炉内で高温にすると、それぞれのろう材23が融解して液体となり、部品間を毛細管現象で広がって、部品間の隙間を埋めていく。
【0025】
このとき、RF吸収体12の下部側においては、RF吸収体12と接合部品16との間の余分なろう材23が、RF吸収体12より濡れやすい接合部品16を伝ってトラップ26に溜まり、フランジ14と接合部品16との間の余分なろう材23が、トラップ26に溜まる。したがって、トラップ26によって、RF吸収体12とフランジ14との間のろう接させない面へのろう材23の流出が阻止される。
【0026】
RF吸収体12の上部側においては、フランジ13と接合部品16との間の余分なろう材23が、RF吸収体12より濡れやすい接合部品16を伝って溝部24に溜まる。したがって、溝部24によって、RF吸収体12とフランジ13との間のろう接させない面へのろう材23の流出が阻止される。
【0027】
このように、ろう材23がRF吸収体12とフランジ13,14との間へ流出するのを阻止するろう材流出阻止部27を設けたため、RF吸収体12と冷却構造体15の接合部品16とをろう材23によって良好に接合できるとともに、そのろう材23がRF吸収体12とフランジ13,14との間に流出するのを阻止し、RF吸収体12とフランジ13,14との熱膨張差を起因としてセラミック製のRF吸収体12に割れが発生するのを防止できる。
【0028】
また、ろう材流出阻止部27として、RF吸収体12の下部側においては、接合部品16との接合箇所とRF吸収体12との接合箇所との間で、RF吸収体12の溝部24に対向する位置に、環状で凹状のトラップ26を形成することにより、RF吸収体12と接合部品16との間の余分なろう材23、およびフランジ14と接合部品16との間の余分なろう材23を、トラップ26で確実に捕獲し、RF吸収体12とフランジ14との間のろう接させない面へのろう材23の流出を確実に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態を示すジャイロトロンのビームトンネルの断面図である。
【符号の説明】
【0030】
11 ビームトンネル
12 RF吸収体
13,14 フランジ
15 冷却構造体
26 トラップ
27 ろう材流出阻止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームトンネルに設けられるセラミック製のRF吸収体と、
このRF吸収体の端部に配置される金属製のフランジと、
前記RF吸収体および前記フランジにろう材によって接合される冷却構造体と、
前記ろう材が前記RF吸収体と前記フランジとの間へ流出するのを阻止するろう材流出阻止部と
を具備していることを特徴とするジャイロトロン。
【請求項2】
ろう材流出阻止部は、フランジに設けた凹状のトラップである
ことを特徴とする請求項1記載のジャイロトロン。

【図1】
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【公開番号】特開2010−49823(P2010−49823A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210586(P2008−210586)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】