説明

ジャックコネクタ

【課題】
接続端子の変位量が損なわれることがないハウジング構成によって搭載機器の小型化、薄型化に寄与可能なジャックコネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】
プラグPを収容するための円柱状の嵌合空間19が形成された絶縁ハウジング10と、この絶縁ハウジング10内に固定される接続端子と、を備えたジャックコネクタ1であって、前記接続端子は前記ハウジング10と係合する固定部と、前記プラグPと電気的に接続する接続部と、基板100とはんだで実装されるリード部と、を備え、前記嵌合空間19の一方の半円弧側を形成するハウジング下部に、前記固定部と、前記リード部とを備え、前記接続端子が2個以上備わるとき、前記接続端子は前記固定部が横方向に並ぶようにして配置され、横方向に詰まると、横方向に直交する上下方向に階層的に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャックコネクタに関し、詳しくは、薄型のジャックコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の携帯機器の小型化、薄型化の要求は高い。従来のAV(Audio Visual)ジャックコネクタは、特許文献1に記載されているように、小型化を考慮する際、接続端子の変位量を少なくしたり、或いは変位量を無くした接続端子構造をとったりするものがある。このような構造にすることによって、接続端子の変位空間を節約しジャックコネクタの小型化を目指すものである。
しかし、このように接続端子の変位量を少なくしたり、無くしたりすることでジャックコネクタの小型化、薄型化を図ることは、プラグの挿抜が繰り返されることによる接触部の消耗を早めることとなる。これにより、接続信頼性の低下を招くものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−34320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、接続端子の変位量を少なくしたり、無くしたりすることなく、必要な接続端子の変位量が確保されたハウジング構造によって搭載機器の小型化、薄型化に寄与可能なジャックコネクタを提供することを目的とする。
さらに、本発明の別の目的は、上記したジャックコネクタの接続端子構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のジャックコネクタは、(1)プラグを収容するための円柱状の嵌合空間が形成された絶縁ハウジングと、この絶縁ハウジング内に固定される接続端子と、を備えたジャックコネクタであって、前記接続端子は前記ハウジングと係合する固定部と、前記プラグと電気的に接続する接続部と、基板とはんだで実装されるリード部と、を備え、前記嵌合空間の一方の半円弧側を形成するハウジング下部に、前記固定部と、前記リード部とを備えるところに特徴を有するものである。
【0006】
この発明によれば、前記嵌合空間の一方の半円弧側を形成するハウジング下部に、接続端子の固定部、リード部が集中して備わっている。この半円弧側をハウジングの下部、反対側を上部とすれば、これによって、ハウジングは下部以外の、たとえば上部、左右側部の構造をシンプルにすることが可能になる。ハウジングの断面形状が方形の場合、嵌合空間である中央の円形に対して下部は、接続端子の固定部を保持するための構造や、接続端子の弾性的変位のための空間を確保するために厚みを増すことになるが、その結果、他の三方は、それら構造や空間を備える必要がなくなる。すなわち、他の三方の薄肉化が可能になる。また、接続部も下部に備えてよく、これによって接続部は、長手方向(嵌合方向)の延びを規制するものがほかになく、十分な接続長の確保が可能になり、かつ、上下方向の深みのある変位空間の確保も容易になる。その結果、上述した作用は一層充実することになる。
したがって、残り三方の内対向する左右側部同士が、たとえばジャックコネクタが搭載される携帯電話の厚み方向に向かう時には、搭載機器の小型化、薄型化に寄与可能な必要
な変位量が確保されたジャックコネクタが提供されることになる。
【0007】
さらに好ましくは、本発明のジャックコネクタは、(2)前記接続端子が2個以上備わるとき、前記接続端子は前記固定部が横方向に並ぶようにして配置され、横方向に詰まると、この横方向に直交する上下方向に階層的に配置されるところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0008】
この発明によれば、接続端子が複数個になったとき、接続端子は、その固定部が横方向に並んでハウジング下部に配置され、さらに増えると、上下方向に階層的に配置される。これによって、ハウジング下部に固定部を保持する構造や、変位空間がさらに必要になるが、ハウジングの幅方向(左右方向)は薄くできる。これによって、接続端子が増えた場合でも下部以外の残り三方の構造に変更は生じない。
したがって、搭載機器の小型化、薄型化に寄与可能な必要な変位量が確保されたジャックコネクタが提供される。
【0009】
さらに好ましくは、本発明のジャックコネクタは、(3)前記リード部は実装時はんだで基板に固定されるとともに、前記ハウジング下部に横方向に配置されるところに特徴を有する(1)または(2)記載のものである。
【0010】
この発明によれば、実装時リード部が基板面に並ぶので、下部以外の3方の構造になんら変化はなく、基板実装後においても基板の厚みを含めたジャックコネクタの薄型化が達成されるものである。したがって、搭載機器たとえば携帯電話の薄型化を可能にするジャックコネクタが提供される。
【0011】
さらに好ましくは、本発明のジャックコネクタは、(4)前記リード部は先端が細くなった実装部を備えるところに特徴を有する(3)記載のものである。
【0012】
この発明によれば、リード部は先端が細くなった実装部を備えているので、実装時のはんだフィレットを考慮に入れた、実装面積、特に配列方向である横幅の軽減が可能になる。これによって、実装状態までも考慮に入れた幅方向の小型化を可能にするジャックコネクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの構造が示される下面透視図である。
【図2】図2は、同ジャックコネクタの構造が示される側面透視図である。
【図3】図3は、同ジャックコネクタの構造が示される正面図である。
【図4】図4は、同ジャックコネクタのハウジングの平面図、正面図、側面図である。
【図5】図5は、同ジャックコネクタのハウジングと接続端子との組み付けを示す工程図である。
【図6】図6は、同ジャックコネクタにプラグが挿入された状態が示される側面透視図である。
【図7】図7は、同ジャックコネクタの端子構造の外観斜視図である。
【図8】図8は、同ジャックコネクタの第1接続端子の外観斜視図である。
【図9】図9は、同ジャックコネクタの第2接続端子の外観斜視図である。
【図10】図10は、同ジャックコネクタの第3接続端子の外観斜視図である。
【図11】図11は、同ジャックコネクタの第4接続端子の外観斜視図である。
【図12】図12は、同ジャックコネクタの第1スウィッチ端子の外観斜視図である。
【図13】図13は、同ジャックコネクタの第2スウィッチ端子の外観斜視図である。
【図14】図14は、同ジャックコネクタにFPCが実装された状態が示される外観斜視図である。
【図15】図15は、図14の状態をジャックコネクタの上方向から視た外観斜視図である。
【図16】図16は、同ジャックコネクタが携帯電話機に搭載された状態が示される模式図であって、(A)は、正面図であり、(B)は斜視図である。
【図17】図17は、同ジャックコネクタのリード部の外観図であって、(A)は、リード部のパターン図であり、(B)は、はんだフィレットが形成された状態を示すパターン図である
【図18】図18は、図17のリード部を示す斜視図であって、(A)は、基板に載置された状態を示すパターン図であり、(B)は、はんだフィレットが形成された状態を示すパターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実施することができる。図1は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの構造が示される下面透視図である。図2は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの構造が示される側面透視図である。図3は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの構造が示される正面図である。図4は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタのハウジングの平面図、正面図、側面図である。
なお、説明中指示方向を明確にするために方向を定義すれば、図1、図2に示されるように、紙面向かって右側が前、反対側が後、上側が上、反対側が下、及び図3に示されるように、紙面に向かって右側が右、反対側が左である。以下、特に方向の定義がない場合は、この定義に従う。
なお、特許請求の範囲で使用する用語と、発明を実施するための形態で使用する用語の対応関係について示しておくと、特許請求の範囲で用いる下部、上部、左右側部は、発明を実施するための形態で用いる下壁、上壁、左右側壁に対応する。
【0015】
〔ジャックコネクタ構造〕
本実施形態のジャックコネクタ1は、図1から図4に示されるように、プラグPと接続する4個の金属製の接続端子40、50、60、70、及び2個のスウィッチ端子、80、90、これら端子を保持し、プラグPと嵌合する合成樹脂製の絶縁ハウジング10を備えている。
【0016】
〔ハウジング〕
ハウジング10は、図4に示されるように、両端が開口された断面略矩形の筒状体である。ハウジング10は、周囲四面が上壁11、左右側壁12、13、及び下壁14で囲われている。ハウジング10は、前後面15、16に開口部17、18を有している。開口部17、18は、嵌合空間19につながっている。嵌合空間19は、断面略円形で、後方から前方に向かって順番(19c、19b、19aの順番)に径が小さくなっている。このように、ハウジング10内周面は、挿入される円柱構造を基本とするプラグPの形状に合わせて構成されている。
【0017】
〔上壁〕
上壁11は、図3、図4に示されるように、嵌合空間19の上部を画成する壁で曲面構造を有する。上壁11は、左右方向に亘って円弧の一部を構成し厚みをほぼ一定に保つとともに、前後方向に亘っても嵌合空間19の形状変化に即した形状をとることでほぼ一定の厚みを保っている。上壁11は、ハウジング10の強度を保つために十分な厚みを有している。上壁11の前半分は、平坦面が形成され、組み立て装置上で真空チャック方式の使用が可能である。
【0018】
〔側壁〕
側壁12、13は、図4に示されるように、嵌合空間19の左右側部を構成する壁である。左右側壁12、13は、ハウジング10の左右側面に備わり、ほぼ対称構造である。左右側壁12、13は、前後方向に亘ってほぼ一定の厚みを保っている。左右側壁12、13は、ハウジング10の強度を保つために十分な厚みを有している。左右側壁の外面は特別な構造物がなく平坦である。
【0019】
〔下壁〕
下壁14は、図1から図4に示されるように、嵌合空間19の下部を構成する壁である。下壁14は、接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90を保持するための構造と、これら端子が機能するための空間とを備えている。下壁14は、接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90が固定される保持部20、21、22、23、24、25、接続端子40、50、60、70が弾性的変位するための変位空間26、及びスウィッチ端子80、90が作動するための作動空間27を備えている。下壁14は、このように保持部20、21、22、23、24、25の構造や変位空間26、作動空間27に必要なスペースを要するので、上壁11や左右側壁12、13に比べて内部の構造は複雑である。そのために、下壁14は、上下方向に厚みを増すが、その分左右方向(幅方向)の厚みは必要最小限度に制限可能である。
【0020】
〔保持部、変位空間〕
下壁14の内側には、図4に示されるように、接続端子40、50、60、70の保持部20、21、22、23、及びスウィッチ端子80、90の保持部24、25が形成されている。これら保持部20、21、22、23、24、25は、一段に2個が並列配置されていて、この構造が上下方向に階層的に3段備わっている。保持部20、21、22、23、24、25は、接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90の板状の固定部45、55、65、75、85、95の両縁が圧入される一対の溝部20a、21a、22a、23a、24a、25aを備えている。保持部20、21、22、23、24、25は、ハウジング10の下壁14前方に備わっている。
【0021】
保持部20、21、22、23、24、25の後方、すなわちハウジング10の中央から後方にかけては、図2に示されるように、接続端子40、50、60、70の変位空間26が形成されている。変位空間26は、プラグPが挿入される嵌合空間19の下方に連なっている。変位空間26は、接続端子40、50、60、70の接続部41、51、61、71が挿入されたプラグPによって外向きに弾性変位するための空間である。
【0022】
変位空間26の前方、すなわち保持部20、21、22、23、24、25の上方には、スウィッチ端子80、90の作動空間27が備わっている。ここで簡単にスウィッチについて説明すると、スウィッチは、2個のスウィッチ端子80、90で構成されている。挿入されたプラグPが第2スウィッチ端子90に当たり、この当たりによって第2スウィッチ端子90が下向きに変位して第1スウィッチ端子80に接触する。この接触によって回路が閉じてスウィッチが入る仕組みである。スウィッチの切断は、プラグPが引き抜かれて接触が断たれて回路が開かれた状態である。作動空間27は、嵌合空間19の下方に連なっている。
このように、ハウジング10の下壁14には、接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90が保持され、その機能を発揮するために必要な構造が集中して備わっている。このように、下壁14に構造が集中して備わることによって、その分上壁11、及び左右側壁12、13の薄肉化が可能になっている。
【0023】
〔接続端子〕
次に、接続端子について、図面を参照しながら説明する。図7は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの端子構造の外観斜視図である。図8は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの第1接続端子の外観斜視図である。図9は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの第2接続端子の外観斜視図である。図10は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの第3接続端子の外観斜視図である。図11は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの第4接続端子の外観斜視図である。図12は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの第1スウィッチ端子の外観斜視図である。図13は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタの第2スウィッチ端子の外観斜視図である。
【0024】
第1接続端子40は、図8に示されるように、金属板状体の形抜き、曲げ加工等によって形成される。接続端子40は、銅合金の母材表面が金メッキ処理された、導電性、耐食性に優れた材料である。接続端子40は、ハウジング10に保持される固定部45、プラグPに電気的に接続する接続部41、及び基板100にはんだ実装されるリード部47を備えている。
【0025】
〔第1接続端子〕
第1接続端子40の固定部45は、図8に示されるように、ほぼ一定の幅で長手方向に延びる平面視矩形の板状体である。接続部41は、プラグP本体に弾接して電気的接点を形成する。接続部41は、固定部45の前端から長手方向に沿って後方に延びる漸次縮幅する弾性片である。接続部41は、緩やかなカーブを描いて斜め上方に向かい、端部に屈曲部42を形成する。屈曲部42は、その頂点周囲に凸部43を備えている。
【0026】
第1接続端子40のリード部47は、図8に示されるように、固定部45の前端から長手方向に沿って前方に延びる板状片である。リード部47は、一段低い面にその実装部48が位置するように、穏やかな屈曲部を形成して斜め下方に向かう。リード部47の先端は、水平面に並行に延びその下面は平坦である。リード部47の先端は、細幅の実装部48を備えている。実装部48は、基板100面に形成されたパターン101と、はんだによって電気的機械的に接続される。
【0027】
〔第2接続端子〕
第2接続端子50は、図9に示されるように、板状銅合金の成形加工体で、表面が金メッキ処理されている。接続端子50は、固定部55、接続部51、リード部57を備えている。固定部55は、長手方向に延びる平面視矩形の板状体である。接続部51は、固定部55の後端から長手方向に沿って延びる弾性片であって、プラグP本体に弾接して電気的接点を形成する。接続部51は、緩やかなカーブを描いて斜め上方に向かい、先端に屈曲部52を形成している。屈曲部52は、その頂点周囲に凸部53を備えている。
リード部57は、固定部55の前端から長手方向に沿って延びる板状体である。リード部57は、先端に細幅の実装部58を備えている。リード部57は、一段低い面にその実装部58が位置するように、穏やかな屈曲部を形成して斜め下方に向かう。実装部58は、水平面と並行に延びる板状体であり、基板100に形成されたパターン101と、はんだによって電気的機械的に接続される。
【0028】
〔第3接続端子〕
第3接続端子60は、図10に示されるように、板状銅合金の成形加工体で、表面が金メッキ処理されている。接続端子60は、固定部65、接続部61、リード部67を備えている。固定部65は、長手方向に延びる平面視矩形の板状体である。接続部61は、固定部65の後端から長手方向に沿って延びる弾性片であって、プラグP本体に弾接して電気的接点を形成する。接続部61は、緩やかなカーブを描いて斜め上方に向かい、先端に屈曲部62を形成している。屈曲部62は、その頂点周囲に凸部63を備えている。
リード部67は、固定部65の前端から長手方向に沿って延びる板状体である。リード
部67は、先端に細幅の実装部68を備えている。リード部67は、一段低い面にその実装部68が位置するように、穏やかな屈曲部を形成して斜め下方に向かう。実装部68は、水平面と並行に延びる板状体であり、基板100に形成されたパターン101と、はんだによって電気的機械的に接続される。
【0029】
〔第4接続端子〕
第4接続端子70は、図11に示されるように、板状銅合金の成形加工体で、表面が金メッキ処理されている。接続端子70は、固定部75、接続部71、リード部77を備えている。固定部75は、長手方向に延びる圧入部を両端に備える板状体である。接続部71は、固定部75の後端から斜め上方向に延びる弾性片であって、プラグP本体に弾接して電気的接点を形成する。
リード部77は、固定部75の前端から下方向に延びる細幅の板状体である。リード部77は、先端にさらに細幅の実装部78を備えている。リード部77は、一段低い面にその実装部78が位置するように、屈曲部を形成して斜め下方に向かう。実装部78は、水平面と並行に延びる板状体であり、基板100面に形成されたパターン101と、はんだによって電気的機械的に接続される。
【0030】
〔第2スウィッチ端子〕
第2スウィッチ端子90は、図12に示されるように、板状銅合金の成形加工体で、表面が金メッキ処理されている。接続端子90は、固定部95、接続部91、リード部97を備えている。固定部95は、長手方向に延びる圧入部を両端に備える板状体である。接続部91は、固定部95の後端から延びる弾性片である。
リード部97は、固定部95の前端から下方向に延びる細幅の板状体である。リード部97は、先端にさらに細幅の実装部98を備えている。リード部97は、一段低い面にその実装部98が位置するように、屈曲部を形成して斜め下方に向かう。実装部98は、水平面と並行に延びる板状体であり、基板100に形成されたパターン101と、はんだによって電気的機械的に接続される。
【0031】
〔第1スウィッチ端子〕
第1スウィッチ端子80は、図13に示されるように、板状銅合金の成形加工体で、表面が金メッキ処理されている。接続端子80は、固定部85、接続部81、リード部87を備えている。固定部85は、長手方向に延びる圧入部を両端に備える板状体である。接続部81は、固定部85の後端から延びる弾性片である。
リード部87は、固定部85の前端から下方向に延びる細幅の板状体である。リード部87は、先端にさらに細幅の実装部88を備えている。リード部87は、一段低い面にその実装部88が位置するように、屈曲部を形成して斜め下方に向かう。実装部88は、水平面と並行に延びる板状体であり、基板100面に形成されたパターン101と、はんだによって電気的機械的に接続される。
【0032】
〔接続端子のハウジングへの組み付け〕
接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90のハウジング10への組み付けについて、図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタのハウジングと接続端子との組み付けが示された工程図である。
【0033】
接続端子40、50、60、70の組み付けは、図5に示されるように、ハウジング10の前面15の開口部18を通しておこなわれる。プラグPの基端側に接続する全長が長い接続端子から、プラグPの先端側に接続する全長が短い接続端子の順に組み付けられる。すなわち、第1から第4接続端子40、50、60、70の順に組み付けられる。最後にスウィッチ端子80、90が組み付けられる。組み付けによる固定は、圧入方式である。
【0034】
プラグPの基端側にある第1領域P1に接続する第1接続端子40は、下壁14の下段の保持部20で保持される。プラグPの中間部にある第2領域P2に接続する第2接続端子50は、下壁14の下段の保持部21で保持される。プラグPの中間部にある第3領域P3に接続する接続端子60は、下壁14の中段の保持部22で保持される。プラグPの先端部にある第4領域P4に接続する接続端子70は、下壁14の上段の保持部23で保持される。
【0035】
接続端子40、50、60、70のハウジング10への固定は、接続端子40、50、60、70の板状の固定部45、55、65、75がハウジング10の保持部20、21、22、23の溝部20a、21a、22a、23aに圧入されることによっておこなわれる。保持部20、21、22、23に形成された圧入溝に、板状の固定部の両縁を圧入して固定する。接続端子40、50、60、70の固定部45、55、65、75がハウジング10の保持部20、21、22、23に保持されると、接続部41、51、61、71は、変位空間26に収まり、リード部47、57、67、77は、ハウジング10前面から前方に延出する。スウィッチ端子80、90の固定部85、95がハウジング10の保持部24、25に保持されると、接続部81、91は作動空間27に収まり、リード部87、97はハウジング10の前面15から前方に延出する。
【0036】
〔ハウジング内の接続端子構造〕
ハウジング内の接続端子、スウィッチ端子の組み付け構造について、図面を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタにプラグが挿入された状態が示される側面透視図である。
接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90は、図2、図3に示されるように、2列、3段の階層構造で組み付けられている。このように、接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90の保持構造、及び変位空間26、作動空間27のスペース全てがハウジング10の下壁14に集まっている。これによって、下壁14の構造が複雑になり上下方向の厚みは増すことになるが、下壁14にこれらが集中する分左右側壁12、13、及び上壁11の構造がシンプルになっている。特に左右側壁12、13の外面は、平坦である。
【0037】
接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90の固定部45、55、65、75、85、95は、図3、図6に示されるように、間隔を設けて並置され、かつ、上下に段差を設けて積層されている。これにより、相互に接触箇所は生じない。
第1接続端子40は、最も全長が長い端子で、下段で保持されている。第1接続端子40は、ハウジング10の後面16近くまで延びて、プラグPの基端側の第1領域P1に弾接する。第1接続端子40の接続部41の変位空間26は、図2、図6に示されるように、強い押圧力が発揮されるべく大きく確保されている。
【0038】
第2接続端子50は、図3、図6に示されるように、次に全長が長い端子で、下段で第1接続端子40と並んで保持されている。第2接続端子50は、プラグPの第2領域P2に弾接する。
第3接続端子60は、3番目に全長が長い端子で、中段で保持されている。第3接続端子60は、プラグPの第3領域P3に弾接する。
第4接続端子70は、最も全長が短い端子で、上段で保持されている。第4接続端子70は、プラグPの第4領域P4である先頭部に弾接する。
第2から第4接続端子50、60、70の接続部の変位空間26は、図2、図6に示されるように、強い押圧力が発揮されるべく大きく確保されている。
【0039】
接続部41、51、61、71は、屈曲部42、52、62、72の凸部43、53、
63、73がプラグP側に向けて配置されている。接続部41、51、61、71は、上下方向に弾性変位可能な弾性片である。接続部41、51、61、71は、図2、図6に示されるように、十分な変位空間26が形成されている。
【0040】
スウィッチ端子80、90は、図2、図6に示されるように、短かな一組の端子で、協働してスウィッチ機能を果たす。スウィッチ端子80、90は、2個が上下に並んで上段と、中段とで保持されている。第2スウィッチ端子90は、プラグPの先頭部(第4領域P4)に弾接する。スウィッチ端子80、90の接続部81、91が変位可能なように、その周囲には作動空間27が形成されている。
【0041】
〔リード部〕
第1から第4接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子80、90のリード部47、57、67、77、87、97は、図4に示されるように、ハウジング10の前面15から前方に延出して左右一列に配置されている。これより、リード部について、図面を参照しながら説明する。図17は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタのリード部の外観図であって、(A)は、リード部のパターン図であり、(B)は、はんだフィレットが形成された状態を示すパターン図である。図18は、図17のリード部を示す斜視図であって、(A)は、基板に載置された状態を示すパターン図であり、(B)は、はんだフィレットが形成された状態を示すパターン図である。
【0042】
リード部47、57、67、77、87、97は、図3、図17、図18に示されるように、下段、上段、中段に保持された端子順に左右外側から中央に向かって一列に配置されている。リード部47、57、67、77、87、97は、先端にはんだで実装される実装部48、58、68、78、88、98を備えている。リード部47、57、67、77、87、97の実装部48、58、68、78、88、98は、図17、図18に示されるように、先端が細くなっている。これは、はんだフィレットの形成を想定して、フィレットが形成されても隣接リードに接触することなく、ハウジング10の全幅内に全リード部47、57、67、77、87、97を収めるために有効な構造である。
実装部48、58、68、78、88、98下面は、ハウジング10下壁14下面とほぼ同じ面上にある。実装部48、58、68、78、88、98下面は、平坦である。
【0043】
〔嵌合〕
プラグとジャックコネクタとの嵌合について、図面を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタにプラグが挿入された状態が示される側面透視図である。
プラグPは、図3、図6に示されるように、ジャックコネクタ1の後面16の開口部17から嵌合空間19に挿入される。正規嵌合位置までプラグPが挿入されると、図6に示されるように、第1接続端子40の接続部41は、プラグPの第1領域P1に弾接し、第2接続端子50の接続部51は、第2領域P2に弾接し、第3接続端子60の接続部61は、第3領域P3に弾接し、第4接続端子70の接続部71は、第4領域P4に弾接する。プラグPの各領域間は、リング状の絶縁樹脂によって電気的に分離されている。
【0044】
第1から第4接続端子40、50、60、70の接続部41、51、61、71は、十分な長さを有すとともに、ハウジング10の下壁14に深く形成された変位空間26によって、豊かな弾性変位量が確保されている。これによって、繰り返し持続可能な弾接的押圧力が発生可能で、その結果、信頼性の高い接続構造が獲得されている。
スウィッチ端子80、90は、プラグPの先端部(第4領域P4)に弾接する。第2スウィッチ端子90が変位して第1スウィッチ端子80に接触する。これによって、検知回路が閉じてプラグPの挿入状態が検知される。プラグPが抜かれると検知回路が開き、プラグの抜去状態が検知される。
【0045】
〔効果〕
下壁に接続端子の保持構造や変位空間等が集中することで、ハウジング左右方向(幅方向)の薄型化が可能である。
接続端子を階層方式で保持することによって、接続端子の下壁集中が可能になり、これにより、接続端子の弾性変位量の十分な確保を可能にするとともに、ジャックコネクタの小型化を可能にしている。
リード部を下壁に揃えることで、基板実装が容易になる。
リード部は実装部が細いので、リード部全幅がハウジングの幅内に収まり、これにより、基板実装状態も含めた機器の小型化を可能にする。
【0046】
〔別の実施形態 携帯電話に実装〕
本発明のジャックコネクタを携帯電話に搭載する場合の他の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図14は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタにFPCが実装された状態が示される外観斜視図である。図15は、図14の状態をジャックコネクタの上方向から視た外観斜視図である。図16は、本発明の実施形態に係るジャックコネクタが携帯電話機に搭載された状態が示される模式図である。
【0047】
ジャックコネクタ1は、図14、図15に示されるように、下壁14にFPC100が実装される。FPC100は、略矩形状で、幅は、ジャックコネクタ1の幅とほぼ同じである。長手方向には、実装時ジャックコネクタ1の前面15から前方に僅かに張り出し部が備わっている。この張り出し部は、接続端子40、50、60、70、及びスウィッチ端子70、80のリード部47、57、67、77、87、97の実装部48、58、68、78、88、98に接続するパターン101が形成されている。パターン101は矩形で、実装部48、58、68、78、88、98の幅に比べてやや大きめの幅を有している。
【0048】
FPC100の長手方向後方には、コの字の切り欠きがある。この切り欠きは、ハウジング10の下壁14に備わる位置決め用の凸状の台座部に係合するところである。ジャックコネクタ1は、図16に示されるように、携帯電話110の厚み方向に対して、幅方向が向かうようにして搭載される。上述したように、ハウジング10の幅方向は薄型化されていて、携帯電話110のケース厚みの薄型化に対して障害になるものはない。上壁11の外側面が、携帯電話110ケースの内側面に沿うようにして、ジャックコネクタ1は、ケース端部に横向きに載置される。この姿勢で下壁14は、携帯電話110の内側に向いている。下壁14に接続するFPC100は、縁部で曲げられてケース内部にある回路(図示されていない)に向かっている。
【0049】
〔効果〕
接続端子を下壁に集中配置し、リード部先端を細幅とすることで、実装形態も含めてジャックコネクタの薄型化が可能である。
ジャックコネクタの幅方向を携帯機器のケースの厚み方向に沿わせて配置することで、携帯機器のケース厚みが薄くできる。
【0050】
〔原理〕
本発明は、携帯機器の小型化に寄与可能な、特に薄型化に効果の大きいジャックコネクタを提供するものである。ジャックコネクタとしての性能や信頼性が損なわれることがないように、接続端子の弾性長や弾性変位量が十分に確保された接続端子を備えることを条件として、ジャックコネクタの小型化、薄型化を図るものである。
下壁に接続端子を保持するための構造やそれらが作動する変位空間を集中的に備えることで、他の三方の薄型化を可能にするとともに、リード部を下壁に集めて実装面を一面だ
けとすることで、基板厚みが携帯機器の薄型化に影響しないようにする。これらの方策を実施することによって上記課題を解決するものである。
【0051】
〈その他の実施形態〉
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施形態、他の実施形態に限られるものではなく、発明思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 ジャックコネクタ
10 ハウジング
11 上壁
12、13 側壁
14 下壁
15 前面
16 後面
17、18 開口部
19 嵌合空間
19a、19b、19c
20、21、22、23、24、25 保持部
26 変位空間
40 第1接続端子
50 第2接続端子
60 第3接続端子
70 第4接続端子
80 第1スウィッチ端子
90 第2スウィッチ端子
100 基板
110 携帯電話
P プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグを収容するための円柱状の嵌合空間が形成された絶縁ハウジングと、
この絶縁ハウジング内に固定される接続端子と、を備えたジャックコネクタであって、
前記接続端子は前記ハウジングと係合する固定部と、前記プラグと電気的に接続する接続部と、基板とはんだで実装されるリード部と、を備え、
前記嵌合空間の一方の半円弧側を形成するハウジング下部に、前記固定部と、前記リード部とを備えるところに特徴を有するジャックコネクタ。
【請求項2】
前記接続端子が2個以上備わるとき、前記接続端子は前記固定部が横方向に並ぶようにして配置され、横方向に詰まると、この横方向に直交する上下方向に階層的に配置されるところに特徴を有する請求項1記載のジャックコネクタ。
【請求項3】
前記リード部は実装時はんだで基板に固定されるとともに、前記ハウジング下部に横方向に配置されるところに特徴を有する請求項1または2記載のジャックコネクタ。
【請求項4】
前記リード部は先端が細くなった実装部を備えるところに特徴を有する請求項3記載のジャックコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−105608(P2013−105608A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248135(P2011−248135)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】