説明

ジャムおよびその製造方法

【課題】栄養分をより多く含むとともに、抗酸化作用などの各種の機能を発揮し、健康の保持・増進を図ることができるジャムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のジャムは、焙煎された古代米の玄米を粉砕することによって生成された粉末状の米素材と、所定の種類のポリフェノール素材と、所定の種類の増粘多糖類と、を含む。また、本発明のジャムの製造方法は、古代米の玄米を焙煎する焙煎工程と、焙煎された玄米を粉砕することにより、粉末状の米素材を生成する米素材生成工程と、生成された米素材、所定の種類のポリフェノール素材、および所定の種類の増粘多糖類を含む原料を、攪拌・加熱機に投入し、攪拌しながら加熱する攪拌・加熱工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒米や赤米、緑米などの古代米を原料に含むジャムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米を原料に含むジャムとして、特許文献1に開示されたものが知られている。このジャムは、米飯として一般に食べられるうるち米を精白したもの(以下、本欄において「精白米」という)を炊飯し、これを、一般的なジャム材料と混合して製造される。精白米は、玄米から、果皮、種皮および糊粉層などのぬか層と、胚芽を除去したものであり、米飯としては美味しく食べることができるものの、玄米に比べて栄養分が少ない。具体的には、精白米は、玄米に比べて、タンパク質、脂質、ビタミンB1、ビタミンEおよび食物繊維などが少ない。
【0003】
ところで、近年、黒米や赤米、緑米などの古代米が、精白米に比べて、タンパク質、ビタミンおよびミネラルなどの栄養分を多く含むことが明らかになり、健康食品として注目されている。特に、黒米には、上記の栄養分の他、鉄、カルシウムおよびマグネシウムなどが豊富に含まれており、加えて、黒米の玄米には、ぬか層にアントシアニンが含まれている。アントシアニンは、動脈硬化の予防や抗酸化作用などの人間の健康の保持・増進に役立つ機能を有している。
【0004】
上記のような栄養分を豊富に含む古代米を用いて、ジャムを製造することにより、従来の精白米を用いた場合に比べて、栄養分をより多く含むジャムを得ることが可能である。しかし、古代米を用いてジャムを製造する場合に、従来と同様、精白し、炊飯すると、古代米が有する栄養分が低減するため、古代米が本来有する栄養分や各種の機能を十分に活かし切れない。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、栄養分をより多く含むとともに、抗酸化作用などの各種の機能を発揮し、健康の保持・増進を図ることができるジャムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【特許文献1】特開平6−98703号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明のジャムは、焙煎された古代米の玄米を粉砕することによって生成された粉末状の米素材と、所定の種類のポリフェノール素材と、所定の種類の増粘多糖類と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、古代米の玄米を粉砕することによって生成された粉末状の米素材がジャムに含まれているので、ジャムとしての良好な食感を確保しながら、古代米の玄米が本来有する栄養分を有するとともに、抗酸化作用などの各種の機能を十分に活かしたジャムを得ることができる。また、古代米の玄米が焙煎されることにより、香ばしさが醸し出され、その結果、ジャムに良好な風味を付加することができる。
【0009】
また、所定の種類のポリフェノール素材がジャムに含まれているので、そのポリフェノール素材の機能をジャムに付加することができる。ポリフェノールは、多くの植物に含まれ、光合成に伴って生成される植物の色素などの成分であり、多くの種類が知られている。また、ポリフェノールは、その種類により、種々の機能、例えば抗酸化作用、動脈硬化の予防および/または抗菌作用などを有している。したがって、それらの機能を活かしたジャムを得ることができ、特に、前述した古代米の玄米が有する機能と同様の機能を有するポリフェノール素材を含むことにより、その機能をより高めたジャムを得ることができる。
【0010】
さらに、所定の種類の増粘多糖類がジャムに含まれているので、前記米素材を含むジャムにおいて、食感やとろみを調整し、ジャムとしての適度な粘性を得ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のジャムにおいて、古代米が、黒米であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、古代米のうちの黒米を、ジャムの原料の1つである米素材として用いるので、黒米の玄米に含まれるアントシアニンが有する機能を活かしたジャムを得ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のジャムにおいて、ポリフェノール素材が、ブルーベリーの抽出物であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ブルーベリーの抽出物を、ポリフェノール素材として用いる。ブルーベリーには、アントシアニンが含まれており、したがって、前述した請求項2と相まって、アントシアニンが有する機能をより高めたジャムを得ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のジャムにおいて、増粘多糖類が、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムであることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムを、増粘多糖類として用いる。ローカストビーンガムおよびキサンタンガムは、いずれも多糖類で、単体では増粘するだけであるものの、両者の相乗効果により、高い保水性および弾力性を有するゲルを得ることができる。したがって、増粘多糖類として、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムを用いることにより、前記米素材を含むジャムにおいて、ジャムとしてのより適度な粘性を得ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明のジャムの製造方法は、古代米の玄米を焙煎する焙煎工程と、焙煎された玄米を粉砕することにより、粉末状の米素材を生成する米素材生成工程と、生成された米素材、所定の種類のポリフェノール素材、および所定の種類の増粘多糖類を含む原料を、攪拌・加熱機に投入し、攪拌しながら加熱する攪拌・加熱工程と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、ジャムを製造する場合にまず、古代米の玄米を焙煎する(焙煎工程)。これにより、玄米の香ばしさが醸し出され、ジャムに良好な風味を付加することが可能となる。次いで、焙煎された玄米を粉砕することにより、粉末状の米素材を生成する(米素材生成工程)。これにより、古代米を含むジャムにおいて、ジャムとしての良好な食感を確保することが可能となる。次いで、生成された米素材、所定の種類のポリフェノール素材、および所定の種類の増粘多糖類を含む原料を、攪拌・加熱機に投入する。そして、すべての原料を攪拌しながら加熱する(攪拌・加熱工程)。この場合、攪拌・加熱機内の原料が加熱されることで、粘性が比較的低くなり、すべての原料を均一に混合することができる。以上により、前述した請求項1のジャムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のジャムの好ましい実施形態を詳細に説明する。このジャムは、粉末状の米素材、ブルーベリーの抽出物(ポリフェノール素材)、ならびにローカストビーンガムおよびキサンタンガム(増粘多糖類)を含んでいる。
【0020】
米素材は、古代米である黒米の玄米を焙煎した後、粉砕することによって、粉末状に生成されたものである。黒米は、玄米の色が黒色であり、果皮および種皮に紫黒色系色素(アントシアン系)を含んでいる。また、黒米には、米飯として一般に食べられている白米に比べて、タンパク質、ビタミンB1・B2、ナイアシン、ビタミンE、鉄、カルシウム、およびマグネシウムなどが豊富に含まれている。加えて、黒米の玄米には、ぬか層にアントシアニンが含まれている。アントシアニンは、血管を保護することで動脈硬化を予防し、発ガンの抑制に関係する抗酸化作用など、人間の健康の保持・増進に役立つ各種の機能を有している。なお、黒米は、5分づきにすると、紫色になることから、紫黒米とも言われる。
【0021】
また、ブルーベリーの抽出物は、ビルベロン25(常磐植物化学研究所製)である。このビルベロン25は、野生ブルーベリーの一種であるツツジ科のビルベリーの抽出物であり、主活性成分であるアントシアニジンを25%以上含有している。したがって、上記のブルーベリーの抽出物には、アントシアニジンをアグリコン(非糖成分)とする配糖体のアントシアニンが含まれている。
【0022】
また、ローカストビーンガムは、マメ科カロブ樹の種子から胚乳部を分離・粉砕することによって得られる多糖類である。一方、キサンタンガムは、トウモロコシなどの澱粉を所定の細菌(Xanthomonas campestris)で発酵させることによって生成される多糖類である。前述したように、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムは、単体では増粘するだけであるものの、両者の相乗効果により、高い保水性および弾力性を有するゲルを得ることができ、その結果、ジャムに適度な粘性を付与することができる。
【0023】
また、このジャムには、上記以外の原料として、所定の種類の甘味料、酸味料、乳酸菌、食物繊維および水が含まれている。甘味料は、ジャムに適度な甘み付けするためのものであり、具体的には、果糖ぶどう糖液糖、砂糖およびソルビトールである。また、酸味料は、ジャムに適度な酸味を付与するものであり、具体的には、アスコルビン酸およびクエン酸である。さらに、乳酸菌および食物繊維は、ジャムに整腸作用などの機能を付与するためのものであり、具体的にはそれぞれ、乳酸菌(殺菌)およびポリデキストロースである。
【0024】
次に、上述した各種の原料を含むジャムの製造方法について説明する。図1は、ジャムの製造方法を工程順に示している。同図に示すように、まず、所定量(例えば10〜30kg)の黒米の玄米を、焙煎用の釜に入れ、所定時間(例えば2〜5時間)、焙煎する(焙煎工程)(ステップ1、「S1」と図示。以下同じ)。次いで、焙煎済みの玄米を、粉砕し、所定メッシュ(例えば32〜100メッシュ)の粉末状の米素材を生成する(ステップ2、米素材生成工程)。そして、上記の粉末状の米素材の他、上述した他の原料、すなわち、ブルーベリーの抽出物、ローカストビーンガム、キサンタンガム、甘味料、酸味料、乳酸菌、食物繊維および水を、それぞれ適量ずつ、所定の攪拌・加熱機に投入する(ステップ3)。この場合、攪拌・加熱機に投入された全原料は、赤紫色を呈する。
【0025】
なお、主要原料の含有量の一例を挙げると、米素材が5重量%、ブルーベリーの抽出物が0.1重量%、ローカストビーンガムが0.3重量%、キサンタンガムが0.1重量%である。
【0026】
次いで、攪拌・加熱機において、全原料を攪拌しながら、所定温度(例えば40〜70℃)で、所定時間(例えば20〜60分)、加熱する(ステップ4、攪拌加熱工程)。これにより、全原料は、均一に混合し、加熱前に比べて、赤紫色が濃くなる。以上により、実質的なジャムの製造が完了する。
【0027】
以上のようにして製造されたジャムを商品として出荷する場合、以下のような作業を行う。まず、製造されたジャムを所定量(例えば10g)ずつ、所定の容器(例えばプラスチックフィルム容器)に充填する(ステップ5)。なおこの場合、ジャムを充填後、容器をシールするが、その際に、ジャムの酸化を防止するために、ジャムとともに不活性ガスを容器に充填してもよい。
【0028】
次いで、ジャムを分包充填した容器を、所定温度(例えば80〜90℃)の熱湯に、所定時間(例えば30〜60分)、浸漬することにより、ジャムの殺菌処理を行う(ステップ6)。その後、ジャム入りの容器を室温で放置することによって、ジャムを放冷する(ステップ7)。なお、この場合、冷却装置を用いて、ジャムの温度を室温まで、急速に冷却してもよい。
【0029】
そして、ジャムの放冷後、ジャム入りの容器を所定数(例えば10個)ずつ、箱詰めし、出荷する(ステップ8)。なお、箱詰め後、箱の外面への賞味期限などの印字、および箱にシュリンク包装を施してから、出荷してもよい。
【0030】
以上詳述したように、本実施形態によれば、古代米である黒米の玄米を粉砕することによって生成された粉末状の米素材がジャムに含まれているので、ジャムとしての良好な食感を確保しながら、黒米の玄米が本来有する栄養分を有するとともに、抗酸化作用などの各種の機能を十分に活かしたジャムを得ることができる。また、黒米の玄米が焙煎されることにより、香ばしさが醸し出され、その結果、ジャムに良好な風味を付加することができる。
【0031】
また、ポリフェノール素材として、アントシアニンを含有するブルーベリーの抽出物がジャムに含まれているので、黒米に含まれるアントシアニンと相まって、より高い抗酸化作用を有するジャムを得ることができる。さらに、増粘多糖類として、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムがジャムに含まれているので、両者の相乗効果により、高い保水性および弾力性を有するゲルを得ることができ、その結果、ジャムに適度な粘性を付与することができる。
【0032】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、古代米として、黒米を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の古代米、すなわち赤米や緑米を用いてもよい。これらには、黒米と同様、白米に比べて、タンパク質やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれている。赤米は、タンニン系の色素を含んでいる。一方、緑米は、クロロフィル葉緑素色素を含んでおり、亜鉛やマグネシウム、繊維質などが豊富に含まれている。これらの赤米および緑米は、血液浄化や血圧降下などの健康の保持・増進に役立つ機能を有している。したがって、米素材として、赤米や緑米の玄米を用いることにより、上記の機能を活かしたジャムを得ることができる。
【0033】
また、実施形態では、ポリフェノール素材として、ブルーベリーの抽出物を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種類のポリフェノール素材、例えばクランベリー、ラズベリー、赤ワイン、しそ、カシス、カカオ、リンゴ、ザクロ果皮、ユズ種子、茶、バラ花びら、ライチ種子、ゴマ、ソバ実の抽出物など、各種のものを採用することが可能である。
【0034】
さらに、実施形態では、増粘多糖類として、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムを用いたが、ジャムに良好な粘性を付与できるものであれば、他の種類の多糖類や増粘剤、例えばペクチン、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、タラガム、寒天、カラギーナン、タマリンドガム、およびアルギン酸などを採用してもよい。
【0035】
また、実施形態で示したジャムの原料や製造工程における条件などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態によるジャムの製造方法を工程順に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎された古代米の玄米を粉砕することによって生成された粉末状の米素材と、
所定の種類のポリフェノール素材と、
所定の種類の増粘多糖類と、
を含むことを特徴とするジャム。
【請求項2】
前記古代米が、黒米であることを特徴とする請求項1に記載のジャム。
【請求項3】
前記ポリフェノール素材が、ブルーベリーの抽出物であることを特徴とする請求項1または2に記載のジャム。
【請求項4】
前記増粘多糖類が、ローカストビーンガムおよびキサンタンガムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のジャム。
【請求項5】
古代米の玄米を焙煎する焙煎工程と、
前記焙煎された玄米を粉砕することにより、粉末状の米素材を生成する米素材生成工程と、
前記生成された米素材、所定の種類のポリフェノール素材、および所定の種類の増粘多糖類を含む原料を、攪拌・加熱機に投入し、攪拌しながら加熱する攪拌・加熱工程と、
を備えていることを特徴とするジャムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−254301(P2009−254301A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108347(P2008−108347)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(502095926)大曽根商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】