説明

ジョイントコネクタ

【課題】信頼性が高く電線の分岐接続を容易にする。
【解決手段】保持体1に設けた端子挿入孔1cに、電線3を接続した受端子2の接続部2aを挿入し、長溝1bに沿って電線3を装着する。ピン挿入孔1a内において、接続部2aに形成した筒状接点2cの中心はピン挿入孔1aの中心と一致する。スルーピン4のピン端子4aを保持体1の中心軸に設けたピン挿入孔1aに挿入すると、ピン端子4aはそれぞれの受端子2の接続部2aの筒状接点2cを貫通し、全ての受端子2がピン端子4aによって短絡されるため、全ての電線3は互いに導通することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のハーネス回路において使用するジョイントコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハーネス回路においては、幹線から複数の枝線を分岐する必要が屡々ある。そのために従来では、幹線の一部の被覆を剥き取り、露出した導体に枝線を圧着加工し分岐するスプラインジョイント方式と、幹線の端末部に回路分岐用コネクタを配し、幹線、枝線共に汎用コネクタ及び圧着端子を使用して分岐加工するジョイントコネクタ方式との2通りの方法が多用されている。
【0003】
後者のジョイントコネクタ方式はハーネス製造ライン上でのジョイント加工が可能となるため、前者のスプラインジョイント方式と比較して生産効率が向上する。また、スプラインジョイント方式ではハーネス完成後の回路変更が不可能であるが、ジョイントコネクタ方式ではハーネス完成後の修正が対応可能な利点を有している。また、ジョイントコネクタ方式では、圧着端子を使用していることから汎用コネクタと同等の電気的接続信頼性を確保できる。
【0004】
従来のスプラインジョイント方式では、ハーネス製造ラインの途中工程で一旦専用工程に移動し、ジョイント加工を実施しなければならない、或いは一度加工を行ってしまうと回路変更への対応ができないことから生産効率が悪く、また絶縁処理をテーピングで対応する方法が標準である等の電気的接続の信頼性にも課題を残している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしジョイントコネクタ方式においても、部品点数の増大・回路長の増大に伴う電線使用量の増大の問題がある。また、ハーネス製造初期段階で枝線端末に端子圧着加工するため、ハーネス製造ラインの中間で他工程に移動する必要はなく、生産効率は良好であるが、コネクタ及び嵌合する相手側汎用コネクタ、バスバー、端子等の部品点数が多くなることからコスト面での課題がある。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、簡易で信頼性の高い電線分岐が可能なジョイントコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための本発明に係るジョイントコネクタの技術的特徴は、柱状体の中心軸にピン挿入孔を設け、表面に長手方向に沿って単数又は複数の長溝を設けると共に該長溝の底部に前記ピン挿入孔に連通した端子挿入孔を設けた保持体と、前端に筒状接点を有し該筒状接点を前記ピン挿入孔の軸線と一致するようにして前記端子挿入孔に挿入する接続部を有すると共に後端に電線を接続した受端子と、前記ピン挿入孔に挿し込むことにより前記受端子の筒状接点に挿通し前記受端子同士を短絡する金属製のピン端子とから成ることにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るジョイントコネクタによれば、筒状接点を有する受端子にピン端子を圧入する接触構造を採用したことにより、構造的にも簡素となり、電気的接続の信頼性が向上し、従来例と比較して部品点数が減少し、コスト低減が可能である。
【0009】
更に、従来のジョイントコネクタと同等の信頼性、作業性を有し、スプラインジョイント方式と同等の使用電線長で済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
本実施例のジョイントコネクタにおいては、主として、図1に示すピン挿入孔1a、長溝1b、端子挿入孔1cを有する保持体1と、保持体1の端子挿入孔1cに挿入する接続部2a、電線3を接続した圧着部2bを有する複数個の受端子2、ピン端子4a、把持部4bを有するスルーピン4とから構成されている。
【0011】
保持体1は合成樹脂材から成り、円柱体に対し、保持体1の中心軸を貫通しピン端子4aを挿入するためのピン挿入孔1aが設けられ、外側に長手方向に沿って例えば4個の断面略半円形の長溝1bが設けられている。更に、長溝1bの底部には、各長溝1bごとに単数又は複数個の端子挿入孔1cが形成され、中心のピン挿入孔1aと連通するようにされ、各端子挿入孔1cは受端子2の接続部2aが挿入し得るように形成されている。
【0012】
受端子2は1枚の導電金属板を打ち抜いて形成されており、図2のように前端に接続部2aには円筒状に絞り加工された筒状接点2cが設けられ、後端に圧着部2bが設けられているが、この圧着部2bは電線3を接続していない状態を示している。接続部2aが端子挿入孔1cを介してピン挿入孔1a内に挿入された場合に、筒状接点2cの中心軸がピン挿入孔1aの中心軸と合致するようにされている。
【0013】
接続部2aの先端縁部2dは半円状とされ、この先端縁部2dと筒状接点2cの曲率中心は一致し、先端縁部2dの半径は保持体1のピン挿入孔1aの半径とほぼ一致している。また、筒状接点2cには前後何れの側からでもピン端子4aを挿入し易いように、前後両側にテーパ状のガイド部2eが設けられている。
【0014】
スルーピン4は金属体のピン端子4aの端部に、電気絶縁性を有する合成樹脂製の把持部4bが取り付けられている。ピン端子4aは例えば1枚の導電金属板を折曲して折り畳み、図3の断面図に示すように成型され、略四角形の断面を有している。
【0015】
組立に際しては、図4に示すように保持体1の端子挿入孔1cに、図1の矢印で示すように電線3を接続した受端子2の接続部2aを挿入し、長溝1bに沿って電線3を装着する。接続部2aの先端縁部2dはピン挿入孔1aの半径とほぼ一致しているので、図5に示すように接続部2aはピン挿入孔1a内において安定して装着され、筒状接点2cの中心はピン挿入孔1aの中心と一致する。なお、このとき端子挿入孔1cに設けた図示しない係止部により、挿入した接続部2aが脱落しないように係止される。
【0016】
この状態において、スルーピン4の把持部4bを持ってピン端子4aをピン挿入孔1aに挿入すると、ピン端子4aはそれぞれの受端子2の接続部2aの筒状接点2cを貫通し、全ての受端子2がピン端子4aによって短絡されるため、全ての電線3は互いに導通することになる。
【0017】
また、スルーピン4のピン端子4aの挿入は保持体1の何れの側からピン挿入孔1aに挿入してもよい。このとき、ピン端子4aの断面が略四角状のため、筒状接点2cの内壁にピン端子4aの略四角形の角部が接触するため、良好な電気接触特性が得られる。
【0018】
このような組立体に対して、外側からテーピングしたり、或いは絶縁性筒体を装着することにより、このジョイントコネクタは外部に対する電気絶縁性が確保される。
【0019】
このように、このジョイントコネクタはスルーピン4を用いて端子接続を実施するため、受端子2を小さくすることが可能であり、アッセンブリ後の外観形状が円柱形となり、ハーネス本体への組み込みが容易となる。また、スルーピン4の周囲に端子を配列するため、スプリング接点構造品と比較して、各電線3の干渉をなくすことができる。
【0020】
なお実施例において、保持体1は円柱状として説明したが、多角柱状であっても、また楕円状であってもよい。また、保持体1には4個の長溝1bを設けたが、この長溝1bは4個に限られることはない。
【0021】
保持体1の長溝1b内には、図6に示すように受端子2を安定して支持するために、受端子2の圧着部2bの形状に適合した突起1dを形成することもできる。また、長溝1b内の端子挿入孔1cも図6に示すように、接続部2aが何れの方向を向いても挿入できるような形状とすることも可能である。更に、受端子2の保持体1の表面や長溝1b内に、スルーピン4の挿入方向や電線3の配置方向を示す矢印やマークを付してもよい。
【0022】
スルーピン4についても、ピン端子4aは金属棒を略四角形断面に加工したり、例えば図7に示すように捩れを加えて、受端子2との接触性を良好とすることもできる。また、ピン端子4aの断面形状も円形であっても支障はない。
【0023】
また、2個のスルーピン4をピン挿入孔1aの両側から挿入するようにすることもでき、この場合には中央で2個のピン端子4aが接触しない長さとしておけば、一方のスルーピン4による受端子2の短絡と、他方のスルーピン4による受端子2の短絡を別個の回路にすることができる。
【0024】
また、ピン挿入孔1aは必ずしも透孔ではなく、行き止まりの孔であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】分解斜視図である。
【図2】受端子の斜視図である。
【図3】ピン端子の断面図である。
【図4】組立体の斜視図である。
【図5】保持体に受端子を挿入した状態の断面図である。
【図6】保持体の長溝内に突起を形成した状態の斜視図である。
【図7】スルーピンの変形例の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 保持体
1a ピン挿入孔
1b 長溝
1c 端子挿入孔
1d 突起
2 受端子
2a 接続部
2b 圧着部
2c 筒状接点
2d 先端縁部
2e ガイド部
3 電線
4 スルーピン
4a ピン端子
4b 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体の中心軸にピン挿入孔を設け、表面に長手方向に沿って単数又は複数の長溝を設けると共に該長溝の底部に前記ピン挿入孔に連通した端子挿入孔を設けた保持体と、前端に筒状接点を有し該筒状接点を前記ピン挿入孔の軸線と一致するようにして前記端子挿入孔に挿入する接続部を有すると共に後端に電線を接続した受端子と、前記ピン挿入孔に挿し込むことにより前記受端子の筒状接点に挿通し前記受端子同士を短絡する金属製のピン端子とから成ることを特徴とするジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記長溝は電線を収容するため断面略半円状としたことを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記長溝内に前記受端子を支持する突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記ピン端子は断面略四角形としたことを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項5】
前記ピン端子に電気絶縁性を有する把持部を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項6】
前記受端子の前記電線への接続は圧着方式によることを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−123015(P2007−123015A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312774(P2005−312774)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】