ジョイント
【課題】部品数を減らし、かつ、製造工程を簡略化する。
【解決手段】複数の球体29a、29dと、各球体29a、29dを受ける半球状の球体受け22a〜22fが曲面に形成されている円柱状の内ハブ20と、内ハブ20を収容する収容部17と収容部17と一体的に形成されていて各22a〜22fで受けられた球体29a、29dが収容される複数の長手溝12a〜12fとを有する外ハブ10とを備える。
【解決手段】複数の球体29a、29dと、各球体29a、29dを受ける半球状の球体受け22a〜22fが曲面に形成されている円柱状の内ハブ20と、内ハブ20を収容する収容部17と収容部17と一体的に形成されていて各22a〜22fで受けられた球体29a、29dが収容される複数の長手溝12a〜12fとを有する外ハブ10とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶や産業機械などの動力伝達部に用いられるジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「内周面の円周方向等分位置に軸方向に延びるトラック溝を備えた外輪部材と、外周面の円周方向等分位置に軸方向に延びるトラック溝を備えた内輪部材と、内・外輪部材のトラック溝間に介在するトルク伝達部とを有し、トルク伝達部を、ギア部を備えたジャーナル部材と、ジャーナル部材に回転自在に担持されたローラーとで構成し、ローラーを外輪部材のトラック溝に収容させ、内輪部材のトラック溝の底面にギア部を設けるとともにジャーナル部材のギア部を内輪のギア部と噛み合わせることによりジャーナル部材が内輪に対して傾くことを可能にした摺動式等速ジョイント」がある(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−27881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているジョイントは、外輪部材及び内輪部材に加えて、トルク伝達部を備えている。トルク伝達部は、ギア部を備えたジャーナル部材と、ジャーナル部材に回転自在に担持されたローラーとで構成している。また、ジャーナル部材のギア部は、内輪のギア部と噛み合わせるという製造工程を経ている。
【0005】
このように、上記ジョイントは、部品数が多いという点と、製造段階で面倒な噛み合わせ工程を経る必要があるといった点とに問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記各課題を解決したジョイントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のジョイントは、
複数の球体(例えば、図1の符号29a〜29d)と、
前記各球体を受ける半球状の窪部(例えば、図2の符号22a〜22d)が頭部(例えば、図2の符号21)の側面に形成されていて当該頭部に首部(例えば、図2の符号23)を介して円柱状の胴部(例えば、図2の符号24)が位置する部材(例えば、図1の符号20)と、
前記部材を収容する収容部(例えば、図1の符号17)と当該収容部と一体的に形成されていて前記各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝(例えば、図2の符号12a〜12d)とを有するハブ(例えば、図1の符号10)とを備える。
【0008】
前記部材は、前記ハブと連結される他のハブ(例えば、図1の符号10)と一体形成されていてもよい。つまり、前記部材が前記他のハブの一部を構成していてもよい。
【0009】
或いは、前記部材は、2つのハブ(例えば、図6の符号10,10’)間にまたがって収容されるようにしてもよい。この場合には、前記部材は、前記ハブの各長手溝に収容される球体と、前記ハブと連結される他のハブに収容される球体とを受ける窪部を有するようにするとよい。
【0010】
前記長手溝の底部は、開口部分を中央部分よりも浅くするとよい(例えば、図4の符号12a〜12dに示す形状とする。)。この結果、当該開口部分によって球体が留められるため、部材とハブとが使用中に外れにくくなる。
【0011】
前記ハブと当該ハブに連結されるシャフトとが螺合により連結されてもよい(例えば、図9の符号34の構造とする)。係る場合、特に、ジョイント本体が小型の場合に好適に用いることができる。
【0012】
なお、前記各球体の直径は、各球体の耐久性を考慮し、前記胴部の直径の略1/4〜1/8の範囲とするとよい。この範囲内であれば、ジョイントの使用時に、各球体にかかる応力は、耐久性に影響を及ぼすほど過度とはならない。
【0013】
また、前記部材と前記ハブとが、相互に外れることを防止する防止部を備えるとよい。防止部のタイプは幾つかあるが、いずれを採用するかは、前記ハブの長手溝の底面とハブの外側壁との間の肉厚によって選択するとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るジョイントの分解斜視図である。図1に示すジョイントは、以下説明する、外ハブ10と、内ハブ20と、球体29a〜29dと、シャフト30,40に大別される。
【0016】
外ハブ10と内ハブ20とは、外ハブ10に形成されている収容部17に、内ハブ20の頭部21(図2)が収容されることで連結される。
【0017】
内ハブ20は、後述するように、球体29a〜29dを受ける半球状の窪部が頭部21の側面に形成されていて、頭部21に首部23を介して円柱状の胴部24が位置する構成とされている。胴部24の底面には、シャフト40を受けられるように開口部25が形成されている。
【0018】
外ハブ10は、内ハブ20を収容する収容部と当該収容部と一体的に形成されていて前記各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝とを有する。
【0019】
球体29a〜29dは、ステンレス、セラミック、金属等の磁性体などから成り、その寸法はジョイント自体の寸法が下記例の場合には4φ程度としている。球体29a〜29dの数は4つに限定されるものではない。一般的には、球体29a〜29dの数は、ジョイント本体の大きさ、材料(硬度)に応じて決定すればよい。また、球体29a〜29dの直径は、球体29a〜29dの耐久性を考慮し、内ハブ20の胴部24(図2)の直径の略1/4〜1/8の範囲とするとよい。
【0020】
図2(a)は、図1の内ハブ20を螺子穴26b側から見た側面図である。図2(b)は、内ハブ20を頭部21側から見た側面図である。図2(c)は、図2(b)の球体受け22a付近の拡大図である。
【0021】
内ハブ20は、プラスチック製、金属製などである。内ハブ20は、複数の球体29a〜29dを受ける半球状の球体受け22a〜22dが曲面に形成されている概形が円柱状の頭部21を含む。ここで、半球状には、概形が円錐(図2(a)に示す断面図ではV字状となる形状)に近いものも含まれる。球体29a〜29dと球体受け22a〜22dとの間にはグリースが塗布される。内ハブ20は、シャフト40を受けるための開口部25が底面に形成されていて、開口部25で受けたシャフト40をその側面から留める螺子46,48を受ける螺子穴26a,26bが側面に形成されている胴部24を含む。さらに、内ハブ20は、頭部21と胴部24とを結んでいて、シャフト30,40間の曲がりを許容する部分として機能する首部23を含む。
【0022】
なお、内ハブ20のサイズの一例は、以下の通りである。
【0023】
頭部21:端面直径12.4φ、首部23との境界直径12.7φ、丈6.7mm、端面から球体受け29a〜29dの底部までの長さ3.7mm、軸心から球体受け29a〜29dの底部までの長さ4.47mm、首部23との境界直径から球体受け29a〜29dの底部までの深さ1.88mm、球体受け29a〜29dの開口径4.8〜5.0φ、
首部23:頭部21との境界から細径の頭部21側までの長さ2.8mm、細径9.2φ、細径の頭部21側から胴部24との境界までの長さ4.5mm、胴部24から細径に向かう部分の角度67度、
胴部24:直径20φ、長さ13mm、端面から螺子穴26a,26bの軸心までの長さ5mm、開口部25の直径5.7φ、開口部25の深さ12mm、螺子穴26a,26bの直径3.35φ。
【0024】
また、内ハブ20は、ダイカスト成型するとよいが、例えば、球体受け22a〜22dは掘削などによって作成してもよい。
【0025】
図3(a)は、図1の外ハブ10を開口部15側から見た側面図である。図3(b)は、外ハブ10の断面図である。図3(c)は、外ハブ10を収容部17側から見た側面図である。
【0026】
外ハブ10は、プラスチック製、金属製などである。外ハブ10は、内ハブ20の頭部21を収容する収容部17と、収容部17に対して一体的に一定間隔で形成されていて各球体受け22a〜22dで受けられた球体29a〜29dが収容される複数の長手溝12a〜12dとを有する第1部分11を含む。外ハブ10は、シャフト30を受けるための開口部15が底面に形成されていて、開口部15で受けたシャフト30をその側面から留める螺子36,38を受ける螺子穴16a,16bが側面に形成されている第2部分13を含む。なお、外ハブ10のサイズの一例は、以下の通りである。
【0027】
第1部分11:収容部17の深さ13mm、長手溝12a〜12dの長手方向長さ10.5mm、長手溝12aの底から長手溝12dの底までの長さ17mm、
第2部分13:直径20φ、長さ11mm、端面から螺子穴16a,16bの軸心までの長さ5mm、開口部15の直径5.7φ、開口部15の深さ11mm、螺子穴16a,16bの直径3.35φ。
【0028】
外ハブ10及び内ハブ20の各サイズを、上記例示のものと略相似で変更すれば、ジョイント全体のサイズを変更することができる。ただし、外ハブ10及び内ハブ20の硬性と球体29a〜29dの硬性とのずれが大きい場合には、ジョイント使用時に硬性が低い方が変形しないように、球体29a〜29dの数を変更するとよい。一般的には、ジョイントが大きくするならば、球体の数を増やすようにするとよい。
【0029】
また、外ハブ10は、ダイカスト成形するとよいが、例えば、長手溝12a〜12dは掘削などによって作成してもよい。
【0030】
シャフト30,40は、ステンレス、セラミックなどから成り、その寸法は開口部15,25程度、ジョイント自体の寸法が上記例の場合には6φ程度としている。
【0031】
このように、本実施形態のジョイントは、外ハブ10と、内ハブ20と、球体29a〜29dという3つの部品によって構成される。しかも、本実施形態のジョイントは、複雑な構造を要しない。このようなジョイントの場合にも、連結対象間の回転時の等速性が確認できた。
【0032】
(実施形態2)
図4(a)は、本発明の実施形態2に係る外ハブ10の断面図である。図4(b)は、外ハブ10を収容部17側から見た側面図である。図4(c)は、外ハブ10と内ハブ20とを連結する状態を示す図である。なお、ここでは、球体の数を6つとした場合の例を示している。
【0033】
図4に示すように、本実施形態では、長手溝12a〜12fの長手方向の中央部分を開口部分よりも相対的に深くしている。このような外ハブ10は、図3に示した外ハブ10のように、長手溝12a〜12fを形成しておき、その中央部分及び開口端を、掘削等によって緩やかに広げている。
【0034】
なお、同じサイズの内ハブ20を用いる場合には、実施形態2に係る外ハブ10の長手溝12a〜12fの開口部分の方が、実施形態1に係る外ハブ10の長手溝12a〜12dの開口部分のよりも深くない。そして、実施形態2に係る外ハブ10の長手溝12a〜12fの中央部分を、実施形態1に係る外ハブ10の長手溝12a〜12dの深さと同じまで掘削等している。
【0035】
具体的には、図3に示す外ハブ10の場合、長手溝12aの底から長手溝12dの底までの長さが17mmであったのに対して、図4に示す外ハブ10の場合、長手溝12aの開口部分の底から長手溝12dの開口部分の底までの長さは16.3mmとしている。
【0036】
このような外ハブ10に対して、内ハブ20を35度程度に傾けると、図4(c)上下方向における球体29a,29dの距離を、長手溝12a,12d間の距離以下とすることが可能となる。したがって、内ハブ20を傾けた状態で収容部17に差し込むことによって、内ハブ20と外ハブ10とを連結することができる。
【0037】
内ハブ20と外ハブ10との連結後に、内ハブ20と外ハブ10との角度をなくせば、球体20a〜29fが、長手溝12a〜12fの中央部分と開口端との間の隆起部分に引っ掛るため、内ハブ20と外ハブ10とが外れることはない。なお、使用時には、内ハブ20と外ハブ10との為す角度が15度程度であれば、内ハブ20と外ハブ10との連結は担保される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る外ハブ10を用いたジョイントは、使用時に、内ハブ20と外ハブ10とが外れにくくなる。具体的には、内ハブ20と外ハブ10との軸心を相互に傾けていきながら2000時間程度回転させた場合、15度程度であれば、外れることはなかった。
【0039】
(実施形態3)
図5は、図3の変形例である。図5に示す外ハブ10は、合計8つの長手溝12a〜12hが形成されている。この外ハブ10は、ダイカスト成形している。
【0040】
ここで、図5(b)上下左右に位置する長手溝12a〜12dは、図3に示した外ハブ10のように、中央部分の掘削等を行うことなく使用するものである。一方、図5(b)長手溝12a〜12d間に位置する長手溝12e〜12hは、図4に示した外ハブ10のように、中央部分の掘削等を行ってから使用するものである。なお、既述のように、長手溝12a〜12dは、長手溝12e〜12hよりも深くなるように形成している。
【0041】
このように、本実施形態では、実施形態1,2で説明した外ハブ10のいずれとしても用いることができるように、外ハブ10をダイカスト成形している。したがって、図5に示す外ハブ10を量産しておき、用途に応じて長手溝12e〜12hの加工を行えばよい。
【0042】
(実施形態4)
図6は、2つの外ハブ10,10’を、複数の球体が取り付けられている1つの連結部材20を介して接続するタイプのジョイントを示す図である。
【0043】
図6(a)は、外ハブ10の断面図である。図6(b)は、外ハブ10を収容部17から見た側面図である。図6(c)は、連結部材20の側面及び断面図である。図6(d)は、連結部材20の平面図である。図6(e)は、外ハブ10,10’を連結部材20を介して接続して互いに軸を偏心させた状態を示す図である。
【0044】
既述の各実施形態のジョイントは、構造上、シャフト30,40の軸を偏心させることができない。これに対して、本実施形態のジョイントは、構造上、外ハブ10,10’の軸を偏心させることが可能となるため、これに付随して、シャフト30,40の軸を偏心させることができる。
【0045】
(実施形態5)
図7は、図3に示すタイプの外ハブ10の加工工程の説明図である。本実施形態では、外ハブ10と内ハブ20との使用時の連結を担保するために、外ハブ10と内ハブ20とを連結した後に、長手溝12a〜12dの開口端付近の底部を、ポンチなどの冶具51〜54を用いて潰している。
【0046】
具体的には、図7(a)に示すように、外ハブ10の長手溝12a〜12dに対応する外周部分に、先端が尖っている冶具51〜54を、外ハブ10の軸心に向けて当てる。ここで、図7(b)に示すように、外ハブ10は、外周端部に段差が形成してあり、この段差部分に冶具51〜54の先端を、所定の角度で当てる。
【0047】
そして、この状態で、冶具51〜54に対して、外ハブ10の軸心に向けて外力を加える。その結果、外ハブ10は、図7(c)及び図7(d)に示すように、長手溝12a〜12dに対応する外周部分が潰れる。長手溝12a〜12d内の球体は、潰れた部分までは到達することができるが、当該部分で引っ掛かる。よって、外ハブ10と内ハブ20とが外れることはない。
【0048】
ここで、図7に示す手法は、外ハブ10と内ハブ20とを外れないようにする工夫を施してある。しかし、ジョイントのサイズが大型化すると、長手溝12a〜12dの底部から外ハブ10の外周面までの肉厚が増し、図7に示す手法では、外ハブ10と内ハブ20との外れないようにするのに十分な潰れ部分を形成することができない場合がある。
【0049】
係る場合には、外ハブ10と内ハブ20とを外れること自体を防止するのではなく、図8に示すように、外ハブ10と内ハブ20とを外れた場合にも、球体が球体受けから外れないようにする必要がある。
【0050】
図8は、球体が球体受けから外れることを防止するカバー60の上面図及び側面図である。ここでは、球体受けが6つある場合のカバー60を示している。
【0051】
図8に示すように、カバー60は、中央に開口部61が形成されているカバー本体と、カバー本体の縁部からカバー本体に対して直角に立ち上がる片部60a,60bを含む合計6つの片部とを有している。片部60a,60bの間隔は、球体29a等の直径よりも狭くしてある。
【0052】
カバー60は、球体を球体受けに収容した後に、カバー60によって内ハブ20の頭部21を覆う態様で取り付ける。なお、内ハブ20の頭部21の端面中央(開口部61に対応する位置)には、螺子穴を形成しておけば、ビスなどを用いてカバー60を内ハブ20に固着することが可能となる。もちろん、内ハブ20とカバー60とは接着剤などで固着してもよい。
【0053】
上記のようにして、カバー60を内ハブ20に取り付けると、図示しているように、球体29aは、図示しているように、片部60a,60b間で留まり、落下しなくなる。
【0054】
(実施形態6)
図9は、様々サイズのジョイントに対するシャフト30,40の取り付け態様を示す図である。図9(a)は、シャフト30,40の径が、開口部15,25の径以下の場合の例を示す図である。この場合には、図9(a)に示すように、まず、シャフト30,40の先端部34,43を螺子切りし、かつ、開口部15,25に螺子穴を形成する。そして、先端部34,43は、ナット32,42との螺合によってジョイントに連結される。この際、外ハブ10側は、開口部15と収容部17とが一体形成されているため、外ハブ10に対するシャフト30の位置決めを行うためにナット32を用いることは必須となる。一方、内ハブ20側は、開口部25に底があるためナット42を用いることは必須ではないが、内ハブ20とシャフト40とのより頑丈な連結のためにナット42を用いるとよい。
【0055】
図9(a)に示すような連結手法は、ジョイント及びシャフト30,40の径が小さいときに有効である。これは、ジョイント等の径が小さい場合には、内ハブ20等の側面と開口部25との間が肉薄のため、図1に示した螺子穴26a等を内ハブ20等に形成することができなくなるので、螺子36等を用いることなく、ジョイントとシャフト30,40との連結が必要となるからである。具体的には、内ハブ20等の直径が4φ以下となると、螺子穴26a等の形成が困難となる。
【0056】
図9(b)は、シャフト30,40の径が、開口部15,25の径よりも大きい場合の例を示す図である。この場合には、図9(b)に示すように、まず、シャフト30,40の先端部34,43を螺子切りし、かつ、開口部15,25に螺子穴を形成する。そして、先端部34,43は、開口部15,25との螺合によってジョイントに連結される。係る場合には、ナットは不要である。先端部34,43の底面上で外ハブ10に対するシャフト30の位置決めがなされるからである。もちろん、内ハブ20とシャフト40とのより頑丈な連結、外ハブ10とシャフト30とのより頑丈な連結のためにナットを補助的に用いてもよい。
【0057】
図9(c)は、図9(b)の変形例である。ここでは、内ハブ20の胴部24の径を図1等に示す場合に比して相対的に小さくした場合の、内ハブ20とシャフト40との連結例を示している。図示するように、内ハブ20の端部を雄螺子とし、かつ、シャフト40の端部を雌螺子としている。ここでは、補助的にナット42を用いている。
【0058】
(実施形態7)
図10は、図1の変形例を示す図である。図10には、図1に示したもののほか、ステンレスなどからなる略C型形状のリング部100を示している。リング部100は、略C型形状としているため、切欠き部分100aを有している。また、図10には、長手溝12a〜12dの短手方向を横切る方向に形成されていて、リング部100を受ける受部110を示している。
【0059】
リング部100の径と受部110の径とは、略同一としている。このため、リング部100を受部110にはめ込んだ後には、意図的にリング部100を受部110から外そうとしなければ外れない。
【0060】
リング部100及び受部110は、外ハブ10と内ハブ20とを一旦連結した後に、その連結を維持するものである。すなわち、リング部100及び受部110は、図4,図7を用いて説明した構造に対する代替物として用いられる。
【0061】
図11は、図10に示す各部材の組み立て原理の説明図である。図11(a)〜図11(c)には、外ハブ10を収容部17側から見た側面図を示している。図11(d)には、外ハブ10の断面図の一部を示している。
【0062】
図11(a)に示すように、収容部17には、既述のように、長手溝12a〜12dが形成されている。また、長手溝12a〜12d等には、ダイカストによって受部110が形成されている。もっとも、外ハブ10をダイカスト成型しない場合には、切削等によって長手溝12a〜12d等に受部110を設けてもよい。
【0063】
図11(b)に示すように、長手溝12a〜12dには、球体29a〜29dが収容される。なお、説明の都合上、内ハブ20を図示していないが、実際には、球体29a〜29dは、内ハブ20で受けられた状態で長手溝12a〜12dに収容される。
【0064】
図11(c)に示すように、受部110に対して、リング部100をはめ込む。この際、リング部100は、略C型形状であるため、内径方向に向けて力を加えることによって、径を縮めることができる。径が縮められたリング部100を収容部17から受部110に向けてはめ込む。実際に、リング部100が受部110まで到達すると、縮められた径が広がり、リング部100が受部110に収まる。
【0065】
ここで、上記手法によって、リング部110を受部110で受けさせようとするためには、リング部100を内径方向に向けて力を加えたときに、リング部100の径が、収容部17の径よりも小さくなるような幅で切欠き部100aを形成しておく必要がある点に留意されたい。また、リング部100は、内径方向に向けて加えられる力が解除された場合に、リング部100がもとの形状に戻る硬性が必要とされる。一例としては、SUS304を用いることができる。
【0066】
図11(d)に示すように、外ハブ10に収容された球体20aは、受部110にはめ込まれたリング部100がストッパとなり、外ハブ10から外れることがない。もっとも、球体20aは、外ハブ10内に収容されている状態では、球体受け22aから抜け落ちることもない。したがって、球体20a、受部110及びリング部100によって、外ハブ10と内ハブ20との連結が維持されることになる。
【0067】
(実施形態8)
図12は、図2の変形例を示す図である。図12には、図2(b)に対応する内ハブ20の断面図を示している。この内ハブ20は、図11に示すようなストッパを有していない外ハブ10との連結に好適なものである。
【0068】
図12には、図2に示したもののほか、球体受け29a,29cの底部に形成された溝28a,28cと、溝28a,28c内に収容された磁石27a,27cとを示している。
【0069】
ここで、外ハブ10がストッパを有していない場合には、外ハブ10と内ハブ20とを連結して使用しているときに、外ハブ10と内ハブ20とが相互に外れる場合がある。係る場合に、球体29a等が球体受け22a等から落ちないようにするために、本実施形態では、球体29a等を磁性体とし、かつ、磁石27a等を磁石受け22a等に設ける。
【0070】
こうすれば、外ハブ10と内ハブ20とが相互に外れても、球体29a等は、磁石27a等によって吸着されるため、球体受け22a等から落ちない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態1に係るジョイント構造の分解斜視図である。
【図2】図1の内ハブ20の側面図及び球体受け22a付近の拡大図である。
【図3】図1の外ハブ10の側面図及び断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る外ハブ10の断面図、側面図及び外ハブ10と内ハブ20とを連結する状態を示す図である。
【図5】図3の変形例である。
【図6】2つの外ハブ10,10’を、複数の球体が取り付けられている1つの連結部材20を介して接続するタイプのジョイントを示す図である。
【図7】図3に示すタイプの外ハブ10の加工工程の説明図である。
【図8】球体が球体受けから外れることを防止するカバー60の上面図及び側面図である。
【図9】様々サイズのジョイントに対するシャフト30,40の取り付け態様を示す図である。
【図10】図1の変形例を示す図である。
【図11】図10に示す各部材の組み立て原理の説明図である。
【図12】図2の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10,10’ 外ハブ
20 内ハブ
29 球体
30,40 シャフト
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶や産業機械などの動力伝達部に用いられるジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「内周面の円周方向等分位置に軸方向に延びるトラック溝を備えた外輪部材と、外周面の円周方向等分位置に軸方向に延びるトラック溝を備えた内輪部材と、内・外輪部材のトラック溝間に介在するトルク伝達部とを有し、トルク伝達部を、ギア部を備えたジャーナル部材と、ジャーナル部材に回転自在に担持されたローラーとで構成し、ローラーを外輪部材のトラック溝に収容させ、内輪部材のトラック溝の底面にギア部を設けるとともにジャーナル部材のギア部を内輪のギア部と噛み合わせることによりジャーナル部材が内輪に対して傾くことを可能にした摺動式等速ジョイント」がある(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−27881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているジョイントは、外輪部材及び内輪部材に加えて、トルク伝達部を備えている。トルク伝達部は、ギア部を備えたジャーナル部材と、ジャーナル部材に回転自在に担持されたローラーとで構成している。また、ジャーナル部材のギア部は、内輪のギア部と噛み合わせるという製造工程を経ている。
【0005】
このように、上記ジョイントは、部品数が多いという点と、製造段階で面倒な噛み合わせ工程を経る必要があるといった点とに問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記各課題を解決したジョイントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のジョイントは、
複数の球体(例えば、図1の符号29a〜29d)と、
前記各球体を受ける半球状の窪部(例えば、図2の符号22a〜22d)が頭部(例えば、図2の符号21)の側面に形成されていて当該頭部に首部(例えば、図2の符号23)を介して円柱状の胴部(例えば、図2の符号24)が位置する部材(例えば、図1の符号20)と、
前記部材を収容する収容部(例えば、図1の符号17)と当該収容部と一体的に形成されていて前記各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝(例えば、図2の符号12a〜12d)とを有するハブ(例えば、図1の符号10)とを備える。
【0008】
前記部材は、前記ハブと連結される他のハブ(例えば、図1の符号10)と一体形成されていてもよい。つまり、前記部材が前記他のハブの一部を構成していてもよい。
【0009】
或いは、前記部材は、2つのハブ(例えば、図6の符号10,10’)間にまたがって収容されるようにしてもよい。この場合には、前記部材は、前記ハブの各長手溝に収容される球体と、前記ハブと連結される他のハブに収容される球体とを受ける窪部を有するようにするとよい。
【0010】
前記長手溝の底部は、開口部分を中央部分よりも浅くするとよい(例えば、図4の符号12a〜12dに示す形状とする。)。この結果、当該開口部分によって球体が留められるため、部材とハブとが使用中に外れにくくなる。
【0011】
前記ハブと当該ハブに連結されるシャフトとが螺合により連結されてもよい(例えば、図9の符号34の構造とする)。係る場合、特に、ジョイント本体が小型の場合に好適に用いることができる。
【0012】
なお、前記各球体の直径は、各球体の耐久性を考慮し、前記胴部の直径の略1/4〜1/8の範囲とするとよい。この範囲内であれば、ジョイントの使用時に、各球体にかかる応力は、耐久性に影響を及ぼすほど過度とはならない。
【0013】
また、前記部材と前記ハブとが、相互に外れることを防止する防止部を備えるとよい。防止部のタイプは幾つかあるが、いずれを採用するかは、前記ハブの長手溝の底面とハブの外側壁との間の肉厚によって選択するとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るジョイントの分解斜視図である。図1に示すジョイントは、以下説明する、外ハブ10と、内ハブ20と、球体29a〜29dと、シャフト30,40に大別される。
【0016】
外ハブ10と内ハブ20とは、外ハブ10に形成されている収容部17に、内ハブ20の頭部21(図2)が収容されることで連結される。
【0017】
内ハブ20は、後述するように、球体29a〜29dを受ける半球状の窪部が頭部21の側面に形成されていて、頭部21に首部23を介して円柱状の胴部24が位置する構成とされている。胴部24の底面には、シャフト40を受けられるように開口部25が形成されている。
【0018】
外ハブ10は、内ハブ20を収容する収容部と当該収容部と一体的に形成されていて前記各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝とを有する。
【0019】
球体29a〜29dは、ステンレス、セラミック、金属等の磁性体などから成り、その寸法はジョイント自体の寸法が下記例の場合には4φ程度としている。球体29a〜29dの数は4つに限定されるものではない。一般的には、球体29a〜29dの数は、ジョイント本体の大きさ、材料(硬度)に応じて決定すればよい。また、球体29a〜29dの直径は、球体29a〜29dの耐久性を考慮し、内ハブ20の胴部24(図2)の直径の略1/4〜1/8の範囲とするとよい。
【0020】
図2(a)は、図1の内ハブ20を螺子穴26b側から見た側面図である。図2(b)は、内ハブ20を頭部21側から見た側面図である。図2(c)は、図2(b)の球体受け22a付近の拡大図である。
【0021】
内ハブ20は、プラスチック製、金属製などである。内ハブ20は、複数の球体29a〜29dを受ける半球状の球体受け22a〜22dが曲面に形成されている概形が円柱状の頭部21を含む。ここで、半球状には、概形が円錐(図2(a)に示す断面図ではV字状となる形状)に近いものも含まれる。球体29a〜29dと球体受け22a〜22dとの間にはグリースが塗布される。内ハブ20は、シャフト40を受けるための開口部25が底面に形成されていて、開口部25で受けたシャフト40をその側面から留める螺子46,48を受ける螺子穴26a,26bが側面に形成されている胴部24を含む。さらに、内ハブ20は、頭部21と胴部24とを結んでいて、シャフト30,40間の曲がりを許容する部分として機能する首部23を含む。
【0022】
なお、内ハブ20のサイズの一例は、以下の通りである。
【0023】
頭部21:端面直径12.4φ、首部23との境界直径12.7φ、丈6.7mm、端面から球体受け29a〜29dの底部までの長さ3.7mm、軸心から球体受け29a〜29dの底部までの長さ4.47mm、首部23との境界直径から球体受け29a〜29dの底部までの深さ1.88mm、球体受け29a〜29dの開口径4.8〜5.0φ、
首部23:頭部21との境界から細径の頭部21側までの長さ2.8mm、細径9.2φ、細径の頭部21側から胴部24との境界までの長さ4.5mm、胴部24から細径に向かう部分の角度67度、
胴部24:直径20φ、長さ13mm、端面から螺子穴26a,26bの軸心までの長さ5mm、開口部25の直径5.7φ、開口部25の深さ12mm、螺子穴26a,26bの直径3.35φ。
【0024】
また、内ハブ20は、ダイカスト成型するとよいが、例えば、球体受け22a〜22dは掘削などによって作成してもよい。
【0025】
図3(a)は、図1の外ハブ10を開口部15側から見た側面図である。図3(b)は、外ハブ10の断面図である。図3(c)は、外ハブ10を収容部17側から見た側面図である。
【0026】
外ハブ10は、プラスチック製、金属製などである。外ハブ10は、内ハブ20の頭部21を収容する収容部17と、収容部17に対して一体的に一定間隔で形成されていて各球体受け22a〜22dで受けられた球体29a〜29dが収容される複数の長手溝12a〜12dとを有する第1部分11を含む。外ハブ10は、シャフト30を受けるための開口部15が底面に形成されていて、開口部15で受けたシャフト30をその側面から留める螺子36,38を受ける螺子穴16a,16bが側面に形成されている第2部分13を含む。なお、外ハブ10のサイズの一例は、以下の通りである。
【0027】
第1部分11:収容部17の深さ13mm、長手溝12a〜12dの長手方向長さ10.5mm、長手溝12aの底から長手溝12dの底までの長さ17mm、
第2部分13:直径20φ、長さ11mm、端面から螺子穴16a,16bの軸心までの長さ5mm、開口部15の直径5.7φ、開口部15の深さ11mm、螺子穴16a,16bの直径3.35φ。
【0028】
外ハブ10及び内ハブ20の各サイズを、上記例示のものと略相似で変更すれば、ジョイント全体のサイズを変更することができる。ただし、外ハブ10及び内ハブ20の硬性と球体29a〜29dの硬性とのずれが大きい場合には、ジョイント使用時に硬性が低い方が変形しないように、球体29a〜29dの数を変更するとよい。一般的には、ジョイントが大きくするならば、球体の数を増やすようにするとよい。
【0029】
また、外ハブ10は、ダイカスト成形するとよいが、例えば、長手溝12a〜12dは掘削などによって作成してもよい。
【0030】
シャフト30,40は、ステンレス、セラミックなどから成り、その寸法は開口部15,25程度、ジョイント自体の寸法が上記例の場合には6φ程度としている。
【0031】
このように、本実施形態のジョイントは、外ハブ10と、内ハブ20と、球体29a〜29dという3つの部品によって構成される。しかも、本実施形態のジョイントは、複雑な構造を要しない。このようなジョイントの場合にも、連結対象間の回転時の等速性が確認できた。
【0032】
(実施形態2)
図4(a)は、本発明の実施形態2に係る外ハブ10の断面図である。図4(b)は、外ハブ10を収容部17側から見た側面図である。図4(c)は、外ハブ10と内ハブ20とを連結する状態を示す図である。なお、ここでは、球体の数を6つとした場合の例を示している。
【0033】
図4に示すように、本実施形態では、長手溝12a〜12fの長手方向の中央部分を開口部分よりも相対的に深くしている。このような外ハブ10は、図3に示した外ハブ10のように、長手溝12a〜12fを形成しておき、その中央部分及び開口端を、掘削等によって緩やかに広げている。
【0034】
なお、同じサイズの内ハブ20を用いる場合には、実施形態2に係る外ハブ10の長手溝12a〜12fの開口部分の方が、実施形態1に係る外ハブ10の長手溝12a〜12dの開口部分のよりも深くない。そして、実施形態2に係る外ハブ10の長手溝12a〜12fの中央部分を、実施形態1に係る外ハブ10の長手溝12a〜12dの深さと同じまで掘削等している。
【0035】
具体的には、図3に示す外ハブ10の場合、長手溝12aの底から長手溝12dの底までの長さが17mmであったのに対して、図4に示す外ハブ10の場合、長手溝12aの開口部分の底から長手溝12dの開口部分の底までの長さは16.3mmとしている。
【0036】
このような外ハブ10に対して、内ハブ20を35度程度に傾けると、図4(c)上下方向における球体29a,29dの距離を、長手溝12a,12d間の距離以下とすることが可能となる。したがって、内ハブ20を傾けた状態で収容部17に差し込むことによって、内ハブ20と外ハブ10とを連結することができる。
【0037】
内ハブ20と外ハブ10との連結後に、内ハブ20と外ハブ10との角度をなくせば、球体20a〜29fが、長手溝12a〜12fの中央部分と開口端との間の隆起部分に引っ掛るため、内ハブ20と外ハブ10とが外れることはない。なお、使用時には、内ハブ20と外ハブ10との為す角度が15度程度であれば、内ハブ20と外ハブ10との連結は担保される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る外ハブ10を用いたジョイントは、使用時に、内ハブ20と外ハブ10とが外れにくくなる。具体的には、内ハブ20と外ハブ10との軸心を相互に傾けていきながら2000時間程度回転させた場合、15度程度であれば、外れることはなかった。
【0039】
(実施形態3)
図5は、図3の変形例である。図5に示す外ハブ10は、合計8つの長手溝12a〜12hが形成されている。この外ハブ10は、ダイカスト成形している。
【0040】
ここで、図5(b)上下左右に位置する長手溝12a〜12dは、図3に示した外ハブ10のように、中央部分の掘削等を行うことなく使用するものである。一方、図5(b)長手溝12a〜12d間に位置する長手溝12e〜12hは、図4に示した外ハブ10のように、中央部分の掘削等を行ってから使用するものである。なお、既述のように、長手溝12a〜12dは、長手溝12e〜12hよりも深くなるように形成している。
【0041】
このように、本実施形態では、実施形態1,2で説明した外ハブ10のいずれとしても用いることができるように、外ハブ10をダイカスト成形している。したがって、図5に示す外ハブ10を量産しておき、用途に応じて長手溝12e〜12hの加工を行えばよい。
【0042】
(実施形態4)
図6は、2つの外ハブ10,10’を、複数の球体が取り付けられている1つの連結部材20を介して接続するタイプのジョイントを示す図である。
【0043】
図6(a)は、外ハブ10の断面図である。図6(b)は、外ハブ10を収容部17から見た側面図である。図6(c)は、連結部材20の側面及び断面図である。図6(d)は、連結部材20の平面図である。図6(e)は、外ハブ10,10’を連結部材20を介して接続して互いに軸を偏心させた状態を示す図である。
【0044】
既述の各実施形態のジョイントは、構造上、シャフト30,40の軸を偏心させることができない。これに対して、本実施形態のジョイントは、構造上、外ハブ10,10’の軸を偏心させることが可能となるため、これに付随して、シャフト30,40の軸を偏心させることができる。
【0045】
(実施形態5)
図7は、図3に示すタイプの外ハブ10の加工工程の説明図である。本実施形態では、外ハブ10と内ハブ20との使用時の連結を担保するために、外ハブ10と内ハブ20とを連結した後に、長手溝12a〜12dの開口端付近の底部を、ポンチなどの冶具51〜54を用いて潰している。
【0046】
具体的には、図7(a)に示すように、外ハブ10の長手溝12a〜12dに対応する外周部分に、先端が尖っている冶具51〜54を、外ハブ10の軸心に向けて当てる。ここで、図7(b)に示すように、外ハブ10は、外周端部に段差が形成してあり、この段差部分に冶具51〜54の先端を、所定の角度で当てる。
【0047】
そして、この状態で、冶具51〜54に対して、外ハブ10の軸心に向けて外力を加える。その結果、外ハブ10は、図7(c)及び図7(d)に示すように、長手溝12a〜12dに対応する外周部分が潰れる。長手溝12a〜12d内の球体は、潰れた部分までは到達することができるが、当該部分で引っ掛かる。よって、外ハブ10と内ハブ20とが外れることはない。
【0048】
ここで、図7に示す手法は、外ハブ10と内ハブ20とを外れないようにする工夫を施してある。しかし、ジョイントのサイズが大型化すると、長手溝12a〜12dの底部から外ハブ10の外周面までの肉厚が増し、図7に示す手法では、外ハブ10と内ハブ20との外れないようにするのに十分な潰れ部分を形成することができない場合がある。
【0049】
係る場合には、外ハブ10と内ハブ20とを外れること自体を防止するのではなく、図8に示すように、外ハブ10と内ハブ20とを外れた場合にも、球体が球体受けから外れないようにする必要がある。
【0050】
図8は、球体が球体受けから外れることを防止するカバー60の上面図及び側面図である。ここでは、球体受けが6つある場合のカバー60を示している。
【0051】
図8に示すように、カバー60は、中央に開口部61が形成されているカバー本体と、カバー本体の縁部からカバー本体に対して直角に立ち上がる片部60a,60bを含む合計6つの片部とを有している。片部60a,60bの間隔は、球体29a等の直径よりも狭くしてある。
【0052】
カバー60は、球体を球体受けに収容した後に、カバー60によって内ハブ20の頭部21を覆う態様で取り付ける。なお、内ハブ20の頭部21の端面中央(開口部61に対応する位置)には、螺子穴を形成しておけば、ビスなどを用いてカバー60を内ハブ20に固着することが可能となる。もちろん、内ハブ20とカバー60とは接着剤などで固着してもよい。
【0053】
上記のようにして、カバー60を内ハブ20に取り付けると、図示しているように、球体29aは、図示しているように、片部60a,60b間で留まり、落下しなくなる。
【0054】
(実施形態6)
図9は、様々サイズのジョイントに対するシャフト30,40の取り付け態様を示す図である。図9(a)は、シャフト30,40の径が、開口部15,25の径以下の場合の例を示す図である。この場合には、図9(a)に示すように、まず、シャフト30,40の先端部34,43を螺子切りし、かつ、開口部15,25に螺子穴を形成する。そして、先端部34,43は、ナット32,42との螺合によってジョイントに連結される。この際、外ハブ10側は、開口部15と収容部17とが一体形成されているため、外ハブ10に対するシャフト30の位置決めを行うためにナット32を用いることは必須となる。一方、内ハブ20側は、開口部25に底があるためナット42を用いることは必須ではないが、内ハブ20とシャフト40とのより頑丈な連結のためにナット42を用いるとよい。
【0055】
図9(a)に示すような連結手法は、ジョイント及びシャフト30,40の径が小さいときに有効である。これは、ジョイント等の径が小さい場合には、内ハブ20等の側面と開口部25との間が肉薄のため、図1に示した螺子穴26a等を内ハブ20等に形成することができなくなるので、螺子36等を用いることなく、ジョイントとシャフト30,40との連結が必要となるからである。具体的には、内ハブ20等の直径が4φ以下となると、螺子穴26a等の形成が困難となる。
【0056】
図9(b)は、シャフト30,40の径が、開口部15,25の径よりも大きい場合の例を示す図である。この場合には、図9(b)に示すように、まず、シャフト30,40の先端部34,43を螺子切りし、かつ、開口部15,25に螺子穴を形成する。そして、先端部34,43は、開口部15,25との螺合によってジョイントに連結される。係る場合には、ナットは不要である。先端部34,43の底面上で外ハブ10に対するシャフト30の位置決めがなされるからである。もちろん、内ハブ20とシャフト40とのより頑丈な連結、外ハブ10とシャフト30とのより頑丈な連結のためにナットを補助的に用いてもよい。
【0057】
図9(c)は、図9(b)の変形例である。ここでは、内ハブ20の胴部24の径を図1等に示す場合に比して相対的に小さくした場合の、内ハブ20とシャフト40との連結例を示している。図示するように、内ハブ20の端部を雄螺子とし、かつ、シャフト40の端部を雌螺子としている。ここでは、補助的にナット42を用いている。
【0058】
(実施形態7)
図10は、図1の変形例を示す図である。図10には、図1に示したもののほか、ステンレスなどからなる略C型形状のリング部100を示している。リング部100は、略C型形状としているため、切欠き部分100aを有している。また、図10には、長手溝12a〜12dの短手方向を横切る方向に形成されていて、リング部100を受ける受部110を示している。
【0059】
リング部100の径と受部110の径とは、略同一としている。このため、リング部100を受部110にはめ込んだ後には、意図的にリング部100を受部110から外そうとしなければ外れない。
【0060】
リング部100及び受部110は、外ハブ10と内ハブ20とを一旦連結した後に、その連結を維持するものである。すなわち、リング部100及び受部110は、図4,図7を用いて説明した構造に対する代替物として用いられる。
【0061】
図11は、図10に示す各部材の組み立て原理の説明図である。図11(a)〜図11(c)には、外ハブ10を収容部17側から見た側面図を示している。図11(d)には、外ハブ10の断面図の一部を示している。
【0062】
図11(a)に示すように、収容部17には、既述のように、長手溝12a〜12dが形成されている。また、長手溝12a〜12d等には、ダイカストによって受部110が形成されている。もっとも、外ハブ10をダイカスト成型しない場合には、切削等によって長手溝12a〜12d等に受部110を設けてもよい。
【0063】
図11(b)に示すように、長手溝12a〜12dには、球体29a〜29dが収容される。なお、説明の都合上、内ハブ20を図示していないが、実際には、球体29a〜29dは、内ハブ20で受けられた状態で長手溝12a〜12dに収容される。
【0064】
図11(c)に示すように、受部110に対して、リング部100をはめ込む。この際、リング部100は、略C型形状であるため、内径方向に向けて力を加えることによって、径を縮めることができる。径が縮められたリング部100を収容部17から受部110に向けてはめ込む。実際に、リング部100が受部110まで到達すると、縮められた径が広がり、リング部100が受部110に収まる。
【0065】
ここで、上記手法によって、リング部110を受部110で受けさせようとするためには、リング部100を内径方向に向けて力を加えたときに、リング部100の径が、収容部17の径よりも小さくなるような幅で切欠き部100aを形成しておく必要がある点に留意されたい。また、リング部100は、内径方向に向けて加えられる力が解除された場合に、リング部100がもとの形状に戻る硬性が必要とされる。一例としては、SUS304を用いることができる。
【0066】
図11(d)に示すように、外ハブ10に収容された球体20aは、受部110にはめ込まれたリング部100がストッパとなり、外ハブ10から外れることがない。もっとも、球体20aは、外ハブ10内に収容されている状態では、球体受け22aから抜け落ちることもない。したがって、球体20a、受部110及びリング部100によって、外ハブ10と内ハブ20との連結が維持されることになる。
【0067】
(実施形態8)
図12は、図2の変形例を示す図である。図12には、図2(b)に対応する内ハブ20の断面図を示している。この内ハブ20は、図11に示すようなストッパを有していない外ハブ10との連結に好適なものである。
【0068】
図12には、図2に示したもののほか、球体受け29a,29cの底部に形成された溝28a,28cと、溝28a,28c内に収容された磁石27a,27cとを示している。
【0069】
ここで、外ハブ10がストッパを有していない場合には、外ハブ10と内ハブ20とを連結して使用しているときに、外ハブ10と内ハブ20とが相互に外れる場合がある。係る場合に、球体29a等が球体受け22a等から落ちないようにするために、本実施形態では、球体29a等を磁性体とし、かつ、磁石27a等を磁石受け22a等に設ける。
【0070】
こうすれば、外ハブ10と内ハブ20とが相互に外れても、球体29a等は、磁石27a等によって吸着されるため、球体受け22a等から落ちない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態1に係るジョイント構造の分解斜視図である。
【図2】図1の内ハブ20の側面図及び球体受け22a付近の拡大図である。
【図3】図1の外ハブ10の側面図及び断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る外ハブ10の断面図、側面図及び外ハブ10と内ハブ20とを連結する状態を示す図である。
【図5】図3の変形例である。
【図6】2つの外ハブ10,10’を、複数の球体が取り付けられている1つの連結部材20を介して接続するタイプのジョイントを示す図である。
【図7】図3に示すタイプの外ハブ10の加工工程の説明図である。
【図8】球体が球体受けから外れることを防止するカバー60の上面図及び側面図である。
【図9】様々サイズのジョイントに対するシャフト30,40の取り付け態様を示す図である。
【図10】図1の変形例を示す図である。
【図11】図10に示す各部材の組み立て原理の説明図である。
【図12】図2の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10,10’ 外ハブ
20 内ハブ
29 球体
30,40 シャフト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の球体と、
前記各球体を受ける半球状の窪部が二列で形成されている円柱状の部材と、
前記部材をその一端側から収容する収容部と当該収容部と一体的に形成されていて一列目の各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝とを有する第1ハブと、
前記部材をその他端側から収容する収容部と当該収容部と一体的に形成されていて二列目の各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝とを有する第2ハブと、
を備えるジョイント。
【請求項2】
前記長手溝の底部は、開口部分が中央部分よりも浅い、請求項1記載のジョイント。
【請求項3】
前記各球体の直径は、前記胴部の直径の略1/4〜1/8の範囲である、請求項1記載のジョイント。
【請求項1】
複数の球体と、
前記各球体を受ける半球状の窪部が二列で形成されている円柱状の部材と、
前記部材をその一端側から収容する収容部と当該収容部と一体的に形成されていて一列目の各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝とを有する第1ハブと、
前記部材をその他端側から収容する収容部と当該収容部と一体的に形成されていて二列目の各窪部で受けられた球体が収容される複数の長手溝とを有する第2ハブと、
を備えるジョイント。
【請求項2】
前記長手溝の底部は、開口部分が中央部分よりも浅い、請求項1記載のジョイント。
【請求項3】
前記各球体の直径は、前記胴部の直径の略1/4〜1/8の範囲である、請求項1記載のジョイント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−190935(P2011−190935A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119320(P2011−119320)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2007−509768(P2007−509768)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(593182381)アサ電子工業株式会社 (5)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2007−509768(P2007−509768)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(593182381)アサ電子工業株式会社 (5)
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