説明

ジルコニア質耐火物セッタ−とその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はジルコニア質の微粉原料と粗粒原料との混合物からなる坏土を成形し、焼成してなる耐火物セッターに係り、特に微粉原料の配合比を粗粒原料のそれよりも多い粒度分布を有する耐火物セッターとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炉例えばローラハースキルン内を被焼成物を通過させながらこれを焼成処理する場合、その被焼成物は耐火物のセッターに載置され、このセッターがキルン内を通過するように移動される。一般に、このような使用目的のセッターにはジルコニア質の焼成耐火物があり、70〜95重量%のジルコニア粗粒原料、30〜5重量%のジルコニア微粉原料、少量のバインダーおよび水からなる混合物をフレット混練と称される方法で混練して坏土を得、この坏土を金型でプレス成形して後、乾燥させ、1600℃前後の雰囲気中で焼成してなるものである。ここでフレット混練とは、原料を収容した容器内の平らな底面上でホイールと称する重いローラを転がすことによって原料をローラと容器の底面との間で圧迫し混練効果を得る方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この様な方法で得られたセッターの特性は、辺寸法90〜130ミリメートル、厚さ3〜6ミリメートルの大きさの四角形セッターを例にすると、曲げ強度が1センチ平方当たり約200キログラム、見掛気孔率が20〜28%、嵩比重が3.9〜4.35であり、使用上支障を生じない特性とされている。しかしながら、この程度の曲げ強度では辺寸法が150ミリメートル以上に及ぶ大形セッターになると取り扱い中に変形し、破損されたりするおそれがあり、セッターの大形化の障害となっていた。
【0004】そこで本発明の目的は、高い曲げ強度が得られ、しかもその製造が容易なジルコニア質耐火物セッターとその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によるジルコニア質耐火物セッターは、ジルコニア質の微粉原料と粗粒原料との混合物スラリーをスプレードライヤー処理により造粒してなる原料を坏土とすることを特徴とする。
【0006】本発明の別の態様によるジルコニア質耐火物セッターは、微粉原料だけをスプレードライヤー処理により造粒してなる原料と未造粒の粗粒原料との混合物を坏土とすることを特徴とする。
【0007】本発明のジルコニア質耐火物セッターの第1の製造方法は、95〜60重量%の微粉原料、5〜40重量%の粗粒原料、少量のバインダーおよび水の混合物スラリーをスプレードライヤー処理によって造粒して坏土を得、この坏土を成形し、焼成することを特徴とする。
【0008】また第2の製造方法は、微粉原料、少量のバインダーおよび水の混合物スラリーのみをスプレードライヤー処理によって造粒し、その造粒された95〜60重量%の造粒微粉原料と5〜40重量%の未造粒の粗粒原料とを混合させて坏土を得、その坏土を成形し、焼成することを特徴とする。ここで、粗粒原料の粒度とは30〜325メッシュのものをいい少なくともメッシュ325以上であることが好ましい。また、微粒原料とは325メッシュ以下のものをいう。
【0009】本発明によるジルコニア質耐火物セッターの、粗粒,微粒のジルコニア質原料としては、ジルコニア単味のもの、Y2 O3 ,CaO,Mg O等で部分安定化したもの、等を用いることができるが、通常は安定化率75〜95%のものを用いることが好ましい。
【0010】また、スプレードライヤー造粒後の造粒物の粒度は、特に限定されないが、セッター等を金型成形するためには、粗粒と微粒の同時造粒ではD50が70〜90μm,微粒だけの造粒物ではD50が65μm前後であることが好ましい。
【0011】
【作用】本発明の製造方法により製造されたセッターの特性は、上述の従来例としたものと同一大きさのものを例にすると、曲げ強度が1センチ平方当たり350キログラム以上、見掛気孔率が22〜31%、嵩比重が3.8〜4.4であった。これは明らかに曲げ強度が大幅に向上され、しかも微粉原料の比率が多い粒度分布にもかかわらず見掛気孔率および嵩比重が従来のそれと同等の良好なレベルに維持されている。この程度の強度になると、厚さが最小1ミリメートルでも辺寸法150ミリメートルの大形セッターを得ることが可能になる。特にこの強度特性は焼成工程での焼成温度が1450℃前後で得られており、焼成温度を上げると強度がさらに向上することが認められた。これは低い焼成温度で高い強度が得られることを意味し、焼成コストの低減を期待できる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。初めにこの発明の造粒工程で使用スプレードライヤー処理法の一例について第1図を用いて原理的に説明する。このスプレードライヤー造粒機は乾燥室1の上部にモータ2によって高速回転(7000〜25000rpm)されるロータリーアトマイザーと称される噴射体3と熱風供給装置4とが配置されてなる。ポンプ5は原料槽6内のスラリーを吸い上げ噴射体3に供給させるためのもので、これと同時に熱風供給装置4が約200℃の熱風を乾燥室1内に送り込むようになっている。
【0013】そして原料槽6内の例えば30〜50%の水分を含むスラリー7がポンプ5によって高速回転中の噴射体3に供給されると、スラリー7が遠心力の作用で高速噴出され粒状になると共に、熱風によって乾燥されながら水分1%以下の粒子となって下方の貯溜容器8に貯えられる。噴射体としては上記のような遠心力噴射方式ではなく加圧ノズル方式のものもある。この加圧ノズル方式でない上記の方式をロータリーアトマイザー方式と称される。
【0014】次に実施例のジルコニア質耐火物の製法の基本について述べると、95〜60重量%の微粉原料と5〜40重量%の粗粒原料(メッシュ325以上の粒度)と水分量30〜50%にするための水とを所定時間混合し、その後、原料槽6内に少量のバインダ−を加えてさらに攪拌混合を続け、このようにして調製されたスラリー7をポンプ5および熱風供給装置4を駆動してスラリー7を高速回転中の噴射体3から噴射させて造粒する。こうして造粒されてなる原料すなわち坏土9は貯溜容器8に回収される。この坏土9を従来のセッターの場合と同様に金型によってプレス成形し、その後焼成処理される。なお、造粒した微粒と未造粒の粗粒原料の場合には、市販のV型ミキーサー等で混合した後、プレス成形し、その後焼成処理をすればよい。
【0015】以上の基本製法における原料の組成、成形および焼成温度に関する具体的な実施データを表1に示す。
【0016】
【表1】


【0017】
【表2】


(1)A1〜A3は下記混合比のスラリーである。
A1 A2 A3 粗粒原料(重量%) 5 15 40 微粉原料(重量%) 95 85 60(2)C、Dは坏土の種類Cは粗粒原料と微粉原料との混合物スラリーをスプレードライヤー処理で造粒して得た坏土。Dは微粉原料スラリーをスプレードライヤー処理により造粒原料を得、この得られた造粒原料と未造粒の粗粒原料との混合物からなる坏土。
【0018】(3)B1,B2は焼成温度を示し、B1は1450℃、B2は1650℃表3および表4は、フレット混練(略称FT混練)工程を経た場合とスプレードライヤー(略称SD造粒)処理工程を経た場合とを各事項について対比して示す。
【0019】
【表3】


注;表3中、曲げ強度は100×30×4のサンプルを切り出しオートグラフにより3点曲げの常温強度を測定したものでその単位は平方センチ当たりキログラム、見掛気孔率、嵩比重は1650℃焼成の値を示す。また、×は不良、○は良、△は×と○との間、☆は難点ありの評価を示す(表4についても同様)。
【0020】
【表4】


表4中、FT混練はフレット混練、SD造粒はスプレードライヤー造粒、E1〜E4は下記の組成物混合割合を表す。
E1 E2 E3 E4粗粒原料(重量%) 55〜95 5〜40 55〜95 5〜40微粉原料(重量%) 45〜5 95〜60 45〜5 95〜60以上のデータから、微粉と粗粒との混合比を同一であるとした場合、スプレードライヤー処理工程を経て坏土を調製する本発明の方が、フレット混練工程を経る従来法に比し強度が増すことが分かる。また、本発明の方法の方が坏土の粒度分布が均一になり、成形工程では金型への均一充槇が容易になり、焼成収縮は部分的でなく均一に起こるといる優れた特徴が得られることが分かる。
【0021】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、見掛気孔率、嵩比重が従来と同等の好ましい特性を維持しながら強度を大幅に向上でき、薄くて大きい形状のセッターを容易に形成できると共に、製造工程では焼成コストの低減を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スプレードライヤー造粒装置の原理構成を説明するための線図
【符号の説明】
1は乾燥室、3は噴射体、4は熱風供給装置、5はポンプである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 微粉原料と粗粒原料との混合物スラリーをスプレードライヤー処理により造粒してなる原料を坏土とすることを特徴とするジルコニア質耐火物セッター。
【請求項2】 微粉原料スラリーをスプレードライヤー処理により造粒してなる原料と粗粒原料との混合物を坏土とすることを特徴とするジルコニア質耐火物セッター。
【請求項3】 95〜60重量%の微粉原料、少なくともメッシュ325の粒度をもつ5〜40重量%の粗粒原料、バインダーおよび水の混合物スラリーをスプレードライヤー処理によって造粒して坏土を得、この坏土を成形し、焼成することを特徴とするジルコニア質耐火物セッターの製造方法。
【請求項4】 微粉原料、バインダーおよび水の混合物スラリーをスプレードライヤー処理によって造粒し、その造粒された95〜60重量%の原料と、少なくともメッシュ325の粒度をもつ5〜40重量%の粗粒原料とを混合して坏土を得、その坏土を成形し、焼成することを特徴とするジルコニア質耐火物セッターの製造方法。

【図1】
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【特許番号】特許第3006729号(P3006729)
【登録日】平成11年11月26日(1999.11.26)
【発行日】平成12年2月7日(2000.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−170479
【出願日】平成3年6月14日(1991.6.14)
【公開番号】特開平4−367562
【公開日】平成4年12月18日(1992.12.18)
【審査請求日】平成9年3月13日(1997.3.13)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000237868)エヌジーケイ・アドレック株式会社 (37)
【参考文献】
【文献】特開 平2−97424(JP,A)
【文献】特開 平2−21857(JP,A)
【文献】特開 昭60−96530(JP,A)
【文献】特開 昭60−86025(JP,A)
【文献】特開 昭59−169969(JP,A)
【文献】特開 昭62−202862(JP,A)
【文献】特開 昭51−6692(JP,A)