説明

ジ(ケテンアセタール)類の製法

ジ(ケテンアセタール)類が、対応するジ(ビニルアセタール)類の光学異性化により製造される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ジ(ケテンアセタール)類の製法に関する。
【0002】
背景技術
Coreyら、J. Org. Chem., 38, 3224 (1973)は、中性非プロトン条件下でトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリドで触媒される、メントール、デカノール、およびコレステロールの各アリールエステルの対応する1−プロペニルエ−テル類への異性化、および、これらの1−プロペニルエ−テル類のpH2におけるもとのアルコール類への迅速な加水分解を開示している。
【0003】
米国特許No.4,304,767は、ジ(ビニルアセタール)類の異性化を含む方法による、多数のジ(ケテンアセタール)類、例えば、3,9−ジメチレン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(ペンタエリスリトールのジ(ケテンアセタール))、2,6−ジメチレンヘキサヒドロベンゾ[1,2−d,4,5−d']ビス[1,3]ジオキソール(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラオールのジ(ケテンアセタール))、1,2−エチレンビス(2−メチレン−[1,3]ジオキソラン](1,2,5,6−ヘキサンテトラオールのジ(ケテンアセタール))、および、アルキル化ジ(ケテンアセタール)類、例えば、2,6−ジイソプロピリデンヘキサヒドロベンゾ[1,2−d,4,5−d']ビス[1,3]ジオキソール、3,9−ジ第2級ブチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、および、3,9−ジイソプロピリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造;および、これらのおよび関連するジ−およびトリ−(ケテンアセタール)類からの、該化合物とジオール類またはポリオール類との反応による、ポリ(オルトエステル類)の製造、を開示している。
【0004】
米国特許No.4,513,143は、対応するジ(ビニルアセタール)類の、アルカリ金属低級n−アルキル/水可溶性第1級アミン溶液中での異性化による、ケテンアセタール類およびジ(ケテンアセタール)類、例えば、3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)の製造、を開示している。
【0005】
米国特許No.4,532,335は、対応するジ(ビニルアセタール)類の、アルカリ金属アルコキシド/エチレンアミン溶液中での、異性化による、ケテンアセタール類およびジ(ケテンアセタール)類、例えば、DETOSUおよび3,9−ジイソプロピリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造、を開示している。
【0006】
Crivelloら、J. Polymer Sci., Part A: Polymer Chemistry, 34, 3091-3102 (1996)は、2,2'−ジエチリデン−4,4'−ビス[1,3]ジオキソラン)およびDETOSUを含む多数のケテンアセタール類およびジ(ケテンアセタール)類の(各場合では、適切なテトラオールおよびアクロレインからの対応するジ(ビニルアセタール)化合物の製造およびトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムジクロリドを用いる異性化による)製造、を開示している。
【0007】
ドイツ特許No.2331675(Chem. Abs., 81:63153v (1974))は、アセタール基のα、βまたはγ位置に二重結合を有する不飽和アルデヒドアセタール類の、鉄カルボニル類および/または化学光線(actinic light)を用いる異性化による、脂肪族ケテンアセタール類の製造を開示している。6例の実験例では、2−ビニル−[1,3]−ジオキソランが、ペンタカルボニル鉄およびN,N−ジメチルアニリン;ノナカルボニル二鉄、N,N−ジメチルアニリンおよびヒドロキノンモノメチルエーテル;ペンタカルボニル鉄およびn−オクタン;およびドデカカルボニル三鉄;の存在下、メチルケテンエチレンケタールに光学異性化された;他方、アクロレインジメチルアセタールが、ペンタカルボニル鉄およびノナカルボニル二鉄の存在下に、メチルケテンジメチルアセタールに光学異性化された。
【0008】
本明細書が提供するものは、対応するジ(ビニルアセタール)類の光学異性化(photoisomerizing)による、ジ(ケテンアセタール)類の製法である。
【0009】
発明の詳細な説明
出発物質
本明細書中で提供する方法の出発物質であるジ(ビニルアセタール)類は、市販品を購入可能であるかまたは当業者に既知の各方法で製造できる。
【0010】
特に関心の高いものは、ポリ(オルトエステル)類の製造に有用なジ(ケテンアセタール)類や、かかるポリ(オルトエステル)類を含有する共重合体を形成させるために使用するジ(ビニルアセタール)類である。そのようなジ(ビニルアセタール)化合物には、各式:
【化1】

式中、Rは、単結合、−(CH−、または−(CH−O−(CH−であり;ここでaは1ないし10の整数であり、そして、bおよびcは独立して1ないし5の整数である;
は水素またはC−Cアルキルであり、そして
は水素またはC−Cアルキルである、
の化合物が含まれる。
【0011】
これらのジ(ビニルアセタール)化合物を合成するための典型的な方法は、各式IV、V、またはVI:
【化2】

のビス(ジオール)と、2当量のビニル性アルデヒド、例えばアクロレインまたはクロトンアルデヒド、またはそれらのジアルキルアセタール類、例えばアクロレインジメチルアセタールまたはジエチルアセタール、との縮合であり、そして、そのような縮合反応は良く知られており、さらに、本願の“背景技術”の項中に列挙した文献中で論じられている。例えば、Crivello らは、式Iの化合物(但し、各Rは水素である)および式IIIの化合物(但し、Rは単結合であり各Rは水素である)の合成を開示している。
【0012】
式IVのビス(ジオール)は、ペンタエリスリトールである。そのアクロレインとの反応生成物、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンは、Aldrich Chemical Co. およびTCI America のような供給者から入手可能である。
【0013】
式V(但し、Rは単結合であり各Rは水素である)のビス(ジオール)は、Aldrichから入手可能なテトラメチル1,1,2,2−エタンテトラカルボキシレートを、ジエチルエ−テルのような溶媒中でLiAlHのような還元剤により、ビス(ジオール)とすることによって製造できる。ある実施態様では、この還元は低温、例えば、0℃で実施する。この型の還元は、テトラエチル1,1,4,4−ブタンテトラカルボキシレートの還元について、Haydockら, J. Med. Chem., 15:447-448 (1972) 中に記載されている。
【0014】
式Vのビス(ジオール)(但し、Rは−(CH−であり、各Rは水素である)は、式X−(CH−X(但し、XはClまたはBrである)のα,ω−ジハロアルカン、例えば、1,3−ジブロモプロパンまたは1,5−ジブロモペンタンと、式CH(COOR(式中RはC−Cアルキルである)のジアルキルマロネートとの、強塩基例えば金属アルカリまたは希土類金属アルカリ(例えばナトリウムまたはマグネシウムエトキシド)の存在下に、低級アルカノール(例えばエタノール)のような溶媒中で反応させて、テトラアルキルα,α,ω,ω−アルカンテトラカルボキシレートとする反応によって製造できる。この型のカップリングは、ジエチルマロネートおよび1,2−ジブロモエタンから、エタノール中、マグネシウムエトキシドの存在下に、テトラエチル1,1,4,4−ブタンテトラカルボキシレートを製造することについて、J. Amer. Chem. Soc., 57, 1133 (1935)に、Meinckeらが記載している。このようにして形成されたテトラカルボキシレートを、次いで還元してビス(ジオール)とする。各Rが水素−ではないその他のビス(ジオール)類は、やはりAldrichから入手可能な、対応するジアルキルアルキルマロネート類から製造できる。式IVのビス(ジオール)(但し、Rは−CH−であり各Rは水素である)は、ホルムアルデヒドとジアルキルマロネート例えばジエチルマロネートとを、Haworth, J. Chem. Soc., 73:330−345 (1898) に記載されているようにして反応させ、続いて、生成テトラエチル1,1,3,3−プロパンテトラカルボキシレートを還元することによってビス(ジオール)となすこと、によって製造できる。
【0015】
式Vのビス(ジオール)類(但し、Rは−(CH−O−(CH−である)は、α,ω−ジハロアルカンを、式X−(CH−O−(CH−Xのジ(ω−ハロアルキル)エーテル(但しXはClまたはBrである)で置き換えて、同様の工程により製造できる。
【0016】
式Vのビス(ジオール)化合物(但し、Rは−CH−O−CH−であり、各Rはエチルである)は、ジ(トリメチロールプロパン)であり、AldrichからおよびPerstorpから入手可能である。式IIのジ(ビニルアセタール)類(但し、Rは−CH−O−CH−であり、各Rは水素、メチルまたはエチルである)も、市販のトリメチロールメタン、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパンから下記のようにして製造できる:
【化3】

式中、トリメチロールアルカン化合物は、最初、ビニル性アルデヒド化合物またはそのジアルキルアセタール(アクロレインジエチルアセタールが示されている)との反応によってビニルアセタール化合物に変換し、次いで、生成したアルコールの幾らかを脱離基、例えばトジレート(これが示されている)または他のアルカン−もしくはアレンスルフォネート(arenesulfonate)に変換し、それから、当該化合物を塩基およびアルコール化合物で処理してジ(ビニルアセタール)化合物としている。
【0017】
式VIのビス(ジオール)化合物(但し、Rは単結合である)は、エリスリトールである。式VIのビス(ジオール)化合物(但し、Rは−(CH−である)は、α,ω−ジエン、例えば1,3−ブタジエンまたは1,5−ヘキサジエンを、酸化剤、例えばオスミウムテトロキシド/過酸化水素によって酸化するか、または当技術分野で既知の他の方法によってビス(ジオール)化合物とすることにより、製造できる。式VIのビス(ジオール)化合物(但しRは−(CH−O−(CH−である)は、ω−ヒドロキシ−α−オレフィン化合物、例えばアリールアルコールと、ω−ハロアルキルオキシラン化合物、例えばエピクロロヒドリンとの反応により、酸素原子が中断している骨格を有するω−エポキシ−α−オレフィン化合物、例えば2−アリールオキシメチルオキシランを生成させ、次いで、これを酸化剤、例えばオスミウムテトロキシド/過酸化水素によって酸化するか、または当技術分野で既知のビス(ジオール)化合物を与える他の方法によって、製造できる。
【0018】
当業者には、これらの方法の変法、および、他の適切なビス(ジオール)化合物およびジ(ビニルアセタール)化合物の製造方法が、当該技術分野での熟練および本明細書の開示に基づき、入手可能になるはずである。
【0019】
溶媒
本発明の光学異性化は、望ましくは不活性溶媒中で実施する。ここで不活性溶媒とは、出発ジ(ビニルアセタール)化合物、増感剤(sensitizer)、生成物たるジ(ケテンアセタール)化合物、およびこの光学異性化処理中の各反応条件下に形成される中間体その他の生成物に対して不活性であり、光化学的に不活性であり、さらに約300nm以上において紫外線を有意には吸収しない溶媒を指称する。好適な溶媒は、不活性であることに加えて、反応混合物に対する効果的な溶媒であり、容易に脱気でき(何故ならば好ましいペンタカルボニル鉄増感剤が酸素によって破壊されるからである)、さらに容易に生成物ジ(ケテンアセタール)化合物から除去できるものである。ある実施態様においては、かかる溶媒は炭化水素である。他の実施態様においては、かかる溶媒は脂肪族炭化水素、例えば、直鎖、分枝、および環状のアルカンから選択されるアルカンである。ある実施態様では、かかる溶媒はC−Cアルカンである。他の実施態様においては、かかる溶媒はペンタン類、ヘキサン類、ヘプタン類およびオクタン類、およびそれらの混合物から選択される。ある実施態様では、かかる溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサンから選択されるエーテルである。
【0020】
増感剤
本発明の光学異性化のための増感剤は、望ましからざる異性化生成物あるいは重合物を生成するような副反応への触媒効果を最小にしながら、ジ(ビニルアセタール)化合物を対応するジ(ケテンアセタール)化合物にする異性化を活性化する能力のある増感剤である。適切なかかる増感剤は、遷移金属有機金属化合物類、例えば、鉄有機金属化合物類である。本発明で使用される増感剤は、遷移金属カルボニル類(例えばカルボニル鉄類、例えばペンタカルボニル鉄、ノナカルボニル二鉄、およびドデカカルボニル三鉄)および混合カルボニル類(例えば混合πシクロペンタジエニルカルボニル類、例えばシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル)を含むがそれらに限定はされない。ある実施態様では、かかる増感剤はペンタカルボニル鉄であるが、それはその低価格、触媒効率および光学異性化完了後の空気酸化による容易な分解の故である。かかる増感剤は、光学異性化速度および選択性に必要となるあるいは望ましい任意の使用量で利用できる。ある実施態様では、当該増感剤の使用量は、約0.001mol%以上10.0mol%である。他の実施態様では、当該増感剤の使用量は、約0.01mol%以上1.0mol%である。他の実施態様では、当該増感剤の使用量は、ジ(ビニルアセタール)化合物を基準として約0.1mol%以上0.5mol%である。
【0021】
光学異性化
本発明で使用する光学異性化反応段階および反応装置の詳細は、意図する反応規模に多少依存するが、一般的には、該反応は、室温と光学異性化に使用する溶媒の沸点との間の温度において、不活性雰囲気下例えば窒素またはアルゴン雰囲気下に、進行する。典型的には反応中、反応混合物を攪拌または振盪する。光学異性化反応段階の適切な光源は、光化学反応に普通に使用されている型の中圧水銀ランプ、または、ある実施態様では、波長200−700nmの光を照射する高圧の水銀またはキセノンランプである。他の実施態様では、該光線は、波長200−550nmのものである。光化学反応実施用に適した市販装置を、Ace Glass Incorporated(Vineland NJ, USA.所在)のような供給業者から、あるいは、Aldrich Chemical Companyのような試薬供給業者を経由して、容易に購入できる。
【0022】
典型的には、ジ(ビニルアセタール)化合物および増感剤を、適切な溶媒、例えばアルカンに溶かし、次いで該混合物を、数分ないし数時間、例えば30分ないし2時間、中圧水銀ランプを照射しながら窒素気流下に還流させる。反応の進行は、出発ジ(ビニルアセタール)化合物またはそのビニル基(群)の指標となるシグナルの消失、および、生成物ジ(ケテンアセタール)化合物またはそのケテン基(群)の指標となるシグナルの出現、を監視する、ガスクロマトグラフィー、HPLC、NMRおよびIRを含むがそれらに限定されない分析的技法によってモニターでき、それに従って、照射時間を延長したり、短縮したりする。
【0023】
この反応混合物は、場合により第3級アミンをも含有する。ある実施態様では、このアミン窒素は、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、またはフェニルによって置換されている。ある実施態様では、この第3級アミンは、トリブチルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンまたはN,N−ジメチルアニリンである。他の実施態様では、この第3級アミンは、ヘテロ環状アミン、例えばN−メチルピロリジンおよびジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。ある実施態様では、このアミンの濃度は、出発ジ(ビニルアセタール)化合物について、5重量%以上である。他の実施態様では、このアミン濃度は、出発ジ(ビニルアセタール)化合物について、0.5重量%以上5重量%である。この反応混合物は、場合により、出発ジ(ビニルアセタール)化合物について、1重量%以上の濃度、例えば0.01−1重量%の重合阻止剤を含有することもある。もし存在する場合、適切な重合阻止剤は、反応性単量体の安定化のために一般的に使用されている化合物、例えばヒドロキノンおよびそのメチルエーテルである。
【0024】
光学異性化が完了すると、典型的には、増感剤を除去するか、または、カルボニル鉄類の場合、乾燥空気酸化により破壊する。
【0025】
ジ(ケテンアセタール)類の精製
本明細書中で述べる光学異性化方法の生成物である、ジ(ケテンアセタール)類の精製は、当業者に既知の有機化合物の精製方法のうちの任意の適切な方法によって達成することができる。典型的な精製方法には、製造するジ(ケテンアセタール)化合物に適するような、溶媒の蒸留(例えば大気圧下または減圧下での)による反応混合物中の生成物の濃縮、および、クロマトグラフィー、ショートパス蒸留(short path distillation)および結晶化による精製、が含まれる。ジ(ケテンアセタール)化合物の純度は、在来の分析方法、例えばガスクロマトグラフィー、HPLC、NMR、および、融点または沸点あるいはスペクトルデータを他の方法で製造した基準試料と比較すること、によって測定できる。
【0026】
以下の実施例は、例示的目的のためのみで含めたものであり、本件特許請求主題の範囲を限定することを全く意図するものではない。
【0027】
実施例
実施例1:3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、DETOSU.1、の製造
【化4】

【0028】
サーモウエル(thermowell、温度計装着用頸管部)、コンデンサー、および機械式攪拌機(スターラー)を装備した、清浄で、乾燥した、22Lの光化学反応器に、ペンタン10Lおよび、2072g(9.76mol)の3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2、を、窒素雰囲気下に加入した。この混合物を、40分間還流しながら攪拌して溶媒を脱気し、次いで5.9mL(8.79g,44.9mmol,0.45mol%)のペンタカルボニル鉄を添加し、そして溶液をさらに15分間還流した。得られた溶液を、リフレクターハウジング中で30分間450W中圧クオーツ水銀蒸気UVランプ(Ace-Hanovia)照射下に還流し、90分間照射せずに還流し、40分間照射下に還流し、6時間照射せずに還流させると、その時点までに出発物質が消費され、部分異性化物質が5%以下になったことをGCが示した。この反応混合物を、なおも窒素気流下に攪拌しながら一夜放冷した。冷ました反応混合物の約10%(1L)を取り出し、反応途上分析に供した。残り90%の反応混合物を含有する反応器に、50mLのトリエチルアミンを加え、次いで、ペンタン化合物の大部分を大気圧下の窒素雰囲気中で、ポット温度30−40℃の蒸留によって除去した。溶媒で湿っている粗製のDETOSU、1、約3.5Lを、乾燥(圧力1−3mbar、ポット温度45−50℃)させ、1.9Kgの乾燥した粗製DETOSU(粗収率100%、GCによる部分異性化物質5%)を得た;そして、これを、沸騰チップを入れたショートパス蒸留装置で蒸留(圧力〜3mbar、ポット温度124−165℃、ヘッド温度121−129℃)し、蒸留済み粗製DETOSUを1762g得た。
【0029】
サーモウエル、コンデンサーおよび機械式攪拌機を装備した22Lの清浄乾燥フラスコに、前節で得た蒸留済み粗製DETOSU、ヘプタン10.6Lおよびトリエチルアミン10mLを、窒素雰囲気下に加入した。この混合物を攪拌しながら加熱(〜80℃)して溶解させ、なお窒素雰囲気下に、一夜、室温まで放冷した。フラスコおよびサーモウエルの壁面に、ゴム状の褐色物質が幾らか付着しているのが見えた;そこで溶液を傾瀉(デカント)し、該溶液をフラスコに戻す前に装置を清浄化した。該溶液を80℃まで再加熱してやや濁った溶液とし、それから−10℃まで冷却し、ガラス棒でフラスコ内壁をこすると結晶析出が始まった。結晶析出の間、約1時間以上、この溶液を約4℃まで温めて−10℃に戻らないようにした。この混合物をさらに1時間、−10℃に保持し、それから−20℃まで冷却して15分間保持した。DETOSU結晶を、60μmフィルターバッグ装着した実験室用穴あきバスケット遠心分離機(Western States Model 1000−1476型)を用いて、窒素雰囲気下の冷遠心分離によって採集した。遠心分離機は、回転させながら−30℃のペンタン4Lで予め冷却しておき、それから、DETOSU結晶のスラリーを、余分な液体がバスケット内に集積しないように注意しながら、100−160×gで加入した。フィルターケーキを、遠心分離速度を〜1000×gまで上昇させて乾燥させ、次いで−30℃のペンタン2.5Lで洗い、さらに30分間遠心分離を続けた。1番採取でDETOSU結晶927g(収率54%、部分異性化物質2.8%(GCによる))を得た。同様の過程により、母液からの2番採取527gを得、合計1513gのDETOSU結晶(収率82%)を得た。このDETOSU結晶を、ペンタン8.5Lおよびトリエチルアミン8.5mLを用いて再結晶し、1番採取で982gの再結晶DETOSUを得た;これを蒸留(圧力〜3mbar、ポット温度129−145℃、ヘッド温度121−129℃)して879gの精製DETOSU、1を得た(総合収率51%、HNMRはキレイな目的物質の構造に一致、部分異性化物質1.7%(GCによる))。
【0030】
実施例2:ジ[(5−エチル−2−エチリデン−[1,3]ジオキサン−5−イル)メチル]エーテル、3の製造
【化5】

【0031】
コンデンサーを装備した500mLフラスコ内のトルエン300mLに、ジ(トリメチロールプロパン)、4を30g(120mmol)、アクロレインジエチルアセタールを45.6mL(38.9g、300mmol)、およびピリジニウムp−トルエンスルフォネートを1.5g(6mmol)、窒素雰囲気下に加入した。この混合物を4時間還流し、それから室温に冷まし、カリウム第三級ブトキシド0.67g(6mmol)を加えた。トルエンを減圧下に蒸発させて除去し、残渣をKugelrohr装置中で蒸留し(圧力1−3mbar、ポット温度142−180℃)、粗製ジ[(5−エチル−2−ビニル−[1,3]ジオキサン−5−イル)メチル]エーテル、5を、薄黄色油として35.35g(収率91%)得た。この粗生成物30gを、2Lの半融ガラス漏斗中で、1Kgのメルクシリカゲル60上でのクロマトグラフィーで精製し、20:80酢酸エチル/ヘプタンで溶出させ、より純化された生成物27.8g(収率71%)を得た。このものを、2L半融ガラス漏斗中で、1Kgのメルクシリカゲル60上での第2クロマトグラフィーで再−純化し、10:90酢酸エチル/ヘプタンで溶出させ、本質的に純粋なジ[(5−エチル−2−ビニル−[1,3]ジオキサン−5−イル)メチル]エーテル、5を16.44g(収率42%)を得た。この物質を光学異性化に使用した。
【0032】
500mLの光化学反応器内のペンタン220mLに、前段階で得たジ[(5−エチル−2−ビニル−[1,3]ジオキサン−5−イル)メチル]エーテル、5を14.32g(43.9mmol)加入した。この溶液を20分間激しく還流して脱気し、それから、ペンタカルボニル鉄115μL(171μg、0.87μmol、0.2mol%)を加え、溶液をさらに20分間還流した。得られた溶液を1時間照射すると、NMRでビニルのシグナルを全く示さなくなった。溶液を室温まで冷まし、トリエチルアミン0.5mLを添加した後、4時間乾燥空気を吹き込み分散(sparge)させた。ペンタンを減圧下に蒸発させて除去し、残留油を Kugelrohr 装置中で蒸留し(ポット温度220℃、圧力1−3mbar)、ジ[(5−エチル−2−エチリデン−[1,3]ジオキサン−5−イル)メチル]エーテル、3を、無色油として、9.04g(収率63%)得た。この生成物は、HNMRおよびマススペクトル[C1835(M+2HO+H)に対する計算値363、345:C1833(M+HO+H)に対する計算値363:345を観測]によって同定確認した。
【0033】
本明細書中に提供した方法は、特定の実施態様および実施例に関連して記述しているが、当業者には、この開示および当技術分野での熟練に基づいて、特定の開示した諸材料および諸方法との均等物も本発明方法に適用できること;そしてそれらの均等物も下記特許請求の範囲内に含まれるように意図されていることが明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジ(ビニルアセタール)化合物を光学異性化することを含んでなる、ジ(ケテンアセタール)化合物の製法。
【請求項2】
遷移金属有機金属化合物の存在下に、ジ(ビニルアセタール)化合物を光学異性化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遷移金属有機金属化合物が、鉄有機金属化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
鉄有機金属化合物が、ペンタカルボニル鉄である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
遷移金属有機金属化合物の濃度が、ジ(ビニルアセタール)化合物基準で0.001ないし10.0mol%である、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
遷移金属有機金属化合物の濃度が、ジ(ビニルアセタール)化合物基準で0.01ないし1.0mol%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不活性溶媒中でジ(ビニルアセタール)化合物を光学異性化することを含む、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
不活性溶媒がアルカンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
不活性溶媒が本質的にアルカンからなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルカンが、C−Cアルカンまたはそのようなアルカンの混合物である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項11】
該ジ(ビニルアセタール)化合物が、式I:
【化1】

式中、Rは水素またはC−Cアルキルである、
の化合物である、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該ジ(ビニルアセタール)化合物が、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該ジ(ビニルアセタール)化合物が、式II:
【化2】

式中、Rは単結合、−(CH−、または−(CH−O−(CH−であり;ここでaは1ないし10の整数であり、bおよびcは独立して1ないし5の整数である;
は水素またはC−Cアルキルであり、そして
は水素またはC−Cアルキルである、
の化合物である、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
該ジ(ビニルアセタール)化合物が、ジ[(5−エチル−2−ビニル[1,3]ジオキサン−5−イル)メチル]エ−テルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該ジ(ビニルアセタール)化合物が、式III:
【化3】

式中、Rは単結合、−(CH−、または−(CH−O−(CH−であり;ここでaは1ないし10の整数であり、bおよびcは独立して1ないし5の整数である;そして
は水素またはC−Cアルキルである、
の化合物である、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2006−506437(P2006−506437A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553779(P2004−553779)
【出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/036610
【国際公開番号】WO2004/046074
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(500481879)エイ・ピー・ファーマ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】A.P. PHARMA,INC.
【Fターム(参考)】