説明

スイカの栽培方法

【課題】 反当たりの栽培本数を増やすことができるとともに、ほぼ均一な大きさ及び糖度の果実を収穫することができるスイカの栽培方法を提供する。
【解決手段】 スイカの苗16を栽培土壌4に定植し、スイカの苗16から伸びた蔓18が第2の高さに対応する長さに伸びると、蔓18を上方に起こしてその先端部を第2の線状部材14に支持させ、その後、蔓18が第1の高さに対応する長さに更に伸びると、蔓18を上方に起こしてその先端部を第1の線状部材12に支持させ、更にその後、蔓18は第1の線状部材12から栽培土壌4の表面に向けて下方に伸び、蔓18の第19節位以下の節位及び第26節位以上の節位に着果した果実を摘果することにより、蔓18の第20〜第25節位に果実26を着果させ、この着果した果実26が栽培土壌4の表面に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培具を用いてスイカを栽培するスイカの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイカを地面に這わせて栽培するスイカの栽培方法が実施されている(例えば、特許文献1参照)。このスイカの栽培方法では、栽培土壌に培土を盛ることによって畝を形成し、この畝にスイカの苗を間隔を置いて定植する。スイカの苗が生長すると、スイカの苗から生えた蔓が畝の表面を這いながら伸びるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−227153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のスイカの栽培方法では、次のような問題がある。第1に、隣接するスイカの苗から伸びた蔓が相互に干渉しないように、スイカの苗を定植する間隔を大きくしなければならず、反当たり(約10アール当たり)の栽培本数を増やすことができない。第2に、蔓の着果節位はスイカの株によってバラツキがあるため、蔓に生える葉の数にもバラツキが生じ、このため、スイカ1株当たりに吸収される肥料中の栄養量は均一でなく、収穫されるスイカの果実の大きさ及び糖度が不均一となって商品価値が低下してしまう。
【0005】
本発明の目的は、反当たりの栽培本数を増やすことができるとともに、ほぼ均一な大きさ及び糖度の果実を収穫することができるスイカの栽培方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のスイカの栽培方法では、栽培具を用いてスイカを栽培するスイカの栽培方法であって、
前記栽培具は、栽培土壌に所定方向に間隔を置いて配設された複数の支柱と、第1の高さでもって前記複数の支柱の間に架け渡された第1の線状部材と、前記第1の線状部材と前記栽培土壌の表面との間の第2の高さでもって前記複数の支柱の間に架け渡された第2の線状部材と、を備え、
スイカの苗を前記栽培土壌に定植し、前記スイカの苗から伸びた蔓が前記第2の高さに対応する長さに伸びると、前記蔓を上方に起こしてその先端部を前記第2の線状部材に支持させ、その後、前記蔓が前記第1の高さに対応する長さに更に伸びると、前記蔓を上方に起こしてその先端部を前記第1の線状部材に支持させ、更にその後、前記蔓は前記第1の線状部材から前記栽培土壌の表面に向けて下方に伸び、前記蔓の第19節位以下の節位及び第26節位以上の節位に着果した果実を摘果することにより、前記蔓の第20〜第25節位に果実を着果させ、この着果した果実が前記栽培土壌の表面に支持されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のスイカの栽培方法では、前記第2の線状部材は、前記第1の線状部材と前記栽培土壌の表面との間の実質上中間部に1本架け渡され、又は、前記第1の線状部材と前記栽培土壌の表面との間に実質上等間隔を置いて2本架け渡されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載のスイカの栽培方法では、前記第1の高さは170〜190cmであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載のスイカの栽培方法では、前記栽培土壌には畝が形成され、前記複数の支柱は、前記畝に前記所定方向に間隔を置いて配設され、また前記スイカの苗は前記畝に定植され、前記蔓の第20〜第25節位に着果した果実は前記畝の表面に支持され、着果節位から伸びる前記蔓の先端部は、前記畝の間の谷部に向かって伸びることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載のスイカの栽培方法では、着果節位から伸びる前記蔓の先端部に8〜12枚の葉が残るようにして、前記蔓の先端部を切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載のスイカの栽培方法によれば、スイカの苗から生えた蔓を上方に起こして、第1の線状部材にて折り返した後に栽培土壌の表面に向けて下方に伸ばすので、従来の地這栽培のように、隣接するスイカの苗から伸びる蔓が相互に干渉することがなく、スイカの苗を定植する間隔を小さくすることができ、反当たりのスイカの栽培本数を増加させることができる。また、蔓の第20〜第25節位に果実を着果させるので、スイカの各株に吸収される肥料中の栄養量がほぼ均一となり、これによりスイカの各株より収穫される果実の糖度及び大きさをほぼ均一にすることができる。また、蔓の着果節位に着果された果実は畝の表面に支持されるので、畝からの地熱が果実に伝達されることによって果実の生長が促進され、果実を効率良く肥大化させることができ、更に、支柱に加わる果実の重力を軽減することができ、支柱が転倒するのを防止することができる。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載のスイカの栽培方法によれば、第2の線状部材は、第1の線状部材と栽培土壌の表面との間の実質上中間部に1本架け渡され、又は、第1の線状部材と栽培土壌の表面との間に実質上等間隔を置いて2本架け渡されているので、2段階又は3段階に分けて蔓を上方に起こすことができ、スイカの株に与えるストレスを軽減することができる。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載のスイカの栽培方法によれば、第1の高さは170〜190cmであるので、蔓の第20〜第25節位に着果された果実を栽培土壌の表面に確実に支持させることができる。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載のスイカの栽培方法によれば、着果節位から伸びる蔓の先端部は、畝の間の谷部に向かって伸びるので、水平に対する蔓の先端部の傾斜角度の大きさを見ることによって、スイカの株に吸収される肥料中の栄養量を知ることができる。例えば、スイカの株に吸収される肥料中の栄養量が適度であるときには、傾斜角度は10〜20°となり、スイカの株に吸収される肥料中の栄養量が不足気味のときには、傾斜角度は0〜9°となり、また、スイカの株に吸収される肥料中の栄養量は過剰気味のときには、傾斜角度は21〜90°となる。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載のスイカの栽培方法によれば、着果節位から伸びる蔓の先端部に8〜12枚の葉が残るようにして蔓の先端部を切断するので、着果節位から伸びる蔓の先端部を畝の間の谷部に向けて効率良く伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態によるスイカの栽培方法を説明するための斜視図である。
【図2】スイカの苗を畝に定植した状態を示す図である。
【図3】図2の状態より伸びた蔓の先端部を第2の線状部材に支持させた状態を示す図である。
【図4】図3の状態より伸びた蔓の先端部を第1の線状部材に支持させた状態を示す図である。
【図5】図4の状態より下方に伸びた蔓の着果節位に果実が着果した状態を示す図である。
【図6】図5の果実及び蔓の先端部を拡大して示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態によるスイカの栽培方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に従うスイカの栽培方法の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるスイカの栽培方法を説明するための斜視図であり、図2は、スイカの苗を畝に定植した状態を示す図であり、図3は、図2の状態より伸びた蔓の先端部を第2の線状部材に支持させた状態を示す図であり、図4は、図3の状態より伸びた蔓の先端部を第1の線状部材に支持させた状態を示す図であり、図5は、図4の状態より下方に伸びた蔓の着果節位に果実が着果した状態を示す図であり、図6は、図5の果実及び蔓の先端部を拡大して示す図である。
【0018】
図1を参照して、本実施形態のスイカの栽培方法では、例えばビニルハウス(図示せず)内において、栽培具2を用いてスイカの栽培が行われる。ビニルハウス内の栽培土壌4には、培土を盛ることによって畝6が複数形成されている。各畝6は、幅W1(例えば約120cm)でもって所定方向に延びている。また、隣接する一対の畝6の間には、幅W2(例えば約60cm)でもって上記所定方向に延びる谷部8が形成されている。
【0019】
栽培具2は、各畝6に上記所定方向に間隔D1(例えば約100cm)を置いて配設された複数の支柱10と、第1の高さH1(例えば約180cm)でもって複数の支柱10の間に架け渡された第1の線状部材12と、第1の線状部材12と畝6の表面との間に第2の高さH2(例えば約90cm)でもって複数の支柱10の間に架け渡された第2の線状部材14と、を備えている(図2参照)。支柱10は畝6から上方に向かって実質上垂直に延びており、その下端部は畝6の内部に埋設固定されている。第1及び第2の線状部材12,14はそれぞれ、例えばワイヤやロープ、紐、テープ、パイプなどから構成されている。本実施形態では、第2の線状部材14は、第1の線状部材12と畝6の表面との間の実質上中間部に1本架け渡されている。
【0020】
次に、図2〜図6をも参照して、上述した栽培具2を用いてスイカを栽培するスイカの栽培方法について説明する。まず、各畝6に上記所定方向に間隔D2(例えば約50cm)を置いてスイカの苗16を定植する(図1及び図2参照)。隣接する一対の支柱10の間には2個のスイカの苗16が定植される。なお、このスイカの苗16は、例えばカボチャなどの台木にスイカの穂木を接ぎ木することによって構成される。
【0021】
スイカの苗16が生長すると、図3中に破線で示すように、スイカの苗16から生えた蔓18が畝6の表面を這いながら伸びるようになる。蔓18が第2の高さH2に対応する長さ(即ち、第2の高さH2と同一の長さ又はこれよりも幾分長い長さ)に伸びると、図3中に実線で示すように、作業員などは、蔓18を上方に起こしてその先端部を支持部材20により第2の線状部材14に支持させる。支持部材20は例えばテープや紐などから構成され、この支持部材20をリング状に結ぶことにより蔓18の先端部と第2の線状部材14とを結束する。
【0022】
その後、蔓18の先端部は、図4中に破線で示すように、第2線状部材14に支持された部位から横方向乃至斜め下方に伸びるようになる。蔓18が更に第1の高さH1に対応する長さ(即ち、第1の高さH1と同一の長さ又はこれよりも幾分長い長さ)に伸びると、図4中に実線で示すように、作業員などは、蔓18を上方に起こしてその先端部を支持部材20により第1の線状部材12に支持させる。このように2段階に分けて蔓18を上方に起こすことにより、スイカの株22に与えるストレスを軽減することができる。
【0023】
更にその後、蔓18の先端部は、第1線状部材12に支持された部位から畝6の表面に向けて下方に伸びるようになる(図5参照)。蔓18の先端部が第2の線状部材14よりも幾分下側まで下方に伸びると、作業員などは、蔓18の先端部を支持部材20により第2の線状部材14に支持させる。その後、蔓18の先端部は、第2線状部材14に支持された部位から畝6の表面に向けて更に下方に伸びるようになる。
【0024】
上述のように伸びる蔓18の各節位にはそれぞれ葉24が生えるようになる。なお、「節位」とは、葉24が生える蔓18の位置のことであり、節位の数は葉24の数を意味する。例えば、蔓18の第1節位から第20節位までの間に生える葉24の数は20枚となる。蔓18の特定の節位には果実26が着果するようになるが、蔓18の第19節位以下の節位及び第26節位以上の節位に着果した果実(図示せず)を摘果することにより、蔓18の第20〜第25節位に果実26を1個のみ着果させるようにする。これにより、蔓18の第1節位から着果節位(即ち、果実26が着果された節位)までの間に生える葉24の数は20〜25枚となり、スイカの株22の葉24や果実26などに吸収される肥料中の栄養量が適度となり、適度な大きさで且つ良好な形状の果実26を収穫することができる。
【0025】
なお、蔓18の第19節位以下の節位に果実26が着果すると、蔓18の第1節位から着果節位までの間に生える葉24の数は19枚以下となり、スイカ1株当たりに吸収される肥料中の栄養量が不足気味となり、果実26の大きさが小さくなるとともにその形状が扁平となる。また、蔓18の第26節位以上の節位に果実26が着果すると、蔓18の第1節位から着果節位までの間に生える葉24の数は26枚以上となり、スイカ1株当たりに吸収される肥料中の栄養量が過剰気味となり、果実26が膨らみすぎて変形果や空洞果、裂果などが生じ易くなる。
【0026】
また、蔓18の着果節位に着果された果実26は、畝6の表面に支持されるようになる(図5及び図6参照)。これにより畝6からの地熱が果実26に伝達され、この地熱によって果実26の生長が促進され、果実26を効率良く肥大化させることができる。また、支柱10に加わる果実26の重力を軽減することができ、支柱10が転倒するのを防止することができる。
【0027】
なお、第1の高さは170〜190cmであるのが好ましく、第1の高さが190cmを超えると、果実26が空中にぶら下がるようになって支柱10が転倒するおそれがあり、また、第1の高さが170cmよりも低いと、畝6の表面を這う蔓18の先端部の長さが長くなり、隣接するスイカの株22の蔓18が相互に干渉するおそれがある。
【0028】
また、着果節位から伸びる蔓18の先端部は谷部8に向かって伸びるようになり、着果節位から蔓18の先端部までの間に8〜12枚の葉24が残るようにして蔓18の先端部を切断する(図6参照)。蔓18の先端部は、水平に対して傾斜角度θで斜め上方に伸びるようになり、この傾斜角度θの大きさは、スイカの株22に吸収される肥料中の栄養量によって変化する。スイカの株22に吸収される肥料中の栄養量が適度であるときには、傾斜角度θは10〜20°となり、スイカの株22に吸収される肥料中の栄養量が不足気味のときには、傾斜角度θは0〜9°となり、また、スイカの株22に吸収される肥料中の栄養量が過剰気味のときには、傾斜角度θは21〜90°となる。従って、傾斜角度θの大きさを見ることによって、スイカの株22に吸収される肥料中の栄養量を知ることができ、栽培土壌4に供給する肥料の量を適切に調節することができる。
【0029】
なお、着果節位からの蔓18の先端部までの間に生える葉24の枚数は8〜12枚であるのが好ましく、葉24の枚数が8枚よりも少ないと、蔓18の先端部の長さが短くなって蔓18の先端部が斜め上方に伸び難くなり、また、葉24の枚数が12枚よりも多いと、蔓18の先端部の重さが重くなって、上述と同様に蔓18の先端部が斜め上方に伸び難くなる。
【0030】
本実施形態のスイカの栽培方法では、従来の地這栽培のように、隣接するスイカの苗16から伸びる蔓18が相互に干渉することがないので、スイカの苗16を定植する間隔D2を小さくすることができ、反当たりのスイカの栽培本数を増加させることができる。例えば、従来の地這栽培では、反当たりの栽培本数は500本程度が限界であるが、本発明の栽培方法では、反当たりの栽培本数を1000〜1200本程度まで増加させることが可能である。また、蔓18の第20〜第25節位に果実26を着果させるので、スイカの各株22に吸収される肥料中の栄養量がほぼ均一となり、これによりスイカの各株22より収穫される果実26の糖度及び大きさをほぼ均一にすることができる。
【0031】
次に、図7を参照して、本発明に従うスイカの栽培方法の他の実施形態について説明する。図7は、本発明の他の実施形態によるスイカの栽培方法を説明するための図である。なお、本実施形態において、上記実施形態と実質上同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
本実施形態の栽培具2Aでは、第1の線状部材12は、第1の高さh1(例えば約180cm)でもって複数の支柱10の間に架け渡され、また、第2の線状部材14Aa,14Abは、第1の線状部材12と畝6の表面との間に実質上等間隔で(例えば約60cm間隔で)2本架け渡されている。上側の第2の線状部材14Aaは、第1の線状部材12と畝6の表面との間に第2の高さh2(例えば約120cm)でもって複数の支柱10の間に架け渡され、下側の第2の線状部材14Abは、上側の第2の線状部材14Aaと畝6の表面との間に第3の高さh3(例えば約60cm)でもって複数の支柱10の間に架け渡されている。
【0033】
次に、上述した栽培具2Aを用いてスイカを栽培するスイカの栽培方法について説明する。上記実施形態と同様にしてスイカの苗を定植した後に、蔓18が第3の高さh3に対応する長さ(即ち、第3の高さh3と同一の長さ又はこれよりも幾分長い長さ)に伸びると、作業員などは、蔓18を上方に起こしてその先端部を支持部材20により下側の第2の線状部材14Abに支持させる。その後、蔓18が第2の高さh2に対応する長さ(即ち、第2の高さh2と同一の長さ又はこれよりも幾分長い長さ)に伸びると、作業員などは、蔓18を上方に起こしてその先端部を支持部材(図示せず)により上側の第2の線状部材14Aaに支持させる。更にその後、蔓18が第1の高さh1に対応する長さ(即ち、第1の高さh1と同一の長さ又はこれよりも幾分長い長さ)に伸びると、作業員などは、蔓18を上方に起こしてその先端部を支持部材(図示せず)により第1の線状部材12に支持させる。
【0034】
その後、蔓18の先端部は、第1の線状部材12に支持された部位から畝6の表面に向けて下方に伸びるようになる。蔓18の先端部が上側の第2の線状部材14Aaよりも幾分下側まで下方に伸びると、作業員などは、蔓18の先端部を支持部材(図示せず)により上側の第2の線状部材14Aaに支持させる。また、蔓18の先端部が下側の第2の線状部材14Abよりも幾分下側まで下方に伸びると、作業員などは、蔓18の先端部を支持部材(図示せず)により下側の第2の線状部材14Abに支持させる。
【0035】
本実施形態のスイカの栽培方法では、上述のように3段階に分けて蔓18を上方に起こすので、スイカの株22に与えるストレスをより軽減することができる。
【0036】
[実施例及び比較例]
本発明の効果を確認するために、実験を次の通りに行った。実施例として、図1〜図6に示す形態の栽培具を用いてスイカの栽培を行った。ビニルハウス内の圃場10アールに形成された畝の幅は120cm、谷部の幅は60cmであった。まず、2月中旬にセルトレイにカボチャの種を蒔き、その1週間後に別のセルトレイにスイカの種を蒔いた。生育されたカボチャの苗(台木)にスイカの苗(穂木)を接ぎ木し、このように接ぎ木して得たスイカの苗を育苗ポットに移して30日間育苗した。4月上旬にこの育苗したスイカの苗を畝に50cm間隔で1200本定植した。5月中旬に蔓の第20〜第25節位に果実が着果し、6月下旬に1200個の果実を収穫した。
【0037】
比較例として、実施例と同様にして接ぎ木によりスイカの苗を育苗し、4月上旬に地這栽培によりビニルハウス内の圃場10アールに500本のスイカの苗を定植し、6月下旬に500個の果実を収穫した。その結果は、表1に示す通りであった。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すように、実施例において収穫された果実の糖度及び大きさのバラツキは比較例よりも少なく、ほぼ均一な糖度及び大きさの果実を収穫することができた。この実験結果より、本発明のスイカの栽培方法では、蔓の第20〜第25節位に果実を着果させるので、スイカ1株当たりに吸収される肥料中の栄養量がほぼ均一となり、このことから、従来の地這栽培によるスイカの栽培方法に比べて糖度及び大きさのほぼ均一な果実を収穫することができたものと考えられる。
【0040】
以上、本発明に従うスイカの栽培方法の種々の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0041】
例えば、上記各実施形態では、スイカの苗16を定植する前に栽培具2(2A)を栽培土壌4に設置したが、スイカの苗16を定植した後に栽培具2(2A)を栽培土壌4に設置するようにしてもよい。
【0042】
また例えば、上記各実施形態では、第1の線状部材12に支持された部位から下方に伸びる蔓18の先端部を支持部材20により第2の線状部材14(14Aa,14Ab)に支持したが、第2の線状部材14(14Aa,14Ab)に支持することなく蔓18の先端部を下方に伸ばすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 栽培具
4 栽培土壌
6 畝
8 谷部
10 支柱
12 第1の線状部材
14,14Aa,14Ab 第2の線状部材
16 スイカの苗
18 蔓
24 葉
26 果実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培具を用いてスイカを栽培するスイカの栽培方法であって、
前記栽培具は、栽培土壌に所定方向に間隔を置いて配設された複数の支柱と、第1の高さでもって前記複数の支柱の間に架け渡された第1の線状部材と、前記第1の線状部材と前記栽培土壌の表面との間の第2の高さでもって前記複数の支柱の間に架け渡された第2の線状部材と、を備え、
スイカの苗を前記栽培土壌に定植し、前記スイカの苗から伸びた蔓が前記第2の高さに対応する長さに伸びると、前記蔓を上方に起こしてその先端部を前記第2の線状部材に支持させ、その後、前記蔓が前記第1の高さに対応する長さに更に伸びると、前記蔓を上方に起こしてその先端部を前記第1の線状部材に支持させ、更にその後、前記蔓は前記第1の線状部材から前記栽培土壌の表面に向けて下方に伸び、前記蔓の第19節位以下の節位及び第26節位以上の節位に着果した果実を摘果することにより、前記蔓の第20〜第25節位に果実を着果させ、この着果した果実が前記栽培土壌の表面に支持されることを特徴とするスイカの栽培方法。
【請求項2】
前記第2の線状部材は、前記第1の線状部材と前記栽培土壌の表面との間の実質上中間部に1本架け渡され、又は、前記第1の線状部材と前記栽培土壌の表面との間に実質上等間隔を置いて2本架け渡されていることを特徴とする請求項1に記載のスイカの栽培方法。
【請求項3】
前記第1の高さは170〜190cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイカの栽培方法。
【請求項4】
前記栽培土壌には畝が形成され、前記複数の支柱は、前記畝に前記所定方向に間隔を置いて配設され、また前記スイカの苗は前記畝に定植され、前記蔓の第20〜第25節位に着果した果実は前記畝の表面に支持され、着果節位から伸びる前記蔓の先端部は、前記畝の間の谷部に向かって伸びることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスイカの栽培方法。
【請求項5】
着果節位から伸びる前記蔓の先端部に8〜12枚の葉が残るようにして、前記蔓の先端部を切断することを特徴とする請求項4に記載のスイカの栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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