説明

スイッチドリラクタンスモータ

【課題】極数が少ないため、トルクリップルが大きいスイッチドリラクタンスモータをトルクリップルが大きい負荷に連結する際、起動性を改善し、騷音及び振動を減少させたスイッチドリラクタンスモータを提供する。
【解決手段】本発明によるスイッチドリラクタンスモータ100は、モータ及び負荷の最大トルクが互いに一致するように、モータの軸と負荷の軸とを整列するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチドリラクタンスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なスイッチドリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor;SRM)は、固定子と回転子が両方とも突極(salient)である磁気構造を有する。
【0003】
また、固定子に集中巻のコイルが巻回され、回転子は如何なる励磁装置(巻線または永久磁石など)もなく鉄心のみで構成されているため、価格競争力に優れる。また、速度可変型スイッチドリラクタンスモータは、電力半導体を用いたコンバータと位置センサのサポートにより連続的なトルクを安定して発生させ、各応用分野において求められる性能に応じた制御が容易であるという長所を有している。
【0004】
スイッチドリラクタンスモータは、極数が少ないとトルクリップルの発生が大きいため、騷音及び振動が大きくなり、極数が多いとトルクリップルの発生は少なくなるが、駆動素子数の増加による価格上昇及びスイッチング周波数の上昇による効率減少などの特性がある。
【0005】
従来技術によるスイッチドリラクタンスモータは、負荷のトルクリップルが大きい場合、騷音及び振動が大きくなるため、トルクリップルが少ない高価の多極モータを用い、高速の制御器を用いて電流を制御することによってトルクを制御した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述のような問題点を解決するために導き出されたものであって、本発明の目的は、極数が少ないため、トルクリップルが大きいスイッチドリラクタンスモータをトルクリップルが大きい負荷に連結する際、起動性を改善し、騷音及び振動を減少させたスイッチドリラクタンスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい一実施例によるスイッチドリラクタンスモータは、モータ及び負荷の最大トルクが互いに一致するように、モータの軸と負荷の軸とを整列することを特徴とする。
【0008】
また、前記負荷トルクとモータトルクとの差が一定トルクに近いように回転子の形状や固定子の形状などのモータ構造を設計することを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0010】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に従って本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータと圧縮機負荷との連結は、モータトルクの曲線と負荷(圧縮及び摩擦)トルクの曲線をできるだけ一致させることにより、その差によって発生するトルクが一定になる。
【0012】
トルク差が0より大きい場合、即ち、速度上昇時には、軸を一定に加速させることにより一定角加速度を有するようにして、角加速度のリップルによる騷音及び振動を防止する。
【0013】
トルク差が0である場合、即ち、モータトルクと負荷トルクが同一で速度が安定した場合は、現速度を維持するため速度リップルがなくなる。
【0014】
また、回転子の位置によるトルクは、回転子の位置によるインダクタンスの傾きによって変更され、インダクタンスの傾きは、スイッチドリラクタンスモータの電気磁気的構造を変更して調整することができる。
【0015】
従って、負荷トルクとモータトルクとの差が一定トルクに近いように、回転子の形状や固定子の形状などのモータ構造を設計する。
【0016】
このような構造を提供することにより、モータ駆動時の起動性が向上し、騷音及び振動を減少することができる。
【0017】
また、トルクリップルが大きい負荷に極数が少ないモータを適用することにより、原価を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータと圧縮機負荷との連結を示す斜視図である。
【図2】本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータの横断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施例による圧縮機負荷の縦断面図である。
【図4】本発明の好ましい実施例による圧縮機負荷の圧縮される部分を示す一部拡大図である。
【図5】本発明の好ましい実施例による圧縮機負荷の軸角度によるトルクの曲線を示すグラフである。
【図6】本発明のスイッチドリラクタンスモータの典型的なインダクタンスプロフィールを、一相に対して示すグラフである。
【図7】図6に図示された一相に対する本発明のスイッチドリラクタンスモータの典型的なインダクタンスプロフィールとともに一定の励磁電流が流れる時に発生したトルクを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、本発明を説明するにあたり、係わる公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100と圧縮機負荷200との連結を示す斜視図であり、スイッチドリラクタンスモータにおいてモータの角度によるトルク曲線を負荷トルク曲線に一致するように軸を合わせた構造斜視図である。
【0022】
図2は、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100の横断面図であり、回転子の形状や固定子の形状などのモータ構造を変更して、モータトルク曲線と負荷トルク曲線が類似するように、即ち、モータトルク曲線と負荷トルク曲線との差が一定であるようにした構造斜視図である。
【0023】
図3及び図4は、本発明の好ましい実施例による圧縮機負荷200の縦断面図と圧縮される部分の一部拡大図である。
【0024】
図5は、本発明の好ましい実施例による圧縮機負荷200の軸角度によるトルクの曲線を示すグラフである。
【0025】
図6は、本発明のスイッチドリラクタンスモータ100の典型的なインダクタンスプロフィールを、一相に対して示すグラフである。
【0026】
図7は、図6に図示された一相に対する本発明のスイッチドリラクタンスモータ100の典型的なインダクタンスプロフィールとともに一定の励磁電流が流れる時に発生したトルクを示すグラフである。
【0027】
図1に図示したように、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100は、外郭に固定子111を備え、固定子111の中央には軸回転をする回転子112を備えるものである。
【0028】
本発明のスイッチドリラクタンスモータ100は、全体回転角に対してモータのトルクと負荷のトルクとの差ができるだけ一定の大きさを維持して、トルクリップルの発生を減らし、起動トルクの最小値を確保することを目的とするものであり、モータ軸と負荷軸との整列及びモータ形状の変形などにより果たす。
【0029】
即ち、図1及び図2に図示したように、本発明によるスイッチドリラクタンスモータ100の回転子112の極が固定子111の極113と対向する際、回転子112の極の一側の半径R1は他側の半径R2より大きく形成され、固定子111の極113と回転子112との間の間隔は、回転子112との対向する位置によって異なる。
【0030】
即ち、回転子112の一側の端部と極113との間の間隔をA1、回転子112の他側の半径R2と極113との間の間隔をA2とすると、一般的にA1の長さは、A2の長さより短い(A1<A2)。
【0031】
図1において、100はスイッチドリラクタンスモータを示し、200は圧縮機負荷を示しており、モータと圧縮機とが軸120で連結されたことを斜視図で示している。
【0032】
負荷のトルクが軸の角度によって周期的に発生する場合、モータの軸はモータと負荷とのトルクの最大値が互いに一致するように負荷と整列されて連結される。
【0033】
この際、モータトルクの曲線と負荷トルクの曲線とを一致させることにより、その差によるトルクが一定になり、角加速度が一定になる。
【0034】
この角加速度は、回転時の摩擦によって一定に軸を回転させる役割をするようになり、リップルを防止する。
【0035】
このように本発明は、固定子111と回転子112の形状などのモータ構造を変更してトルク曲線を一致するようにする。
【0036】
このようなモータ構造の変更によるトルク曲線の一致は、モータの駆動時における騷音及び振動改善に大きな効果を与える。モータの軸整列はトルクの位相差を合わせるためであり、モータの形状変更はピークを合わせるためである。
【0037】
従って、モータの特性によって回転子112の半径R1、R2が異なって、回転子112と極113との間の間隔A1、A2の大きさによってモータの負荷及びリラクタンスが影響を受け、磁束が変化される。
【0038】
負荷トルクリップルが軸の角度によって周期的に発生する場合、スイッチドリラクタンスモータのトルクリップルも軸の角度によって周期的に発生するため、最大負荷トルクとモータの最大トルクとを一致するように整列すると、起動性及び騷音、振動を改善することができる。
【0039】
図3は、図1に図示された本発明の好ましい実施例による圧縮機負荷200の側面図である。
【0040】
図3及び図4に図示されたように、圧縮機負荷200は、シリンダを二つ備えて軸回転する形状であり、シリンダの中央に備えられた軸が回転しながらその間の空間にある気体を圧縮する形状である。この際、軸が回転する時に回転角度によって圧縮率が異なるため、回転角度によって負荷トルクが異なる。
【0041】
軸の回転によってモータトルクと負荷トルクが異なって発生するが、モータトルクと負荷トルクとの差が速度に寄与するトルクになる。従って、モータの速度は、モータトルクと負荷トルクの影響を受ける。
【0042】
図5は、図1に図示された本発明の圧縮機負荷200の軸角度によるトルクの変化を示すグラフであり、例えば、ツインロータリ圧縮機負荷のトルクが軸の角度によって周期的に発生した場合のグラフである。
【0043】
モータは、軸回転によってシリンダの内部の気体が圧縮されながら、トルク曲線が形成され、これは、モータの形状によって異なる。
【0044】
負荷トルクは、軸にかかる力であり、軸が回転されることにより、シリンダの内部の気体が圧縮され、回転角度によって圧縮率が異なって発生する。
【0045】
この際、軸の回転による気体の圧縮が一定でないため、図5のように軸角度によるトルクの変化が生じるのである。
【0046】
図6は、本発明のスイッチドリラクタンスモータ100の典型的なインダクタンスプロフィールを、一相に対して示すものであり、回転子112の位置角によってインダクタンスが増加する区間、前記インダクタンスが減少する区間、及び前記インダクタンスが一定である区間が存在する。
【0047】
一相に対するトルクは、[式1]のように、回転子の位置角に対するインダクタンスの傾きに比例する。
【0048】
【数1】

【0049】
(T:トルク、θ:回転子位置角、i:相電流、L:インダクタンス)
【0050】
図6に図示されたように、軸角度がθになる地点までのインダクタンスは、Luを維持し、θからθまでのインダクタンスは増加し、θからθまでのインダクタンスは一定であり、θからθまでのインダクタンスは次第に減少する。
【0051】
図6のB区間は、回転子極ピッチ(pitch)に対応し、このような区間が繰り返して形成される。
【0052】
図7は、図6に図示された一相に対する本発明のスイッチドリラクタンスモータ100の典型的なインダクタンスプロフィールとともに一定の励磁電流が流れる時に発生したトルクを示す。
【0053】
図7において、正トルクが出力される区間でのみ電流を流し、負トルクの部分では他相に電流を流して正トルクを生成する。
【0054】
図5の負荷トルクの場合、360°で二つのトルクピーク値が存在するため、一相のトルクは大きくして他相のトルクを小さくすると、トルクグラフはピーク値が同期化される。
【0055】
上記のような構造を有する本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100と圧縮機負荷200との連結は、モータトルクと負荷トルクの曲線を一致させることにより、その差によるトルクが一定になり、角加速度が一定になる。
【0056】
このような角加速度は、回転時の摩擦によって一定に軸を回転させる役目をし、リップルを防止する。
【0057】
回転子の位置によるトルクは、回転子の位置によるインダクタンス傾きによって変更され、インダクタンスの傾きは、スイッチドリラクタンスモータの電気磁気的構造を変更して調整することができる。
【0058】
従って、負荷トルクとモータトルクとの差が一定のトルクに近いように、回転子の形状や固定子の形状などのモータ構造を設計する。このような構造を提供することにより、モータの駆動時の起動性が向上され、騷音及び振動を減少することができる。また、トルクリップルが大きい負荷に極数が少ないモータを適用することにより、原価を低減することができる。
【0059】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明によるスイッチドリラクタンスモータは、これに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0060】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、スイッチドリラクタンスモータに適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
100 スイッチドリラクタンスモータ
111 固定子
112 回転子
113 極
120 軸
200 圧縮機負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ及び負荷の最大トルクが互いに一致するように、モータの軸と負荷の軸とを整列することを特徴とするスイッチドリラクタンスモータ。
【請求項2】
前記負荷トルクとモータトルクとの差が一定トルクに近いように回転子の形状や固定子の形状などのモータ構造を設計することを特徴とする請求項1に記載のスイッチドリラクタンスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90566(P2013−90566A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226340(P2012−226340)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】