説明

スイッチング電源装置

【課題】 待機中の電力損失を小さくすること。
【解決手段】 出力の小さい第1の電源回路11と、出力の大きい第2の電源回路12とを使用したスイッチング電源装置において、第1の電源回路11は常に動作状態にあり、第2の電源回路12は、それを起動させる時に、第1の電源回路11で生成された電力を用いて起動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関し、特に、スイッチング電源装置を起動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この技術分野において周知のように、スイッチング電源装置とは、ある電圧レベルの直流電圧(入力電圧)を他の電圧レベルの直流電圧(出力電圧)に変換する電力変換装置のことをいう。スイッチング電源装置は、DC−DCコンバータあるいはスイッチングレギュレータとも呼ばれる。スイッチング電源装置では、トランジスタをスイッチとして用い、これをスイッチングさせ、入力電圧をいったん交流電圧に変えて、トランス又はインダクタ等のインダクタンス素子によって電圧を昇圧あるいは降圧した後、整流して出力電圧に変換する。
【0003】
このようなスイッチング電源装置として、出力の小さい第1の電源回路と、出力の大きい第2の電源回路とを使用したものがある。第1の電源回路は、負荷として、リモートコントローラからの電波(例えば、赤外線)の指令信号に応答して動作するコントロール回路に電力を供給するために使用される。第2の電源回路は、負荷として、装置本体(セット回路)に電力を供給するために使用される。従来のスイッチング電源装置では、一度起動されると、常に動作状態に置かれている。換言すれば、第1の電源回路と第2の電源回路とは、負荷の状態とは無関係に、常に動作状態に置かれている。
【0004】
本発明に関連する先行技術は種々知られている。例えば、交流電源入力をフィルタ用インダクタンス素子を介して整流器に供給し、この整流器からの出力をスイッチング制御するスイッチング電源装置において、上記フィルタ用インダクタンス素子に対して別巻線を設け、この別巻線からの出力により上記スイッチング制御用の回路部への起動電力供給を行なうことを特徴とするスイッチング電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、2種類の電源電圧を生成する2系統の電源回路を改善したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示された電源回路は、高電圧の電源電圧と、低電圧の電源電圧と2種類の電源電圧を必要とする機器に用いられ、1つの電源回路でこのような2種類の電源電圧を供給する際に用いられる電源回路である。電源回路は、第1の出力電圧(高電圧の電源電圧)を生成する第1の電圧生成部と、第2の出力電圧(低電圧の電源電圧)を生成する第2の電圧生成部とを有する。第1の電圧生成部は第1の制御部を備え、第2の電圧生成部は第2の制御部を備えている。第2の制御部の電源電圧入力端子と、第1の制御部の電源電圧入力端子との間に、第2の制御部の電源電圧入力端子の電位が所定の電位を超えて上昇したときにオンするスイッチング回路を設けている。このスイッチング回路は、第2の制御部が完全に立ち上がった後に第1の制御部に電源電圧を供給しているので、第1の電圧生成部は、第2の電圧生成部が立ち上がった後でなければ立ち上がらないようになっている。
【0006】
更に、PWM回路を起動させる電源を有し、簡易な構成で消費電力を抑制するスイッチング電源も知られている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に開示されたスイッチング電源は、第1のコンバータと、第2のコンバータと、PWM回路とを有する。PWM回路は、スイッチング電源の起動時にPWM回路に電力を供給する第2のコンバータを、第1のコンバータより先に起動している。
【0007】
また、電源装置の規模の増加を抑制しつつ、コンピュータの中央処理装置などの回路および起動回路へ1系統バッテリの蓄電電力を給電する技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。この特許文献4に開示された電源装置は、コンピュータに用いられる電源装置であって、中央処理装置などの回路へ電力を供給するための給電系統に用いられるメイントランスと、起動回路へ電力を給電するための給電系統に用いられるバックアップトランスとの、2つのトランスを備えている。入力コンデンサの充電電圧は、バックアップトランスを介して出力コンデンサに充電され、この出力コンデンサの充電電圧は起動回路へ出力される。バックアップトランスから出力される電力は出力電圧制御回路へ供給されている。この状態で、起動スイッチが操作されると、起動回路は起動信号を出力する。起動信号に応答して、出力制御回路は動作を開始する。これにより、入力コンデンサの充電電圧は、メイントランスを介して中央処理装置へ供給される。
【0008】
【特許文献1】実開昭57−151627号公報
【特許文献2】特許第3244424号公報
【特許文献3】特開2002−199723号公報
【特許文献4】特開2005−110346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、別巻線からの出力によりスイッチング制御用の回路部への起動電力供給を行なうことを開示しているのみで、出力の小さい第1の電源回路と、出力の大きい第2の電源回路とを使用したスイッチング電源装置において、どのようにして第2の電源回路を起動させるかについては何等開示していない。また、特許文献1に開示されたスイッチング電源装置は、常に動作状態に置かれているので、待機状態にあるときにも常に大電力を消費するという問題がある。
【0010】
特許文献2は、電源回路(スイッチング電源装置)それ自体を起動する場合に、第2の電圧生成部が立ち上がった後に第1の電圧生成部を立ち上げるようにした技術思想を開示するのみである。従って、特許文献2に開示された電源回路(スイッチング電源装置)は、一度起動されると、常に動作状態に置かれる。従って、特許文献2に開示された電源回路(スイッチング電源装置)は、特許文献1に開示されたスイッチング電源装置と同様に、待機状態にあるときにも常に大電力を消費するという問題がある。
【0011】
特許文献3も、特許文献2と同様に、第2のコンバータを第1のコンバータより先に起動するようにした技術思想を開示するのみである。従って、特許文献2と同様に、特許文献3に開示されたスイッチング電源も、一度起動されると、常に動作状態に置かれる。従って、特許文献3に開示されたスイッチング電源は、特許文献1および特許文献2に開示されたスイッチング電源装置と同様に、待機状態にあるときにも常に大電力を消費するという問題がある。
【0012】
特許文献4では、バックアップトランスから出力される電力を出力電圧制御回路へ供給し、起動スイッチの操作に応答して起動回路は起動信号を出力し、この起動信号に応答して、出力電圧制御回路は動作を開始して、入力コンデンサの充電電圧は、メイントランスを介して中央処理装置へ供給される。
【0013】
とにかく、特許文献1〜3に開示されているスイッチング電源装置では、待機状態に於いて大電力が消費されるという問題がある。上述したように、スイッチング電源装置が、出力の小さい第1の電源回路と、出力の大きい第2の電源回路とを使用したものであるとする。そして、第1の電源回路は、負荷として、リモートコントローラからの電波(例えば、赤外線)の指令信号に応答して動作するコントロール回路に電力を供給するために使用され、第2の電源回路は、負荷として、装置本体(セット回路)に電力を供給するために使用されるとする。従来のスイッチング電源装置では、一度起動されると、常に動作状態に置かれている。換言すれば、第1の電源回路と第2の電源回路とは、常に動作状態に置かれている。周知のように、リモートコントローラは、実際に動作する期間に較べて待機している期間が長時間である。このように待機状態の期間が長時間であるにも拘らず、負荷(セット回路)の待機状態においても第2の電源回路を動作状態に置くことは、待機中での電力損失を大きくしてしまう。
【0014】
したがって、本発明の解決課題は、待機中の電力損失を小さくすることができる、スイッチング電源装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、出力の小さい第1の電源回路(11)と、出力の大きい第2の電源回路(12)とを使用したスイッチング電源装置において、前記第1の電源回路(11)は常に動作状態にあり、前記第2の電源回路(12)は、それを起動させる時に、前記第1の電源回路(11)で生成された電力を用いて起動されることを特徴とするスイッチング電源装置(10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G)が得られる。
【0017】
上記スイッチング電源装置において、前記第1の電源回路(11)と前記第2の電源回路(12)との出力比が1:1000以上であることが好ましい。前記第2の電源回路(12)を起動信号に応答して動作させるようにして良い。この場合、前記第1の電源回路(11)の帰還信号を前記起動信号として用いても良いし、前記第1の電源回路(11)の負荷(15)を検出して、前記起動信号を生成するようにしても良いし、或いは、前記第2の電源回路(12)の帰還信号を前記起動信号として用いても良い。また、前記第2の電源回路(12)を停止させる手段(SW:15,16,17)を更に含んでも良い。
【0018】
尚、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、第1の電源回路は常に動作状態にしておき、第2の電源回路については、それを起動させる際に、第1の電源回路で生成された電力を用いて起動させるようにしているので、待機中の電力損失を小さくすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置10について説明する。図示のスイッチング電源装置10は、第1の電源回路11と、第2の電源回路12と、セット回路14と、動作・停止信号回路15と、外部制御回路16と、スイッチ回路17とを備えている。
【0021】
第1の電源回路11は出力の小さい電源回路であるのに対して、第2の電源回路12は出力の大きい電源回路である。例えば、第1の電源回路11から出力される第1の出力電圧が供給される負荷は、リモートコントローラからの電波(例えば、赤外線)の指令信号に応答して動作するコントロール回路(後述する)である。これに対して、第2の電源回路12から出力される第2の出力電圧が供給される負荷は、装置本体などのセット回路14である。
【0022】
本例では、第1の電源回路11と第2の電源回路12との出力(電力)比は、1:1000以上である。
【0023】
第1の電源回路11にはAC電源が印加され、第1の電源回路11は常時動作している。第2の電源回路12の制御回路(図示せず)を動作させるための電力を、スイッチ回路17を介して第1の電源回路11から供給している。すなわち、第1の電源回路11から第2の電源回路12の制御回路へ供給する電力を、外部制御回路16の制御信号によりスイッチ回路17をオン/オフさせることにより制御して、第2の電源回路12を動作・停止させる。尚、外部制御回路16には、動作・停止信号回路15から動作信号又は停止信号が供給される。
【0024】
このように、第1の電源回路11から供給される電力を制御して、第2の電源回路12を動作・停止させている。換言すれば、第2の電源回路12は、それを起動させる時に、第1の電源回路11で生成された電力を用いて起動される。
【0025】
このような構成によれば、第2の電源回路11は、負荷であるセット回路14が待機状態のときに、その動作を停止することができ、セット回路14を動作状態にさせるときにのみ、動作して、セット回路14へ電力を供給することができる。したがって、待機状態での電力を消費を大幅に削減することができる。
【0026】
一般的に電源回路(特にスイッチング式電源回路)では、出力電力を大きくする為には起動回路にも、より大きな電力を必要とする。つまり起動回路は電源回路のオフ時にも電力を消費しているので、出力電力が大きな電源回路は待機時の消費電力も大きくなる。この待機状態での電力を削減する為には、大きな出力の電源回路の起動をより小さな出力の電源回路の出力により行なうことで可能となる。この場合、大きな電源回路の出力電力と小さな電源回路の出力電力の比を1000:1以上にすれば、待機時の電力を1/1000以下とすることができる。より好ましくは10000:1以上にすれば1/10000以下に、さらに好ましくは100000:1以上にすれば1/100000以下に、待機時の電力を大幅に削減することができ、この電源装置を使用する機器を省エネルギー化することが可能となる。
【0027】
図2を参照して、図1に示したスイッチング電源装置10の具体例について説明する。
【0028】
スイッチング電源装置10は、AC電源から供給されるAC入力電圧を全波整流して、全波整流した電圧を出力する全波整流器D1と、この全波整流した電圧を平滑して、平滑した電圧を出力する入力コンデンサC1とを有する。平滑した電圧は、第1の電源回路11と第2の電源回路12とに供給される。
【0029】
図示の第1の電源回路11は、抵抗器R1と、一次巻線N1と二次巻線N2と三次巻線(補助巻線)N3とを持つ第1の絶縁トランスT1と、この第1の絶縁トランスT1の一次巻線N1に接続されたスイッチング素子として第1の電界効果トランジスタFET1と、第1の絶縁トランスT1の二次巻線N2に誘起された交流電圧を整流するダイオードD2と、このダイオードD2で整流された電圧を平滑して、第1の出力電圧を出力する第1の出力コンデンサC2とを有する。
【0030】
図示の例では、この第1の出力電圧は、動作・停止信号回路15として働くコントロール回路へ供給される。上述したように、コントロール回路15は、リモートコントローラ(図示せず)からの電波(例えば、赤外線)の指令信号に応答して動作する。
【0031】
第1の電源回路11は、更に、後述する第1の帰還信号に応答して、第1の電界効果トランジスタFET1をオン/オフするための第1のパルス幅変調(PWM)信号を発生するための第1のPWM発振器21を備えている。第1の絶縁トランスT1の補助巻線N3に誘起された交流電圧は、ダイオードD3で整流された後、コンデンサC3で平滑され、後述するように、スイッチ回路17を介して第2の電源回路12へ供給される。すなわち、コンデンサC3で平滑された電圧は、第2の電源回路12の制御回路(後述する)を動作させるための電圧(電力)として使用される。
【0032】
スイッチング電源装置10は、第1の出力電圧および抵抗器R2に流れる第1の出力電流(第1の負荷電流)を検出して、第1の出力検出信号を出力する第1の検出回路31と、この第1の出力検出信号を、第1の電源回路11の一次側回路へ、上記第1の帰還信号として帰還する第1の帰還回路41とを有する。
【0033】
一方、図示の第2の電源回路12は、一次巻線N1と二次巻線N2とを持つ第2の絶縁トランスT2と、この第2の絶縁トランスT2の一次巻線N1に接続されたスイッチング素子として第2の電界効果トランジスタFET2と、第2の絶縁トランスT2の二次巻線N2に誘起された交流電圧を整流するダイオードD5と、このダイオードD5で整流された電圧を平滑して、第2の出力電圧を出力する第2の出力コンデンサC4とを有する。
【0034】
図示の例では、この第2の出力電圧は、装置本体であるセット回路14へ供給される。
【0035】
第2の電源回路12は、更に、後述する第2の帰還信号に応答して、第2の電界効果トランジスタFET2をオン/オフするための第2のパルス幅変調(PWM)信号を発生するための第2のPWM発振器22を備えている。
【0036】
スイッチング電源装置10は、第2の出力電圧および抵抗器R3に流れる第2の出力電流(第2の負荷電流)を検出して、第2の出力検出信号を出力する第2の検出回路32と、この第2の出力検出信号を、第2の電源回路12の一次側回路へ、上記第2の帰還信号として帰還する第2の帰還回路42とを有する。
【0037】
コントロール回路15にはセット回路14からの信号が供給される。コントロール回路15は、このセット回路14からの信号やリモートコントローラからの指令信号に応答して、動作信号又は停止信号を外部制御回路16へ供給する。動作信号に応答して、外部制御回路16はスイッチ回路17をオンして、コンデンサC3に蓄積された電圧(電力)を、第2の電源回路12の第2のPWM発振器22へ供給する。一方、停止信号に応答して、外部制御回路16はスイッチ回路17をオフして、コンデンサC3に蓄積された電圧(電力)の第2のPWM発振器22への供給を停止する。とにかく、第2のPWM発振器22は、第2の電源回路12の制御回路として働く。
【0038】
図3及び図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置10Aについて説明する。図示のスイッチング電源装置10Aは、第1の帰還回路41と外部制御回路16との間に信号検出回路51が備えられている点を除いて、図1及び図2に示したスイッチング電源装置10と同様の構成を有する。従って、図1及び図2に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付して、以下では異なる点についてのみ説明する。
【0039】
信号検出回路51は、第1の帰還回路41が出力する第1の帰還信号の一部を検出して、信号検出信号を外部制御回路16へ送出する。すなわち、第1の電源回路11の負荷であるコントロール回路15がリモートコントローラの動作に応じて変化する。この変化を、信号検出回路51は、第1の帰還回路41の第1の帰還信号から検出する。この信号検出信号に応答して、外部制御回路16は、スイッチ回路17をオン/オフし、それにより、第2の電源回路12の動作・停止を制御する。
【0040】
図5及び図6を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るスイッチング電源装置10Bについて説明する。図示のスイッチング電源装置10Bは、第2の帰還回路42と外部制御回路16との間に信号検出回路52が備えられていると共に、コントロール回路15の信号を第2の帰還回路42へ送出している点を除いて、図1及び図2に示したスイッチング電源装置10と同様の構成を有する。従って、図1及び図2に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付して、以下では異なる点についてのみ説明する。
【0041】
第1の電源回路11の負荷であるコントロール回路15は、リモートコントローラの動作に応じて変化する。コントロール回路15はその変化を第2の帰還回路42へ送出する。第2の帰還回路42は、その変化を反映させた第2の帰還信号に含ませる。信号検出回路52は、第2の帰還信号に含まれる変化を検出して、信号検出信号を外部制御回路16へ送出する。この信号検出信号に応答して、外部制御回路16は、スイッチ回路17をオン/オフし、それにより、第2の電源回路12の動作・停止を制御する。
【0042】
図7を参照して、第2の帰還回路42から出力される第2の帰還信号について説明する。図7において、(A)は第2の電源回路12の電気特性を示す図で、(B)は第2の帰還回路42から出力される第2の帰還信号の特性を示す図である。図7(A)において、横軸は第2の電源回路12の出力電流Iを示し、縦軸は第2の出力電圧Vを示す。図7(B)において、横軸は第2の電源回路12の出力電流Iを示し、縦軸は第2の帰還信号の信号電流を示す。
【0043】
図7(A)に示されるように、Aの範囲は使用していない部分である。信号検出回路50は、この部分に対応する第2の帰還信号を検出することにより、第2の電源回路12の動作・停止を制御するための信号検出信号を出力する。
【0044】
次に、図8を参照して、図6に示したスイッチング電源装置10Bの動作について説明する。
【0045】
先ず、コントロール回路15から第2の帰還回路42へ起動信号を入力する(ステップS1)。第2の帰還回路42から起動信号が出力されるので、信号検出回路52はこの起動信号を検出して、起動信号を出力する(ステップS2)。この起動信号に応答して、外部制御回路16が動作し(ステップS3)、スイッチ回路17をオンさせる(ステップS4)。これにより、第1の電源回路11で生成された電力がスイッチ回路17を介して第2のPWM発振器22へ供給され、第2のPWM発信器22は動作を開始する(ステップS5)。その結果、第2の電源回路12が動作する(ステップS6)。
【0046】
次に、コントロール回路15が第2の帰還回路42へ停止信号を出力したとする(ステップS7)。第2の帰還回路42から出力される停止信号を信号検出回路52が検出して、信号検出回路52は停止信号を出力する(ステップS8)。この停止信号に応答して、外部制御回路16はスイッチ回路17をオフさせる(ステップS9)。これにより、第1の電源回路11から第2のPWM発振器22への電力供給が停止されるので、第2のPWM発振器22は動作を停止する(ステップS10)。その結果、第2の電源回路12は動作を停止する(ステップS11)。
【0047】
図9を参照して、本発明の第4の実施の形態に係るスイッチング電源装置10Cについて説明する。図示のスイッチング電源装置10Cは、スイッチ回路17と第2の電源回路12との間にソフト動作回路18を更に備えている点を除いて、図1に示したスイッチング電源回路10と同様の構成を有する。従って、図1に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付して、以下では異なる点についてのみ説明する。
【0048】
ソフト動作回路18は、起動時に第2の電源回路12を徐々に(ソフトに)起動し、停止時に第2の電源回路12を徐々に(ソフトに)停止するための回路である。
【0049】
図10は、第2の電源回路12を起動する場合にソフト動作回路18から第2の電源回路12へ出力される電圧の波形を示す波形図である。図10に示されるように、第2の電源回路12を起動する場合、ソフト動作回路18は、徐々にパルス幅が長くなるような電圧を第2の電源回路12へ供給する。
【0050】
図11は、第2の電源回路12を停止する場合にソフト動作回路18から第2の電源回路12へ出力される電圧の波形を示す波形図である。図11に示されるように、第2の電源回路12を停止する場合、ソフト動作回路18は、徐々にパルス幅が短くなるような電圧を第2の電源回路12へ供給する。
【0051】
図12に、図9に示したソフト動作回路18の一部の回路を示す。ソフト動作回路18は、電源E1と、スイッチS1と、コンデンサC11と、第1の抵抗器R11と、第2の抵抗器R12とを含む。第2の抵抗器R12は電源E1にスイッチS1を介して接続されている。第1の抵抗器R11とコンデンサC11とは直列に接続され、その直列回路は第2の抵抗器R12に並列に接続されている。スイッチS1のオン/オフは、外部制御回路16によって制御される。
【0052】
図13に図12に示したコンデンサC11の充電特性および放電特性を示す。図13において、実線はコンデンサC11の充電特性を示し、破線はコンデンサC11の放電特性を示す。
【0053】
ソフト動作回路18は、第2の電源回路12を起動する場合、図13の実線で示すコンデンサC11の充電特性を用いてパルス幅を変調することにより、図10に示されるような、パルス幅が徐々に長くなるような電圧を第2の電源回路12へ供給する。
【0054】
一方、ソフト動作回路18は、第2の電源回路12を停止する場合、図13の破線で示すコンデンサC11の放電特性を用いてパルス幅を変調することにより、図11に示されるような、パルス幅が徐々に短くなるような電圧を第2の電源回路12へ供給する。
【0055】
図14を参照して、本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置10Dについて説明する。図示のスイッチング電源装置10Dは、第2の電源回路12側に第2の電源回路12をオン・オフするためのスイッチSWを設けたスイッチング電源装置である。
【0056】
図示のスイッチング電源装置10Dは、上記スイッチSWと、第2の全波整流器D6と、スイッチ制御回路60と、第1及び第2の遅延回路61および62とを更に備えている点を除いて、図2に示したスイッチング電源回路10と同様の構成を有する。従って、図2に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付して、以下では異なる点についてのみ説明する。
【0057】
AC電源(図示せず)は、スイッチSW及び第2の全波整流器D6を介して第2の電源回路12に接続されている。スイッチSWのオン・オフは、スイッチ制御回路60によって制御される。外部制御回路16は、起動信号(オン信号)と停止信号(オフ信号)のいずれか一方を出力する。オン信号は、直接、スイッチ回路17へ供給されると共に、第1の遅延回路61を介してスイッチ制御回路60へ供給される。一方、オフ信号は、直接、スイッチ制御回路60へ供給されると共に、第2の遅延回路62を介してスイッチ回路17へ供給される。
【0058】
図15及び図16を参照して、図14に図示したスイッチング電源装置10Dの動作について説明する。図15は、第2の電源回路12を起動する場合の動作を説明するためのタイムチャートであり、図16は、第2の電源回路12を停止する場合の動作を説明するためのタイムチャートである。
【0059】
最初に、図15を参照して、第2の電源回路12を起動する場合の動作について説明する。この場合、外部制御回路16から出力されるオン信号(起動信号)は、直接、スイッチ回路17へ供給される。従って、このオン信号に応答して、時刻tで、スイッチ回路17はオンし、第1の電源回路11で生成された電力はスイッチ回路17を介して第2の電源回路12の第2のPWM発振器22へ供給される。従って、第2のPWM発振器22は、時刻tで動作を開始する。一方、上記オン信号は、第1の遅延回路61により第1の遅延時間Tだけ遅延されて、スイッチ制御回路60へ供給される。従って、スイッチ制御回路60は、時刻tから第1の遅延時間Tだけ経過した時刻tでスイッチSWをオンする。スイッチSWがオンした後、AC電源からのAC電圧は、第2の全波整流器D6を介して第2の電源回路12へ供給される。
【0060】
次に、図16を参照して、第2の電源回路12を停止する場合の動作について説明する。この場合、外部制御回路16から出力されるオフ信号(停止信号)は、直接、スイッチ制御回路60へ供給される。このオフ信号に応答して、時刻tで、スイッチ制御回路60はスイッチSWをオフする。スイッチSWをオフした後、AC電源のAC電圧の第2の全波整流器D6を介しての第2の電源回路12へ供給は停止される。一方、上記オフ信号は、第2の遅延回路62により遅延されて、スイッチ回路17へ供給される。したがって、スイッチ回路17は、時刻tから第2の遅延時間Tだけ経過した時刻tで、オンする。その結果、時刻tで、第1の電源回路11で生成された電力はスイッチ回路17を介して第2の電源回路12の第2のPWM発振器22へ供給される。従って、第2のPWM発振器22は、時刻tで動作を停止する。
【0061】
図17及び第18を参照して、本発明の第6の実施の形態に係るスイッチング電源装置10Eについて説明する。図示のスイッチング電源装置10Eは、第1及び第2の信号検出回路51および52を更に備えると共に、コントロール回路15から出力される動作信号および停止信号をそれぞれ第1及び第2の帰還回路41および42へ送出するようにした点を除いて、図1及び図2に示したスイッチング電源装置10と同様の構成を有する。換言すれば、図示のスイッチング電源装置10Eは、図3及び図4に示した本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源回路10Aと、図5及び図6に示した本発明の第3の実施の形態に係るスイッチング電源回路10Bとを組み合わせた、スイッチング電源装置である。従って、図1及び図2に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付して、以下では異なる点についてのみ説明する。
【0062】
第1の信号検出回路51は、第1の帰還回路41と外部制御回路16との間に挿入されている。第2の信号検出回路52は、第2の帰還回路42と外部制御回路16との間に挿入されている。
【0063】
コントロール回路15から出力された動作信号は、第1の帰還回路41へ送出される。第1の帰還回路41は、この動作信号を含む第1の帰還信号を出力する。第1の信号検出回路51は、第1の帰還信号から動作信号を検出すると、オン信号を外部制御回路16へ供給する。このオン信号に応答して、外部制御回路16はスイッチ回路17をオンして、第1の電源回路11で生成された電力をスイッチ回路17を介して第2の電源回路12の第2のPWM発振器22へ供給する。
【0064】
一方、コントロール回路15から出力された停止信号は、第2の帰還回路42へ送出される。第2の帰還回路42は、この停止信号を含む第2の帰還信号を出力する。第2の信号検出回路52は、第2の帰還信号から停止信号を検出すると、オフ信号を外部制御回路16へ供給する。このオフ信号に応答して、外部制御回路16はスイッチ回路17をオフし、第1の電源回路11から第2の電源回路12の第2のPWM発振器22への電力供給が停止される。
【0065】
このように、図示のスイッチング電源装置10Eでは、第2の電源回路12のオン動作を第1の電源回路11側で生成された第1の帰還信号を使用して行い、第2の電源回路12のオフ動作を第2の電源回路12側で生成された第2の帰還信号を使用して行っている。
【0066】
図17及び図18に示したスイッチング電源装置10Eでは、コントロール回路15から出力された動作信号および停止信号をそれぞれ第1及び第2の帰還回路41および42へ送出しているが、コントロール回路15から出力された動作信号および停止信号をそれぞれ第2及び第1の帰還回路42および41へ送出するようにしても良い。この場合、第2の電源回路12のオン動作は、第2の電源回路12側で生成された第2の帰還信号を使用して行われ、第2の電源回路12のオフ動作は、第1の電源回路11側で生成された第1の帰還信号を使用して行われる。
【0067】
このように第1の帰還回路41へはオン動作、第2の帰還回路42へはオフ動作とそれぞれ帰還回路へ分けることにより、同一の帰還回路でオン・オフを行なうよりも誤動作を防ぐことができ、また第1および第2の信号検出回路51および52の構成も簡素にすることができる。この場合、第1の電源が常にオンとなっているので、第1の帰還回路41の経路よりオン信号を伝達することが好ましい形となる。
【0068】
図19を参照して、本発明の第7の実施の形態に係るスイッチング電源装置10Fについて説明する。図示のスイッチング電源装置10Fは、第1及び第2の信号検出回路51および52の代わりに信号確認回路70を備えている点を除いて、図17に示したスイッチング電源装置10Eと同様の構成を有する。従って、図17に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付して、以下では異なる点についてのみ説明する。
【0069】
コントロール回路15から出力される動作信号および停止信号は、第1及び第2の帰還回路41および42へ送出される。信号確認回路70は、第1の帰還回路41から出力される第1の帰還信号中および第2の帰還回路42から出力される第2の帰還信号中の動作信号又は停止信号を検出する。
【0070】
第1及び第2の帰還信号の両方中に停止信号を検出した場合、信号確認回路70はオフ信号を外部制御回路16へ送出する。第1の帰還信号中に停止信号を検出し、第2の帰還信号中に動作信号を検出した場合、信号確認回路70はオフ信号を外部制御回路16へ送出する。第1の帰還信号中に動作信号を検出し、第2の帰還信号中に停止信号を検出した場合、信号確認回路70はオフ信号を外部制御回路16へ送出する。第1及び第2の帰還信号の両方中に動作信号を検出した場合、信号確認回路70はオン信号を外部制御回路16へ送出する。
【0071】
すなわち、図示のスイッチング電源装置10Fでは、第1及び第2の帰還信号中の信号を検出して、その検出した信号が両方とも動作信号であった場合にのみ、第2の電源回路12の動作を開始する。一方、第1及び第2の帰還信号中から検出した信号が合わないか、両方とも停止信号である場合、第2の電源回路12の動作を停止する。
【0072】
このように、第1および第2の帰還回路41および42が両方ともに動作信号の時のみオン信号を外部制御回路16へ送出する方法とすることにより、ノイズ等による誤動作によるオン信号の発生を減ずることができる。
【0073】
尚、上述した実施の形態では、電源回路の数が2で、2つの帰還信号がある場合について説明しているが、電源回路の数が3以上で、3つ以上の帰還信号がある場合にも拡張適用できるのは勿論である。この場合には、3つ以上の帰還信号中に検出した信号の全てが動作信号であった場合のみ、特定の電源回路の動作を開始することになる。
【0074】
図20を参照して、本発明の第8の実施の形態に係るスイッチング電源装置10Gについて説明する。図示のスイッチング電源装置10Gは、信号確認回路70が後述するように動作停止信号を第1の電源回路11へ送出するようにした点を除いて、図19に示したスイッチング電源装置10Fと同様の構成を有する。従って、図19に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付して、以下では異なる点についてのみ説明する。
【0075】
第1及び第2の帰還信号中に検出した信号が異なるか、両方とも停止信号であった場合、信号確認回路70は動作停止信号を第1の電源回路11へ送出する。この動作停止信号に応答して、第1の電源回路11はその動作を停止する。
【0076】
すなわち、図19に図示したスイッチング電源装置10Fでは、第2の電源回路12のみの動作を制御しているが、図20に図示したスイッチング電源装置10Gでは、第2の電源回路12のみでなく第1の電源回路11の動作をも制御している。換言すれば、帰還信号中から検出した信号が合っていない場合には、全ての電源回路の動作を停止させている。
【0077】
このように第1および第2の帰還回路41および42中に検出した信号が異なるか両方とも停止信号である場合には、異常状態と判定して第1および第2の電源11および12を停止することにより、機器の電源を全てシャットダウンすることができ、機器の発火、破壊等からの安全性を確保することができる。
【0078】
以上、本発明についてその好ましい実施の形態によって説明してきたが、本発明の精神を逸脱しない範囲内で、種々の変形が当業者によって可能であるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したスイッチング電源装置の具体例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示したスイッチング電源装置の具体例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示したスイッチング電源装置の具体例を示すブロック図である。
【図7】図6に示したスイッチング電源装置に使用される第2の帰還回路から出力される第2の帰還信号を説明するための図である。
【図8】図6に示したスイッチング電源装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示されたスイッチング電源装置において、第2の電源回路を起動する際にソフト動作回路から第2の電源回路へ出力される電圧の波形を示す波形図である。
【図11】図9に示されたスイッチング電源装置において、第2の電源回路を停止する際にソフト動作回路から第2の電源回路へ出力される電圧の波形を示す波形図である。
【図12】図9に示したソフト動作回路の一部の回路を示す回路図である。
【図13】図12に示したコンデンサの充電特性および放電特性を示す特性図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係るスイッチング電源装置の具体例を示すブロック図である。
【図15】図14に示したスイッチング電源装置における、第2の電源回路を起動する場合の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図16】図14に示したスイッチング電源装置における、第2の電源回路を停止する場合の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図17】本発明の第6の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図18】図17に示したスイッチング電源装置の具体例を示すブロック図である。
【図19】本発明の第7の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図20】本発明の第8の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0080】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G スイッチング電源装置
11 第1の電源回路
12 第2の電源回路
14 セット回路
15 動作・停止信号回路(コントロール回路)
16 外部制御回路
17 スイッチ回路
18 ソフト動作回路
21 第1のPWM発振器
22 第2のPWM発振器
31 第1の検出回路
32 第2の検出回路
41 第1の帰還回路
42 第2の帰還回路
51、52 信号検出回路
60 スイッチ制御回路
61 第1の遅延回路
62 第2の遅延回路
70 信号確認回路
SW スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力の小さい第1の電源回路と、出力の大きい第2の電源回路とを使用したスイッチング電源装置において、前記第1の電源回路は常に動作状態にあり、前記第2の電源回路は、それを起動させる時に、前記第1の電源回路で生成された電力を用いて起動されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記第1の電源回路と前記第2の電源回路との出力比が1:1000以上である、ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第2の電源回路を起動信号に応答して動作させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1の電源回路の帰還信号を前記起動信号として用いる、ことを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記第1の電源回路の負荷を検出して、前記起動信号を生成する、ことを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記第2の電源回路の帰還信号を前記起動信号として用いる、ことを特徴とする、請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記第2の電源回路を停止させる手段を更に含む、請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−159200(P2007−159200A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347870(P2005−347870)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】