説明

スイッチ装置

【課題】機械的な接触部分を有することなく、可動部材の突出付勢及びスイッチングを行うことができるスイッチ装置を得る。
【解決手段】固定側のスイッチ機枠と、このスイッチ機枠に対して往復動作可能に支持された可動部材と、スイッチング素子とを有するスイッチ装置において、スイッチ機枠と可動部材とにそれぞれ、互いに接近するに連れて反発力を強めるように着磁された永久磁石を固定し、スイッチ機枠に、スイッチング素子として、突出位置にある上記可動部材が押込位置に移動するとき、該可動部材側の永久磁石の磁力によって電気抵抗が変化する磁気センサを固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人が手指で操作するスイッチ(プッシュスイッチ)装置は従来、突出方向にばね付勢した押しボタン(可動部材)をタクトスイッチと機械的に連係させる構造が一般的に採用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-353462号公報
【特許文献2】特開2007-252419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、厳しい耐久性を求められる用途では、可動部材、ばね及びタクトスイッチの機械的な接触によって、可動部材を突出方向に付勢し、タクトスイッチをオンオフさせる従来機構は、長期の信頼性に問題があった。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づき、機械的な接触部分を有することなく、可動部材の突出付勢及びスイッチングを行うことができるスイッチ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可動部材の突出付勢及びスイッチングをともに磁気力で行うことにより、完全非接触タイプのスイッチ装置を実現したものであって、固定側のスイッチ機枠と、このスイッチ機枠に対して往復動作可能に支持された可動部材と、スイッチング素子とを有するスイッチ装置において、スイッチ機枠と可動部材とにそれぞれ、互いに接近するに連れて反発力を強めるように着磁された永久磁石を固定し、スイッチ機枠に、スイッチング素子として、突出位置にある上記可動部材が押込位置に移動するとき、該可動部材側の永久磁石の磁力によって電気抵抗が変化する磁気センサを固定したことを特徴としている。
【0007】
スイッチ機枠側と可動部材側の永久磁石は、例えば、ともに環状に形成し、この環状永久磁石の中心空間部に、上記磁気センサの出力反転により点滅する発光素子を配置することができる。この態様では、可動部材は、この発光素子の発光を視認できる透光性材料から構成する。
【0008】
環状をなすスイッチ機枠側の環状永久磁石には、径方向に切欠部を形成し、同切欠部内に、上記磁気センサを配置することが可能である。
【0009】
あるいは、磁気センサは、スイッチ機枠側の環状永久磁石の外側に配置することもできる。
【0010】
また、スイッチ機枠側と可動部材側の永久磁石はそれぞれ、互いに平行に配設された対をなす棒状永久磁石から構成することができる。この態様では、磁気センサは、スイッチ機枠側の対をなす棒状永久磁石の間に配置するのが実際的である。
【0011】
磁気センサには、GMR素子を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械的な接触部分を有することなく、可動部材の突出付勢及びスイッチングを行うことができる、長期の信頼性の高いスイッチ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるスイッチ装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のII矢視平面図である。
【図3】図1のスイッチ装置の固定側と可動側の永久磁石、GMR素子(磁気センサ)及び発光素子(LED)の関係を示す斜視図である。
【図4】第1のスイッチ装置の可動部材の位置とGMR素子の検知磁束密度の関係を示すグラフ図である。
【図5】第1のスイッチ装置の可動部材の位置と磁気反発力(反発付勢力)変化の関係を示すグラフ図である。
【図6】本発明によるスイッチ装置の第2の実施形態を示す図3に対応する斜視図である。
【図7】同第2の実施形態の側面図である。
【図8】本発明によるスイッチ装置の第3の実施形態を示す図3に対応する斜視図である。
【図9】同第3の実施形態の側面図である。
【図10】GMR素子の薄膜構造例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図5は、本発明によるスイッチ装置100の第1の実施形態を示している。図1に全体の縦断面形状を示すスイッチ装置100は、筒部11と底部12を有し、全体として有底筒状の固定側のスイッチ機枠10と、このスイッチ機枠10の筒部11内に摺動自在に嵌めた可動部材(可動押しボタン)20とを備え、基本的に、軸線を中心とする回転対称形状をしている。可動部材20は、透光性の押圧頭部21の下方に、摺動筒体22を結合してなり、この摺動筒体22の周面一部には、スイッチ機枠10の筒部11の内面に突出させた案内(規制)突起13に嵌まる案内長溝(切欠)23が形成されている。案内突起13と案内長溝23は、可動部材20の回転を規制し、かつ摺動(往復動)距離(ストローク)を「d」に規制する。摺動筒体22の中心底部は、貫通穴25を有する穴あき底部24である。
【0015】
スイッチ機枠10の底部12上には、基板14が固定されており、この基板14上には、可動部材20と同軸に固定側環状永久磁石16が固定されている。一方、可動部材20の穴あき底部24の下面には、この固定側環状永久磁石16と対をなす可動側環状永久磁石26が同軸に固定されている。図2、図3は、この固定側と可動側の環状永久磁石16と26の着磁方向を示している。固定側と可動側の環状永久磁石16と26は、同一仕様で、半割部分の左右でN極とS極の着磁方向を異ならせ、かつ上下でN極とS極の着磁方向を異ならせている。そして、固定側と可動側の環状永久磁石16と26は、接近するに連れて互いの磁気反発力を強めるように、互いのN極とS極を対向させている。このような永久磁石は、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂とフェライト粉末又は希土類マグネット粉末をミックスして練り込み、均一にした後、射出成型によって成型加工されたマグネットプラスチックに必要な着磁を施すことで得られる。
【0016】
固定側と可動側の環状永久磁石16と26の磁気反発力によって、可動部材20はスイッチ機枠10から突出する方向に付勢されている。そして、可動部材20の突出端は、案内長溝23と案内突起13の係合位置によって規制されており、可動部材20が突出端に位置するときの固定側と可動側の環状永久磁石16と26の最大間隔「D」(図1)は、可動部材20の最大押し下げストローク「d」より大きく設定されている。従って、可動部材20を最大に押し下げても、固定側と可動側の環状永久磁石16と26は当接(衝突)しない。
【0017】
固定側と可動側の環状永久磁石16と26には、径方向の切欠部16Cと26Cが形成されており(固定側と可動側の環状永久磁石16と26は、不完全環状体であり)、切欠部16Cと26Cは、対称性を確保するために、180゜位相を異ならせて配置されている。基板14上には、固定側環状永久磁石16の切欠部16C内に位置させて、磁気センサとしてのGMR素子30が配置されており、また、固定側と可動側の環状永久磁石16と26の中心空間部に位置させて、発光素子としてのLED17が固定されている。このLED17は、可動部材20の穴あき底部24から押圧頭部21側に突出している。GMR素子30とLED17は、制御回路31に接続されており、制御回路31は、制御対象機器32を制御する。
【0018】
GMR素子30は、外部磁界に応じて電気抵抗が変化し、その抵抗変化を電圧信号に変換して出力する周知の素子であり、図10にその薄膜構造例を示している。同図に示すように、GMR素子30は、基板30x上に例えば下地層30a、反強磁性層30b、固定磁性層30c、非磁性層30d、フリー磁性層30e及び保護層30fを順に積層した構造で形成され、外部磁界Hextの印加によりフリー磁性層30eの磁化が回転(反転)して電気抵抗が変化する。
【0019】
可動部材20が突出位置にあるときには、可動側環状永久磁石26とGMR素子30の間に所定以上距離があるため固定側環状永久磁石16のみがGMR素子30に作用し、該固定側環状永久磁石16の磁力により、GMR素子30のフリー磁性層30eの磁化方向が固定磁性層30cの磁化方向に対して平行な状態で安定化され、GMR素子30の電気抵抗は最小値で一定に保たれる。固定側環状永久磁石16は、フリー磁性層30eにバイアス磁界を与えるハードバイアスとして機能する。
【0020】
一方、可動部材20が押込位置に移動すると、該移動に伴って可動側環状永久磁石26がGMR素子30及び固定側環状永久磁石16に近づき、固定側と可動側の環状永久磁石16と26の両方がGMR素子30に作用するため、可動側環状永久磁石26の磁力により、GMR素子30のフリー磁性層30eの磁化方向が反転して固定磁性層30cの磁化方向に対して反平行状態となり、GMR素子30の電気抵抗が大きくなる。可動側環状永久磁石26の磁力は、固定側環状永久磁石16の磁力より大きく、GMR素子30のフリー磁性層30eの磁化を回転させる外部磁界Hextとして機能する。
【0021】
別言すれば、可動部材20の突出位置では外部磁界Hext(可動側環状永久磁石26の磁力)がGMR素子30に作用せず、押込位置では外部磁界HextがGMR素子30に作用するように、固定側と可動側の環状永久磁石16と26の最大間隔「D」を設定してある。本実施形態では、可動部材20が突出位置にあるときにフリー磁性層30eの磁化方向を固定磁性層の磁化方向と平行に安定化させ、押込位置でフリー磁性層30eの磁化方向が固定磁性層30cの磁化方向と反平行になるように設定してあるが、逆に、突出位置にあるときフリー磁性層の磁化方向を固定磁性層の磁化方向と反平行に安定化させ、押込位置でフリー磁性層の磁化方向を固定磁性層の磁化方向と平行になるように設定してもよい。また、固定磁性層の磁化方向についても同様である。GMR素子30の電気抵抗変化により、制御回路31は、可動部材20が突出位置にあるか押込位置にあるか(可動部材20のオフ/オン)を検出する。
【0022】
以上の本スイッチ装置100は、可動部材20を突出方向に付勢する付勢力が、固定側と可動側の環状永久磁石16と26の磁気反発力によって得られる。そして、可動部材20を押込位置に移動させると、GMR素子30の電気抵抗が変化し、このGMR素子30の出力が制御回路31に入力される結果、制御回路31は、制御対象機器32を動作させるとともに、LED17を点灯させる。LED17の点灯は、可動部材20の押圧頭部21を介して視認することができる。
【0023】
次に、具体的な例によって、固定側と可動側の環状永久磁石16と26の磁気反発力の大きさ、及びGMR素子30の検知磁束密度の例を説明する。
【0024】
固定側と可動側の環状永久磁石16と26のサイズ:外径15mmφ、内径8mmφ、厚さ2mm
着磁:厚み方向2極
磁石材質:プラスチックマグネットNd系(NPI-7L)
GMR素子30:SON-23、単極1出力
GMR素子30の位置:固定側環状永久磁石16の高さ方向の中心から下方に0.5mm)
可動部材20の想定ストローク:1.5〜2.0mm
【0025】
図4は、以上の具体例において、固定側と可動側の環状永久磁石16と26の距離Dが変化するときの同距離Dと可動部材20に作用する磁気反発力Nとの関係を示している。このグラフ図から明らかなように、可動部材20が押し込まれるに従って、磁気反発力は大きくなり、操作者に十分な反発感(押込抵抗)を与えることができる。
【0026】
図5は、以上の具体例における可動部材20の位置とGMR素子30の検知磁束密度(mT、ミリテスラ)の関係を示している。この例においてGMR素子30の検知磁束密度は、押込量が0.7mm前後に達する迄は負の値をとっているが、それを超えると正の値となり、かつ、3mT感度品(約3mTの外部磁界印加でオン/オフ(フリー層の磁化反転)するGMR素子)の磁束密度を直ぐに超えて、最大押込位置では十分大きい正の値となる。よって、制御回路31は、GMR素子30の電気抵抗変化から可動部材20が押し込まれたことを確実に検知でき、可動部材20によりスイッチングを確実に行うことができる。
【0027】
図6、図7は、本発明によるスイッチ装置100の第2の実施形態を示している。この実施形態は、第1の実施形態の固定側と可動側の環状永久磁石16と26に代えて、着磁態様を上下方向のみとした完全環状永久磁石16Xと26Xを用いた点、及びGMR素子30を完全環状永久磁石16Xの外側に配置した点が第1の実施形態と異なる。
【0028】
図8、図9は、本発明によるスイッチ装置100の第3の実施形態を示している。この実施形態は、第1の実施形態の固定側と可動側の環状永久磁石16と26に代えて、着磁態様を上下方向とした各一対の棒状永久磁石16Yと26Yを用いた点、及びGMR素子30を一対の棒状永久磁石16Yの間(スイッチ機枠10と可動部材20の平面中心部)に配置した点が第1の実施形態と異なる。
【0029】
これらの実施形態はいずれも、スイッチ機枠10側と可動部材20側に、互いに接近するに連れて反発力を強めるように着磁された永久磁石16X(16Y)と26X(26Y)が固定されていること、及び突出位置にあった可動部材20が押込位置に移動するとき、該可動部材20側の永久磁石26X(26Y)の磁力によって電気抵抗が変化するGMR素子30を有するという条件を満足している。この条件を満足すれば、固定側と可動側の永久磁石の配置(着磁)態様及びGMR素子30の配置位置には自由度がある。
【0030】
磁気センサ30としてはホール素子を用いることもできるが、膜面内方向における磁束検出が可能で高感度なGMR素子を用いればより確実なスイッチングを行うことができる。ホール素子を用いた場合には、素子面に垂直な磁束を検知する構造上、該ホール素子を基板14に対して垂直方向に立てる必要があるのに対し、素子面内方向の磁束を検知するGMR素子は基板14と平行に配置できる。
【符号の説明】
【0031】
100 スイッチ装置
10 スイッチ機枠
11 筒部
12 底部
13 案内突起
14 基板
16 固定側環状永久磁石
16X 完全環状永久磁石
16Y 棒状永久磁石
17 LED(発光素子)
16C 26C 切欠
20 可動部材(可動押しボタン)
21 押圧頭部
22 摺動筒体
23 案内長溝
24 穴あき底部
26 可動側環状永久磁石
26X 完全環状永久磁石
26Y 棒状永久磁石
30 GMR素子(磁気センサ)
31 制御回路
32 制御対象機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側のスイッチ機枠と、このスイッチ機枠に対して往復動作可能に支持された可動部材とを有するスイッチ装置において、
上記スイッチ機枠と可動部材とにそれぞれ、互いに接近するに連れて反発力を強めるように着磁された永久磁石を固定し、
上記スイッチ機枠に、突出位置にある上記可動部材が押込位置に移動するとき、該可動部材側の永久磁石の磁力によって電気抵抗が変化する磁気センサを固定したことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1記載のスイッチ装置において、上記スイッチ機枠側と可動部材側の永久磁石は、ともに環状をなしていて、同環状永久磁石の中心空間部に、上記磁気センサの出力反転により点滅する発光素子が配置されており、上記可動部材は、この発光素子の発光を視認できる透光性材料からなっているスイッチ装置。
【請求項3】
請求項2記載のスイッチ装置において、上記スイッチ機枠側の環状永久磁石は径方向に切欠部を有し、同切欠部内に、上記磁気センサが配置されているスイッチ装置。
【請求項4】
請求項2記載のスイッチ装置において、上記磁気センサは、上記スイッチ機枠側の環状永久磁石の外側に配置されているスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1記載のスイッチ装置において、上記スイッチ機枠側と可動部材側の永久磁石はそれぞれ、互いに平行に配設された対をなす棒状永久磁石を含み、上記磁気センサは、上記スイッチ機枠側の対をなす棒状永久磁石の間に配置されているスイッチ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のスイッチ装置において、上記磁気センサはGMR素子であるスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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