説明

スイツチ素子駆動回路

【発明の詳細な説明】
〔概要〕
演算増幅器(今の場合比較器)を用いたトランジスタ駆動回路において、該演算増幅器の正極側電源電圧として出力に現れるオフセット電圧の絶対値よりも大きく、かつ逆極性の電圧を与えることにより、該オフセット電圧によるトランジスタのオン/オフ動作への影響をなくし、入力信号に対応してトランジスタを確実にオン/オフ動作させるようにするものである。
〔産業上の利用分野〕
本発明は、ディジタル交換機の加入者回路に使用されるスイッチ回路としてのスイッチ素子駆動回路の改良に関するものである。
加入者回路には、加入者の電話機のオン・フック/オフ・フックを検出するため、該オン・フック/オフ・フックに対応した直流ループを検出してオン/オフ動作を行うスイッチ回路を、監視回路として設けている。そして交換機内のソフトウェア部で、加入者からの通話をするためのオフ・フックによる“0"又は“1"の信号を受けてダイヤル信号を受信する準備をするが、オン/オフのスイッチ動作が正確に行われていないと、オフ・フックによる信号が受けられず、ダイヤル信号を受信する準備が出来ず、通話が出来ないことになる。
このためオン/オフのスイッチ動作は正確に行われることが望ましい。
〔従来の技術〕
第3図は従来例のトランジスタ駆動回路図である。
第3図において、比較器1′の出力を、抵抗Rを介してPNPトランジスタ(以下pnpTrと称する)2′のベースに印加する。
比較器1′は正、負2つの入力端子を有し、例えば正の入力端子には基準電圧Vthを、負の入力端子には入力信号電圧を加える。入力信号電圧が基準電圧Vth(例えば−20V)より大の時、電源電圧■の負の電圧(−Vbb、例えば−24V)が比較器1′から出力され、pnpTr2′のベースの電圧が負となってpnpTr2′は順バイアス状態となりオンになって、負荷3に電流が流れる。
一方、入力信号電圧が基準電圧Vthよりも小の時、電源電圧■のアースの電圧が比較器1′から出力され、pnpTr2′は逆バイアス状態となりオフになって、負荷3に電流が流れなくなる。
このようにして比較器1′の出力電圧により、pnpTr2′をオン/オフしてスイッチ動作させていた。
尚、比較器1′の出力端子とpnpTr2′のベースの間に抵抗Rを挿入しているのは、pnpTr2′がオンの時、pnpTr2′のベースを通って比較器1′に流れ込む電流を制限するためである。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら上述のトランジスタ駆動回路においては、演算増幅器を比較器として用いた場合に比較器1′の出力にオフセット電圧(負極性)が生じることがあり、入力の信号電圧が基準電圧より小の時でもオフセット電圧と、pnpTr2′のベース・エミッタ間電圧(Vbe)の差の電圧が、抵抗Rの両端に発生し、微少なベース電流(Ib)が流れるため、pnpTr2′の電流増幅率hFEが大きい時、pnpTr2′のコレクタに流れる電流Ic(Ic=hFE×Ibと表される)が、無視できなくなる程大きくなる可能性がある。
このためpnpTr2′はオンとなり、負荷に電流が流れるという問題点があった。
〔問題点を解決するための手段〕
上記問題点は第1図に示すように、二つの入力端子と、二つの電源電圧印加端子を有し、一方の入力端子に基準電圧を加え、他方の入力端子に入力信号を加え、第一の電源電圧印加端子に0V、又は正の電圧を加え、第二の電源電圧印加端子に負の電圧を加えた演算増幅器1の出力電圧により、スイッチ素子2を駆動して、該スイッチ素子2にオン/オフのスイッチ動作を行わせるスイッチ素子駆動回路において、該第一の電源電圧印加端子に、絶対値において該演算増幅器1の出力に現れるオフセット電圧値を越え、かつ該オフセット電圧と逆極性の電圧を与える本発明のスイッチ素子駆動回路によって解決される。
〔作用〕
第1図において、第一の電源電圧としてオフセット電圧の絶対値を越え、かつオフセット電圧と逆極性の電圧を与えることにより、入力信号電圧が基準電圧より小の時、スイッチ素子2の入力は0V又は正極性となりスイッチ素子2はオフになって、負荷に電流が流れないようにすることが出来る。
〔実施例〕
第2図は本発明の実施例のトランジスタ駆動回路図である。
全図を通じて同一符号は同一対象物を示す。
第2図において、演算増幅器を比較器として用いた場合に比較器1′の電源電圧■として、アースの電位の代わりにオフセット電圧(負極性、例えば−0.7V〜−1.5V)の絶対値を越える正極性の電圧(+Vcc、例えば5V)を与えることにより、入力信号電圧が基準電圧Vthより小の時、pnpTr2′のベースは0V又は正の電圧となり、pnpTr2′は逆バイアス状態となりオフとなって、負荷3に電流が流れることはない。
〔発明の効果〕
以上説明のように本発明のスイッチ素子駆動回路によれば、演算増幅器の正極側電源電圧として出力に現れるオフセット電圧の絶対値を越え、かつ該オフセット電圧と逆極性の電圧を与えることにより、トランジスタのオン/オフのスイッチ動作を確実に行わせることが出来る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の原理図、
第2図は本発明の実施例のトランジスタ駆動回路図、
第3図は従来例のトランジスタ駆動回路図である。
図において
1は演算増幅器、1′は比較器、
2はスイッチ素子、2′はpnpTr、
3は負荷、
を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】二つの入力端子と、二つの電源電圧印加端子を有し、一方の入力端子に基準電圧を加え、他方の入力端子に入力信号を加え、第一の電源電圧印加端子に0V、又は正の電圧を加え、第二の電源電圧印加端子に負の電圧を加えた演算増幅器(1)の出力電圧により、スイッチ素子(2)を駆動して、該スイッチ素子(2)にオン/オフのスイッチ動作を行わせるスイッチ素子駆動回路において、該第一の電源電圧印加端子に、該演算増幅器(1)の出力に現れる負のオフセット電圧値より絶対値で大きい正の電圧を与えることを特徴とするスイッチ素子駆動回路。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【特許番号】第2560701号
【登録日】平成8年(1996)9月19日
【発行日】平成8年(1996)12月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭61−259271
【出願日】昭和61年(1986)10月30日
【公開番号】特開昭63−114317
【公開日】昭和63年(1988)5月19日
【出願人】(999999999)富士通株式会社