スイング解析システムおよびスイング解析装置
【課題】計測した競技者の手の加速度から競技用具の先端の速度を予測する。
【解決手段】競技者の手に装着され、加速度を計測する加速度センサ2と、前記加速度センサ2から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部11と、前記通信部11で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部13と、前記解析部13で算出された前記速度を表示する表示部14とを備え、前記加速度センサ2は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、前記解析部13は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する。
【解決手段】競技者の手に装着され、加速度を計測する加速度センサ2と、前記加速度センサ2から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部11と、前記通信部11で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部13と、前記解析部13で算出された前記速度を表示する表示部14とを備え、前記加速度センサ2は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、前記解析部13は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール等を打撃する競技用具を使用するゴルフや野球等の競技において競技者の競技用具のスイングを解析するスイング解析システムおよびスイング解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイング解析システムは、競技者の関節の近傍として腕および手の甲の2箇所に加速度センサを装着し、その加速度センサで計測した2箇所の加速度からスイング中の関節の角度を算出して競技者が行うスイングを解析するようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−614号公報(段落「0016」〜段落「0045」、図1、図9、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、競技者の腕および手の甲の2箇所に加速度センサを装着し、その2箇所の加速度からスイング中の関節の角度を算出して競技者が行うスイングを解析することはできたが、競技者がスイングする競技用具の先端の速度を予測することができないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、計測した競技者の手の加速度から競技用具の先端の速度を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、競技者の身体に装着された加速度計測手段で計測された加速度からスイングを解析するスイング解析システムにおいて、前記競技者の手に装着され、加速度を計測する加速度計測手段と、前記加速度計測手段から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部と、前記通信部で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部と、前記解析部で算出された前記速度を表示する出力手段とを備え、前記加速度計測手段は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、前記解析部は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、計測した競技者の手の加速度から競技用具の先端の速度を予測することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例におけるスイング解析システムおよびスイング解析装置の構成を示すブロック図
【図2】実施例における競技者の手に配置した加速度センサの説明図
【図3】実施例におけるスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図4】実施例におけるバックスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図5】実施例におけるバックスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図6】実施例におけるダウンスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図7】実施例におけるダウンスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図8】実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図
【図9】実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図
【図10】実施例におけるヘッドスピード予測の説明図
【図11】実施例における表示画面の説明図
【図12】実施例における表示画面の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明によるスイング解析システムおよびスイング解析装置の実施例を説明する。
【実施例】
【0009】
図1は実施例におけるスイング解析システムおよびスイング解析装置の構成を示すブロック図である。
図1において、1はスイング解析装置であり、ゴルフや野球等の競技においてボール等を打撃する競技用具をスイングする競技者の姿勢を解析するとともに競技用具の先端の速度を予測するものである。なお、本実施例では、競技をゴルフとし、競技用具としてのゴルフクラブをスイングする競技者の姿勢を解析するとともにゴルフボール打撃時のゴルフクラブの先端の速度を予測するものとする。
【0010】
2は加速度計測手段としての加速度センサであり、X軸、Y軸、Z軸の三方向の加速度を測定(計測)することができる加速度センサである。この加速度センサ2は、所定のサンプリング時間毎に測定した三方向の加速度の情報を無線通信回線等の通信回線3でスイング解析装置1へ送信することができるようになっている。したがって、加速度センサ2から送信される加速度の情報には時間の経過情報も含まれている。なお、本実施例では、例えば図2に示すように、加速度センサ2を競技者の左手の甲に配置するものとして説明するが、競技者の右手の甲に配置するようにしても良い。
【0011】
ここで、X軸とは、競技者の左手の甲における手首から指の付け根方向(第1の方向)であり、Y軸とは、X軸に直交し、かつ競技者の左手の甲に略平行する方向(第3の方向)であり、Z軸とは、X軸およびY軸に直交する方向、すなわちX軸の方向および競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向(第2の方向)である。したがって、X軸、Y軸、およびZ軸は、それぞれ他の2方向の軸と直交している。
【0012】
また、図2に示すように、X軸のプラス方向は、競技者の左手の甲における手首から指先方向、X軸のマイナス方向は、競技者の左手の甲における指先から手首方向であり、Y軸のプラス方向は、競技者の左手の甲における左手から身体方向、Y軸のマイナス方向は、競技者の左手の甲における左手から身体前方向であり、Z軸のプラス方向は、競技者の左手の甲における左手から反右手(身体の左側)方向、Z軸のマイナス方向は、競技者の左手の甲における左手から右手(身体の右側)方向である。
【0013】
なお、この加速度センサ2は手袋等に取り付けられ、競技者はその手袋を装着するものとする。また、加速度センサ2は、測定した加速度の情報を無線通信回線でなく、有線回線を介してスイング解析装置1へ送信するようにしても良い。
このようにスイング解析システムは、スイング解析装置1と、加速度センサ2と、スイング解析装置1と加速度センサ2とを通信可能に接続する通信回線3とにより構成されている。
【0014】
スイング解析装置1は、通信部11と、記憶部12と、解析部13と、表示部14と、制御部15とから構成されている。このスイング解析装置1は、例えば通信部11と、記憶部12と、解析部13と、表示部14と、制御部15とを備えたコンピュータ等である。
通信部11は、加速度センサ2との間で通信回線3を介して情報の送受信制御を行い、加速度センサ2から送信された加速度の情報を加速度情報として受信するものである。
【0015】
記憶部12は、メモリ等で構成された記憶手段であり、通信部11で加速度センサ2から受信した加速度の情報を記憶し、またスイング解析装置1全体の動作を制御するための制御プログラム(ソフトウェア)や制御情報等を記憶するものである。
解析部13は、記憶部12に記憶された加速度の情報に基づいて競技者のスイングを解析するとともに競技用具の先端の速度を算出し、予測するものである。この解析部13は、記憶部12に記憶された加速度の情報から時間の経過を表す情報と加速度を表す情報とを抽出し、さらに抽出した情報から時間の経過とともに変化するX軸、Y軸、Z軸の加速度の情報を抽出し、抽出したX軸、Y軸、Z軸の加速度の情報に基づいて競技者のスイングを解析するとともに競技用具の先端の速度を予測する。
【0016】
表示部14は、液晶ディスプレイ等の表示出力手段であり、記憶部12に記憶された加速度の情報を表示するとともに、解析部13により解析された競技者のスイングに関する情報や解析部13により算出、予測された競技用具の先端の速度を表示するものである。
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段および制御手段であり、記憶部12に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)や制御情報等に基づいてスイング解析装置1全体の動作を制御するものである。
【0017】
このように構成されたスイング解析装置1は、加速度センサ2から所定の周期時間で計測された三方向の加速度の情報を通信部11で受信して記憶部12に記憶させ、解析部13は記憶部12に記憶された三方向の加速度の情報から競技者のスイングを解析するとともに競技用具の先端の速度を予測し、その結果を表示部14に表示する。したがって、競技者は、スイング解析装置1の表示部14に表示された情報に基づいて自己のスイングを矯正することができる。
【0018】
上述した構成の作用について図3から図11に基づいて説明する。
図3から図11において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は加速度(縦軸の1目盛りは1.0G(1.0G=9.8m/s2:重力加速度))を示している。また、図中の破線は上述したX軸方向の加速度、実線はY軸方向の加速度、一点鎖線はZ軸方向の加速度を示している。
【0019】
まず、スイング解析装置の制御部および解析部が行うスイング全体の解析処理を図3の実施例におけるスイング時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、競技者はスイングを行い、スイング解析装置1は、加速度センサ2から当該競技者が行ったスイングに伴う加速度の情報を通信部11で受信し、記憶部12に記憶しているものとする。
【0020】
スイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶された加速度の情報から上述したX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、およびZ軸方向の加速度を抽出し、横軸を時間の経過、縦軸を加速度として抽出したX、Y、Z軸の加速度の変化を表すグラフを作成する。なお、図3は作成したグラフを表示部14に表示した例を示している。
【0021】
図3において、T1はスイング(バックスイング)開始時点、T2はバックスイングの終了時点、T3はゴルフクラブがゴルフボールを打撃(インパクト)する打撃時点、T4はスイングの終了時点を示している。また、T1からT2の間はバックスイング、T2からT3の間はダウンスイング、T3からT4はインパクト後のフォローを示している。
【0022】
解析部13は、記憶部12に記憶された加速度の情報に基づき、時間の経過にしたがってX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、およびZ軸方向のいずれかの方向における加速度の変化が発生する時点を検出し、その時点をT1(スイングの開始)とする。
解析部13は、さらに記憶部12に記憶された加速度の情報の解析を進め、X軸、Y軸、およびZ軸の三方向の合成加速度の値が最も大きくなっている直前の、合成加速度の値が約1G(9.8m/s2)付近の時点を検出し、その時点をT2(バックスイングの終了)とする。ここで、X軸、Y軸、およびZ軸の三方向の合成加速度とは、X軸、Y軸、およびZ軸の三方向のそれぞれの加速度の二乗の総和の平方根である。
【0023】
解析部13は、さらに記憶部12に記憶された加速度の情報の解析を進め、Z軸方向の加速度の絶対値が最大であるピーク(例えば、図3に示す約マイナス9G)の近傍から加速度の変化が発生した時点から所定時間(例えば、10ms)が経過した時点を検出し、その時点をT3(インパクト)とする。
解析部13は、さらに記憶部12に記憶された加速度の情報の解析を進め、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、およびZ軸方向の加速度の変化が略収束する時点を検出し、その時点をT4(スイングの終了)とする。
【0024】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶された加速度の情報からバックスイングにおける特徴を抽出する処理を行う。その処理を図4および図5の実施例におけるバックスイング時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT1からT2の間の加速度の情報からバックスイングにおける特徴、すなわちX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の加速度の変化から競技者の手首の動きを抽出する。
【0025】
例えば、解析部13は、図4に示すように、Y軸方向およびZ軸方向の加速度の変化が略同時に発生していることを検出すると、競技者の左手首が親指側に折り曲げられる所謂コックが発生していることを検出する。
また、解析部13は、図5に示すように、Y軸方向の加速度の変化に遅れてZ軸方向の加速度の変化が発生していることを検出すると、競技者の左手首がコックしていないことを検出する。
【0026】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶された加速度の情報からダウンスイングにおける特徴を抽出する処理を行う。その処理を図6および図7の実施例におけるダウンスイング時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT2からT3の間の加速度の情報からダウンスイングにおける特徴、すなわちX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の加速度の変化から競技者の手首の動き、すなわち競技者の左手のコックの解放時期を抽出する。
【0027】
例えば、解析部13は、図6(a)、(c)に示すように、ダウンスイング時に、Y軸方向の加速度がプラスであることを検出すると、図6(b)に示す競技者の左手のコックの解放が遅い、所謂タメがあることを検出する。
また、解析部13は、図7(a)、(c)に示すように、ダウンスイング時に、Y軸方向の加速度がマイナスであることを検出すると、図7(b)競技者の左手のコックの解放が早い、所謂タメがないことを検出する。
【0028】
スイング解析装置1の解析部13は、測定した競技者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報から競技者のスイングの特徴を抽出し、表示部14に抽出した特徴を図11および図12に示すように動画で表示する。
図11は、競技者の左手首がコックし、そのコックの解放が遅いタメがあるスイングを動画で表示部14に表示する例を示し、図12は、競技者の左手首のコックがなく、またタメのないスイングを動画で表示部14に表示する例を示している。
【0029】
このようにスイング解析装置1は、測定した競技者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報から競技者のスイングの特徴を抽出し、表示部14に抽出した特徴を表示することにより、競技者にスイングの特徴を知らせることができるようになる。
【0030】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶されたX軸方向の加速度の情報からインパクト前における特徴を抽出する処理を行う。その処理を図8の実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
【0031】
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT3近傍の加速度の情報からインパクト前における特徴、すなわちX軸方向の加速度の変化から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出するための特徴を抽出する。
インパクト前におけるX軸方向の加速度のピークが大きくなるほど競技者の左手の移動速度が速くなり、競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードは速くなることから、解析部13は、インパクト前のX軸方向の加速度のピークを検出する。
【0032】
例えば、解析部13は、図8(a)〜(c)に示すように、インパクト前のX軸方向の加速度のピーク(以下、「X軸ピーク」という。)81を検出する。そのX軸ピーク81が、例えばプラス10G(図8(a))、プラス5.1G(図8(b))、プラス3.9G(図8(c))であることを検出する。
【0033】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶されたZ軸方向の加速度の情報からインパクト前における特徴を抽出する処理を行う。その処理を図9の実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT3前の加速度の情報からインパクト前における特徴、すなわちZ軸方向の加速度の変化から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出するための特徴を抽出する。
【0034】
インパクト前におけるZ軸方向の加速度の値が大きい値から小さい値に変化するほど競技者のコックの解放が鋭くなり、そのコック解放時に手首が回ることによりヘッドスピードは速くなることから、解析部13は、インパクト前のZ軸方向の加速度の変化率、すなわち傾き(以下、「Z軸傾き」という。)91を導出する。
例えば、解析部13は、図9(a)、(b)に示すように、インパクト前のZ軸傾き91を導出する。
【0035】
さらに、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶されたZ軸方向の加速度の情報からインパクト前の特徴を抽出する処理を行う。その処理を図10の実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
【0036】
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT3近傍の加速度の情報からインパクト前における特徴、すなわちZ軸方向の加速度の変化から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出するための特徴を抽出する。
解析部13は、インパクト前のZ軸方向の加速度の値が変化し始めた時点(変化開始点)、本実施例では下降し始めた時点(以下、「下降開始点」という。)、からインパクトT3までの下降開始点のGを表す横軸とZ軸の加速度とが囲む領域の面積(以下、「Z軸面積」という。)92を導出する。
【0037】
例えば、解析部13は、図10に示すように、インパクト前のZ軸方向の加速度の値が下降開始点のGを下回った時点からインパクトT3までのZ軸方向の加速度と下降開始点のGとの差を積分した積分値からZ軸面積92を導出する。
このように、解析部13は、X軸方向およびZ軸方向に加速度の情報から図10に示すX軸ピーク81、Z軸傾き91およびZ軸面積92を導出する。
【0038】
次に、解析部13は、導出したX軸ピーク81、Z軸傾き91およびZ軸面積92に基づいて競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを予測する処理を行う。
解析部13は、導出したX軸ピーク81から左手の速度Vhを算出する。この左手の速度Vh(m/s)は、(角速度(rad/s)×競技者の手の長さ(m))で算出され、さらに角速度は、((X軸ピーク−固定値(0.8G))×9.8(m/s2)/競技者の手の長さ(m))の平方根により算出される。
【0039】
ここで、競技者の手の長さ(m)は、競技者の両肩の中点と加速度センサ2との距離であり、本実施例では、例えば0.75mとする。
左手の速度Vhを算出した解析部13は、ヘッドスピードVcを算出する。このヘッドスピードVcは、Z軸傾き91をAz、Z軸面積92をSzとすると、例えば、
Vc=((k1×Vh)+(k2×Az)+(k3×Vh×Az)+(k4×Sz)+k5)×k6により算出する。
【0040】
なお、k1、k2、k3、k4、およびk5は定数であり、重回帰分析で決定されるものである。また、k6はクラブの長さによる比である。また、ヘッドスピードVcを算出する式は、上記の式に限定されるものではなく、Z軸傾き91およびZ軸面積92を利用した他の計算式であっても良い。
このようにしてスイング解析装置1の解析部13は、X軸方向およびZ軸方向に加速度の情報から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出する。
スイング解析装置1の制御部15は、解析部13により算出されたヘッドスピードを表示部14に表示し、競技者に報知する。
【0041】
なお、上級者のスイングを加速度センサ2で測定し、測定された上級者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報を基準加速度情報として記憶部12に予め記憶させておき、解析部13は、測定した競技者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報と、記憶部12に記憶された基準加速度情報とを比較し、競技者のスイングの特徴を抽出し、表示部14に抽出した特徴をメッセージで表示するようにしても良い。
また、スイング解析装置1の解析部13は、算出したゴルフクラブのヘッドスピードからボールの飛距離を算出するようにしても良い。
【0042】
以上説明したように、本実施例では、加速度センサで計測した競技者の手の加速度から競技用具の先端の速度を予測することができるという効果が得られる。
なお、本実施例では、加速度センサとスイング解析装置とを離間させた構成としたが、加速度センサとスイング解析装置とを一体化させて競技者の手に装着するようにしても良い。
また、本実施例では、加速度センサを競技者の手の甲に装着するものとして説明したが、ゴルフクラブのグリップに装着するようにしても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 スイング解析装置
2 加速度センサ
3 通信回線
11 通信部
12 記憶部
13 解析部
14 表示部
15 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール等を打撃する競技用具を使用するゴルフや野球等の競技において競技者の競技用具のスイングを解析するスイング解析システムおよびスイング解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイング解析システムは、競技者の関節の近傍として腕および手の甲の2箇所に加速度センサを装着し、その加速度センサで計測した2箇所の加速度からスイング中の関節の角度を算出して競技者が行うスイングを解析するようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−614号公報(段落「0016」〜段落「0045」、図1、図9、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、競技者の腕および手の甲の2箇所に加速度センサを装着し、その2箇所の加速度からスイング中の関節の角度を算出して競技者が行うスイングを解析することはできたが、競技者がスイングする競技用具の先端の速度を予測することができないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、計測した競技者の手の加速度から競技用具の先端の速度を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、競技者の身体に装着された加速度計測手段で計測された加速度からスイングを解析するスイング解析システムにおいて、前記競技者の手に装着され、加速度を計測する加速度計測手段と、前記加速度計測手段から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部と、前記通信部で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部と、前記解析部で算出された前記速度を表示する出力手段とを備え、前記加速度計測手段は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、前記解析部は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、計測した競技者の手の加速度から競技用具の先端の速度を予測することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例におけるスイング解析システムおよびスイング解析装置の構成を示すブロック図
【図2】実施例における競技者の手に配置した加速度センサの説明図
【図3】実施例におけるスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図4】実施例におけるバックスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図5】実施例におけるバックスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図6】実施例におけるダウンスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図7】実施例におけるダウンスイング時の加速度の変化を示す説明図
【図8】実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図
【図9】実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図
【図10】実施例におけるヘッドスピード予測の説明図
【図11】実施例における表示画面の説明図
【図12】実施例における表示画面の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明によるスイング解析システムおよびスイング解析装置の実施例を説明する。
【実施例】
【0009】
図1は実施例におけるスイング解析システムおよびスイング解析装置の構成を示すブロック図である。
図1において、1はスイング解析装置であり、ゴルフや野球等の競技においてボール等を打撃する競技用具をスイングする競技者の姿勢を解析するとともに競技用具の先端の速度を予測するものである。なお、本実施例では、競技をゴルフとし、競技用具としてのゴルフクラブをスイングする競技者の姿勢を解析するとともにゴルフボール打撃時のゴルフクラブの先端の速度を予測するものとする。
【0010】
2は加速度計測手段としての加速度センサであり、X軸、Y軸、Z軸の三方向の加速度を測定(計測)することができる加速度センサである。この加速度センサ2は、所定のサンプリング時間毎に測定した三方向の加速度の情報を無線通信回線等の通信回線3でスイング解析装置1へ送信することができるようになっている。したがって、加速度センサ2から送信される加速度の情報には時間の経過情報も含まれている。なお、本実施例では、例えば図2に示すように、加速度センサ2を競技者の左手の甲に配置するものとして説明するが、競技者の右手の甲に配置するようにしても良い。
【0011】
ここで、X軸とは、競技者の左手の甲における手首から指の付け根方向(第1の方向)であり、Y軸とは、X軸に直交し、かつ競技者の左手の甲に略平行する方向(第3の方向)であり、Z軸とは、X軸およびY軸に直交する方向、すなわちX軸の方向および競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向(第2の方向)である。したがって、X軸、Y軸、およびZ軸は、それぞれ他の2方向の軸と直交している。
【0012】
また、図2に示すように、X軸のプラス方向は、競技者の左手の甲における手首から指先方向、X軸のマイナス方向は、競技者の左手の甲における指先から手首方向であり、Y軸のプラス方向は、競技者の左手の甲における左手から身体方向、Y軸のマイナス方向は、競技者の左手の甲における左手から身体前方向であり、Z軸のプラス方向は、競技者の左手の甲における左手から反右手(身体の左側)方向、Z軸のマイナス方向は、競技者の左手の甲における左手から右手(身体の右側)方向である。
【0013】
なお、この加速度センサ2は手袋等に取り付けられ、競技者はその手袋を装着するものとする。また、加速度センサ2は、測定した加速度の情報を無線通信回線でなく、有線回線を介してスイング解析装置1へ送信するようにしても良い。
このようにスイング解析システムは、スイング解析装置1と、加速度センサ2と、スイング解析装置1と加速度センサ2とを通信可能に接続する通信回線3とにより構成されている。
【0014】
スイング解析装置1は、通信部11と、記憶部12と、解析部13と、表示部14と、制御部15とから構成されている。このスイング解析装置1は、例えば通信部11と、記憶部12と、解析部13と、表示部14と、制御部15とを備えたコンピュータ等である。
通信部11は、加速度センサ2との間で通信回線3を介して情報の送受信制御を行い、加速度センサ2から送信された加速度の情報を加速度情報として受信するものである。
【0015】
記憶部12は、メモリ等で構成された記憶手段であり、通信部11で加速度センサ2から受信した加速度の情報を記憶し、またスイング解析装置1全体の動作を制御するための制御プログラム(ソフトウェア)や制御情報等を記憶するものである。
解析部13は、記憶部12に記憶された加速度の情報に基づいて競技者のスイングを解析するとともに競技用具の先端の速度を算出し、予測するものである。この解析部13は、記憶部12に記憶された加速度の情報から時間の経過を表す情報と加速度を表す情報とを抽出し、さらに抽出した情報から時間の経過とともに変化するX軸、Y軸、Z軸の加速度の情報を抽出し、抽出したX軸、Y軸、Z軸の加速度の情報に基づいて競技者のスイングを解析するとともに競技用具の先端の速度を予測する。
【0016】
表示部14は、液晶ディスプレイ等の表示出力手段であり、記憶部12に記憶された加速度の情報を表示するとともに、解析部13により解析された競技者のスイングに関する情報や解析部13により算出、予測された競技用具の先端の速度を表示するものである。
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段および制御手段であり、記憶部12に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)や制御情報等に基づいてスイング解析装置1全体の動作を制御するものである。
【0017】
このように構成されたスイング解析装置1は、加速度センサ2から所定の周期時間で計測された三方向の加速度の情報を通信部11で受信して記憶部12に記憶させ、解析部13は記憶部12に記憶された三方向の加速度の情報から競技者のスイングを解析するとともに競技用具の先端の速度を予測し、その結果を表示部14に表示する。したがって、競技者は、スイング解析装置1の表示部14に表示された情報に基づいて自己のスイングを矯正することができる。
【0018】
上述した構成の作用について図3から図11に基づいて説明する。
図3から図11において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は加速度(縦軸の1目盛りは1.0G(1.0G=9.8m/s2:重力加速度))を示している。また、図中の破線は上述したX軸方向の加速度、実線はY軸方向の加速度、一点鎖線はZ軸方向の加速度を示している。
【0019】
まず、スイング解析装置の制御部および解析部が行うスイング全体の解析処理を図3の実施例におけるスイング時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、競技者はスイングを行い、スイング解析装置1は、加速度センサ2から当該競技者が行ったスイングに伴う加速度の情報を通信部11で受信し、記憶部12に記憶しているものとする。
【0020】
スイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶された加速度の情報から上述したX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、およびZ軸方向の加速度を抽出し、横軸を時間の経過、縦軸を加速度として抽出したX、Y、Z軸の加速度の変化を表すグラフを作成する。なお、図3は作成したグラフを表示部14に表示した例を示している。
【0021】
図3において、T1はスイング(バックスイング)開始時点、T2はバックスイングの終了時点、T3はゴルフクラブがゴルフボールを打撃(インパクト)する打撃時点、T4はスイングの終了時点を示している。また、T1からT2の間はバックスイング、T2からT3の間はダウンスイング、T3からT4はインパクト後のフォローを示している。
【0022】
解析部13は、記憶部12に記憶された加速度の情報に基づき、時間の経過にしたがってX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、およびZ軸方向のいずれかの方向における加速度の変化が発生する時点を検出し、その時点をT1(スイングの開始)とする。
解析部13は、さらに記憶部12に記憶された加速度の情報の解析を進め、X軸、Y軸、およびZ軸の三方向の合成加速度の値が最も大きくなっている直前の、合成加速度の値が約1G(9.8m/s2)付近の時点を検出し、その時点をT2(バックスイングの終了)とする。ここで、X軸、Y軸、およびZ軸の三方向の合成加速度とは、X軸、Y軸、およびZ軸の三方向のそれぞれの加速度の二乗の総和の平方根である。
【0023】
解析部13は、さらに記憶部12に記憶された加速度の情報の解析を進め、Z軸方向の加速度の絶対値が最大であるピーク(例えば、図3に示す約マイナス9G)の近傍から加速度の変化が発生した時点から所定時間(例えば、10ms)が経過した時点を検出し、その時点をT3(インパクト)とする。
解析部13は、さらに記憶部12に記憶された加速度の情報の解析を進め、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、およびZ軸方向の加速度の変化が略収束する時点を検出し、その時点をT4(スイングの終了)とする。
【0024】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶された加速度の情報からバックスイングにおける特徴を抽出する処理を行う。その処理を図4および図5の実施例におけるバックスイング時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT1からT2の間の加速度の情報からバックスイングにおける特徴、すなわちX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の加速度の変化から競技者の手首の動きを抽出する。
【0025】
例えば、解析部13は、図4に示すように、Y軸方向およびZ軸方向の加速度の変化が略同時に発生していることを検出すると、競技者の左手首が親指側に折り曲げられる所謂コックが発生していることを検出する。
また、解析部13は、図5に示すように、Y軸方向の加速度の変化に遅れてZ軸方向の加速度の変化が発生していることを検出すると、競技者の左手首がコックしていないことを検出する。
【0026】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶された加速度の情報からダウンスイングにおける特徴を抽出する処理を行う。その処理を図6および図7の実施例におけるダウンスイング時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT2からT3の間の加速度の情報からダウンスイングにおける特徴、すなわちX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の加速度の変化から競技者の手首の動き、すなわち競技者の左手のコックの解放時期を抽出する。
【0027】
例えば、解析部13は、図6(a)、(c)に示すように、ダウンスイング時に、Y軸方向の加速度がプラスであることを検出すると、図6(b)に示す競技者の左手のコックの解放が遅い、所謂タメがあることを検出する。
また、解析部13は、図7(a)、(c)に示すように、ダウンスイング時に、Y軸方向の加速度がマイナスであることを検出すると、図7(b)競技者の左手のコックの解放が早い、所謂タメがないことを検出する。
【0028】
スイング解析装置1の解析部13は、測定した競技者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報から競技者のスイングの特徴を抽出し、表示部14に抽出した特徴を図11および図12に示すように動画で表示する。
図11は、競技者の左手首がコックし、そのコックの解放が遅いタメがあるスイングを動画で表示部14に表示する例を示し、図12は、競技者の左手首のコックがなく、またタメのないスイングを動画で表示部14に表示する例を示している。
【0029】
このようにスイング解析装置1は、測定した競技者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報から競技者のスイングの特徴を抽出し、表示部14に抽出した特徴を表示することにより、競技者にスイングの特徴を知らせることができるようになる。
【0030】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶されたX軸方向の加速度の情報からインパクト前における特徴を抽出する処理を行う。その処理を図8の実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
【0031】
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT3近傍の加速度の情報からインパクト前における特徴、すなわちX軸方向の加速度の変化から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出するための特徴を抽出する。
インパクト前におけるX軸方向の加速度のピークが大きくなるほど競技者の左手の移動速度が速くなり、競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードは速くなることから、解析部13は、インパクト前のX軸方向の加速度のピークを検出する。
【0032】
例えば、解析部13は、図8(a)〜(c)に示すように、インパクト前のX軸方向の加速度のピーク(以下、「X軸ピーク」という。)81を検出する。そのX軸ピーク81が、例えばプラス10G(図8(a))、プラス5.1G(図8(b))、プラス3.9G(図8(c))であることを検出する。
【0033】
次に、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶されたZ軸方向の加速度の情報からインパクト前における特徴を抽出する処理を行う。その処理を図9の実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT3前の加速度の情報からインパクト前における特徴、すなわちZ軸方向の加速度の変化から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出するための特徴を抽出する。
【0034】
インパクト前におけるZ軸方向の加速度の値が大きい値から小さい値に変化するほど競技者のコックの解放が鋭くなり、そのコック解放時に手首が回ることによりヘッドスピードは速くなることから、解析部13は、インパクト前のZ軸方向の加速度の変化率、すなわち傾き(以下、「Z軸傾き」という。)91を導出する。
例えば、解析部13は、図9(a)、(b)に示すように、インパクト前のZ軸傾き91を導出する。
【0035】
さらに、図1に示すスイング解析装置1の解析部13は、制御部15の指示により、記憶部12に記憶されたZ軸方向の加速度の情報からインパクト前の特徴を抽出する処理を行う。その処理を図10の実施例におけるインパクト時の加速度の変化を示す説明図に基づいて図1を参照しながら説明する。
【0036】
スイング解析装置1の解析部13は、検出した図2に示すT3近傍の加速度の情報からインパクト前における特徴、すなわちZ軸方向の加速度の変化から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出するための特徴を抽出する。
解析部13は、インパクト前のZ軸方向の加速度の値が変化し始めた時点(変化開始点)、本実施例では下降し始めた時点(以下、「下降開始点」という。)、からインパクトT3までの下降開始点のGを表す横軸とZ軸の加速度とが囲む領域の面積(以下、「Z軸面積」という。)92を導出する。
【0037】
例えば、解析部13は、図10に示すように、インパクト前のZ軸方向の加速度の値が下降開始点のGを下回った時点からインパクトT3までのZ軸方向の加速度と下降開始点のGとの差を積分した積分値からZ軸面積92を導出する。
このように、解析部13は、X軸方向およびZ軸方向に加速度の情報から図10に示すX軸ピーク81、Z軸傾き91およびZ軸面積92を導出する。
【0038】
次に、解析部13は、導出したX軸ピーク81、Z軸傾き91およびZ軸面積92に基づいて競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを予測する処理を行う。
解析部13は、導出したX軸ピーク81から左手の速度Vhを算出する。この左手の速度Vh(m/s)は、(角速度(rad/s)×競技者の手の長さ(m))で算出され、さらに角速度は、((X軸ピーク−固定値(0.8G))×9.8(m/s2)/競技者の手の長さ(m))の平方根により算出される。
【0039】
ここで、競技者の手の長さ(m)は、競技者の両肩の中点と加速度センサ2との距離であり、本実施例では、例えば0.75mとする。
左手の速度Vhを算出した解析部13は、ヘッドスピードVcを算出する。このヘッドスピードVcは、Z軸傾き91をAz、Z軸面積92をSzとすると、例えば、
Vc=((k1×Vh)+(k2×Az)+(k3×Vh×Az)+(k4×Sz)+k5)×k6により算出する。
【0040】
なお、k1、k2、k3、k4、およびk5は定数であり、重回帰分析で決定されるものである。また、k6はクラブの長さによる比である。また、ヘッドスピードVcを算出する式は、上記の式に限定されるものではなく、Z軸傾き91およびZ軸面積92を利用した他の計算式であっても良い。
このようにしてスイング解析装置1の解析部13は、X軸方向およびZ軸方向に加速度の情報から競技者がスイングするゴルフクラブのヘッドスピードを算出する。
スイング解析装置1の制御部15は、解析部13により算出されたヘッドスピードを表示部14に表示し、競技者に報知する。
【0041】
なお、上級者のスイングを加速度センサ2で測定し、測定された上級者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報を基準加速度情報として記憶部12に予め記憶させておき、解析部13は、測定した競技者のスイングのX軸、Y軸、Z軸方向の加速度情報と、記憶部12に記憶された基準加速度情報とを比較し、競技者のスイングの特徴を抽出し、表示部14に抽出した特徴をメッセージで表示するようにしても良い。
また、スイング解析装置1の解析部13は、算出したゴルフクラブのヘッドスピードからボールの飛距離を算出するようにしても良い。
【0042】
以上説明したように、本実施例では、加速度センサで計測した競技者の手の加速度から競技用具の先端の速度を予測することができるという効果が得られる。
なお、本実施例では、加速度センサとスイング解析装置とを離間させた構成としたが、加速度センサとスイング解析装置とを一体化させて競技者の手に装着するようにしても良い。
また、本実施例では、加速度センサを競技者の手の甲に装着するものとして説明したが、ゴルフクラブのグリップに装着するようにしても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 スイング解析装置
2 加速度センサ
3 通信回線
11 通信部
12 記憶部
13 解析部
14 表示部
15 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技者の身体に装着された加速度計測手段で計測された加速度からスイングを解析するスイング解析システムにおいて、
前記競技者の手に装着され、加速度を計測する加速度計測手段と、
前記加速度計測手段から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部と、
前記通信部で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部と、
前記解析部で算出された前記速度を表示する出力手段とを備え、
前記加速度計測手段は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項2】
請求項1のスイング解析システムにおいて、
前記スイングは、ゴルフスイングであり、
前記解析部は、前記第2の加速度の絶対値の最大値を検出して前記競技者が競技用具で前記競技者の前方に配置されたボールを打撃する打撃時点を抽出し、
前記打撃時点以前における、前記第1の方向の加速度の最大値と、前記第2の方向の加速度の変化率と、前記第2の方向の加速度と前記第2の方向における加速度の変化開始時の加速度との差の積分値とに基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項3】
請求項2のスイング解析システムにおいて、
前記加速度計測手段は、前記第1の方向の加速度および前記第2の方向の加速度に加え、前記第1の方向および前記第2の方向の双方の方向に直交する第3の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度のいずれかの方向における加速度の変化が発生するスイング開始時点を検出し、さらにその後の前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の合成加速度の値が最も大きくなっている直前の、合成加速度の値が約9.8m/s2付近のバックスイング終了時点を検出し、
前記スイング開始時点から前記バックスイング終了時点までの間で、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の変化が略同時に発生していることを検出して前記競技者の左手首が親指側に折り曲げられることを検出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項4】
請求項3のスイング解析システムにおいて、
前記解析部は、前記バックスイング終了時点から前記打撃時点までの間の前記第3の方向の加速度の変化により、前記競技者の左手首の折り曲げの解放の時期を検出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項5】
競技者の身体に装着された加速度計測手段で計測された加速度からスイングの特徴を解析するスイング解析装置において、
競技者の手に装着され、加速度を計測する前記加速度計測手段から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部と、
前記通信部で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部と、
前記解析部で算出された前記速度を表示する出力手段とを備え、
前記加速度計測手段は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析装置。
【請求項6】
請求項5のスイング解析装置において、
前記スイングは、ゴルフスイングであり、
前記解析部は、前記第2の加速度の絶対値の最大値を検出して前記競技者が競技用具で前記競技者の前方に配置されたボールを打撃する打撃時点を抽出し、
前記打撃時点以前における、前記第1の方向の加速度の最大値と、前記第2の方向の加速度の変化率と、前記第2の方向の加速度と前記第2の方向における加速度の変化開始時の加速度との差の積分値とに基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析装置。
【請求項7】
請求項6のスイング解析装置において、
前記加速度計測手段は、前記第1の方向の加速度および前記第2の方向の加速度に加え、前記第1の方向および前記第2の方向の双方の方向に直交する第3の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度のいずれかの方向における加速度の変化が発生するスイング開始時点を検出し、さらにその後の前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の合成加速度の値が最も大きくなっている直前の、合成加速度の値が約9.8m/s2付近のバックスイング終了時点を検出し、
前記スイング開始時点から前記バックスイング終了時点までの間で、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の変化が略同時に発生していることを検出して前記競技者の左手首が親指側に折り曲げられることを検出することを特徴とするスイング解析装置。
【請求項8】
請求項7のスイング解析装置において、
前記解析部は、前記バックスイング終了時点から前記打撃時点までの間の前記第3の方向の加速度の変化により、前記競技者の左手首の折り曲げの解放の時期を検出することを特徴とするスイング解析装置。
【請求項1】
競技者の身体に装着された加速度計測手段で計測された加速度からスイングを解析するスイング解析システムにおいて、
前記競技者の手に装着され、加速度を計測する加速度計測手段と、
前記加速度計測手段から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部と、
前記通信部で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部と、
前記解析部で算出された前記速度を表示する出力手段とを備え、
前記加速度計測手段は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項2】
請求項1のスイング解析システムにおいて、
前記スイングは、ゴルフスイングであり、
前記解析部は、前記第2の加速度の絶対値の最大値を検出して前記競技者が競技用具で前記競技者の前方に配置されたボールを打撃する打撃時点を抽出し、
前記打撃時点以前における、前記第1の方向の加速度の最大値と、前記第2の方向の加速度の変化率と、前記第2の方向の加速度と前記第2の方向における加速度の変化開始時の加速度との差の積分値とに基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項3】
請求項2のスイング解析システムにおいて、
前記加速度計測手段は、前記第1の方向の加速度および前記第2の方向の加速度に加え、前記第1の方向および前記第2の方向の双方の方向に直交する第3の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度のいずれかの方向における加速度の変化が発生するスイング開始時点を検出し、さらにその後の前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の合成加速度の値が最も大きくなっている直前の、合成加速度の値が約9.8m/s2付近のバックスイング終了時点を検出し、
前記スイング開始時点から前記バックスイング終了時点までの間で、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の変化が略同時に発生していることを検出して前記競技者の左手首が親指側に折り曲げられることを検出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項4】
請求項3のスイング解析システムにおいて、
前記解析部は、前記バックスイング終了時点から前記打撃時点までの間の前記第3の方向の加速度の変化により、前記競技者の左手首の折り曲げの解放の時期を検出することを特徴とするスイング解析システム。
【請求項5】
競技者の身体に装着された加速度計測手段で計測された加速度からスイングの特徴を解析するスイング解析装置において、
競技者の手に装着され、加速度を計測する前記加速度計測手段から計測された加速度を加速度情報として受信する通信部と、
前記通信部で受信した前記加速度情報に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出する解析部と、
前記解析部で算出された前記速度を表示する出力手段とを備え、
前記加速度計測手段は、前記競技者の手の甲における手首から指の付け根方向の第1の方向の加速度、並びに前記第1の方向および前記競技者の左手の甲に略平行する方向の双方向に直交する方向の第2の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度および第2の方向の加速度に基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析装置。
【請求項6】
請求項5のスイング解析装置において、
前記スイングは、ゴルフスイングであり、
前記解析部は、前記第2の加速度の絶対値の最大値を検出して前記競技者が競技用具で前記競技者の前方に配置されたボールを打撃する打撃時点を抽出し、
前記打撃時点以前における、前記第1の方向の加速度の最大値と、前記第2の方向の加速度の変化率と、前記第2の方向の加速度と前記第2の方向における加速度の変化開始時の加速度との差の積分値とに基づいて前記競技者がスイングする競技用具の先端の速度を算出することを特徴とするスイング解析装置。
【請求項7】
請求項6のスイング解析装置において、
前記加速度計測手段は、前記第1の方向の加速度および前記第2の方向の加速度に加え、前記第1の方向および前記第2の方向の双方の方向に直交する第3の方向の加速度を計測し、
前記解析部は、前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度のいずれかの方向における加速度の変化が発生するスイング開始時点を検出し、さらにその後の前記第1の方向の加速度、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の合成加速度の値が最も大きくなっている直前の、合成加速度の値が約9.8m/s2付近のバックスイング終了時点を検出し、
前記スイング開始時点から前記バックスイング終了時点までの間で、前記第2の方向の加速度および前記第3の方向の加速度の変化が略同時に発生していることを検出して前記競技者の左手首が親指側に折り曲げられることを検出することを特徴とするスイング解析装置。
【請求項8】
請求項7のスイング解析装置において、
前記解析部は、前記バックスイング終了時点から前記打撃時点までの間の前記第3の方向の加速度の変化により、前記競技者の左手首の折り曲げの解放の時期を検出することを特徴とするスイング解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−200540(P2012−200540A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70467(P2011−70467)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(591020663)長野沖電気株式会社 (9)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(591020663)長野沖電気株式会社 (9)
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