説明

スカム除去装置

【課題】水面に発生するスカムを効率よく取り除くことができるスカム除去装置を提供する。
【解決手段】反応槽内に設置する撹拌羽根5の回転軸6の水面部に、この回転軸6とともに稼動する消泡装置8を設けた。消泡装置8は、回転軸6に固定されたスカム掻き寄せ用のレーキ11と、このレーキ11の回動軌跡内であって液面に設置したスクリーン12からなり、前記スクリーン上にあるスカムSをレーキ11で圧縮してガスを放出させ、汚泥として沈降させるものとすることができる。さらに、スクリーン12は網状体13であり、スカムガス放出の為のスカム破砕具としてレーキ11に対応させた網状体13の網目を通してスカムSを破砕し汚泥を液中に沈降させるものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場の反応槽の水面に発生するスカムを効率よく取り除くことができるスカム除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水等の処理方法として、特許文献1に示すように、曝気ゾーンの前段において、原水を嫌気状態あるいは空気を吹かさずに溶存酸素のない無酸素状態で撹拌して、より高度に下水を処理するシステムが開発され、使用に供されている。
【0003】
しかしながら、嫌気状態あるいは無酸素状態にある反応槽では、水面にスカムと称される汚泥を伴った泡が発生し、種々の問題を生じていた。即ち、このスカムは、COガスを伴った汚泥が浮上したものであるので、そのまま放置しておくと汚泥が硬化して槽の水面一面を厚いスカム層で覆ってしまい、処理水の状態を目視することができないという問題点や、長期に放置すると臭気を発したり、粘着性が生じて浮渣となり散水による消泡を阻害するという問題点や、美観を損なう等の問題点が生じていた。
また、好気槽と無酸素槽、嫌気槽と無酸素槽の隔壁はそれぞれ溶存酸素や混合液の流通を防止するため水面部は仕切られていて、処理水の流通は隔壁の下部を通じて行う構造となっており、水面に発生したスカムの流れ出る場所がないため、反応槽の水面上により滞留しやすいものであった。
【0004】
そこで、これまではスカム除去方法として、発生して間のないスカムに散水して消泡したり、下流槽との隔壁に設けた水面付近の開口用の堰板を一時開けて、スカムを曝気槽側へ流し込む等の対策により対応していたが、余分な作業を強いられることとなり作業性に劣るという問題点や、常に散水するのは水資源、エネルギーの無駄使いになるという問題点や、スカムの曝気槽側への流し込み作業は手動で行うため人員増となるとともに、一時的には流通することによって処理効率の低下も生じるという問題点があった。
【特許文献1】特許第2912905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決して、余分な作業や人員を発生させることなく、水面に発生するスカムを連続的に自動的かつ効率的に、しかも低コストで取り除くことができるスカム除去装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明のスカム除去装置は、反応槽内に設置した回転軸の水面部に、この回転軸とともに稼動する消泡装置を設けたスカム除去装置であって、該消泡装置は、回転軸に固定されたスカム掻き寄せ用のレーキと、このレーキの回動軌跡内の液面に設置したスクリーンからなり、前記スクリーン上にあるスカムをレーキで圧縮してスカム内部のガスを放出させ、汚泥として沈降させるものであることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記スクリーンは網状体であり、スカムガス放出の為のスカム破砕具としてレーキに対応させた網状体の網目を通してスカムを破砕し汚泥を液中に沈降させるものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、反応槽内に設置した回転軸の水面部に、この回転軸とともに稼動する消泡装置を設けたので、回転軸の回転に伴い消泡装置も自動的に稼動して回転軸付近に浮遊するスカムを除去することができる。また、該消泡装置は、回転軸に固定されたスカム掻き寄せ用のレーキと、このレーキの回動軌跡内に設置したスクリーンからなり、前記スクリーン上にあるスカムをレーキで圧縮・せん断してガスを放出させ、汚泥として沈降させるものとしたので、撹拌羽根の回転に伴い、スクリーン上でスカムのガスが自動的に放出されて汚泥として沈降し、スカムが除去されることとなる。
【0009】
請求項2係る発明では、スクリーンは網状体であり、スカムガス放出の為のスカム破砕具としてレーキに対応させた網状体の網目を通してスカムを破砕し汚泥を液中に沈降させるものとしたので、スカムが網目を通過する際にガスが放出され汚泥として沈降し、効率よくスカムが除去されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】処理槽を示す概略全体図である。
【図2】撹拌羽根の下方部を示す斜視図である。
【図3】(a)消泡装置を示す平面図、(b)その作動説明図である。
【図4】(a)その他の消泡装置を示す平面図、(b)その作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、下水等の原水を高度処理するための処理槽を示す概略全体図である。この処理槽1は、幅と深さが約10m、長さが約50mの深槽タイプであり、高度処理をするために処理槽1の前段部を嫌気状態とした嫌気ゾーンB、溶存酸素のない状態とした無酸素ゾーンCとしてある。また、Aは曝気ゾーンである。なお、嫌気ゾーンBと無酸素ゾーンCとは隔壁2により、また無酸素ゾーンCと曝気ゾーンAとは隔壁3により、それぞれ隔離されている。
なお、図1に示されるように、曝気ゾーンAで曝気され硝化された処理済み水の一部を、硝化液として無酸素ゾーンCへフィードバックする循環路20が接続されており、これにより脱窒が行われるよう構成されている。
【0012】
曝気ゾーンAの幅方向の中央部には垂直にバッフルプレート(図示せず)が設けられており、また、その片側流路の中間水深部には散気装置4が設置され、中段で曝気してバッフルプレートの両側を上下に旋回する流れを作る構造となっている。なお、前記散気装置4は、例えば2〜3m間隔で設置した梁(図示せず)に載置されている。
【0013】
前記の嫌気ゾーンBと無酸素ゾーンC内には、撹拌羽根5を各ゾーン底面の中心部に設けた構造となっている。この撹拌羽根5は、原水中の窒素やリンの除去を促進し、また糸状菌の発生を抑制して汚泥の沈降性を安定化させるように、汚泥を撹拌することを目的に設置されるものである。
図2に示されるように、撹拌羽根5は横向き流発生用のほぼ直線状の上段羽根5aと、下向き流発生用のほぼ直線状の下段羽根5bからなる2段羽根であり、このような2段羽根を回転軸6の先端に装着することで底部に汚泥が堆積しないよう構成されている。
【0014】
また、撹拌羽根5の駆動源であるモータ7は、槽本体1の上面外部に設置されていて、撹拌羽根5を通常回転、間欠回転、減速回転、逆回転等を自在としている。このように、モータ7が槽外部にあるため保守管理が容易なうえ、定期的にモータ7を逆回転等すれば羽根に付着した付着物を容易に剥離処理できる。
更に、撹拌羽根5は1本の長い回転軸6の先端に装着されているため、下水の旋回流によりブレる場合があるが、この場合は回転軸6の先端部を振れ止め部材9を介して槽本体1の底面に固定した構造とすれば、回転軸6がしっかりと固定されて湾曲等することがなくなり、撹拌羽根5のブレも防止されて効率的に混合液を撹拌可能となる。
【0015】
実施例のものでは、前記撹拌羽根5の回転軸6の水面部に、この回転軸6とともに稼動するスカム除去用の消泡装置8を設けた構造となっている。
この消泡装置8は、図3に示すように、回転軸6に固定されたスカム掻き寄せ用のレーキ11と、このレーキの回動軌跡内であって液面に設置したスクリーン12からなり、前記スクリーン上にあるスカムSをレーキ11で圧縮してガスを放出させ、汚泥として沈降させるものである。前記レーキ11は弾性を有する合成ゴム等で形成され、回転軸6から水平に突設したアーム6aに装着されている。
図3(b)に示すように、スクリーン上に移動したスカムSはレーキ11で圧縮されて内部のガスが放出され、その後は汚泥として沈降され容易に分離除去されることとなる。
なお、前記スクリーン12は、レーキ11の移動や圧縮のし易さを考慮して、レーキ進行方向に対して徐々に液面上に浮き出るように傾斜しているのが好ましい。
【0016】
また、図4(a)、(b)に示されるように、スクリーン12が網状体13からなりスカムSの内部ガスをレーキ11で圧縮して放出させ、あるいは網状体13の網目を通過させる際にせん断して放出させ、その後、汚泥として液中に沈降させることもできる。
なお、網状体13の網目の開きは3〜5mm程度が好ましい。
【0017】
このように、本発明によれば撹拌羽根の回転軸の水面部に、この回転軸とともに稼動する消泡装置を設けた構造とすることで、通常運転を行いながら液面上に浮遊しているスカムを自動的かつ効率的に、しかも低コストで取り除くことができることとなる。
【符号の説明】
【0018】
1 処理槽
2 隔壁
3 隔壁
4 散気装置
5 撹拌羽根
6 回転軸
7 モータ
8 消泡装置
9 振れ止め部材
11 レーキ
12 スクリーン
13 網状体
20 循環路
S スカム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内に設置した回転軸の水面部に、この回転軸とともに稼動する消泡装置を設けたスカム除去装置であって、該消泡装置は、回転軸に固定されたスカム掻き寄せ用のレーキと、このレーキの回動軌跡内であって液面に設置したスクリーンとからなり、前記スクリーン上にあるスカムをレーキで圧縮してスカム内部のガスを放出させ、汚泥として沈降させるものであることを特徴とするスカム除去装置。
【請求項2】
スクリーンが網状体であり、スカムガス放出の為のスカム破砕具としてレーキに対応させた網状体の網目を通してスカムを破砕し汚泥を液中に沈降させるものである請求項1に記載のスカム除去装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−200865(P2011−200865A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158614(P2011−158614)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【分割の表示】特願2007−245005(P2007−245005)の分割
【原出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】