スカートがオイルフロースロットを有するピストン、およびその構築方法
ピストンは、凸状外側面を有する、直径方向に対向するスカート部の対を有する。各スカート部は、ピストンの中心軸と実質的に平行して自由端へと延在する、対向する側方縁部を有する。スカート部は、各々、径方向に、凸状外側面内を、窪ませた表面に延在する、窪ませたスロットを有する。窪ませた表面は、凸状外側面を完全に横切って側方縁部へと延在し、凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1. 技術分野
この発明は、概して内燃機関に関し、より具体的には、重負荷ディーゼルエンジンのためのピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
2. 関連技術
内燃機関、特にディーゼルエンジンは、オイル消費が多く、これは望ましくない排気物質を招くことが知られている。加えて、オイル消費とともに、ピストンの表面上に、特に、環状リング溝の中も含めてトップランド領域にカーボン蓄積が起こる。したがって、カーボン蓄積によってリング移動が制約されることによって、適正に燃焼ガスを封止し、オイル消費を制御するリングの効果が次第に落ちることによって、オイルブローバイの増加と、エンジン性能の低下と、エンジン構成部品寿命の短縮と、排出物質の増加とがもたらされる。
【0003】
上述の問題に加えて、追加の既知の問題が、シリンダ内のピストン往復運動の経路にわたるオイルの不均一な乱流から起こる惧れがある。こういった追加の問題の中には、線形キャビテーションの開始およびピストンとシリンダライナとの間の摩擦の増大が含まれるものもある。線形キャビテーションは、ピストンの構成に影響されやすく、特にピストンがピストンと一体に形成された固定スカートを有するモノブロック構造からなる場合、影響されやすい。摩擦の増大は、誘導がないためピストン往復運動がシリンダライナ内で傾くピストンの二次運動に影響されやすい。オイル制御不能は、高速度のピストン運動に起因され、オイルの定在波を発生させる。スカートの上側部分においてそのようである場合、「オイル溢れ(oil flooding)」と称される現象が起こる。したがって、オイルの大部分はピストンの上側クラウンに向けて維持され、オイルはリングベルト領域に少しずつ流れ込む。リングベルトの端から端までのガス圧勾配がはっきりと規定されていないときなど、場合によっては、第1のリング溝が溢れると、オイル消費制御特性が失われる。オイルの二次定在波が、第1のリング溝の上側縁部で発生する。このオイルを火炎前面にさらすことにより、定在波中のオイルが分解および炭化されて、煤煙およびカーボンデポジット形成が発生する。したがって、ピストンのリング領域において、オイルの絶え間ない供給の維持は望ましいものの、過多はエンジン寿命に有害である惧れがあり、エンジン性能を低下させる惧れもある。
【0004】
この発明に従って製造されたピストンおよびそれを備えたエンジンは、少なくとも上記で述べた問題から生じる欠点を克服または大幅に最小化することによって、ディーゼルエンジンが向上した性能レベルで動作することを可能にし、その一方で、ディーゼルエンジンの有用寿命を延ばす上に、ディーゼルエンジンの燃料消費、オイル消費および排気物質を削減する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
あるピストンは、ピストンが往復運動する中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有するピストン本体と、上側クラウンから垂下するピンボスの対とを含む。ピンボスは、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有する。ピストンは、さらに、ピン穴軸の両側に配置されたスカート部の対を備え、スカート部の各々は、凸状外側面を有し、凸状外側面は、対向する側方縁部が、中心軸と実質的に平行に自由端へと延在する。スカート部は、各々、径方向に、凸状外側面内を、窪ませた表面へと延在する、窪ませたスロットを有する。窪ませた表面は、側方縁部に対して凸状外側面を完全に横切って延在し、それによって、凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する。
【0006】
この発明の別の局面に従って、ピストンを構築する方法が提供される。この方法は、ピストン本体を設けるステップを含み、ピストン本体は、中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有し、ピンボスの対が、上側クラウンから垂下し、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有し、スカート部の対が、ピン穴軸の両側上に構成され、凸状外側面を有する。さらに、凸状外側面内に径方向に延在する、窪ませたスロットを形成する。
【0007】
この発明に従って製造されるピストンは、ピストンの全サイクルにわたってオイルフローを改善し、ピストンのサイクルにわたって動的な粘性摩擦を低減し、その全サイクルの全体にわたるピストンの誘導を改善し、シリンダライナキャビテーションを低減し、ピストン粘性摩擦損失を低減し、ピストンのリング溝内、および溝を有するピストンリング上における、カーボン蓄積を低減し、ピストンリングの運動を改善し、オイル消費、およびトップランドに付着させられる形成されたカーボンを低減し、したがって、典型的にはカーボン蓄積によって引起される穴研磨を低減し、排気排出物を低減し、全体として、エンジンの運転性能および寿命を改善する。これらの有益な効果をまとめると、エンジン燃料消費を低減し、より大きな燃費を促進する。
【0008】
この発明のこれらのおよび他の局面、特徴、および利点は、以下の現在好ましい実施例および最良の形態の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を考慮すると、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の現在好ましい実施例に従ったピストン構造の部分斜視図である。
【図2】図1の線2−2に概ね沿って取った断面図である。
【図2A】この発明の現在好ましい別の実施例に従ったピストン構造の4分の1断面図である。
【図3】線3−3に概ね沿って取った、この発明の1つの現在好ましい実施例に従ったピストンのスカートにあるスロットを示す概略部分断面図である。
【図4】この発明の別の現在好ましい実施例に従ったピストンのスカートにあるスロットを示す図3と同様の図である。
【図5】この発明のさらに別の現在好ましい実施例に従ったピストンのスカートにあるスロットを示す図3と同様の図である。
【図6】この発明の1つの現在好ましい実施例に従って構築されたスロットを覗き込む、スカートの概略部分側面図である。
【図7】この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたスロットを示す図6と同様の図である。
【図8】この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたスロットを示す図6と同様の図である。
【図9】この発明の現在好ましい別の実施例に従ったピストン構造の部分断面図である。
【図10】概ね矢印10の方向で見る図9のピストンの図である。
【図11】この発明の現在好ましい別の実施例に従ったピストン構造の部分断面図である。
【図12】概ね矢印12の方向で見る図11のピストンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現在好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図1および図2には、ディーゼルエンジンなどの内燃機関のシリンダボア(図示せず)における往復運動のための、この発明の1つの現在好ましい実施例に従って構築されたピストン10が示されている。ピストン10は鋳造か鍛造かのいずれかまたは任意の他の製造プロセスによる本体12を有し、中心軸14に沿って延在し、この中心軸に沿ってピストン10はシリンダボア中を往復運動する。本体12は、例として、下側クラウン18に接合された上側クラウン16を有し、下側クラウンがピンボス20の対を有し、ピンボスが上側クラウンから垂下して、中心軸14を概ね横断して延在するピン穴軸24に沿って整列され横方向に間隔を置いて配置されたピン穴22を提供しているとして表わされているが、これに限定されない。例として、ピンボス20は、横方向に間隔を置いて配置されたスカート部26に支柱部28を介して接合されることによって、スカート部26がピンボス20と一体材料として形成されたいわゆる「モノブロック」ピストンを形成するが、これに限定されない。スカート部26は、ピン穴軸24を横切って互いから直径方向に間隔を置いて配置されており、シリンダボアとの協働のために輪郭成形された凸状の外側面30を有して、ピストン10がシリンダボアを通って往復運動するときピストンを所望の配向に維持する。往復運動中、流体力学的オイル膜がスカート部26の外側面30とシリンダボアの壁との間に形成され、維持されて、その間の動摩擦を最小化する。所望の流体力学的オイル膜厚およびオイルの分布をスカート部30の外側面30の端から端まで維持しやすくするために、貫通スロット(以下、別段の断りがなければ開口部32とも称される)がスカート部26に形成されている。
【0011】
ピストン10の上側クラウン16は、この明細書では、上側面36を有し、燃焼ボウル38がこの上側面に窪ませてあって、シリンダボアとともに所望のガス流を提供するように表わされている。外壁またはリングベルト40は、上側面36から下方へ延在し、少なくとも1つの環状リング溝42がリングベルト40にピストンリング44の浮動式収容のために形成されている。ピストンリング44は、その自由浮動状態で適正に機能しているとき、シリンダボア内での往復運動中にピストン10を誘導しやすくし、その一方で燃焼ガスを封止し、上方への、それによってピストン本体12より下からのオイルの通過を抑制もする。
【0012】
下側クラウン18は、この明細書では、鍛造プロセスにおいてなど、上側クラウン16とは別個に形成されてから、上側クラウンに接合されるように表わされており、上側および下側クラウン16、18は、たとえば溶接継手46で接合することができる。この発明に従って構築されたピストン10は、たとえば鋳造プロセスなどの他のやり方で形成された上側および下側クラウン部を有し得、溶接継手以外の機構を用いて接合され得ることが認識されるべきである。
【0013】
別の現在好ましい実施例に従うピストン構造は、図2Aにおいて概ね10’で示される。上および以下に論じられる同じ参照番号は、同様の特徴を指定するために適用され、参照番号はダッシュ記号を付される。
【0014】
図1および図3に示されるように、スカート部26にある開口部32は、ピン穴軸24を通って延在する水平面に概ね平行にかつ中心軸14を概ね横断して延在する上側縁部48および下側縁部50と、この水平面を概ね横断して上側および下側縁部48、50間に延在する側部52、54とを有する。上側および下側縁部48、50は、開口部32の長さに概ね対応し、側部52、54は、開口部32の幅に概ね対応するが、最大幅は、側部52、54から延在または外方へ湾曲することができる。開口部32の長さの幅に対する関係は、長さが幅より大きい関係だが、長さ対幅のアスペクト比は、比較的低い。したがって、開口部32は、一般的に幅が広い。開口部32の各々は、それぞれのスカート部26のそれぞれの総面積の約20〜80%を占める解放空間56を提供し、個々のスカート部総面積は、概ねスカート外側面30の外周58(図1)で境界付けられる。したがって、シリンダボアと摩擦係合させることができるスカート外側面30の面積は、開口部32のスカート部26の総面積に対する相対的な大きさによって、スカート部26の総面積の約20〜80%まで低減される。したがって、ピストンの重量を大きく低減させることに加えて、スカート部26とシリンダ壁との間の潜在的な動摩擦損失が低減される。スカート外側面面積を約40%低減させる開口部は、摩擦を実際的に実現可能な最大値から約80パーセント削減する結果になることが発見された。
【0015】
開口部32は、上側バンド部60および下側バンド部62を形成するのに十分にスカート部26の端から端まで延在する。上側および下側バンド部60、62は、概ね対称的な形状に設けることができるが、意図される用途に応じて、非対称的な形状も企図される。不連続な軸受「パッド」、すなわち不連続な個別に分離された荷重軸受領域を提供するような方法で開口部32を構成することができるという局面が、この明細書中に含まれる。スカートバンド部に対するアプローチアングルおよびトレイリングアングルに関する現在の議論の多くは、厳密に、恐らくは一層厳密にこれらの不連続なパッドにも適用される。この後者の構成は、図面には描かれていないがこの発明の範囲内にあると考えられる局面である。
【0016】
図3に最もよく示されるように、上側および下側縁部48、50は、それぞれ、スカート部26の外側面30から開口部32の内側面68まで延在する、滑らかな丸みの付いた、以下で面取り面64、66と称される面を有する。上側および下側面取り面64、66は、この明細書では、例として互いに概ね対称的で尖った角のないコーナ半径(r)を有するとして示されている。方程式y=ax2に対応する放物線状半径が望ましいと考えられている。この方程式は、流体膜の一定の加速度をあたえるd2y/dx2=2aの二次導関数を有するからである。したがって、一定の加速度を有することによって、オイルの層流が促進されることによって、乱流の低減、よってキャビテーションの低減がもたらされる。しかしながら、たとえばより高次の多項式も含めて、他の多項式形状面取り面構成がこの明細書中に企図されることが認識されるべきである。
【0017】
往復運動中、滑らかな面取り面64、66は、オイルを半径方向に内方に開口部32の中へと空洞34の中へとの両方へ向け、その一方で十分な量のオイルを上側および下側バンド部60、62の外側面30とシリンダボアとの間に維持もする。下降行程中、上側面取り面64は、オイルが開口部32を通って空洞34の中へ進入することを促進し、逆に上昇行程中、下側面取り面66は、オイルが開口部32を通って空洞34の中へ進入することを促進する。したがって、オイルを開口部32の中へ内方へ向けることによって、流体圧勾配は、完全に両バンド60、62にわたって決定される。よって下降行程と上昇行程との間にリングベルト40に隣接するオイルの定在波を形成する現象が防がれることによって、リングベルト40の領域におけるオイル溢れ現象がなくなる。したがって、リングベルト40の領域における、特にピストンリング44上およびピストンリング溝42中へのカーボンデポジットが回避される。したがって、ピストンリング44は、リング溝42内で自由浮動運動を維持して、シリンダボア内でのピストンリングの封止機能を促進し、その一方でトップランドへのオイル移行状態を防ぐこともできる。
【0018】
軸受面がバンドまたは不連続なパッドとして成形されているこの発明の別の局面は、従来の湾曲した連続スカート外形によって可能とされたスラスト/非スラスト平面におけるピストンの二次揺動運動は、もはや当てはまらないことである。実際、この発明のスカート設計は、接触している親ライナに対して、2つまたは3つ以上の焦点軸受場所を効果的に示すように成形することができる。議論のためのみに2つまたは3つの焦点に制限すると、よって線または三角形支持が提供されることを思い浮かべることができるが、これに限定されない。結果として、ピストンは、シリンダボアの範囲内でよりうまく誘導されて、同心状に往復運動する。この構成は、より少ないクーロン摩擦ならびにより多くの完全に流体力学的な潤滑および安定した往復運動体制との助けになる。明らかにされたことの当然の帰結として、よって衝撃が回避され、ライナの機械的励振が最小化される。よってライナの冷却液側のキャビテーションが大きく防止される。
【0019】
図4に示されるように、開口部32は、互いに非対称な滑らかな面取り面を有して形成することができる。この実施例において、上側面取り面64は、下側面取り面66の曲率半径(r)に対して、より大きな曲率半径(R)またはより緩やかな多項式曲線を有する。逆に、図5に示されるように、上側面取り面64は、下側面取り面66の曲率半径(R)に対して、低減された曲率半径(r)またはより緩やかでない多項式曲線を有する。したがって、開口部32の構成は、ピストン用途に最もよく適するように異なって構築することができる。
【0020】
加えて、図6に示されるように、開口部32は、上側および下側縁部48、50の長さに沿って概ね対称的な形状を有して構築することができる。さもなくば、図7および図8に示されるように、上側および下側縁部48、50は、異なる非対称形状を有して構築することができる。たとえば、図7には、下側縁部50の曲率半径(r)に対して、増大された曲率半径(R)をその長さに沿って備えた上側縁部48を有する開口部32の実施例が示されている。逆に、図8には、下側縁部50の曲率半径(R)に対して低減された曲率半径(r)をその長さに沿って備えた上側縁部48を有する開口部32の実施例が示されている。したがって、開口部32を、所望の半径方向に内方へのオイル流をスロット32を通して空洞34の中へ得る数多くの構成を有し、かつその一方で上側および下側バンド部60、62とシリンダボア壁との間に所望の厚さの流体力学的オイル層を維持して構築することできることが認識されるべきである。不連続な軸受パッドがバンドに代えて用いられる場合、同じ考えが適用される。上側および下側縁部48、50の面取り面64、66の半径ならびに上側および下側縁部48、50のその長さに沿った曲率半径(r、R)を必要に応じて調節し、組合せることができるよう、論じられた実施例のさまざまな置換えが構成されてもよいことも認識されるべきである。
【0021】
図9および図10では、この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたピストン110が示され、そこでは、上に用いられるのと同じ参照番号を、100の係数だけずらして、同様の特徴を特定するために用いる。上に記載されるように、ピストン110は中心軸114に沿って延在する本体112を有し、上側クラウン116が下側クラウン118に接合され、下側クラウン118がピンボス120の対を有し、ピンボスが上側クラウンから垂下して、中心軸114を概ね横断して延在するピン穴軸124に沿って整列され横方向に間隔を置いて配置されたピン穴122を設ける。スカート部126の対は、ピン穴軸124を横切って互いから直径方向に間隔を置いて配置されており、シリンダボアとの協働のために輪郭成形された凸状の外側面130を有して、ピストン110がシリンダボアを通って往復運動するときピストン110を所望の配向に維持する。往復運動中、流体力学的オイル膜がスカート部126の外側面130とシリンダボアの壁との間に形成され、維持されて、その間の動摩擦を最小化する。所望の流体力学的オイル膜厚およびオイルの分布をスカート部126の外側面130とシリンダボアの壁との間において維持しやすくするために、窪んだ「ブラインドスロット」(以下、別段の断りがなければ、窪んだスロットまたはスロット132とも称される)がスカート部126に形成されている。
【0022】
ピストン110の上側クラウン116は、ここでは、上側面136を有し、燃焼ボウル138がこの上側面に窪ませてあって、シリンダボアとともに所望のガス流を提供するように表わされている。外壁またはリングベルト140は、上側面136から下方へ延在し、少なくとも1つの環状リング溝142がリングベルト140にピストンリング(図示せず)の浮動式収容のために形成されている。
【0023】
下側クラウン118は、ここでは、上側クラウン116とは別個に形成されるように表わされており、上に論じられるように、摩擦溶接継手146によって、または他の態様で、上側クラウン116に接合することができる。
【0024】
スカート部126におけるスロット132はスカート部126の全幅を横切って延在する。スロット132は、ピン穴軸124を通って延在する水平面と平行または実質的に平行に延在するそれぞれの上側縁部および下側縁部148、150と、中心軸114と平行または実質的に平行に延在する窪んだ側部縁部152、154とを有する。上側および下側縁部148、150は、スロット132の全長に概ね対応し、側方縁部152、154は、スロット132の幅に概ね対応する。スロット132の長さの幅に対する関係は、長さが幅より大きい関係である。スロット132の各々は、以下、空間156とも称される、窪ませたポケット、または「ブラインド」ポケットをあたえ、それぞれのスカート部126のそれぞれの総表面積の約20〜80%間を占める。したがって、シリンダボアと摩擦係合させることができるスカート外側面130の面積は、スロット132の、スカート部126の総面積に対する相対的な大きさに応じて、スカート部126の総面積の約20〜80%まで低減される。したがって、ピストン10に関して上に言及されたように、ピストンの重量を大きく低減させることに加えて、スカート部126とシリンダ壁との間に生ずる潜在的な動摩擦損失が低減される。
【0025】
上に言及されたように、スロット132はスカート部126を完全に横切って延在し、したがって、上側および下側バンド部160および162を形成する。上側および下側バンド部160、162は、概ね対称的な形状に設けることができるが、意図される用途に応じて、非対称的な形状も企図される。したがって、たとえば、図5−図8に示されるように、上側縁部および下側縁部148および150は非線形の構成を有してあたえることができることが理解され、そしてさらに、上側縁部および下側縁部148および150は、図3−図5に示されるように、同じ曲率半径、または異なる曲率半径を有してあたえることができることが理解される。窪ませたスロット132がスカート部126の全幅を完全に横切って延在するので、上側および下側バンド部160および162は、スロット132の幅で中心軸114に沿って軸方向に互いから間隔を置かれる、不連続な軸受「パッド」、すなわち不連続な個別に分離された荷重軸受領域をあたえる。スロット132は、スカート部126の外側面130内に、所定の深さだけ、穴のない窪ませた表面70へと延在し、したがって、上に言及したように、スカート部126の全厚みを通っては延在しない。したがって、各窪ませた表面70は、各スロット132の全体にわたって、堅固な連続面をあたえる。スロット132の深さはスカート部126の総厚みの約25〜75%間で延在し、このパーセントはスロット132の長さにわたって所望のように変動し得る。したがって、スロット132の窪ませた表面は、シリンダボアの壁とクリアランスを維持することを保証される。
【0026】
図11および図12では、この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたピストン210が示され、そこでは、上に用いられるのと同じ参照番号を、200の係数だけずらして、同様の特徴を特定するために用いる。上に記載されるように、ピストン210は中心軸214に沿って延在する本体212を有し、上側クラウン216が下側クラウン218に接合され、下側クラウンがピンボス220の対を有し、ピンボスが上側クラウンから垂下して、中心軸214を概ね横断して延在するピン穴軸224に沿って整列され横方向に間隔を置いて配置されたピン穴222を設ける。スカート部226の対は、ピン穴軸224を横切って互いから直径方向に間隔を置いて配置されており、シリンダボアとの協働のために輪郭成形された凸状の外側面230を有して、ピストン210がシリンダボアを通って往復運動するときピストン210を所望の配向に維持する。所望の流体力学的オイル膜厚およびオイルの分布をスカート部226の外側面230とシリンダボアの壁との間において維持しやすくするに、窪んだスロット232がスカート部126に形成されている。さらに、複数個の穴または貫通口72が、窪ませた壁を通って、スカート部226間に形成された空洞234内へと延在する。
【0027】
上に論じられた実施例では、上側クラウン216および下側クラウン218が、上に論じられるように、互いと別々に形成され、次いで、摩擦溶接継手246によって、または他の態様で接合されるように表わされる。
【0028】
スカート部226におけるスロット232はスカート部226の全幅を横切って延在する。スロット232は、ピン穴軸224を通って延在する水平面と平行または実質的に平行に延在するそれぞれの上側縁部および下側縁部248、250と、中心軸214と平行または実質的に平行に延在する窪んだ側部縁部252、254とを有する。スロット232の各々は、窪ませたポケット256をあたえ、それは、それぞれのスカート部226のそれぞれの総表面積の約20〜80%間を占める。したがって、ピストン10、110に関してに言及されたように、ピストンの重量を大きく低減させることに加えて、スカート部226とシリンダ壁との間に生ずる潜在的な動摩擦損失が低減される。
【0029】
示されるように、スロット232は、上に論じられたように、概ね対称的な形状を有して不連続な軸受「パッド」を形成する上側および下側バンド部260および262を形成するが、意図される用途に応じて、非対称的な形状も企図される。したがって、たとえば、図5−図8に示されるように、上側縁部および下側縁部248および250は非線形の構成を有してあたえることができることが理解され、そしてさらに、上側縁部および下側縁部248および250は、図3−図5に示されるように、同じ曲率半径、または異なる曲率半径を有してあたえることができることが理解される。スロット232は、スカート部226の外側面230内に、所定の深さだけ、窪ませた表面270へと延在するが、スカート部226の全厚みを通っては延在しない。スロット232の深さはスカート部226の総厚み(t)の約25〜75%間で延在し、そのパーセントはスロット232の長さにわたって所望のように変動し得る。したがって、窪ませたスロット232の壁厚は、スロット232の長さにわたって連続的に変動し得る。
【0030】
貫通口72は窪ませた壁部分を完全に通って延在し、貫通口が窪ませた表面270を通って延在し空洞234内に開口することを意味する。貫通口72は、円筒形であり、軸方向において貫通口72のすぐ上およびすぐ下の、上側縁部248と下側縁部250との間において延在するスロット232の幅未満である円形の径を有するとして示される。さらに、貫通口72は、上側縁部248と下側縁部250との間において中央に置かれるか実質的に中央に置かれるとして示される。したがって、窪ませた表面270は、貫通口72が窪ませた表面270によって周方向に境界をつけられるように、貫通口72の上および下を延在する。加えて、各スカート部226における貫通口72は互いに対して平行または実質的に平行な軸に沿って延在する。さらに、1つのスカート部226における貫通口72の各々は、直径方向に対向して形成され、対向するスカート部226において貫通口72の1つと同軸で延在する。したがって、互いに対して同軸で延在する、直径方向に対向する貫通口72は、ピストン210の一方の側から両方のスカート部226を通って延在する十分な長さの切削工具などで、ピストン210の一方の側から単一の切断操作で形成することができる。示された実施例では、例として、および限定なしで、各スカート部226は3つの貫通口72を有し、1つの貫通口72は対向する側方縁部252、254間に中央におかれ、他の貫通口72は中央にある穴72の両側上に位置し、中央にある貫通口72から等距離で間隔を置かれる。しかしながら、偶数であろうと奇数であろうと、示されたのと異なる数および構成の貫通口を用いることができることが認識されるべきである。
【0031】
この発明の別の局面に従って、上に論じられ、図において示された、開口部および/またはスロット32、32’、132、232を形成する方法が提供される。開口部および/またはスロット32、32’、132、232は、フライス削り、ブローチング、レーザ、穿孔を含む機械加工プロセスにおけるように、またはたとえば鍛造もしくは鋳造プロセスによるように、図示され論じられたように、様々な形状およびサイズを有して形成することができる。さらに、開口部は、たとえば、フライス削り、ショットブラストまたは旋削プロセスにおけるように、縁部のバリを取るためにさらに処理することができる。前述の製造プロセスの組合せをピストン10、10’、110、210の構築において用いることができることが認識されるべきである。たとえば、ピストン本体12、12’、112、212は、まず、鋳造または鍛造され、次いで、フライス削り、ブローチ削り、レーザ形成、または穿孔、および/もしくはショットブラストもしくは旋削され得る。
【0032】
明らかに、この発明の多くの変形例および変更例が上記の教示に鑑みて可能である。したがって、特許請求の範囲内で、この発明は、具体的に説明されたのとは違う態様で実施されてもよいことが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1. 技術分野
この発明は、概して内燃機関に関し、より具体的には、重負荷ディーゼルエンジンのためのピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
2. 関連技術
内燃機関、特にディーゼルエンジンは、オイル消費が多く、これは望ましくない排気物質を招くことが知られている。加えて、オイル消費とともに、ピストンの表面上に、特に、環状リング溝の中も含めてトップランド領域にカーボン蓄積が起こる。したがって、カーボン蓄積によってリング移動が制約されることによって、適正に燃焼ガスを封止し、オイル消費を制御するリングの効果が次第に落ちることによって、オイルブローバイの増加と、エンジン性能の低下と、エンジン構成部品寿命の短縮と、排出物質の増加とがもたらされる。
【0003】
上述の問題に加えて、追加の既知の問題が、シリンダ内のピストン往復運動の経路にわたるオイルの不均一な乱流から起こる惧れがある。こういった追加の問題の中には、線形キャビテーションの開始およびピストンとシリンダライナとの間の摩擦の増大が含まれるものもある。線形キャビテーションは、ピストンの構成に影響されやすく、特にピストンがピストンと一体に形成された固定スカートを有するモノブロック構造からなる場合、影響されやすい。摩擦の増大は、誘導がないためピストン往復運動がシリンダライナ内で傾くピストンの二次運動に影響されやすい。オイル制御不能は、高速度のピストン運動に起因され、オイルの定在波を発生させる。スカートの上側部分においてそのようである場合、「オイル溢れ(oil flooding)」と称される現象が起こる。したがって、オイルの大部分はピストンの上側クラウンに向けて維持され、オイルはリングベルト領域に少しずつ流れ込む。リングベルトの端から端までのガス圧勾配がはっきりと規定されていないときなど、場合によっては、第1のリング溝が溢れると、オイル消費制御特性が失われる。オイルの二次定在波が、第1のリング溝の上側縁部で発生する。このオイルを火炎前面にさらすことにより、定在波中のオイルが分解および炭化されて、煤煙およびカーボンデポジット形成が発生する。したがって、ピストンのリング領域において、オイルの絶え間ない供給の維持は望ましいものの、過多はエンジン寿命に有害である惧れがあり、エンジン性能を低下させる惧れもある。
【0004】
この発明に従って製造されたピストンおよびそれを備えたエンジンは、少なくとも上記で述べた問題から生じる欠点を克服または大幅に最小化することによって、ディーゼルエンジンが向上した性能レベルで動作することを可能にし、その一方で、ディーゼルエンジンの有用寿命を延ばす上に、ディーゼルエンジンの燃料消費、オイル消費および排気物質を削減する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
あるピストンは、ピストンが往復運動する中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有するピストン本体と、上側クラウンから垂下するピンボスの対とを含む。ピンボスは、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有する。ピストンは、さらに、ピン穴軸の両側に配置されたスカート部の対を備え、スカート部の各々は、凸状外側面を有し、凸状外側面は、対向する側方縁部が、中心軸と実質的に平行に自由端へと延在する。スカート部は、各々、径方向に、凸状外側面内を、窪ませた表面へと延在する、窪ませたスロットを有する。窪ませた表面は、側方縁部に対して凸状外側面を完全に横切って延在し、それによって、凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する。
【0006】
この発明の別の局面に従って、ピストンを構築する方法が提供される。この方法は、ピストン本体を設けるステップを含み、ピストン本体は、中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有し、ピンボスの対が、上側クラウンから垂下し、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有し、スカート部の対が、ピン穴軸の両側上に構成され、凸状外側面を有する。さらに、凸状外側面内に径方向に延在する、窪ませたスロットを形成する。
【0007】
この発明に従って製造されるピストンは、ピストンの全サイクルにわたってオイルフローを改善し、ピストンのサイクルにわたって動的な粘性摩擦を低減し、その全サイクルの全体にわたるピストンの誘導を改善し、シリンダライナキャビテーションを低減し、ピストン粘性摩擦損失を低減し、ピストンのリング溝内、および溝を有するピストンリング上における、カーボン蓄積を低減し、ピストンリングの運動を改善し、オイル消費、およびトップランドに付着させられる形成されたカーボンを低減し、したがって、典型的にはカーボン蓄積によって引起される穴研磨を低減し、排気排出物を低減し、全体として、エンジンの運転性能および寿命を改善する。これらの有益な効果をまとめると、エンジン燃料消費を低減し、より大きな燃費を促進する。
【0008】
この発明のこれらのおよび他の局面、特徴、および利点は、以下の現在好ましい実施例および最良の形態の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を考慮すると、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の現在好ましい実施例に従ったピストン構造の部分斜視図である。
【図2】図1の線2−2に概ね沿って取った断面図である。
【図2A】この発明の現在好ましい別の実施例に従ったピストン構造の4分の1断面図である。
【図3】線3−3に概ね沿って取った、この発明の1つの現在好ましい実施例に従ったピストンのスカートにあるスロットを示す概略部分断面図である。
【図4】この発明の別の現在好ましい実施例に従ったピストンのスカートにあるスロットを示す図3と同様の図である。
【図5】この発明のさらに別の現在好ましい実施例に従ったピストンのスカートにあるスロットを示す図3と同様の図である。
【図6】この発明の1つの現在好ましい実施例に従って構築されたスロットを覗き込む、スカートの概略部分側面図である。
【図7】この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたスロットを示す図6と同様の図である。
【図8】この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたスロットを示す図6と同様の図である。
【図9】この発明の現在好ましい別の実施例に従ったピストン構造の部分断面図である。
【図10】概ね矢印10の方向で見る図9のピストンの図である。
【図11】この発明の現在好ましい別の実施例に従ったピストン構造の部分断面図である。
【図12】概ね矢印12の方向で見る図11のピストンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現在好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図1および図2には、ディーゼルエンジンなどの内燃機関のシリンダボア(図示せず)における往復運動のための、この発明の1つの現在好ましい実施例に従って構築されたピストン10が示されている。ピストン10は鋳造か鍛造かのいずれかまたは任意の他の製造プロセスによる本体12を有し、中心軸14に沿って延在し、この中心軸に沿ってピストン10はシリンダボア中を往復運動する。本体12は、例として、下側クラウン18に接合された上側クラウン16を有し、下側クラウンがピンボス20の対を有し、ピンボスが上側クラウンから垂下して、中心軸14を概ね横断して延在するピン穴軸24に沿って整列され横方向に間隔を置いて配置されたピン穴22を提供しているとして表わされているが、これに限定されない。例として、ピンボス20は、横方向に間隔を置いて配置されたスカート部26に支柱部28を介して接合されることによって、スカート部26がピンボス20と一体材料として形成されたいわゆる「モノブロック」ピストンを形成するが、これに限定されない。スカート部26は、ピン穴軸24を横切って互いから直径方向に間隔を置いて配置されており、シリンダボアとの協働のために輪郭成形された凸状の外側面30を有して、ピストン10がシリンダボアを通って往復運動するときピストンを所望の配向に維持する。往復運動中、流体力学的オイル膜がスカート部26の外側面30とシリンダボアの壁との間に形成され、維持されて、その間の動摩擦を最小化する。所望の流体力学的オイル膜厚およびオイルの分布をスカート部30の外側面30の端から端まで維持しやすくするために、貫通スロット(以下、別段の断りがなければ開口部32とも称される)がスカート部26に形成されている。
【0011】
ピストン10の上側クラウン16は、この明細書では、上側面36を有し、燃焼ボウル38がこの上側面に窪ませてあって、シリンダボアとともに所望のガス流を提供するように表わされている。外壁またはリングベルト40は、上側面36から下方へ延在し、少なくとも1つの環状リング溝42がリングベルト40にピストンリング44の浮動式収容のために形成されている。ピストンリング44は、その自由浮動状態で適正に機能しているとき、シリンダボア内での往復運動中にピストン10を誘導しやすくし、その一方で燃焼ガスを封止し、上方への、それによってピストン本体12より下からのオイルの通過を抑制もする。
【0012】
下側クラウン18は、この明細書では、鍛造プロセスにおいてなど、上側クラウン16とは別個に形成されてから、上側クラウンに接合されるように表わされており、上側および下側クラウン16、18は、たとえば溶接継手46で接合することができる。この発明に従って構築されたピストン10は、たとえば鋳造プロセスなどの他のやり方で形成された上側および下側クラウン部を有し得、溶接継手以外の機構を用いて接合され得ることが認識されるべきである。
【0013】
別の現在好ましい実施例に従うピストン構造は、図2Aにおいて概ね10’で示される。上および以下に論じられる同じ参照番号は、同様の特徴を指定するために適用され、参照番号はダッシュ記号を付される。
【0014】
図1および図3に示されるように、スカート部26にある開口部32は、ピン穴軸24を通って延在する水平面に概ね平行にかつ中心軸14を概ね横断して延在する上側縁部48および下側縁部50と、この水平面を概ね横断して上側および下側縁部48、50間に延在する側部52、54とを有する。上側および下側縁部48、50は、開口部32の長さに概ね対応し、側部52、54は、開口部32の幅に概ね対応するが、最大幅は、側部52、54から延在または外方へ湾曲することができる。開口部32の長さの幅に対する関係は、長さが幅より大きい関係だが、長さ対幅のアスペクト比は、比較的低い。したがって、開口部32は、一般的に幅が広い。開口部32の各々は、それぞれのスカート部26のそれぞれの総面積の約20〜80%を占める解放空間56を提供し、個々のスカート部総面積は、概ねスカート外側面30の外周58(図1)で境界付けられる。したがって、シリンダボアと摩擦係合させることができるスカート外側面30の面積は、開口部32のスカート部26の総面積に対する相対的な大きさによって、スカート部26の総面積の約20〜80%まで低減される。したがって、ピストンの重量を大きく低減させることに加えて、スカート部26とシリンダ壁との間の潜在的な動摩擦損失が低減される。スカート外側面面積を約40%低減させる開口部は、摩擦を実際的に実現可能な最大値から約80パーセント削減する結果になることが発見された。
【0015】
開口部32は、上側バンド部60および下側バンド部62を形成するのに十分にスカート部26の端から端まで延在する。上側および下側バンド部60、62は、概ね対称的な形状に設けることができるが、意図される用途に応じて、非対称的な形状も企図される。不連続な軸受「パッド」、すなわち不連続な個別に分離された荷重軸受領域を提供するような方法で開口部32を構成することができるという局面が、この明細書中に含まれる。スカートバンド部に対するアプローチアングルおよびトレイリングアングルに関する現在の議論の多くは、厳密に、恐らくは一層厳密にこれらの不連続なパッドにも適用される。この後者の構成は、図面には描かれていないがこの発明の範囲内にあると考えられる局面である。
【0016】
図3に最もよく示されるように、上側および下側縁部48、50は、それぞれ、スカート部26の外側面30から開口部32の内側面68まで延在する、滑らかな丸みの付いた、以下で面取り面64、66と称される面を有する。上側および下側面取り面64、66は、この明細書では、例として互いに概ね対称的で尖った角のないコーナ半径(r)を有するとして示されている。方程式y=ax2に対応する放物線状半径が望ましいと考えられている。この方程式は、流体膜の一定の加速度をあたえるd2y/dx2=2aの二次導関数を有するからである。したがって、一定の加速度を有することによって、オイルの層流が促進されることによって、乱流の低減、よってキャビテーションの低減がもたらされる。しかしながら、たとえばより高次の多項式も含めて、他の多項式形状面取り面構成がこの明細書中に企図されることが認識されるべきである。
【0017】
往復運動中、滑らかな面取り面64、66は、オイルを半径方向に内方に開口部32の中へと空洞34の中へとの両方へ向け、その一方で十分な量のオイルを上側および下側バンド部60、62の外側面30とシリンダボアとの間に維持もする。下降行程中、上側面取り面64は、オイルが開口部32を通って空洞34の中へ進入することを促進し、逆に上昇行程中、下側面取り面66は、オイルが開口部32を通って空洞34の中へ進入することを促進する。したがって、オイルを開口部32の中へ内方へ向けることによって、流体圧勾配は、完全に両バンド60、62にわたって決定される。よって下降行程と上昇行程との間にリングベルト40に隣接するオイルの定在波を形成する現象が防がれることによって、リングベルト40の領域におけるオイル溢れ現象がなくなる。したがって、リングベルト40の領域における、特にピストンリング44上およびピストンリング溝42中へのカーボンデポジットが回避される。したがって、ピストンリング44は、リング溝42内で自由浮動運動を維持して、シリンダボア内でのピストンリングの封止機能を促進し、その一方でトップランドへのオイル移行状態を防ぐこともできる。
【0018】
軸受面がバンドまたは不連続なパッドとして成形されているこの発明の別の局面は、従来の湾曲した連続スカート外形によって可能とされたスラスト/非スラスト平面におけるピストンの二次揺動運動は、もはや当てはまらないことである。実際、この発明のスカート設計は、接触している親ライナに対して、2つまたは3つ以上の焦点軸受場所を効果的に示すように成形することができる。議論のためのみに2つまたは3つの焦点に制限すると、よって線または三角形支持が提供されることを思い浮かべることができるが、これに限定されない。結果として、ピストンは、シリンダボアの範囲内でよりうまく誘導されて、同心状に往復運動する。この構成は、より少ないクーロン摩擦ならびにより多くの完全に流体力学的な潤滑および安定した往復運動体制との助けになる。明らかにされたことの当然の帰結として、よって衝撃が回避され、ライナの機械的励振が最小化される。よってライナの冷却液側のキャビテーションが大きく防止される。
【0019】
図4に示されるように、開口部32は、互いに非対称な滑らかな面取り面を有して形成することができる。この実施例において、上側面取り面64は、下側面取り面66の曲率半径(r)に対して、より大きな曲率半径(R)またはより緩やかな多項式曲線を有する。逆に、図5に示されるように、上側面取り面64は、下側面取り面66の曲率半径(R)に対して、低減された曲率半径(r)またはより緩やかでない多項式曲線を有する。したがって、開口部32の構成は、ピストン用途に最もよく適するように異なって構築することができる。
【0020】
加えて、図6に示されるように、開口部32は、上側および下側縁部48、50の長さに沿って概ね対称的な形状を有して構築することができる。さもなくば、図7および図8に示されるように、上側および下側縁部48、50は、異なる非対称形状を有して構築することができる。たとえば、図7には、下側縁部50の曲率半径(r)に対して、増大された曲率半径(R)をその長さに沿って備えた上側縁部48を有する開口部32の実施例が示されている。逆に、図8には、下側縁部50の曲率半径(R)に対して低減された曲率半径(r)をその長さに沿って備えた上側縁部48を有する開口部32の実施例が示されている。したがって、開口部32を、所望の半径方向に内方へのオイル流をスロット32を通して空洞34の中へ得る数多くの構成を有し、かつその一方で上側および下側バンド部60、62とシリンダボア壁との間に所望の厚さの流体力学的オイル層を維持して構築することできることが認識されるべきである。不連続な軸受パッドがバンドに代えて用いられる場合、同じ考えが適用される。上側および下側縁部48、50の面取り面64、66の半径ならびに上側および下側縁部48、50のその長さに沿った曲率半径(r、R)を必要に応じて調節し、組合せることができるよう、論じられた実施例のさまざまな置換えが構成されてもよいことも認識されるべきである。
【0021】
図9および図10では、この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたピストン110が示され、そこでは、上に用いられるのと同じ参照番号を、100の係数だけずらして、同様の特徴を特定するために用いる。上に記載されるように、ピストン110は中心軸114に沿って延在する本体112を有し、上側クラウン116が下側クラウン118に接合され、下側クラウン118がピンボス120の対を有し、ピンボスが上側クラウンから垂下して、中心軸114を概ね横断して延在するピン穴軸124に沿って整列され横方向に間隔を置いて配置されたピン穴122を設ける。スカート部126の対は、ピン穴軸124を横切って互いから直径方向に間隔を置いて配置されており、シリンダボアとの協働のために輪郭成形された凸状の外側面130を有して、ピストン110がシリンダボアを通って往復運動するときピストン110を所望の配向に維持する。往復運動中、流体力学的オイル膜がスカート部126の外側面130とシリンダボアの壁との間に形成され、維持されて、その間の動摩擦を最小化する。所望の流体力学的オイル膜厚およびオイルの分布をスカート部126の外側面130とシリンダボアの壁との間において維持しやすくするために、窪んだ「ブラインドスロット」(以下、別段の断りがなければ、窪んだスロットまたはスロット132とも称される)がスカート部126に形成されている。
【0022】
ピストン110の上側クラウン116は、ここでは、上側面136を有し、燃焼ボウル138がこの上側面に窪ませてあって、シリンダボアとともに所望のガス流を提供するように表わされている。外壁またはリングベルト140は、上側面136から下方へ延在し、少なくとも1つの環状リング溝142がリングベルト140にピストンリング(図示せず)の浮動式収容のために形成されている。
【0023】
下側クラウン118は、ここでは、上側クラウン116とは別個に形成されるように表わされており、上に論じられるように、摩擦溶接継手146によって、または他の態様で、上側クラウン116に接合することができる。
【0024】
スカート部126におけるスロット132はスカート部126の全幅を横切って延在する。スロット132は、ピン穴軸124を通って延在する水平面と平行または実質的に平行に延在するそれぞれの上側縁部および下側縁部148、150と、中心軸114と平行または実質的に平行に延在する窪んだ側部縁部152、154とを有する。上側および下側縁部148、150は、スロット132の全長に概ね対応し、側方縁部152、154は、スロット132の幅に概ね対応する。スロット132の長さの幅に対する関係は、長さが幅より大きい関係である。スロット132の各々は、以下、空間156とも称される、窪ませたポケット、または「ブラインド」ポケットをあたえ、それぞれのスカート部126のそれぞれの総表面積の約20〜80%間を占める。したがって、シリンダボアと摩擦係合させることができるスカート外側面130の面積は、スロット132の、スカート部126の総面積に対する相対的な大きさに応じて、スカート部126の総面積の約20〜80%まで低減される。したがって、ピストン10に関して上に言及されたように、ピストンの重量を大きく低減させることに加えて、スカート部126とシリンダ壁との間に生ずる潜在的な動摩擦損失が低減される。
【0025】
上に言及されたように、スロット132はスカート部126を完全に横切って延在し、したがって、上側および下側バンド部160および162を形成する。上側および下側バンド部160、162は、概ね対称的な形状に設けることができるが、意図される用途に応じて、非対称的な形状も企図される。したがって、たとえば、図5−図8に示されるように、上側縁部および下側縁部148および150は非線形の構成を有してあたえることができることが理解され、そしてさらに、上側縁部および下側縁部148および150は、図3−図5に示されるように、同じ曲率半径、または異なる曲率半径を有してあたえることができることが理解される。窪ませたスロット132がスカート部126の全幅を完全に横切って延在するので、上側および下側バンド部160および162は、スロット132の幅で中心軸114に沿って軸方向に互いから間隔を置かれる、不連続な軸受「パッド」、すなわち不連続な個別に分離された荷重軸受領域をあたえる。スロット132は、スカート部126の外側面130内に、所定の深さだけ、穴のない窪ませた表面70へと延在し、したがって、上に言及したように、スカート部126の全厚みを通っては延在しない。したがって、各窪ませた表面70は、各スロット132の全体にわたって、堅固な連続面をあたえる。スロット132の深さはスカート部126の総厚みの約25〜75%間で延在し、このパーセントはスロット132の長さにわたって所望のように変動し得る。したがって、スロット132の窪ませた表面は、シリンダボアの壁とクリアランスを維持することを保証される。
【0026】
図11および図12では、この発明の別の現在好ましい実施例に従って構築されたピストン210が示され、そこでは、上に用いられるのと同じ参照番号を、200の係数だけずらして、同様の特徴を特定するために用いる。上に記載されるように、ピストン210は中心軸214に沿って延在する本体212を有し、上側クラウン216が下側クラウン218に接合され、下側クラウンがピンボス220の対を有し、ピンボスが上側クラウンから垂下して、中心軸214を概ね横断して延在するピン穴軸224に沿って整列され横方向に間隔を置いて配置されたピン穴222を設ける。スカート部226の対は、ピン穴軸224を横切って互いから直径方向に間隔を置いて配置されており、シリンダボアとの協働のために輪郭成形された凸状の外側面230を有して、ピストン210がシリンダボアを通って往復運動するときピストン210を所望の配向に維持する。所望の流体力学的オイル膜厚およびオイルの分布をスカート部226の外側面230とシリンダボアの壁との間において維持しやすくするに、窪んだスロット232がスカート部126に形成されている。さらに、複数個の穴または貫通口72が、窪ませた壁を通って、スカート部226間に形成された空洞234内へと延在する。
【0027】
上に論じられた実施例では、上側クラウン216および下側クラウン218が、上に論じられるように、互いと別々に形成され、次いで、摩擦溶接継手246によって、または他の態様で接合されるように表わされる。
【0028】
スカート部226におけるスロット232はスカート部226の全幅を横切って延在する。スロット232は、ピン穴軸224を通って延在する水平面と平行または実質的に平行に延在するそれぞれの上側縁部および下側縁部248、250と、中心軸214と平行または実質的に平行に延在する窪んだ側部縁部252、254とを有する。スロット232の各々は、窪ませたポケット256をあたえ、それは、それぞれのスカート部226のそれぞれの総表面積の約20〜80%間を占める。したがって、ピストン10、110に関してに言及されたように、ピストンの重量を大きく低減させることに加えて、スカート部226とシリンダ壁との間に生ずる潜在的な動摩擦損失が低減される。
【0029】
示されるように、スロット232は、上に論じられたように、概ね対称的な形状を有して不連続な軸受「パッド」を形成する上側および下側バンド部260および262を形成するが、意図される用途に応じて、非対称的な形状も企図される。したがって、たとえば、図5−図8に示されるように、上側縁部および下側縁部248および250は非線形の構成を有してあたえることができることが理解され、そしてさらに、上側縁部および下側縁部248および250は、図3−図5に示されるように、同じ曲率半径、または異なる曲率半径を有してあたえることができることが理解される。スロット232は、スカート部226の外側面230内に、所定の深さだけ、窪ませた表面270へと延在するが、スカート部226の全厚みを通っては延在しない。スロット232の深さはスカート部226の総厚み(t)の約25〜75%間で延在し、そのパーセントはスロット232の長さにわたって所望のように変動し得る。したがって、窪ませたスロット232の壁厚は、スロット232の長さにわたって連続的に変動し得る。
【0030】
貫通口72は窪ませた壁部分を完全に通って延在し、貫通口が窪ませた表面270を通って延在し空洞234内に開口することを意味する。貫通口72は、円筒形であり、軸方向において貫通口72のすぐ上およびすぐ下の、上側縁部248と下側縁部250との間において延在するスロット232の幅未満である円形の径を有するとして示される。さらに、貫通口72は、上側縁部248と下側縁部250との間において中央に置かれるか実質的に中央に置かれるとして示される。したがって、窪ませた表面270は、貫通口72が窪ませた表面270によって周方向に境界をつけられるように、貫通口72の上および下を延在する。加えて、各スカート部226における貫通口72は互いに対して平行または実質的に平行な軸に沿って延在する。さらに、1つのスカート部226における貫通口72の各々は、直径方向に対向して形成され、対向するスカート部226において貫通口72の1つと同軸で延在する。したがって、互いに対して同軸で延在する、直径方向に対向する貫通口72は、ピストン210の一方の側から両方のスカート部226を通って延在する十分な長さの切削工具などで、ピストン210の一方の側から単一の切断操作で形成することができる。示された実施例では、例として、および限定なしで、各スカート部226は3つの貫通口72を有し、1つの貫通口72は対向する側方縁部252、254間に中央におかれ、他の貫通口72は中央にある穴72の両側上に位置し、中央にある貫通口72から等距離で間隔を置かれる。しかしながら、偶数であろうと奇数であろうと、示されたのと異なる数および構成の貫通口を用いることができることが認識されるべきである。
【0031】
この発明の別の局面に従って、上に論じられ、図において示された、開口部および/またはスロット32、32’、132、232を形成する方法が提供される。開口部および/またはスロット32、32’、132、232は、フライス削り、ブローチング、レーザ、穿孔を含む機械加工プロセスにおけるように、またはたとえば鍛造もしくは鋳造プロセスによるように、図示され論じられたように、様々な形状およびサイズを有して形成することができる。さらに、開口部は、たとえば、フライス削り、ショットブラストまたは旋削プロセスにおけるように、縁部のバリを取るためにさらに処理することができる。前述の製造プロセスの組合せをピストン10、10’、110、210の構築において用いることができることが認識されるべきである。たとえば、ピストン本体12、12’、112、212は、まず、鋳造または鍛造され、次いで、フライス削り、ブローチ削り、レーザ形成、または穿孔、および/もしくはショットブラストもしくは旋削され得る。
【0032】
明らかに、この発明の多くの変形例および変更例が上記の教示に鑑みて可能である。したがって、特許請求の範囲内で、この発明は、具体的に説明されたのとは違う態様で実施されてもよいことが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンが往復運動する中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有するピストン本体と、
前記上側クラウンから垂下しており、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有するピンボスの対と、
前記ピン穴軸の両側に配置されたスカート部の対とを備え、前記スカート部の各々は、凸状外側面を有し、前記凸状外側面は、対向する側方縁部が、前記中心軸と実質的に平行に自由端へと延在し、径方向に、前記凸状外側面内を、窪ませた表面へと延在する、窪ませたスロットを有し、前記窪ませた表面は、前記凸状外側面の上側バンド部を、前記凸状外側面の下側バンド部から分離する、ピストン。
【請求項2】
前記窪ませたスロットの各々は、それらのそれぞれのスカート部の前記外側面の面積の約20〜80%を占める、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記上側バンド部および前記下側バンド部は、それらのそれぞれのスカート部の前記外側面の総面積の約20〜80%を占める、請求項1に記載のピストン。
【請求項4】
前記窪ませたスロットは、前記ピン穴軸を通過する水平面に概ね平行に延在する上側縁部および下側縁部を有する、請求項1に記載のピストン。
【請求項5】
前記上側縁部および下側縁部の各々は、前記凸状外側面から前記窪ませた表面に向かって延在する実質的に同じ曲率半径を有する、請求項4に記載のピストン。
【請求項6】
前記曲率半径は、放物線状である、請求項5に記載のピストン。
【請求項7】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する実質的に同じ曲率半径を有する、請求項5に記載のピストン。
【請求項8】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する異なる曲率半径を有する、請求項5に記載のピストン。
【請求項9】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記スカート部の前記凸状外側面から前記窪ませた表面に向かって内方へ延在する異なる曲率半径を有する、請求項4に記載のピストン。
【請求項10】
前記曲率半径のうち少なくとも1つは、放物線状である、請求項9に記載のピストン。
【請求項11】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する実質的に同じ曲率半径を有する、請求項9に記載のピストン。
【請求項12】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する異なる曲率半径を有する、請求項9に記載のピストン。
【請求項13】
前記上側縁部が前記ピン穴軸より上にあり、前記下側縁部が前記ピン穴軸より下にある、請求項4に記載のピストン。
【請求項14】
前記スカート部の各々はある壁厚を有し、前記窪ませたスロットは、前記壁厚の約25〜75%の深さを有する、請求項1に記載のピストン。
【請求項15】
前記ピストンは、モノブロックピストンである、請求項1に記載のピストン。
【請求項16】
前記窪ませた表面は穴がない、請求項1に記載のピストン。
【請求項17】
前記窪ませたスロットの少なくとも1つは、前記窪ませた表面の対応する1つを通って前記ピンボス間の空洞内に延在する少なくとも1つの貫通口を有する、請求項1に記載のピストン。
【請求項18】
複数の前記少なくとも1つの貫通口は、前記窪ませた表面の前記対応する1つを通って前記空洞の中へと延在する、請求項17に記載のピストン。
【請求項19】
各前記貫通口は円筒形である、請求項18に記載のピストン。
【請求項20】
前記複数の前記の少なくとも1つの貫通口は、平行な軸に沿って延在する、請求項18に記載のピストン。
【請求項21】
前記スカート部の各々は、前記窪ませた表面の前記対応する1つを通って前記ピンボス間の前記空洞内に延在する少なくとも1つの貫通口を有する、請求項17に記載のピストン。
【請求項22】
前記スカート部の1つにおける前記少なくとも1つの貫通口の各々は、前記スカート部の他方における前記少なくとも1つの貫通口の1つと同軸で延在する、請求項21に記載のピストン。
【請求項23】
ピストンを構築する方法であって:
ピストン本体を設けるステップを含み、ピストン本体は、中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有し、ピンボスの対が、上側クラウンから垂下し、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有し、スカート部の対が、ピン穴軸の両側上に構成され、凸状外側面を有し、前記方法はさらに、
凸状外側面内に径方向に延在する、窪ませたスロットを形成するステップを含む、方法。
【請求項24】
凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する貫通口として、窪ませたスロットの少なくとも一部を形成するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する窪ませた表面を有する窪ませたスロットの少なくとも一部を形成するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
窪ませた表面を通る少なくとも1つの貫通口を形成するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
窪ませたスロットを、少なくとも部分的に、鍛造または鋳造プロセスの1つにおいて形成するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
窪ませたスロットの縁部のバリを取るステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する窪ませた表面を有する窪ませたスロットの少なくとも一部を形成するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
窪ませた表面を通る少なくとも1つの貫通口を形成するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項1】
ピストンが往復運動する中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有するピストン本体と、
前記上側クラウンから垂下しており、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有するピンボスの対と、
前記ピン穴軸の両側に配置されたスカート部の対とを備え、前記スカート部の各々は、凸状外側面を有し、前記凸状外側面は、対向する側方縁部が、前記中心軸と実質的に平行に自由端へと延在し、径方向に、前記凸状外側面内を、窪ませた表面へと延在する、窪ませたスロットを有し、前記窪ませた表面は、前記凸状外側面の上側バンド部を、前記凸状外側面の下側バンド部から分離する、ピストン。
【請求項2】
前記窪ませたスロットの各々は、それらのそれぞれのスカート部の前記外側面の面積の約20〜80%を占める、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記上側バンド部および前記下側バンド部は、それらのそれぞれのスカート部の前記外側面の総面積の約20〜80%を占める、請求項1に記載のピストン。
【請求項4】
前記窪ませたスロットは、前記ピン穴軸を通過する水平面に概ね平行に延在する上側縁部および下側縁部を有する、請求項1に記載のピストン。
【請求項5】
前記上側縁部および下側縁部の各々は、前記凸状外側面から前記窪ませた表面に向かって延在する実質的に同じ曲率半径を有する、請求項4に記載のピストン。
【請求項6】
前記曲率半径は、放物線状である、請求項5に記載のピストン。
【請求項7】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する実質的に同じ曲率半径を有する、請求項5に記載のピストン。
【請求項8】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する異なる曲率半径を有する、請求項5に記載のピストン。
【請求項9】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記スカート部の前記凸状外側面から前記窪ませた表面に向かって内方へ延在する異なる曲率半径を有する、請求項4に記載のピストン。
【請求項10】
前記曲率半径のうち少なくとも1つは、放物線状である、請求項9に記載のピストン。
【請求項11】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する実質的に同じ曲率半径を有する、請求項9に記載のピストン。
【請求項12】
前記上側縁部と前記下側縁部とは、前記側方縁部間に延在する異なる曲率半径を有する、請求項9に記載のピストン。
【請求項13】
前記上側縁部が前記ピン穴軸より上にあり、前記下側縁部が前記ピン穴軸より下にある、請求項4に記載のピストン。
【請求項14】
前記スカート部の各々はある壁厚を有し、前記窪ませたスロットは、前記壁厚の約25〜75%の深さを有する、請求項1に記載のピストン。
【請求項15】
前記ピストンは、モノブロックピストンである、請求項1に記載のピストン。
【請求項16】
前記窪ませた表面は穴がない、請求項1に記載のピストン。
【請求項17】
前記窪ませたスロットの少なくとも1つは、前記窪ませた表面の対応する1つを通って前記ピンボス間の空洞内に延在する少なくとも1つの貫通口を有する、請求項1に記載のピストン。
【請求項18】
複数の前記少なくとも1つの貫通口は、前記窪ませた表面の前記対応する1つを通って前記空洞の中へと延在する、請求項17に記載のピストン。
【請求項19】
各前記貫通口は円筒形である、請求項18に記載のピストン。
【請求項20】
前記複数の前記の少なくとも1つの貫通口は、平行な軸に沿って延在する、請求項18に記載のピストン。
【請求項21】
前記スカート部の各々は、前記窪ませた表面の前記対応する1つを通って前記ピンボス間の前記空洞内に延在する少なくとも1つの貫通口を有する、請求項17に記載のピストン。
【請求項22】
前記スカート部の1つにおける前記少なくとも1つの貫通口の各々は、前記スカート部の他方における前記少なくとも1つの貫通口の1つと同軸で延在する、請求項21に記載のピストン。
【請求項23】
ピストンを構築する方法であって:
ピストン本体を設けるステップを含み、ピストン本体は、中心軸に沿って延在する上側クラウン部分を有し、ピンボスの対が、上側クラウンから垂下し、ピン穴軸に沿って互いに整列されたピン穴を有し、スカート部の対が、ピン穴軸の両側上に構成され、凸状外側面を有し、前記方法はさらに、
凸状外側面内に径方向に延在する、窪ませたスロットを形成するステップを含む、方法。
【請求項24】
凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する貫通口として、窪ませたスロットの少なくとも一部を形成するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する窪ませた表面を有する窪ませたスロットの少なくとも一部を形成するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
窪ませた表面を通る少なくとも1つの貫通口を形成するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
窪ませたスロットを、少なくとも部分的に、鍛造または鋳造プロセスの1つにおいて形成するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
窪ませたスロットの縁部のバリを取るステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
凸状外側面の上側バンド部を凸状外側面の下側バンド部から分離する窪ませた表面を有する窪ませたスロットの少なくとも一部を形成するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
窪ませた表面を通る少なくとも1つの貫通口を形成するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−510991(P2013−510991A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538969(P2012−538969)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/056335
【国際公開番号】WO2011/060131
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/056335
【国際公開番号】WO2011/060131
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]