スキージ昇降機構、及びフラットスクリーン捺染装置
【課題】より効率的にスキージの昇降動作を行うことのできるスキージ昇降機構及びこれを備えたフラットスクリーン捺染装置を提供することを課題とする。
【解決手段】布帛Cを捺染するフラットスクリーン捺染装置1におけるスキージの昇降機構は、スキージキャリア6と、スキージキャリア6の往復動方向に沿って設けられたタイミングベルト12と、スキージキャリア6に設置されたプーリ13a、13bと、スキージキャリア6に支持される第1及び第2のスキージ7a、7bと、を備え、スキージキャリア6が左側に走行するときプーリ13aが回転することでスキージ7bを上昇させ且つスキージ7aを下降させ、スキージキャリア6が右側に走行するときプーリ13bが回転することでスキージ7bを下降させ且つスキージ7aを上昇させる伝達手段と、を備えている。
【解決手段】布帛Cを捺染するフラットスクリーン捺染装置1におけるスキージの昇降機構は、スキージキャリア6と、スキージキャリア6の往復動方向に沿って設けられたタイミングベルト12と、スキージキャリア6に設置されたプーリ13a、13bと、スキージキャリア6に支持される第1及び第2のスキージ7a、7bと、を備え、スキージキャリア6が左側に走行するときプーリ13aが回転することでスキージ7bを上昇させ且つスキージ7aを下降させ、スキージキャリア6が右側に走行するときプーリ13bが回転することでスキージ7bを下降させ且つスキージ7aを上昇させる伝達手段と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキージ昇降機構、及びこのスキージ昇降機構を備えたフラットスクリーン捺染装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットスクリーン捺染装置は、一般的にエンドレスベルトによって搬送される布帛に対して、スクリーンを介して染料を押し出して布帛を捺染する構成をとっている。より詳細には、布帛の搬送方向と直行する方向である布帛の幅方向に往復動する2つのスキージが設けられており、この2つのスキージの間に染料を投入する。そして、第1の方向にスキージを走行させる際は、進行方向先方側のスキージをスクリーンから所定距離上昇させるとともに、進行方向後方側のスキージを下降させてスクリーンに対して湾曲するまで押しつける。この後方側のスキージの押圧によって、スクリーンを透して染料を押し出し布帛に浸透させる。この状態でスキージが布帛の幅方向端部まで走行すると、続いて第1の方向と反対方向の第2の方向へとスキージは走行する。このとき、第1の方向に走行する際に上昇していたスキージを下降させ、下降していたスキージを上昇させる(例えば特許文献1参照)。このように、フラットスクリーン捺染装置では、布帛を捺染する間、スキージが昇降動作を繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2936466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スキージの昇降機構について説明すると、まず、特許文献1の図10に示されるように、伝動機構108が左方に引っ張られることでロッド121が左方に摺動してピニオン129が回転する。その結果、第1の支持部材130が押し下げられるとともに第2の支持部材130’が持ち上げられることで、スキージ114Aがスクリーン118に接圧され、スキージ114A’が持ち上げられる。また、伝動機構108が右方に引っ張られることで左方に引っ張られる場合と逆の動作が行われる。このように伝動機構108を左右に引っ張ることでスキージの昇降動作を行うが、伝動機構108を引っ張った際にロッド121がその方向に摺動する前にスキージキャリア110がその方向にすぐに動いてしまうと、スキージの昇降動作も行われなくなってしまう。
【0005】
このため、このスキージキャリア110が容易に動かないように、ガイドレール109と接触するブレーキ機構をスキージキャリアに設けている。このブレーキ機構を常に作動させることで、伝動機構108を引っ張るとロッド121がその方向に摺動し、その後スキージキャリア110がその方向に移動するように構成されている。しかしながら、このようにブレーキ機構を常に作動させていることで、スキージキャリア110を移動させるための力が余分に必要となり非効率的であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、より効率的にスキージの昇降動作を行うことのできるスキージ昇降機構及びこれを備えたフラットスクリーン捺染装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスキージ昇降機構は、被捺染物を捺染するフラットスクリーン捺染装置におけるスキージの昇降機構であって、前記被捺染物の上方で往復動するスキージキャリアと、前記スキージキャリアの往復動方向に沿って設けられた歯を有する直線状歯車部と、前記スキージキャリアに回転可能に設置され、前記直線状歯車部の歯と噛み合うプーリと、前記スキージキャリアに上下動可能に支持される第1及び第2のスキージと、前記プーリの回転運動を直線運動に変換して前記第1及び第2のスキージに伝達する伝達手段と、を備え、前記伝達手段は、前記スキージキャリアが第1の方向に走行するとき前記第1のスキージを上昇させるとともに前記第2のスキージを下降させ、前記スキージキャリアが第2の方向に走行するとき前記第1のスキージを下降させるとともに前記第2のスキージを上昇させるように構成されている。
【0008】
上述したスキージ昇降機構によれば、スキージキャリアが走行することによって直線状歯車部と噛み合うプーリが回転し、その結果、各スキージを昇降させることができる。このように、ブレーキ機構を設ける必要がないため、効率的にスキージを昇降させることができる。また、本発明に係るスキージ昇降機構は、スキージキャリアを駆動させるための駆動源を利用してスキージを昇降させることができ、スキージを昇降させるために新たな駆動源を設置する必要がない。なお、上述した直線状歯車部とは、タイミングベルトやラックなどを含む概念である。また、第1及び第2のスキージは、スキージキャリアによって、直接支持されていてもよいし、間に他の部材を介して間接的に支持されていてもよい。
【0009】
上記スキージ昇降機構は種々の構成をとることができ、例えば、上記プーリは2つとし、伝達手段は、前記各プーリに一方向クラッチを介して接続された2つのピニオンと、長さ方向に移動可能となるよう前記スキージキャリアに設置され、前記各ピニオンと噛み合う2つの歯部、及び前記2つの歯部を挟むように形成された2つの欠歯部を有するラックと、前記ラックの移動によって回転する回転部材と、前記回転部材の時計回りの回転により下降し、反時計回りの回転により上昇する、第1のスキージを支持する第1の昇降部材と、前記回転部材の時計回りの回転により上昇し、反時計回りの回転により下降する、第2のスキージを支持する第2の昇降部材と、を有し、前記一方の一方向クラッチは、前記プーリが時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達し、前記他方の一方向クラッチは、前記プーリが反時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達するような構成とすることができる。なお、上記回転部材はカムフォロアやピニオンなどを含む概念であり、回転部材をカムフォロアとした場合はラックにカムを形成し、回転部材をピニオンとした場合はラックにこのピニオンと噛み合うための歯部を形成する。また、上記各昇降部材は、各スキージを直接的に支持していてもよいし、間に他の部材を介して間接的に支持していてもよい。
【0010】
また、上記直線状歯車部は、スキージキャリアが走行方向を転換させるときの衝撃を軽減させるために、両端部が弾性体を介してフラットスクリーン捺染装置本体に取り付けられる構成とすることが好ましい。
【0011】
また、上記ピニオンは、ラックとの噛み合いをスムーズにする観点から欠歯ピニオンであることが好ましい。
【0012】
また、上記スキージキャリア及びラックは、それぞれ磁石を有しており、ラックが移動方向の各端部において前記ラック側磁石及びスキージキャリア側磁石が引き合うような構成とすることができる。この構成によれば、ラックの停止位置を安定させることができる。
【0013】
また、本発明に係るフラットスクリーン捺染装置は、上記いずれかのスキージ昇降機構を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、効率的にスキージを昇降させることのできるスキージ昇降機構及びこれを備えたフラットスクリーン捺染装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施形態に係るフラットスクリーン捺染装置の平面図である。
【図2】図2は本実施形態に係るスキージキャリアが左側へと走行する状態における図1のA−A視図である。
【図3】図3は本実施形態に係るスキージキャリアが右側へと走行する状態における図1のA−A視図である。
【図4】図4は本実施形態に係るスキージキャリアが左側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために一部の部材を省略したものである。
【図5】図5は図4のC−C線断面図である。
【図6】図6は図2のB−B線断面図である。
【図7】図7は図4のD−D線断面図である。
【図8】図8は本実施形態に係るスキージキャリアが端部に位置する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために一部の部材を省略したものである。
【図9】図9は本実施形態に係るスキージキャリアが右側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために一部の部材を省略したものである。
【図10】図10は本実施形態に係るスキージキャリアが左側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために、カムフォロアと昇降部材との関係を主に示した部分断面図である。
【図11】図11は本実施形態に係るラックを示した正面図である。
【図12】図12は本実施形態に係るカムフォロアを示した正面図である。
【図13】図13は本実施形態に係るスキージキャリアが右側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために、カムフォロアと昇降部材との関係を主に示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るスキージ昇降機構及びこれを備えたフラットスクリーン捺染装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示すように、フラットスクリーン捺染装置1は、布帛(被捺染物)Cなどを搬送するためのエンドレスベルト2と、スクリーン3と、捺染ユニット4と、を主な構成としている。なお、スクリーン3や捺染ユニット4は、エンドレスベルト2に沿って複数設置されているが、本実施形態では1つのみを取り上げて説明する。
【0018】
エンドレスベルト2は、図1の右から左へと布帛Cを間欠的に搬送するように構成されている。このエンドレスベルト2は、フラットスクリーン捺染装置1の両端部に設けられた駆動ローラ(図示省略)によって駆動されている。エンドレスベルト2は、布帛Cを載置する表面が粘着性を有しているため、布帛Cがベルト2上を滑動することがない。
【0019】
捺染ユニット4は、布帛Cの幅方向(図1の上下方向)にわたって延びる2本のガイドフレーム5と、このガイドフレーム5に沿って走行する2つのスキージキャリア6と、2つのスキージキャリア6間に亘って延びる2つのスキージ7と、を主な構成としている。
【0020】
スキージキャリア6は、スクリーン3を挟むようにスクリーン3の両側に設置されている。このスキージキャリア6は、ガイドフレーム5に摺動可能に支持されており、より詳細には、スキージキャリア6は上面及び下面にスライドシュー61を有しており、このスライドシュー61がガイドフレーム5のレール部51上をスライドするように構成されている(図5及び図7参照)。また、スキージキャリア6は、駆動ベルト8によってガイドフレーム5に沿って移動する。この駆動ベルト8は駆動モータ9によって回転駆動される駆動軸10の両端に設けられた駆動プーリ11によって駆動されている。
【0021】
この捺染ユニット4は、2本のスキージ7の間に染料を投入した状態でスキージ7を布帛Cの幅方向に沿って往復動させることで布帛Cを捺染する。図2に示すように、スキージキャリア6が左側へ走行する際は、進行方向先方側(左側)に位置する第2のスキージ7bがスクリーン3から所定距離間隔をあけるよう上昇しており、進行方向後方側(右側)に位置する第1のスキージ7aはスクリーン3に当接して湾曲するよう下降している。そして、図3に示すようにスキージキャリア6が右側へ走行する際は、第1のスキージ7aが上昇して第2のスキージ7bが下降する。このように、布帛Cの捺染中、各スキージ7は上昇及び下降を順に繰り返す。
【0022】
このスキージ7を上昇及び下降させる機構であるスキージ7の昇降機構について説明する。図2及び図3に示すように、タイミングベルト12(本発明の直線状歯車部に相当)が各ガイドフレーム5に沿って設置されている。タイミングベルト12は、その両端部がガイドフレーム5に連結されており、このタイミングベルト12の各端部とガイドフレーム5との間に引っ張りバネなどの弾性体を介在させてもよい。これにより、後述する欠歯ピニオン15とラック17との噛合がスムーズになる。
【0023】
図4〜図6に示すように、スキージキャリア6に回転可能に設置された2つのプーリ13は、上記タイミングベルト12と噛み合っている。なお、図4及び図6の右側のプーリ13を第1のプーリ13a、左側のプーリ13を第2のプーリ13bとする。これら各プーリ13は、間に一方向クラッチ14を介して欠歯ピニオン15と連結している。より詳細には、図5及び図6に示すように、スキージキャリア6に回転可能に取り付けられた回転軸16に対して一方向クラッチ14と欠歯ピニオン15とが固定されており、この一方向クラッチ14にプーリ13が取り付けられている。これら一方向クラッチ14や欠歯ピニオン15も、図4及び図6の右側に位置するものを第1の一方向クラッチ14a及び第1の欠歯ピニオン15aとし、図4左側に位置するものを第2の一方向クラッチ14b及び第2のこの一方向クラッチ15bとする。
【0024】
第1の一方向クラッチ14aは、第1のプーリ13aが時計周りに回転すると第1のプーリ13aと係合してその回転を回転軸16を介して第1の欠歯ピニオン15aへと伝達する。一方で、第1のプーリ13aが反時計回りに回転すると、第1の一方向クラッチ14aは第1のプーリ13aと係合せず、第1のプーリ13aは第1の一方向クラッチ14aに対して自由回転となり、その回転は第1の欠歯ピニオン15aに伝達されない。また、これとは逆に、第2の一方向クラッチ14bは、第2のプーリ13bが反時計回りに回転すると第2のプーリ13bと係合してその回転を第2の欠歯ピニオン15bに伝達するが、第2のプーリ13bが時計回りに回転すると第2の一方向クラッチ14bは第2のプーリ13bと係合しないためにその回転は自由回転となり第2の欠歯ピニオン15bには伝達されない。
【0025】
これら各欠歯ピニオン15と噛み合うラック17がスキージキャリア6に支持されている。より詳細には、ラック17は、布帛Cの幅方向(図4の左右方向)に移動可能となるよう、スキージキャリア6に形成されたガイド部62によって両端部が支持されている。また、ラック17は、図11に示すように、その上面において歯部171が2箇所に形成されており、右側にある第1の歯部171aが第1の欠歯ピニオン15aと噛み合い、左側にある第2の歯部171bが第2の欠歯ピニオン15bと噛み合う。これら両歯部171を挟むように外側に第1の欠歯部172a及び第2の欠歯部172bが形成されている。この欠歯部172は、欠歯ピニオン15と接触することがないよう凹部となっている。
【0026】
また、ラック17は、右端部に第1の磁石173a、左端部に第2の磁石173bを有しており、例えば図4のように左端まで移動したときは、第2の磁石173bがスキージキャリア6に支持された磁石63bと引き合うことで、ラック17を安定してその位置に保持することができる。図9に示すように、右側に移動したときも同様に、第1の磁石173aがスキージキャリア6に支持された磁石63aと引き合い、ラック17をその位置に安定して保持することができる。また、ラック17は、その両歯部171a、171bの間の中央部にカム174が形成されており(図7も併せて参照)、このカム174が、後述するカムフォロア18(本発明の回転部材に相当)を回転させる。
【0027】
カムフォロア18は、各プーリ13a、13b間においてスキージキャリア6に回転可能に支持されている。より詳細には、図6及び図7に示すように、カムフォロア18は、スキージキャリア6に回転可能に設置された回転軸19に固定されている。この回転軸19は、先端にピニオン20を有しており、カムフォロア18が回転することでピニオン20も連動して回転する。また、ベアリング21を介してプーリ22が回転軸19に対して自由回転するように取り付けられている。図12に示すように、カムフォロア18は、脚部181を2つ有しており、この脚部181の間において、ラック17に形成されたカム174を収容する凹部182を画定している。このカムフォロア18は、中間位置においては、凹部182にカム174が収容される(図8参照)。図4に示すようにスキージキャリア6が左側に走行する際は、カムフォロア18は左の脚部181bがカム174上に位置して時計回りに所定角度回転した状態となっており、図9に示すようにスキージキャリア6が右側に走行する際は、カムフォロア18は右の脚部181aがカム174上に位置して反時計回りに所定角度回転した状態となっている。
【0028】
図6及び図10に示すように、ピニオン20を挟むように、第1及び第2の昇降部材23a、23bが昇降動可能に設置されている。この各昇降部材23にはピニオン20と噛み合う歯部が形成されているため、ピニオン20が時計回りに回転すると、第1の昇降部材23aが下降し第2の昇降部材23bが上昇する。また、ピニオン20が反時計回りに回転すると、第1の昇降部材23aが上昇し第2の昇降部材23bが下降する。そして、各昇降部材23にはブラケット支持部材24が固定されている。
【0029】
各昇降部材23にはブラケット支持部材24が上下方向に摺動可能に固定されており、このブラケット支持部材24はブラケット25を支持している。そして、ブラケット25にはスキージホルダ26が取り付けられている。スキージホルダ26は、図1に示すように対向する2つのスキージキャリア6間を延びており、スキージ7を保持している。なお、ブラケット支持部材24は高さ調整ノブ27のスクリュー部271と螺合しており、高さ調整ノブ27を回転させることでブラケット支持部材24を昇降部材23に対して上下方向に摺動させることができる。
【0030】
また、スキージキャリア6には、各欠歯ピニオンの近傍に永久磁石64が設置されている。この永久磁石64が磁性材料からなる欠歯ピニオン15の歯と引き合うことで、欠歯ピニオン15の回転停止位置を制御することができる。このように欠歯ピニオン15の回転停止位置を制御することで、欠歯ピニオン15とラック17の歯部171との噛み合いをスムーズにすることができる。
【0031】
次に、上述したように構成されたフラットスクリーン捺染装置のスキージ昇降機構の動作について説明する。
【0032】
まず、図4に示すようにスキージキャリア6が左側に走行するときは、各プーリ13a、13bがタイミングベルト12と噛み合っているために時計回りに回転する。プーリ13a、13bが時計回りに回転すると、第1の欠歯ピニオン15aは第1のプーリ13aと同様に時計回りに回転する。なお、第2の欠歯ピニオン15bは一方向クラッチ14bのために第2のプーリ13bの回転が伝達されずプーリ13bの回転による回転はない。
【0033】
第1の欠歯ピニオン15aが時計回りに回転すると、ラック17の第1の歯部171aが第1の欠歯ピニオン15aと噛み合っているため、ラック17は左側に移動する。そして、ラック17の第1の欠歯部172aが第1の欠歯ピニオン15aと対応する位置に来ると第1の欠歯ピニオン15aは第1の欠歯部172aと噛み合わないため自由回転となりラック17はその位置で停止する。なお、この位置において第2の欠歯ピニオン15bはラック17の第2の歯部171bと噛み合っているが、第2の欠歯ピニオン15bは第2のプーリ13bによる回転がないため、ラック17はそれ以上移動しない。また。ラック17は、停止したときに第2の磁石173bがスキージキャリア6に支持されている63b磁石と引き合うためその停止位置で維持されている。
【0034】
上述したようにラック17が左側に移動することで、ラック17に設けられたカム174がカムフォロア18を所定角度だけ時計回りに回転させる。このときカムフォロア18は、左の脚部181bがカム174上に載るため、その角度の状態で維持される。このカムフォロア18が回転すると回転軸19が同様に回転することで回転軸19の先端に設けられたピニオン20も時計回りに所定角度だけ回転する。これにより、図10に示すように、第1の昇降部材23aが下降し、その結果、第1のスキージ7aが下降してスクリーン3に押しつけられて湾曲した状態となる。また、第2のスキージ7bは、第2の昇降部材23bがピニオン20の回転によって上昇することに伴いスクリーン3から所定距離離れるように上昇する。
【0035】
スキージキャリア6は、この状態を維持したまま左端まで走行すると、次は、図9に示すように右側へと走行を始める。右側へ走行することによって、各部材が上述したのとは反対方向に作動する。具体的に説明すると、まず、スキージキャリア6が右側へ走行することで各プーリ13a、13bは反時計回りに回転する。このプーリ13a、13bの反時計回りの回転は第2の欠歯ピニオン15bのみに伝えられ、第2の欠歯ピニオン15bの回転によりラック17は右側に移動する。そして、ラック17における第2の欠歯部172bが第2の欠歯ピニオン15bと対応する位置まで来るとラック17は停止する。なお、このとき第1の欠歯ピニオン15aはラック17の第1の歯部171aと噛み合っているが第1の欠歯ピニオン15aには第1のプーリ13aからの回転が伝わっていないため、ラック17はこれ以上移動しない。また、ラック17は、停止したときに第1の磁石173aがスキージキャリア6に支持される磁石63aと引き合うことで安定した状態で停止している。
【0036】
このようにラック17が右側に移動することでラック17のカム174と係合するカムフォロア18は所定角度だけ反時計回りに回転する。このときカムフォロア18は、右側の脚部181aがカム174上に載っていることでその回転角度が維持されている。このカムフォロア18が反時計回りに回転することでピニオン20も同様に反時計回りに回転し、図13に示すように第1の昇降部材23aが上昇し、第2の昇降部材23bが下降する。この結果、第1のスキージ7aが上昇し、第2のスキージ7bが下降し、スキージキャリア6が左側に走行するときとは逆の状態となる。この状態でスキージキャリア6が右端まで走行すると、再度、上述したようにスキージキャリア6は左側に走行する。以上のサイクルを繰り返して布帛Cの捺染を行う。
【0037】
以上、本実施形態に係るフラットスクリーン捺染装置によれば、新たに駆動源を設けることなくスキージキャリア6を走行させることでスキージ7を上昇させたり下降させたりすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態において、直線状歯車部としてタイミングベルト12を採用したが、タイミングベルト12の代わりに、ラックを採用したり、ガイドフレーム5に直接歯部を形成したりしてもよく、各プーリ13a、13bを回転させることができるものであれば特にこれらに限定されるものではない。
【0039】
また、上記実施形態のカム174は、上述した形状に限られず、例えばラック17の上面に形成された凸部とすることもできる。また、同様にカムフォロア18も上述した形状に限定されるものではなく、楕円形や卵型など種々の形状にすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 フラットスクリーン捺染装置
6 スキージキャリア
7 スキージ
12 タイミングベルト(直線状歯車部)
13 プーリ
14 一方向クラッチ
15 欠歯ピニオン
17 ラック
171 歯部
172 欠歯部
18 カムフォロア(回転部材)
23 昇降部材
C 布帛(被捺染物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキージ昇降機構、及びこのスキージ昇降機構を備えたフラットスクリーン捺染装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットスクリーン捺染装置は、一般的にエンドレスベルトによって搬送される布帛に対して、スクリーンを介して染料を押し出して布帛を捺染する構成をとっている。より詳細には、布帛の搬送方向と直行する方向である布帛の幅方向に往復動する2つのスキージが設けられており、この2つのスキージの間に染料を投入する。そして、第1の方向にスキージを走行させる際は、進行方向先方側のスキージをスクリーンから所定距離上昇させるとともに、進行方向後方側のスキージを下降させてスクリーンに対して湾曲するまで押しつける。この後方側のスキージの押圧によって、スクリーンを透して染料を押し出し布帛に浸透させる。この状態でスキージが布帛の幅方向端部まで走行すると、続いて第1の方向と反対方向の第2の方向へとスキージは走行する。このとき、第1の方向に走行する際に上昇していたスキージを下降させ、下降していたスキージを上昇させる(例えば特許文献1参照)。このように、フラットスクリーン捺染装置では、布帛を捺染する間、スキージが昇降動作を繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2936466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スキージの昇降機構について説明すると、まず、特許文献1の図10に示されるように、伝動機構108が左方に引っ張られることでロッド121が左方に摺動してピニオン129が回転する。その結果、第1の支持部材130が押し下げられるとともに第2の支持部材130’が持ち上げられることで、スキージ114Aがスクリーン118に接圧され、スキージ114A’が持ち上げられる。また、伝動機構108が右方に引っ張られることで左方に引っ張られる場合と逆の動作が行われる。このように伝動機構108を左右に引っ張ることでスキージの昇降動作を行うが、伝動機構108を引っ張った際にロッド121がその方向に摺動する前にスキージキャリア110がその方向にすぐに動いてしまうと、スキージの昇降動作も行われなくなってしまう。
【0005】
このため、このスキージキャリア110が容易に動かないように、ガイドレール109と接触するブレーキ機構をスキージキャリアに設けている。このブレーキ機構を常に作動させることで、伝動機構108を引っ張るとロッド121がその方向に摺動し、その後スキージキャリア110がその方向に移動するように構成されている。しかしながら、このようにブレーキ機構を常に作動させていることで、スキージキャリア110を移動させるための力が余分に必要となり非効率的であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、より効率的にスキージの昇降動作を行うことのできるスキージ昇降機構及びこれを備えたフラットスクリーン捺染装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスキージ昇降機構は、被捺染物を捺染するフラットスクリーン捺染装置におけるスキージの昇降機構であって、前記被捺染物の上方で往復動するスキージキャリアと、前記スキージキャリアの往復動方向に沿って設けられた歯を有する直線状歯車部と、前記スキージキャリアに回転可能に設置され、前記直線状歯車部の歯と噛み合うプーリと、前記スキージキャリアに上下動可能に支持される第1及び第2のスキージと、前記プーリの回転運動を直線運動に変換して前記第1及び第2のスキージに伝達する伝達手段と、を備え、前記伝達手段は、前記スキージキャリアが第1の方向に走行するとき前記第1のスキージを上昇させるとともに前記第2のスキージを下降させ、前記スキージキャリアが第2の方向に走行するとき前記第1のスキージを下降させるとともに前記第2のスキージを上昇させるように構成されている。
【0008】
上述したスキージ昇降機構によれば、スキージキャリアが走行することによって直線状歯車部と噛み合うプーリが回転し、その結果、各スキージを昇降させることができる。このように、ブレーキ機構を設ける必要がないため、効率的にスキージを昇降させることができる。また、本発明に係るスキージ昇降機構は、スキージキャリアを駆動させるための駆動源を利用してスキージを昇降させることができ、スキージを昇降させるために新たな駆動源を設置する必要がない。なお、上述した直線状歯車部とは、タイミングベルトやラックなどを含む概念である。また、第1及び第2のスキージは、スキージキャリアによって、直接支持されていてもよいし、間に他の部材を介して間接的に支持されていてもよい。
【0009】
上記スキージ昇降機構は種々の構成をとることができ、例えば、上記プーリは2つとし、伝達手段は、前記各プーリに一方向クラッチを介して接続された2つのピニオンと、長さ方向に移動可能となるよう前記スキージキャリアに設置され、前記各ピニオンと噛み合う2つの歯部、及び前記2つの歯部を挟むように形成された2つの欠歯部を有するラックと、前記ラックの移動によって回転する回転部材と、前記回転部材の時計回りの回転により下降し、反時計回りの回転により上昇する、第1のスキージを支持する第1の昇降部材と、前記回転部材の時計回りの回転により上昇し、反時計回りの回転により下降する、第2のスキージを支持する第2の昇降部材と、を有し、前記一方の一方向クラッチは、前記プーリが時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達し、前記他方の一方向クラッチは、前記プーリが反時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達するような構成とすることができる。なお、上記回転部材はカムフォロアやピニオンなどを含む概念であり、回転部材をカムフォロアとした場合はラックにカムを形成し、回転部材をピニオンとした場合はラックにこのピニオンと噛み合うための歯部を形成する。また、上記各昇降部材は、各スキージを直接的に支持していてもよいし、間に他の部材を介して間接的に支持していてもよい。
【0010】
また、上記直線状歯車部は、スキージキャリアが走行方向を転換させるときの衝撃を軽減させるために、両端部が弾性体を介してフラットスクリーン捺染装置本体に取り付けられる構成とすることが好ましい。
【0011】
また、上記ピニオンは、ラックとの噛み合いをスムーズにする観点から欠歯ピニオンであることが好ましい。
【0012】
また、上記スキージキャリア及びラックは、それぞれ磁石を有しており、ラックが移動方向の各端部において前記ラック側磁石及びスキージキャリア側磁石が引き合うような構成とすることができる。この構成によれば、ラックの停止位置を安定させることができる。
【0013】
また、本発明に係るフラットスクリーン捺染装置は、上記いずれかのスキージ昇降機構を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、効率的にスキージを昇降させることのできるスキージ昇降機構及びこれを備えたフラットスクリーン捺染装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施形態に係るフラットスクリーン捺染装置の平面図である。
【図2】図2は本実施形態に係るスキージキャリアが左側へと走行する状態における図1のA−A視図である。
【図3】図3は本実施形態に係るスキージキャリアが右側へと走行する状態における図1のA−A視図である。
【図4】図4は本実施形態に係るスキージキャリアが左側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために一部の部材を省略したものである。
【図5】図5は図4のC−C線断面図である。
【図6】図6は図2のB−B線断面図である。
【図7】図7は図4のD−D線断面図である。
【図8】図8は本実施形態に係るスキージキャリアが端部に位置する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために一部の部材を省略したものである。
【図9】図9は本実施形態に係るスキージキャリアが右側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために一部の部材を省略したものである。
【図10】図10は本実施形態に係るスキージキャリアが左側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために、カムフォロアと昇降部材との関係を主に示した部分断面図である。
【図11】図11は本実施形態に係るラックを示した正面図である。
【図12】図12は本実施形態に係るカムフォロアを示した正面図である。
【図13】図13は本実施形態に係るスキージキャリアが右側へと走行する状態における図1のA−A視図であり、図解を容易にするために、カムフォロアと昇降部材との関係を主に示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るスキージ昇降機構及びこれを備えたフラットスクリーン捺染装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示すように、フラットスクリーン捺染装置1は、布帛(被捺染物)Cなどを搬送するためのエンドレスベルト2と、スクリーン3と、捺染ユニット4と、を主な構成としている。なお、スクリーン3や捺染ユニット4は、エンドレスベルト2に沿って複数設置されているが、本実施形態では1つのみを取り上げて説明する。
【0018】
エンドレスベルト2は、図1の右から左へと布帛Cを間欠的に搬送するように構成されている。このエンドレスベルト2は、フラットスクリーン捺染装置1の両端部に設けられた駆動ローラ(図示省略)によって駆動されている。エンドレスベルト2は、布帛Cを載置する表面が粘着性を有しているため、布帛Cがベルト2上を滑動することがない。
【0019】
捺染ユニット4は、布帛Cの幅方向(図1の上下方向)にわたって延びる2本のガイドフレーム5と、このガイドフレーム5に沿って走行する2つのスキージキャリア6と、2つのスキージキャリア6間に亘って延びる2つのスキージ7と、を主な構成としている。
【0020】
スキージキャリア6は、スクリーン3を挟むようにスクリーン3の両側に設置されている。このスキージキャリア6は、ガイドフレーム5に摺動可能に支持されており、より詳細には、スキージキャリア6は上面及び下面にスライドシュー61を有しており、このスライドシュー61がガイドフレーム5のレール部51上をスライドするように構成されている(図5及び図7参照)。また、スキージキャリア6は、駆動ベルト8によってガイドフレーム5に沿って移動する。この駆動ベルト8は駆動モータ9によって回転駆動される駆動軸10の両端に設けられた駆動プーリ11によって駆動されている。
【0021】
この捺染ユニット4は、2本のスキージ7の間に染料を投入した状態でスキージ7を布帛Cの幅方向に沿って往復動させることで布帛Cを捺染する。図2に示すように、スキージキャリア6が左側へ走行する際は、進行方向先方側(左側)に位置する第2のスキージ7bがスクリーン3から所定距離間隔をあけるよう上昇しており、進行方向後方側(右側)に位置する第1のスキージ7aはスクリーン3に当接して湾曲するよう下降している。そして、図3に示すようにスキージキャリア6が右側へ走行する際は、第1のスキージ7aが上昇して第2のスキージ7bが下降する。このように、布帛Cの捺染中、各スキージ7は上昇及び下降を順に繰り返す。
【0022】
このスキージ7を上昇及び下降させる機構であるスキージ7の昇降機構について説明する。図2及び図3に示すように、タイミングベルト12(本発明の直線状歯車部に相当)が各ガイドフレーム5に沿って設置されている。タイミングベルト12は、その両端部がガイドフレーム5に連結されており、このタイミングベルト12の各端部とガイドフレーム5との間に引っ張りバネなどの弾性体を介在させてもよい。これにより、後述する欠歯ピニオン15とラック17との噛合がスムーズになる。
【0023】
図4〜図6に示すように、スキージキャリア6に回転可能に設置された2つのプーリ13は、上記タイミングベルト12と噛み合っている。なお、図4及び図6の右側のプーリ13を第1のプーリ13a、左側のプーリ13を第2のプーリ13bとする。これら各プーリ13は、間に一方向クラッチ14を介して欠歯ピニオン15と連結している。より詳細には、図5及び図6に示すように、スキージキャリア6に回転可能に取り付けられた回転軸16に対して一方向クラッチ14と欠歯ピニオン15とが固定されており、この一方向クラッチ14にプーリ13が取り付けられている。これら一方向クラッチ14や欠歯ピニオン15も、図4及び図6の右側に位置するものを第1の一方向クラッチ14a及び第1の欠歯ピニオン15aとし、図4左側に位置するものを第2の一方向クラッチ14b及び第2のこの一方向クラッチ15bとする。
【0024】
第1の一方向クラッチ14aは、第1のプーリ13aが時計周りに回転すると第1のプーリ13aと係合してその回転を回転軸16を介して第1の欠歯ピニオン15aへと伝達する。一方で、第1のプーリ13aが反時計回りに回転すると、第1の一方向クラッチ14aは第1のプーリ13aと係合せず、第1のプーリ13aは第1の一方向クラッチ14aに対して自由回転となり、その回転は第1の欠歯ピニオン15aに伝達されない。また、これとは逆に、第2の一方向クラッチ14bは、第2のプーリ13bが反時計回りに回転すると第2のプーリ13bと係合してその回転を第2の欠歯ピニオン15bに伝達するが、第2のプーリ13bが時計回りに回転すると第2の一方向クラッチ14bは第2のプーリ13bと係合しないためにその回転は自由回転となり第2の欠歯ピニオン15bには伝達されない。
【0025】
これら各欠歯ピニオン15と噛み合うラック17がスキージキャリア6に支持されている。より詳細には、ラック17は、布帛Cの幅方向(図4の左右方向)に移動可能となるよう、スキージキャリア6に形成されたガイド部62によって両端部が支持されている。また、ラック17は、図11に示すように、その上面において歯部171が2箇所に形成されており、右側にある第1の歯部171aが第1の欠歯ピニオン15aと噛み合い、左側にある第2の歯部171bが第2の欠歯ピニオン15bと噛み合う。これら両歯部171を挟むように外側に第1の欠歯部172a及び第2の欠歯部172bが形成されている。この欠歯部172は、欠歯ピニオン15と接触することがないよう凹部となっている。
【0026】
また、ラック17は、右端部に第1の磁石173a、左端部に第2の磁石173bを有しており、例えば図4のように左端まで移動したときは、第2の磁石173bがスキージキャリア6に支持された磁石63bと引き合うことで、ラック17を安定してその位置に保持することができる。図9に示すように、右側に移動したときも同様に、第1の磁石173aがスキージキャリア6に支持された磁石63aと引き合い、ラック17をその位置に安定して保持することができる。また、ラック17は、その両歯部171a、171bの間の中央部にカム174が形成されており(図7も併せて参照)、このカム174が、後述するカムフォロア18(本発明の回転部材に相当)を回転させる。
【0027】
カムフォロア18は、各プーリ13a、13b間においてスキージキャリア6に回転可能に支持されている。より詳細には、図6及び図7に示すように、カムフォロア18は、スキージキャリア6に回転可能に設置された回転軸19に固定されている。この回転軸19は、先端にピニオン20を有しており、カムフォロア18が回転することでピニオン20も連動して回転する。また、ベアリング21を介してプーリ22が回転軸19に対して自由回転するように取り付けられている。図12に示すように、カムフォロア18は、脚部181を2つ有しており、この脚部181の間において、ラック17に形成されたカム174を収容する凹部182を画定している。このカムフォロア18は、中間位置においては、凹部182にカム174が収容される(図8参照)。図4に示すようにスキージキャリア6が左側に走行する際は、カムフォロア18は左の脚部181bがカム174上に位置して時計回りに所定角度回転した状態となっており、図9に示すようにスキージキャリア6が右側に走行する際は、カムフォロア18は右の脚部181aがカム174上に位置して反時計回りに所定角度回転した状態となっている。
【0028】
図6及び図10に示すように、ピニオン20を挟むように、第1及び第2の昇降部材23a、23bが昇降動可能に設置されている。この各昇降部材23にはピニオン20と噛み合う歯部が形成されているため、ピニオン20が時計回りに回転すると、第1の昇降部材23aが下降し第2の昇降部材23bが上昇する。また、ピニオン20が反時計回りに回転すると、第1の昇降部材23aが上昇し第2の昇降部材23bが下降する。そして、各昇降部材23にはブラケット支持部材24が固定されている。
【0029】
各昇降部材23にはブラケット支持部材24が上下方向に摺動可能に固定されており、このブラケット支持部材24はブラケット25を支持している。そして、ブラケット25にはスキージホルダ26が取り付けられている。スキージホルダ26は、図1に示すように対向する2つのスキージキャリア6間を延びており、スキージ7を保持している。なお、ブラケット支持部材24は高さ調整ノブ27のスクリュー部271と螺合しており、高さ調整ノブ27を回転させることでブラケット支持部材24を昇降部材23に対して上下方向に摺動させることができる。
【0030】
また、スキージキャリア6には、各欠歯ピニオンの近傍に永久磁石64が設置されている。この永久磁石64が磁性材料からなる欠歯ピニオン15の歯と引き合うことで、欠歯ピニオン15の回転停止位置を制御することができる。このように欠歯ピニオン15の回転停止位置を制御することで、欠歯ピニオン15とラック17の歯部171との噛み合いをスムーズにすることができる。
【0031】
次に、上述したように構成されたフラットスクリーン捺染装置のスキージ昇降機構の動作について説明する。
【0032】
まず、図4に示すようにスキージキャリア6が左側に走行するときは、各プーリ13a、13bがタイミングベルト12と噛み合っているために時計回りに回転する。プーリ13a、13bが時計回りに回転すると、第1の欠歯ピニオン15aは第1のプーリ13aと同様に時計回りに回転する。なお、第2の欠歯ピニオン15bは一方向クラッチ14bのために第2のプーリ13bの回転が伝達されずプーリ13bの回転による回転はない。
【0033】
第1の欠歯ピニオン15aが時計回りに回転すると、ラック17の第1の歯部171aが第1の欠歯ピニオン15aと噛み合っているため、ラック17は左側に移動する。そして、ラック17の第1の欠歯部172aが第1の欠歯ピニオン15aと対応する位置に来ると第1の欠歯ピニオン15aは第1の欠歯部172aと噛み合わないため自由回転となりラック17はその位置で停止する。なお、この位置において第2の欠歯ピニオン15bはラック17の第2の歯部171bと噛み合っているが、第2の欠歯ピニオン15bは第2のプーリ13bによる回転がないため、ラック17はそれ以上移動しない。また。ラック17は、停止したときに第2の磁石173bがスキージキャリア6に支持されている63b磁石と引き合うためその停止位置で維持されている。
【0034】
上述したようにラック17が左側に移動することで、ラック17に設けられたカム174がカムフォロア18を所定角度だけ時計回りに回転させる。このときカムフォロア18は、左の脚部181bがカム174上に載るため、その角度の状態で維持される。このカムフォロア18が回転すると回転軸19が同様に回転することで回転軸19の先端に設けられたピニオン20も時計回りに所定角度だけ回転する。これにより、図10に示すように、第1の昇降部材23aが下降し、その結果、第1のスキージ7aが下降してスクリーン3に押しつけられて湾曲した状態となる。また、第2のスキージ7bは、第2の昇降部材23bがピニオン20の回転によって上昇することに伴いスクリーン3から所定距離離れるように上昇する。
【0035】
スキージキャリア6は、この状態を維持したまま左端まで走行すると、次は、図9に示すように右側へと走行を始める。右側へ走行することによって、各部材が上述したのとは反対方向に作動する。具体的に説明すると、まず、スキージキャリア6が右側へ走行することで各プーリ13a、13bは反時計回りに回転する。このプーリ13a、13bの反時計回りの回転は第2の欠歯ピニオン15bのみに伝えられ、第2の欠歯ピニオン15bの回転によりラック17は右側に移動する。そして、ラック17における第2の欠歯部172bが第2の欠歯ピニオン15bと対応する位置まで来るとラック17は停止する。なお、このとき第1の欠歯ピニオン15aはラック17の第1の歯部171aと噛み合っているが第1の欠歯ピニオン15aには第1のプーリ13aからの回転が伝わっていないため、ラック17はこれ以上移動しない。また、ラック17は、停止したときに第1の磁石173aがスキージキャリア6に支持される磁石63aと引き合うことで安定した状態で停止している。
【0036】
このようにラック17が右側に移動することでラック17のカム174と係合するカムフォロア18は所定角度だけ反時計回りに回転する。このときカムフォロア18は、右側の脚部181aがカム174上に載っていることでその回転角度が維持されている。このカムフォロア18が反時計回りに回転することでピニオン20も同様に反時計回りに回転し、図13に示すように第1の昇降部材23aが上昇し、第2の昇降部材23bが下降する。この結果、第1のスキージ7aが上昇し、第2のスキージ7bが下降し、スキージキャリア6が左側に走行するときとは逆の状態となる。この状態でスキージキャリア6が右端まで走行すると、再度、上述したようにスキージキャリア6は左側に走行する。以上のサイクルを繰り返して布帛Cの捺染を行う。
【0037】
以上、本実施形態に係るフラットスクリーン捺染装置によれば、新たに駆動源を設けることなくスキージキャリア6を走行させることでスキージ7を上昇させたり下降させたりすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態において、直線状歯車部としてタイミングベルト12を採用したが、タイミングベルト12の代わりに、ラックを採用したり、ガイドフレーム5に直接歯部を形成したりしてもよく、各プーリ13a、13bを回転させることができるものであれば特にこれらに限定されるものではない。
【0039】
また、上記実施形態のカム174は、上述した形状に限られず、例えばラック17の上面に形成された凸部とすることもできる。また、同様にカムフォロア18も上述した形状に限定されるものではなく、楕円形や卵型など種々の形状にすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 フラットスクリーン捺染装置
6 スキージキャリア
7 スキージ
12 タイミングベルト(直線状歯車部)
13 プーリ
14 一方向クラッチ
15 欠歯ピニオン
17 ラック
171 歯部
172 欠歯部
18 カムフォロア(回転部材)
23 昇降部材
C 布帛(被捺染物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被捺染物を捺染するフラットスクリーン捺染装置におけるスキージの昇降機構であって、
前記被捺染物の上方で往復動するスキージキャリアと、
前記スキージキャリアの往復動方向に沿って設けられた歯を有する直線状歯車部と、
前記スキージキャリアに回転可能に設置され、前記直線状歯車部の歯と噛み合うプーリと、
前記スキージキャリアに上下動可能に支持される第1及び第2のスキージと、
前記スキージキャリアに設置され、前記プーリの回転運動を直線運動に変換して前記第1及び第2のスキージに伝達する伝達手段と、を備え、
前記伝達手段は、前記スキージキャリアが第1の方向に走行するとき前記第1のスキージを上昇させるとともに前記第2のスキージを下降させ、前記スキージキャリアが第2の方向に走行するとき前記第1のスキージを下降させるとともに前記第2のスキージを上昇させる、スキージ昇降機構。
【請求項2】
前記プーリは2つであり、
前記伝達手段は、
前記各プーリに一方向クラッチを介して接続された2つのピニオンと、
長さ方向に移動可能となるよう前記スキージキャリアに設置され、前記各ピニオンと噛み合う2つの歯部、及び前記2つの歯部を挟むように形成された2つの欠歯部を有するラックと、
前記ラックの移動によって回転する回転部材と、
前記回転部材の時計回りの回転により下降し、反時計回りの回転により上昇する、第1のスキージを支持する第1の昇降部材と、
前記回転部材の時計回りの回転により上昇し、反時計回りの回転により下降する、第2のスキージを支持する第2の昇降部材と、を有し、
前記一方の一方向クラッチは、前記プーリが時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達し、前記他方の一方向クラッチは、前記プーリが反時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達する、請求項1に記載のスキージ昇降機構。
【請求項3】
前記ラックはカムが形成されており、
前記回転部材は、カムフォロアである、請求項2に記載のスキージ昇降機構。
【請求項4】
前記直線状歯車部は、両端部が弾性体を介して前記フラットスクリーン捺染装置本体に取り付けられる、請求項1〜3のいずれかに記載のスキージ昇降機構。
【請求項5】
前記ピニオンは、欠歯ピニオンである、請求項1〜4のいずれかに記載のスキージ昇降機構。
【請求項6】
前記スキージキャリア及び前記ラックは、それぞれ磁石を有しており、
前記ラックが移動方向の各端部において前記ラック側磁石及びスキージキャリア側磁石が引き合う、請求項1〜5のいずれかに記載のスキージ昇降機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスキージ昇降機構を備えた、フラットスクリーン捺染装置。
【請求項1】
被捺染物を捺染するフラットスクリーン捺染装置におけるスキージの昇降機構であって、
前記被捺染物の上方で往復動するスキージキャリアと、
前記スキージキャリアの往復動方向に沿って設けられた歯を有する直線状歯車部と、
前記スキージキャリアに回転可能に設置され、前記直線状歯車部の歯と噛み合うプーリと、
前記スキージキャリアに上下動可能に支持される第1及び第2のスキージと、
前記スキージキャリアに設置され、前記プーリの回転運動を直線運動に変換して前記第1及び第2のスキージに伝達する伝達手段と、を備え、
前記伝達手段は、前記スキージキャリアが第1の方向に走行するとき前記第1のスキージを上昇させるとともに前記第2のスキージを下降させ、前記スキージキャリアが第2の方向に走行するとき前記第1のスキージを下降させるとともに前記第2のスキージを上昇させる、スキージ昇降機構。
【請求項2】
前記プーリは2つであり、
前記伝達手段は、
前記各プーリに一方向クラッチを介して接続された2つのピニオンと、
長さ方向に移動可能となるよう前記スキージキャリアに設置され、前記各ピニオンと噛み合う2つの歯部、及び前記2つの歯部を挟むように形成された2つの欠歯部を有するラックと、
前記ラックの移動によって回転する回転部材と、
前記回転部材の時計回りの回転により下降し、反時計回りの回転により上昇する、第1のスキージを支持する第1の昇降部材と、
前記回転部材の時計回りの回転により上昇し、反時計回りの回転により下降する、第2のスキージを支持する第2の昇降部材と、を有し、
前記一方の一方向クラッチは、前記プーリが時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達し、前記他方の一方向クラッチは、前記プーリが反時計回りに回転することで前記プーリの回転を前記ピニオンに伝達する、請求項1に記載のスキージ昇降機構。
【請求項3】
前記ラックはカムが形成されており、
前記回転部材は、カムフォロアである、請求項2に記載のスキージ昇降機構。
【請求項4】
前記直線状歯車部は、両端部が弾性体を介して前記フラットスクリーン捺染装置本体に取り付けられる、請求項1〜3のいずれかに記載のスキージ昇降機構。
【請求項5】
前記ピニオンは、欠歯ピニオンである、請求項1〜4のいずれかに記載のスキージ昇降機構。
【請求項6】
前記スキージキャリア及び前記ラックは、それぞれ磁石を有しており、
前記ラックが移動方向の各端部において前記ラック側磁石及びスキージキャリア側磁石が引き合う、請求項1〜5のいずれかに記載のスキージ昇降機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスキージ昇降機構を備えた、フラットスクリーン捺染装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−201250(P2011−201250A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72760(P2010−72760)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(390008833)東伸工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(390008833)東伸工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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