説明

スクラッチオフ書類およびその印刷方法

【課題】製造コストが安価で少量生産にも適するとともに、スクラッチオフしない限り競技者が隠されている情報を確実に認識できないようにするスクラッチオフ書類を提供する。
【解決手段】スクラッチオフ書類60は、表側34および裏側36を有する基材32と、表側34上の情報層38と、情報層38上のスクラッチオフ層62とを備える。情報層38は、指標成分40とノイズ成分46を含み、ノイズ成分46は指標成分40と共同で複数の堆積高さを有し、指標成分40はノイズ成分46と組み合わせた場合に可視可能である。また、指標成分40はスクラッチオフ層62を通して認識することができない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施の形態は一般的に印刷の分野に関し、特に、スクラッチオフ書類およびスクラッチオフ書類を印刷する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクラッチオフタイプの書類は多くの用途で使用される。たとえば、スピードくじ券はデータを伴って印刷され、このデータはスクラッチオフ材料によって覆われる。スクラッチオフ材料をコイン、爪または他の物を用いて擦ることによって除去すれば、スクラッチオフコーティングの下のデータが表れる。くじ以外に、他のこのような書類はしばしば他のゲーム、たとえば、小売店のコンテストや製品の景品に使用される。
【0003】
スクラッチオフ書類の製造は複雑な印刷仕様を含み、高容量、低コスト印刷および大領域の様々なデータを必要とする。各種データ領域は、たとえば、勝ちの指標、数字マーキングおよびバーコード生成を含む。また、スクラッチオフ層用に剥離コーティングおよび除去可能なスクラッチオフ印刷も必要である。スクラッチオフ書類におけるスクラッチオフ材料は十分に基材に接着して通常の取り扱いで擦り取られないが、スクラッチ物品、たとえば、コインや爪で簡単に擦り取られねばならない。スクラッチオフ書類は常套的に予め印刷された書類を用いて製造され、ワックス類のコーティングまたはフィルムを隠したいデータ上に施す。ワックス類コーティングの塗布はさらに特別なハードウエアを使用する必要があり、したがって、スクラッチオフ券の製造に関するコストやメンテナンスを増加させる。さらに、インクの水平高さまたは堆積高さのために、勝ちの指標は不十分なスクラッチオフ層を通して認識できる場合がある。スクラッチオフ層は、背景印刷と勝ちの指標間のインクの水平高さにいかなる差があっても覆い隠す必要がある。
【0004】
印刷方法の複雑さおよびスクラッチオフ券を製造するのに必要な関連コストのために、スクラッチオフ券の製造は大量のくじゲームや販促用にしか経済的に適さない。注文による少量の消費者用途用、たとえば、小さい事業の販促(発送者)、チャリティイベントの資金集めパーティ、同窓会、ゴルフトーナメントおよび独身女性のパーティ用のスクラッチオフ券の印刷は、コスト的に非常に高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここに含まれる開示は、上記の1以上の問題に向けた解決策を記載している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
スクラッチオフ書類は表側および裏側を有する基材を包含してもよい。情報層は表側上に含まれてもよい。情報層は指標成分とノイズ成分を含んでもよい。ノイズ成分と指標成分は共同で複数の堆積高さを有する。指標成分は、ノイズ成分と組み合わせた場合に可視可能である。スクラッチオフ層は、情報層上に含まれてもよく、指標成分がスクラッチオフ層を通して認識することができないようにする。
【0007】
情報層はトナーを含んでもよい。別の実施の形態では、情報層は網版印刷またはハーフトーン印刷を含んでもよい。
【0008】
実施の形態は、複数の指標堆積高さを含む指標成分を包含してもよい。ノイズ成分は1以上のディザインクまたはオーバーラッピングインクを含んでもよい。スクラッチオフ層は、相転移インクまたは固形インクを含んでもよい。
【0009】
指標成分およびノイズ成分は、複数のインク塗布されない基材領域を含んでもよい。スクラッチオフ層は、情報層に隣接する実質的透明層と、実質的透明層上の実質的不透明層とを含有してもよい。実質的透明層の一部はインク塗布されない基材領域の少なくとも一部と接触してもよい。スクラッチオフ書類は赤外線セキュリティ成分を含んでもよい。
【0010】
方法の実施の形態は、基材上に情報層を印刷することを含んでもよく、この印刷は指標成分を印刷することとノイズ成分を印刷することを包含してもよい。ノイズ成分を印刷することおよび指標成分を印刷することは、複数の堆積高さを印刷することを包含してもよく、指標成分はノイズ成分と組み合わせることで光学的に可視可能である。スクラッチオフ層を印刷して、指標成分がスクラッチオフ層を通して認識できないようにしてもよい。
【0011】
情報層を印刷することは静電複写印刷を含んでもよい。また別の実施の形態では、情報層の印刷は網版印刷を含んでもよい。実施の形態では、指標成分を印刷することは、複数の指標堆積高さを印刷することを含んでもよい。
【0012】
実施の形態は、相転移インクを用いたスクラッチオフ層の印刷を含んでもよい。スクラッチオフ層を印刷することは、情報層に隣接する実質的透明層と、実質的透明層上の実質的不透明層とを印刷すること含有してもよい。情報層の印刷は、複数のインク塗布されない基材領域を生じ得る。スクラッチオフ層を印刷することは、情報層に隣接する実質的透明層と、実質的透明層上の実質的不透明層とを印刷することを含有してもよく、実質的透明層の一部は複数のインク塗布されない基材領域の少なくとも一部と接触する。
【0013】
実施の形態は、基材上に情報層を静電複写印刷することを含んでもよく、網版指標成分を静電複写印刷することと、網版ノイズ成分を静電複写印刷することを含む。指標成分を印刷するとともにノイズ成分を印刷することは、複数の堆積高さを印刷すること、および指標成分がノイズ成分と組み合わせることで光学的に可視可能であるように印刷することを含み得る。実施の形態は、相転移インクを用いて除去可能なスクラッチオフ層を印刷して、指標成分が除去可能なスクラッチオフ層下では認識できないようにすることを含んでもよい。
【0014】
実施の形態は、1以上のディザインクまたはオーバーラッピングインクを用いてノイズ成分を印刷すること、指標成分を印刷することまたは両方を印刷することを含んでもよい。指標成分を印刷するとともにノイズ成分を印刷することは、複数のインク塗布されない基材領域を生じ得る。
【0015】
実施の形態は、スクラッチオフ層を印刷することを含んでもよい。スクラッチオフ層を印刷することは、情報層に隣接する実質的透明層と、実質的透明層上の実質的不透明層とを印刷すること含有してもよい。実質的透明層の印刷は、実質的透明層からのインクの一部を印刷して、インク塗布されない基材領域の少なくとも一部と接触するようにすることを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、先行技術のスクラッチオフ券の概略図である。
【図2】図2は、スクラッチオフ層のないスクラッチオフ券の実施の形態を示す。
【図3】図3は、スクラッチオフ層を有するスクラッチオフ券の実施の形態を示す。
【図4】図4は、網版印刷法を用いたスクラッチオフ書類の印刷法を示す図である。
【図5】図5は、スクラッチオフ券を印刷する方法の実施の形態のフローチャートを示す。
【図6A】図6Aは、スクラッチオフ券に使用されるIR読み取り可能な情報ミスリードセキュリティ成分の非限定的な実施の形態を示す。
【図6B】図6Bは、裏側IR吸収セキュリティ成分を有するスクラッチオフ券の非限定的な実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「含有する」という用語はここで使用されるように、「含んでいるがこれに限定されない」ことを意味することを意図する。
【0018】
先行技術のスクラッチオフ書類10の基本図を図1に示す。スクラッチオフ書類は基材12を含んでもよい。基材12の構造材は紙、ダンボール、プラスチックまたは他の材料であってもよい。基材12上には、隠す必要があるコンテスト、くじ、または他の昇級の結果または他の情報を示す1以上のメッセージまたは指標14が印刷される。除去可能なスクラッチオフ層16は指標14を隠すために設けられ、消費者または競技者(ここではまとめて「競技者」と呼ぶ)は除去可能なスクラッチオフ層16をスクラッチオフして指標14を暴露し隠された内容を確認する。
【0019】
除去可能なスクラッチオフ層16は、指標14がスクラッチオフ層16下で光学的に可視可能でないように、実質的に不透明でなければならない。しかし、それでも競技者は異なる色のインクにおける厚さ(ここでは、互換的に、「堆積高さ」や「水平高さ」と呼ぶ)の違いのために、除去可能なスクラッチオフ層16下の指標14を識別することができる場合がある。たとえば、ブラックインクは他の色より厚い場合がある。競技者はスクラッチオフ層16下の堆積高さの違いを観察できる場合があり、したがって、たとえば指標がブラックで印刷され背景18が他の色で印刷される場合には、指標14を識別することができる場合がある。指標14と背景18間の堆積高さの違いの結果を、図1に符号20として図示する。また、インク液滴の配列の違いはある地点でブラックと他の色との間のオーバーラップを増やし、縁を盛り上げるようになる場合があり、これは可視可能な堆積高さの違いとなり得る。
【0020】
さらに、指標14のインクとスクラッチオフ層16の材料間の接着性レベルが高いと、スクラッチオフ券10の機能に悪影響を及ぼし得る。除去可能なスクラッチオフ層16を競技者が完全に除去できない場合がある。競技者はスクラッチオフ層16を除去しようとしたときに指標14を傷つけ除去してしまう場合がある。
【0021】
ここで使用されるように、「インク」という用語は一般的に相転移インク、トナー、油性液体インク、水性液体インクおよび当業者に今後周知の如何なるインク材料をも包含する。「固形インク」および「相転移インク」という用語はここでは互換的に使用され、ワックス状のブロックとして始まり、インクジェット噴出時には一時的に融解状態にあり、その後シートまたは基材上で再固化するインクを言う。「スクラッチオフ書類」および「スクラッチオフ券」という用語はここでは互換的に使用される。
【0022】
ここで使用されるように、「印刷」、「プリンタ」および「印刷手段」という用語および表現は、直接インク印刷およびオフセット印刷を含むことを意味する。さらに、直接インク印刷は、直接固形インク/相転移インク印刷(ここでインクは本来固体状態であり印刷時に融解するものである)、油性および/または水性インクを用いた直接インクジェット印刷、および当業者に今後周知の如何なる他の直接印刷法をも包含する。実施の形態では、ここでの印刷は静電複写印刷技術または静電複写法を含んでもよく、これはインクを印刷基材に転写するのに静電気の力を利用するものである。実施の形態において、静電複写技術は、これに限定されないが電子写真法があってもよく、これは乾燥トナーを印刷媒体として使用するものである。相転移インクはインクジェット噴出時には一時的に融解状態にあり、紙または他の印刷可能な基材上で再固化し得るものである。
【0023】
オフセット印刷手段もここでは実施の形態に含まれる。オフセット印刷手段はインクまたはトナーをドラム、ベルトまたは他の基材に塗布し、次に紙または被印刷材料に転写するものである。オフセット印刷手段は電子写真、レーザ、発光ダイオード(LED)、オフセット固形インク、オフセットインクジェット、オフセットリトグラフ印刷および当業者に今後周知の如何なる他のオフセット印刷法をも包含する。いずれの印刷手段の組み合わせもここでの実施の形態の範囲内にあるものと認識される。
【0024】
本開示の非限定的な実施の形態のスクラッチオフ層のないスクラッチオフ書類の断面を図2に示す。スクラッチオフ書類は、紙、ダンボール、または他の好適な材料の基材32を含んでもよい。基材32は表側34および裏側36を有してもよい。情報層38は表側34上に含まれてもよい。情報層38は指標成分40を含んでもよく、これは複数のインク塗布領域42と複数の非印刷領域44を含んでもよい。競技者が指標成分40を直接見る場合には、指標成分40は先行技術の指標と同様に認識可能なメッセージを表す(たとえば、図1の指標14参照)。
【0025】
さらにノイズ成分46を含ませることができる。ノイズ成分46は、1以上のディザインク(dithered ink)48またはオーバーラッピングインク50を含んでもよい。指標成分40は、1以上のディザインクまたはオーバーラッピングインクを含んでもよい。指標成分40およびノイズ成分46は、1以上のディザインクまたはオーバーラッピングインクを含んでもよい。ノイズ成分46は背景情報、たとえば背景の色、パターン、デザイン等を含有してもよい。図2に示される実施の形態では、指標成分40は基材32に隣接し、ノイズ成分46は指標成分40の上にある。指標成分40はノイズ成分46の上にあってもよく、ノイズ成分46が基材32に隣接してもよい。指標成分40はノイズ成分46内に埋め込まれてもよく、各成分の要素が基材32に隣接するようにしてもよい。指標成分40およびノイズ成分46が両方とも情報層38内に含まれる場合に情報層38の指標成分40が光学的に可視可能であるならば、指標成分40およびノイズ成分46のいずれの構成もここでは含まれる。
【0026】
図2において、ノイズ成分46および指標成分40におけるインクのクロスハッチング描写は異なるインクの色、たとえば、これに限定されないがシアン、マゼンタおよびイエローを表し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック(CMYK)印刷法である。異なる色のインクをノイズ成分46に使用してもよい。異なる色のインクを指標成分40に使用してもよい。異なる色のインクを指標成分40とノイズ成分46の両方に使用してもよい。また、これに限定されないが、指標成分40を印刷するのに使用され得るブラックインクが比較的厚いことを表すように、指標成分40のインク塗布領域42をインク48,50より厚く図示している。指標成分40用およびノイズ成分46用の全ての色およびインクの組み合わせがここでの実施の形態に含まれ、当業者に今後公知となるプリンタ色空間用インクが含まれる。
【0027】
情報層38の印刷後、基材32のインク塗布されない基材領域52が存在してもよい。インク塗布されない基材領域52は、ノイズ成分46のインクでも指標成分40のインクでも覆われない領域である。
【0028】
ノイズ成分46と指標成分40を合わせた堆積高さは、複数の堆積高さを含み得る。ノイズ成分46と指標成分40を合わせた複数の堆積高さは、たとえば図1における符号20の先行技術に図示されるように人が情報層38上に印刷されるスクラッチオフ層(図示せず)を通して指標成分40を検出するのを防ぐことができる。指標成分40は、ノイズ成分46と組み合わせたときに明瞭な色と陰として可視可能となり得る。
【0029】
ここで図3を参照すると、スクラッチオフ券60は情報層38上にスクラッチオフ層62を含んでもよく、情報層38の指標成分40はスクラッチオフ層62を通して認識することができない。本実施の形態では、実質的不透明成分64と実質的透明成分66とを含有するスクラッチオフ層62を有してもよい。実質的透明成分66は任意であってもよい。「実質的透明」という表現を用いて、ここでは指標成分40が可視可能で実質的透明成分66を通してこれを競技者が解釈でき又は読み取れることを表す。実質的透明成分66は、これに限定されないが、1以上のイエローインク、マゼンタインクまたは透明インクを含んでもよい。
【0030】
スクラッチオフ層62は、基材32に離れて位置する領域68に印刷される画像、メッセージ、写真、デザインまたは他のマーキング(ここではまとめて「画像」と呼ぶ)を含んでもよい。スクラッチオフ層62上のメッセージは、これに限定されないが、たとえば「ここをスクラッチ」といったことを含んでもよい。画像は、色、凹凸領域または模様の違いの1以上に基づいて可視可能であってもよい。
【0031】
スクラッチオフ層62の実質的透明成分66は、情報層38を印刷した後に表れ得る指標成分40の非印刷領域44に対応するインク塗布されない基材領域52にある程度接触してもよく、これにより実質的透明成分66とインク塗布されない基材領域52との間をある程度の接着力をもって接触させることができる。実質的透明成分66は、競技者がスクラッチオフ層62をスクラッチしたときに全部が除去されなくてもよい。接着した実質的透明成分66は、指標成分40がスクラッチ作業時に傷つけられるのを防ぐことができる。
【0032】
スクラッチオフ層62が固形インクを含む場合には、スクラッチオフ層で使用される固形インク層が厚いほど、スクラッチオフ層62で使用される固形インク層が薄いよりも、スクラッチオフが容易でスクラッチに必要な力が少なくてよい。競技者はスクラッチオフ層62全部を除去する必要はない。スクラッチオフ層62が実質的不透明成分64と実質的透明成分66を含む場合には、実質的不透明成分64はスクラッチ時に少なくとも大部分が除去されればよく、実質的透明成分66は部分的に残ってもよい。実質的透明成分66を有するスクラッチオフ層62は、スクラッチオフ層62の不完全な除去の際に指標成分40の可視性を改良することができる。
【0033】
基材32へのスクラッチオフ層62の実質的透明成分66の接着を、情報層38を印刷した後に存在するインク塗布されない基材領域52の総面積を制御することによって制御してもよい。インク塗布されない基材領域52の総面積を増やすことで、基材32へのスクラッチオフ層62の実質的透明成分66の接着性を増加させてもよい。場合によっては、スクラッチオフ層62の実質的透明成分66を、基材材料にさほど接着しないように配合してもよい。インク塗布されない領域52の総面積を増加させることで、基材32へのスクラッチオフ層62の実質的透明成分66の接着性を低減してもよく、接着性をインク塗布されない基材領域52の全面積を低減することによって増加させてもよい。当業者は過度の実験をしなくても、基材32へのスクラッチオフ層62の実質的透明成分66の所望の接着程度に必要なインク塗布されない基材領域52の総面積を決定することができる。
【0034】
スクラッチオフ層62は相転移インクとも呼ばれる固形インクを含んでもよく、情報層38は静電複写トナーを含んでもよい。情報層38は静電複写トナー、固形インク、油性液体インク、水性液体インクまたは当業者に今後公知となる如何なるインク材料の1以上を含んでもよい。
【0035】
指標成分40は網版印刷またはハーフトーン印刷で形成されてもよい。ノイズ成分46は網版印刷を含んでもよい。ある実施の形態は、複数の指標堆積高さ(図示せず)をさらに有する指標成分40を含んでもよい。ノイズ成分46は、指標成分40の非印刷領域44の少なくとも一部を覆ってもよい。
【0036】
スクラッチオフ券60に使用されるインクの着色剤に依存して、赤外(IR)光を用いることによってスクラッチオフ層62を通して指標成分40を見ることができる場合がある。たとえば、ブラック静電複写トナーを用いて指標成分40を印刷してもよく、ブラックの固形インクをスクラッチオフ層62として使用してもよい。ブラックの固形インクは着色剤として染料を用いることができ、トナーは着色剤としてカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは固形インク内の染料より良好にIR線を吸収することができ、カーボンブラック含有トナーを用いた指標成分40を、染料を含みカーボンブラックを含まないスクラッチオフ層62を通してIR光で検出することができる。実施の形態は、スクラッチオフ層を通して赤外光で識別することができるセキュリティ成分(図示せず)を含んでもよい。セキュリティ成分はIR光によって検出され、スクラッチオフ層62を除去する前にIR光を用いて指標成分40を見ようとする人を混乱させることを目的とする偽情報を含有してもよい。場合によっては、IR吸収材料をスクラッチオフ券の裏側36上に配置して、指標成分40によるIR吸収が検出されないか、または裏側36上のIR吸収材料の吸収によって「ぐちゃぐちゃになる(drowned out)」ようにしてもよい。あるいは、カーボンブラックまたは他のIR吸収材料を含有するインクをスクラッチオフ層62に用いてもよい。
【0037】
ここで図4を参照すると、スクラッチオフ券を印刷する非限定的な実施の形態は、網版印刷70を含んでもよい。先行技術で理解されるように、網版印刷とは同様の又は各種大きさのドットまたは他のパターン要素を用いることによって、連続階調画像に見せる印刷技術のことである。実施の形態は白黒または階調網版印刷を含んでもよい。別の実施の形態はカラー網版印刷を含んでもよい。カラー網版印刷では、異なる色およびドットサイズを用いてもよい。上述のように、これに限定することを意味するものではないが、実施の形態では、原色としてのシアン、マゼンタおよびイエロープラスブラックを用いた4色CMYK法における異なる色のインクを含んでもよい。図4に図示されるように、網版印刷70の実施の形態は、第1の背景色72を印刷し、第2の背景色74を印刷し、第3の背景色76を印刷することを含んでもよい。指標78は別の色で印刷されことができる。顕微鏡で見れば、得られた印刷は符号80で図示されるように見える。しかし、ある距離では競技者は符号82で図示されるように単色として背景色72、74、76を見ることができる。指標78は背景色72、74、76とは異なる色で印刷されることができるので、競技者は背景色72、74、76に関して指標78を見ることができる。競技者は背景色72、74、76を1以上の顕微鏡的に視覚化される色を含むデザインまたは写真等として視覚化することができ、競技者は指標78と、背景色72、74、76に関する指標78の色とを視覚的に認識することもできる。
【0038】
背景色72、74、76は、指標78のインクと共同で複数の堆積高さを提供し得る。複数の堆積高さは、背景色72、74、76のインクおよび指標78のインクの上に塗布されたスクラッチオフ層をスクラッチオフする前に、競技者が指標78を認識するのを防ぐことができる。背景色72、74、76のインクおよび指標78のインクは、ディザさせてもオーバーラップさせてもよい。
【0039】
背景色72、74、76は上述のようにノイズ層と呼ばれてもよく、図2および3では符号46として図示される。背景またはノイズ72、74、76はたとえば、イエロー、マゼンタおよびレッドを用いて印刷されてもよく、指標78はシアン、グリーンまたはブルーの1以上で印刷されてもよい。
【0040】
図5にチャートで示される実施の形態では、スクラッチオフ書類を印刷する方法100は、基材上に情報層を印刷することを含んでもよく、情報層を印刷することは指標成分を印刷すること105とノイズ成分を印刷すること110を含む。指標成分は、ノイズ成分の印刷の前、後、それと同時、またはその間に印刷されてもよい。指標成分を印刷すること105は、複数の印刷領域および複数の非印刷領域を印刷することを含んでもよい。ノイズ成分を印刷すること110は、1以上のディザインクまたはオーバーラッピングインクを印刷することを含んでもよい。基材上に情報層を印刷することは、ノイズ成分印刷110と指標成分印刷105とを含み、ここで情報層(図2および3の符号38参照)と呼ばれるノイズ成分印刷110と指標成分印刷105の組み合わせは複数の堆積高さを含むようにすることができる。指標成分を印刷すること105およびノイズ成分を印刷すること110を実行して、指標成分とノイズ成分が印刷された後に、競技者が光学的に認識確認できる色または陰を指標成分が有するようにすることができる。
【0041】
指標成分を印刷すること105およびノイズ成分(ここでは背景とも呼ぶ)を印刷すること110は、静電複写印刷法または電子写真印刷法を含んでもよい。トナーまたは静電複写トナーを用いて指標成分印刷105および/またはノイズ成分印刷110を行ってもよい。一般的にトナーは、顔料およびプラスチックを含む静電気帯電パウダーを有することができる。電子写真法では、トナーは印刷可能な材料に、トナーと印刷可能な材料(紙または他の材料を含んでもよい)との間の帯電電位差によって引き寄せられる。紙に引き寄せられたトナー粒子を次に定着工程によって融解し、プラスチックおよび顔料が紙の繊維内に広がる。これは防汚印刷(smudge resistant print)となり、その全工程を互換的に静電複写または電子写真印刷法と呼んでもよい。
【0042】
指標成分印刷105およびノイズ成分印刷110は網版印刷を含んでもよい。指標成分印刷105、ノイズ成分印刷110後に、視覚的に認識可能な指標を達成でき、かつ指標成分とノイズ成分の組み合わせで複数の堆積高さを提供するならば、当業者に現在または今後公知となり得る如何なる印刷法もここでの実施の形態の範囲内である。
【0043】
実施の形態は、指標成分印刷105およびノイズ成分印刷110後に、実質的に透明なスクラッチオフ層を印刷すること115を任意に含んでもよい。任意の実質的透明なスクラッチオフ層を印刷すること115は、指標成分の印刷105およびノイズ成分の印刷110を行った後にインクがない領域であるインク塗布されない基材領域を印刷することを含んでもよい。これは上述したように、基材への任意の実質的透明なスクラッチオフ層の接着程度を調節する方法を提供し得る(図3の符号52参照)。
【0044】
別の実施の形態は、実質的に不透明なスクラッチオフ層を印刷すること120を含み、実質的に不透明なスクラッチオフ層を通して指標成分を見ることができないようにしてもよい。不透明なスクラッチオフ層は、指標成分とノイズ成分を組み合わせた複数の堆積高さと共同で、競技者が実質的に不透明なスクラッチオフ層をスクラッチするまでは通常の競技者には指標成分を認識できないようにする。
【0045】
実施の形態では、良心的でない競技者が赤外線(IR)装置を用いて実質的に不透明なスクラッチオフ層を通して指標成分を確認しようとする場合があり、任意のステップは赤外線セキュリティ成分を印刷することを含んでもよい。セキュリティ成分は、これに限定されないが、IR放射線で可視可能な又は読み取り可能な1以上のミスリード情報、指標成分内のIR吸収材料を「ぐちゃぐちゃにする」ためにIR吸収材料を用いて印刷された裏側、IR吸収材料を用いて印刷されたスクラッチオフ層、およびIR吸収材料を含まないインクを用いて印刷された指標成分を含んでもよい。
【0046】
図6Aは、スクラッチオフ券150に使用されるIR読み取り可能なミスリード情報セキュリティ成分の非限定的な実施の形態を図示する。IR読み取り可能なミスリード情報155はスクラッチオフ領域160内の基材32の表側34に印刷されてもよい。IR読み取り可能なミスリード情報155は勝ちの指標165を隠す目的で重要な情報または勝ちの指標165から離して印刷されてもよい。
【0047】
図6Bは、裏側IR吸収セキュリティ成分を有するスクラッチオフ券170の非限定的な実施の形態を図示する。裏側IR吸収セキュリティ成分を有するスクラッチオフ券170は、表側34と裏側36を有する基材32を含んでもよい。表側は勝ちまたは負けの指標または他の重要な情報(図示せず)を含むことができるスクラッチオフ領域160を有してもよく、この情報はIR吸収インクを含んでいる。IR吸収材料175は、基材32の裏側36上に印刷されてもよい。図6Bに示さない実施の形態では、IR吸収材料175は表側34のスクラッチオフ領域160に対応する裏側36の領域上にのみ印刷されてもよい。別の実施の形態(図示せず)では、指標(図示せず)のインク内のIR吸収材料からの如何なるサインをもIR吸収材料が効果的にカモフラージュし又は「ぐちゃぐちゃにする」ように、このIR吸収材料は基材裏側に少なくとも部分的に印刷されてもよい。また別の実施の形態(図示せず)では、IR吸収材料は基材表側のスクラッチオフ層上に印刷されてもよい。
【0048】
実施の形態は、基材上に情報層を静電複写印刷することを含んでもよく、網版指標成分を静電複写印刷し、網版ノイズ成分を静電複写印刷することを含んでもよい。ノイズ成分を印刷することは、1以上のディザインクまたはオーバーラッピングインクを印刷することを含んでもよい。指標成分を印刷するとともにノイズ成分を印刷することは、複数の堆積高さを印刷することを含み、指標成分がノイズ成分と組み合わすことで光学的に可視可能である実施の形態を含み得る。実施の形態は除去可能なスクラッチオフ層を印刷する固形インクを含んでもよく、指標成分は除去可能なスクラッチオフ層下にあって認識できない。
【0049】
指標成分を印刷するとともにノイズ成分を印刷することは、複数のインク塗布されない基材領域を生じ得る。スクラッチオフ層の印刷は、情報層に隣接する実質的透明層と実質的透明層上の実質的不透明層とを印刷することを含んでもよい。実質的透明層をなすインクの一部は、複数のインク塗布されない基材領域と接触して印刷されてもよい。
【0050】
上記で開示した各種およびその他の特徴および機能、またはその変更は、多くの他の異なるシステムまたは用途に適宜組み合わせてもよいことは明らかである。また現時点では意外で予期されないその各種代替、変更、バリエーションまたは改良も、当業者によって順次実現されることができ、このことも特許請求の範囲に包含されることを意図するものである。
【符号の説明】
【0051】
32 基材、34 表側、36 裏側、38 情報層、40 指標成分、46 ノイズ成分、48 ディザインク、50 オーバーラッピングインク、52 インク塗布されない基材領域、60,150,170 スクラッチオフ券、62 スクラッチオフ層、64 実質的不透明成分、66 実質的透明成分、70 網版印刷。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側および裏側を有する基材と、
表側上の情報層であって、指標成分とノイズ成分を含み、ノイズ成分は指標成分と共同で複数の堆積高さを有し、指標成分はノイズ成分と組み合わせた場合に可視可能である、情報層と、
情報層上のスクラッチオフ層であって、指標成分がスクラッチオフ層を通して認識することができない、スクラッチオフ層と、
を備えるスクラッチオフ書類。
【請求項2】
請求項1に記載のスクラッチオフ書類であって、
情報層はトナーまたは網版印刷を含み、ノイズ成分は1以上のディザインクまたはオーバーラッピングインクを含み、かつ、スクラッチオフ層は相転移インクを含むことを特徴とするスクラッチオフ書類。
【請求項3】
請求項1に記載のスクラッチオフ書類であって、
スクラッチオフ層は、情報層に隣接する実質的透明層と、実質的透明層上の実質的不透明層とを有することを特徴とするスクラッチオフ書類。
【請求項4】
請求項1に記載のスクラッチオフ書類であって、
情報層は複数のインク塗布されない基材領域を含み、スクラッチオフ層は情報層に隣接する実質的透明層と実質的透明層上の実質的不透明層とを有し、実質的透明層の一部は複数のインク塗布されない基材領域の少なくとも一部と接触することを特徴とするスクラッチオフ書類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2009−255574(P2009−255574A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96944(P2009−96944)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】