スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物
【課題】偽造防止性をより向上せしめ、たとえ当落等を表す個別情報を隠蔽しているスクラッチ隠蔽層をスクラッチオフし、故意にその個別情報を切取って改ざんたとしても、即座にその真偽判定ができるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の提供にある。
【解決手段】紙を主体とした基材シート１０上にスクラッチ隠蔽層３４を介して個別情報１２が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物１において、基材シートの表面に金属光沢層１６を介してエンボス加工による万線状凸部パターン群３０と細紋パターン等でなる下地印刷層１４が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物１である。
【解決手段】紙を主体とした基材シート１０上にスクラッチ隠蔽層３４を介して個別情報１２が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物１において、基材シートの表面に金属光沢層１６を介してエンボス加工による万線状凸部パターン群３０と細紋パターン等でなる下地印刷層１４が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物１である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スクラッチ式のインスタント籤券で代表されるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物に関するものであり、さらに詳細には、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、当落等を表す個別情報を確認するもので、その個別情報が貼り替えなどにより改ざんされたりしないような偽造防止策が施されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えば、インスタント籤券やゲーム用のカードなどにおいて、「当たり」、「外れ」あるいは等級、それらに該当する絵柄や記号などの個別情報を隠蔽するために、隠蔽性とスクラッチオフ性（引っ掻き落とし易さ性）を有するインキによりその個別情報を隠蔽し、購入した顧客あるいは販売所等がそのスクラッチ隠蔽層をコインや爪等でスクラッチオフしてこの個別情報を視認あるいは機械で読み取るスクラッチ隠蔽層付印刷物が知られ、種々の分野で利用されている。
【０００３】
上記のスクラッチ隠蔽層付印刷物として、例えば、図８の積層断面図に示すように、用紙などでなる基材シート（１０）の上に細線パターンなどでなる下地印刷層（１４）を介して絵柄、文字、数字などの個別情報（１２）が印刷されていて、その個別情報（１２）を覆うように透明な剥離ニスなどによる透明易剥離層（３２）が形成され、その透明易剥離層（３２）の上にアルミニウム粉末等を含むスクラッチ隠蔽層（３４）が施されているもので、さらにこのスクラッチ隠蔽層（３４）を保護する透明保護層（１７）が施されているスクラッチ隠蔽層付印刷物（２）がある。
【０００４】
上記のスクラッチ隠蔽層付印刷物（２）を購入した顧客あるいは販売した販売所等がコインや爪、あるいは専用のスクラッチ剥離装置等でスクラッチ隠蔽層（３４）をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）して、「当たり」、「外れ」や１等、２等など、あるいはそれに該当する絵柄、記号などの個別情報（１２）を透明易剥離層（３２）を介して目視で、あるいは個別情報（１２）がバーコードや暗証記号等視認では内容が判らないものの場合などでは専用のＯＣＲ（光学式文字記号読取り装置）による読取りで認識できるようになっている。
【０００５】
しかしながら、上記従来のスクラッチ隠蔽層付印刷物の技術においては、コインや爪で偽造防止策が施されたスクラッチ隠蔽層（３４）をスクラッチオフし、例えば、図９（ａ）に示すように、３個の印刷枠（４０）内に個別情報（１２）として、それぞれ「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選するスクラッチ隠蔽層（図示せず）が施されている抽せん付印刷物（３）の場合、図９（ｂ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である抽せん付印刷物（３）の右端の印刷枠（１９）内の「２」を含めて切り取り、これに図９（ｃ）に示すような個別情報（１２）が「３」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である抽せん付印刷物（３）の左端の印刷枠（１９）内の「３」を含めて切り取って、図９（ｂ）に示す外れ券である抽せん付印刷物（３）の右端の印刷枠（１９）内に貼り合せ、図９（ａ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選する当選券である抽せん付印刷物（３）に改ざんするという問題が多く発生するものであった。
【０００６】
このような改ざんによる偽造を防止するための１策として、例えば、図１０（ａ）に示すように、個別情報（１２）としてそれぞれ「１」、「２」、「３」が印刷されている３個の印刷枠（１９）内で、その個別情報（１２）の下にランダムパターンでなる細紋パタ
ーン（１３）が印刷されている偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）としたものである。
【０００７】
この可変情報印刷物（４）を改ざんしようとすると、３個の印刷枠（１９）内に個別情報（１２）としてそれぞれ「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選する偽造防止策が施された可変情報印刷物（３）の場合、図１０（ｂ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）の右端の印刷枠（１９）内の「２」とその周囲の細紋パターン（１３）を含めて切り取り、これに図１０（ｃ）に示すような個別情報（１２）が「３」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）の左端の印刷枠（４０）内の「３」とその周囲の細紋パターン（１３）を含めて切り取って、図１０（ｂ）に示す外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）の右端の印刷枠（１９）内に貼り合せ、図１０（ａ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「３」が順番に並ぶ当選券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）となるが、図１０（ａ）に示す当選券であるはずの偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）をよく観察すると、右端の印刷枠（１９）内にある図１０（ｃ）の左端から切り取られ、貼り合わせた「３」でなる個別情報（１２）の周囲の細紋パターン（１３）とその外側の貼り合わされた細紋パターン（１３）に連続性がなく途切れているものであり、このような不連続性の細紋パターン（１３）により偽造と判定される偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）となるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、上記印刷枠（１９）内に細紋パターン（１３）が施された偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）においても、単純な細紋パターンの場合では、同一または極類似の細紋パターン（１３）が施された個別情報（１２）を切取り貼り替えることによって、細紋パターン（１３）の連続性のあるものとすることが可能であり、さらにまた、図示しないが細紋パターンが施されている印刷枠ごと切取って貼り替えるといった改ざんの危惧があり、完全な偽造防止策とはならないという問題点があった。
【０００９】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、スクラッチ式のインスタント籤券で代表されるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、偽造防止性をより向上せしめ、たとえ当落等を表す可変の個別情報を隠蔽しているスクラッチ隠蔽層をスクラッチオフし、故意にその個別情報を切取って改ざんたとしても、即座にその真偽判定ができる偽造防止策が施されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項１の発明では、紙を主体とした基材シートの片面に当落等を表す可変の個別情報が施され、該個別情報がスクラッチ隠蔽層で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、前記基材シートの片面上にエンボス加工による万線状のエンボスパターンが施されていることを特徴とするスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１１】
また、請求項２の発明では、前記万線状のエンボスパターン上で個別情報の下に細紋パターン等でなる下地印刷層が施されていることを特徴とする請求項１に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１２】
また、請求項３の発明では、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部でなることを
特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１３】
また、請求項４の発明では、前記基材シートの万線状凸部パターン群が施されている面に金属光沢層が施されていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１４】
また、請求項５の発明では、前記万線状凸部パターン群上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項１乃至４のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１５】
また、請求項６の発明では、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群でなる潜像部と、該潜像部の領域外で潜像部のパターンと同一のピッチを有し、該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターン群でなる背景部とで一画像が形成されている、もしくは前記一画像に加え、この一画像と略同一のピッチを有し、複数の、万線状凸部パターン群でなる潜像部と該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターンでなる背景部とで他の画像が形成され、前記一画像に対し複数の他の画像が各々角度をずらして合成され、該合成された各画像の背景部を形成する各万線状凸部の一つ置きの間にある他の画像の万線状凸部が除去されていることを特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１６】
さらにまた、請求項７の発明では、前記万線状凸部パターン群でなる潜像部と背景部とで構成される一画像上に、もしくは前記一画像と該一画像に合成されている複数の他の画像上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項６に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【発明の効果】
【００１７】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【００１８】
即ち、上記請求項１に係る発明によれば、紙を主体とした基材シートの片面に当落等を表す可変の個別情報が施され、該個別情報がスクラッチ隠蔽層で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、前記基材シートの片面上にエンボス加工による万線状のエンボスパターンが施されていることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、見る角度を変化させると基材シート片面上に施されているエンボス加工による万線状のエンボスパターンが見えるようになる、偽造防止性を向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００１９】
また、上記請求項２に係る発明によれば、万線状のエンボスパターン上で個別情報の下に細紋パターン等でなる下地印刷層が施されていることによって、万線状のエンボスパターンと合わされて、改ざん等による偽造防止性をより向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２０】
また、上記請求項３に係る発明によれば、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部が施されていることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、見る角度を変化させると基材シート上に施されている万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部の濃淡や輝きが動的に変化する所謂「オパール効果」を有する、偽造防止性とデザイン性を
も向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２１】
また、上記請求項４に係る発明によれば、前記基材シートの万線状凸部パターン群が施されている面に金属光沢層が施されていることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、見る角度を変化させると基材シート上に施されている万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部が金属光沢層によって反射され、その濃淡や輝きがより動的に変化する所謂より優れた「オパール効果」を有するようになり、偽造防止性とともにデザイン性をもより向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２２】
上記でいう「オパール効果」とは、表面に、特に金属光沢を有すする表面に微細な万線状凸部パターン群を各画素ごとに万線の方向を少しづつ変えて複数群形成した（オパール）画像を、見る角度や方向を変化させると、各万線状凸部パターン群の濃淡や輝きが動的に変化し、オパールのような極めて華麗な光沢を現出する効果をいう。
【００２３】
また、上記請求項５に係る発明によれば、前記万線状凸部パターン群上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることによって、インクジェット方式による可変の個別情報の印字が飛び散ったりせずに鮮明になり、さらに上記エンボスによる万線状凸部パターン群でなる表面の凹凸を埋めて平滑にするので、感熱転写リボン方式による可変の個別情報の印字が鮮明になりかつ接着力のあるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２４】
さらにまた、上記スクラッチ隠蔽層を通常の方法、すなわちコイン等でスクラッチオフしてもエンボスによる万線状凸部パターン群が崩れたり、消えたりすることがないスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることもできる。
【００２５】
また、上記請求項６に係る発明によれば、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群でなる潜像部と、該潜像部の領域外で潜像部のパターンと同一のピッチを有し、該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターン群でなる背景部とで一画像が形成されている、もしくは前記一画像に加え、この一画像と略同一のピッチを有し、複数の、万線状凸部パターン群でなる潜像部と該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターンでなる背景部とで他の画像が形成され、前記一画像に対し複数の他の画像が各々角度をずらして合成され、該合成された各画像の背景部を形成する各万線状凸部の一つ置きの間にある他の画像の万線状凸部が除去されているものとすることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、斜め上からの視点を変えると各画像の潜像部が浮き上がって見えるようになり、セキュリティ性（偽造防止性）とデザイン性を向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることすることができる。
【００２６】
また、上記請求項７に係る発明によれば、前記万線状凸部パターン群でなる潜像部と背景部とで構成される一画像上に、もしくは前記一画像と該一画像に合成されている複数の他の画像上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることによって、インクジェット方式による可変の個別情報の印字が飛び散ったりせずに鮮明になり、さらに上記エンボスによる万線状凸部パターン群でなる潜像部および背景部の凹凸を埋めて平滑にするので、感熱転写リボン方式による可変の個別情報の印字が鮮明になりかつ接着力のあるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２７】
さらにまた、上記スクラッチ隠蔽層を通常の方法、すなわちコイン等でスクラッチオフしてもエンボスによる万線状凸部パターン群でなる潜像部および背景部が崩れたり、消え
たりすることがないスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２８】
従って上記本発明は、スクラッチ式のインスタント籤券で代表されるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物として、特に、上記のようなエンボスパターンが施されていることによって、当落等を表す可変の個別情報を故意に切取り貼り替えるといった改ざんでは、貼り替えた部分のエンボスパターンとその周囲のエンボスパターンが異なるか否かで即座に真偽判定が可能なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を提供できる優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２９】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【００３０】
図１は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例を表す説明図であり、図２、３は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例を構成する万線状凸部パターン群の説明図である。また、図４、５は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の他の事例を構成する万線状凸部パターン群の説明図であり、図６は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を用いて改ざんした際の一事例を説明する図であり、図７は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例を構成する金属光沢層の製造に係わる説明図である。
【００３１】
上記本発明は、例えば、図１（ａ）および図１（ｂ）の側断面図に示すように、基材シート（１０）上に、当落等を表す個別情報（１２）が施されていて、この個別情報（１２）を覆うように透明易剥離層（３２）を介してスクラッチ隠蔽層（３４）が形成されているインスタント籤券などのスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）で、特に、この個別情報（１２）の下に、偽造防止策としてエンボス加工によるエンボスパターン（１１）が施されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）に関するものである。
【００３２】
上記偽造防止策として、図１（ａ）および図１（ｂ）に示すように、当落等を表す個別情報（１２）の下で、基材（１０）の表面に万線状の凸部パターン群でなるエンボスパターン（１１）が施こされていて、見る角度などを変えることによってこのエンボスパターン（１１）が鮮明に視認される所謂オパール効果のある、あるいはこのエンボスパターンが浮かび上がって幾つかの画像として視認されるようになる所謂潜像パターンの顕像化技術を応用したものである。
【００３３】
以下に、本発明をさらに詳しく説明すると、上記請求項１に係る発明は、例えば、図１（ａ）および（ｂ）に示すように、紙を主体とした基材シート（１０）上に当落等を表す可変の個別情報（１２）が施され、この個別情報（１２）が透明易剥離層（３２）を介してスクラッチ隠蔽層（３４）で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）であって、その特徴とするところは、この基材シート上にエンボス加工による万線状のエンボスパターン（１１）が施されているもので、このスクラッチ隠蔽層（３４）をコイン等でスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報（１２）を確認（当落等の確認）するとともに、見る角度を変化させると基材シート（１０）上に施されているエンボス加工による万線状のエンボスパターン（１１）が見えるようになる、偽造防止性を向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）である。
【００３４】
また、上記請求項２に係る発明は、例えば、図１（ａ）および（ｂ）に示すように、万線状のエンボスパターン（１１）上で、かつ可変の個別情報（１２）の下に細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）である。
【００３５】
また、上記請求項３、及び４に係る発明は、図１（ａ）および（ｂ）に示す万線状のエンボスパターン（１１）が、例えば、図２の模式的な斜視図及び図３の側断面図に示すように、紙を主体とした基材シート（１０）上にアルミニウム箔等の金属光沢層（１６）が施され、その面に、加熱エンボス加工による微細な万線状凸部パターン群（３０）が３画素集合したエンボスパターンが施されているものである。
【００３６】
このように、基材シート（１０）上に金属光沢層（１６）が施され、その面に加熱エンボス加工で微細な万線状凸部パターン群（３０）が３画素集合してなるエンボスパターンが施されているいることによって、図３に示すスクラッチ隠蔽層（３４）を透明易剥離層（３２）面からスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報（１２）を視認（当落等の確認など）するとともに、上方からの見る角度を変化させると基材シート（１０）上の金属光沢層（１６）上に施されている万線状凸部パターン群（３０）が複数集合してなる微細な凹凸部の濃淡や輝きが動的に変化する所謂「オパール効果」を有するスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができ、よって、優れた偽造防止性とデザイン性をも向上させたものとすることができる。
【００３７】
上記万線状凸部パターン群（３０）は１画素のみでもよいが、図２に示すように複数（３）画素が集合したものとすることによって、見る角度や方向の変化で動きや立体性が現出するようなオパール画像とすることができ、より優れた偽造防止性とデザイン性を向上させたものとすることができる。
【００３８】
上記万線状凸部パターン群（３０）の万線は、図２に示すように直線状で構成されているが、この直線状の他、特に図示しないが波形状、破線状あるいは円形状、楕円形状などとすることもでき、その形状に応じた動的な変化を有する「オパール効果」が得られるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることもできる。
【００３９】
上記オパール効果を現出する加熱エンボス加工による万線状凸部パターン群（３０）としては、例えば、図２に示すように、その高度差（Ｈ）が０．００３〜０．１ｍｍ程度の範囲で、そのピッチ（Ｐ）が０．００５〜０．３ｍｍ程度の微細な凹凸部とすることが好ましく、このような範囲の高度差（Ｈ）とそのピッチ（Ｐ）とすることによって、表面の金属光沢層（１５）に濃淡の鮮明さ（シャープ性）や輝きに優れるようになり、見る方向や角度を変化させると、所謂「オパール効果」に優れた極めて美麗なエンボスパターンを有するスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００４０】
また、上記金属光沢層（１５）としては、例えば、厚み１０μｍ程度のアルミニウム箔を基材シート（１０）にラミネートする方法、あるいはアルミニウム蒸着層を施す方法があり、さらには、例えば、図７の側断面図に示すように、厚み１２μｍ程度のポリエチレンテレフタレートフィルム（４１）に剥離層（４２）、保護層（４３）、アルミニウム蒸着層（４４）、接着層（４５）が順に積層されている金属蒸着転写箔（４０）を用い、剥離層（４２）から保護層（４３）付のアルミニウム蒸着層（４４）を接着層（４５）で接着させて転写して設けることもできる。
【００４１】
このように、金属光沢層（１５）をアルミニウム蒸着層（４４）の転写によって得られるので、必要な部分にのみ部分転写が可能になり、より経済的でかつデザイン上でも好適な金属光沢層（１５）を得ることができる。
【００４２】
さらにまた、上記請求項５に係る発明では、例えば、図３に示すように、可変の個別情報（１２）下で、かつ細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）を介して万線状凸部パターン群（３０）上に、可変情報印字受理層（１５）が施されているスクラッチ隠蔽層付可
変情報印刷物（１）とするものである。
【００４３】
また、特に図示しないが上記可変情報印字受理層（１５）と細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）との積層順を逆にしても構わない。
【００４４】
このように、可変の個別情報（１２）下に可変情報印字受理層（１５）を施すことによって、例えば、インクジェットによる可変の個別情報（１２）の印字が飛び散ったりせずに鮮明になり、さらにエンボスパターンの凹凸を埋めて平滑にするので、感熱転写リボンによる可変の個別情報（１２）の印字が鮮明になり、かつ接着（結着）力に優れたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００４５】
かつまた、スクラッチ隠蔽層（３４）を通常の方法、すなわちコイン等でスクラッチオフしてもエンボスによる万線状凸部パターン群が崩れたり、消えたりすることのないスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００４６】
上記可変情報印字受理層（１５）としては、基材シート（１０）の表面状態や印字の方法によっても異なるが、例えば、基材シート（１０）の表面がアルミニウム蒸着膜でなる金属光沢層（１５）で、印字方法がインクジェットの場合、一般的にはポリアセタール樹脂を主体とした透明インキをグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式で得ることができるが、さらにアルミニウム蒸着膜等インキの吸収性に劣るものに対し、インキの受容性をより高めるため、例えば、特開２０００−１０８４９８号公報に開示されているもので、ダイアセトン（メタ）アクリルアミドを必須モノマー成分として含むアクリル共重合体とカルボン酸ジヒドラドからなる組成物をコーティング後、加熱硬化させた可変情報印字受理層（１５）を得ることができる。
【００４７】
また、印字方法が感熱転写リボン方式の場合では、基材シート（１０）の表面がエンボスパターンで凹凸形状になっていることを調整するとともに、熱溶融型の感熱転写インキの定着を良好にするため、通常、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂等の接着性の良好な樹脂の溶液を基材シート（１０）の表面に塗布および乾燥して形成させ、通常２〜５μｍ程度の厚みの可変情報印字受理層（１５）を得ることができる。
【００４８】
また、上記請求項６に係る発明は、例えば、図１（ａ）および図１（ｂ）に示すように、紙を主体とした基材シート（１０）の表面に当落等を表す可変の個別情報（１２）が施され、この個別情報（１２）が易剥離層（３２）を介してスクラッチ隠蔽層（３４）で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）において、基材シート（１０）の表面のエンボス加工による万線状のエンボスパターン（１１）が施されていて、その万線状のエンボスパターン（１１）は、例えば、図４（ａ）に示すように、文字「凸」のパターンの領域内は、横（水平）方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ａ）でなる潜像部（２０）とし、この潜像部（２０）以外の領域は、縦（垂直）方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ｂ）でなる背景部（２２）とで一画像としたもので、この万線状のエンボスパターン（１１）を手前斜め上（視点Ａ）から観察すると、図４（ｂ）に示すように、潜像部（２０）である「凸」の文字が背景部（２２）上に顕像化され浮かび上がって見えるようになる。また、このエンボスパターン（１１）を後方斜め上（視点Ｂ）から観察すると、図４（ｃ）に示すように、潜像部（２０）である「凸」の上下逆文字が、背景部（２２）上に顕像化され浮かび上がって見えるようになるものであり、さらに図４（ｄ）および図４（ｅ）に示すように、右側斜め上（視点Ｃ）および左側斜め上（視点Ｄ）から観察すると潜像部（２０）である「凸」の文字が背景部（２２）上に白く（ネガ状に）顕像化され浮かび上がって見えるようにもなるものであり、偽造が困難なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物をえることができる。
【００４９】
さらにまた、上記請求項６に係る発明では、図４（ａ）に示す潜像部（２０）とこの潜像部（２０）に対し垂直方向に延びる背景部（２２）とでなるエンボスパターン（１１）を一画像のみとしたのに対し、複数の画像を合成した事例として、例えば、図５（ａ）に示すように、万線状凸部パターン群でなる潜像部（図示せず）を有する複数の画像（本事例では２つの画像）が合成されているエンボスパターン（１１）であり、この万線状凸部パターン群でなる潜像部を有するエンボスパターン（１１）を手前斜め上（視点Ａ）から観察（斜視）すると、図５（ｂ）に示すように、一画像の潜像部である「Ｔ」の字が顕像化され浮かび上がって見えるようになり、左側４５°斜め上（視点Ｅ）から観察（斜視）すると、図５（ｃ）に示すように、他の画像の潜像部である「Ｐ」の字が顕像化され浮かび上がって見えるようになるものである。なお図５（ｂ）に示す視点Ａの反対側、すなわち後方斜め上（視点Ｂ）から斜視すると、図５（ｄ）に示すように、「Ｔ」の上下逆文字が顕像化され浮かび上がって見え、さらに図５（ｃ）に示す視点Ｅの反対側、すなわち後方右側４５°斜め上（視点Ｆ）から観察（斜視）すると、図５（ｅ）に示すように、他の画像の潜像パターンである「Ｐ」の上下逆文字が顕像化され浮かび上がって見えるようになる複数（事例では２つ）の潜像部を有するエンボスパターン（１１）とし、偽造が至極困難なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を得ることができる。
【００５０】
以上のように、潜像部と背景部とでなる一画像、もしくはこの一画像と複数の画像が合成されてなるエンボスパターン（１１）とすることによって、図１（ａ）および図１（ｂ）に示すような、スクラッチ隠蔽層（３４）をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報（１２）を視認（当落等の確認など）するとともに、斜め上からの視点の角度を変えると各画像の潜像部が浮き上がって見えるようになり、セキュリティ性（偽造防止性）とデザイン性をより向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることすることができる。
【００５１】
また、上記請求項７に係る発明は、例えば、図１（ａ）に示すように、可変の個別情報（１２）下で、かつ細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）を介して図４（ａ）に示すような横方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ａ）でなる潜像部（２０）と縦方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ｂ）でなる背景部（２２）とで構成されるエンボスパターン（１１）上に、可変情報印字受理層（１５）が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）である。
【００５２】
上記可変情報印字受理層（１５）は、例えば図１（ｂ）に示すように、細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）の下に、すなわちこの細紋パターン等を可変情報印字受理層（１５）上に設けても構わない。
【００５３】
このように、可変の個別情報（１２）下に可変情報印字受理層（１５）を施すことによって、例えば、インクジェットによる可変の個別情報（１２）の印字が飛び散ったりせずに鮮明にり、また、エンボスパターン（１１）上の表面を平滑にするので感熱転写リボンによる可変の個別情報（１２）の印字が鮮明になり、かつ接着（結着）力に優れるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００５４】
上記可変情報印字受理層（１５）としては、前述の請求項５に係る発明のものと同一でよいが、印字方法がインクジェットの場合で、基材シート（１０）が紙でなる場合では、一般的なポリアセタール樹脂を主体とした透明インキによるもので十分である。
【００５５】
以下に、例えば、図６（ａ）とその一部の拡大部に示すような個別情報（１２）が印字されている３個の印刷枠（１９）内で、その個別情報（１２）の下に細紋パターン（図示せず）を介してエンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を切取り改ざんした場合の説明をする。
【００５６】
例えば、図６（ａ）とその一部の拡大部分に示すように、３個の印刷枠（１９）内に個別情報（１２）として、それぞれ「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選するスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の場合、図６（ｂ）
に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の右端の印刷枠（１９）内の「２」とその周囲の細紋パターン（図示せず）とエンボスパターン（図示せず）を含めて切り取り、これに図６（ｃ）に示すような個別情報（１２）が「３」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の左端の印刷枠（１９）内の「３」とその周囲の細紋パターン（図示せず）とエンボスパターン（図示せず）を含めて切り取って、図６（ｂ）に示す外れ券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の右端の印刷枠（１９）内に貼り合せると、図６（ａ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「３」が順番に並ぶ当選券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）となるが、図６（ａ）に示す当選券であるはずのスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の拡大部分をよく観察すると、右端の印刷枠（１９）内にある図６（ｃ）の左端から切り取られ、貼り合わせた「３」でなる個別情報（１２）の周囲の細紋パターン（図示せず）とその外側の貼り合わされた細紋パターン（図示せず）とに連続性がなく、またエンボスパターン（１１ａ）とその外側の貼り合わされたエンボスパターン（１１ｂ）に連続性がなく途切れているものであり、このような不連続性の細紋パターン（図示せず）とエンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）により偽造と判定される偽造防止性の高いスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００５７】
さらに、例えば、エンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）面にアルミニウム蒸着膜などでなる金属光沢層（図示せず）が施されている場合、図６（ａ）の右端の拡大された印刷枠（１９）内に貼り合わされた「３」でなる個別情報（１２）の切取り痕にカッター痕（１８）となって視認されるようになるので、切り貼りによる改ざんが容易に判定できるという効果をも有するものとなる。
【００５８】
以上のようなエンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）と下地印刷層を形成する細紋パターン（図示せず）とが施されていて、数字（０〜９）：１０個、印刷枠数：３個、印刷面付数：２０の設計で印刷（印字を含む）されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を想定すると、細紋パターンが２０通り、エンボスパターンが２０通り、印刷枠３個が１０×１０×１０通り、すなわち２０×２０×１，０００＝４００，０００通りの貼り合わせたものと貼り合わされたものの組み合わせができ、よって、同一数字でエンボスパターンと細紋パターンが同一となる可能性が１／４００，０００となり、貼り合わせによる偽造券のパターンが一致する確率が極めて低くなるようになる。
【００５９】
よって、本発明は、基材シートの表面に万線状のエンボスパターンを施すことによって、より優れた偽造防止策が施されたものとし、特に、当落等を表す個別情報を切取り貼り替えるといった改ざんが殆ど不可能なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を提供するものである。
【００６０】
以下に、上述した金属光沢層（１６）、可変の個別情報（１２）の印字、及び可変情報印字受理層（１５）以外の本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を構成する材料やその製造等について説明する。
【００６１】
まず、上記万線状のエンボスパターン（１１）の製造は、例えば、平板タイプのエンボス版を上下動せしめて加圧して得られるが、その加圧は、基材シート（１０）の種類等によって、０．５ＭＰａ〜４００ＭＰａの範囲内で選定され、この時にある程度の加熱をしても構わない。また、このエンボスパターン版をシリンダー状にして、生産性を上げるこ
ともできる。
【００６２】
上記平板タイプのエンボス版は、例えば、証券印刷に用いられる凹版の製版方法、即ち手または機械彫刻腐食法により平面の銅板に万線状のエンボスパターン（１１）を形成して銅板原版とし、その銅板原版をもとに電胎法にて銅板実用版（実用エンボス版）とすることができる。
【００６３】
また、上記スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を構成する透明易剥離層（３２）としては、一般的な有機溶剤を溶媒としたインキと、環境に配慮された水性のインキによるものがあり、前者の有機溶剤を溶媒とした透明易剥離層（３２）用のインキとしては、炭化水素系（脂肪族、芳香族）、アルコール系、エステル系、ケトン系などの乾燥性や樹脂溶解力に対応した有機溶剤を溶媒とし、これに硝化綿撓のセルロース誘導体、ポリアマイド樹脂、ロジン誘導体、アクリル樹脂、塩化ゴム、ポリエステル等と補助剤とを溶解したビヒクルに、上記のシリコンやワックス（例えばポリエチレンワックス）を滑剤として添加した剥離ニスが挙げられ、この剥離ニスを用いてグラビア印刷やスクリーン印刷で透明易剥離層（３２）を形成することができる。
【００６４】
また、後者の環境保全に貢献する透明易剥離層（３２）用の水性インキとしては、例えば、ポリエレタン系樹脂や、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂をバインダーとし、これら樹脂のエマルジョンに５重量％程度のシリコンやワックスを滑剤とし、さらにチタン白、タルク等体質顔料を分散させたものが挙げられ、グラビア印刷やスクリーン印刷あるいはフレキソ印刷法で厚み５〜１０μｍ程度の透明易剥離層（３２）とすることもできる。
【００６５】
また、この透明易剥離層（３２）上に設けられるスクラッチ隠蔽層（３４）としては、上記透明易剥離層（３２）と同様に一般的な有機溶剤を溶媒としたインキと、環境に配慮された水性のインキによるものがあり、前者の有機溶剤を溶媒としたインキとしては、例えば隠蔽性を付与するアルミニウム粉１５〜２５重量部、アルミナ白等体質顔料を含めた着色顔料１５〜２５重量部、凝集破壊（団塊）性のあるＳＢＲ、ＮＢＲ等合成ゴム系樹脂１５〜２５重量部、これらにトルエンやキシレン、メチルイソブチルケトン等芳香族炭化水素系溶剤３５〜４５重量部と消泡剤等助剤５〜１５重量部を加えてスクリーン印刷用インキやグラビア印刷用インキあるいはアニロックスロールを介してインキを転移するフレキソ印刷用インキとしたもので、このスクラッチインキを用いてスクリーン印刷法やグラビア印刷法あるいはアニロックスロールを介して印刷するフレキソ印刷法で厚さ５〜１０μｍに形成されるものである。
【００６６】
また、後者の環境保全に貢献するスクラッチ隠蔽層（３４）の水性インキとしては、金属ペースト、合成樹脂、助剤とを水と少々の低級アルコールに分散せしめたエマルジョンインキで形成されるもので、その金属ペーストの金属としては、銅と亜鉛の合金であるブロンズパウダーを用いる場合もあるが、コスト等からアルミニウムパウダーが一般的であり、このアルミニウムを微粉末化して、脂肪酸等で表面を処理したものを沸点の高い炭化水素溶剤（ミネラルスピリットなど）でペースト状にしたアルミニウムペーストが用いられ、これにチタン白等体質顔料を含めてインキ全体の２０〜３０重量％とする。
【００６７】
また、このインキのバインダーとなる合成樹脂としては、例えばポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られるポリウレタン系樹脂や、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂などが挙げられ、これら樹脂のエマルジョンをインキ全体の２５〜５０重量％でなるバインダーとして上記のアルミニウムペースト、着色顔料などに、１０〜３５重量％の水と５重量％未満のイソプロピルアルコールを加えて攪拌して水性のエマルジョンインキとして印刷されるものである。これに消泡剤や界面活性剤、防腐剤等
助剤を数％添加するのが一般的である。
【００６８】
上記スクラッチ隠蔽層（３４）の形成は、上記の水性エマルジョンインキを用いて、グラビア印刷法、スクリーン印刷法あるいはアニロックスローラーを介して印刷するフレキソ印刷法などが部分（パート）印刷に好適な方法として適用され、厚さ５〜１０μｍ程度のスクラッチ隠蔽層（３４）とすることができる。
【００６９】
また、スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の最表面に透明保護層（図示せず）を形成するのが一般的で、その透明保護層としては、例えば、アクリル、ポリエステル樹脂を主体とし、これにシリコンやワックス（エチレンワックスなど）を１〜５重量％混合された塗布液を用いたものでよく、さらに着色顔料を含まないオフセット用ＵＶインキ、あるいはグラビア用ＵＶインキを用いたものとすることもできる。
【００７０】
以上のような構成のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物は、偽造（貼替えによる改ざん等）を不可能にし、かつオパール効果などによるデザイン性をも付与したもので、優れた実用上の効果を発揮するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【００７１】
【図１】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一実施の形態を説明するもので、（ａ）は、その一事例を示す側断面図であり、（ｂ）は、他の一事例を示す側断面図である。
【図２】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成するエンボスパターンの一事例を模式的に表した斜視図である。
【図３】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例でそれを構成するエンボスパターンの一事例を備えた側断面図である。
【図４】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成するエンボスパターンの他の一事例を説明するもので、（ａ）は、その上面図であり、（ｂ）は、（ａ）を視点Ａから観察される画像であり、（ｃ）は、（ａ）を視点Ｂから観察される画像であり、（ｄ）は、（ａ）を視点Ｃから観察される画像であり、（ｅ）は、（ａ）を視点Ｄから観察される画像である。
【図５】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成するエンボスパターンの潜像部の一事例を説明するもので、（ａ）は、その上面図であり、（ｂ）は、（ａ）を視点Ａから観察される画像であり、（ｃ）は、（ａ）を視点Ｅから観察される画像であり、（ｄ）は、（ａ）を視点Ｂから観察される画像であり、（ｅ）は、（ａ）を視点Ｆから観察される画像である。
【図６】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の１事例を説明するもので、（ａ）は、改ざんされた印刷物の正面図であり、（ｂ）は、改ざんされる印刷物の正面図であり、（ｃ）は、改ざんに使用する印刷物の正面図である。
【図７】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成する金属光沢層の作製方法の一事例を説明する側断面図である。
【図８】従来のスクラッチ隠蔽層付印刷物の１事例を側断面で表した説明図である。
【図９】従来の抽せん付印刷物の１事例を説明するもので、（ａ）は、改ざんされた印刷物の正面図であり、（ｂ）は、改ざんされる印刷物の正面図であり、（ｃ）は、改ざんに使用する印刷物の正面図である。
【図１０】従来の偽造防止策が施された可変情報印刷物の１事例を説明するもので、（ａ）は、改ざんされた印刷物の正面図であり、（ｂ）は、改ざんされる印刷物の正面図であり、（ｃ）は、改ざんに使用する印刷物の正面図である。
【符号の説明】
【００７２】
１‥‥スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物
２‥‥従来のスクラッチ隠蔽層付印刷物
３‥‥従来の抽せん付印刷物
４‥‥従来の偽造防止策が施された可変情報印刷物
１０‥‥基材シート
１１‥‥エンボスパターン
１１ａ‥‥貼り替える個別情報周囲のエンボスパターン
１１ｂ‥‥貼り替えられる部分のエンボスパターン
１２‥‥個別情報
１３‥‥細紋パターン
１４‥‥下地印刷層
１５‥‥可変情報印字受理層
１６‥‥金属光沢層
１７‥‥透明保護層
１８‥‥カッター痕
１９‥‥印刷枠
３０‥‥万線状凸部パターン群
３０ａ‥‥横方向に延びる万線状凸部パターン群
３０ｂ‥‥縦方向に延びる万線状凸部パターン群
３２‥‥透明易剥離層
３４‥‥スクラッチ隠蔽層
４０‥‥金属蒸着転写箔
４１‥‥ポリエチレンテレフタレート
４２‥‥易剥離層
４３‥‥保護層
Ｈ‥‥オパール効果を有する万線状凸部パターン群の高度差
Ｐ‥‥オパール効果を有する万線状凸部パターン群のピッチ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スクラッチ式のインスタント籤券で代表されるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物に関するものであり、さらに詳細には、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、当落等を表す個別情報を確認するもので、その個別情報が貼り替えなどにより改ざんされたりしないような偽造防止策が施されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えば、インスタント籤券やゲーム用のカードなどにおいて、「当たり」、「外れ」あるいは等級、それらに該当する絵柄や記号などの個別情報を隠蔽するために、隠蔽性とスクラッチオフ性（引っ掻き落とし易さ性）を有するインキによりその個別情報を隠蔽し、購入した顧客あるいは販売所等がそのスクラッチ隠蔽層をコインや爪等でスクラッチオフしてこの個別情報を視認あるいは機械で読み取るスクラッチ隠蔽層付印刷物が知られ、種々の分野で利用されている。
【０００３】
上記のスクラッチ隠蔽層付印刷物として、例えば、図８の積層断面図に示すように、用紙などでなる基材シート（１０）の上に細線パターンなどでなる下地印刷層（１４）を介して絵柄、文字、数字などの個別情報（１２）が印刷されていて、その個別情報（１２）を覆うように透明な剥離ニスなどによる透明易剥離層（３２）が形成され、その透明易剥離層（３２）の上にアルミニウム粉末等を含むスクラッチ隠蔽層（３４）が施されているもので、さらにこのスクラッチ隠蔽層（３４）を保護する透明保護層（１７）が施されているスクラッチ隠蔽層付印刷物（２）がある。
【０００４】
上記のスクラッチ隠蔽層付印刷物（２）を購入した顧客あるいは販売した販売所等がコインや爪、あるいは専用のスクラッチ剥離装置等でスクラッチ隠蔽層（３４）をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）して、「当たり」、「外れ」や１等、２等など、あるいはそれに該当する絵柄、記号などの個別情報（１２）を透明易剥離層（３２）を介して目視で、あるいは個別情報（１２）がバーコードや暗証記号等視認では内容が判らないものの場合などでは専用のＯＣＲ（光学式文字記号読取り装置）による読取りで認識できるようになっている。
【０００５】
しかしながら、上記従来のスクラッチ隠蔽層付印刷物の技術においては、コインや爪で偽造防止策が施されたスクラッチ隠蔽層（３４）をスクラッチオフし、例えば、図９（ａ）に示すように、３個の印刷枠（４０）内に個別情報（１２）として、それぞれ「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選するスクラッチ隠蔽層（図示せず）が施されている抽せん付印刷物（３）の場合、図９（ｂ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である抽せん付印刷物（３）の右端の印刷枠（１９）内の「２」を含めて切り取り、これに図９（ｃ）に示すような個別情報（１２）が「３」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である抽せん付印刷物（３）の左端の印刷枠（１９）内の「３」を含めて切り取って、図９（ｂ）に示す外れ券である抽せん付印刷物（３）の右端の印刷枠（１９）内に貼り合せ、図９（ａ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選する当選券である抽せん付印刷物（３）に改ざんするという問題が多く発生するものであった。
【０００６】
このような改ざんによる偽造を防止するための１策として、例えば、図１０（ａ）に示すように、個別情報（１２）としてそれぞれ「１」、「２」、「３」が印刷されている３個の印刷枠（１９）内で、その個別情報（１２）の下にランダムパターンでなる細紋パタ
ーン（１３）が印刷されている偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）としたものである。
【０００７】
この可変情報印刷物（４）を改ざんしようとすると、３個の印刷枠（１９）内に個別情報（１２）としてそれぞれ「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選する偽造防止策が施された可変情報印刷物（３）の場合、図１０（ｂ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）の右端の印刷枠（１９）内の「２」とその周囲の細紋パターン（１３）を含めて切り取り、これに図１０（ｃ）に示すような個別情報（１２）が「３」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）の左端の印刷枠（４０）内の「３」とその周囲の細紋パターン（１３）を含めて切り取って、図１０（ｂ）に示す外れ券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）の右端の印刷枠（１９）内に貼り合せ、図１０（ａ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「３」が順番に並ぶ当選券である偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）となるが、図１０（ａ）に示す当選券であるはずの偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）をよく観察すると、右端の印刷枠（１９）内にある図１０（ｃ）の左端から切り取られ、貼り合わせた「３」でなる個別情報（１２）の周囲の細紋パターン（１３）とその外側の貼り合わされた細紋パターン（１３）に連続性がなく途切れているものであり、このような不連続性の細紋パターン（１３）により偽造と判定される偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）となるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、上記印刷枠（１９）内に細紋パターン（１３）が施された偽造防止策が施された可変情報印刷物（４）においても、単純な細紋パターンの場合では、同一または極類似の細紋パターン（１３）が施された個別情報（１２）を切取り貼り替えることによって、細紋パターン（１３）の連続性のあるものとすることが可能であり、さらにまた、図示しないが細紋パターンが施されている印刷枠ごと切取って貼り替えるといった改ざんの危惧があり、完全な偽造防止策とはならないという問題点があった。
【０００９】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、スクラッチ式のインスタント籤券で代表されるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、偽造防止性をより向上せしめ、たとえ当落等を表す可変の個別情報を隠蔽しているスクラッチ隠蔽層をスクラッチオフし、故意にその個別情報を切取って改ざんたとしても、即座にその真偽判定ができる偽造防止策が施されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項１の発明では、紙を主体とした基材シートの片面に当落等を表す可変の個別情報が施され、該個別情報がスクラッチ隠蔽層で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、前記基材シートの片面上にエンボス加工による万線状のエンボスパターンが施されていることを特徴とするスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１１】
また、請求項２の発明では、前記万線状のエンボスパターン上で個別情報の下に細紋パターン等でなる下地印刷層が施されていることを特徴とする請求項１に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１２】
また、請求項３の発明では、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部でなることを
特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１３】
また、請求項４の発明では、前記基材シートの万線状凸部パターン群が施されている面に金属光沢層が施されていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１４】
また、請求項５の発明では、前記万線状凸部パターン群上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項１乃至４のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１５】
また、請求項６の発明では、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群でなる潜像部と、該潜像部の領域外で潜像部のパターンと同一のピッチを有し、該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターン群でなる背景部とで一画像が形成されている、もしくは前記一画像に加え、この一画像と略同一のピッチを有し、複数の、万線状凸部パターン群でなる潜像部と該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターンでなる背景部とで他の画像が形成され、前記一画像に対し複数の他の画像が各々角度をずらして合成され、該合成された各画像の背景部を形成する各万線状凸部の一つ置きの間にある他の画像の万線状凸部が除去されていることを特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【００１６】
さらにまた、請求項７の発明では、前記万線状凸部パターン群でなる潜像部と背景部とで構成される一画像上に、もしくは前記一画像と該一画像に合成されている複数の他の画像上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項６に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物としたものである。
【発明の効果】
【００１７】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【００１８】
即ち、上記請求項１に係る発明によれば、紙を主体とした基材シートの片面に当落等を表す可変の個別情報が施され、該個別情報がスクラッチ隠蔽層で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、前記基材シートの片面上にエンボス加工による万線状のエンボスパターンが施されていることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、見る角度を変化させると基材シート片面上に施されているエンボス加工による万線状のエンボスパターンが見えるようになる、偽造防止性を向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００１９】
また、上記請求項２に係る発明によれば、万線状のエンボスパターン上で個別情報の下に細紋パターン等でなる下地印刷層が施されていることによって、万線状のエンボスパターンと合わされて、改ざん等による偽造防止性をより向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２０】
また、上記請求項３に係る発明によれば、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部が施されていることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、見る角度を変化させると基材シート上に施されている万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部の濃淡や輝きが動的に変化する所謂「オパール効果」を有する、偽造防止性とデザイン性を
も向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２１】
また、上記請求項４に係る発明によれば、前記基材シートの万線状凸部パターン群が施されている面に金属光沢層が施されていることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、見る角度を変化させると基材シート上に施されている万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部が金属光沢層によって反射され、その濃淡や輝きがより動的に変化する所謂より優れた「オパール効果」を有するようになり、偽造防止性とともにデザイン性をもより向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２２】
上記でいう「オパール効果」とは、表面に、特に金属光沢を有すする表面に微細な万線状凸部パターン群を各画素ごとに万線の方向を少しづつ変えて複数群形成した（オパール）画像を、見る角度や方向を変化させると、各万線状凸部パターン群の濃淡や輝きが動的に変化し、オパールのような極めて華麗な光沢を現出する効果をいう。
【００２３】
また、上記請求項５に係る発明によれば、前記万線状凸部パターン群上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることによって、インクジェット方式による可変の個別情報の印字が飛び散ったりせずに鮮明になり、さらに上記エンボスによる万線状凸部パターン群でなる表面の凹凸を埋めて平滑にするので、感熱転写リボン方式による可変の個別情報の印字が鮮明になりかつ接着力のあるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２４】
さらにまた、上記スクラッチ隠蔽層を通常の方法、すなわちコイン等でスクラッチオフしてもエンボスによる万線状凸部パターン群が崩れたり、消えたりすることがないスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることもできる。
【００２５】
また、上記請求項６に係る発明によれば、前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群でなる潜像部と、該潜像部の領域外で潜像部のパターンと同一のピッチを有し、該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターン群でなる背景部とで一画像が形成されている、もしくは前記一画像に加え、この一画像と略同一のピッチを有し、複数の、万線状凸部パターン群でなる潜像部と該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターンでなる背景部とで他の画像が形成され、前記一画像に対し複数の他の画像が各々角度をずらして合成され、該合成された各画像の背景部を形成する各万線状凸部の一つ置きの間にある他の画像の万線状凸部が除去されているものとすることによって、スクラッチ隠蔽層をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報を視認（当落等の確認など）するとともに、斜め上からの視点を変えると各画像の潜像部が浮き上がって見えるようになり、セキュリティ性（偽造防止性）とデザイン性を向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることすることができる。
【００２６】
また、上記請求項７に係る発明によれば、前記万線状凸部パターン群でなる潜像部と背景部とで構成される一画像上に、もしくは前記一画像と該一画像に合成されている複数の他の画像上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることによって、インクジェット方式による可変の個別情報の印字が飛び散ったりせずに鮮明になり、さらに上記エンボスによる万線状凸部パターン群でなる潜像部および背景部の凹凸を埋めて平滑にするので、感熱転写リボン方式による可変の個別情報の印字が鮮明になりかつ接着力のあるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２７】
さらにまた、上記スクラッチ隠蔽層を通常の方法、すなわちコイン等でスクラッチオフしてもエンボスによる万線状凸部パターン群でなる潜像部および背景部が崩れたり、消え
たりすることがないスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることができる。
【００２８】
従って上記本発明は、スクラッチ式のインスタント籤券で代表されるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物として、特に、上記のようなエンボスパターンが施されていることによって、当落等を表す可変の個別情報を故意に切取り貼り替えるといった改ざんでは、貼り替えた部分のエンボスパターンとその周囲のエンボスパターンが異なるか否かで即座に真偽判定が可能なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を提供できる優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２９】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【００３０】
図１は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例を表す説明図であり、図２、３は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例を構成する万線状凸部パターン群の説明図である。また、図４、５は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の他の事例を構成する万線状凸部パターン群の説明図であり、図６は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を用いて改ざんした際の一事例を説明する図であり、図７は、本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例を構成する金属光沢層の製造に係わる説明図である。
【００３１】
上記本発明は、例えば、図１（ａ）および図１（ｂ）の側断面図に示すように、基材シート（１０）上に、当落等を表す個別情報（１２）が施されていて、この個別情報（１２）を覆うように透明易剥離層（３２）を介してスクラッチ隠蔽層（３４）が形成されているインスタント籤券などのスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）で、特に、この個別情報（１２）の下に、偽造防止策としてエンボス加工によるエンボスパターン（１１）が施されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）に関するものである。
【００３２】
上記偽造防止策として、図１（ａ）および図１（ｂ）に示すように、当落等を表す個別情報（１２）の下で、基材（１０）の表面に万線状の凸部パターン群でなるエンボスパターン（１１）が施こされていて、見る角度などを変えることによってこのエンボスパターン（１１）が鮮明に視認される所謂オパール効果のある、あるいはこのエンボスパターンが浮かび上がって幾つかの画像として視認されるようになる所謂潜像パターンの顕像化技術を応用したものである。
【００３３】
以下に、本発明をさらに詳しく説明すると、上記請求項１に係る発明は、例えば、図１（ａ）および（ｂ）に示すように、紙を主体とした基材シート（１０）上に当落等を表す可変の個別情報（１２）が施され、この個別情報（１２）が透明易剥離層（３２）を介してスクラッチ隠蔽層（３４）で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）であって、その特徴とするところは、この基材シート上にエンボス加工による万線状のエンボスパターン（１１）が施されているもので、このスクラッチ隠蔽層（３４）をコイン等でスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報（１２）を確認（当落等の確認）するとともに、見る角度を変化させると基材シート（１０）上に施されているエンボス加工による万線状のエンボスパターン（１１）が見えるようになる、偽造防止性を向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）である。
【００３４】
また、上記請求項２に係る発明は、例えば、図１（ａ）および（ｂ）に示すように、万線状のエンボスパターン（１１）上で、かつ可変の個別情報（１２）の下に細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）である。
【００３５】
また、上記請求項３、及び４に係る発明は、図１（ａ）および（ｂ）に示す万線状のエンボスパターン（１１）が、例えば、図２の模式的な斜視図及び図３の側断面図に示すように、紙を主体とした基材シート（１０）上にアルミニウム箔等の金属光沢層（１６）が施され、その面に、加熱エンボス加工による微細な万線状凸部パターン群（３０）が３画素集合したエンボスパターンが施されているものである。
【００３６】
このように、基材シート（１０）上に金属光沢層（１６）が施され、その面に加熱エンボス加工で微細な万線状凸部パターン群（３０）が３画素集合してなるエンボスパターンが施されているいることによって、図３に示すスクラッチ隠蔽層（３４）を透明易剥離層（３２）面からスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報（１２）を視認（当落等の確認など）するとともに、上方からの見る角度を変化させると基材シート（１０）上の金属光沢層（１６）上に施されている万線状凸部パターン群（３０）が複数集合してなる微細な凹凸部の濃淡や輝きが動的に変化する所謂「オパール効果」を有するスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができ、よって、優れた偽造防止性とデザイン性をも向上させたものとすることができる。
【００３７】
上記万線状凸部パターン群（３０）は１画素のみでもよいが、図２に示すように複数（３）画素が集合したものとすることによって、見る角度や方向の変化で動きや立体性が現出するようなオパール画像とすることができ、より優れた偽造防止性とデザイン性を向上させたものとすることができる。
【００３８】
上記万線状凸部パターン群（３０）の万線は、図２に示すように直線状で構成されているが、この直線状の他、特に図示しないが波形状、破線状あるいは円形状、楕円形状などとすることもでき、その形状に応じた動的な変化を有する「オパール効果」が得られるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物とすることもできる。
【００３９】
上記オパール効果を現出する加熱エンボス加工による万線状凸部パターン群（３０）としては、例えば、図２に示すように、その高度差（Ｈ）が０．００３〜０．１ｍｍ程度の範囲で、そのピッチ（Ｐ）が０．００５〜０．３ｍｍ程度の微細な凹凸部とすることが好ましく、このような範囲の高度差（Ｈ）とそのピッチ（Ｐ）とすることによって、表面の金属光沢層（１５）に濃淡の鮮明さ（シャープ性）や輝きに優れるようになり、見る方向や角度を変化させると、所謂「オパール効果」に優れた極めて美麗なエンボスパターンを有するスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００４０】
また、上記金属光沢層（１５）としては、例えば、厚み１０μｍ程度のアルミニウム箔を基材シート（１０）にラミネートする方法、あるいはアルミニウム蒸着層を施す方法があり、さらには、例えば、図７の側断面図に示すように、厚み１２μｍ程度のポリエチレンテレフタレートフィルム（４１）に剥離層（４２）、保護層（４３）、アルミニウム蒸着層（４４）、接着層（４５）が順に積層されている金属蒸着転写箔（４０）を用い、剥離層（４２）から保護層（４３）付のアルミニウム蒸着層（４４）を接着層（４５）で接着させて転写して設けることもできる。
【００４１】
このように、金属光沢層（１５）をアルミニウム蒸着層（４４）の転写によって得られるので、必要な部分にのみ部分転写が可能になり、より経済的でかつデザイン上でも好適な金属光沢層（１５）を得ることができる。
【００４２】
さらにまた、上記請求項５に係る発明では、例えば、図３に示すように、可変の個別情報（１２）下で、かつ細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）を介して万線状凸部パターン群（３０）上に、可変情報印字受理層（１５）が施されているスクラッチ隠蔽層付可
変情報印刷物（１）とするものである。
【００４３】
また、特に図示しないが上記可変情報印字受理層（１５）と細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）との積層順を逆にしても構わない。
【００４４】
このように、可変の個別情報（１２）下に可変情報印字受理層（１５）を施すことによって、例えば、インクジェットによる可変の個別情報（１２）の印字が飛び散ったりせずに鮮明になり、さらにエンボスパターンの凹凸を埋めて平滑にするので、感熱転写リボンによる可変の個別情報（１２）の印字が鮮明になり、かつ接着（結着）力に優れたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００４５】
かつまた、スクラッチ隠蔽層（３４）を通常の方法、すなわちコイン等でスクラッチオフしてもエンボスによる万線状凸部パターン群が崩れたり、消えたりすることのないスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００４６】
上記可変情報印字受理層（１５）としては、基材シート（１０）の表面状態や印字の方法によっても異なるが、例えば、基材シート（１０）の表面がアルミニウム蒸着膜でなる金属光沢層（１５）で、印字方法がインクジェットの場合、一般的にはポリアセタール樹脂を主体とした透明インキをグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式で得ることができるが、さらにアルミニウム蒸着膜等インキの吸収性に劣るものに対し、インキの受容性をより高めるため、例えば、特開２０００−１０８４９８号公報に開示されているもので、ダイアセトン（メタ）アクリルアミドを必須モノマー成分として含むアクリル共重合体とカルボン酸ジヒドラドからなる組成物をコーティング後、加熱硬化させた可変情報印字受理層（１５）を得ることができる。
【００４７】
また、印字方法が感熱転写リボン方式の場合では、基材シート（１０）の表面がエンボスパターンで凹凸形状になっていることを調整するとともに、熱溶融型の感熱転写インキの定着を良好にするため、通常、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂等の接着性の良好な樹脂の溶液を基材シート（１０）の表面に塗布および乾燥して形成させ、通常２〜５μｍ程度の厚みの可変情報印字受理層（１５）を得ることができる。
【００４８】
また、上記請求項６に係る発明は、例えば、図１（ａ）および図１（ｂ）に示すように、紙を主体とした基材シート（１０）の表面に当落等を表す可変の個別情報（１２）が施され、この個別情報（１２）が易剥離層（３２）を介してスクラッチ隠蔽層（３４）で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）において、基材シート（１０）の表面のエンボス加工による万線状のエンボスパターン（１１）が施されていて、その万線状のエンボスパターン（１１）は、例えば、図４（ａ）に示すように、文字「凸」のパターンの領域内は、横（水平）方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ａ）でなる潜像部（２０）とし、この潜像部（２０）以外の領域は、縦（垂直）方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ｂ）でなる背景部（２２）とで一画像としたもので、この万線状のエンボスパターン（１１）を手前斜め上（視点Ａ）から観察すると、図４（ｂ）に示すように、潜像部（２０）である「凸」の文字が背景部（２２）上に顕像化され浮かび上がって見えるようになる。また、このエンボスパターン（１１）を後方斜め上（視点Ｂ）から観察すると、図４（ｃ）に示すように、潜像部（２０）である「凸」の上下逆文字が、背景部（２２）上に顕像化され浮かび上がって見えるようになるものであり、さらに図４（ｄ）および図４（ｅ）に示すように、右側斜め上（視点Ｃ）および左側斜め上（視点Ｄ）から観察すると潜像部（２０）である「凸」の文字が背景部（２２）上に白く（ネガ状に）顕像化され浮かび上がって見えるようにもなるものであり、偽造が困難なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物をえることができる。
【００４９】
さらにまた、上記請求項６に係る発明では、図４（ａ）に示す潜像部（２０）とこの潜像部（２０）に対し垂直方向に延びる背景部（２２）とでなるエンボスパターン（１１）を一画像のみとしたのに対し、複数の画像を合成した事例として、例えば、図５（ａ）に示すように、万線状凸部パターン群でなる潜像部（図示せず）を有する複数の画像（本事例では２つの画像）が合成されているエンボスパターン（１１）であり、この万線状凸部パターン群でなる潜像部を有するエンボスパターン（１１）を手前斜め上（視点Ａ）から観察（斜視）すると、図５（ｂ）に示すように、一画像の潜像部である「Ｔ」の字が顕像化され浮かび上がって見えるようになり、左側４５°斜め上（視点Ｅ）から観察（斜視）すると、図５（ｃ）に示すように、他の画像の潜像部である「Ｐ」の字が顕像化され浮かび上がって見えるようになるものである。なお図５（ｂ）に示す視点Ａの反対側、すなわち後方斜め上（視点Ｂ）から斜視すると、図５（ｄ）に示すように、「Ｔ」の上下逆文字が顕像化され浮かび上がって見え、さらに図５（ｃ）に示す視点Ｅの反対側、すなわち後方右側４５°斜め上（視点Ｆ）から観察（斜視）すると、図５（ｅ）に示すように、他の画像の潜像パターンである「Ｐ」の上下逆文字が顕像化され浮かび上がって見えるようになる複数（事例では２つ）の潜像部を有するエンボスパターン（１１）とし、偽造が至極困難なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を得ることができる。
【００５０】
以上のように、潜像部と背景部とでなる一画像、もしくはこの一画像と複数の画像が合成されてなるエンボスパターン（１１）とすることによって、図１（ａ）および図１（ｂ）に示すような、スクラッチ隠蔽層（３４）をスクラッチオフ（引っ掻き落とすこと）し、可変の個別情報（１２）を視認（当落等の確認など）するとともに、斜め上からの視点の角度を変えると各画像の潜像部が浮き上がって見えるようになり、セキュリティ性（偽造防止性）とデザイン性をより向上させたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることすることができる。
【００５１】
また、上記請求項７に係る発明は、例えば、図１（ａ）に示すように、可変の個別情報（１２）下で、かつ細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）を介して図４（ａ）に示すような横方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ａ）でなる潜像部（２０）と縦方向に延びる万線状凸部パターン群（３０ｂ）でなる背景部（２２）とで構成されるエンボスパターン（１１）上に、可変情報印字受理層（１５）が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）である。
【００５２】
上記可変情報印字受理層（１５）は、例えば図１（ｂ）に示すように、細紋パターン等でなる下地印刷層（１４）の下に、すなわちこの細紋パターン等を可変情報印字受理層（１５）上に設けても構わない。
【００５３】
このように、可変の個別情報（１２）下に可変情報印字受理層（１５）を施すことによって、例えば、インクジェットによる可変の個別情報（１２）の印字が飛び散ったりせずに鮮明にり、また、エンボスパターン（１１）上の表面を平滑にするので感熱転写リボンによる可変の個別情報（１２）の印字が鮮明になり、かつ接着（結着）力に優れるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００５４】
上記可変情報印字受理層（１５）としては、前述の請求項５に係る発明のものと同一でよいが、印字方法がインクジェットの場合で、基材シート（１０）が紙でなる場合では、一般的なポリアセタール樹脂を主体とした透明インキによるもので十分である。
【００５５】
以下に、例えば、図６（ａ）とその一部の拡大部に示すような個別情報（１２）が印字されている３個の印刷枠（１９）内で、その個別情報（１２）の下に細紋パターン（図示せず）を介してエンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）が施されているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を切取り改ざんした場合の説明をする。
【００５６】
例えば、図６（ａ）とその一部の拡大部分に示すように、３個の印刷枠（１９）内に個別情報（１２）として、それぞれ「１」、「２」、「３」が順番に並ぶと当選するスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の場合、図６（ｂ）
に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の右端の印刷枠（１９）内の「２」とその周囲の細紋パターン（図示せず）とエンボスパターン（図示せず）を含めて切り取り、これに図６（ｃ）に示すような個別情報（１２）が「３」、「２」、「２」の順番に並ぶ外れ券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の左端の印刷枠（１９）内の「３」とその周囲の細紋パターン（図示せず）とエンボスパターン（図示せず）を含めて切り取って、図６（ｂ）に示す外れ券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の右端の印刷枠（１９）内に貼り合せると、図６（ａ）に示すような個別情報（１２）が「１」、「２」、「３」が順番に並ぶ当選券であるスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）となるが、図６（ａ）に示す当選券であるはずのスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の拡大部分をよく観察すると、右端の印刷枠（１９）内にある図６（ｃ）の左端から切り取られ、貼り合わせた「３」でなる個別情報（１２）の周囲の細紋パターン（図示せず）とその外側の貼り合わされた細紋パターン（図示せず）とに連続性がなく、またエンボスパターン（１１ａ）とその外側の貼り合わされたエンボスパターン（１１ｂ）に連続性がなく途切れているものであり、このような不連続性の細紋パターン（図示せず）とエンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）により偽造と判定される偽造防止性の高いスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）とすることができる。
【００５７】
さらに、例えば、エンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）面にアルミニウム蒸着膜などでなる金属光沢層（図示せず）が施されている場合、図６（ａ）の右端の拡大された印刷枠（１９）内に貼り合わされた「３」でなる個別情報（１２）の切取り痕にカッター痕（１８）となって視認されるようになるので、切り貼りによる改ざんが容易に判定できるという効果をも有するものとなる。
【００５８】
以上のようなエンボスパターン（１１ａ、１１ｂ）と下地印刷層を形成する細紋パターン（図示せず）とが施されていて、数字（０〜９）：１０個、印刷枠数：３個、印刷面付数：２０の設計で印刷（印字を含む）されたスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を想定すると、細紋パターンが２０通り、エンボスパターンが２０通り、印刷枠３個が１０×１０×１０通り、すなわち２０×２０×１，０００＝４００，０００通りの貼り合わせたものと貼り合わされたものの組み合わせができ、よって、同一数字でエンボスパターンと細紋パターンが同一となる可能性が１／４００，０００となり、貼り合わせによる偽造券のパターンが一致する確率が極めて低くなるようになる。
【００５９】
よって、本発明は、基材シートの表面に万線状のエンボスパターンを施すことによって、より優れた偽造防止策が施されたものとし、特に、当落等を表す個別情報を切取り貼り替えるといった改ざんが殆ど不可能なスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を提供するものである。
【００６０】
以下に、上述した金属光沢層（１６）、可変の個別情報（１２）の印字、及び可変情報印字受理層（１５）以外の本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を構成する材料やその製造等について説明する。
【００６１】
まず、上記万線状のエンボスパターン（１１）の製造は、例えば、平板タイプのエンボス版を上下動せしめて加圧して得られるが、その加圧は、基材シート（１０）の種類等によって、０．５ＭＰａ〜４００ＭＰａの範囲内で選定され、この時にある程度の加熱をしても構わない。また、このエンボスパターン版をシリンダー状にして、生産性を上げるこ
ともできる。
【００６２】
上記平板タイプのエンボス版は、例えば、証券印刷に用いられる凹版の製版方法、即ち手または機械彫刻腐食法により平面の銅板に万線状のエンボスパターン（１１）を形成して銅板原版とし、その銅板原版をもとに電胎法にて銅板実用版（実用エンボス版）とすることができる。
【００６３】
また、上記スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）を構成する透明易剥離層（３２）としては、一般的な有機溶剤を溶媒としたインキと、環境に配慮された水性のインキによるものがあり、前者の有機溶剤を溶媒とした透明易剥離層（３２）用のインキとしては、炭化水素系（脂肪族、芳香族）、アルコール系、エステル系、ケトン系などの乾燥性や樹脂溶解力に対応した有機溶剤を溶媒とし、これに硝化綿撓のセルロース誘導体、ポリアマイド樹脂、ロジン誘導体、アクリル樹脂、塩化ゴム、ポリエステル等と補助剤とを溶解したビヒクルに、上記のシリコンやワックス（例えばポリエチレンワックス）を滑剤として添加した剥離ニスが挙げられ、この剥離ニスを用いてグラビア印刷やスクリーン印刷で透明易剥離層（３２）を形成することができる。
【００６４】
また、後者の環境保全に貢献する透明易剥離層（３２）用の水性インキとしては、例えば、ポリエレタン系樹脂や、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂をバインダーとし、これら樹脂のエマルジョンに５重量％程度のシリコンやワックスを滑剤とし、さらにチタン白、タルク等体質顔料を分散させたものが挙げられ、グラビア印刷やスクリーン印刷あるいはフレキソ印刷法で厚み５〜１０μｍ程度の透明易剥離層（３２）とすることもできる。
【００６５】
また、この透明易剥離層（３２）上に設けられるスクラッチ隠蔽層（３４）としては、上記透明易剥離層（３２）と同様に一般的な有機溶剤を溶媒としたインキと、環境に配慮された水性のインキによるものがあり、前者の有機溶剤を溶媒としたインキとしては、例えば隠蔽性を付与するアルミニウム粉１５〜２５重量部、アルミナ白等体質顔料を含めた着色顔料１５〜２５重量部、凝集破壊（団塊）性のあるＳＢＲ、ＮＢＲ等合成ゴム系樹脂１５〜２５重量部、これらにトルエンやキシレン、メチルイソブチルケトン等芳香族炭化水素系溶剤３５〜４５重量部と消泡剤等助剤５〜１５重量部を加えてスクリーン印刷用インキやグラビア印刷用インキあるいはアニロックスロールを介してインキを転移するフレキソ印刷用インキとしたもので、このスクラッチインキを用いてスクリーン印刷法やグラビア印刷法あるいはアニロックスロールを介して印刷するフレキソ印刷法で厚さ５〜１０μｍに形成されるものである。
【００６６】
また、後者の環境保全に貢献するスクラッチ隠蔽層（３４）の水性インキとしては、金属ペースト、合成樹脂、助剤とを水と少々の低級アルコールに分散せしめたエマルジョンインキで形成されるもので、その金属ペーストの金属としては、銅と亜鉛の合金であるブロンズパウダーを用いる場合もあるが、コスト等からアルミニウムパウダーが一般的であり、このアルミニウムを微粉末化して、脂肪酸等で表面を処理したものを沸点の高い炭化水素溶剤（ミネラルスピリットなど）でペースト状にしたアルミニウムペーストが用いられ、これにチタン白等体質顔料を含めてインキ全体の２０〜３０重量％とする。
【００６７】
また、このインキのバインダーとなる合成樹脂としては、例えばポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られるポリウレタン系樹脂や、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂などが挙げられ、これら樹脂のエマルジョンをインキ全体の２５〜５０重量％でなるバインダーとして上記のアルミニウムペースト、着色顔料などに、１０〜３５重量％の水と５重量％未満のイソプロピルアルコールを加えて攪拌して水性のエマルジョンインキとして印刷されるものである。これに消泡剤や界面活性剤、防腐剤等
助剤を数％添加するのが一般的である。
【００６８】
上記スクラッチ隠蔽層（３４）の形成は、上記の水性エマルジョンインキを用いて、グラビア印刷法、スクリーン印刷法あるいはアニロックスローラーを介して印刷するフレキソ印刷法などが部分（パート）印刷に好適な方法として適用され、厚さ５〜１０μｍ程度のスクラッチ隠蔽層（３４）とすることができる。
【００６９】
また、スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物（１）の最表面に透明保護層（図示せず）を形成するのが一般的で、その透明保護層としては、例えば、アクリル、ポリエステル樹脂を主体とし、これにシリコンやワックス（エチレンワックスなど）を１〜５重量％混合された塗布液を用いたものでよく、さらに着色顔料を含まないオフセット用ＵＶインキ、あるいはグラビア用ＵＶインキを用いたものとすることもできる。
【００７０】
以上のような構成のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物は、偽造（貼替えによる改ざん等）を不可能にし、かつオパール効果などによるデザイン性をも付与したもので、優れた実用上の効果を発揮するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【００７１】
【図１】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一実施の形態を説明するもので、（ａ）は、その一事例を示す側断面図であり、（ｂ）は、他の一事例を示す側断面図である。
【図２】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成するエンボスパターンの一事例を模式的に表した斜視図である。
【図３】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の一事例でそれを構成するエンボスパターンの一事例を備えた側断面図である。
【図４】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成するエンボスパターンの他の一事例を説明するもので、（ａ）は、その上面図であり、（ｂ）は、（ａ）を視点Ａから観察される画像であり、（ｃ）は、（ａ）を視点Ｂから観察される画像であり、（ｄ）は、（ａ）を視点Ｃから観察される画像であり、（ｅ）は、（ａ）を視点Ｄから観察される画像である。
【図５】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成するエンボスパターンの潜像部の一事例を説明するもので、（ａ）は、その上面図であり、（ｂ）は、（ａ）を視点Ａから観察される画像であり、（ｃ）は、（ａ）を視点Ｅから観察される画像であり、（ｄ）は、（ａ）を視点Ｂから観察される画像であり、（ｅ）は、（ａ）を視点Ｆから観察される画像である。
【図６】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物の１事例を説明するもので、（ａ）は、改ざんされた印刷物の正面図であり、（ｂ）は、改ざんされる印刷物の正面図であり、（ｃ）は、改ざんに使用する印刷物の正面図である。
【図７】本発明のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物を構成する金属光沢層の作製方法の一事例を説明する側断面図である。
【図８】従来のスクラッチ隠蔽層付印刷物の１事例を側断面で表した説明図である。
【図９】従来の抽せん付印刷物の１事例を説明するもので、（ａ）は、改ざんされた印刷物の正面図であり、（ｂ）は、改ざんされる印刷物の正面図であり、（ｃ）は、改ざんに使用する印刷物の正面図である。
【図１０】従来の偽造防止策が施された可変情報印刷物の１事例を説明するもので、（ａ）は、改ざんされた印刷物の正面図であり、（ｂ）は、改ざんされる印刷物の正面図であり、（ｃ）は、改ざんに使用する印刷物の正面図である。
【符号の説明】
【００７２】
１‥‥スクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物
２‥‥従来のスクラッチ隠蔽層付印刷物
３‥‥従来の抽せん付印刷物
４‥‥従来の偽造防止策が施された可変情報印刷物
１０‥‥基材シート
１１‥‥エンボスパターン
１１ａ‥‥貼り替える個別情報周囲のエンボスパターン
１１ｂ‥‥貼り替えられる部分のエンボスパターン
１２‥‥個別情報
１３‥‥細紋パターン
１４‥‥下地印刷層
１５‥‥可変情報印字受理層
１６‥‥金属光沢層
１７‥‥透明保護層
１８‥‥カッター痕
１９‥‥印刷枠
３０‥‥万線状凸部パターン群
３０ａ‥‥横方向に延びる万線状凸部パターン群
３０ｂ‥‥縦方向に延びる万線状凸部パターン群
３２‥‥透明易剥離層
３４‥‥スクラッチ隠蔽層
４０‥‥金属蒸着転写箔
４１‥‥ポリエチレンテレフタレート
４２‥‥易剥離層
４３‥‥保護層
Ｈ‥‥オパール効果を有する万線状凸部パターン群の高度差
Ｐ‥‥オパール効果を有する万線状凸部パターン群のピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
紙を主体とした基材シートの片面に当落等を表す可変の個別情報が施され、該個別情報がスクラッチ隠蔽層で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、前記基材シートの片面上にエンボス加工による万線状のエンボスパターンが施されていることを特徴とするスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項２】
前記万線状のエンボスパターン上で個別情報の下に細紋パターン等でなる下地印刷層が施されていることを特徴とする請求項１に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項３】
前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部でなることを特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項４】
前記基材シートの万線状凸部パターン群が施されている面に金属光沢層が施されていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項５】
前記万線状凸部パターン群上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項１乃至４のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項６】
前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群でなる潜像部と、該潜像部の領域外で潜像部のパターンと同一のピッチを有し、該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターン群でなる背景部とで一画像が形成されている、もしくは前記一画像に加え、この一画像と略同一のピッチを有し、複数の、万線状凸部パターン群でなる潜像部と該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターンでなる背景部とで他の画像が形成され、前記一画像に対し複数の他の画像が各々角度をずらして合成され、該合成された各画像の背景部を形成する各万線状凸部の一つ置きの間にある他の画像の万線状凸部が除去されていることを特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項７】
前記万線状凸部パターン群でなる潜像部と背景部とで構成される一画像上に、もしくは前記一画像と該一画像に合成されている複数の他の画像上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項６に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項１】
紙を主体とした基材シートの片面に当落等を表す可変の個別情報が施され、該個別情報がスクラッチ隠蔽層で覆われているスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物において、前記基材シートの片面上にエンボス加工による万線状のエンボスパターンが施されていることを特徴とするスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項２】
前記万線状のエンボスパターン上で個別情報の下に細紋パターン等でなる下地印刷層が施されていることを特徴とする請求項１に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項３】
前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群が複数集合してなる微細な凹凸部でなることを特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項４】
前記基材シートの万線状凸部パターン群が施されている面に金属光沢層が施されていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項５】
前記万線状凸部パターン群上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項１乃至４のいずれかに記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項６】
前記万線状のエンボスパターンは、所定のピッチを有し、所定の方向に延びる万線状凸部パターン群でなる潜像部と、該潜像部の領域外で潜像部のパターンと同一のピッチを有し、該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターン群でなる背景部とで一画像が形成されている、もしくは前記一画像に加え、この一画像と略同一のピッチを有し、複数の、万線状凸部パターン群でなる潜像部と該潜像部の凸部パターンに対し垂直方向に延びる万線状凸部パターンでなる背景部とで他の画像が形成され、前記一画像に対し複数の他の画像が各々角度をずらして合成され、該合成された各画像の背景部を形成する各万線状凸部の一つ置きの間にある他の画像の万線状凸部が除去されていることを特徴とする請求項１または２に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【請求項７】
前記万線状凸部パターン群でなる潜像部と背景部とで構成される一画像上に、もしくは前記一画像と該一画像に合成されている複数の他の画像上で、かつ可変の個別情報下に可変情報印字受理層が施されていることを特徴とする請求項６に記載のスクラッチ隠蔽層付可変情報印刷物。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２００７−２９６６８７（Ｐ２００７−２９６６８７Ａ）
【公開日】平成１９年１１月１５日（２００７．１１．１５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１２５１３３（Ｐ２００６−１２５１３３）
【出願日】平成１８年４月２８日（２００６．４．２８）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年１１月１５日（２００７．１１．１５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年４月２８日（２００６．４．２８）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
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