説明

スクラップ用荷降し装置

【課題】 荷台に積載されているスクラップを短時間で荷降しして、荷降し作業の効率化を図る。
【解決手段】 この荷降し装置は、スクラップ11を荷降しする場所に設置された台座10と、該台座10を傾動させるアクチュエータとしての油圧シリンダ12とから基本的に構成されている。台座10は、貨物自動車14の荷台16を載置し得る長さに設定されており、この台座10が、フレーム基台20に対して傾動自在に取付けられている。また前記油圧シリンダ20は、そのシリンダボトムがフレーム基台20に取付けられると共に、ピストンロッド12aが台座10に立設された門型の枠材28に軸着されている。そして台座10に、貨物自動車14の荷台16を載置した後に、前記油圧シリンダ12を介して該台座10を傾動させる。これによりスクラップ11が、荷台16から滑落して荷降し場所18に落下放出される。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案はスクラップ用荷降し装置に関し、更に詳細には、貨物自動車の荷台に積載されている鉄屑等のスクラップを、短時間で所定場所に落下放出させ得るよう構成したスクラップ用荷降し装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鋼メーカー等においては、アーク炉で溶解する原料として使用される鉄屑等のスクラップは、スクラップ業者が貨物自動車により運搬してきたものを、該自動車から荷降し場所に降ろしてストックしている。この荷降し作業に際し、スクラップが磁性スクラップの場合では大型の電磁石を使用した所謂リフマグクレーンを使用し、また非磁性スクラップの場合ではブルドーザ等を使用して荷降しを行なっている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
前述したスクラップの荷降し作業において、磁性スクラップを磁気吸着するリフマグクレーンでは、1回に荷降しできる量が、貨物自動車の荷台に積載されているスクラップの全量に比べて少ない。すなわち、リフマグクレーンが1回の作業で荷降しできる量は、その吸着能力から最大2t程度であるが、これに対して荷台(トレーラー)を牽引車(トラクター)で牽引する型式の大型の貨物自動車では約30tのスクラップが積載運搬される。従って大型の貨物自動車からスクラップを荷降しする際には、リフマグクレーンを少なくとも15回程度往復させなければならなくなり、多くの時間と多大な労力を要する難点が指摘される。また、1台の貨物自動車の荷降し作業に時間が掛かるため、スクラップを荷降しする場所には、スクラップを積載した多くの貨物自動車が荷降し作業を長い時間に亘って待っている状態となることがあり、貨物自動車の稼働率が低下する問題も招く。なお、荷降し作業にブルドーザが使用される非磁性スクラップにおいても、前述したと同様の問題があった。
【0004】
【考案の目的】
この考案は、前述した欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、荷台に積載されているスクラップを短時間で荷降しして、荷降し作業の効率化を図ることができるスクラップ用荷降し装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を好適に達成するため本考案は、貨物自動車の荷台に積載されている鉄屑等のスクラップを荷降し場所に落下放出させる荷降し装置であって、 前記貨物自動車または荷台が載る傾動自在な台座と、 前記台座を水平位置と傾動位置との間を傾動させるアクチュエータと、 前記台座に配設され、該台座に載った前記貨物自動車または荷台に係合して滑落を阻止するストッパとを備え、 前記水平位置に臨む台座に貨物自動車または荷台を載せると共に前記ストッパに係合させた状態で、前記アクチュエータを付勢して該台座を傾動位置まで傾動させることにより、前記荷台に積載されているスクラップを荷降し場所に落下放出させるよう構成したことを特徴とする。
【0006】
【考案の実施の形態】
次に、本考案に係るスクラップ用荷降し装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお本実施例では、貨物自動車として荷台(トレーラー)を牽引車(トラクター)に着脱自在に連結して牽引する型式のトラクター・トレーラー連結車を例に挙げて説明するが、荷台が運転部から分離されない通常のトラックであってもよい。
【0007】
スクラップ用荷降し装置は、図1に示す如く、スクラップ11を荷降しする場所に設置された台座10と、該台座10を傾動させるアクチュエータとしての2基の油圧シリンダ12,12から基本的に構成されている。このうち台座10は、所要深さの荷降し場所18に近接して水平に設置されたフレーム基台20の上に傾動自在に配設される。すなわち、台座10は、貨物自動車14における牽引車15から分離された荷台16を載せることができる長さ寸法を有し、その荷降し場所18を指向する長手方向の前端部近傍の下面が、フレーム基台20の幅方向に所要間隔離間した位置に配設した2個のクレビス21,21を介して傾動自在に取付けられている(図2参照)。また台座10の長手方向中央部および荷降し場所18から最も離間する後端部に、H鋼からなる支持梁26が夫々幅方向に延在するよう配設されている。そして、両支持梁26,26をフレーム基台20の上面に当接した状態で、台座10は水平に位置決めされるようになっている。なお、台座10の幅寸法は、フレーム基台20の幅寸法よりも若干小さくなるよう寸法設定される。
【0008】
前記台座10における長手方向の略中央には、該台座10に載せられる荷台16と干渉することなく囲繞し得る開口寸法に設定された門型の枠材28が立設されている。また前記フレーム基台20の長手方向における中央部近傍には、図2に示すように、台座10を挟む幅方向両側に油圧シリンダ12,12が配設される。各油圧シリンダ12は、シリンダボトムがフレーム基台20に配設したクレビス13に回動自在に取付けられると共に、そのピストンロッド12aは前記枠材28の垂直部28aに回動自在に軸着されている。そして、両油圧シリンダ12,12を同期的に付勢することにより、台座10を水平位置(図1の実線位置)と傾動位置(図1の二点鎖線位置)との間を傾動させるよう構成してある。なお枠材28は、台座10の剛性を向上させると共に、台座10が傾動位置まで傾動した際に荷台16が転倒するのを防止するべく機能する。
【0009】
前記台座10の前端部(傾動位置における傾斜下端側)には、図1に示す如く、上方に垂直に延出するストッパ22が設けられている。このストッパ22は、貨物自動車14の荷台16における後端部が当接係合すると共に、台座10が傾動した際に荷台16の後開口部から滑落するスクラップ11の落下の妨げにならない高さに寸法設定されている。
【0010】
【実施例の作用】
次に、実施例に係るスクラップ用荷降し装置の使用の実際につき説明する。前記台座10を水平位置に位置決めした荷降し装置に対し、貨物自動車14を後退させて台座10の後端部から荷台16を載せる。そして、該荷台16の後端部が前記ストッパ22に係合当接した位置で、貨物自動車14を停止すると共に、牽引車15から荷台16を分離する。このとき荷台16を、牽引車15に近接する位置に配設されている幅方向両側の支持脚29,29(一方のみ図示)を延出して、その下端部を台座10の上面に当接させることで水平に保持しておく。
【0011】
この状態において、2基の油圧シリンダ12,12を同期的に付勢してピストンロッド12a,12aを延出させると、図1の二点鎖線で示す如く、台座10はフレーム基台20のクレビス21,21を支点として傾動位置(約45度)まで傾動して位置決めされる。なお、荷台16は、ストッパ22に係合当接しているので台座10上を滑落することはない。これにより、荷台16に積載されているスクラップ11は、荷台16を滑落して荷降し場所18に落下放出される。
【0012】
前記台座10には、荷台16およびスクラップ11を含めた過大な重量が加わることになるが、台座自体は門型の枠材28によってその剛性が高められているため、傾動時における撓みあるいは振動等が最小限に抑えられる。また荷台16からスクラップ11が落下放出される際に、その重量バランスが変化することにより荷台16が大きく振動することがあるが、荷台16は枠材28により囲繞されているから転倒するのは防止される。
【0013】
なお、スクラップ11の荷降し作業は、荷降し場所18の近傍に設置された操作盤(図示せず)を、貨物自動車14の運転手自身が操作することにより行ない得るようになっている。
【0014】
実施例では牽引車から荷台を分離して荷台のみを台座に載せるよう構成した場合につき説明したが、荷台が運転部から離間しない通常のトラックの場合は、トラック全体が台座に載った状態で傾動される。また台座を傾動させるアクチュエータとしては、実施例のような油圧シリンダに限定されるものでなく、例えば空圧または水圧シリンダや、モータによりボールネジを回転させる構成も適宜採用し得る。更に、アクチュエータの設置台数に関して、1基のみの場合やあるいは必要に応じて3基以上設置するようにしてもよい。更にまた、台座に配設されるストッパは、荷台の後端部に係合当接するものでなくても、荷台に配設されている車輪に係合して滑落を阻止するものであってもよい。
【0015】
【考案の効果】
以上に説明した如く、本考案のスクラップ用荷降し装置によれば、貨物自動車や荷台を載せた台座を傾動させるよう構成したことにより、荷台に積載されている鉄屑等のスクラップを短時間で、しかも多くの人手を介することなく落下放出することができる。すなわち、貨物自動車の1台当りの荷降し作業に要する時間を短縮し得るので、スクラップを積載した貨物自動車が荷降し作業を待つ時間を短かくして、貨物自動車の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の好適な実施例に係るスクラップ用荷降し装置において、傾動前および傾動後の状態を示す正面図である。
【図2】実施例のスクラップ用荷降し装置を前端部側から見た側面図である。
【符号の説明】
10 台座
11 スクラップ
12 油圧シリンダ(アクチュエータ)
14 貨物自動車
16 荷台
18 荷降し場所
22 ストッパ
28 枠材

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 貨物自動車(14)の荷台(16)に積載されている鉄屑等のスクラップ(11)を荷降し場所(18)に落下放出させる荷降し装置であって、前記貨物自動車(14)または荷台(16)が載る傾動自在な台座(10)と、前記台座(10)を水平位置と傾動位置との間を傾動させるアクチュエータ(12)と、前記台座(10)に配設され、該台座(10)に載った前記貨物自動車(14)または荷台(16)に係合して滑落を阻止するストッパ(22)とを備え、前記水平位置に臨む台座(10)に貨物自動車(14)または荷台(16)を載せると共に前記ストッパ(22)に係合させた状態で、前記アクチュエータ(12)を付勢して該台座(10)を傾動位置まで傾動させることにより、前記荷台(16)に積載されているスクラップ(11)を荷降し場所(18)に落下放出させるよう構成したことを特徴とするスクラップ用荷降し装置。
【請求項2】 前記台座(10)には、該台座(10)に載った貨物自動車(14)または荷台(16)の転倒を防止する門型の枠材(28)が配設される請求項1記載のスクラップ用荷降し装置。

【図1】
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【図2】
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【登録番号】第3030313号
【登録日】平成8年(1996)8月7日
【発行日】平成8年(1996)10月22日
【考案の名称】スクラップ用荷降し装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−4191
【出願日】平成8年(1996)4月17日
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)