説明

スクラバおよびこれを用いた排ガス除害装置

【課題】循環ポンプを用いることなく、排ガスに含まれる加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガスや固形成分を吸着する水を噴霧し、腐食液や固形成分によるトラブルを極小化することのできるスクラバを提供する。
【解決手段】スクラバ16は、排ガスFを通流させる内部空間Gを有するケーシング46と、排ガスFに水Wを噴霧する水噴霧手段48と、ケーシング46の下部に配設され、水噴霧手段48で噴霧する水Wを貯留し、水噴霧手段48から噴霧された水Wを回収する水タンク50とを備えており、水噴霧手段48は、一端がケーシング46の内部空間Gにおいて開口され、他部よりも断面積が小さい絞り部64がその一部に形成された水噴霧管60と、一端が絞り部64内あるいは絞り部64の下流端近傍における水噴霧管60内に開口され、他端が水タンク50に接続されており、排ガスFに噴霧する水Wを水噴霧管60に供給する水供給管62とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置等から排出される排ガスに含まれる固形成分や、加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガスを水と接触させることによって除去処理するスクラバおよびこれを用いた排ガス除害装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクラバは、一般に、半導体製造装置等から排出される排ガスをその下方から上方に向けて通流させる内部空間を有する縦型のケーシングと、ケーシング内に配設され、下方から上方に向けて通流する該排ガスに対向するように上方から下方に向けて、ポンプで圧送された水を噴霧する水噴霧手段と、樹脂などで形成された多数の充填材が充填され、水噴霧手段よりも下方に配設された充填層とで構成されており、水噴霧手段から噴霧された水が充填層における充填材の表面に拡散することによって水と排ガスとの気液接触面積が増大し、その結果、排ガス中の加水分解性ガスあるいは水溶性ガスを水との接触により吸収して除去する効率を向上させることができる。
【0003】
しかし、排ガスには、上述のように気液接触によって除去される加水分解性ガスや水溶性ガスのみならず、塩類等の中和生成物や粉塵などの固形成分が多量に含まれていることがあることから、特許文献1のスクラバ1は、図2に示すように、従来のスクラバと同様、ケーシング2と、上方から下方に向けて水Wを噴霧する上部水噴霧手段3と、充填層4とに加えて、充填層4の下端面に向けて水Wを噴霧する下部水噴霧手段5と、上部水噴霧手段3および下部水噴霧手段5から噴霧する水Wを貯留するとともに、前記水噴霧手段3、5から噴霧された水Wを回収する水タンク6を備えている。
【0004】
このスクラバ1によれば、下部水噴霧手段5が排ガスFの吸着除去処理運転中に充填層4の下端面に向けて水Wを常時噴霧することにより、排ガスFに含まれる固形成分を素早く洗い流して該固形成分が充填層4の下端面に高密度で付着するのを回避することができるので、スクラバ1を長期間連続的に稼働させることができる。
【特許文献1】特開2006−272109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のスクラバ1には、未だ解決されていない別の問題があった。すなわち、特許文献1のスクラバ1において、上部水噴霧手段3および下部水噴霧手段5から噴霧され、加水分解性ガスあるいは水溶性ガスや固形成分を吸収した水Wは、ケーシング2の下部に配設された水タンク6に回収される。そして、水タンク6に回収された水Wは、上部水噴霧手段3および下部水噴霧手段5にそれぞれ設けられた循環ポンプ7a、7bによって再びケーシング2の内部空間に噴霧される。
【0006】
ここで、排ガスFに含まれる加水分解性ガスあるいは水溶性ガスが、例えばフッ化水素(HF)などのように噴霧水MWに吸収された状態で酸性の腐食液を形成する(この場合、腐食液=フッ化水素酸)腐食性ガスである場合、水タンク6に回収・貯留される水Wにはこの腐食液が混入することになり、上述のように、水タンク6の水Wを循環させる循環ポンプ7a、7bの接液部(例えば、インペラブレードやシャフト)は、当該腐食液によって極めて早期に腐食されることになる。この結果、循環ポンプ7a、7bの補修・交換のためにスクラバ1を停止しなければならず、あるいは、スクラバ1の停止による稼働率の低下を回避するため、スクラバ1に予備の循環ポンプを装備せざるを得ないという問題があった。
【0007】
加えて、排ガスFに含まれる固形成分もスクラバ1で噴霧される水Wによって排ガスFから吸着除去されて水タンク6に回収されるため、固形成分が含まれる排ガスFを処理する場合、水タンク6に貯留された水Wを循環させる循環ポンプ7a、7bの接液部は、上述した腐食液による腐食だけでなく、固形成分による摩耗や該固形成分の堆積を受けることにより、循環ポンプ7a、7bの補修・交換の頻度が高くなり、スクラバ1の稼働率がさらに低下するという問題があった。
【0008】
また、固形成分等の除去効率を向上させるため、上部水噴霧手段3や下部水噴霧手段5から噴霧される水Wの粒径を小さくしようとして水Wを通流させる配管の口径や該配管の先端に設けられた噴霧孔(図示せず)の径を小さくすると、水Wに含まれる固形成分が堆積し、配管や噴霧孔等が閉塞するという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、循環ポンプを用いることなく、排ガスに含まれる加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガス、および固形成分を吸着除去する水を噴霧し、該加水分解性あるは水溶性ガスが該水に吸収されることによって形成された腐食液や固形成分による問題の発生を極小化することのできるスクラバおよび該スクラバを用いた排ガス除害装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明は、「加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガス、および固形成分の少なくとも一方を含む排ガスFを通流させる内部空間Gを有するケーシング46(20)と、
前記内部空間Gを通流する前記排ガスFに水Wを噴霧する水噴霧手段48(22)と、
前記ケーシング46(20)の下部に配設され、前記水噴霧手段48(22)で噴霧する水Wを貯留するとともに、前記水噴霧手段48(22)から噴霧された水Wを回収する水タンク50(24)とを備えるスクラバ16(12)において、
前記水噴霧手段48(22)は、一端が前記ケーシング46(20)の前記内部空間G(A)に開口され、他部よりも断面積が小さい絞り部64(32)がその一部に形成されており、前記水Wを噴霧するための噴霧ガスCGが通流される水噴霧管60(28)と、
一端が前記絞り部64(32)内あるいは前記絞り部64(32)の下流端近傍における前記水噴霧管60(28)内に開口され、他端が前記水タンク50(24)に接続されており、前記水Wを前記水噴霧管60(28)に供給する水供給管62(30)とを備えることを特徴とするスクラバ16(12)」である。
【0011】
本発明のスクラバ16では、水噴霧手段48の水噴霧管60に絞り部64が設けられており、水噴霧管60に噴霧ガスCGを通流すると、水噴霧管60の絞り部64(および絞り部64の下流端近傍)における内圧(より正確には、当該位置の「静圧」)は、水噴霧管60内の他部における内圧に比べて低くなり、水噴霧管60内の噴霧ガスCGの流速を高くするほど、絞り部64における内圧は低下する(ベンチュリ効果)。
【0012】
このように、絞り部64における内圧が低下していくと、一端が絞り部64内あるいは絞り部64の下流側近傍における水噴霧管60内に開口された水供給管62の内圧も低下するので、水タンク50に貯留された水Wが水噴霧管60内まで吸い上げられる。そして、水噴霧管60内まで吸い上げられた水Wは、絞り部64内で流速が速められた噴霧ガスCGからの運動エネルギを受けて攪拌されることによって細かなミストとなり、該噴霧ガスCGとともにケーシング46の内部空間Gに噴霧される。
【0013】
また、加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガスや固形成分の除去効率を向上させるため、噴霧する水Wの粒径を小さくする場合には、水噴霧管60に通流する噴霧ガスCGの流速をより速くすればよい。このため、水供給管62の径が細くなりすぎて、水Wに含まれる固形成分が堆積し閉塞するという問題も回避することができる。
【0014】
以上のとおり、本発明のスクラバ16では、従来技術のように循環ポンプを用いることなく、水タンク50に貯留された水Wを吸い上げてケーシング46の内部空間Gに噴霧することができる。
【0015】
請求項2に記載した発明は、「半導体製造装置から排出された排ガスFに含まれる熱分解性ガスを加熱して熱分解する加熱分解器14と、
加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガス、および固形成分の少なくとも一方を含む、前記加熱分解器14から排出された排ガスFを水洗する請求項1に記載のスクラバ16とを備える排ガス除害装置10」である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、循環ポンプを用いることなく、水タンクに貯留された水を吸い上げ、その水を排ガスが通流するケーシングの内部空間に噴霧することができるので、排ガスに含まれる加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガスや固形成分が当該水に吸収されることによって形成された腐食液や固形成分によるトラブルを極小化することのできるスクラバおよび該スクラバを用いた排ガス除害装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図示実施例にしたがって説明する。本発明を適用した排ガス除害装置10は、半導体製造装置(図示せず)から排出される排ガスを除害するための装置であり、図1に示すように、入口スクラバ12と、加熱分解器14と、出口スクラバ16とで大略構成されている。
【0018】
入口スクラバ12は、ケーシング20と、水噴霧手段22と、水タンク24とを備えている。
【0019】
ケーシング20は、その内部に排ガスFを通流させる内部空間Aを有する円筒状の容器であり、その上端は、排ガス導入ダクト26を介して図示しない半導体製造装置に接続されており、また、下端は、水タンク24の天面24aに接続されており、半導体製造装置とケーシング20の内部空間Aと水タンク24の内部空間Bとがこの順で互いに連通されている。
【0020】
水噴霧手段22は、水噴霧管28と、水供給管30とで構成されている。水噴霧管28は、その内部に噴霧ガスCGとしての窒素(N2)ガスを通流させる噴霧ガス通流空間Cを有するパイプであり、その一端は、ケーシング20の内部空間Aにおいて開口されているとともに、他端は、窒素ガスを発生させる窒素ガス発生装置(図示せず)に接続されており、5〜10気圧の窒素ガスが噴霧ガス通流空間Cに供給される。また、水噴霧管28の一部分には、噴霧ガス通流空間Cの断面積が他部よりも小さい絞り部32が形成されている。
【0021】
なお、噴霧ガスCGとして窒素ガスを用いるのは、半導体製造装置ではパージ用や作動用ガスとして窒素ガスを使用することから窒素ガス発生装置が設けられているケースが多いので、排ガス除害装置10専用の窒素ガス発生装置を設置する必要がなく経済的だからである。もちろん、噴霧ガスCGは窒素ガスに限られることはなく、排ガスFに含まれる成分と不所望に反応することのないガスであれば、他の種類のガスを用いることができる。
【0022】
水供給管30は、その内部に水タンク24に貯留された水Wを通流させる水通流空間Dを有するパイプであり、一端が水噴霧管28の絞り部32内に開口されており、他端が水タンク24に接続されている。なお、水供給管30の一端は、水噴霧管28における絞り部32の下流側近傍に開口するようにしてもよい。
【0023】
水タンク24は、天面24aが設けられた、内部空間Bを有する容器であって、出口スクラバ16の水タンク50(後述)と一体的に形成されており、仕切板34によって入口スクラバ12の水タンク24と、出口スクラバ16の水タンク50とに分けられている。
【0024】
また、仕切板34の下端は、水タンク24、50の内側底面から離間しており、水タンク24に貯留された水と水タンク50に貯留された水とが互いに行き来できるようになっている。
【0025】
また、水タンク24の天面24aには、ケーシング20の下端が接続されており、水タンク24の側面24bにおける下端部には、水供給管30の他端が接続されている。
【0026】
なお、排ガスFに含まれる固形成分の粒径が大きく、水供給管30における水通流空間Dが閉塞するおそれのある場合には、粒径の大きい固形成分を捕捉する濾過フィルタ35を水タンク24に設けてもよい(もちろん、水供給管30に濾過フィルタ35を取り付けてもよい)。
【0027】
加熱分解器14は、ケーシング36と、一対のヒータ38a、38bとで構成されている。
【0028】
ケーシング36は、ヒータ38a、38bからの熱に耐えられるようにその内側に耐熱性材が積層された炭素鋼鋼板で形成され、その底面が開口された筒状体である。
【0029】
このケーシング36の内部空間Eには、当該内部空間Eを入口側チャンバ42と出口側チャンバ44とに二分する仕切壁40が設けられており、仕切壁40の上端がケーシング36の内側天面から離間して配設されることにより、入口側チャンバ42と出口側チャンバ44とがその上端部において互いに連通するようになっている。
【0030】
さらに、仕切壁40の下端が水タンク24の仕切板34の上端に接続されることにより、入口側チャンバ42の下端は、水タンク24の内部空間Bと互いに連通され、出口側チャンバ44の下端は、出口スクラバ16における後述する水タンク50の内部空間Fと互いに連通されている。これにより、水タンク24の内部空間Bと入口側チャンバ42と出口側チャンバ44と水タンク50の内部空間Fとがこの順で互いに連通されている。
【0031】
ヒータ38a、38bは、ケーシング36の天面から内部空間Eに挿設された直管状の電気ヒータであり、一方のヒータ38aは、入口側チャンバ42に配設され、他方のヒータ38bは、出口側チャンバ44に配設されている。なお、電気ヒータに替えて、大気圧プラズマあるいは燃料バーナなど他の熱源を用いることもできる。
【0032】
出口スクラバ16は、ケーシング46と、水噴霧手段48と、水タンク50と、冷却器52と、ミストセパレータ54とを備えている。ケーシング46は、その内部に加熱分解器14から排出された排ガスFを通流させる内部空間Gを有する円筒状のものであり、その下端は、水タンク50の天面に接続されており、上端は、排ガス排出ダクト56を介して図示しない排ガス排出端に接続されている。これにより、水タンク50の内部空間Fとケーシング46の内部空間Gと排ガス排出端とがこの順で互いに連通されている。
【0033】
また、排ガス排出ダクト56には、排気ファン58が取り付けられており、この排気ファン58が稼働することによって排ガス除害装置10の内部が常時負圧(=大気圧よりも低い圧力)に保たれている。このため、熱分解処理前の排ガスFや該処理済みの高温排ガスFが誤って排ガス除害装置10から外部へ漏れ出すことがない。
【0034】
水噴霧手段48は、上述した入口スクラバ12の水噴霧手段22と同様、水噴霧管60と、水供給管62とで構成されている。水噴霧管60は、その内部に噴霧ガスCGとしての窒素ガスを通流させる噴霧ガス通流空間Hを有するパイプであり、一端がケーシング46の内部空間Gにおいて開口されており、上述した入口スクラバ12の水噴霧管28と同様、他端が窒素ガス発生装置(図示せず)に接続されている。また、水噴霧管60の一部分には、噴霧ガス通流空間Hの断面積が他部よりも小さい絞り部64が形成されている。
【0035】
水供給管62は、その内部に水タンク50に貯留された水Wを通流させる水通流空間Iを有するパイプであり、一端が水噴霧管60の絞り部64に開口されており、他端が水タンク50に接続されている。なお、水供給管62の一端は、水噴霧管60における絞り部64の下流側近傍に開口する位置に設定してもよい。
【0036】
また、加熱分解器14から排出される排ガスFに含まれる固形成分の粒径が大きく、水供給管62における水通流空間Iが閉塞するおそれのある場合には、粒径の大きい固形成分を捕捉する濾過フィルタ51を水タンク50に設けてもよい(もちろん、水供給管62に濾過フィルタ51を取り付けてもよい)。
【0037】
水タンク50は、天面50aが設けられた、内部空間Fを有する容器であり、上述のように、入口スクラバ12の水タンク24と一体的に形成されている。水タンク50には、水噴霧手段48および水噴霧手段22で噴霧する水Wを水タンク50へ供給する水供給配管70が接続されており、また、水タンク50の側面底部には、水タンク50に貯留された水Wを排出するための水排出配管72が接続されている。
【0038】
冷却器52は、ケーシング46の下端部に取り付けられ、加熱分解器14から排出された高温の排ガスFを冷却する装置であり、図示しないチラーからの冷水CWが排ガスFの熱を奪うことにより排ガスFを冷却するようになっている。なお、排ガスFからの熱により昇温した冷水CW’は、チラーに戻された後で冷却され、再び冷却器52に戻される。なお、冷却器52の形式はこれに限られるものではなく、排ガスFを冷却できるのであれば、どのような形式であってもよい。
【0039】
ミストセパレータ54は、ケーシング46の上端部に取り付けられ、水噴霧手段48から噴霧された水Wを含む排ガスFから該水Wを分離することにより、水Wが排ガスFとともに排ガス除害装置10から排出されるのを防止するための装置であり、排ガスFを旋回させ、これにより発生する遠心力で水Wを排ガスFから分離するサイクロンが用いられている。もちろん、排ガスFに含まれる水Wを捕捉するフィルタを使用してもよい。
【0040】
なお、本実施例の排ガス除害装置10における加熱分解器14を除く他の部分には、排ガス除害装置10に導入された当初から排ガスFに含まれる、あるいは、排ガスFを熱分解することによって生じる、フッ酸など腐食性の加水分解ガスあるいは水溶性ガスによる腐食から各部を守るため、塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂などによる耐腐食性のライニングやコーティングが施されている。
【0041】
次に、本実施例の排ガス除害装置10の作用について説明する。図示しない半導体製造装置から排出された排ガスFは、排ガス導入ダクト26を介して入口スクラバ12の内部空間Aに導入され、水噴霧手段22の水噴霧管28から噴霧される水Wと接触する。そして、排ガスF中の固形成分(粉塵など)、および加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガス(もちろん、排ガスFが固形成分を含んでいない場合もある)は、水噴霧管28から噴霧された霧状の水Wに捕捉された後、ケーシング20の下端から水タンク24の内部空間Bに入り、水タンク24に貯留される。なお、加水分解性の腐食性ガスの例として、化1に示すように、ジクロールシラン(SiH2Cl2)を挙げることができる。
SiH2Cl2+2H2O → SiO2+2HCl+2H2 (化1)
【0042】
入口スクラバ12で洗浄された低温湿潤の排ガスFは、水タンク24の内部空間Bを通って加熱分解器14の入口側チャンバ42および出口側チャンバ44の順に送り込まれる。このとき、入口側チャンバ42および出口側チャンバ44は、それぞれヒータ38a、38bからの熱によって十分な高温に保たれているので、入口側チャンバ42および出口側チャンバ44に導入された排ガスFは直ちに熱分解され、例えば、腐食性ガスであるフッ化水素(HF)や塩化水素(HCl)、および固形成分である二酸化ケイ素(SiO2)が発生する(化2ないし化4参照)。
CF4+2H2O → CO2+4HF (化2)
SiH2Cl2+O2 → SiO2+3HCl (化3)
SiH4+2H2O → SiO2+4H2 (化4)
【0043】
このようにして熱分解された排ガスFは、出口側チャンバ44の下端を通って出口スクラバ16の水タンク50の内部空間Fに導入される。
【0044】
内部空間Fに導入された排ガスFは、出口スクラバ16のケーシング46の下端からその内部空間Gに導入され、冷却器52で冷却された後、水噴霧管60から噴霧された水Wと気液接触する。このとき、排ガスF中に含まれる固形成分、および加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガスは、ほぼ完全に排ガスFから除去される。
【0045】
そして、十分な洗浄と温度低減がなされた排ガスFに残存する水Wは、ミストセパレータ54において除去された後、排気ファン58を通って排ガス排出端から大気中へと放出される。
【0046】
以上のように、出口スクラバ16では(入口スクラバ12でも同じ)、水噴霧手段48の水噴霧管60に絞り部64が設けられているので、水噴霧管60の噴霧ガス通流空間Hに噴霧ガスCGとしての窒素ガスを通流させると、水噴霧管60の絞り部64に対応する噴霧ガス通流空間Hの内圧は、噴霧ガス通流空間Hの他の位置における内圧に比べて低くなる。絞り部64に対応する噴霧ガス通流空間Hの内圧が低下していくと、一端が噴霧ガス通流空間Hの絞り部64に開口された水供給管62内の水通流空間Iの内圧も低下し、水タンク50に貯留された水Wが水通流空間Iを介して噴霧ガス通流空間Hまで吸い上げられる。そして、噴霧ガス通流空間Hまで吸い上げられた水Wは、噴霧ガス通流空間Hにおいて噴霧ガスCG(窒素ガス)と混ざり合うことによって非常に細かなミストとなり、噴霧ガスCG(窒素ガス)とともに噴霧ガス通流空間Hを通流した後、ケーシング46の内部空間Gに噴霧される。
【0047】
このように、循環ポンプを用いることなく、水タンク50に貯留された水Wを吸い上げ、その水Wを排ガスFが通流するケーシング46の内部空間Gに噴霧することができるので、排ガスFに含まれる加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガスや固形成分が水Wに吸収されることによって形成された腐食液や固形成分によるトラブルを極小化することができる。
【0048】
なお、上述の実施例では、加熱分解器14の前後に排ガスFを洗浄する入口スクラバ12および出口スクラバ16を設ける場合について説明したが、排ガスFを加熱分解器14に導入する前に水洗する必要がなければ、入口スクラバ12の設置を省略してもよい。
【0049】
また、本実施例では、半導体製造装置からの排ガスFを処理する排ガス除害装置10を例にとって説明したが、本発明のスクラバは、半導体製造装置からの排ガスFの処理に限定されるものではなく、「加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガス、および固形成分の少なくとも一方を含む」すべての排ガス処理に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本件発明にかかる排ガス除害装置を示す概念図である。
【図2】従来技術を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10…排ガス除害装置
12…入口スクラバ
14…加熱分解器
16…出口スクラバ
20…(入口スクラバの)ケーシング
22…水噴霧手段
24…水タンク
24a…天面
26…排ガス導入ダクト
28…水噴霧管
30…水供給管
32…絞り部
34…仕切板
35…濾過フィルタ
36…(加熱分解器の)ケーシング
38a、38b…ヒータ
40…仕切壁
42…入口側チャンバ
44…出口側チャンバ
46…(出口スクラバの)ケーシング
48…水噴霧手段
50…水タンク
50a…天面
51…濾過フィルタ
52…冷却器
54…ミストセパレータ
56…排ガス排出ダクト
58…排気ファン
60…水噴霧管
62…水供給管
64…絞り部
70…水供給配管
72…水排出配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガス、および固形成分の少なくとも一方を含む排ガスを通流させる内部空間を有するケーシングと、
前記内部空間を通流する前記排ガスに水を噴霧する水噴霧手段と、
前記ケーシングの下部に配設され、前記水噴霧手段で噴霧する水を貯留するとともに、前記水噴霧手段から噴霧された水を回収する水タンクとを備えるスクラバにおいて、
前記水噴霧手段は、一端が前記ケーシングの前記内部空間に開口され、他部よりも断面積が小さい絞り部がその一部に形成されており、前記水を噴霧するための噴霧ガスが通流される水噴霧管と、
一端が前記絞り部内あるいは前記絞り部の下流端近傍における前記水噴霧管内に開口され、他端が前記水タンクに接続されており、前記水を前記水噴霧管に供給する水供給管とを備えることを特徴とするスクラバ。
【請求項2】
半導体製造装置から排出された排ガスに含まれる熱分解性ガスを加熱して熱分解する加熱分解器と、
加水分解性あるいは水溶性の腐食性ガス、および固形成分の少なくとも一方を含む、前記加熱分解器から排出された排ガスを水洗する請求項1に記載のスクラバとを備える排ガス除害装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−17636(P2010−17636A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179489(P2008−179489)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(592010106)カンケンテクノ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】