説明

スクリュー搬送装置、およびスクリュー搬送装置を使用したアブレシブウォータージェット加工装置のアブレシブ回収装置

【課題】構造を簡素化してコンパクト化を実現し、耐久性および信頼性を確保するスクリュー搬送装置を提供する。
【解決手段】導入口3から排出口4まで流動性の被搬送物(G)を搬送するスクリュー搬送装置1であって、導入口3および排出口4が形成された筒状のケーシング2と、ケーシング2に軸支部材6を介して回転自在に内設されたスクリュー5と、スクリュー5を駆動する駆動装置80と、を備え、軸支部材6は、スクリュー5の一端部を支持してケーシング2の一端部に配設され、スクリュー5の他端部は、スクリュー5の外周部5cに近接または摺接してスクリュー5を回転自在に支持する前記ケーシング2の内周部2aに沿って配設された摺接部材8で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー搬送装置、およびスクリュー搬送装置を使用したアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置に係り、特に、スクリューの外周部を回転自在に支持する摺接部材を備えたスクリュー搬送装置、およびスクリュー搬送装置を使用したアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレシブウォータージェット加工機は、高速のウォータージェットに研磨材(アブレシブ)を混合してノズルから噴射してワークを切断加工する。
噴射されたウォータージェットは、アブレシブが水や切り屑と混合した状態でキャッチャタンクに廃液として貯留され、その後、沈殿したアブレシブを人手やスクリューコンベア、スラッジコンベアを利用して回収して再利用する技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−245758号公報
【特許文献2】特開平7−148665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人手によるアブレシブの排出は労力を必要とし、作業時には安全面から装置を停止させなければならないので、作業性が悪く、生産性が低下するという問題があった。
【0005】
また、スクリューコンベアを利用した排出システムでは、濡れているアブレシブは流動性が悪く、ケーシングの内壁や摺動面には粘性が高いスラッジ等が付着するため、アブレシブがスクリューコンベア内に詰まったり、シール部が損傷しアブレシブが軸受部や摺動部に侵入して回転不良が発生したりして、スクリューコンベアの耐久性および信頼性に欠けるという問題があった。
一方、スラッジコンベアは、一般的に部品点数が多く、コスト高となり、さらには設置スペースを広く必要とするため、装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題点を解決すべく、構造を簡素化してコンパクト化を実現するとともに、十分な耐久性および信頼性を確保することが可能なスクリュー搬送装置、およびアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、導入口から排出口まで流動性の被搬送物を搬送するスクリュー搬送装置であって、前記導入口および前記排出口が形成された筒状のケーシングと、このケーシングに軸支部材を介して回転自在に内設されたスクリューと、このスクリューを駆動する駆動装置と、を備え、前記軸支部材は、前記スクリューの一端部を支持して前記ケーシングの一端部に配設され、前記スクリューの他端部は、前記スクリューの外周部に近接または摺接して当該スクリューを回転自在に支持する前記ケーシングの内周部に沿って配設された摺接部材で支持することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るスクリュー搬送装置は、前記スクリューの外周部を回転自在に支持する摺接部材を備えたことで、前記スクリューの他端部を安定して支持することができる。このため、前記スクリューの一端部を支持する軸支部材、および他端部を支持する摺接部材により、スクリューを回転自在に安定して支持することで、スクリューの振れを効果的に抑制して、十分な耐久性および信頼性を確保することができる。
【0009】
なお、「摺接」とは、常時接触する状態で支持する場合の他、スクリューの回転中心が振れた場合に接触して支持するような断続的に接触する状態で支持する場合も含むものとする。また、「一端部」および「他端部」とは、厳格な末端部や縁部を意味するものではなく、「一端部」と「他端部」とが離隔した位置であることを意味するものとする。
【0010】
本発明に係るスクリュー搬送装置は、スクリューの外周部を支持する摺接部材を備えたことで、スクリューの他端部では、スクリュー軸を支持するベアリング等の軸支部材を不要とすることができるので、シール部材等の付属部品を削減または排除して構造を簡素化してコンパクト化を実現することができる。
【0011】
また、シール部材等の付属部品を削減または排除することで、被搬送物がシール部材を損傷したり、被搬送物が軸支部に進入して回転不良が発生したりすることを防止することができるので、スクリュー搬送装置の耐久性および信頼性を向上させることができる。
【0012】
このようにして、本発明に係るスクリュー搬送装置は、構造を簡素化してコンパクト化を実現するとともに、十分な耐久性および信頼性を確保することが可能となる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のスクリュー搬送装置であって、前記摺接部材は、前記導入口から前記排出口までつながり前記被搬送物を搬送するパイプ形状または樋形状をなした樹脂部材であることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記摺接部材を樹脂部材で構成したことで、前記スクリューの外周部との摺動抵抗を低減し、粘着性を有するスラッジの付着を抑制できるため、スクリューの振動や振れを抑制して安定して回転自在に支持することができる。
このため、本発明に係るスクリュー搬送装置は、例えば、濡れて流動性が悪く詰まりやすくなったアブレシブであっても、良好に搬送して円滑に排出することができる。
【0015】
また、摺接部材は、ケーシングの内周部に沿ってパイプ形状または樋形状をなし、この摺接部材で案内しながら前記被搬送物を前記導入口から前記排出口まで搬送することで、前記被搬送物の詰まり等を防止して安定した搬送が実現されるとともに、ケーシングの腐食や錆び等を防止してより耐久性および信頼性を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のスクリュー搬送装置であって、前記樹脂部材は、ナイロン、ポリアセタール、テフロン(登録商標)、塩化ビニル、または、ポリエチレンからなることを特徴とする。請求項3に係る発明によれば、前記摺接部材として、ナイロン、ポリアセタール、テフロン、塩化ビニル、または、ポリエチレンからなる樹脂部材を採用することで、被搬送物による損傷や噛み込み等に対する必要十分な強度、耐摩耗性、耐久性および信頼性を確保することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスクリュー搬送装置であって、水平方向に対して45から60度の角度になるように前記ケーシングを配設した状態において、前記導入口は前記ケーシングの下部に形成され、前記排出口は前記導入口よりも上部に形成され、前記軸支部材は、前記排出口よりも上部に配設され、前記駆動装置は、前記軸支部材よりも上部に配設されていること、を特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、前記軸支部材を前記排出口よりも上部に配設したことで、被搬送物による損傷や噛み込み等を回避して、前記軸支部材の耐久性を向上させることができる。
また、導入口をケーシングの下部に配設し、スクリューの他端部は外周部を摺接部材で支持することで、被搬送物が流通する他端部には軸支部材を不要とすることができるため、他端部における軸支部材に対する被搬送物による損傷や噛み込み等を回避して、耐久性を向上させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスクリュー搬送装置であって、前記排出口には、前記スクリューの軸に近接または当接するように配設され付着物を当該軸から掻き落とすスクレーパを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、スクリューの軸に近接または当接するようにスクレーパを設けたことで、排出口において、スクリューの軸に付着した被搬送物や粘着性を有する余分なスラッジ等を確実に掻き落とすことができるので、排出口における詰まりを防止して円滑に被搬送物を排出することができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5に記載のスクリュー搬送装置を使用したアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置であって、アブレシブウォータージェット加工によりアブレシブが混入された廃液を貯留するキャッチャタンクと、前記廃液に混入されたアブレシブを底部に沈殿させる沈殿タンクと、前記キャッチャタンク内の廃液を前記沈殿タンクに移送する循環ポンプと、前記沈殿タンクの底部に前記導入口が位置するように装着された前記スクリュー搬送装置と、を備え、前記沈殿タンクの底部に沈殿したアブレシブを前記スクリュー搬送装置の前記導入口から取り込んで前記排出口から排出することを特徴とする。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、前記スクリュー搬送装置をアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置に適用することで、硬い微粒子からなり侵襲性が高いアブレシブを円滑に搬送して回収することができるため、十分な耐久性および信頼性を確保したアブレシブ回収装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るスクリュー搬送装置、およびスクリュー搬送装置を使用したアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置は、構造を簡素化してコンパクト化を実現するとともに、十分な耐久性および信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスクリュー搬送装置の構成を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスクリュー搬送装置の動作を説明するための図2のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係るスクリュー搬送装置1について、アブレシブウォータージェット加工機100のアブレシブ回収装置10に適用した場合の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明において、図1における上下方向が重力の方向に一致し、重力の方向を上下方向として説明する。
【0026】
アブレシブウォータージェット加工機100は、図1に示すように、加圧ポンプ101で加圧した高圧水QにアブレシブGを混入し、アブレシブノズル102からアブレシブジェットJを噴射させて、キャッチャタンク103に貯留された貯留水CでアブレシブジェットJの衝撃を受け止めて緩和し、図示しないクランプ装置でクランプされたワークWを切断加工する加工装置である。
【0027】
アブレシブノズル102に供給される加工用の高圧水Qは、取り扱いの容易性から水を使用しているが、アブレシブジェットJの収束性を向上させるために高圧水Qに増粘材を添加する場合もある。
アブレシブGは、主にガーネットやアルミナ等の粒状の研磨材であり、ワークWの種類や用途に応じて適宜選択される。
【0028】
アブレシブウォータージェット加工機100は、アブレシブジェットJに含まれるアブレシブGが廃液としてキャッチャタンク103の貯留水Cに混入し、キャッチャタンク103の底に堆積するため、貯留水C中のアブレシブGを回収するアブレシブ回収装置10を備えている。
【0029】
アブレシブ回収装置10は、廃液を貯留するキャッチャタンク103と、貯留水CからアブレシブGを分離して底部に沈殿させる沈殿タンク11と、キャッチャタンク103内の貯留水Cを沈殿タンク11に移送して循環する循環装置12と、沈殿タンク11の底部に沈殿させたアブレシブGを排出するスクリュー搬送装置1と、を備えている。
【0030】
アブレシブ回収装置10は、キャッチャタンク103の貯留水Cを沈殿タンク11に移送して、貯留水Cに含まれるアブレシブGを沈殿させて分離し、スクリュー搬送装置1により、沈殿させたアブレシブGを導入口3から取り込んで排出口4から排出して回収容器106に回収する。
【0031】
キャッチャタンク103は、循環装置12により、導入口103aおよび排出口103bと、キャッチャタンク103内の貯留水Cを攪拌する攪拌ノズル104と、貯留水Cの水位を調整する水位調整装置105と、を備えている。
【0032】
導入口103aには、後記する沈殿タンク11でアブレシブGと分離して生成された貯留水Cの上澄みの水Lが供給され、キャッチャタンク103内では一定の水位を保つようになっている。
【0033】
攪拌ノズル104は、キャッチャタンク103の底部に配設され、導入口103aに供給された水Lを上方に向けて噴射して、アブレシブGが混入された貯留水Cを攪拌する装置である。攪拌ノズル104で攪拌することで、アブレシブGが均等に混入した状態で貯留水Cを沈殿タンク11まで移送することができる。
【0034】
排出口103bは、アブレシブGが混入されたキャッチャタンク103内の貯留水Cを沈殿タンク11に排出する装置である。排出された貯留水Cは、循環ポンプ12bにより沈殿タンク11まで圧送されるが、キャッチャタンク103に貯留された貯留水Cの水圧を利用して圧送するように構成してもよい。
【0035】
水位調整装置105は、キャッチャタンク103の貯留水Cの水位を検出して所定の水位に調整する装置であり、例えば、ワークWの下面に合わせて水位を調整してアブレシブジェットJによる衝撃を受け止めて緩和するようになっている。
【0036】
沈殿タンク11は、逆円錐形あるいは逆角錐形をなして形成されている。沈殿タンク11には、キャッチャタンク103からアブレシブGが混入した貯留水Cが供給され、アブレシブGが底部に沈殿して堆積し、上部には上澄みの水Lが生成される。
【0037】
循環装置12は、キャッチャタンク103と沈殿タンク11との間で貯留水Cおよび上澄みの水Lを循環させる装置であり、沈殿タンク11でアブレシブGと分離された上澄みの水Lを回収して貯留するバッファタンク12aと、バッファタンク12a内の水Lを圧送する循環ポンプ12bと、を備えている。
【0038】
スクリュー搬送装置1は、図2に示すように、円筒状のケーシング2と、ケーシング2の下部に形成された導入口3と、ケーシング2の上部に形成された排出口4と、ケーシング2に回転自在に軸支されたスクリュー5と、スクリュー5を軸支する軸支部材であるベアリング6と、ケーシング2の内周部2aに配設された摺接部材であるトラフ8と、スクリュー5を回転駆動する駆動装置80と、スクリュー5に付着するスラッジ等を掻き落とすスクレーパ9と、を備えている。
【0039】
スクリュー搬送装置1は、被搬送物であるアブレシブGの導入口3が沈殿タンク11(図1参照)の下部に開口するようにして、水平方向に対して45〜60度の角度θになるように沈殿タンク11の内壁に沿って装着されている。スクリュー搬送装置1は、角度θを水平方向に対して45〜60度とすることで、全長を短くして装置をコンパクトにすることができるので、実用上望ましい。
スクリュー搬送装置1は、スクリュー5を回転させて導入口3から取り込んだアブレシブGを排出口4から排出する装置である。
【0040】
ケーシング2は、両端部21,22が閉塞された円筒形状の部材であり、沈殿タンク11の内壁に固定されている。
導入口3は、ケーシング2の胴部の下部に上方に開口して形成されている。排出口4は、ケーシング2の胴部の上部であって沈殿タンク11の水位よりも高い位置に下方に開口して形成されている。
かかる構成により、排出口4が沈殿タンク11の水位よりも高い位置になるようにして、沈殿タンク11の水面よりも高い位置(例えば、100mm以上高い位置)までアブレシブGをスクリュー5で押し揚げてから排出口4から排出することで、水が滴り落ちるのでアブレシブGから余分な水を除去することができる。
【0041】
スクリュー5は、回転中心の軸であるスクリュー軸5aと、スクリュー軸5aに螺旋状に巻き回して形成されたスクリュー羽根5bと、を備えている。スクリュー5は、スクリュー羽根5bを回転させることで、被搬送物であるアブレシブGに推力を与えてスクリュー軸5aの軸方向に沿って搬送する。
【0042】
ベアリング6は、スクリュー軸5aを回転自在に軸支する部材であり、ケーシング2の上部に位置する排出口4側の端面に装着されている。
ベアリング6は、アブレシブGが内部に侵入して回転不良が生じないように、排出口4よりも上部に配設され、さらにスクリュー軸5aの軸方向におけるベアリング6の内側にはシール部材6aが装着されている。かかる構成により、ベアリング6の耐久性を向上させることができる。
【0043】
トラフ8は、例えば、ナイロン、ポリアセタール、テフロン、塩化ビニル、または、ポリエチレン(特に、高分子ポリエチレンが望ましい。)からなる樹脂部材で構成され、断面が円形の細長いパイプ形状をなしている。
トラフ8は、ケーシング2の内周部2aに沿って、導入口3の近傍から排出口4の近傍まで、つまり、スクリュー5の外周部5cの一方の端縁部から他方の端縁部までほぼ全域に近接または摺接するようにして回転自在に支持するように装着されている。
そして、トラフ8の内周面8aは、スクリュー羽根5bの外周部5cとの間に所定のクリアランスを設けた状態で近接または摺接して、スクリュー5を回転自在に支持するように構成されている。
【0044】
なお、所定のクリアランスは、例えば、0〜5mmに、より円滑に案内するためには0〜3mmに設定することが好ましい。
つまり、所定のクリアランスは、トラフ8やスクリュー羽根5b、および被搬送物の材質と関係するが、例えば、スクリュー5の回転による振れを抑制しながら、トラフ8の内周面8aとスクリュー羽根5bの外周部5cとの間にアブレシブGの噛み込みやスラッジ等の付着により摺動抵抗が過度に増加することがないように適切に設定する。
【0045】
かかる構成により、本発明の実施形態に係るスクリュー搬送装置1は、摺動抵抗が小さく、耐摩耗性および耐腐食性に富む樹脂部材のトラフ8を採用し、導入口3から排出口4までの領域を広くカバーすることで、アブレシブGの詰まり等を防止して安定した搬送が実現されるとともに、ケーシング2の腐食や錆び等を防止してより耐久性および信頼性を向上させることができる。
このため、スクリュー搬送装置1は、特に、濡れて流動性が悪く詰まりやすくなったアブレシブGであっても、良好に搬送して円滑に排出することができる。
【0046】
また、本発明の実施形態に係るスクリュー搬送装置1は、スクリュー羽根5bの外周部5cを導入口3の近傍から排出口4の近傍まで広範囲に支持するようにトラフ8を装着することで、スクリュー5の振れを効果的に抑制して、スクリュー5を安定して回転自在に支持することができる。
【0047】
すなわち、スクリュー5の一端部(上端部)は、スクリュー軸5aをベアリング6で支持するとともに、スクリュー羽根5bの外周部5cのほぼ全域をトラフ8で支持することで、スクリュー5の振れを効果的に抑制して支持することができる。このため、本発明の実施形態に係るスクリュー搬送装置1は、十分な耐久性および信頼性を確保することができる。
【0048】
このように、スクリュー搬送装置1は、スクリュー羽根5bの外周部5cを支持するトラフ8を備えたことで、図1に示すように、アブレシブGに埋没してしまうスクリュー5の他端部(下端部、導入口3側の端部)では、スクリュー軸5aを支持するベアリング等の軸支部材を排除することができる。
このため、軸支部材を排除することで、付帯するシール部材等の付属部品も併せて排除することができるため、部品点数を削減し構造を簡素化してコンパクト化することができる。
【0049】
また、アブレシブGに埋没してしまう箇所にベアリング等の軸支部材がないので、軸支部材の焼き付き等によるトラブルを未然に防止することができる。さらに、軸支部材のみならず付帯するシール部材等の付属部品も排除することで、シール部材の損傷等に起因するメンテナンス工数も大幅に削減されるため、スクリュー搬送装置1の耐久性および信頼性を格段に向上させることができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、トラフ8は、導入口3の近傍から排出口4の近傍まで広範囲に近接または摺接するようにして回転自在支持したが、これに限定されるものではなく、スクリュー5の上部側の端部(一端部)をベアリング6で支持するとともに、スクリュー5の下部側の端部(他端部)は、スクリュー羽根5bの外周部5cをトラフ8で支持することで、スクリュー5の振れを抑制して円滑な回転動作を確保することも可能である。
【0051】
つまり、ベアリング6が装着された上部側の端部から所定のスパンを隔てた位置でスクリュー羽根5bの外周部5cを支持することで、スクリュー5の振れを抑制することも可能であるが、アブレシブGを導入口3から排出口4まで円滑に搬送するためには、本実施形態のように、トラフ8を導入口3の近傍から排出口4の近傍まで広範囲に亘って装着することが望ましい。
【0052】
駆動装置80は、モータ等の駆動源によりスクリュー軸5aを回転駆動する装置であり、アブレシブGが進入しないようにベアリング6よりも上部(搬送方向に対する下流側)に配設されている。駆動装置の構成は、特に、構成が限定されるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0053】
スクレーパ9は、図3に示すように、スクリュー軸5aに近接または当接するように、ケーシング2に固定して排出口4に配設されている。具体的には、スクレーパ9は、スクリュー軸5aに対して0〜5mm程度のクリアランスを設けて配設することが好ましい。
かかる構成により、スクリュー軸5aの円滑な回転を阻害することなく、スクリュー軸5aに付着したアブレシブGや粘着性を有する余分なスラッジ等を確実に掻き落とすことができるので、排出口4の詰まりを防止してアブレシブGを円滑に排出することができる。
【0054】
続いて、以上のように構成された本実施形態に係るアブレシブウォータージェット加工機100のアブレシブ回収装置10に適用したスクリュー搬送装置1の動作について、主として図1を参照しながら説明する。
【0055】
アブレシブウォータージェット加工機100のアブレシブノズル102から噴射されたアブレシブジェットJに含まれたアブレシブGは、貯留水Cに混入された状態でキャッチャタンク103に貯留される。
キャッチャタンク103に貯留された貯留水Cは、循環装置12により、沈殿タンク11に移送され、貯留水Cに含まれたアブレシブGは沈殿タンク11の底部に沈殿する。
【0056】
沈殿タンク11の底部に沈殿したアブレシブGは、スクリュー搬送装置1の導入口3から取り込まれて、スクリュー羽根5bにより排出口4まで搬送されて排出され、回収容器106に回収される。
【0057】
そして、スクリュー搬送装置1は、被搬送物であるアブレシブGに埋没してしまうスクリュー5の他端部(下端部、導入口3側の端部)では、ベアリング等の軸支部材、およびシール部材等の付属部品を排除することで、アブレシブGが侵入して軸支部材やシール部材等を損傷して回転不良が発生したりすることがないので、十分な耐久性および信頼性を確保することができる。
【0058】
このように、本発明の実施形態に係るスクリュー搬送装置1は、アブレシブウォータージェット加工機100のアブレシブ回収装置10に適用することで、硬い微粒子からなり侵襲性が高いアブレシブGを円滑に搬送して回収することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、スクリュー搬送装置1をアブレシブウォータージェット加工機100のアブレシブ回収装置10に適用したが、これに限定されるものではなく、種々の粒状物や粉状物を搬送する搬送装置として利用することができる
【0060】
本実施形態においては、トラフ8の材質を樹脂部材で構成したが、これに限定されるものではなく、スクリュー5との相性や使用目的に応じて適宜、銅合金や焼結合金等の非鉄合金で構成することもできる。
また、本実施形態においては、トラフ8の形状を断面が円形のパイプ形状で構成したが、これに限定されるものではなく、断面が円弧状の細長い樋形状の部材をケーシング2の内周部2aに沿って配設したものでもよく、ケーシング2の内周部2aに溶射やコーティングして構成することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1 スクリュー搬送装置
2 ケーシング
2a 内周部
3 導入口
4 排出口
5 スクリュー
5a スクリュー軸
5b スクリュー羽根
5c 外周部
6 ベアリング(軸支部材)
6a シール部材
8 トラフ(摺接部材)
8a 内周面
9 スクレーパ
10 アブレシブ回収装置
11 沈殿タンク
12 循環装置
80 駆動装置
100 アブレシブウォータージェット加工機
101 加圧ポンプ
102 アブレシブノズル
103 キャッチャタンク
C 貯留水
G アブレシブ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口から排出口まで流動性の被搬送物を搬送するスクリュー搬送装置であって、
前記導入口および前記排出口が形成された筒状のケーシングと、
このケーシングに軸支部材を介して回転自在に内設されたスクリューと、
このスクリューを駆動する駆動装置と、を備え、
前記軸支部材は、前記スクリューの一端部を支持して前記ケーシングの一端部に配設され、
前記スクリューの他端部は、前記スクリューの外周部に近接または摺接して当該スクリューを回転自在に支持する前記ケーシングの内周部に沿って配設された摺接部材で支持することを特徴とするスクリュー搬送装置。
【請求項2】
前記摺接部材は、前記導入口から前記排出口までつながり前記被搬送物を搬送するパイプ形状または樋形状をなした樹脂部材であることを特徴とする請求項1に記載のスクリュー搬送装置。
【請求項3】
前記樹脂部材は、ナイロン、ポリアセタール、テフロン(登録商標)、塩化ビニル、または、ポリエチレンからなることを特徴とする請求項2に記載のスクリュー搬送装置。
【請求項4】
水平方向に対して45から60度の角度になるように前記ケーシングを配設した状態において、
前記導入口は前記ケーシングの下部に形成され、前記排出口は前記導入口よりも上部に形成され、
前記軸支部材は、前記排出口よりも上部に配設され、
前記駆動装置は、前記軸支部材よりも上部に配設されていること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスクリュー搬送装置。
【請求項5】
前記排出口には、前記スクリューの軸に近接または当接するように配設され付着物を当該軸から掻き落とすスクレーパを備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスクリュー搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載のスクリュー搬送装置を使用したアブレシブウォータージェット加工機のアブレシブ回収装置であって、
アブレシブウォータージェット加工によりアブレシブが混入された廃液を貯留するキャッチャタンクと、
前記廃液に混入されたアブレシブを底部に沈殿させる沈殿タンクと、
前記キャッチャタンク内の廃液を前記沈殿タンクに移送する循環ポンプと、
前記沈殿タンクの底部に前記導入口が位置するように装着された前記スクリュー搬送装置と、を備え、
前記沈殿タンクの底部に沈殿したアブレシブを前記スクリュー搬送装置の前記導入口から回収して前記排出口から排出することを特徴とするアブレシブ回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−35639(P2013−35639A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171897(P2011−171897)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】