説明

スクリーン、スクリーンの製造方法及びプロジェクタ

【課題】外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示が可能で、容易に製造可能なスクリーン等を提供すること。
【解決手段】凸部212を有し、アレイ状に設けられた複数の光学素子210と、光学素子210からの光を通過させる開口部206と、開口部206どうしの間に設けられた遮光部208と、を備える遮光パターン層204と、を有し、光学素子210は、遮光パターン層204が設けられている側に凸部212を向けて設けられ、開口部206は、光学素子210の焦点位置の近傍に設けられ、遮光部208は、光学素子210の焦点位置の近傍以外の位置に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン、スクリーンの製造方法及びプロジェクタ、特に、画像信号に応じた光を透過させることにより画像を表示するプロジェクタに好適なスクリーン、そのスクリーンの製造方法、及びそのスクリーンを用いるプロジェクタの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像信号に応じた光を透過させることにより画像を表示する、いわゆるリアプロジェクタには、光を透過させる透過型のスクリーンが用いられる。透過型スクリーンで反射した外光が観察者の方向へ進行すると、観察者は、画像信号に応じた光と、外光とを同時に観察することになる。画像信号に応じた光と同時に外光が観察者の眼に入ると、画像のコントラストの低下を引き起こす原因となる。このような画像のコントラストの低下を軽減するために、外光を吸収するための遮光パターン層であるブラックストライプ又はブラックマトリクスをスクリーンに形成する技術が提案されている。遮光パターン層を設けることで外光の反射を低減する技術は、例えば、特許文献1に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−83029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリーンに遮光パターン層を設ける場合、スクリーンには、マイクロレンズアレイやレンチキュラーシート等の光学素子アレイが併せて設けられる。スクリーンに設けられる光学素子は、遮光部の周辺に設けられた開口部から画像信号に応じた光を透過させる役割と、スクリーンから観察者側へ射出する光を広い範囲へ進行させる役割とを有する。近年、表示する画像が高精細になるに従い、スクリーンに設けられる光学素子を小さくする必要が生じている。また、光学素子の小型化により、画像のぎらつきであるシンチレーションを低減することも可能になる。微小な光学素子を用いる場合、光学素子に正確に整合させて遮光パターン層を設けることが非常に困難となる。また、光学素子を介して感光性樹脂層に光を照射することで遮光パターン層を形成する方法が提案されている。遮光パターン層は、感光性樹脂層のうち、光学素子を介して露光した位置に開口部、それ以外の位置に遮光部を形成することで得られる。
【0005】
光学素子による集光を利用して遮光パターン層を形成する場合、光学素子の焦点距離に合わせて光学素子アレイの厚みを設定する必要がある。これに対して、広い視野角を維持しながら光学素子を小さくすると、光学素子の焦点距離は必然的に短くなる。このため、光学素子を小さくするほど、焦点距離以下の厚みの光学素子アレイを製造しなければならない。このような極薄型の光学素子アレイを製造することは困難である。また、極薄型の光学素子アレイを用いることで、スクリーンの強度を十分に確保することが困難となる。以上のように、外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示を同時に実現可能なスクリーンを製造することは困難であるため問題である。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示が可能で、容易に製造可能なスクリーン、そのスクリーンの製造方法、及びそのスクリーンを用いるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、凸部を有し、アレイ状に設けられた複数の光学素子と、光学素子からの光を通過させる開口部と、開口部どうしの間に設けられた遮光部と、を備える遮光パターン層と、を有し、光学素子は、遮光パターン層が設けられている側に凸部を向けて設けられ、開口部は、光学素子の焦点位置の近傍に設けられ、遮光部は、光学素子の焦点位置の近傍以外の位置に設けられることを特徴とするスクリーンを提供することができる。
【0008】
本発明のスクリーンは、遮光パターン層が設けられている側に凸部を向けた光学素子を有する。遮光パターン層に凸部を向けて光学素子アレイを配置すると、光学素子の焦点距離に関わらず光学素子アレイの厚みを決定できる。光学素子アレイの厚みを自由に設定可能であることから、高精細な表示やシンチレーションの低減のために光学素子を小さくしても、十分な厚みの光学素子アレイを形成することができる。このため、光学素子アレイの製造を容易にできるほか、十分な強度を確保可能なスクリーンを製造することができる。また、光学素子アレイと遮光パターン層との間隔を、光学素子の焦点距離と略同一とすることが容易になるため、小型の光学素子を用いる場合であっても、光学素子の焦点位置の近傍に容易に開口部を形成できる。
【0009】
焦点距離が短くかつ微小な光学素子をスクリーンに用いることが可能であると、視野角特性に優れ、かつ高精細な画像を表示することができる。さらに、遮光パターン層は、光学素子の焦点位置の近傍の位置に感光性部材を形成した後、光学素子を介して感光性部材を露光することにより容易に形成できる。精密な位置合わせをしながら光学素子と遮光パターン層とを貼り合わせる工程が不要になることから、微小な光学素子を設ける場合であってもスクリーンを容易に製造することができる。本発明のスクリーンは、光学素子側から入射する光を遮光パターン層側から観察すると、遮光部で外光の反射を低減することにより、高コントラストな画像を得られる。これにより、外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示が可能で、容易に製造可能なスクリーンを得られる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、光学素子と遮光パターン層との間に、透明層を有することが望ましい。光学素子と遮光パターン層との間に透明層を設けることにより、光学素子の焦点位置の近傍に遮光パターン層を配置するように、光学素子アレイと遮光パターン層との位置決めをすることができる。光学素子からの光を集光して開口部に入射させる構成とすることにより、遮光部の面積を大きくし、外光の反射を有効に低減することが可能となる。また、焦点距離と略同一の厚みを持たせた光学素子を形成することは非常に困難であるのに対し、焦点距離と略同一の厚みを持たせた透明層を形成することは容易である。このため、光学素子の焦点近傍に容易に開口部を形成できる。これにより、外光反射を有効に低減し、かつ容易に製造可能なスクリーンを得られる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、遮光パターン層に対して、光学素子がある側とは反対側に保護層を有し、保護層は、光を拡散させる光拡散層であることが望ましい。保護層は、スクリーンの遮光パターン層を保護するために設けられる層である。さらに、保護層として光拡散層を用いると、開口部を透過した光を拡散させることができる。これにより、光拡散効果を向上させ、さらに視野角特性に優れたスクリーンを得られる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様としては、透明層は、光を拡散させる光拡散層であることが望ましい。透明層として光拡散層を用いると、スクリーンによる光拡散効果を向上させることができる。これにより、さらに視野角特性に優れたスクリーンを得られる。なお、スクリーンの射出側に設けられる保護層、透明層の双方を光拡散層で構成しても良い。例えば、光学素子と遮光パターン層との間の透明層のみによって光拡散性を確保しようとすると、スクリーンの製造時において、感光層の露光を十分に行えないことがあると考えられる。また、スクリーンの射出側の保護層のみによって光拡散性を確保しようとすると、外光の拡散も増加させることから、画像が白くぼけて見える場合があると考えられる。このため、保護層と透明層との双方に光拡散機能を持たせることにより、映像光の光拡散性を維持しながら、感光性部材の露光、外光の拡散の不具合を低減することが可能になる。さらに、映像光を2段階で拡散することにより、拡散光が干渉し合うことを低減し、シンチレーションを低減することも可能となる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様としては、光学素子の、遮光パターン層がある側の面に、接着層を有することが望ましい。光学素子と遮光パターン層との間、又は光学素子と透明層との間に接着層を設けることにより、光学素子と遮光パターン層とのずれを防止することができる。これにより、広い視野角の確保と高精細な表示とを継続して行うことが可能で、信頼性の高いスクリーンを得られる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様としては、遮光部は、感光性部材により構成されることが望ましい。遮光部として感光性部材を用いる構成とすると、光学素子を介して感光性部材に光を照射する方法により遮光パターン層を形成することが可能である。このため、光学素子と遮光部との位置合わせを不要とし、微小な光学素子を設ける場合であってもスクリーンを容易に製造することができる。これにより、容易に製造可能なスクリーンを得られる。
【0015】
さらに、本発明によれば、凸部を有し、アレイ状に設けられた複数の光学素子を形成する光学素子形成工程と、光学素子の凸部を向けた側に、感光性部材を有する感光層を形成する感光層形成工程と、光学素子を介して感光層に光を入射させ、感光層のうち光学素子により光を集光させた部分を露光する露光工程と、感光層のうち露光工程で露光した部分に開口部、露光工程で露光した部分以外の部分に遮光部、を有する遮光パターン層を形成する遮光パターン層形成工程と、を含むことを特徴とするスクリーンの製造方法を提供することができる。感光層を用いて遮光パターン層を形成すると、光学素子を介して感光層に光を照射する方法により遮光パターン層を形成することが可能である。このため、光学素子と遮光部との位置合わせを不要とし、微小な光学素子を設ける場合であってもスクリーンを容易に製造することができる。これにより、外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示が可能なスクリーンを容易に製造することができる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様としては、感光層形成工程において、光学素子の上にシート状の感光性部材を積層することで感光層を形成することが望ましい。また、本発明の好ましい態様としては、感光層形成工程において、マイクロレンズアレイの上に液状の感光性部材を塗布することで感光層を形成することが望ましい。これにより、遮光パターン層を形成することができる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様としては、光学素子の凸部を有する面に、接着層を形成する接着層形成工程を含むことが望ましい。これにより、光学素子と遮光パターン層との間、又は光学素子と透明層との間に、光学素子と遮光パターン層とのずれを防止可能な接着層を形成することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、光を供給する光源部と、光源部からの光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、上記のスクリーンと、を有するプロジェクタを提供することができる。上記のスクリーンを有することから、外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示が可能で、容易に製造可能なプロジェクタを得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係るプロジェクタ10の概略構成を示す。本発明のプロジェクタ10は、画像信号に応じて変調された光をスクリーン40に透過させることによってスクリーン40に画像を表示する、いわゆるリアプロジェクタである。光源部である超高圧水銀ランプ11は、第1色光である赤色光(以下、「R光」という。)、第2色光である緑色光(以下、「G光」という。)、及び第3色光である青色光(以下、「B光」という。)を含む光を供給する。
【0021】
インテグレータ12は、超高圧水銀ランプ11からの光の照度分布を略均一にする。照度分布が均一化された光は、偏光変換素子13にて特定の振動方向を有する偏光光、例えばs偏光光に変換される。s偏光光に変換された光は、色分離光学系を構成するR光透過ダイクロイックミラー14Rに入射する。R光透過ダイクロイックミラー14Rは、R光を透過し、G光、B光を反射する。R光透過ダイクロイックミラー14Rを透過したR光は、反射ミラー15に入射する。反射ミラー15は、R光の光路を90度折り曲げる。光路を折り曲げられたR光は、R光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置17Rに入射する。空間光変調装置17Rは、R光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。なお、ダイクロイックミラーを透過しても、光の偏光方向は変化しないため、空間光変調装置17Rに入射するR光は、s偏光光のままの状態である。
【0022】
空間光変調装置17Rに入射したs偏光光は、p偏光光に変換された後、不図示の液晶パネルに入射する。液晶パネルは、2つの透明基板の間に、画像表示のための液晶層を封入している。液晶パネルに入射したp偏光光は、画像信号に応じた変調によりs偏光光に変換される。空間光変調装置17Rは、変調によりs偏光光に変換されたR光を射出する。このようにして、空間光変調装置17Rで変調されたR光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム18に入射する。
【0023】
R光透過ダイクロイックミラー14Rで反射されたG光及びB光は、光路を90度折り曲げられる。光路を折り曲げられたG光及びB光は、B光透過ダイクロイックミラー14Gに入射する。B光透過ダイクロイックミラー14Gは、G光を反射し、B光を透過する。B光透過ダイクロイックミラー14Gで反射されたG光は、G光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置17Gに入射する。空間光変調装置17GはG光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。
【0024】
空間光変調装置17Gに入射するG光は、s偏光光に変換されている。空間光変調装置17Gに入射したs偏光光は、そのまま液晶パネルに入射する。液晶パネルに入射したs偏光光は、画像信号に応じた変調によりp偏光光に変換される。空間光変調装置17Gは、変調によりp偏光光に変換されたG光を射出する。このようにして、空間光変調装置17Gで変調されたG光は、クロスダイクロイックプリズム18に入射する。
【0025】
B光透過ダイクロイックミラー14Gを透過したB光は、2枚のリレーレンズ16と、2枚の反射ミラー15とを経由して、B光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置17Bに入射する。空間光変調装置17Bは、B光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置である。なお、B光にリレーレンズ16を経由させるのは、B光の光路の長さがR光及びG光の光路の長さよりも長いためである。リレーレンズ16を用いることにより、B光透過ダイクロイックミラー14Gを透過したB光を、そのまま空間光変調装置1
7Bに導くことができる。
【0026】
空間光変調装置17Bに入射するB光は、s偏光光に変換されている。空間光変調装置17Bに入射したs偏光光は、p偏光光に変換された後液晶パネルに入射する。液晶パネルに入射したp偏光光は、画像信号に応じた変調によりs偏光光に変換される。空間光変調装置17Bは、変調によりs偏光光に変換されたB光を射出する。このようにして、空間光変調装置17Bで変調されたB光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム18に入射する。色分離光学系を構成するR光透過ダイクロイックミラー14RとB光透過ダイクロイックミラー14Gとは、超高圧水銀ランプ11から供給される光を、R光、G光、B光に分離する。
【0027】
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム18は、2つのダイクロイック膜18a、18bをX字型に直交して配置して構成されている。ダイクロイック膜18aは、B光を反射し、R光、G光を透過する。ダイクロイック膜18bは、R光を反射し、B光、G光を透過する。このように、クロスダイクロイックプリズム18は、空間光変調装置17R、17G、17Bでそれぞれ変調されたR光、G光及びB光を合成する。
【0028】
なお、上述のように、空間光変調装置17R及び空間光変調装置17Bからクロスダイクロイックプリズム18に入射される光は、s偏光光となるように設定される。また、空間光変調装置17Gからクロスダイクロイックプリズム18に入射される光は、p偏光光となるように設定される。このようにクロスダイクロイックプリズム18に入射される光の偏光方向を異ならせることで、クロスダイクロイックプリズム18において各色光用空間光変調装置から射出される光を有効に合成できる。ダイクロイック膜18a、18bは、通常、s偏光光の反射特性に優れる。このため、ダイクロイック膜18a、18bで反射されるR光及びB光をs偏光光とし、ダイクロイック膜18a、18bを透過するG光をp偏光光としている。
【0029】
投写レンズ20は、クロスダイクロイックプリズム18で合成された光を反射ミラー21の方向へ投写する。反射ミラー21は、投写レンズ20からの投写光をスクリーン40の方向へ反射する。スクリーン40は、フレネルレンズ31及びスクリーン本体部30を有する。フレネルレンズ31は、入射する光を略平行な光に変換して射出する。フレネルレンズ31で平行光に変換された光は、スクリーン本体部30に入射する。スクリーン40は、投写光を透過させることにより観察者OBS側の面に投写像を表示する透過型スクリーンである。フレネルレンズ31は、同心円状の周期構造を有している。
【0030】
図2は、スクリーン40のうちスクリーン本体部30の要部斜視構成を示す。以下、スクリーン40のうち、本発明の特徴部分であるスクリーン本体部30について説明する。スクリーン本体部30は、投写レンズ20からの投写光が入射する面に、マイクロレンズアレイ201を有する。マイクロレンズアレイ201は、光学素子であるマイクロレンズ素子210が複数設けられている。マイクロレンズアレイ201は、マイクロレンズ素子210の凸部212を、射出方向であるZ方向に向けて設けられている。
【0031】
マイクロレンズアレイ201の射出側には、接着層202が設けられている。接着層202は、マイクロレンズアレイ201と透明層203とを接着する。透明層203の射出側には、遮光パターン層204が設けられている。遮光パターン層204は、マイクロレンズ素子210からの光を透過させる開口部206と、開口部206どうしの間に設けられた遮光部208とを備える。透明層203は、マイクロレンズアレイ201と遮光パターン層204との間に設けられている。接着層202は、マイクロレンズアレイ201の、遮光パターン層204がある側の面に設けられている。遮光部208は、感光性部材である感光性樹脂により構成されている。
【0032】
図3は、マイクロレンズアレイ201と遮光パターン層204との対応を説明するものである。ここではスクリーン本体部30のうちマイクロレンズアレイ201及び遮光パターン層204のみを図示し、接着層202及び透明層203の図示を省略している。マイクロレンズアレイ201は、Y方向に長手方向を有するマイクロレンズ素子210を、X方向に並列する。このように、複数のマイクロレンズ素子210はアレイ状に設けられている。各マイクロレンズ素子210は、遮光パターン層204が設けられている側に凸部212を向けて設けられている。
【0033】
遮光パターン層204の開口部206は、マイクロレンズアレイ201のマイクロレンズ素子210に対応して設けられている。遮光部208は、開口部206どうしの間に設けられている。マイクロレンズ素子210と同様に、開口部206及び遮光部208のいずれもY方向に長手方向を有し、かつX方向に並列されている。
【0034】
図4は、スクリーン本体部30内における入射光Linの進行を説明するものである。ここではマイクロレンズ素子210による入射光Linの屈折作用を主に説明するために、接着層202における屈折作用の図示を省略する。フレネルレンズ31からスクリーン本体部30に入射する入射光Linは、まずマイクロレンズアレイ201に入射する。入射光Linは、マイクロレンズアレイ201のうち、マイクロレンズ素子210の凸部212がある側とは反対側の面から入射する。マイクロレンズアレイ201に入射した入射光Linは、マイクロレンズ素子210の凸部212側の面を通過するときに屈折作用を受ける。
【0035】
開口部206は、マイクロレンズ素子210の焦点位置の近傍に設けられている。マイクロレンズ素子210の凸部212側の面を通過した光は、開口部206で集光される。そして、開口部206で集光された光は、射出光Loutとなってスクリーン40から射出する。遮光パターン層204は、マイクロレンズ素子210の焦点位置の近傍に開口部206を設ける。このため、遮光部208は、マイクロレンズ素子210の焦点位置の近傍以外の位置に設けられている。
【0036】
マイクロレンズアレイ201を射出した光は、接着層202に入射するときも接着層202の屈折率に応じて屈折作用を受ける。ここで、接着層202としては、マイクロレンズアレイ201を構成する部材より屈折率が低い部材により構成することが望ましい。マイクロレンズアレイ201より屈折率が低い部材で構成される接着層202を設けることで、入射光Linを開口部206において集光することができる。
【0037】
このように開口部206で入射光Linを集光する構成とすると、画像信号に応じた光が遮光部208へ入射することを低減できる。また、遮光パターン層204において遮光部208が占める部分を大きくすることができることから、観察者OBS側からの外光が観察者OBSの方向へ反射することを低減できる。画像信号に応じた光の損失を減らし、かつ外光の反射を低減できることから、プロジェクタ10は、高コントラストな画像を表示できる。また、マイクロレンズアレイ201は、射出光Loutを観察者OBS側の広い範囲へ進行させる。マイクロレンズアレイ201は、観察者OBS側の広い範囲で画像を観察するための広い視野角を確保する目的も果たす。
【0038】
近年、表示する画像が高精細になるに従い、マイクロレンズ素子210を小さくする必要が生じている。また、マイクロレンズ素子210を微小にすることで、画像のぎらつきであるシンチレーションを低減することも可能になる。入射光Linの入射側に凸部を向けてマイクロレンズアレイを形成する従来の構成では、マイクロレンズ素子の焦点距離に合わせてマイクロレンズアレイの厚みを設定する必要がある。広い視野角を維持しながらマイクロレンズ素子を小さくすると、マイクロレンズ素子の焦点距離は必然的に短くなる。このため、マイクロレンズ素子を小さくするほど、焦点距離以下の厚みのマイクロレンズアレイを製造しなければならないことになる。このような極薄型の光学素子アレイを製造することは困難である。また、極薄型の光学素子アレイを用いることで、スクリーンの強度を十分に確保することが困難となる。
【0039】
本実施例のスクリーン本体部30は、遮光パターン層204が設けられている側に凸部212を向けたマイクロレンズ素子210を有する。遮光パターン層204に凸部212を向けてマイクロレンズアレイ201を配置すると、マイクロレンズ素子210の焦点距離に関わらずマイクロレンズアレイ201の厚みを決定できる。高精細な表示やシンチレーションの低減のためにマイクロレンズ素子210を小型にしても、十分な厚みのマイクロレンズアレイ201を形成することができる。
【0040】
マイクロレンズアレイ201の厚みを十分に確保できることから、マイクロレンズアレイ201の製造を容易にできるほか、十分な強度を確保可能なスクリーン40を製造することができる。また、マイクロレンズアレイ201と遮光パターン層204との間に透明層203を設けることによって、マイクロレンズアレイ201と遮光パターン層204との間の距離は、容易に調整することができる。このため、マイクロレンズ素子210の焦点位置の近傍に遮光パターン層204を設けることが容易となる。
【0041】
本実施例のスクリーン40は小型のマイクロレンズ素子210を用いることが可能であるから、視野角特性に優れた画像を表示することができる。さらに、遮光パターン層204は、マイクロレンズ素子210の焦点位置の近傍の位置に感光性部材を形成した後、マイクロレンズ素子を介して感光性部材を露光することで容易に形成できる。これにより、外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示が可能で、容易に製造可能なスクリーン40を得られるという効果を奏する。
【0042】
ここで、図5−1及び図5−2を用いて、スクリーン40の製造手順を説明する。まず、図5−1に示す工程a、bにおいて、基板501に複数のマイクロレンズ素子210を形成することで、マイクロレンズアレイ201を形成する。工程a、bは、複数のマイクロレンズ素子210を形成する光学素子形成工程である。マイクロレンズ素子210は、凸部を有し、アレイ状に設けられている。マイクロレンズアレイ201は、例えば、機械加工により金型を形成し、金型の形状を樹脂部材に型転写する方法、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程とを組み合わせて形成する方法により形成できる。フォトリソグラフィ工程においては、まずスパッタリング法、蒸着法、CVD法などによりフォトマスクを作成する。基板501には、予めレジスト層を形成する。そして、フォトマスクのパターンをレジスト層に転写した後、エッチング工程により等方性エッチングを行う。このようにして基板501にマイクロレンズアレイ201が形成される。また、エッチングした基板501を型としてレプリカを作成しても良い。
【0043】
次に、図5−1に示す工程cにおいて、マイクロレンズ素子210の上に接着層502を載せる。工程cは、マイクロレンズ素子210の凸部を向けた側に接着層502を形成する接着層形成工程である。接着層502は、例えば光硬化性樹脂を用いて形成できる。そして、工程dにおいて、接着層502の上に透明層203を載せた後接着層502を固化させる。このようにして、マイクロレンズアレイ201と透明層203との間に接着層202を形成する。透明層203は、接着層202によってマイクロレンズ素子210の凸部に固定される。
【0044】
次に、図5−2に示す工程eにおいて、透明層203の上に、感光性部材を有する感光層504を形成する。工程eは、透明層203を介して、マイクロレンズ素子210の凸部を向けた側に感光層504を形成する感光層形成工程である。感光層504は、透明層203を介してマイクロレンズ素子210の上にシート状の感光性部材を積層することで形成できる。シート状の感光性部材としては、透明樹脂からなるシート基材に、光吸収性の顔料あるいは染料を含有させたポジ型感光性樹脂を用いることができる。感光層504は、透明層203の厚みを調整することで、マイクロレンズ素子210の焦点位置近傍の位置に配置する。なお、感光層形成工程において、シート状の感光性部材を積層する場合に限らず、透明層203を介してマイクロレンズ素子210の上に液状の感光性部材を塗布することで感光層504を形成することとしても良い。液状の感光性部材を用いる場合、塗布された感光性部材をプリベイクすることで、感光層504を形成する。
【0045】
次に、図5−2に示す工程fにおいて、マイクロレンズ素子210を介して感光層504に光を入射する。工程fは、感光層504を露光する露光工程である。マイクロレンズアレイ201の、凸部とは反対側の面から入射した光は、マイクロレンズ素子210、接着層202、透明層203を透過し、感光層504上の位置に集光する。このようにして、露光工程では、感光層504のうちマイクロレンズ素子210の焦点位置近傍の位置を露光する。
【0046】
さらに、図5−2に示す工程gにおいて、感光層504を現像液に浸すことにより現像を行う。感光層504を現像液に浸すと、感光層504のうち露光した部分のみが溶解する。このようにして、感光層504のうち露光工程で露光した部分に開口部206が形成される。また、露光工程で露光した部分以外の部分には遮光部208が形成される。工程gは、マイクロレンズ素子210に対応するパターンの開口部206及び遮光部208を有する遮光パターン層204を形成する遮光パターン層形成工程である。以上のようにして形成したスクリーン本体部30にフレネルレンズ31を貼り合わせることで、スクリーン40の製造が完了する。
【0047】
マイクロレンズアレイ201と遮光パターン層204とを有するスクリーン40を製造する方法としては、別個に製造されたマイクロレンズアレイ201と遮光パターン層204とを貼り合せることが考えられる。この場合、マイクロレンズ素子210を小さくするに従い、開口部206の位置とマイクロレンズ素子210とを正確に整合させて遮光パターン層204を形成することが非常に困難となる。本実施例のスクリーン40は上記の手順で製造可能であるから、精密な位置合わせによってマイクロレンズ素子210と遮光パターン層204とを貼り合わせる工程が不要である。従って、微小なマイクロレンズ素子210を設ける場合であってもスクリーン40を容易に製造することができる。
【0048】
本実施例では、マイクロレンズ素子210と遮光パターン層204との間に接着層202及び透明層203を設ける構成としているが、これに限られない。マイクロレンズ素子210の焦点位置近傍に開口部206を形成可能であれば、接着層202を設けず、マイクロレンズアレイ201と透明層203とを直接重ね合わせる構成としても良い。さらに、マイクロレンズ素子210と遮光パターン層204の間に、接着層202及び透明層203以外の他の層を設ける構成としても良い。
【0049】
図6は、スクリーン40の変形例を説明するものである。マイクロレンズアレイ601は、マイクロレンズ素子610を、X方向及びY方向にマトリクス状に配列する。複数のマイクロレンズ素子610は、遮光パターン層604が設けられている側に凸部612を向けて設けられている。遮光パターン層604の開口部606は、マイクロレンズアレイ601のマイクロレンズ素子610に対応してマトリクス状に設けられている。遮光部608は、開口部606どうしの間を取り囲むように設けられている。このようにマイクロレンズ素子610及び開口部606をマトリクス状に配置する場合であっても、外光反射の低減、広い視野角の確保、高精細な表示が可能で、容易に製造可能なスクリーン40を得られる。なお、本実施例では、光学素子としてマイクロレンズ素子210を用いる構成を説明しているが、これに限らず、レンチキュラーレンズやマイクロプリズム素子等屈折作用を有する他の光学素子を用いることとしても良い。
【実施例2】
【0050】
図7は、本発明の実施例2に係るスクリーン本体部730の要部断面構成を示す。本実施例のスクリーン本体部730は、上記のスクリーン40に適用することができる。スクリーン本体部730は、保護層707を有することを特徴とする。保護層707は、画像信号に応じた光を観察者側へ拡散させる光拡散層である。保護層707は、スクリーン本体部730の観察者側の面、言い換えると、遮光パターン層204に対して、マイクロレンズアレイ201がある側とは反対側に設けられている。
【0051】
光拡散層としては、透明部材に、透明部材とは屈折率が異なる微粒子を含有させたシートや、表面に光拡散処理を施したシートなどを用いることができる。保護層707として光拡散層を用いると、開口部206を透過した光を拡散させることができる。これにより、光拡散効果を向上させ、さらに視野角特性に優れたスクリーン40を得られるという効果を奏する。
【0052】
図8は、実施例2の変形例に係るスクリーン本体部830の要部断面構成を示す。本変形例のスクリーン本体部830は、さらに透明層803が光拡散層であることを特徴とする。透明層803として光拡散層を用いると、開口部206へ入射する光を拡散させることができる。これにより、さらに光拡散効果を向上させることができる。スクリーン本体部830は、透明層803と保護層707との両方を光拡散層で構成している。透明層803と保護層707との両方を光拡散層で構成する以外に、透明層803のみを光拡散層とし、保護層707に光拡散機能を持たせない構成としても良い。
【0053】
ここで、透明層803と保護層707との両方を光拡散層で構成する利点について説明する。例えば、透明層803のみによって光拡散性を確保しようとすると、スクリーン40の製造時において、感光層504の露光を十分に行えないことがあると考えられる(図5−2参照)。また、保護層707のみによって光拡散性を確保しようとすると、外光の拡散も増加させることから、画像が白くぼけて見える場合があると考えられる。
【0054】
このため、保護層707と透明層803との双方に光拡散機能を持たせることにより、映像光の光拡散性を維持しながら、感光層504の露光、外光の拡散の不具合を低減することが可能になる。さらに、映像光を2段階で拡散することにより、拡散光が干渉し合うことを低減し、シンチレーションを低減することも可能となる。感光層504の露光、外光の拡散の不具合を低減するためには、保護層707のヘイズ値と透明層803のヘイズ値とを略同一とするか、保護層707のヘイズ値を透明層803のヘイズ値より大きい値とすることが望ましい。
【0055】
なお、上記各実施例のプロジェクタは、光源部として超高圧水銀ランプを用いているが、これに限られない。例えば、発光ダイオード素子(LED)等の固体発光素子を用いても良い。また、3つの透過型液晶表示装置を設けたいわゆる3板式のプロジェクタに限らず、例えば、反射型液晶表示装置を用いたプロジェクタやティルトミラーデバイスを用いたプロジェクタであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係るスクリーンは、プレゼンテーションや動画を表示する場合に有用であり、特に、プロジェクタからの投写像を表示する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1に係るプロジェクタの概略構成図。
【図2】スクリーン本体部の要部斜視構成図。
【図3】マイクロレンズアレイと遮光パターン層との対応の説明図。
【図4】スクリーン本体部内における入射光の進行を説明する図。
【図5−1】スクリーンの製造手順を示す図。
【図5−2】スクリーンの製造手順を示す図。
【図6】スクリーン本体部の変形例の説明図。
【図7】本発明の実施例2に係るスクリーン本体部の要部断面構成図。
【図8】実施例2の変形例に係るスクリーン本体部の要部断面構成図。
【符号の説明】
【0058】
10 プロジェクタ、11 超高圧水銀ランプ、12 インテグレータ、13 偏光変換素子、14R R光透過ダイクロイックミラー、14G B光透過ダイクロイックミラー、15 反射ミラー、16 リレーレンズ、17R、17G、17B 空間光変調装置、18 クロスダイクロイックプリズム、18a、18b ダイクロイック膜、20 投写レンズ、21 反射ミラー、30 スクリーン本体部、31 フレネルレンズ、40 スクリーン、201 マイクロレンズアレイ、202 接着層、203 透明層、204 遮光パターン層、206 開口部、208 遮光部、210 マイクロレンズ素子、212 凸部、501 基板、502 接着層、504 感光層、601 マイクロレンズアレイ、604 遮光パターン層、606 開口部、608 遮光部、610 マイクロレンズ素子、612 凸部、707 保護層、730 スクリーン本体部、803 透明層、830 スクリーン本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部を有し、アレイ状に設けられた複数の光学素子と、
前記光学素子からの光を通過させる開口部と、前記開口部どうしの間に設けられた遮光部と、を備える遮光パターン層と、を有し、
前記光学素子は、前記遮光パターン層が設けられている側に前記凸部を向けて設けられ、
前記開口部は、前記光学素子の焦点位置の近傍に設けられ、
前記遮光部は、前記光学素子の焦点位置の近傍以外の位置に設けられることを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記光学素子と前記遮光パターン層との間に、透明層を有することを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記遮光パターン層に対して、前記光学素子がある側とは反対側に保護層を有し、
前記保護層は、光を拡散させる光拡散層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記透明層は、光を拡散させる光拡散層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記光学素子の、前記遮光パターン層がある側の面に、接着層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記遮光部は、感光性部材により構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスクリーン。
【請求項7】
凸部を有し、アレイ状に設けられた複数の光学素子を形成する光学素子形成工程と、
前記光学素子の前記凸部を向けた側に、感光性部材を有する感光層を形成する感光層形成工程と、
前記光学素子を介して前記感光層に光を入射させ、前記感光層のうち前記光学素子により光を集光させた部分を露光する露光工程と、
前記感光層のうち前記露光工程で露光した部分に開口部、前記露光工程で露光した部分以外の部分に遮光部、を有する遮光パターン層を形成する遮光パターン層形成工程と、
を含むことを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項8】
前記感光層形成工程において、前記光学素子の上にシート状の感光性部材を積層することで前記感光層を形成することを特徴とする請求項7に記載のスクリーンの製造方法。
【請求項9】
前記感光層形成工程において、前記光学素子の上に液状の感光性部材を塗布することで前記感光層を形成することを特徴とする請求項7に記載のスクリーンの製造方法。
【請求項10】
前記光学素子の前記凸部を向けた側に接着層を形成する接着層形成工程を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のスクリーンの製造方法。
【請求項11】
光を供給する光源部と、
前記光源部からの光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のスクリーンと、を有するプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−39245(P2006−39245A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219644(P2004−219644)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】