説明

スクリーンスピーカシステム

【課題】設計上の制約を受けることなく、簡易な手段で、スクリーンスピーカシステムの音質を向上させること
【解決手段】投影機にて投射される映像を映し出すスクリーン12と、スクリーン12を駆動する駆動体と、を有し、スクリーン12から音を放出するスクリーンスピーカシステムにおいて、スクリーン12の裏面に当該スクリーン12を補強する補強部材30を装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から投射された映像を映し出すスクリーンから音を放出するスクリーンスピーカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリーンの中央に配置されるボイスコイルにセンタースピーカ用の信号を送り、その左右に配置されるボイスコイルに左右チャンネル用の信号を送り、スクリーンの前方より音を放出させる直接駆動型スクリーンスピーカシステムが存在する。このようなタイプのスクリーンスピーカシステムとしては、例えば、特許文献1に開示されているものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−64932号公報(図21〜図23)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のスクリーンスピーカシステムに採用されている振動板(スクリーン)は、一般のコーン形状を有する振動板と異なり、平板状を有している。そのため、コーン形状を有する振動板と比較して定在波が発生しやすい。この定在波の発生は、スクリーンスピーカシステムの音質に悪影響を及ぼす。
【0005】
かかる定在波の発生を防止するため、特許文献1記載のスクリーンスピーカシステムでは、振動板と筐体との間にクッション等からなる支持体を配置させている。
【0006】
しかしながら、支持体を目的に応じて装着するためには、少なくとも振動板側と筐体側に支持体を固定または保持するための箇所を設けなければならない。そのため、支持体を配置する前提で筐体等の設計を行わなければならず、結果的に、スクリーンスピーカシステムを設計する上で制約を受けることとなる。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、設計上の制約を受けることなく、簡易な手段で、音質を向上させることが可能なスクリーンスピーカシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、投影機にて投射される映像を映し出すスクリーンと、スクリーンを駆動する駆動体と、を有し、スクリーンから音を放出するスクリーンスピーカシステムにおいて、スクリーンの裏面に当該スクリーンを補強する補強部材を装着するものである。
【0009】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、補強部材は、スクリーンと同一の材質から成るものである。
【0010】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、補強部材は金属からなるものである。
【0011】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、金属をアルミニウムまたはアルミニウム合金とした。
【0012】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、補強部材の断面は、V字状または円弧状を有しており、当該V字状または円弧状の両端部からは、スクリーンに固定するための部分となる貼り代部が延出しているものである。
【0013】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、補強部材においてV字状を形成する2つの脚部の間の角度を90度とした。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、補強部材の厚さを、スクリーンの厚さの1/3以上3/2以下の範囲とした。
【0015】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、スクリーンの裏面に装着した状態における補強部材のスクリーン裏面からの高さ寸法を、補強部材またはスクリーンの厚さの3倍以上15倍以下の範囲の値とした。
【0016】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、貼り代部の幅寸法を、V字状または円弧状の両開口端内側を結んだ長さの1/6以上1倍以下の範囲の値とした。
【0017】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、補強部材は、スクリーンの裏面に2液混合型のアクリル系接着剤を用いて装着されているものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、設計上の制約を受けることなく、簡易な手段で、スクリーンスピーカシステムの音質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係るスクリーンスピーカシステムについて、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、スクリーンスピーカ11を示す斜視図であり、図2は、支持体20の構成を示す斜視図である。図3は、スクリーンスピーカ11に使用される支持体20を構成する外周枠21を示す斜視図である。図4は、スクリーンスピーカ11に使用される外周枠21の角部Pを示す図で、(A)は、2つの杆体21L,21SをL金具23により固定する構成を示す組立図であり、(B)は、2つの杆体21L,21SをL金具23により固定した構成を示す部分断面図である。なお、以下の説明では、図1〜図3および図5〜図8において、左側とは矢示X1方向を指し、右側とは矢示X2方向を指すものとする。また、上方とは矢示Y1方向を指し、下方とは矢示Y2方向を指すものとする。また、本実施の形態では、スクリーン12を駆動させるための駆動体の一例としては、磁気回路(不図示)とボイスコイル(不図示)とを有する駆動体(図示省略)が採用されており、また、ハウジングとしては磁気回路(不図示)を保持するための磁気回路ハウジングHが採用されている。なお、駆動体としては、圧電素子等の他の部材を採用しても良いし、ボイスコイルと圧電素子等を併用しても良い。
【0021】
スクリーンスピーカ11は、スクリーンスピーカシステムの一部を構成する直接駆動型のスクリーンスピーカであり、図1に示すように、表面側に装着され、外部からの映像を映し出すスクリーン12と、スクリーン12の背面側に配置され、該スクリーン12を保持する筐体14と、スクリーン12を振動させる駆動体(不図示)と、から主に構成されている。また、筐体14は、支持体20と、支持体20の背面側に装着される不図示の裏板と、から主に構成されている。
【0022】
スクリーンスピーカ11の外形寸法は、幅(左右方向の長さ)が1680mm、高さ(上下方向の長さ)が895mm、厚さが(裏板(不図示)の厚さ含む)36mmである。この実施の形態では、縦横比が9:16に構成される、いわゆる75インチのスクリーンサイズのものを一例として示している。スクリーン12の厚さは0.8mmである。なお、スクリーン12の厚さは0.8mmに限定されるものではない。
【0023】
図2では、紙面表側がスクリーンスピーカ11の背面側になり、紙面裏側がスクリーンスピーカ11の表面側になるように示されている。支持体20は、枠組み構造になっていて、外周枠21、内側枠22、および保持体24から構成されている。外周枠21は、長方形を呈し、スクリーンスピーカ11の外形寸法に合わせて、外側の寸法が、左右方向の長さが1680mm、上下方向の長さが895mmとなっている。
【0024】
この外周枠21は、左右方向に配置され、外周枠21の上下の枠を構成する2本の杆体21Lと、縦方向に配置され、左右の枠を構成する2本の杆体21Sを有している。外周枠21は、枠の4つの角において、L金具23を介して杆体21Sと杆体21Lを互いに固定した構造を有している。
【0025】
具体的には、杆体21L,21Sの端部は、端部を互いに合わせたときに、杆体21L,21Sが互いに直角となるように接合されている。図4に示すように、杆体21L,21Sの端部は、外枠体21が長方形を呈するように、底板部21Lb,21Sbの側から開口部の側に向かって45度斜めに形成されている。杆体21Lと杆体21Sは、45度斜めに形成された端部同士を合わせ、直角に接合した状態で、杆体21L,21Sの内側、すなわち溝側から杆体21Lと杆体21Sが接合する角部PにL金具23を配置させ、このL金具23により杆体21Lと杆体21Sを互いに固定する。L金具23と杆体21L,21Sとは、ねじSによって固定される。
【0026】
杆体21L,21Sは、アルミニウム製であり、その断面の形状は、図4に示すように、略コ字型になっている。つまり、杆体21Lは、底板部21Lbとこの底板部21Lbの両側に側板部21Lsを有し、底板部21Lbと対向する側を開口した溝型の部材である。また、杆体21Sも、底板部21Sbとこの底板部21Sbの両側に側板部21Ssを有し、底板部21Sbと対向する側を開口した溝型の部材である。杆体21L,21Sは、底板部21Lb,21Sbを外周側に配置し、開口部の側を枠の内側に向けて配設されている。杆体21L,21Sは、底板部21Lb,21Sbの外側の幅Wbが30mm、側板部21Ls,21Ssの外側の幅Wsが25mmに形成されている。また、底板部21Lb,21Sbおよび側板部21Ls,21Ssを構成する板体の厚さは3mmである。スクリーン12の厚さが0.8mmであるため、底板部21Lb,21Sbおよび側板部21Ls,21Ssの板厚は、スクリーン12の厚さの3.75倍に形成されている。なお、杆体21L,21Sは、押し出し成型により形成されている。外周枠21を構成する杆体21L,21Sを、断面形状を略コ字型とし、加えて、板厚をスクリーン12の厚さの3倍以上10倍以下(本実施の形態では3.75倍)とすることにより、音質に影響を与えることなく支持体20の強度を確保することができる。
【0027】
また、杆体21L,21Sには、それぞれ、ねじSを通すねじ挿通孔21Lh,21Shが2つずつ形成されている。2つのねじ挿通孔21Lhの間には、孔21Lh’が形成されている。また、2つのねじ挿通孔21Shの間には、孔21Sh’が形成されている。
【0028】
一方、L金具23は、一方の辺部23Aには、ねじSが螺合することなく挿通するように2つのねじ挿通孔23hが形成されている。2つのねじ挿通孔23hの間には孔23h’が形成されている。また、L金具23の他方の辺部23Bには、ねじSが螺合する2つのねじ孔23hmが形成されている。また、2つのねじ孔23hmの間には孔23h’が形成されている。
【0029】
L金具23の一方の辺部23Aの2つのねじ挿通孔23hとその間の孔23h’、および、他方の辺部23Bの2のねじ孔23hmとその間の孔23h’は、それぞれ次のような位置に形成される。すなわち、L金具23をL字の外側を杆体21Lと杆体21Sが交差する直角部の側に向け、辺部23Aを杆体21Lに沿わせるとともに辺部23Bを杆体21Sに沿わせた状態では、杆体21L側のねじ挿通孔21Lhに対向する位置にねじ挿通孔23hが位置し、さらに、孔21Lh’に対向する位置に孔23h’が位置するように形成される。また、杆体21S側のねじ挿通孔21Shに対向する位置にねじ孔23hmが位置し、さらに、孔21Sh’に対向する位置に孔23h’が位置するように形成される。
【0030】
そして、杆体21SとL金具23とは、ねじSがねじ孔23hmに螺合することにより、互いに固定される。また、杆体21LとL金具23とは、ねじ挿通孔21Lhとねじ挿通孔23hに通されたねじSの先端側にナットNを螺合して互いに固定される。
【0031】
このように、外周枠21は、杆体21Lと杆体21Sが、L金具23により互いに固定されることにより枠体として構成されている(図4(B)参照)。
【0032】
図5は、スクリーンスピーカ11に使用される支持体20を構成する外周枠21と内側枠22を示す斜視図である。
【0033】
図5に示すように、外枠体21には、左右方向に3等分する位置に、内側枠22が、上下の杆体21Lに掛け渡され、L金具23により杆体21Lと内側枠22が互いに固定されている。この内側枠22は、2本の杆体22Aから構成されている。杆体22Aは、アルミニウム材を押し出し成型することにより製造され、その断面を略コ字型としている。
【0034】
内側枠22は、L金具23を介して杆体21Lに固定されている。具体的には、図5に示すように、内側枠22の左右両側にL金具23を配置させる。そして、杆体21Lの側から杆体21Lに形成されているねじ挿通孔21LkにねじSを挿通させ、挿通されたねじSにナットNを螺合する。これにより、L金具23は杆体21Lに対して固定される。さらに、ねじSr1を、内側枠22の左側に配置されているL金具23のねじ挿通孔23rおよび内側枠22に形成されているねじ挿通孔22sに挿通させる。そして、ねじSr1を内側枠22の右側に配置されているL金具23のねじ孔23tに螺合させる。これにより、内側枠22の左右両側にL金具23が固定される。その結果、内側枠22は、L金具23を介して杆体21Lに固定されることとなる。
【0035】
このように、内側枠22を、外枠体21の杆体21Lに掛け渡し固定することにより、外枠体21が補強され、剛性が高まる。また、スクリーンスピーカ11の、センター、左、右の各出力チャンネルを構成するキャビティ用の仕切りとしても機能する。つまり、セシターチャンネル、左チャンネル、及び右チャンネルが、各々独立したキャビティを構成することができる。また、キャビティを構成する仕切りである内側枠22は、2つの杆体22Aが背中合わせに重ねられている。このため、内側枠22は、2重の仕切りとなっている。したがって、キャビティ間での音の混和を低減することができる。
【0036】
図6は、磁気回路ハウジングHを保持枠24の中央部に保持した状態を示す斜視図である。
【0037】
磁気回路ハウジングHは、図6に示すように、平面視において略正方形をした直方体を呈している。また、保持枠24は、図6に示すように、左右方向に並設される2本の杆体25と、この2本の杆体25の両側に上下に2本ずつ平行に並設される合計4本の杆体26とが井桁状に組み合わされて構成されている。
【0038】
杆体25は、平板部25Aと、この平板部25Aの中心に沿って直角に設けられる垂板部25Bと、を有している。つまり、杆体25は、その断面が略T字状に構成されている。杆体25は、磁気回路ハウジングHの左右にそれぞれ備えられている。
【0039】
磁気回路ハウジングHの左右の側面には、それぞれ2箇所にねじSが螺合するねじ孔(不図示)が設けられている。また、磁気回路ハウジングHの左右に配置される杆体25の垂板部25Bには、磁気回路ハウジングHに形成されたねじ孔(不図示)に対応した位置にねじSが挿通するための、ねじ挿通孔(不図示)が形成されている。そして、ねじSをねじ挿通孔(不図示)に通して、磁気回路ハウジングHのねじ孔(不図示)に螺合することにより、杆体25を磁気回路ハウジングHに対して固定できる。磁気回路ハウジングHの左右の側面と垂板部25Bは互いに平面となっているため、磁気回路ハウジングHは、その左右の側面が垂板部25Bに密着した状態で固定されることになる。
【0040】
杆体25は、アルミニウム材からなる押し出し成型により製造されている。平板部25Aの幅は23mmに、垂板部25Bの幅は25mmに形成されている。また、杆体21L,21Sのそれぞれの厚さは3mmである。つまり、平板部25Aの幅は、杆体21L,21Sの厚さの約7.6倍となっており、また、垂板部25Bの幅は、杆体21L,21Sの厚さの約8.3倍になっている。さらに、平板部25Aと垂板部25Bの厚さは杆体21L,21Sと同じ3mmとなっている。また、平板部25Aの長さは、上下の杆体21Lに掛け渡せるように88.8mmとなっている。平板部25A,垂板部25Bの厚さを外周枠21を構成する杆体21L,21Sの板厚と同等以上4倍以下(本実施の形態では同じ)とし、また、平板部25A,垂板部25Bの幅を、杆体21L,21Sの板厚の5倍以上、20倍以下(本実施の形態では、平板部25Aについては約7.6倍、垂板部25Bについては約8.3倍)とすることにより、スクリーンスピーカ11の軽量化を図るとともに支持体20の剛性を確保することができる。
【0041】
上述したように、磁気回路ハウジングHを内側に保持する2本の杆体25の左右には、上下に2本ずつ杆体26が設けられる。この杆体26も、杆体25と同様に断面が略T字状に構成され、平板部26Aとこの平板部26Aの中心に沿って直角に設けられる垂板部26Bとを有している。また、各杆体26は、図6に示すように、杆体25の垂板部25Bを挟んで配置される合計8つのL金具27により杆体25および磁気回路ハウジングHに固定されている。
【0042】
以上のように、磁気回路ハウジングHは、杆体25と杆体26により井桁状に組まれた保持枠24の中央部に保持されることになる。なお、上述したように、磁気回路ハウジングHの左右の面が杆体25の垂板部25Bに密着した状態で固定されることにより、磁気回路ハウジングHの保持枠24に対する保持が確実になる。このため、異常な振動を防止でき、音質の向上が図れる。また、大入力時における磁気回路からの熱を杆体25側に逃がす放熱効果の向上を図ることができる。
【0043】
磁気回路ハウジングHを保持する保持枠24は、図2に示すように、内側枠22によって区切られる3つのキャビティにそれぞれ配設され、L金具23により支持体20に対して固定される。つまり、各保持枠24の杆体25は、上下の杆体21LにL金具23によりねじを用いて固定される。具体的には、左右のキャビティに配設される各保持枠24を構成する左右の杆体26のうちの一方の杆体26は、杆体21Sに、他方の杆体26は内側枠22に、L金具23によりねじを用いて固定される。また、中央のキャビティに配設される保持枠24を構成する杆体26は、内側枠22に対してL金具23によりねじを用いて固定される。
【0044】
各キャビティに磁気回路ハウジングHおよび保持枠24が配設された状態では、図2に示すように、各キャビティ内は、左上段に形成される左上領域28a、中央上段に形成される中上領域28b、右上段に形成される右上領域28c、左中段に形成される左中領域28d、右中段に形成される右中領域28e、左下段に形成される左下領域28f、中央下段に形成される中下領域28gおよび右下段に形成される右下領域28hの8つの領域に主に分割される。
【0045】
図7は、補強部材30をスクリーン12に装着する前の状態を示す斜視図である。図8は、補強部材30が装着されたスクリーン12を支持体20に装着した状態を示す斜視図である。
【0046】
図7に示すように、スクリーン12の裏面には、合計102個の補強部材30が、一定の配列で並べられた状態で装着される。
【0047】
補強部材30が装着されたスクリーン12を支持体20に装着した状態では、図8に示すように、左上領域28a、右上領域28c、左下領域28fおよび右下領域28hの各領域には、それぞれ6個の補強部材30が配置されることとなる。また、中上領域28bおよび中下領域28gの各領域には、それぞれ4個の補強部材30が配置されることとなる。さらに、左中領域28dおよび右中領域28eの各領域には、それぞれ1個の補強部材30が配置されることとなる。
【0048】
具体的には、左上領域28a、右上領域28c、左下領域28fおよび右下領域28hのそれぞれには、縦方向に2列に並ぶように、各列上下方向に渡って3つずつの補強部材30が装着されている。そして、これらのうち、上方に装着されている2つの補強部材30は、略V字状をなすように配置されており、その下に装着されている2つの補強部材30は、互いが上下方向に向かって平行に配置されている。また、その下方に装着されている2つの補強部材30は、略ハの字状となるように配置されている。中上領域28bおよび中下領域28gのそれぞれには、上下に2つずつの補強部材30が装着されており、これらのうち上方に装着されている2つの補強部材30は、略V字状となるように配置されており、その下方に装着されている2つの補強部材30は、略ハの字状となるように配置されている。左中領域28dおよび右中領域28eのそれぞれには、左右方向に沿うように、それぞれ1つずつの補強部材30が配置されている。
【0049】
次に、補強部材30の構成について説明する。図9は、補強部材30の構成を示す図であり、(A)は、その斜視図であり、(B)は、(A)において矢示A方向から見た側面図であり、(C)は、(B)において矢示B方向から見た正面図である。
【0050】
補強部材30は、図9(A)〜(C)に示すように、縦方向の寸法80mm、横方向の寸法30.4mm、厚さ0.5mmの略長方形の形状を有する平板を縦方向に向かう中心線Xに沿って、2つの脚部30a,30bの間の角度αが90度となるように折り曲げ、かつ該脚部30aの左端部および脚部30bの右端部のそれぞれを、縦方向に平行、かつ折り幅が5.2mmとなるように折り曲げることで形成される。なお、脚部30aの左端部および脚部30bの右端部は、脚部30aおよび脚部30bのそれぞれに対する角度βが135度となるように折り曲げられている。そして、この折り曲げられた部分は、貼り代部31a,31bを形成している。なお、上記平板の縦方向と横方向の寸法は上記の値に限定するものではない。さらに、貼り代部31a,31bは、接着剤等によりスクリーン12の裏面に固定するための部位である。補強部材30を、スクリーン12に装着した状態における補強部材30のスクリーン12からの高さYの寸法は、約7.5mmである。また、補強部材30におけるV字状の開口端内側を結ぶ幅Zの寸法は、約14.2mmである。補強部材30は、上記のような単純な形状を有しているため、プレス加工や単純な形状を有する金型によって形成することが可能である。
【0051】
また、補強部材30は、スクリーン12と同一の材質であるアルミニウムから成っている。これは、補強部材30をスクリーン12と同一の熱膨張係数を有する材質から形成することによって、ボイスコイル(不図示)の発熱によりスクリーン12と補強部材30との装着部近傍が熱膨張により変形するのを防止するためである。なお、補強部材30の材質は、アルミニウムに限定されることなく、アルミニウムと熱膨張係数が著しく異ならなければ、アルミニウム合金、ステンレスまたは銅等の他の金属であっても良い。補強部材30のスクリーン12への装着は、主剤と硬化剤の二液を用いた二液混合型のアクリル系接着剤をスクリーン12と貼り代部31a,31bとの間に介在させ、両者を接着させることによって行われる。
【0052】
次に、二液混合型アクリル系接着剤により補強部材30をスクリーン12に接着する方法について説明する。
【0053】
まず、スクリーン12の裏面において補強部材30が装着される部位のうち、貼り代部31a,31bが接着される位置をマーキングする。そして、マーキングされた部分に二液混合型アクリル系接着剤のうちの主剤を塗布し、ヘラあるいは刷毛等を用いて塗布部を均一な状態とする。
【0054】
次に、二液混合型アクリル系接着剤のうちの硬化剤を貼り代部31a,31bに塗布し、ヘラまたは刷毛を用いて塗布部を均一な状態とする。そして、スクリーン12の裏面において主剤が塗布された部分に硬化剤が塗布された貼り代部31a,31bを重ね合わせて圧定する。この圧定時に接着の安定性を確保するために、補強部材30をスクリーン12と摺り合わせる、いわゆる摺り合わせ作業を行う。摺り合わせ作業は、補強部材30を装着位置から、例えば、前後左右の任意の方向に約2mm〜3mm程度移動させて行う。
【0055】
該摺り合わせ作業を行った後、補強部材30は、接着剤の有する初期タック性により、ある程度の接着力を有した状態で装着位置に接着される。しかし、さらに、接着力を向上させるため、貼り代部31a,31bに所定の荷重を加える。例えば、所定重量の錘を補強部材30の上に所定時間(例えば、接着剤硬化時間)載置することにより行われる。ここで使用する接着剤の組成物としては、アクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体からなる重合性成分を含有し、且つ、一方の組成物には、酸化性組成物、例えば、有機性過酸化物、他方の成分には、レドックス重合を誘起する還元性組成物を含有してなる常温硬化性アクリル系接着剤組成物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以上の過程を経て、補強部材30は、スクリーン12の裏面に強力な接着力を有した状態で装着される。
【0056】
以上のようにして構成されたスクリーンスピーカシステムでは、スクリーン12の裏面に補強部材30を装着することによって、スクリーン12に発生する定在波の振動モードの数を減少させることが可能となる。また、補強部材30の装着形態を考慮すると、特に高音帯域においてスクリーン12が有する固有の振動モードを減少させることが可能である。このため、スクリーン12において高音帯域で共振が発生するのを防止できる。また、補強部材30をスクリーン12に装着することにより、スクリーン全体の重量が若干重くなるため、スクリーン12における基本モードでの定在波を低周波とすることができる。したがって、スクリーン12において音質に悪影響を及ぼす共振が発生するのを抑制することが可能となり、その結果、スクリーンスピーカ11から放たれる音質を大幅に向上させることができる。
【0057】
また、スクリーンスピーカシステムでは、補強部材30は、スクリーン12と同一の材質であるアルミニウムから成っている。そのため、ボイスコイル(不図示)等から発生する熱に起因してスクリーン12が膨張した場合、スクリーン12と補強部材30との間に相互に張力が働くことを防止でき、両者が互いに変形し合うのを防止できる。また、補強部材30は、軽金属であるアルミニウムから形成されているため、軽量でかつ大きな強度を有するものとなる。その結果、補強部材30は、大入力の場合でもスクリーン12の振動に耐えることが可能となる。
【0058】
また、スクリーンスピーカシステムでは、補強部材30はアルミニウムから形成されているため、熱伝導性が極めて高い。さらに、補強部材30をスクリーン12に装着することにより、キャビティ内の空間との接触面積が大きくなる。したがって、スクリーン12の放熱性が向上し、その結果、スクリーン12の耐久性が向上する。
【0059】
また、スクリーンスピーカシステムでは、補強部材30の断面形状はV字状をしており、その両端部には貼り代部31a,31bが設けられている。このように補強部材30は、単純な形状を有しているため、例えば、シャーやベンダー等の機械により簡単に製造することができると共に、単純な金型によっても製造することが可能である。したがって、補強部材30を大量生産することが可能となり、コストの低減を図ることができる。また、補強部材30における脚部30aと脚部30bとの間の角度が90度であるため、予め加工された材料の入手が可能となり、さらに量産性が高いものとなる。
【0060】
また、スクリーンスピーカシステムにおいて補強部材30がスクリーン12に装着された状態では、補強部材30における脚部30a,30bとスクリーン12との間には、補強部材30の長手方向に沿った貫通孔が形成されている。したがって、スクリーン12および補強部材30が過熱された場合、その過熱された空気は、該貫通孔の開口部から外部へ流れ出る。したがって、補強部材30とスクリーン12との間の空間に加熱された空気が溜まることがなく、スクリーンスピーカ11は高い放熱性を有することとなる。
【0061】
また、スクリーンスピーカシステムでは、補強部材30の厚さは、スクリーン12の厚さの約0.63倍であり、補強部材30のスクリーン12からの高さYの寸法は、スクリーン12の厚さの約9.4倍となっている。これらを考慮すると、補強部材30は、軽量で、かつ高強度を有する。したがって、補強部材30は、スクリーン12の振動に対して十分に追従できる耐久性を有する。
【0062】
また、スクリーンスピーカシステムでは、補強部材30の貼り代部31a,31bの幅は、補強部材30における幅Zの寸法の約0.37倍である。したがって、補強部材30に対して貼り代部31a,31b幅は十分確保されている。このため、補強部材30をスクリーン12に強固に固定できる。その結果、大入力で、かつ長時間スクリーン12を振動させた場合でも、補強部材30は該振動に耐えることができ、スクリーンスピーカ11に対する信頼性が向上する。
【0063】
また、スクリーンスピーカシステムでは、補強部材30は、主剤と硬化剤の二液による二液混合型のアクリル系接着剤を用いてスクリーン12に装着されている。そのため、極めて高い接着力で補強部材30をスクリーン12に対して固定できる。したがって、大入力で長時間スクリーン12を振動させても補強部材30がスクリーン12から剥離することがない。その結果、スクリーンスピーカ11の品質および音質の向上に伴い、高い信頼性を得ることができる。また、補強部材30を装着することによって、特に高音域におけるスクリーン12の有する固有の振動モードを減少させることが可能となるため、高音帯域での音質の向上を図ることが可能である。また、補強部材30のスクリーン12に対する接着工程が単純であるため作業性の向上を図ることができる。
【0064】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0065】
上述の実施の形態では、補強部材30における脚部30aと脚部30bとの間の角度αは90度とされているが、これに限定されることなく、60度あるいは120度等の他の角度としても良い。また、補強部材30は、断面がV字状を有する脚部30a,30bと、貼り代部31a,31bと、から構成されているが、この構成に限定されることなく、例えば、脚部30a,30bに相当する部分を、図10(A)〜(C)に示すような断面が円弧状を有する円弧部30cとしても良い。
【0066】
また、上述の実施の形態では、補強部材30の厚さは、0.5mmとされているが、これに限定されることなく、スクリーン12の有する厚さの1/3以上3/2以下の範囲としても良い。
【0067】
また、上述の実施の形態では、補強部材30のスクリーン12からの高さYの寸法は、約7.5mmとされているが、この値に限定されることなく、スクリーン12の有する厚さの3倍以上15倍以下の範囲の値としても良い。また、補強部材30におけるV字状の開口端を結ぶ幅Zの寸法は、約14.2mmとされているが、この値に限定されることなく、他の値としての良い。さらに、貼り代部31a,31bの幅の寸法は5.2mmとされているが、これらの値に限定されることなく、補強部材30におけるV字状の開口端を結ぶ幅Zの寸法、または、図10に示す円弧状の開口端を結ぶ幅Wの寸法の1倍以上1/6以下の範囲の値としても良い。
【0068】
また、上述の実施の形態では、補強部材30のスクリーン12への固定を、主剤と硬化剤の二液による二液混合型のアクリル系接着剤を用いて行っているが、これに限定されることなく、一種類の溶剤からなる接着剤を用いても良い。
【0069】
また、上述の実施の形態では、図7に示すように、102個の補強部材30を、所定の配列をもってスクリーン12に装着しているが、これに限定されることなく、補強部材30の配列を他の形態としたり、装着される補強部材30の数を異なる数とするようにしても良い。
【0070】
また、上述の実施の形態では、キャビティは、筐体14の内部に3つ設けられているが、これに限定されず、2つ以下あるいは、4つ以上としても良い。また、保持体24を井桁状に構成せず、他の形状となるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のスクリーンスピーカシステムは、スクリーンの全面より音を放出するスピーカ等の音響変換装置において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスクリーンスピーカを示す斜視図である。
【図2】図1のスクリーンスピーカに使用される支持体の構成を示す斜視図である。
【図3】図1のスクリーンスピーカに使用される支持体を構成する外周枠を示す斜視図である。
【図4】図1のスクリーンスピーカに使用される外周枠の角部を示す図で、(A)は、2つの杆体をL金具により固定する構成を示す組立図であり、(B)は、2つの杆体をL金具により固定する構成を示す図3の部位Aにおける断面図である。
【図5】図1のスクリーンスピーカに使用される支持体を構成する外周枠と内側枠を示す斜視図である。
【図6】図1のスクリーンスピーカに使用される支持体の構成を示す図で、保持枠の構成を示す斜視図である。
【図7】補強部材をスクリーンに装着する前の状態を示す斜視図である。
【図8】補強部材が装着されたスクリーンを支持体に装着した状態を示す斜視図である。
【図9】補強部材の構成を示す図であり、(A)は、その斜視図であり、(B)は、(A)において矢示A方向から見た側面図であり、(C)は、(B)において矢示B方向から見た正面図である。
【図10】補強部材の変形例を示す図であり、(A)は、その斜視図であり、(B)は、(A)において矢示C方向から見た側面図であり、(C)は、(B)において矢示D方向から見た正面図である。
【符号の説明】
【0073】
12…スクリーン
30…補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影機にて投射される映像を映し出すスクリーンと、上記スクリーンを駆動する駆動体と、を有し、上記スクリーンから音を放出するスクリーンスピーカシステムにおいて、
上記スクリーンの裏面に当該スクリーンを補強する補強部材を装着したことを特徴とするスクリーンスピーカシステム。
【請求項2】
前記補強部材は、前記スクリーンと同一の材質から成ることを特徴とする請求項1記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項3】
前記補強部材は金属からなることを特徴とする請求項1または2記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項4】
前記金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項3記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項5】
前記補強部材の断面は、V字状または円弧状を有しており、当該V字状または円弧状の両端部からは、前記スクリーンに固定するための部分となる貼り代部が延出していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項6】
前記補強部材において前記V字状を形成する2つの脚部の間の角度は90度であることを特徴とする請求項5記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項7】
前記補強部材の厚さは、前記スクリーンの厚さの1/3以上3/2以下の範囲であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項8】
前記スクリーンの裏面に装着した状態における前記補強部材の前記スクリーン裏面からの高さ寸法は、前記補強部材または前記スクリーンが有する厚さの3倍以上15倍以下の範囲の値であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項9】
前記貼り代部の幅寸法は、前記V字状または前記円弧状の両開口端内側を結んだ長さの1/6以上1倍以下の範囲の値であることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項記載のスクリーンスピーカシステム。
【請求項10】
前記補強部材は、前記スクリーンの裏面に2液混合型のアクリル系接着剤を用いて装着されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載のスクリーンスピーカシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−221706(P2007−221706A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43001(P2006−43001)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】