説明

スクリーンフィルタ

【課題】 スラッジを傾斜状態のスクリーン本体上で適切な速度で下降移動させることができて、そのスラッジから水分を十分に分離させることができるスクリーンフィルタを提供する。
【解決手段】 複数のスクリーンバー16をそれらの間にスリット17が形成されるように配列して、スクリーン本体12を構成する。スクリーン本体12を傾斜させた状態で、スクリーン本体12の上部側から下部側へ水を含むスラッジSを下降移動させて、そのスラッジSから水分を分離させるようにする。スクリーン本体12には、スラッジSの下降移動に対して抵抗を付与するための抵抗付与構造19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばウォータブース内でスプレー塗装を行う際に発生するスラッジのように、水を含んだスラッジから、水分を分離するためのスクリーンフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスクリーンフィルタとしては、例えば、特許文献1に開示されるような構成のものが提案されている。この従来構成においては、図7に示すように、スクリーン本体41が、複数のスクリーンバー42をそれらの間にスリット43が形成されるように配列することによって構成されている。そして、このスクリーン本体41が傾斜されており、このスクリーン本体41の上部側から下部側へ水を含むスラッジSが下降移動されることにより、そのスラッジSがその過程において凝集し、この凝集とともに、スラッジSから水分が自然分離されるようになっている。水分分離後のスラッジSは、廃棄のために回収される。
【特許文献1】特開平7−47354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来のスクリーンフィルタにおいては、平板状の各スクリーンバー42が前記スリット43を形成するための所定の間隔をおいて一平面上で配列されている。このため、スラッジSが傾斜状態のスクリーン本体41の上面に沿って下降移動される場合、その移動速度が速くて、そのスラッジSから水分を十分に分離する時間を確保できず、水分分離が不十分であるという問題があった。この問題を解決するためには、スクリーン本体41の傾斜角度を緩くすることが考えられるが、このように構成した場合には、スクリーン本体41の平面面積が大きくなって、装置全体の大型化を招いてしまうことになる。また、スクリーン本体41の傾斜角度を緩くすると、スラッジSの落下エネルギが小さくなり、スラッジSは下降移動速度が遅くなって、凝集しにくくなる。このため、水分分離を充分に行い得たとしても、スラッジが凝集していない分散状態でスクリーン本体上に残り、回収しにくくなる。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、スラッジから水分を十分に分離させることができるとともに、スクリーン本体の平面面積を小さくして装置を小型化できるようにしたスクリーンフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数のスクリーンバーをそれらの間にスリットが形成されるように配列してスクリーン本体を構成し、そのスクリーン本体を傾斜させた状態で、スクリーン本体の上部側に対してスラッジが混合された水を供給してスクリーン本体の上部側から下部側へスラッジを下降移動させて、そのスラッジから水分を分離させるようにしたスクリーンフィルタにおいて、前記スクリーン本体には、スラッジの下降移動に対して抵抗を付与するための抵抗付与手段を設けたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スクリーン本体は、複数のスクリーンバーを横方向へ平行に延びるように配列することによって構成され、前記抵抗付与手段は、スクリーンバーを隣接する他のスクリーンバーとそれらの幅端部においてラップさせた構成であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記スクリーン本体の裏面側には、スクリーンバー間のスリットの開口幅を保持するための保持手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記スクリーン本体に対して振動を付与するための振動付与手段を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記振動付与手段は、スラッジから分離された水の流下エネルギを利用して振動付与動作を行うことを特徴とするものである。
(作用)
請求項1に記載の発明においては、スラッジが傾斜状態のスクリーン本体上で下降移動される際に、抵抗付与手段によりスラッジの下降移動に対して抵抗が付与される。このため、スクリーン本体の傾斜角度を緩くしなくてもスラッジが適切な速度で下降移動されて、そのスラッジが凝集されながらスラッジから水分が効率よく分離される。よって、スラッジからの水分の分離効率を向上させることができるばかりでなく、スクリーン本体の平面面積を小さくすることができ、装置を小型化できる。
【0010】
請求項2に記載の発明においては、スラッジに対する抵抗付与のための構成は、スクリーンバーをラップさせただけであるから、抵抗付与手段の構成が簡単である。
請求項3に記載の発明においては、スクリーンバーの自重及びスラッジの重量により、スクリーンバー間のスリットの開口幅が広がるのを抑制することができる。よって、スリットの開口幅を一定に保持することができて、スラッジからの水分の分離効率を維持することができるとともに、スリットからのスラッジの落下を抑制できる。
【0011】
請求項4に記載の発明においては、スラッジがスクリーン本体上で下降移動される際に、振動付与手段によりスクリーン本体に対して振動が付与される。よって、スラッジがスクリーンバー上で長時間停止することなく下降移動されて、スクリーンバー間のスリットに詰まったりするのを抑制することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明においては、振動付与手段を駆動するために別のエネルギ源を用いる必要がない。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、スラッジを傾斜状態のスクリーン本体上で適切な速度で下降移動させることができて、そのスラッジから水分を十分に分離させることができるとともに、装置の構成の複雑化を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。
図1に示すように、分離ケース11は箱型に形成され、その前面上部には傾斜状の開口部11aが形成されるとともに、内底部には水Wを貯留するための水貯留部11bが形成されている。分離ケース11の開口部11aには、スクリーン本体12が傾斜状態で配設されている。なお、図面においては、スクリーン本体12は直線的に傾斜しているが、上部側ほど傾斜角度が大きい放物線状をなすように傾斜してもよい。スクリーン本体12の上端部と連続するように、分離ケース11内の上部にはオーバーフロー部13が区画形成されている。分離ケース11の後面上部には、スラッジSが混合された水を分離ケース11内に供給するための供給パイプ14が接続されている。そして、この供給パイプ14から分離ケース11内に供給されたスラッジSの混合水が、オーバーフロー部13からスクリーン本体12の前面側にオーバーフローされて、そのスクリーン本体12の上端部に供給されるようになっている。
【0015】
図1〜図3に示すように、前記スクリーン本体12は、一対の側板15と、両側板15間に所定間隔おきで横方向へ平行に延びるように配列された複数の平板状のスクリーンバー16とを備えている。各スクリーンバー16間には、スリット17が形成されている。両側板15間の中央に位置するように、スクリーン本体12の裏面側には保持手段としての保持板18が配設され、この保持板18によりスクリーンバー16が垂れ下がらないように下方から保持されて、スリット17の開口幅が一定に保たれるようになっている。そして、スラッジSを含む混合水がスクリーン本体12の上端部に供給されると、水を含んだスラッジSはスクリーン本体12上を上部側から下降移動される。このとき、下降過程においてスラッジSは、凝集するとともに、スラッジS中から水分が自然分離されて、各スクリーンバー16間のスリット17を介して落下される。
【0016】
前記スクリーン本体12には、スクリーン本体12上でのスラッジSの下降移動に対して抵抗を付与するための抵抗付与手段としての抵抗付与構造19が設けられている。すなわち、この実施形態においては、図3に示すように、抵抗付与構造19として、各スクリーンバー16が隣接する他のスクリーンバー16に対して、それらの幅端部で所定量だけラップするように配列されている。そして、このスクリーンバー16の幅端部のラップ配列により、スクリーン本体12の上面側に段差が連続して、スラッジSの下降移動に対して抵抗が付与されるようになっている。これらの数値は、必要に応じて適宜に設定される。
【0017】
ちなみに、この実施形態では、図3に示すように、スクリーン本体12の傾斜角度Rが45度程度となるように設定されている。また、スクリーンバー16の板厚T1が1mm、幅L1が10mmである。そして、スリット17の開口幅T2が0.5〜1.0mm、スクリーンバー16のラップ幅L2が5mm程度となるように設定されている。
【0018】
図1に示すように、前記スクリーン本体12の下端前部に対応して、分離ケース11の前方にはスラッジ回収ケース20が配設され、その下面にはスラッジ排出パイプ21が接続されている。そして、スラッジSがスクリーン本体12の下端部まで下降移動され後、このスラッジ回収ケース20内に落下して回収されるようになっている。分離ケース11の後面下部には、排水パイプ22が接続されている。そして、スラッジSから分離されて分離ケース11の水貯留部11bに貯留された水Wが、この排水パイプ22から排出されて図示しないウォータブース等に循環供給されるようになっている。
【0019】
図1及び図4に示すように、前記スクリーン本体12の下端上部には、スクリーン本体12に対して振動を付与するための振動付与手段としての振動付与機構23が対向配置されている。この振動付与機構23は、スクリーン本体12の側板15に接触するように、支軸24を中心に回動可能に配設されたハンマー25と、回転軸26上に一体回転可能に取り付けられ、ハンマー25の一部と接離可能に対応する作動カム27aを有する回転体27とから構成されている。そして、スラッジSが傾斜状態のスクリーン本体12で下降移動されるとき、回転体27の回転により作動カム27aを介してハンマー25が往復回動されてスクリーン本体12を叩打し、スクリーン本体12に振動が付与されるようになっている。
【0020】
前記分離ケース11の後面の排水パイプ22には、水車28が接続されている。そして、スラッジSから分離された水Wが、分離ケース11の水貯留部11b内から排水パイプ22を介して排出されるとき、その水の流下エネルギによって水車28が回転されるようになっている。水車28と振動付与機構23の回転軸26との間には、回転伝達機構29が介装されている。この実施形態の回転伝達機構29は、複数のプーリ31〜36と、各プーリ31〜36間に掛け渡されたベルト37〜39とよりなる。そして、水車28の回転がこの回転伝達機構29を介して振動付与機構23の回転体27に伝達されて、振動付与動作が行われるようになっている。
【0021】
次に、前記のように構成されたスクリーンフィルタの動作を説明する。
さて、このスクリーンフィルタにおいて、スプレー塗装用ウォータブースから、供給パイプ14を介して分離ケース11内にスラッジSを含む水が供給されると、その水がオーバーフロー部13から傾斜状態のスクリーン本体12の上端部にオーバーフローされる。このため、スラッジSは凝集しながら、スクリーン本体12の上部側から下部側に下降移動される。この場合、図3に示すように、スクリーン本体12には抵抗付与構造19が設けられ、すなわち、各スクリーンバー16が幅端部において所定量だけラップするように配列されているため、スクリーン本体12の上面には実質的な段差がスラッジ下降方向に連続して形成される。このため、スラッジSの下降移動に対してこの段差により抵抗が付与される。よって、スラッジSは下降移動は全体としてゆっくりとしたものとなり、そのスラッジSから水分が十分に分離されるとともに、スラッジSは次第に凝集される。
【0022】
そして、スクリーン本体12の下端部まで下降移動されて、水分をほとんど分離除去されたスラッジSは、スラッジ回収ケース20内に落下して回収され、適量集まったところでパイプ21を介して廃棄される。また、スラッジSから分離された水Wは、分離ケース11の水貯留部11b内に貯留された後に排水パイプ22から排出され、図示しないウォータブース等に循環供給されて再使用される。
【0023】
一方、前記スラッジSの下降移動時には、スクリーン本体12の各スクリーンバー16が保持板18により下方から保持された状態にある。このため、スクリーンバー16の自重及びスラッジSの重量により、スクリーンバー16が下方へ湾曲するのを防止でき、従って、スリット17の開口幅が広がるおそれはなく、各スクリーンバー16間のスリット17を介して、スラッジS中から水分が効率よく落下分離されるとともに、スラッジSがスリット17から落下するのを抑制できる。
【0024】
さらに、前記スラッジSの下降移動時には、スラッジSから分離された水Wの流下エネルギを利用して水車28が回転され、その回転が回転伝達機構29を介して振動付与機構23に伝達される。これにより、振動付与機構23の回転体27を介してハンマー25が叩打のために往復回動され、スクリーン本体12に対して周期的な振動が付与される。よって、この振動により、水分分離が促進されるとともに、スラッジSはスクリーンバー16間の段差で長時間無用に停止することがなく、スクリーンバー16上で適切な速度で下降移動される。
【0025】
以上のように、この第1実施形態においては、スラッジSを水分分離に好適な速度で下降移動させることができるため、スクリーン本体12の傾斜角度を緩くする必要がない。このため、スクリーン本体12の平面面積を小さくでき、ひいては装置全体を小型化できる。しかも、そのための構成は、スクリーンバー16をラップさせただけであるため、部品点数が増えることはなく、構成も簡単である。
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
さて、この第2実施形態においては、図5に示すように、スクリーン本体12の各スクリーンバー16が、一平面上でスリット17に相当する所定の間隔をおいて配列されている。そして、抵抗付与構造19として、各スクリーンバー16におけるスラッジSの下降移動方向の下流側端部に、突起16aが上方へ向かって突出形成されている。これにより、傾斜状態のスクリーン本体12上でスラッジSが下降移動される際に、スラッジSに対して抵抗が付与されるようになっている。従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
さて、この第3実施形態においても、図6に示すように、前記第2実施形態と同様で、スクリーン本体12の各スクリーンバー16が、一平面上にてスリット17に相当する所定の間隔をおいて配列されている。そして、抵抗付与構造19として、各スクリーンバー16におけるスラッジSの下降移動方向の上流側端部に、突起16bが上方へ向かって突出形成されている。これにより、傾斜状態のスクリーン本体12上でスラッジSが下降移動される際に、スラッジSに対して抵抗が付与されるようになっている。従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ハンマー25を叩打動作させるための構成として、前記実施形態の構成に代えて別の構成、例えば、水車28と回転体27との間に、複数の歯車及び伝達軸よりなる歯車伝達機構を設けた構成に変更すること。
【0029】
・ 前記実施形態において、振動付与機構23を電力駆動により作動させるように構成すること。
・ 前記実施形態において、スクリーンバー16の下面を保持するために、スクリーン本体12の両側板15間に複数の保持板18を平行に配設すること。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態のスクリーンフィルタを示す断面図。
【図2】図1のスクリーンフィルタにおけるスクリーン本体を拡大して示す平面図。
【図3】図2の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】図1のスクリーンフィルタにおける振動付与機構を拡大して示す部分断面図。
【図5】第2実施形態のスクリーンフィルタのスクリーン本体を示す部分断面図。
【図6】第3実施形態のスクリーンフィルタのスクリーン本体を示す部分断面図。
【図7】従来のスクリーンフィルタのスクリーン本体を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0031】
11…分離ケース、11b…水貯留部、12…スクリーン本体、16…スクリーンバー、16a,16b…突起、17…スリット、18…保持手段としての保持板、19…抵抗付与手段としての抵抗付与構造、20…スラッジ回収ケース、23…振動付与手段としての振動付与機構、25…ハンマー、27…回転体、27a…作動カム、28…水車、29…回転伝達機構、S…スラッジ、T2…開口幅、W…水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスクリーンバーをそれらの間にスリットが形成されるように配列してスクリーン本体を構成し、そのスクリーン本体を傾斜させた状態で、スクリーン本体の上部側に対してスラッジが混合された水を供給してスクリーン本体の上部側から下部側へスラッジを下降移動させて、そのスラッジから水分を分離させるようにしたスクリーンフィルタにおいて、
前記スクリーン本体には、スラッジの下降移動に対して抵抗を付与するための抵抗付与手段を設けたスクリーンフィルタ。
【請求項2】
前記スクリーン本体は、複数のスクリーンバーを横方向へ平行に延びるように配列することによって構成され、前記抵抗付与手段は、スクリーンバーを隣接する他のスクリーンバーとそれらの幅端部においてラップさせた構成である請求項1に記載のスクリーンフィルタ。
【請求項3】
前記スクリーン本体の裏面側には、スクリーンバー間のスリットの開口幅を保持するための保持手段を設けた請求項1または請求項2に記載のスクリーンフィルタ。
【請求項4】
前記スクリーン本体に対して振動を付与するための振動付与手段を設けた請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載のスクリーンフィルタ。
【請求項5】
前記振動付与手段は、スラッジから分離された水の流下エネルギを利用して振動付与動作を行う請求項4に記載のスクリーンフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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