説明

スクリーン印刷版

【課題】印刷図形の輪郭に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができるスクリーン印刷版を提供する。
【解決手段】矩形の開口部15が形成された支持層14に、メッシュ層16が接合されている。開口部15に対向するメッシュ層16の矩形の図形形成領域20は、図形形成領域20の少なくとも1辺に沿って延在する周辺メッシュ領域22と、周辺メッシュ領域22に隣接する矩形の中心メッシュ領域24とを含む。中心メッシュ領域24には、六角形の開口を有しハニカム構造状に配置された同形状の複数の第1の貫通孔17aと、第1の貫通孔17aと隣接する複数の第2の貫通孔17b,17cとが形成されている。周辺メッシュ領域22には、図形形成領域20の辺20p,20qに沿って配置され第1及び第2の貫通孔17a,17b,17cの開口と面積が異なる開口を有する複数の第3の貫通孔17p,17qが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷版に関し、特に電子部品の電極を形成するために用いられるスクリーン印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン印刷版に使用されるメッシュの強度を高めるために、六角形の開口を有する複数の貫通孔が金属板に形成されたハニカム構造状メッシュが使用されている。
【0003】
このようなハニカム構造状メッシュを略矩形領域に配置する場合、略矩形領域の周辺メッシュ部に配置される孔は六角形の一部を切り欠くような多角形の孔であり、多角形の孔は六角形の孔と開口面積が異なる。そこで、特許文献1では、図10に示すように、中央部に六角形の孔111が形成されたX×Yの矩形領域110の対向する両辺側に位置する多角形の孔112,113を線対称の形状とし、横方向の両辺側に位置する多角形の孔113の開口面積を六角形の孔111と同じにすることにより、ペーストを均一に塗布する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−23253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この場合も縦方向の両辺側では、六角形の孔と開口面積が異なる多角形の孔112が六角形の孔と交互に配置されている。そのため、縦方向の両辺側では依然としてペーストを均一に塗布することができないため、印刷図形の輪郭の滲みや擦れの原因となっている。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み、印刷図形の輪郭に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができるスクリーン印刷版を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したスクリーン印刷版を提供する。
【0008】
スクリーン印刷版は、(a)主面間を貫通する矩形の開口部が形成された支持層と、(b)前記支持層の一方の前記主面に接合され、前記支持層の前記開口部に対向する矩形の図形形成領域を有するメッシュ層とを備える。前記図形形成形領域は、前記図形形成形領域の少なくとも1辺に沿って延在する周辺メッシュ領域と、前記周辺メッシュ領域に隣接する矩形の中心メッシュ領域とを含む。前記中心メッシュ領域には、(i)六角形の開口を有し、間隔を設けてハニカム構造状に配置された同一寸法・同一形状の複数の第1の貫通孔と、(ii)前記第1の貫通孔と間隔を設けて隣接し、前記第1の貫通孔の前記開口と異なる形状の開口を有し、当該開口の少なくとも1辺が前記中心メッシュ領域の辺に沿う複数の第2の貫通孔とが形成されている。前記周辺メッシュ領域には、(iii)前記周辺メッシュ領域が沿う前記図形形成領域の辺ごとに、前記図形形成領域の前記辺に沿って配置され、前記第1及び第2の貫通孔の前記開口と面積が異なる開口を有する複数の第3の貫通孔が形成されている。
【0009】
上記構成において、メッシュ層の貫通孔から支持層の開口部側に透過したペーストが被印刷物に塗布され、印刷図形が形成される。周辺メッシュ領域の第3の貫通孔を透過したペーストによって、印刷図形の輪郭が形成される。周辺メッシュ領域には、第3の貫通孔の開口が図形形成領域の辺に沿って配置されているので、第3の貫通孔を透過したペーストが被印刷物上に略均一に分布し、印刷図形が略均一に形成されるようにして、図形形成領域の辺に対応する印刷図形の輪郭に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができる。
【0010】
なお、周辺メッシュ領域が沿う図形形成領域の辺ごとに、第3の貫通孔の寸法や形状、配置される間隔が異なっても同一でも構わない。
【0011】
好ましい一態様において、前記中心メッシュ領域に、前記図形形成領域の一対の辺と平行な中心線に関して非対称、かつ、前記図形形成領域の他の一対の辺と平行な他の中心線に関して非対称に、前記第1及び第2の貫通孔が形成されている。前記図形形成領域の前記一対の辺の少なくとも一方及び前記図形形成領域の前記他の一対の辺の少なくとも一方に沿う前記周辺メッシュ領域に前記第3の貫通孔が形成されている。
【0012】
この場合、中心メッシュ領域は、図形形成領域の一対の辺と平行な中心線に関して非対称、かつ、図形形成領域の他の一対の辺と平行な他の中心線に関して非対称に、第1及び第2の貫通孔が形成されるため、そのままでは、図形形成領域の一対の辺の少なくとも一方に沿う部分の開口率と、図形形成領域の他の一対の辺の少なくとも一方に沿う部分の開口率とは、均一にすることができない。そこで、図形形成領域の一対の辺の少なくとも一方と、図形形成領域の他の一対の辺の少なくとも一方とに沿って、第3の貫通孔を形成する。これによって開口率を均一にすることができ、印刷図形の輪郭全体に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができる。
【0013】
好ましい他の態様において、前記中心メッシュ領域に、前記図形形成領域の一対の辺と平行な中心線に関して対称、かつ、前記図形形成領域の他の一対の辺と平行な他の中心線に関して非対称に、前記第1及び第2の貫通孔が形成されている。前記図形形成領域の前記他の一対の辺の少なくとも一方に沿う前記周辺メッシュ領域に前記第3の貫通孔が形成されている。
【0014】
この場合、中心メッシュ領域は、第1及び第2の貫通孔が図形形成領域の一対の辺と平行な中心線に関して対称に形成されるので、図形形成領域の一対の辺に沿う部分の開口率を均一にすることができる。一方、中心メッシュ領域は、第1及び第2の貫通孔が図形形成領域の他の一対の辺と平行な他の中心線に関して非対称に形成されるため、そのままでは、図形形成領域の他の一対の辺の少なくとも一方に沿う部分の開口率を均一にすることができない。そこで、図形形成領域の他の一対の辺の少なくとも一方に沿って第3の貫通孔を形成する。これによって開口率を均一にすることができ、印刷図形の輪郭全体に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができる。
【0015】
好ましくは、前記図形形成領域の各辺に沿う枠状の前記周辺メッシュ領域に、前記図形形成領域の各辺に沿って前記第3の貫通孔が形成されている。
【0016】
この場合、印刷図形の各辺は、図形形成領域の各辺に沿って形成された第3の貫通孔を透過したペーストによって形成される。そのため、印刷図形の輪郭全体に滲みや擦れがないようにすることができる。
【0017】
好ましくは、前記周辺メッシュ領域に、前記第1及び第2の貫通孔の前記開口よりも小さい開口を有する前記第3の貫通孔が、前記第1及び第2の貫通孔よりも小さいピッチで形成されている。
【0018】
この場合、周辺メッシュ領域の第3の貫通孔から、印刷図形の輪郭及びその近傍部分を形成するペーストがより均一に被印刷物に塗布されるので、印刷がより滲みにくくなり、より擦れにくくなる。
【0019】
好ましくは、前記第3の貫通孔の前記開口は矩形であり、当該開口の長辺同士が隣り合い、当該開口の一対の短辺がそれぞれ一直線上に、かつ前記図形形成領域の前記辺と平行に配置されている。
【0020】
この場合、第3の貫通孔は一直線上に短いピッチで並んでいる。これによって、第3の貫通孔の開口からは、それらが隣接する図形形成領域の辺に向けてのペーストの過剰吐出が抑えられるため、印刷図形の輪郭がより滲みにくくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、印刷図形の輪郭に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スクリーン印刷版の断面図である。(実施例)
【図2】スクリーン印刷版の要部底面図である。(実施例)
【図3】開口率の説明図である。(実施例)
【図4】スクリーン印刷版の要部拡大底面図である。(変形例1)
【図5】スクリーン印刷版の要部拡大底面図である。(変形例2)
【図6】スクリーン印刷版の要部底面図である。(変形例3)
【図7】スクリーン印刷版の要部底面図である。(変形例4)
【図8】(a)スクリーン印刷版の要部の写真、(b)印刷図形の対応部分の写真である。(実施例)
【図9】(a)スクリーン印刷版の要部の写真、(b)印刷図形の対応部分の写真である。(比較例)
【図10】メッシュの開口状態を示す図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
<実施例> 本発明の第1の実施の形態である実施例のスクリーン印刷版10について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、スクリーン印刷版10の基本構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、スクリーン印刷版10は、金属膜12と、金属膜12に貼り付けられた額縁状の枠体18とを備えている。金属膜12は、支持層14と、支持層14に接合されたメッシュ層16とを含む2層構造である。金属膜12は、例えば従来のスクリーン印刷版と同様に、電鋳法によって形成される。
【0026】
支持層14には、主面14a,14b間を貫通する複数の開口部15が形成されている。メッシュ層16は、支持層14の一方の主面14bに接合されている。メッシュ層16は、支持層14の開口部15に対向する図形形成領域20に、貫通孔17が形成されている。
【0027】
スクリーン印刷版10を用いて印刷するとき、支持層14の他方の主面14aが被印刷物に接した状態で、枠体18の内側のメッシュ層16上にペーストを供給する。そして、例えばスキージをメッシュ層16に接した状態でメッシュ層16に沿って移動させて、ペーストをメッシュ層16の貫通孔17から支持層14の開口部15側に押し出し、被印刷物上の開口部15に対向する部分にペーストを塗布する。塗布されたペーストによって、被印刷物上に印刷図形が形成される。
【0028】
図2は、図1の線A−Aに沿って被印刷物側から見たスクリーン印刷版10の要部底面図である。詳しくは図2に示すように、支持層14の開口部15とメッシュ層16の図形形成領域20は、矩形である。図形形成領域20は、図形形成領域20の各一対の短辺20p及び長辺20qに沿う各一対の短辺部22p及び長辺部22qを有する枠状の周辺メッシュ領域22と、周辺メッシュ領域22に接し周辺メッシュ領域22に取り囲まれた矩形の中心メッシュ領域24とを含む。
【0029】
図形形成領域20の中心メッシュ領域24には、ハニカム構造部が形成されている。すなわち、中心メッシュ領域24には、同一寸法・同一形状の複数の第1の貫通孔17aと、複数の第2の貫通孔17b,17cとが形成されている。
【0030】
第1の貫通孔17aは、正六角形の開口を有する。第1の貫通孔17aは、正六角形の開口の6つの辺のうち互いに対向する一組の辺が図形形成領域20の短辺20pと平行になるように、間隔を設けてハニカム構造状に配置されている。
【0031】
第2の貫通孔17b,17cは、第1の貫通孔17aと間隔を設けて隣接し、第1の貫通孔17aの開口と異なる形状の開口を有する。第2の貫通孔17b,17cの開口は、第1の貫通孔17aの開口の正六角形の一部を切り欠いた多角形形状の開口を有する。この開口の切り欠かれた辺17x,17yは、中心メッシュ領域24の辺24x,24yに沿っている。
【0032】
図形形成領域20の中心メッシュ領域24は、全体として、図2において左右及び上下に線対称の形状を有している。すなわち、図形形成領域20の中心メッシュ領域24は、図形形成領域20の一対の短辺20pと平行な中心線21pに関して対称、かつ、図形形成領域20の一対の長辺20qと平行な他の中心線21qに関して対称に形成されている。より具体的には、図形形成領域20の中心メッシュ領域24において、図形形成領域20の長辺20q側には、五角形の開口を有する第2の貫通17cが配置され、図形形成領域20の短辺20p側には、正六角形の開口を有する第1の貫通孔17aと、台形の開口を有する第2の貫通孔17bとが交互に配置されている。
【0033】
なお、第1の貫通孔17aは、正六角形以外の六角形の開口を有しても構わない。第1の貫通孔の開口が図形形成領域20の中心線21p,21qと平行な中心線に関して線対称の形状であれば、図形形成領域の中心メッシュ領域24を線対称に構成することができる。
【0034】
中心メッシュ領域24のメッシュをハニカムメッシュにすることで、メッシュの強度を高めることができる。
【0035】
図形形成領域20の周辺メッシュ領域22には、格子構造部が形成されている。すなわち、周辺メッシュ領域22の短辺部22pに、図形形成領域20の短辺20pに沿って等間隔に配置された開口を有する同一寸法・同一形状の複数の第3の貫通孔17pが形成されている。周辺メッシュ領域22の長辺部22qに、図形形成領域20の長辺20qに沿って等間隔に配置された開口を有する同一寸法・同一形状の複数の第3の貫通孔17qが形成されている。短辺部22pの第3の貫通孔17pと長辺部22qの第3の貫通孔17qとは、開口面積及び配置間隔が互いに異なっている。もっとも、開口面積及び/又は配置間隔寸法が同一となるように構成しても構わない。
【0036】
周辺メッシュ領域22の第3の貫通孔17p,17qを透過したペーストによって、印刷図形の輪郭及びその近傍部分が形成される。周辺メッシュ領域22の短辺部22p及び長辺部22qには、それぞれ、同一寸法・同一形状の第3の貫通孔17p,17qの開口が、図形形成領域20の短辺20p又は長辺20qに沿って等間隔に配置されている。そのため、周辺メッシュ領域22の第3の貫通孔17p,17qを透過したペーストが被印刷物上に略均一に分布し、印刷図形の輪郭及びその近傍部分が略均一に形成される。その結果、印刷図形の輪郭に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができる。
【0037】
図形形成領域20の全ての辺に沿って第3の貫通孔17p,17qが形成されていると、印刷図形の輪郭全体に滲みや擦れがないようにすることができる。
【0038】
もっとも、第3の貫通孔が図形形成領域の少なくとも1辺に沿って形成されていれば、その辺に対応する印刷図形の輪郭に滲みや擦れがないようにする効果が得られるので、図形形成領域20のいくつかの辺のみに沿って第3の貫通孔が形成されている構成とすることも可能である。例えば、図形形成領域20の短辺20p側のみに、第3の貫通孔17pが形成されていてもよい。図形形成領域20の短辺20p側は、正六角形の開口を有する第1の貫通孔17aと、台形の開口を有する第2の貫通孔17bとが交互に配置されているため、五角形の開口を有する第2の貫通17cが均等に配置されている図形形成領域20の長辺20q側よりも印刷図形の輪郭に滲みや擦れが発生しやすい。そのため、図形形成領域20の短辺20p側のみに、第3の貫通孔17pが形成されているだけでも、従来に比べて、印刷図形の輪郭に滲みや擦れが少ない印刷を行うことができる。
【0039】
なお、本発明において、周辺メッシュ領域には第3の貫通孔が形成されており、図形形成領域のある辺に沿って第3の貫通孔が形成されていない場合、図形形成領域のその辺に沿っては周辺メッシュ領域が存在しないことになる。
【0040】
図形形成領域20の周辺メッシュ領域22の短辺部22pに形成された第3の貫通孔17pは、矩形の開口を有し、開口の長辺同士が隣り合い、一直線上に並ぶように配置されている。すなわち、開口の一対の短辺がそれぞれ一直線上に配置されている。第3の貫通孔17pの開口の中心メッシュ領域24とは反対側の一方の短辺17uは、図形形成領域20の短辺20pに間隔を設けて対向し、図形形成領域20の短辺20pに沿って平行かつ等間隔に配置されている。
【0041】
図形形成領域20の周辺メッシュ領域22の長辺部22qに形成された第3の貫通孔17qは、矩形の開口を有し、開口の長辺同士が隣り合い、一直線上に並ぶように配置されている。すなわち、開口の一対の短辺がそれぞれ一直線上に配置されている。第3の貫通孔17qの開口の中心メッシュ領域24とは反対側の一方の短辺17vは、図形形成領域20の長辺20qに間隔を設けて対向し、図形形成領域20の長辺20qに沿って平行かつ等間隔に配置されている。
【0042】
このように第3の貫通孔17p,17qの矩形の開口の短辺17u,17vが、それぞれの開口が隣接する図形形成領域20の辺20p,20qと平行であると、第3の貫通孔17p,17qは一直線上に短いピッチで並ぶ。これによって、第3の貫通孔17p,17qの開口からは、それらが隣接する図形形成領域20の辺20p,20qに向けてのペーストの過剰吐出が抑えられるため、印刷図形の輪郭がより滲みにくくなる。
【0043】
周辺メッシュ領域22の第3の貫通孔17p,17qは、中心メッシュ領域の第1の貫通孔17a及び第2の貫通孔17b,17cよりも小さい開口を有し、中心メッシュ領域の第1の貫通孔17a及び第2の貫通孔17b,17cよりも小さいピッチで形成されている。そのため、印刷図形の輪郭及びその近傍部分を形成するペーストは、周辺メッシュ領域22の第3の貫通孔17p,17qから、より均一に被印刷物に塗布されるので、印刷がより滲みにくくなり、より擦れにくくなる。
【0044】
本実施例では、図形形成領域20内において、正六角形の第1の貫通孔17aが配置されている部分の開口率と、それ以外の部分、すなわち第2の貫通孔17b,17c及び第3の貫通孔17p,17qが配置されている部分の開口率とが略等しくなるように設計されている。
【0045】
ここで、開口率とは単位面積当たりの開口(貫通孔の開口)の面積割合である。例えば、正六角形の第1の貫通孔17aの開口率は、図3の説明図に示すように対向する辺の間隔をaとし、メッシュの線幅をbとした場合、次の式1によって求めることができる。
開口率(%)=a÷(a+b)×100 ・・・(式1)
【0046】
第1の貫通孔17aが配置されている部分と第2の貫通孔17b,17cが配置されている部分とでは開口率が異なるため、第3の貫通孔17p,17qによって図形形成領域20内の開口率が略等しくなるように調整されている。前述したように、図形形成領域20の周辺メッシュ領域22の短辺部22pの第3の貫通孔17pと長辺部22qの第3の貫通孔17qとでは、それぞれの開口面積及び配置間隔が異なるのは、中心メッシュ領域24の辺24x側と24y側とで異なる開口率を略等しくなるように調整するためである。
【0047】
このように図形形成領域20内で開口率を均等にすることにより、図形形成領域20の第1の貫通孔17a、第2の貫通孔17b,17c及び第3の貫通孔17p,17qを透過して被印刷物に供給される単位面積あたりのペースト量が均等になるので、ペーストをより均一に塗布し、均一な印刷図形を形成することができる。
【0048】
なお、開口率は30%〜40%が望ましい。開口率が40%より大きいと、印刷図形の滲みや強度低下の原因となる。また、開口率が30%より小さいと、印刷図形の擦れの原因となる。また、図形形成領域20内において開口率はできるだけ均等になる方が望ましいが、実用上問題がない範囲で部分的に開口率のバラツキがあってもよい。具体的には、±5%のバラツキの範囲であれば、実用上許容できる。
【0049】
また、本実施例では、加工バラツキを小さくするために第3の貫通孔17p,17qの開口を同一寸法・同一形状にしたが、本発明はこれに限定されない。図形形成領域20内の開口率をより均等にするために、第3の貫通孔17p,17qの開口面積及び配置間隔を一部異ならせてもよい。
【0050】
次に、本発明の変形例1〜変形例4について、図4〜図7を参照しながら説明する。以下では、実施例との相違点を中心に説明し、実施例と同じ構成部分には同じ符号を用いる。
【0051】
<変形例1> 図4は、第1の変形例のスクリーン印刷版を、図2と同様に被印刷物側から見た要部拡大底面図である。第1の変形例のスクリーン印刷版は、図4に示すように、メッシュ層16の図形形成領域20の周辺メッシュ領域22に形成された第3の貫通孔17sの形状が、実施例とは異なっている。第3の貫通孔17sは、略正三角形の開口を有し、等間隔かつ交互に反転して形成されている。なお、図形形成領域20の中心メッシュ領域24には、図示は省略されているが、実施例と同じく第1及び第2の貫通孔が形成されている。
【0052】
<変形例2> 図5は、第2の変形例のスクリーン印刷版を、図2と同様に被印刷物側から見た要部拡大底面図である。第2の変形例のスクリーン印刷版は、図5に示すように、メッシュ層16の図形形成領域20の周辺メッシュ領域22に形成された第3の貫通孔17tの形状が、実施例とは異なっている。第3の貫通孔17tは、略円形の開口を有し、等間隔に形成されている。なお、図形形成領域20の中心メッシュ領域24には、図示は省略されているが、実施例と同じく第1及び第2の貫通孔が形成されている。
【0053】
<変形例3> 図6は、第3の変形例のスクリーン印刷版を、図2と同様に被印刷物側から見た要部底面図である。図6に示すように、第3の変形例のスクリーン印刷版は、メッシュ層16の図形形成領域20の中心メッシュ領域24が、図において左右にも上下にも非対称に形成されている。すなわち、中心メッシュ領域24には、第1の貫通孔17a及び第2の貫通孔17d〜17gの開口が、図において左右にも上下にも非対称に配置されている。
【0054】
一方、メッシュ層16の図形形成領域20の周辺メッシュ領域22の短辺部22p及び長辺部22qには、実施例と同じく、第3の貫通孔17p,17qの開口が等間隔に配置されている。そのため、印刷図形の輪郭に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができる。
【0055】
従来のスクリーン印刷版では、滲みや擦れがない印刷ができるようにするため、ハニカム構造部の形状、すなわち開口の配置を左右及び/又は上下に線対称に構成していた。そのため、図形形成領域の大きさが変わると、ハニカム構造部の形状が線対称になるようにメッシュ孔の六角形の開口の大きさも変更する必要があった。
【0056】
これに対し、本発明では、周辺メッシュ領域に第3の貫通孔を形成することによって、図形形成領域内の開口率が均等になるように調整できるので、図形形成領域の大きさが変わっても、中心メッシュ領域に形成され六角形の開口を有する第1の貫通孔の大きさを変更する必要がない。
【0057】
したがって、ペーストの物性に応じた最適な大きさで、中心メッシュ領域の第1の貫通孔を設計できるため、本発明は、従来に比べて印刷性が向上する。
【0058】
<変形例4> 図7は、第4の変形例のスクリーン印刷版を、図2と同様に被印刷物側から見た要部底面図である。図7に示すように、メッシュ層16の図形形成領域20の中心メッシュ領域24は、図において左右に対称かつ上下に非対称に形成されている。
【0059】
図形形成領域20の中心メッシュ領域24は、図形形成領域20の短辺20pに沿う部分の開口率を均一にすることができるが、図形形成領域20の長辺20qの少なくとも一方に沿う部分の開口率を均一にすることができない。そこで、周辺メッシュ領域22の長辺部22qに同形状の複数の第3の貫通孔17qが等間隔に形成されている。これによって開口率を均一にすることができ、印刷図形の輪郭全体に滲みや擦れのない良好な印刷を行うことができる。
【0060】
<実験例> 次に、実験結果を用いて、本発明の効果について説明する。
【0061】
図8(a)は、本発明の実施例のスクリーン印刷版の作製例を被印刷物側から視た要部の写真である。図8(b)は、図8(a)に示した本発明の実施例のスクリーン印刷版を用いて印刷した印刷図形のうち、図8(a)に示した要部に対応する部分の写真である。
【0062】
図9(a)は、比較例のスクリーン印刷版の作製例を被印刷物側から視た要部の写真である。図9(b)は、図9(a)に示した比較例のスクリーン印刷版を用いて印刷した印刷図形のうち、図9(a)に示した要部に対応する部分の写真である。
【0063】
図8(a)に示すスクリーン印刷版の作製例は、図1及び図2に示した本発明の実施例と同じ構造であり、電解メッキによって金属膜を形成した。図9(a)の比較例のスクリーン印刷版は、メッシュ層の図形形成領域にハニカム構造状のメッシュのみが構成されており、図8(a)の本発明の実施例の作製例と同じ方法で作製した。
【0064】
図9(b)に示すように、比較例のスクリーン印刷版を用いて印刷した印刷図形の輪郭には、滲みや擦れが生じている。これに対し、図8(b)に示すように、実施例のスクリーン印刷版を用いて印刷した印刷図形の輪郭には滲みや擦れがなく、印刷性が向上していることが分かる。
【0065】
<まとめ> 以上に説明したように、中心メッシュ領域に隣接する周辺メッシュ領域に第3の貫通孔を形成することによって、印刷図形の輪郭に滲みや擦れない良好な印刷を行うことができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0067】
例えば、スクリーン印刷版の金属膜は、作製例では電解メッキで形成したが、無電解メッキで形成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 スクリーン印刷版
12 金属膜
14 支持層
14a,14b 主面
15 開口部
16 メッシュ層
17 貫通孔
17a 第1の貫通孔
17b〜17g 第2の貫通孔
17p,17q,17s,17t 第3の貫通孔
17u,17v 短辺
17x,17y 辺
18 枠体
20 図形形成領域
20p 短辺
20q 長辺
21p,21q 中心線
22 周辺メッシュ領域
22p 短辺部
22q 長辺部
24 中心メッシュ領域
24p,24q 辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面間を貫通する矩形の開口部が形成された支持層と、
前記支持層の一方の前記主面に接合され、前記支持層の前記開口部に対向する矩形の図形形成領域を有するメッシュ層と、
を備え、
前記図形形成形領域は、前記図形形成形領域の少なくとも1辺に沿って延在する周辺メッシュ領域と、前記周辺メッシュ領域に隣接する矩形の中心メッシュ領域とを含み、
前記中心メッシュ領域には、六角形の開口を有し、間隔を設けてハニカム構造状に配置された同一寸法・同一形状の複数の第1の貫通孔と、前記第1の貫通孔と間隔を設けて隣接し、前記第1の貫通孔の前記開口と異なる形状の開口を有し、当該開口の少なくとも1辺が前記中心メッシュ領域の辺に沿う複数の第2の貫通孔とが形成され、
前記周辺メッシュ領域には、前記周辺メッシュ領域が沿う前記図形形成領域の辺ごとに、前記図形形成領域の前記辺に沿って配置され、前記第1及び第2の貫通孔の前記開口と面積が異なる開口を有する複数の第3の貫通孔が形成されていることを特徴とする、スクリーン印刷版。
【請求項2】
前記中心メッシュ領域に、前記図形形成領域の一対の辺と平行な中心線に関して非対称、かつ、前記図形形成領域の他の一対の辺と平行な他の中心線に関して非対称に、前記第1及び第2の貫通孔が形成され、
前記図形形成領域の前記一対の辺の少なくとも一方及び前記図形形成領域の前記他の一対の辺の少なくとも一方に沿う前記周辺メッシュ領域に前記第3の貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のスクリーン印刷版。
【請求項3】
前記中心メッシュ領域に、前記図形形成領域の一対の辺と平行な中心線に関して対称、かつ、前記図形形成領域の他の一対の辺と平行な他の中心線に関して非対称に、前記第1及び第2の貫通孔が形成され、
前記図形形成領域の前記他の一対の辺の少なくとも一方に沿う前記周辺メッシュ領域に前記第3の貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のスクリーン印刷版。
【請求項4】
前記図形形成領域の各辺に沿う枠状の前記周辺メッシュ領域に、前記図形形成領域の各辺に沿って前記第3の貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のスクリーン印刷版。
【請求項5】
前記周辺メッシュ領域に、前記第1及び第2の貫通孔の前記開口よりも小さい開口を有する前記第3の貫通孔が、前記第1及び第2の貫通孔よりも小さいピッチで形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のスクリーン印刷版。
【請求項6】
前記第3の貫通孔の前記開口は矩形であり、当該開口の長辺同士が隣り合い、当該開口の一対の短辺がそれぞれ一直線上に、かつ前記図形形成領域の前記辺と平行に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のスクリーン印刷版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−107344(P2013−107344A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255499(P2011−255499)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】