説明

スクロール形膨張機及びランキンサイクル動力回収システム

【課題】凝縮器の小型化や熱損失の低減を可能にするスクロール形膨張機及び該スクロール形膨張機を備えたランキンサイクル動力回収システムを提供する。
【解決手段】スクロール本体が密閉ケース内に収納されたスクロール形膨張機であって、作動媒体の蒸気が密閉ケース内で凝結することによって生成された作動媒体の液体を溜めておく液溜まりを、スクロール形膨張機の設置位置に合わせて、前記密閉ケースの底部に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール形膨張機及び該スクロール形膨張機を備えたランキンサイクル動力回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水(水蒸気)等の作動媒体における気相及び液相の間の相変化を伴うランキンサイクル動力回収システムは、事業用発電として大形のもので実用化されており、その膨張機としては、一般に、蒸気タービンが使用されている。
【0003】
例えば、発電機の駆動部として蒸気タービンを備えたランキンサイクル動力回収システムでは、蒸気タービンに高温・高圧の気相の作動媒体、たとえば水蒸気を供給するための作動媒体循環経路には、蒸気発生器と、復水ポンプと、凝縮器と、が配設されている。蒸気発生器で発生した高温・高圧の水蒸気は蒸気タービンに供給され、該蒸気タービンを駆動することより発電に利用され、その後、凝縮器で冷却されて液相の水に凝縮される。この凝縮水は、復水ポンプにより蒸気発生器に供給され、加熱されることにより、気相の水蒸気に変化し、再び発電機の蒸気タービンに供給される。
【0004】
蒸気タービンは、大形のものであれば効率良く作動するが、小形のものになると効率が低下するため、小出力のランキンサイクル動力回収システムには、不向きである。このような蒸気タービンに替えて、スクロール形流体機械を膨張機として利用した場合、小形のものであっても効率良く発電できることが知られている。スクロール形流体機械として、鏡板の両側にスクロールラップの形成された両歯式の外周駆動形スクロール流体機械が特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−227481号公報
【特許文献2】特開2000−27773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ランキンサイクル動力回収システムにおいてスクロール形膨張機を使用する場合、できるだけ凝縮器を小型化したり熱損失を低減したりすることが求められている。
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、凝縮器の小型化や熱損失の低減を可能にするスクロール形膨張機及び該スクロール形膨張機を備えたランキンサイクル動力回収システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下のスクロール形膨張機及びランキンサイクル動力回収システムが提供される。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に係るスクロール形膨張機は、
スクロール本体が密閉ケース内に収納されたスクロール形膨張機であって、作動媒体の蒸気が密閉ケース内で凝結することによって生成された作動媒体の液体を溜めておく液溜まりを、スクロール形膨張機の設置位置に合わせて、前記密閉ケースの底部に配設することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係るスクロール形膨張機では、
液溜まりは、溜められた作動媒体の液体の液面を大略一定に保つ液面保持手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係るスクロール形膨張機では、
スクロール本体が、鏡板の両側に渦巻状の旋回側スクロールラップを有する旋回スクロールと、該旋回スクロールの両側に配置されて前記旋回側スクロールラップと噛み合う固定側スクロールラップを有する固定スクロールと、該旋回スクロールの外周側に配置された第一クランク軸及び第二クランク軸と、を備える外周駆動形であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係るランキンサイクル動力回収システムでは、
蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した作動媒体の蒸気により駆動される一つのスクロール形膨張機と、スクロール形膨張機から排出された作動媒体の蒸気を凝縮する凝縮器と、該凝縮器で凝縮された作動媒体の液体を蒸気発生器に供給するポンプと、を備えるランキンサイクル動力回収システムにおいて、
前記スクロール形膨張機が請求項1乃至3のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係るランキンサイクル動力回収システムでは、
蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した作動媒体の蒸気により駆動される複数のスクロール形膨張機と、スクロール形膨張機から排出された作動媒体の蒸気を凝縮する凝縮器と、該凝縮器で凝縮された作動媒体の液体を蒸気発生器に供給するポンプと、を備えるランキンサイクル動力回収システムにおいて、
前記複数のスクロール形膨張機として、高温・高圧蒸気が供給される高圧段スクロール形膨張機と、該高圧段膨張機から排出された低圧蒸気が供給される低圧段スクロール形膨張機と、が連設されて、
前記複数のスクロール形膨張機が請求項1乃至3のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係るランキンサイクル動力回収システムでは、
高圧段スクロール形膨張機の液溜まりに溜まった作動媒体の液体を、低圧段スクロール形膨張機の予混合室に導入することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7に係るランキンサイクル動力回収システムでは、
高圧段スクロール形膨張機のクランク軸と低圧段スクロール形膨張機のクランク軸とが、カップリングを介して連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る本発明では、スクロール本体で使用された作動媒体の蒸気、すなわちスクロール本体から排出される及び/又は漏出する作動媒体の蒸気が密閉ケースのチャンバー内で凝結した高温の作動媒体の液体が液溜まりに溜められる。密閉ケースの壁面が凝結作用を提供するために、凝結器だけで使用後の作動媒体蒸気を液化する場合よりも、凝結器を小型化することが可能になるという効果を奏する。
【0017】
請求項2に係る本発明では、液面保持手段によって液溜まりにおける液面が大略一定に保たれているので、スクロール形膨張機における熱バランスが大略一定に保たれて、スクロール本体の動作が安定するという効果を奏する。
【0018】
片歯式で駆動軸が中心にあるタイプや、片歯式で駆動軸が外周にあるタイプに対しても本願発明を適用することができるが、請求項3に係る本発明では、両歯式で駆動軸が外周にある外周駆動形のスクロール形膨張機に対して適用される。
【0019】
請求項4に係る本発明では、上記スクロール形膨張機が単一で使用される形態でランキンサイクル動力回収システムに適用される。
【0020】
請求項5に係る本発明では、上記スクロール形膨張機が複数台で使用される形態でランキンサイクル動力回収システムに適用される。
【0021】
請求項6に係る本発明では、高圧段スクロール形膨張機の液溜まりに溜められた高温の作動媒体の液体が、低圧段スクロール形膨張機における旋回スクロールラップと固定スクロールラップとの間隙をシールするシール剤等に有効利用することもできるという効果を奏する。
【0022】
請求項7に係る本発明では、低圧側の両クランク軸の同期をとる装置が不要になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係るスクロール形膨張機及びランキンサイクル動力回収システムの説明図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係るスクロール形膨張機及びランキンサイクル動力回収システムの説明図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係るスクロール形膨張機及びランキンサイクル動力回収システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の第一実施形態に係るスクロール形膨張機10及び該スクロール形膨張機10を備えたランキンサイクル動力回収システム1について、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、ランキンサイクル動力回収システム1は、不図示の発電機を駆動するための装置として、単一のスクロール形膨張機10を備えている。該スクロール形膨張機10に設けられた水平方向に延在するクランク軸(駆動軸)26,28が、発電機の発電機軸に連結されており、スクロール形膨張機10のクランク軸(駆動軸)26,28の回転駆動力で発電機の発電機軸を回転させることにより、発電を行うようになっている。
【0026】
スクロール形膨張機10を駆動するための作動媒体としては、たとえば水(水蒸気)が用いられる。この作動媒体の循環経路には、蒸気発生器3と、逆止弁(不図示)と、作動媒体供給ポンプ(復水ポンプ)9と、凝縮器5と、冷却水供給ポンプ7と、が配置されており、それらは後述する配管群によって接続されている。
【0027】
蒸気発生器3は、液体収納部3bに蓄えられた作動媒体の液体(水)を加熱することによって、蒸気収納部3aにおいて高温・高圧の作動媒体の蒸気(水蒸気)を発生させる。蒸気発生器3で発生した水蒸気が、膨張用の作動媒体の蒸気31として、スクロール形膨張機10の中心部に形成された左右の蒸気供給部30に蒸気供給管103を通じて供給される。
【0028】
このランキンサイクル動力回収システム1は、前記膨張用の作動媒体の蒸気(水蒸気)31の循環経路に加えて、作動媒体の液体(水)をスクロール形膨張機10の膨張室のシール及び潤滑を行うために蒸気と液体とが混合した循環経路を備えている。蒸気供給部30に対して同軸に配置された予混合装置32は、高温の作動媒体の蒸気(水蒸気)31と液体のシール剤とを混合するための部屋である。ここで、シール剤は、水やオイル等であり、本発明では、蒸気発生器3の液体収納部3bで生成される高温の液体(水)が好適である。
【0029】
凝縮器5は、蒸気回収管107を流通する作動媒体の蒸気(水蒸気)を、液体回収管109を流通する液体(水)に変換する熱交換器である。冷却水は、冷却水供給ポンプ7によって送出され、冷却水供給管113を通じて凝縮器5に導入され、熱交換後の冷却水が冷却水排出管115から排出される。
【0030】
次に、スクロール形膨張機10の構造について説明する。
【0031】
図1に示した外周駆動形のスクロール形膨張機10は、第一固定スクロール16と第二固定スクロール18と揺動スクロール20とを備えるスクロール本体12と、該スクロール本体を密閉状態で収納する密閉ケース14と、該スクロール本体12を密閉ケース14に固定支持する支持部34と、から構成されている。
【0032】
第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18の中央部には、それぞれ、蒸気供給部30が軸方向に延在するように配置されている。第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18の上部には、それぞれ、蒸気排出部19が配置されている。
【0033】
ボックス状の密閉ケース14は、樹脂又は金属からなる第一ケース14a及び第二ケース14bから構成されている。第一ケース14a及び第二ケース14bの中央部下側には、開口した蒸気排出口36が設けられている。蒸気放出口19から排出された及び/又はスクロール本体12から漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が、スクロール本体12の外面と密閉ケース14の内面とで形成された密閉空間25を満たしている。作動媒体の蒸気(水蒸気)の大部分が、蒸気排出口36から排出される。作動媒体の蒸気(水蒸気)の一部分が、密閉ケース14の内面やスクロール本体12の外面等の各種表面に接して冷やされることによって使用後の作動媒体の蒸気(水蒸気)33が凝結して液化する。液化した作動媒体は、各種表面に沿って滴り落ちて、密閉ケース14の底部に設けられた液溜まり部44で受け止められる。当該液溜まり部44には、90乃至100℃の作動媒体の液体(水)46が溜められる。
【0034】
密閉ケース14の最下部には、開口した液体排出口38が設けられている。液体排出口38から軸直交方向に円筒壁状に延在する液体排出部40が形成されている。液体排出部40の外壁面と密閉ケース14の内壁面とによって、液溜まり部44が密閉ケース14の底部に形成されている。液体排出部40の上端には、液面制御用の浮き42が設置されている。液溜まり部44における作動媒体の液体46の量が少ないときには、液面制御用の浮き42が液体排出部40の上端開口部を閉止している。液溜まり部44が作動媒体の液体46で一杯に満たされると、液面制御用の浮き42が浮力によって持ち上げられて、液体排出部40の上端開口部を開放する。その結果、液体排出部40の上端レベルを超える作動媒体の液体46が、液体排出部40の上端開口部及び液体排出口38を通じて排出される。したがって、液溜まり部44における作動媒体の液体46の溜まりレベルが、大略一定に保たれる。例えば、液溜まり部44の容積は、密閉空間25の容積に対しておおよそ1/8乃至1/4であるように構成される。
【0035】
第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18は、それぞれ、渦巻状のスクロールラップを鏡板上に有し、これらのスクロールラップが対向するように並行に配置されている。揺動スクロール20の鏡板のおもて面及び裏面には、渦巻状のスクロールラップが形成されている。揺動スクロール20のスクロールラップと、第一固定スクロール16と第二固定スクロール18のスクロールラップとがそれぞれ噛み合うことにより、揺動スクロール20の鏡板のおもて面及び裏面には膨張室が形成されている。
【0036】
揺動スクロール20の鏡板の第一外周部22には、所定の偏心量の偏心部を有する第一クランク軸26が配置されているとともに、揺動スクロール20の鏡板の第二外周部24には、所定の偏心量の偏心部を有する第二クランク軸28が配置されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28の両方が水平方向に延在している。揺動スクロール20は、第一クランク軸26及び第二クランク軸28の偏心部において、軸受を介して旋回可能に軸支されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28は、それぞれ、第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18の保持された軸受によって回転可能に支持されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28は、タイミングベルトによって同期回転可能に連結されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28が発電機の発電機軸に連結されており、回転動力が発電機に提供される。
【0037】
次に、スクロール形膨張機10及びランキンサイクル動力回収システム1における流通構造及び作動媒体の働きについて説明する。
【0038】
まず、蒸気発生器3において、液体収納部3bに蓄えられた作動媒体の液体(水)を加熱することによって、高温・高圧の作動媒体の蒸気(水蒸気)31が蒸気収納部3aで生成される。蒸気発生器3で生成された作動媒体の蒸気(水蒸気)31が、蒸気供給管103を通じて蒸気供給部30に供給される。作動媒体の蒸気(水蒸気)31がスクロール本体10の膨張室で膨張することで、揺動スクロール20が揺動する。揺動スクロール20の揺動によって、水平方向に延在する第一クランク軸26及び第二クランク軸28が回動して、回転動力が出力される。膨張室での膨張によって圧力及び温度の低下した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33は、蒸気放出口19から密閉空間25に放出される。また、スクロール本体12から漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33も密閉空間25に放出される。なお、膨張室での膨張途中において、飽和状態の作動媒体の蒸気(水蒸気)31が湿り域に入り、作動媒体の蒸気(水蒸気)31の一部分が液相に変化する。この液相の作動媒体も摺動部分の潤滑及びシールに供される。
【0039】
密閉空間25に放出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33の大部分が、蒸気排出口36からスクロール膨張機10の外に排出される。スクロール膨張機10の外に排出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33は、蒸気回収管107を通じて凝縮部5に送られて液体(水)に凝縮される。凝縮部5で凝縮された作動媒体の液体(水)は、液体回収管109を通じて作動媒体供給ポンプ9に送られる。
【0040】
他方、密閉空間25に放出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33の一部分が、密閉ケース14の内面やスクロール本体12の外面等の各種表面に接して冷やされることによって使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が凝結して液化する。液化した作動媒体は、各種表面に沿って滴り落ちて液溜まり部44で受け止められて、作動媒体の液体46として液溜まり部44に蓄えられる。液溜まり部44が作動媒体の液体46で一杯に満たされると、液面制御用の浮き42が浮力によって持ち上げられて、液体排出部40の上端開口部を開放する。その結果、液体排出部40の上端レベルを超える作動媒体の液体46が、液体排出部40の上端開口部及び液体排出口38を通じてスクロール膨張機10の外に排出される。したがって、液溜まり部44における作動媒体の液体46の溜まりレベルが、大略一定に保たれる。そして、液体排出口38に接続された液体排出管111に排出された作動媒体の液体46は、液体回収管109を通じて作動媒体供給ポンプ9に送られる。したがって、作動媒体は、蒸気(水蒸気)と液体(水)との間で相状態を変えながらランキンサイクル動力回収システム1内を循環する。
【0041】
作動媒体供給ポンプ9から吐出された作動媒体の液体(水)は、不図示の逆止弁及び液体供給管101を通じて蒸気発生器3に供給されて、加熱及び蒸発処理が行われる。蒸気収納部3aで得られた高温・高圧の作動媒体の蒸気(水蒸気)31が、蒸気供給管103を通じて蒸気供給部30に供給される。蒸発時に飽和によって蒸発することなく液体収納部3bに蓄えられた高温の作動媒体の液体(水)は、シール液用供給管105を通じて予混合装置32に供給される。
【0042】
上記のように、スクロール本体12で使用された作動媒体の蒸気(水蒸気)31、すなわちスクロール本体12から排出された及び/又は漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が、密閉ケース14の密閉空間25内で凝結し、凝結した高温の作動媒体の液体46が液溜まり44に溜められる。密閉ケース14の壁面が凝結作用を提供するために、凝結器5だけで使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33を液化する場合よりも、凝結器5を小型化することができる。また、スクロール膨張機10及びランキンサイクル動力回収システム1における熱損失をできるだけ少なくすることができる。
【0043】
次に、本発明の第二実施形態に係るスクロール形膨張機10,50及び該スクロール形膨張機10,50を備えたランキンサイクル動力回収システム1について、図2を参照しながら説明するが、上述した第一実施形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
上述した第一実施形態は、単一のスクロール形膨張機10を用いたランキンサイクル動力回収システム1であるのに対して、第二実施形態は、複数台のスクロール形膨張機10,50を用いたランキンサイクル動力回収システム1に関する。スクロール形膨張機10,50の基本構造は、第一実施形態における単一のスクロール形膨張機10と実質的に同じであるので、それとの相違点を以下に説明する。
【0045】
図2に示したランキンサイクル動力回収システム1は、不図示の発電機を駆動するための装置として、高圧段スクロール形膨張機50及び低圧段スクロール形膨張機10という二つのスクロール形膨張機10を備えている。図2に示した低圧段スクロール形膨張機10は、第一実施形態におけるスクロール形膨張機10と実質的に同じであるので、その説明を省略する。
【0046】
高圧段スクロール形膨張機50は、第一固定スクロール56と第二固定スクロール58と揺動スクロール60とを備えるスクロール本体52と、該スクロール本体52を密閉状態で収納する密閉ケース54と、該スクロール本体52を密閉ケース54に固定支持する支持部74と、から構成されている。
【0047】
第一固定スクロール56及び第二固定スクロール58の中央部には、それぞれ、蒸気供給部70が軸方向に延在するように配置されている。第一固定スクロール56及び第二固定スクロール58の中央部下側には、それぞれ、蒸気排出部59が配置されている。
【0048】
ボックス状の密閉ケース54は、樹脂又は金属からなる第一ケース54a及び第二ケース54bから構成されている。第一ケース54a及び第二ケース54bの中央部下側には、蒸気排出部59を挿通するための開口部が設けられている。スクロール本体52で使用された作動媒体の蒸気(水蒸気)の大部分が、蒸気排出部59から排出される。スクロール本体52から漏出した作動媒体の蒸気(水蒸気)が、スクロール本体52の外面と密閉ケース54の内面とで形成された密閉空間65を満たしている。密閉空間65を充満している作動媒体の蒸気(水蒸気)が、密閉ケース54の内面やスクロール本体52の外面等の各種表面に接して冷やされることによって使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が凝結して液化する。液化した作動媒体は、各種表面に沿って滴り落ちて、密閉ケース54の底部に設けられた液溜まり部84で受け止められる。当該液溜まり部84には、例えば、90乃至100℃の作動媒体の液体(水)86が溜められる。
【0049】
密閉ケース54の最下部には、開口した液体排出口78が設けられている。液体排出口78から軸直交方向に円筒壁状に延在する液体排出部80が形成されている。液体排出部80の外壁面と密閉ケース54の内壁面とによって、液溜まり部84が密閉ケース54の底部に形成されている。液体排出部80の上端には、液面制御用の浮き82が設置されている。液溜まり部84における作動媒体の液体86の量が少ないときには、液面制御用の浮き82が液体排出部80の上端開口部を閉止している。液溜まり部84が作動媒体の液体86で一杯に満たされると、液面制御用の浮き82が浮力によって持ち上げられて、液体排出部80の上端開口部を開放する。その結果、液体排出部80の上端レベルを超える作動媒体の液体86が、液体排出部80の上端開口部及び液体排出口78を通じて排出される。したがって、液溜まり部84における作動媒体の液体86の溜まりレベルが、大略一定に保たれる。例えば、液溜まり部84の容積は、密閉空間65の容積に対しておおよそ1/8乃至1/4であるように構成されるが、スクロール本体52から漏出した少量の作動媒体の蒸気(水蒸気)を液溜まり部84での捕集対象にしているので、より好適には、密閉空間65の容積に対しておおよそ1/10乃至1/6であるように構成される。
【0050】
第一固定スクロール56及び第二固定スクロール58は、それぞれ、渦巻状のスクロールラップを鏡板上に有し、これらのスクロールラップが対向するように並行に配置されている。揺動スクロール60の鏡板のおもて面及び裏面には、渦巻状のスクロールラップが形成されている。揺動スクロール60のスクロールラップと、第一固定スクロール56と第二固定スクロール58のスクロールラップとがそれぞれ噛み合うことにより、揺動スクロール60の鏡板のおもて面及び裏面には膨張室が形成されている。
【0051】
揺動スクロール60の鏡板の第一外周部62には、所定の偏心量の偏心部を有する第一クランク軸66が配置されているとともに、揺動スクロール60の鏡板の第二外周部64には、所定の偏心量の偏心部を有する第二クランク軸68が配置されている。揺動スクロール60は、第一クランク軸66及び第二クランク軸68の偏心部において、軸受を介して旋回可能に軸支されている。第一クランク軸66及び第二クランク軸68は、それぞれ、第一固定スクロール56及び第二固定スクロール58の保持された軸受によって回転可能に支持されている。
【0052】
高圧段スクロール形膨張機50の第一クランク軸66及び第二クランク軸68は、それぞれ、第一カップリング91及び第二カップリング93を介して、低圧段スクロール形膨張機10の第一クランク軸26及び第二クランク軸28に連結されている。連結されたこれらのクランク軸26,28,66,68は、タイミングベルトによって同期回転可能に連結されているとともに、発電機の発電機軸に連結されており、回転動力が発電機に提供される。
【0053】
次に、図2に示したスクロール形膨張機10,50及びランキンサイクル動力回収システム1における流通構造及び作動媒体の働きについて説明する。
【0054】
まず、蒸気発生器3において、液体収納部3bに蓄えられた作動媒体の液体(水)を加熱することによって、高温・高圧の作動媒体の蒸気(水蒸気)71が蒸気収納部3aで生成される。蒸気発生器3で生成された作動媒体の蒸気(水蒸気)71が、蒸気供給管123を通じて高圧段スクロール形膨張機50の蒸気供給部70に供給される。作動媒体の蒸気(水蒸気)71が高圧段のスクロール本体50の膨張室で膨張することで、揺動スクロール60が揺動する。揺動スクロール60の揺動によって、第一クランク軸66及び第二クランク軸68が回動して、回転動力が出力される。膨張室での膨張によって圧力及び温度の低下した作動媒体の蒸気(水蒸気)は、蒸気排出部59及び蒸気回収管127を通じて低圧段スクロール形膨張機10の蒸気供給部30に供給される。
【0055】
また、高圧段のスクロール本体52から漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)73は、密閉空間65に放出される。なお、膨張室での膨張途中において、飽和状態の作動媒体の蒸気(水蒸気)71が湿り域に入り、作動媒体の蒸気(水蒸気)71の一部分が液相に変化する。この液相の作動媒体も摺動部分の潤滑及びシールに供される。
【0056】
高圧段スクロール形膨張機50の密閉空間65に漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)73が、密閉ケース54の内面やスクロール本体52の外面等の各種表面に接して冷やされることによって使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)73が凝結して液化する。液化した作動媒体は、各種表面に沿って滴り落ちて液溜まり部84で受け止められて、作動媒体の液体86として液溜まり部84に蓄えられる。液溜まり部84が作動媒体の液体(例えば、90乃至100℃)86で一杯に満たされると、液面制御用の浮き82が浮力によって持ち上げられて、液体排出部80の上端開口部を開放する。その結果、液体排出部80の上端レベルを超える作動媒体の液体86が、液体排出部80の上端開口部及び液体排出口78を通じて、高圧段スクロール形膨張機50の外に排出される。したがって、液溜まり部84における作動媒体の液体86の溜まりレベルが、大略一定に保たれる。そして、液体排出口78から排出された高温の作動媒体の液体86は、シール液用供給管131を通じて、低圧段スクロール形膨張機10の予混合装置32に送られる。また、蒸発時に飽和によって蒸発することなく液体収納部3bに蓄えられた高温の作動媒体の液体(水)は、シール液用供給管125を通じて、高圧段スクロール形膨張機50の予混合装置72に供給される。
【0057】
高圧段スクロール形膨張機50の膨張室での膨張によって圧力及び温度の低下した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)73は、蒸気回収管127を通じて、低圧段スクロール形膨張機10の蒸気供給部30に作動媒体の蒸気(水蒸気)31として供給される。作動媒体の蒸気(水蒸気)31がスクロール本体10の膨張室で膨張することで、揺動スクロール20が揺動する。揺動スクロール20の揺動によって、第一クランク軸26及び第二クランク軸28が回動して、回転動力が出力される。膨張室での膨張によって圧力及び温度の低下した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33は、蒸気放出口19から密閉空間25に放出される。また、スクロール本体12から漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33も密閉空間25に放出される。なお、膨張室での膨張途中において、飽和状態の作動媒体の蒸気(水蒸気)31が湿り域に入り、作動媒体の蒸気(水蒸気)31の一部分が液相に変化する。この液相の作動媒体も摺動部分の潤滑及びシールに供される。
【0058】
密閉空間25に放出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33の大部分が、蒸気排出口36から低圧段スクロール膨張機10の外に排出される。低圧段スクロール膨張機10の外に排出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33は、蒸気回収管107を通じて凝縮部5に送られて液体(水)に凝縮される。凝縮部5で凝縮された作動媒体の液体(水)は、液体回収管109を通じて作動媒体供給ポンプ9に送られる。
【0059】
他方、密閉空間25に放出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33の一部分が、密閉ケース14の内面やスクロール本体12の外面等の各種表面に接して冷やされることによって使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が凝結して液化する。液化した作動媒体は、各種表面に沿って滴り落ちて液溜まり部44で受け止められて、作動媒体の液体46として液溜まり部44に蓄えられる。液溜まり部44が作動媒体の液体(例えば、80乃至90℃)46で一杯に満たされると、液面制御用の浮き42が浮力によって持ち上げられて、液体排出部40の上端開口部を開放する。その結果、液体排出部40の上端レベルを超える作動媒体の液体46が、液体排出部40の上端開口部及び液体排出口38を通じてスクロール膨張機10の外に排出される。したがって、液溜まり部44における作動媒体の液体46の溜まりレベルが、大略一定に保たれる。そして、液体排出口38に接続された液体排出管111に排出された作動媒体の液体46は、液体回収管109を通じて作動媒体供給ポンプ9に送られる。
【0060】
作動媒体供給ポンプ9から吐出された作動媒体の液体(水)は、不図示の逆止弁及び液体供給管101を通じて蒸気発生器3に供給されて、加熱及び蒸発処理が行われる。蒸気収納部3aで得られた高温・高圧の作動媒体の蒸気(水蒸気)71が、蒸気供給管123を通じて、高圧段スクロール膨張機50の蒸気供給部70に供給される。したがって、作動媒体は、蒸気(水蒸気)と液体(水)との間で相状態を変えながらランキンサイクル動力回収システム1内を循環する。
【0061】
上記のように、高圧段スクロール膨張機50のスクロール本体52で使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)73が低圧段スクロール膨張機10のスクロール本体12においても使用されるとともに、高圧段スクロール膨張機50のスクロール本体52から漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)73が密閉ケース54の密閉空間65内で凝結し、凝結した高温の作動媒体の液体が液溜まり84に溜められて低圧段スクロール膨張機10の予混合装置32のシール剤として利用される。さらにまた、低圧段スクロール膨張機10のスクロール本体12から排出された及び/又は漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が、密閉ケース14の密閉空間25内で凝結し、凝結した高温の作動媒体の液体46が液溜まり44に溜められる。密閉ケース14の壁面が凝結作用を提供するために、凝結器5だけで使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33を液化する場合よりも、凝結器5を小型化することができる。また、スクロール膨張機10,50及びランキンサイクル動力回収システム1における熱損失をできるだけ少なくすることができる。
【0062】
次に、本発明の第三実施形態に係るスクロール形膨張機10及び該スクロール形膨張機10を備えたランキンサイクル動力回収システム1について、図3を参照しながら説明するが、上述した第一実施形態との相違点を中心に説明する。
【0063】
上述した第一実施形態は、スクロール形膨張機10のクランク軸26,28が水平方向に延在するのに対して、第三実施形態は、スクロール形膨張機10のクランク軸26,28が垂直方向に延在していることを特徴としている。したがって、第三実施形態におけるスクロール形膨張機10の基本構造は、第一実施形態におけるスクロール形膨張機10と類似しているところが多いので、相違点を中心に以下に説明する。
【0064】
図3に示すように、第三実施形態に係るランキンサイクル動力回収システム1は、不図示の発電機を駆動するための装置として、単一のスクロール形膨張機10を備えている。該スクロール形膨張機10に設けられた垂直方向に延在するクランク軸(駆動軸)26,28が、発電機の発電機軸に連結されており、スクロール形膨張機10のクランク軸(駆動軸)26,28の回転駆動力で発電機の発電機軸を回転させることにより、発電を行うようになっている。
【0065】
図3に示した外周駆動形のスクロール形膨張機10は、第一固定スクロール16と第二固定スクロール18と揺動スクロール20とを備えるスクロール本体12と、該スクロール本体を密閉状態で収納する密閉ケース14と、該スクロール本体12を密閉ケース14に固定支持する支持部34と、から構成されている。
【0066】
第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18の中央部には、それぞれ、蒸気供給部30が軸方向に延在するように配置されている。第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18の上部には、それぞれ、蒸気排出部19が配置されている。
【0067】
ボックス状の密閉ケース14は、樹脂又は金属からなる第一ケース14a及び第二ケース14bから構成されている。第一ケース14a及び第二ケース14bの右側には、開口した蒸気排出口36が設けられている。蒸気放出口19から排出された及び/又はスクロール本体12から漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が、スクロール本体12の外面と密閉ケース14の内面とで形成された密閉空間25を満たしている。作動媒体の蒸気(水蒸気)の大部分が、蒸気排出口36から排出される。作動媒体の蒸気(水蒸気)の一部分が、密閉ケース14の内面やスクロール本体12の外面等の各種表面に接して冷やされることによって使用後の作動媒体の蒸気(水蒸気)33が凝結して液化する。液化した作動媒体は、各種表面に沿って滴り落ちて、密閉ケース14の第二ケース14bの底部に設けられて半円環状に凹んだ液溜まり部44で受け止められる。半円環状に凹んだ液溜まり部44には、90乃至100℃の作動媒体の液体(水)46が溜められる。
【0068】
液溜まり部44の最下部には、開口した液体排出口38が設けられている。液溜まり部44内に設けられたフロースイッチやレベルスイッチ等の液面センサが、作動媒体の液体46の液面レベルの変動に応じてオン・オフして、液体排出口38の直上に設けられた電磁バルブを開閉させることによって、液溜まり部44における作動媒体の液体46の溜まりレベルが大略一定に保たれるように構成されている。その結果、液面センサによって検出される所定の液面レベルを超える作動媒体の液体46が、液体排出口38を通じてスクロール形膨張機10の外に排出される。例えば、液溜まり部44の容積は、密閉空間25の容積に対しておおよそ1/8乃至1/4であるように構成される。
【0069】
第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18は、それぞれ、渦巻状のスクロールラップを鏡板上に有し、これらのスクロールラップが対向するように並行に配置されている。揺動スクロール20の鏡板の上面及び下面には、渦巻状のスクロールラップが形成されている。揺動スクロール20のスクロールラップと、第一固定スクロール16と第二固定スクロール18のスクロールラップとがそれぞれ噛み合うことにより、揺動スクロール20の鏡板の上面及び下面には膨張室が形成されている。
【0070】
揺動スクロール20の鏡板の第一外周部22には、所定の偏心量の偏心部を有する第一クランク軸26が配置されているとともに、揺動スクロール20の鏡板の第二外周部24には、所定の偏心量の偏心部を有する第二クランク軸28が配置されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28の両方が垂直方向に延在している。揺動スクロール20は、第一クランク軸26及び第二クランク軸28の偏心部において、軸受を介して旋回可能に軸支されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28は、それぞれ、第一固定スクロール16及び第二固定スクロール18の保持された軸受によって回転可能に支持されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28は、タイミングベルトによって同期回転可能に連結されている。第一クランク軸26及び第二クランク軸28が発電機の発電機軸に連結されており、回転動力が発電機に提供される。
【0071】
次に、第三実施形態に係るスクロール形膨張機10及びランキンサイクル動力回収システム1における流通構造及び作動媒体の働きについて説明する。
【0072】
まず、蒸気発生器3において、液体収納部3bに蓄えられた作動媒体の液体(水)を加熱することによって、高温・高圧の作動媒体の蒸気(水蒸気)31が蒸気収納部3aで生成される。蒸気発生器3で生成された作動媒体の蒸気(水蒸気)31が、蒸気供給管103を通じて蒸気供給部30に供給される。作動媒体の蒸気(水蒸気)31がスクロール本体10の膨張室で膨張することで、揺動スクロール20が揺動する。揺動スクロール20の揺動によって、垂直方向に延在する第一クランク軸26及び第二クランク軸28が回動して、回転動力が出力される。膨張室での膨張によって圧力及び温度の低下した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33は、蒸気放出口19から密閉空間25に放出される。また、スクロール本体12から漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33も密閉空間25に放出される。なお、膨張室での膨張途中において、飽和状態の作動媒体の蒸気(水蒸気)31が湿り域に入り、作動媒体の蒸気(水蒸気)31の一部分が液相に変化する。この液相の作動媒体も摺動部分の潤滑及びシールに供される。
【0073】
密閉空間25に放出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33の大部分が、蒸気排出口36からスクロール膨張機10の外に排出される。スクロール膨張機10の外に排出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33は、蒸気回収管107を通じて凝縮部5に送られて液体(水)に凝縮される。凝縮部5で凝縮された作動媒体の液体(水)は、液体回収管109を通じて作動媒体供給ポンプ9に送られる。
【0074】
他方、密閉空間25に放出された使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33の一部分が、密閉ケース14の内面やスクロール本体12の外面等の各種表面に接して冷やされることによって使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が凝結して液化する。液化した作動媒体は、各種表面に沿って滴り落ちて液溜まり部44で受け止められて、作動媒体の液体46として液溜まり部44に蓄えられる。液溜まり部44が作動媒体の液体46で所定レベルまで満たされると、液面センサによって作動媒体の液体46の液面レベルが検出されて電磁バルブを開くことによって、作動媒体の液体46が、液体排出口38を通じてスクロール形膨張機10の外に排出される。したがって、液溜まり部44における作動媒体の液体46の溜まりレベルが、大略一定に保たれる。そして、液体排出口38に接続された液体排出管111に排出された作動媒体の液体46は、液体回収管109を通じて作動媒体供給ポンプ9に送られる。したがって、作動媒体は、蒸気(水蒸気)と液体(水)との間で相状態を変えながらランキンサイクル動力回収システム1内を循環する。
【0075】
作動媒体供給ポンプ9から吐出された作動媒体の液体(水)は、不図示の逆止弁及び液体供給管101を通じて蒸気発生器3に供給されて、加熱及び蒸発処理が行われる。蒸気収納部3aで得られた高温・高圧の作動媒体の蒸気(水蒸気)31が、蒸気供給管103を通じて蒸気供給部30に供給される。蒸発時に飽和によって蒸発することなく液体収納部3bに蓄えられた高温の作動媒体の液体(水)は、シール液用供給管105を通じて予混合装置32に供給される。
【0076】
上記のように、スクロール本体12で使用された作動媒体の蒸気(水蒸気)31、すなわちスクロール本体12から排出された及び/又は漏出した使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33が、密閉ケース14の密閉空間25内で凝結し、凝結した高温の作動媒体の液体46が液溜まり44に溜められる。密閉ケース14の壁面が凝結作用を提供するために、凝結器5だけで使用後の作動媒体蒸気(水蒸気)33を液化する場合よりも、凝結器5を小型化することができる。また、スクロール膨張機10及びランキンサイクル動力回収システム1における熱損失をできるだけ少なくすることができる。
【0077】
第二実施形態のように、第三実施形態において説明したスクロール形膨張機10を二台準備して、それらを垂直方向に連結配置した低圧段及び高圧段からなるランキンサイクル動力回収システム1とすることもできる。なお、この場合及び上述した第二実施形態において、3台や4台のスクロール形膨張機10を、それぞれ、垂直方向及び水平方向に連結配置することもできる。
【0078】
上述した本発明の実施形態では、いずれも、両歯式で駆動軸が外周にある外周駆動形のスクロール形膨張機を適用した場合について説明したが、片歯式で駆動軸が中心にあるタイプのスクロール形膨張機や、片歯式で駆動軸が外周にあるタイプのスクロール形膨張機に対しても本願発明を適用することができる。
【0079】
また、スクロール形膨張機を作動させる作動媒体として、アンモニア及び水、あるいはアルコール及び水を混合した混合媒体を用いることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 ランキンサイクル動力回収システム
3 蒸気発生器
3a 蒸気収納部
3b 液体収納部
5 凝縮器
7 冷却水供給ポンプ
9 作動媒体供給ポンプ(復水ポンプ)
10 スクロール形膨張機(低圧段)
12 スクロール本体(低圧段)
14 密閉ケース
14a 第一ケース
14b 第二ケース
16 第一固定スクロール
18 第二固定スクロール
19 蒸気放出口
20 揺動スクロール
22 第一外周部
24 第二外周部
25 密閉空間
26 第一クランク軸
28 第二クランク軸
30 蒸気供給部
31 作動媒体の蒸気
32 予混合装置
33 使用後の作動媒体蒸気
34 支持部
36 蒸気排出口
38 液体排出口
40 液体排出部
42 液面制御浮き
44 液溜まり部
46 作動媒体の液体
50 スクロール形膨張機(高圧段)
52 スクロール本体(高圧段)
54 密閉ケース
54a 第一ケース
54b 第二ケース
56 第一固定スクロール
58 第二固定スクロール
59 蒸気排出口
60 揺動スクロール
62 揺動軸部
64 揺動軸部
66 第一クランク軸
68 第二クランク軸
70 蒸気供給部
71 作動媒体の蒸気
72 予混合装置
73 使用後の作動媒体蒸気
74 支持部
78 液体排出口
80 液体排出部
82 液面制御浮き
84 液溜まり
86 作動媒体の液体
91 第一カップリング
93 第二カップリング
101 液体供給管
103 蒸気供給管
105 シール液用供給管
107 蒸気回収管
109 液体回収管
113 冷却水供給管
115 冷却水排出管
123 蒸気供給管
125 シール液用供給管
127 蒸気回収管
131 シール液用供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール本体が密閉ケース内に収納されたスクロール形膨張機であって、作動媒体の蒸気が密閉ケース内で凝結することによって生成された作動媒体の液体を溜めておく液溜まりを、スクロール形膨張機の設置位置に合わせて、前記密閉ケースの底部に配設することを特徴とするスクロール形膨張機。
【請求項2】
前記液溜まりは、溜められた作動媒体の液体の液面を大略一定に保つ液面保持手段を有することを特徴とする、請求項1に記載のスクロール形膨張機。
【請求項3】
前記スクロール本体が、鏡板の両側に渦巻状の旋回側スクロールラップを有する旋回スクロールと、該旋回スクロールの両側に配置されて前記旋回側スクロールラップと噛み合う固定側スクロールラップを有する固定スクロールと、該旋回スクロールの外周側に配置された第一クランク軸及び第二クランク軸と、を備える外周駆動形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスクロール形膨張機。
【請求項4】
蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した作動媒体の蒸気により駆動される一つのスクロール形膨張機と、スクロール形膨張機から排出された作動媒体の蒸気を凝縮する凝縮器と、該凝縮器で凝縮された作動媒体の液体を蒸気発生器に供給するポンプと、を備えるランキンサイクル動力回収システムにおいて、
前記スクロール形膨張機が請求項1乃至3のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする、ランキンサイクル動力回収システム。
【請求項5】
蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した作動媒体の蒸気により駆動される複数のスクロール形膨張機と、スクロール形膨張機から排出された作動媒体の蒸気を凝縮する凝縮器と、該凝縮器で凝縮された作動媒体の液体を蒸気発生器に供給するポンプと、を備えるランキンサイクル動力回収システムにおいて、
前記複数のスクロール形膨張機として、高温・高圧蒸気が供給される高圧段スクロール形膨張機と、該高圧段膨張機から排出された低圧蒸気が供給される低圧段スクロール形膨張機と、が連設されて、
前記複数のスクロール形膨張機が請求項1乃至3のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする、ランキンサイクル動力回収システム。
【請求項6】
前記高圧段スクロール形膨張機の液溜まりに溜まった作動媒体の液体を、低圧段スクロール形膨張機の予混合室に導入することを特徴とする、請求項5に記載のランキンサイクル動力回収システム。
【請求項7】
前記高圧段スクロール形膨張機のクランク軸と低圧段スクロール形膨張機のクランク軸とが、カップリングを介して連結されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載のランキンサイクル動力回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−132928(P2011−132928A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295170(P2009−295170)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)