説明

スケジューリングリクエストの再設定プロシージャを改善する方法及び通信装置

【課題】スケジューリングリクエスト(SR)プロシージャパラメータを適切に再設定するために、無線通信システムのUE(ユーザー端末)に用いられるSRの再設定プロシージャを改善する方法及び通信装置を提供する。
【解決手段】方法は、UEのSRプロシージャパラメータの再設定を求める上位層プロトコルリクエストを受信する段階と、UEによりSRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値をSRプロシージャパラメータに適用する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスケジューリングリクエスト(SR)の再設定(reconfiguration)プロシージャを改善する方法及び通信装置に関し、特にSRプロシージャに用いられる関連パラメータを適切に再設定するために、無線通信システムのUE(ユーザー端末)に用いられるSRの再設定プロシージャを改善する方法及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LTE(long term evolution)無線通信システムは、第三世代移動通信システム(例えばUMTS(汎用移動通信システム))をもとに確立されたアドバンスド高速無線通信システムである。LTE無線通信システムはパケット交換のみサポートし、そのRLC(無線リンク制御)層とMAC(媒体アクセス制御)層は基地局(ノードB)とRNC(無線ネットワークコントローラ)に個別に設ける必要がなく、同一の通信ネットワークエンティティーに統合できるので、システム構造が比較的に簡単である。
【0003】
LTE無線通信システムでは、3GPP TS 36.321 V8.4.0仕様書によれば、UEにアップリンク伝送すべきデータ(例えばレギュラーBSR(バッファ状態報告))があった場合、新規伝送に用いられるUL−SCH(アップリンク共用チャネル)リソースがなければ、アップリンク伝送を実行するために、UEはSRプロシージャでネットワークに対してUL−SCHリソースを割り当てるように求める。UEにSRを伝送するためのPUCCH(物理アップリンク制御チャネル)リソースが割り当てられていれば、SRはPUCCHにより伝送される。さもなければ、UEにSRを伝送するためのPUCCHリソースがなかった場合、或いは割り当てられたSRを伝送するためのPUCCHリソースが無効になった場合では、ランダムアクセスプロシージャでネットワークに対してUL−SCHリソースを割り当てるように求めなければならない。
【0004】
現行の仕様によれば、UEがトリガーしたSRは、取り消される前にすべて未完成(pending)とみなされる。また、UEによりSRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合では、SRプロシージャにおいてSR伝送回数を計算するためのカウンタSR_COUNTERを0とし、すなわちカウンタSR_COUNTERを初期化する。
【0005】
未完成のSRについて、SRを伝送するためのPUCCHリソースが割り当てられていれば、UEはネットワークから新規伝送のために割り当てられたUL−SCHリソースを受信するか、またはSR伝送回数が所定のパラメータdsr−TransMaxになるまで、PUCCHでSRを周期的に伝送する。カウンタSR_COUNTERの値はSRを伝送するたびに1足される。SR伝送回数がパラメータdsr−TransMaxになれば、UEのアップリンク伝送に問題が生じたと判断できる。例えば、SRの伝送に用いられるPUCCHリソースが無効になった(無線信号の品質不良か不当の電力設定により無効になりうる)か、アップリンクタイミングが同期性を失ったことにより、UEからPUCCHを介して伝送されたSRがネットワークにより正常に受信・復号できないという問題が生じたと判断する。この場合、UEは未完成のSRをすべて取り消し、アップリンクリソース(例えば割り当てられたすべてのPUCCHリソース、及びアップリンクSRS(サウンディング基準信号)を伝送するためのSRSリソース)を解放し、ランダムアクセスプロシージャを起動しなければならない。また、UEは新規伝送のために割り当てられたUL−SCHリソースを受信した場合でも、未完成のSRをすべて取り消す。
【0006】
一方、RRC(無線リソース制御)層などの上位層プロトコルは、dsr−TransMax、sr−PUCCH−ResourceIndex、sr−ConfigurationIndexなどのSRプロシージャパラメータを再設定するために、UEに対してSRの再設定プロシージャを実行するように求める。現行の仕様によれば、上位層プロトコルが再設定を求めた場合、UEは直ちに上位層プロトコルからの新しい設定値をMAC(媒体アクセス制御)パラメータに適用しなければならない。
【0007】
しかし、SRプロシージャパラメータなど一部のMACパラメータについて、新しい設定値を直ちに適用すれば、UEにエラーが生じうる。例えば、UEに未完成のSRがあり、かつ上位層プロトコルがMACパラメータの再設定を求めた場合、上位層プロトコルからの新しい設定値をSRプロシージャパラメータdsr−TransMaxに直ちに適用すれば、カウンタSR_COUNTERの値はパラメータdsr−TransMaxを超え、それによりUEはアップリンクリソースを不必要に解放してランダムアクセスプロシージャを実行する。したがって、従来のSRの再設定プロシージャには改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はSRプロシージャパラメータを適切に再設定するために、無線通信システムのUEに用いられるSRの再設定プロシージャを改善する方法及び通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、無線通信システムのUE(ユーザー端末)に用いられるスケジューリングリクエスト(SR)の再設定プロシージャを改善する方法を開示する。同方法は、UEのSRプロシージャパラメータの再設定を求める上位層プロトコルリクエストを受信する段階と、UEによりSRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値をSRプロシージャパラメータに適用する段階とを含む。
【0010】
本発明では更に、無線通信システムのUEに用いられるSRの再設定プロシージャを改善するための通信装置を開示する。通信装置は、プログラムを実行するCPU(中央処理装置)と、CPUに結合され、プログラムを記憶する記憶装置とを含む。プログラムは、UEのSRプロシージャパラメータの再設定を求める上位層プロトコルリクエストを受信する段階と、UEによりSRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値をSRプロシージャパラメータに適用する段階とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】無線通信システムを表す説明図である。
【図2】無線通信装置のブロック図である。
【図3】図2に示すプログラムを表す説明図である。
【図4】本発明の実施例による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照する。図1は無線通信システム10を表す説明図である。無線通信システム10は望ましくはLTEシステムであって、概してネットワークと複数のUEからなる。図1に示すネットワークとUEは無線通信システム10の構造を説明するために用いるに過ぎない。実際、ネットワークは要求に応じて複数の基地局、RNC(無線ネットワークコントローラー)を含みうる。UEは携帯電話、コンピュータシステムなどの装置である。
【0013】
図2を参照する。図2は無線通信装置100のブロック図である。無線通信装置100は図1に示すUEを実施する。説明を簡素化するため、図2では無線通信装置100の入力装置102、出力装置104、制御回路106、CPU(中央処理装置)108、記憶装置110、プログラム112及びトランシーバー114のみ示している。無線通信装置100において、制御回路106はCPU108を用いて記憶装置110に記録されたプログラム112を実行し、無線通信装置100の動作を制御し、入力装置102(例えばキーボード)でユーザーが入力した信号を受信し、出力装置104(スクリーン、スピーカーなど)で映像、音声などの信号を出力する。無線信号を受発信するトランシーバー114は受信した信号を制御回路106に送信し、または制御回路106による信号を無線で出力する。言い換えれば、通信プロトコルに当てはめれば、トランシーバー114は第一層の一部とみなされ、制御回路106は第二層と第三層の機能を実施する。
【0014】
図3を参照する。図3は図2に示すプログラム112を表す説明図である。プログラム112はアプリケーション層200と、第三層インターフェイス202と、第二層インターフェイス206を備え、第一層インターフェイス218と接続されている。第三層インターフェイス202はRRC(無線リソース制御)層インターフェイスを含み、リソース制御を実施する。第二層インターフェイス206はRLC(無線リンク制御)層インターフェイスとMAC(媒体アクセス制御)層インターフェイスを含み、リンク制御を実施する。第一層インターフェイス218は物理接続を実施する。
【0015】
LTE無線通信システムでは、UEにアップリンク伝送すべきデータ(例えばレギュラーBSR)があった場合、新規伝送に用いられるUL−SCHリソースがなければ、アップリンク伝送を実行するために、UEはSRプロシージャでネットワークに対してUL−SCHリソースを割り当てるように求める。また、RRC層などの上位層プロトコルは、SRプロシージャのパラメータを再設定するために、UEに対してSRの再設定プロシージャを実行するように求める。それに鑑みて、本発明の実施例では、SRプロシージャパラメータを改善し、UEがアップリンクリソースを解放してランダムアクセスプロシージャを実行するなどの誤動作を防止するために、SR再設定プログラム220を提供する。
【0016】
図4を参照する。図4は本発明の実施例による方法40のフローチャートである。下記方法40は、無線通信システムのUEにおいてSRの再設定プロシージャの改善に用いられ、SR再設定プログラム220としてコンパイルすることができる。方法40は以下のステップを含む。
【0017】
ステップ400:開始。
ステップ402:上位層プロトコルリクエストを受信する。当該上位層プロトコルリクエストはUEのSRプロシージャパラメータの再設定を求める。
ステップ404:UEによりSRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値をSRプロシージャパラメータに適用する。
ステップ406:終了。
【0018】
以上の方法40によれば、UEはまず、UEのSRプロシージャパラメータの再設定を求める上位層プロトコルリクエストを受信する。次に、UEによりSRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合、UEは上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値をSRプロシージャパラメータに適用する。
【0019】
言い換えれば、上位層プロトコルがSRプロシージャパラメータの再設定を求めるとき、UEはパラメータを直ちに再設定するのでなく、SRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合にSRプロシージャに用いるパラメータに再設定する。したがって、本発明の実施例は、未完成のSRがあったとき、SRの再設定によりSRプロシージャの関連パラメータが突然に変更し、UEがアップリンクリソースを不必要に解放してランダムアクセスプロシージャを実行するのを防止することができる。
【0020】
注意すべきは、現行の仕様によれば、UEによりSRがトリガーされ、かつUEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合では、UEはSRプロシージャにおいてSR伝送回数を計算するためのカウンタSR_COUNTERを0とし、すなわちカウンタSR_COUNTERを初期化する。言い換えれば、上位層プロトコルがSRプロシージャパラメータの再設定を求めるとき、本発明の実施例によるUEはカウンタSR_COUNTERが初期化された場合に、上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値をSRプロシージャの関連パラメータに適用する。
【0021】
望ましくは、前記SRプロシージャパラメータはパラメータdsr−TransMax、パラメータsr−PUCCH−ResourceIndex、またはパラメータsr−ConfigIndexなどSRプロシージャの関連パラメータである。パラメータdsr−TransMaxはSRプロシージャの最大伝送回数を示し、パラメータsr−PUCCH−ResourceIndexはSRプロシージャのPUCCHリソースを示し、パラメータsr−ConfigIndexはSRプロシージャの伝送周期を示す。
【0022】
例えば、UEに未完成のSRがあった場合、上位層プロトコルがSRプロシージャパラメータの再設定を求めれば、本発明の実施例によるUEは、カウンタSR_COUNTERが初期化された場合にしかパラメータdsr−TransMaxを再設定することができない。したがって、本発明の実施例は、SRプロシージャパラメータの再設定によりカウンタSR_COUNTERがパラメータdsr−TransMaxを超え、UEがアップリンクリソースを不必要に解放してランダムアクセスプロシージャを実行するのを防止できる。
【0023】
まとめて言えば、本発明の実施例では、SRプロシージャの関連パラメータを適切に再設定し、UEがアップリンクリソースを不必要に解放してランダムアクセスプロシージャを実行するのを防止するために、無線通信システムのUEに用いられるSRの再設定プロシージャを改善する方法を提供する。
【0024】
以上は本発明に好ましい実施例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、本発明の精神の下においてなされ、本発明に対して均等の効果を有するものは、いずれも本発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0025】
10 無線通信システム
100 無線通信装置
102 入力装置
104 出力装置
106 制御回路
108 CPU
110 記憶装置
112 プログラム
114 トランシーバー
200 アプリケーション層
202 第三層インターフェイス
206 第二層インターフェイス
218 第一層インターフェイス
220 SR再設定プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムのUE(ユーザー端末)に用いられるスケジューリングリクエスト(SR)の再設定プロシージャを改善する方法であって、
前記UEのSRプロシージャパラメータの再設定を求める上位層プロトコルリクエストを受信する段階と、
前記UEによりSRがトリガーされ、かつ前記UEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、前記上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値を前記SRプロシージャパラメータに適用する段階とを含む、SRの再設定プロシージャを改善する方法。
【請求項2】
前記SRプロシージャパラメータは、前記SRプロシージャのPUCCH(物理アップリンク制御チャネル)リソースを示すパラメータsr−PUCCH−ResourceIndexである、請求項1に記載のSRの再設定プロシージャを改善する方法。
【請求項3】
前記SRプロシージャパラメータは、前記SRプロシージャの伝送周期を示すパラメータsr−ConfigIndexである、請求項1に記載のSRの再設定プロシージャを改善する方法。
【請求項4】
前記SRプロシージャパラメータは、前記SRプロシージャのSR最大伝送回数を示すパラメータdsr−TransMaxである、請求項1に記載のSRの再設定プロシージャを改善する方法。
【請求項5】
前記方法は更に、
前記UEによりSRがトリガーされ、かつ前記UEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、前記SRプロシージャのカウンタを初期化する段階を含み、
前記カウンタは前記SRプロシージャのSR伝送回数を計算するために用いられる、請求項1から4の何れか1項に記載のSRの再設定プロシージャを改善する方法。
【請求項6】
前記上位層プロトコルはRRC(無線リソース制御)層である、請求項1から5の何れか1項に記載のSRの再設定プロシージャを改善する方法。
【請求項7】
無線通信システムのUEに用いられるSRの再設定プロシージャを改善するための通信装置であって、
プログラムを実行するCPU(中央処理装置)と、
前記CPUに結合され、前記プログラムを記憶する記憶装置とを含み、前記プログラムは、
前記UEのSRプロシージャパラメータの再設定を求める上位層プロトコルリクエストを受信する段階と、
前記UEによりSRがトリガーされ、かつ前記UEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、前記上位層プロトコルリクエストによる新しい設定値を前記SRプロシージャパラメータに適用する段階とを含む、通信装置。
【請求項8】
前記SRプロシージャパラメータは、前記SRプロシージャのPUCCHリソースを示すパラメータsr−PUCCH−ResourceIndexである、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記SRプロシージャパラメータは、前記SRプロシージャの伝送周期を示すパラメータsr−ConfigIndexである、請求項7に記載の通信装置。
【請求項10】
前記SRプロシージャパラメータは、前記SRプロシージャのSR最大伝送回数を示すパラメータdsr−TransMaxである、請求項7に記載の通信装置。
【請求項11】
前記プログラムは更に、
前記UEによりSRがトリガーされ、かつ前記UEの中でその他未完成のSRが存在しなかった場合に、前記SRプロシージャのカウンタを初期化する段階を含み、
前記カウンタは前記SRプロシージャのSR伝送回数を計算するために用いられる、請求項7から10の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記上位層プロトコルはRRC層である、請求項7から11の何れか1項に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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