説明

スケート靴

【課題】スケート靴を構成するヒール部と中底との止め合わせを、部品点数を徒に増やすことなく、容易かつ適切に行えるようにする。
【解決手段】ヒール部2aと中底3とが、このヒール部2aと中底3とに貫通状態に設けられた通し穴2b、3aに外側から通されて中底3から突き出した箇所6dをカシメられたリベット6によって止め合わされている。リベット6は、アッパー1の吊り込み代1aに設けられた通し穴1bを通って、ヒール部2aと中底3とを止め合わせている。ヒール部2aとソール部2dとは合成樹脂により一体に成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スケート靴の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スケート靴Sの本底2を構成するヒール部2aと中底3とは、ヒール部2aの下面から靴釘7を打ち込んで止め合わされていた。(図6、図7)この従来の手法にあっては、靴釘7を打ち込んだ後、中底3の上面から突き出される釘先端7aを折り曲げることを要していた。かかる靴釘7の折り曲げられた先端7aは中底3上の突起物となり易く、また、靴釘7の先端7aは折り曲げられた方向でしか中底3に引っかからないものであった。また、ヒール部2aは後側に向かうに連れて上下寸法を大きくすることから、折り曲げられた靴釘7の先端7aを前記のような突起物とさせない観点から、従来の手法では一般に長さを異ならせる4種類の靴釘を要していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、スケート靴を構成するヒール部と中底との止め合わせを、部品点数を徒に増やすことなく、容易かつ適切に行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、スケート靴を、ヒール部と中底とが、このヒール部と中底とに貫通状態に設けられた通し穴に外側から通されて中底から突き出した箇所をカシメられたリベットによって止め合わされているものとした。
【0005】
かかる構成によれば、ヒール部と中底とを同じ長さのリベットによって容易かつ適切に止め合わせることができる。ヒール部は、後側に向かうに連れて次第にその下面と上面との間のピッチを大きくするように構成されるが、リベットの頭部とカシメによる開き出し箇所との間の寸法はこのピッチに追随して変わることから、ヒール部のかかるピッチの変化に格別の配慮をすることなく同じ長さのリベットによってヒール部と中底との止め合わせをなすことができる。また、リベットの軸部の先端は前記のように放射方向に開き出され、また、リベットの先端は横方向に厚みを生じさせないように開き出させることができることから、リベットの軸部の先端をその全周に亘って中底上の突起物とならないようにした態様で強固に止め付けることができる。これにより、ヒール部と中底とをしっかりと固定してブレードと靴側とを強固に一体化させることができる。
【0006】
前記リベットを、さらに、アッパーの吊り込み代に設けられた通し穴を通して、このリベットによってヒール部と中底とを止め合わせるようにしておくこともある。
【0007】
このようにした場合、ヒール部の箇所においてアッパーと中底と本底とを強固に止め付け合わせることができる。
【0008】
前記ヒール部とソール部とを合成樹脂により一体に成形させておけば、ヒール部の前側についてはリベットによる止め合わせをなさなくても支障がないようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、スケート靴を構成するヒール部と中底との止め合わせを、異なる長さのリベットを用意することなく、このリベットをヒール部と中底の通し穴に通した後のカシメにより、容易かつ適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1〜図5に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
なお、ここで図1は、この発明を適用して構成されたスケート靴Sを底側から見た状態として、図2は、このスケート靴Sのかかと側を構成パーツを分離させた状態として、図3および図5は、このかかと側を断面にして、図4は、このかかと側のスケート靴Sの内部を上方から見た状態として、それぞれ示している。
【0012】
この実施の形態にかかるスケート靴Sは、スケート靴Sを構成するヒール部2aと中底3との止め合わせを、容易かつ適切にできるようにしたものである。
【0013】
スケート靴Sは、アッパー1(甲被)、中底3、本底2、ブレード4を備える。中底3の上には中敷き5が敷かれる。本底2はソール部2dとヒール部2aとを備える。ブレード4の上部の前後にはそれぞれ本底2に対する取り付け部4aが形成されており、ブレード4は前側の取り付け部4aをもってソール部2dのつま先側に止め付けられると共に、後側の取り付け部4aをもってヒール部2aに取り付けられる。ヒール部2aの下面はソール部2dのつま先側の下面と略同レベルに位置されるが、ヒール部2aの上面は後側に向かうに連れて次第に下面から離れ出す向きに傾斜しており、ヒール部2aは後側に向かうに連れてその上下寸法を大きくするように構成される。
【0014】
かかるスケート靴Sにあっては、ヒール部2aと中底3とが、このヒール部2aと中底3とに貫通状態に設けられた通し穴2b、3aに外側から通されて中底3から突き出した箇所6dをカシメられたリベット6によって止め合わされている。
【0015】
また、かかるリベット6は、吊り込みによって内側に入れ込まされたアッパー1の吊り込み代1aに設けられた通し穴1bを通って、ヒール部2aと中底3とを止め合わせている。吊り込み代1aはヒール部2aの上面と中底3との間に挟み込まれる。
【0016】
図示の例では、かかるリベット6は、円板状の頭部6aと、棒状をなす軸部6bとを有している。軸部6bの少なくともカシメられる箇所は中空になっている。図示の例では、軸部6bの先端側にはこの軸部6bの先端において開放された中空部6cが形成されている。図示の例では、リベット6はこの中空部6cにおいてカシメられるようになっている。
【0017】
ヒール部2aの通し穴2bは、ヒール部2aを上下に貫通するように設けられており、図示の例では、ヒール部2aの左右両側と後部の中央とにそれぞれ設けられている。このヒール部2aの通し穴2bのヒール部2aの下面での穴径はリベット6の頭部6aの径よりも小さくなるようになっている。
【0018】
中底3の通し穴3aおよびアッパー1の吊り込み代1aの通し穴1bは、ヒール部2aの対応する通し穴2bにそれぞれ連通するように設けられる。
【0019】
かかるスケート靴Sにあっては、ヒール部2aと中底3とを同じ長さのリベット6によって容易かつ適切に止め合わせることができる。すなわち、図示しないカシメ装置のカシメ座を中底3側に位置させるようにしてカシメ装置のハンマ部とカシメ座との間にヒール部2aを位置づけさせた状態からハンマ部によって各通し穴1b、2b、3aに通されたリベット6の頭部6aを打撃することにより、カシメ座によりリベット6の軸部6bの先端をカシメて放射方向に外向きに開き出させ、これによりこのリベット6を通した箇所6dにおいて容易にヒール部2aと中底3とを止め合わせることができる。ヒール部2aは、後側に向かうに連れて次第にその下面と上面との間のピッチを大きくするように構成されるが、リベット6の頭部6aとカシメによる開き出し箇所6dとの間の寸法はこのピッチに追随して変わることから、ヒール部2aのかかるピッチの変化に格別の配慮をすることなく同じ長さのリベット6によってヒール部2aと中底3との止め合わせをなすことができる。また、リベット6の軸部6bの先端は前記のように放射方向に開き出され、また、リベット6の先端は横方向に厚みを生じさせないように開き出されることから、リベット6の軸部6bの先端をその全周に亘って中底3上の突起物とならないようにした態様で強固に止め付けることができる。これにより、ヒール部2aと中底3とをしっかりと固定してブレード4と靴側とを強固に一体化させることができる。
【0020】
図示の例では、カシメ座がいわゆる菊割棒の先端の形状を持つようにしてあり、リベット6の中底3からの突き出し箇所6dは前記打撃により6つ〜8つ程度に分割され放射状に開かれている。
【0021】
また、この実施の形態にかかるスケート靴Sにあっては、リベット6が前記アッパー1の吊り込み代1aに設けられた通し穴1bにさらに通るようにしてこのリベット6によるヒール部2aと中底3との止め付けをなしていることから、ヒール部2aの箇所6dにおいてアッパー1と中底3と本底2とを強固に止め付け合わせることができる。
【0022】
また、この実施の形態にあっては、本底2を構成するヒール部2aとソール部2dとが合成樹脂により一体に成形されている。すなわち、ヒール部2aとソール部2dとを持った本底2を合成樹脂により一体に成形させている。
【0023】
この結果、この実施の形態にあっては、ヒール部2aの前側2cについてはリベット6による止め合わせをなさなくても支障がないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】スケート靴Sの底面図
【図2】同要部分離斜視構成図
【図3】同要部断面構成図(前後方向での断面)
【図4】同要部平断面構成図
【図5】同要部断面構成図(左右方向での断面)
【図6】従来例の底面図
【図7】従来例の要部断面構成図(前後方向での断面)
【符号の説明】
【0025】
S スケート靴
2a ヒール部
2b 通し穴
3 中底
3a 通し穴
6 リベット
6d 突き出した箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒール部と中底とが、このヒール部と中底とに貫通状態に設けられた通し穴に外側から通されて中底から突き出した箇所をカシメられたリベットによって止め合わされていることを特徴とするスケート靴。
【請求項2】
リベットが、アッパーの吊り込み代に設けられた通し穴を通って、ヒール部と中底とを止め合わせていることを特徴とする請求項1記載のスケート靴。
【請求項3】
ヒール部とソール部とが合成樹脂により一体に成形されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスケート靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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