説明

スケール除去装置の電極構造

【課題】スケール成分を除去するスケール除去装置の電極構造において、その電極板に接続される配線端子の配置構成に伴う局部的な電流密度の集中を回避して、電解処理の効率化と電極構造におけるメンテンナンス性の向上を図る。
【解決手段】熱交換設備11に循環供給される冷却水を電解処理する電解槽12を備えたスケール除去装置10の電極構造であって、電解槽12内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板13a〜13dと、冷却水中に浸漬される電極板の上端に設けられて電源部15bからの電圧が印加される電極板肉厚2tより厚肉の配線端子14a〜14dと、隣接する電極板の配線端子に対向する電極板の上端に形成される切欠部22とを、有するようにスケール除去装置10の電極構造を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内などへのスケール付着が問題となる熱交換設備において、その冷却水中に含まれるスケール成分を析出除去するためのスケール除去装置の電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クーリングタワーなどの熱交換器などに冷却水を循環させる冷却水循環装置は、熱交換器によって温められた冷却水を冷却塔から散布して冷却し、再び熱交換器に循環させるものである。このような冷却水循環装置においては、その配管の内壁に不溶性のカルシウム塩などがスケールとして付着して、配管の詰まりや冷却効率の低下が生じる。このため、冷却水に殺菌剤やスケール防止剤等の薬剤を添加することが一般的である。
また、水の蒸発によるスケールの付着を防止するために冷却水の硬度を常時モニタして、規定値以上の硬度になるとクーリングタワー内の冷却水を入れ換えるといったことも行われている。
【0003】
しかし、近年では環境汚染防止という観点から薬剤の使用が自粛されるようになり、電解処理を利用したスケール付着防止方法が開発されている。例えば、特許文献1(再公表特許WO2006/027825号公報)には、冷却水循環経路に設けられた冷却水を貯留する電解槽と、前記電解槽内に設置された一対の電極と、前記一対の電極板間に電圧を印加する電圧源と、前記一対の電極板間に電圧を印加することにより前記電解槽内に貯留された前記冷却水の電解処理を行う電解装置とを備えた冷却水循環装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2010−69366号公報)には、電解槽を備えたスケール除去装置において、複数の電極板間に定電流を供給して電解処理する際に、電源部の電源電圧の変化に基づいて電極板により形成される接続回路構成を切り換えて制御することによって、電極構造などにおける耐用性とメンテナンス性を高めるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO2006/027825号公報
【特許文献2】特開2010−69366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スケール除去装置における従来の電極構造では、スケール除去装置の大規模化や処理量の増大に伴って電極板を流れる電流量が大きくなるため、電極板に接続する配線端子を太くする必要がある。これによって、これらの配線端子に対向する隣接した電極板の特定箇所に電流が集中して、均一で安定したスケールの析出が妨げられ、処理効率が悪化したり電極板にかかるメンテナンスが増加したりするという課題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、冷却水中のスケール成分を電解析出させてスケールを除去するスケール除去装置の電極構造において、電極板に接続される配線端子の配置構成に伴う局部的な電流密度の集中を回避して、電解処理の効率化と電極構造におけるメンテンナンス性の向上を図ることのできるスケール除去装置の電極構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記従来の課題を解決するため、本発明のスケール除去装置の電極構造は、
熱交換設備に循環供給される冷却水を電解処理する電解槽を備えたスケール除去装置の電極構造であって、
前記電解槽内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板と、前記冷却水中に浸漬される前記電極板の上端に設けられて電源部からの電圧が印加される電極板肉厚より厚肉の配線端子と、隣接する電極板の配線端子に対向する電極板の上端に形成される切欠部とを、有することを特徴とする。
【0008】
(2)本発明は前記(1)のスケール除去装置の電極構造において、
前記切欠部の幅方向の長さ2hが、
電極板の厚み:2t、配線端子の半径:r、電極板の間隔:dとすると、
2h≧2((2d+r+t)(r−t))1/2、であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記電解槽内に互いに所定の電極間隔を有し並列配置される複数の電極板と、前記冷却水中に浸漬される前記電極板の上端に設けられて電源部からの電圧が印加される電極板肉厚より厚肉の配線端子と、隣接する電極板の配線端子に対向する電極板の上端に形成される切欠部とを、有するので、電極板に接続される配線端子の配置構成に伴う局部的な電流密度の集中を回避できる。したがって、電解処理の効率化と電極構造におけるメンテンナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例に係るスケール除去装置の概略図である。
【図2】実施例に係るスケール除去装置の電解槽における各電極板の使用状態を示す説明図である。
【図3】(a)は実施例に係る電極板の構成を示す平面図であり、(b)は正面図である。
【図4】(a)は実施例に係る電極板における切欠部幅の決定方法を示す平面図であり、(b)はその詳細図であり、(c)は部分拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るスケール除去装置の電極構造は、熱交換設備に循環供給される冷却水を電解処理する電解槽を備えたスケール除去装置の電極構造であって、前記電解槽内に互いに所定の電極間隔を有し並列配置される複数の電極板と、前記冷却水中に浸漬される前記電極板の上端に設けられて電源部からの電圧が印加される電極板肉厚より厚肉の配線端子と、隣接する電極板の配線端子に対向する電極板の上端に略矩形状に形成される切欠部とを、有する。
【0012】
このような切欠部を電極板に設けることによって、冷却水中のスケール成分を電解析出してスケールを除去するスケール除去装置の電極構造において、電極板に接続される配線端子の配置構成に伴って発生する局部的な電流密度の集中や変動の要因を回避して、電解処理の効率化と電極構造におけるメンテンナンス性の向上を図ることができる。
【0013】
冷却水を処理するスケール除去装置は、例えばエアコンやボイラー、冷凍機、冷却加熱器、クーリングタワーなどの熱交換設備に付設され、循環供給される冷却水中に含まれるカルシウムイオンなどのスケール成分を電解処理により析出させて、冷却水中のスケール成分を除去するための装置である。
【0014】
電解槽は、例えば、熱交換設備から冷却水が供給される供給口と、電解処理された冷却水の排出口とを備え、熱交換設備に供給される冷却水を電解処理する容器体である。このような電解槽には、複数枚の電極板が互いに並行配置されているとともに、必要に応じて隔膜板を電極板間に配置して電解セル状に形成させることができる。
【0015】
電極板は、略矩形板状に形成された金属薄肉導電体であって、その電極材質に関して特に制限はないが、例えば、チタンや銅などの基材表面にプラチナめっき層を形成したものや、プラチナとイリジュームの複合めっき層を設けたものなどを適用することもできる。プラチナの表面をイリジューム等の貴金属で被うことにより、その触媒作用により電気化学反応を促進させると共に陽極酸化による電極の溶出を少なくし電極の消耗を抑えることができる。
また、カーボン等の冷却水への電極板の成分の溶出が起こらないものが使用できる。
【0016】
配線端子は、前記冷却水中に浸漬される略矩形板状に形成された電極板上端の所定位置に溶接または機械的に圧着して固定される金属リード線などを含む電極板との接合構成部材であり、電極板の肉厚よりも厚肉となっており、電源部からの電圧が金属リード線などを介して印加されるようになっている。このような配線端子を電極板に接続する方法としては、例えば、ろう付けや溶接などの手段がある。
配線端子は電極板(厚み2t)よりも大きい厚み(半径r)で電極板上に突出して取り付けられている。
これによって、配線端子に隣接する電極板の電場構成が変化して、特定位置における電極板の電流密度が不均一化、偏在化することによって、電極板が局所的に消耗したり、複数の電極板間に定電流を供給して電解処理する制御性が困難となったりするが、後述する切欠部を設けることによって、上記問題を解決することができる。
【0017】
なお、本実施形態におけるスケール除去装置にリレーボックス部を設けることができる。これによって、冷却水を電解処理して熱交換設備に循環供給する電解槽内に設置された複数の電極板と、これらの電極板間に電圧を印加する電源部とにより形成される接続回路構成を適宜切り換えることができる。こうして、電極板間に定電流を供給する定電流制御における前記電源部の電源電圧の変化に基づいて前記リレーボックス部をコンピュータなどの電解制御部を介して制御することができる。
すなわち、冷却水中のスケール成分を電解析出してスケール成分を除去する定電流制御において、電極の電源部に過大な電圧変化負荷によるストレスを生じさせることがなく、耐用性とメンテナンス性に優れた冷却水のスケール除去装置を提供できる。
また、被処理水を電解装置に通水して電解処理することにより、スケール成分を電極表面に析出させて水中から除去する際の制御操作性や耐用性に優れているとともに、スケールの析出除去を安定して行うことが可能となる。
【0018】
回路構成を切り変えるためのリレーボックス部は、例えば、サイリスタなどの半導体素子を用いて小電力の入力で大きな出力電圧をオンオフするソリッドステートリレーや、複数の継電器を組み合わせてパッケージにしたプログラムリレーなどを内蔵した継電装置であって、電解槽中の各電極板と、これら各電極板に電力を供給するための電源部とにそれぞれ接続されている。
これによって、操作ボタンやパソコン等を介して継電器の機能や組み合わせを変更して内部リレーを駆動制御することで、電源部と各電極板間に設定される接続回路構成を所定のパターン(例えば、電極板の直列回路構成、並列回路構成)に切り換える機能を有している。
【0019】
電源部は、前記リレーボックス部により選択設定された電極板間に電圧を印加するための装置である。例えば、スイッチング前の直流電圧が60Vとして、0N時間が50%、OFF時間が50%としたとき、その後、矩形波に対して整流(積分処理)を行うことで出力は30Vとなり、同じようにON時間10%、OFF時間90%の場合、出力電圧を6Vにする機能を有している。このように半導体のON、OFFの時間比率を変えることで出力電圧の制御を行うことができる。
【0020】
電解制御部は、例えば、CPUを備えた制御基盤などであり、前記電源部の電源電圧の変化を検知するためのセンサがそのインターフェースボードなどを介して接続されており、前記電極板間に定電流を供給する定電流制御における前記電源部の電源電圧の変化に基づいて、前記リレーボックス部を制御する。これによって、電圧が負荷される複数の電極板による回路構成を選択して、定電流制御における電源部の負荷を軽減する機能を有している。
【0021】
切欠部は、隣接する電極板の配線端子に対向する電極板の上端に、切欠幅2h、深さeの略矩形状に開口して形成される電極板開口部分であり、本実施形態のスケール除去装置の電極構造においては、前記切欠部の幅方向の長さ2hが、
電極板の厚み:2t、配線端子の半径:r、電極板の間隔:dとすると、
2h≧2((2d+r+t)(r−t))1/2、とすることが好ましい。
これによって、配線端子が電極板の厚みより大きい場合において、この配線端子に近接して対向する電極板の部分に電流が集中して流れることによる特定箇所の電極消耗を確実に回避することができる。
すなわち、電流の集中のない均一な電流密度分布を電極板表面に発現させることができる。
【0022】
さらに、本実施形態のスケール除去装置の電極構造は、前記電極板が全面プラチナメッキされたチタン合金により略矩形状に形成され、この電極板上端に接続される前記配線端子が、前記電極板の厚みよりも太い径のものを接続した構成とすることができる。これによって、電極板に供給する電流量を増加させることができ、配線端子との結合強度を必要レベルに維持するとともに、電解処理の効率性やメンテナンス性を確保することができる。
【0023】
なお、電極板に配線端子を介して電力を供給するに際して、電解析出などの電気化学反応を一定にするための定電流制御を確実かつ安定的に行うことができる。すなわち、この種のスケール除去装置の電源部では出力電圧を可変するために交流を一度直流に整流し、FETやIGBTなど半導体を用いて一定周期でスイッチング(オンオフ処理)を行って、半導体のON、OFFの時間比率を変えることで矩形波を発生させる出力電圧の制御を行なうが、冷却水のイオン濃度が高い状態では電圧を低く、逆にイオン濃度が低い状態では電圧を高くするようにして定電流制御を行うように電源内部での自動制御における制御性を良好に維持することができる。
【0024】
(実施例1)
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、本実施例の冷却水のスケール除去装置10は、空調装置や冷蔵装置等に備えられる熱交換設備11などに循環される冷却水を電解処理するためのものである。
冷却水を電解処理して熱交換設備11に循環供給するための電解槽12と、電解槽12内に設置された4枚の電極板13(13a〜13d)と、電極板13a〜13dに接続してその接続回路構成を切り換えるためのリレーボックス部15aと、リレーボックス部15aにより設定された電極板13a〜13dに電圧を印加するための電源部15bと、電極板13a〜13d間に規定の定電流を供給する定電流制御において電源部15bの電源電圧の変化に基づいてリレーボックス部15aの動作を制御するための電解制御部16と、を有する。
【0025】
なお、図2、図3に示すように、電極板13a〜13dの上端には、リレーボックス部15aに接続される電極板より厚肉である配線端子14(14a〜14d)がそれぞれ取り付けられているとともに、隣接する電極板13a〜13dの各配線端子に対向する位置には、電流集中を緩和するための切欠部22を略矩形状に開口するように設けている。
すなわち、配線端子が電極板の厚み2tより大きいと、対向する電極板の最も近接する部分に電流が集中し特定箇所の電極板部位が消耗するため、配線端子に近い部位に電流が集中しないように、電極板13a〜13dの組合せにおいて、隣接する電極板の電源配線端子に対向する位置に切欠部22を設けている。ここで、対向する位置とは、電極板13を向かい合わせたときに、隣接する電極板の配線端子の位置と同じ位置をいう。
【0026】
ここで、最適な切欠部の形状は、図4(a)に示すように、半径rの配線端子の表面とこの配線端子に対向する電極板との最短距離が、電極板の間隔:d以下になる部分(配線端子を中心として描く円の半径Rが(d+r)である点線円内の矩形状の範囲)を、対向する電極板上から切除することで得られる。
すなわち、図4(b)に詳細を示すように、
切除半径R(図4(c)の部分拡大説明図を参照)は、
切欠部の幅の最適値を2hとし、
電極板の厚み:2t、配線端子の半径:r、電極板の間隔:dとすると、
以下の関係式が成立する。
(d+r)=(h)+(d+t)
この関係式をhについてまとめると、
(h) =(2d+r+t)(r−t)、
h=((2d+r+t)(r−t))1/2、となり、
切欠部の幅の最適値を2hは、この値の2倍となる。
したがって、切欠部の幅は、2h以上にする。
本実施例では、配線端子の半径:r=1.5mm、電極板の厚み:2t=1mm、電極板の間隔:d=8mm、とした。
上記の関係式から、
切欠部の幅:2h=約8.5mmが最適値として得られ、切欠部の幅は8.5mm以上にする。
以上のようにして、切欠部の幅や形状を決定することによって、電極板における電流密度集中を効果的に回避できる。
【0027】
なお、電極板13及び配線端子14の表面は、チタン生地の表面にプラチナメッキを施したものであり、これによって、耐食性と耐久性が付加されるようにしている。
【0028】
熱交換設備11は、所定量の冷却水を保留するための冷却水タンク11aを有する。
また、適切量の冷却水を熱交換設備11に供給するために循環ポンプ21や、スケール除去装置10に冷却水を循環供給するためのスケール除去装置用循環ポンプ11bが設けられている。
なお、スケール除去装置10の電解槽12を通過し冷却タンク11aに戻る水路や、電解槽12に供給する供給水路や、電解槽12の底部に貯留した冷却水を排出する排出流路には、それぞれ流量制御弁17、18などの制御系が設けられており、循環ポンプ11bや流量制御弁17、18が、電解制御部16を介してそれぞれ駆動制御されるようになっている。
【0029】
このように、クーリングタワーなどの熱交換設備11に冷却水を循環させる冷却水循環流路が接続されて、全体としてループ状に構成されている。クーリングタワーは、空気との接触によって水を冷却する公知の構成のものである。往路側の流水管には、図示しない循環ポンプを装備して、クーリングタワーによって冷やされた冷却水を圧送できるようになっている。
また、循環流路を流れる冷却水は、経時的な蒸発やメンテナンス等によって失われていくため、クーリングタワーには、冷却水を外部から補給するための補給管などが設けられている。
【0030】
冷却水のスケール除去装置10には、冷却水を電解処理するための電解槽12の内部に、第1〜第4の電極板13a〜13dが設けられている。これらの電極板13a〜13dは、電源部15bにリレーボックス部15aを介して接続されている。
電極板13a〜13dとしては、電解装置に通常に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、チタンや銅にプラチナをめっきしたものや、カーボン電極などを好ましく使用することができる。
直流を発生する電源部15bには、コントローラとして機能する電解制御部16が接続されて、電極板13a〜13dへそれぞれ印加する電圧の制御を行うとともに、両電極板間の電流・電圧の監視等を行うこともできるようになっている。
【0031】
電解槽12には、冷却水タンク11aから循環水を供給するための給水管12aと、冷却水タンク11aに戻すための流出管12bとが接続されており、電解処理を行うための冷却水循環流路が構成される。給水管12a側には除去装置用循環ポンプ11bが設けられていて、冷却水タンク11a内の冷却水を電解槽12に圧送されるようになっている。
電解槽12から流れ出る冷却水は、流出管12bを介して冷却水タンク11aに戻るようになっている。また、電解槽12の底部には排出管12cが設けられ、流量制御弁18を介して、電解槽の内部に滞留したスケール成分を含む冷却水を、冷却循環水路外へ排水する処理がなされるようになっている。
【0032】
給水管12a側の冷却水循環流路における所定箇所には、フローメータ19や温度計センサ20が取付けられている。
このように、電解槽12に供給される冷却水の流量や温度データが電解制御部16に取り込まれ、電解槽12における電解電圧や電解電流などの電解データとともに、スケール除去装置10通電状態を判定して、この判定結果に応じて電極板の接続構成を所定のパターンに設定したり、電解電圧などの電解条件を変更したりすることを可能にしている。
【0033】
次に、以上のように構成された実施例1の冷却水のスケール除去装置10に適用される冷却水のスケール除去方法について説明する。
直流電源を各電極板13a〜13dに供給するための電源部15bは、例えば、その定電流仕様の電解直流電源として最大60V/定電流10Aのものを用いる。
現在一般的に市販されているこの種の電源は、出力電圧を可変するために入力の交流を一度直流に整流し、FETやIGBTなど半導体を用いて一定周期でスイッチング(ON/OFF処理)を行い矩形波を発生させる。例えば、スイッチング前の直流電圧を60Vとして、0N時間が50%、OFF時間が50%としたとき、その後、矩形波を整流(積分処理)を行うことで、出力を約30Vとすることができる。
【0034】
同じように、ON時間10%、OFF時間90%とすれば、その出力電圧は6Vに設定される。このように、半導体のON、OFFの時間比率を変えることで出力電圧の制御を行うことができる。
こうした電源を用いて定電流制御を行うと、循環水のイオン濃度が高くなると電流が流れやすい状態となり、電圧を低くするように電源内部で自動制御が行なわれる。例えば、10Aで制御する様に設定されていると、ON時間10%、OFF時間90%になった場合、半導体がONする時に流れる電流は100A以上になる。ONした瞬間には更にこの何倍かの電流が流れる。
このように電源出力60V最大で10Aの電源でも負荷抵抗が小さくなると、大きな電流が電極に流れるようになり、電極板の消耗につながることになる。
なお、60Vは電源でのスイッチング素子の制御電圧の最大値であり、各電極へ流れる電流は10Aをリミットとしている。
【0035】
なお、スケール除去装置10は、電解制御部16を介してリレーボックス部15aを駆動させて、各電極板13a〜13dの配列状態を、直列、並列などに切り換えることができる。
これによって、冷却水循環流路を流れる冷却水の導電率は同じでも、2枚の電極板13aと電極板13d間に電圧を印加する直列接続から、4枚の電極板13a〜13dにそれぞれ電圧を印加する並列接続に切り換えることで、電源からみた電気抵抗を約9倍もしくは1/9にすることができ、導電率のより大きな変化に対応することができる。
【0036】
こうして、本実施例のスケール除去装置では、複数の電極板間に定電流を供給する定電流制御において、電極板13a〜13dの所定位置に切欠部22を設けているので、電極の局所的な消耗を防止して、熱交換設備11に供給される冷却水中のスケール成分を電解処理により安定的に析出させて除去することができ、耐用性と電解析出処理における制御操作性とに優れたスケール除去装置の電極構造を提供することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明は、並列配置される複数の電極板の上端に設けられる電極板肉厚より厚肉の配線端子に対向する位置の隣接する電極板の上端に切欠部を設けることによって、電極板における電流密度集中の弊害を回避することを要旨としたものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。
例えば、本実施例では、スケール除去装置として、リレーボックス部15aを介してそれぞれの電極板の極性を切り替えて電解処理を行う例について詳述したが、電極板構成を固定して処理を行う場合にも本発明の電極構造を適用することができる。
さらに、電解槽12内に並行配置される電極板の枚数が4枚の場合について詳述したが、電解槽内に2枚のあるいは6枚以上の、複数枚の電極板を互いに並行配列して、これらをリレーボックス部に接続して、その電解槽において測定される電解電圧や電解電流、槽内を流れる冷却水の導電率や温度、流量などに基づいて、電解槽内で有効化させる電極板の回路パターンや印加電圧などの電解条件を設定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のスケール除去装置の電極構造は、冷却水中のスケール成分を電解析出させてスケールを除去するスケール除去装置において、電極板に接続される配線端子の配置構成に伴う局部的な電流密度の集中を回避して、電解処理の効率化と電極構造におけるメンテンナンス性の向上を図ることのでき、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0039】
10・・・冷却水のスケール除去装置
11・・・熱交換設備
11a・・・冷却水タンク
11b・・・除去装置用循環ポンプ
12・・・電解槽
12a・・・給水管
12b・・・流出管
12c・・・排出管
13(13a〜13d)・・・電極板
14(14a〜14d)・・・配線端子
15a・・・リレーボックス部
15b・・・電源部
16・・・電解制御部
17、18・・・流量制御弁
19・・・流量計
20・・・水温計
21・・・循環水ポンプ
22・・・切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換設備に循環供給される冷却水を電解処理する電解槽を備えたスケール除去装置の電極構造であって、
前記電解槽内に互いに所定の電極間隔を有しその極性を交互に切り替えて並列配置される複数の電極板と、前記冷却水中に浸漬される前記電極板の上端に設けられて電源部からの電圧が印加される電極板肉厚より厚肉の配線端子と、隣接する電極板の配線端子に対向する電極板の上端に形成される切欠部とを、有することを特徴とするスケール除去装置の電極構造。
【請求項2】
前記切欠部の幅方向の長さ2hが、
電極板の厚み:2t、配線端子の半径:r、電極板の間隔:dとすると、
2h≧2((2d+r+t)(r−t))1/2、であることを特徴とする請求項1記載のスケール除去装置の電極構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232264(P2012−232264A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103278(P2011−103278)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【特許番号】特許第4999022号(P4999022)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(505476216)イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】