説明

スタイラスペン

【課題】面接触を要する静電容量式タッチパネルに対しても書き込み先の視認性が良好であり、また、簡単な構造で量産が可能なスタイラスペンを提供する。
【解決手段】スタイラスペンは、凸曲面形状の表面からなるペン先部を先端部に有していると共にこの先端部の後方に持ち手部を有しており、少なくとも先端部が透明な材料で形成されている本体と、少なくともペン先部上に被着された透明な第1の導電体と、第1の導電体に電気的に接続されていると共に持ち手部まで伸長して本体上に形成されている第2の導電体とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式のタッチパネルに用いられるスタイラスペンに関する。
【背景技術】
【0002】
iPhone(登録商標)やスマートフォン等の携帯電話機、iPad(登録商標)やAndoroid端末等のタブレット端末、及びその他のタッチパネル式パーソナルコンピュータ(PC)においては、静電容量式のタッチパネルが広く用いられている。
【0003】
この種の静電容量式タッチパネルにおいては、多くの場合、ユーザの指タッチによる静電容量(電荷)の変化を検知することによって情報入力が行われる。また、文字入力等の細かな情報入力を行う際には、ユーザの指に代えて、スタイラスペンを使用することが行われる。
【0004】
特許文献1及び2には、タッチパネル上の指及びスタイラスペンの接触位置を静電容量結合によって検知する情報入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−055260号公報
【特許文献2】特開2010−061351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1及び2に開示されているように、指や従来のスタイラスペンを用いてタッチパネルに情報入力を行う場合、指やペンに隠れて指先やペン先が直接見ることができないため、内容を視認しながら書き込みを行うことが不可能であった。そのため、細かい文字を入力することが難しい等、使い勝手が非常に悪かった。特に、最近普及しているマルチタッチ可能な投影型静電容量式タッチパネルは、ある程度の面積を有する面接触を必要としているため、書き込み時の視認性を向上させるべくペン先の細いスタイラスペンを用いることができないので、使い勝手を向上させることが難しかった。
【0007】
従って本発明の目的は、面接触を要する静電容量式タッチパネルに対しても書き込み先の視認性が良好なスタイラスペンを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、簡単な構造で量産が可能なスタイラスペンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、凸曲面形状の表面からなるペン先部を先端部に有していると共にこの先端部の後方に持ち手部を有しており、少なくとも先端部が透明な材料で形成されている本体と、少なくともペン先部上に被着された透明な第1の導電体と、第1の導電体に電気的に接続されていると共に持ち手部まで伸長して本体上に形成されている第2の導電体とを備えたスタイラスペンが提供される。
【0010】
ペン先部が凸曲面形状の表面から構成されているので、タッチパネルにある程度の接触面積で面接触することができ、従って投影型静電容量式タッチパネルにおいても使用可能となる。また、このペン先部を含む先端部が透明な材料で形成されているため、細かい文字についても視認しながら書き込みできるから、使い勝手を大幅に向上させることができる。さらに、接触面が凸曲面形状であることから、タッチパネル表面に対するペン先の角度が多少変化しても静電容量(電荷)を正しく変化させることができるので、書き込みが可能となる。しかも、構造が簡単であるため、壊れにくく、安価に量産が可能である。
【0011】
なお、本明細書において「透明」とは光透過性の高いことを意味しており、無色に限らず、有色であっても良い。また、「先端」とはタッチパネルに接触するペン先の存在する側の端、「先端部」とは「先端」を含むその周辺の部分、「後方」とは「先端」とは反対の方をそれぞれ意味している。
【0012】
先端部が、一面に凸曲面形状の表面からなるペン先部を、及び他面に略平面形状の表面をそれぞれ備えた略円板形状を有していることが好ましい。この場合、先端部の略平面形状の表面が、本体の他の部分の軸線方向に対して傾斜しているか又は略垂直であることがより好ましい。
【0013】
第1の導電体が、少なくともペン先部上に積層形成された導電材料層であるか、又は少なくともペン先部上に被着された導電材料膜であることも好ましい。
【0014】
後者の導電材料膜が、導電性ポリマーを樹脂膜の表面上に被覆した透明膜であることがさらに好ましい。
【0015】
第2の導電体が、本体に固着され少なくとも一部が外部に露出している導電性金属材料部材であることも好ましい。
【0016】
スタイラスペンの本体が、透明な樹脂材料で一体的に形成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、投影型静電容量式タッチパネルにおいても使用可能であり、細かい文字についても視認しながら書き込みできるから使い勝手を大幅に向上させることができる。さらに、タッチパネル表面に対するペン先の角度が多少変化しても書き込みが可能となる。しかも、構造が簡単であるため、壊れにくく、安価に量産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態におけるスタイラスペンの全体形状を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態におけるスタイラスペンの先端部の構造を概略的に示す図であり、(A)は軸断面図及び(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図3】図1の実施形態におけるスタイラスペンのペン先部の凸状曲面形状を説明する軸断面図である。
【図4】図1の実施形態におけるスタイラスペンの使用形態を説明する軸断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態におけるスタイラスペンの全体形状を概略的に示しており、図2(A)及び(B)は図1の実施形態におけるスタイラスペンの先端部の構造を概略的に示しており、図3は図1の実施形態におけるスタイラスペンのペン先部の凸状曲面形状を示している。
【0020】
これらの図において、10はスタイラスペン本体、11はペン先部、12は少なくともペン先部11上に接着された透明な導電材料膜、13は導電材料部材をそれぞれ示している。
【0021】
スタイラスペン本体10は、ペン先部11の存在する先端部10aと、その後方に位置する持ち手部10bとを有している。これら先端部10a及び持ち手部10bを有するスタイラスペン本体10は、本実施形態においては、全体が透明な材料で一体的に形成されている。この場合、透明な材料とは、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、若しくはエポキシ樹脂等の透明樹脂、透明ガラス又はその他の透明材料であり、無色又は有色のいずれであっても良い。
【0022】
先端部10aは、図1並びに図2(A)及び(B)に示すように、略円板形状を有しており、その一方の面(先端側面)が凸曲面形状の表面からなるペン先部11を構成しており、他方の面が略平面形状の表面を構成している。先端部10aをこのように略円板形状とすることにより、先端部10aを持ち手部10bと同様に棒状に形成した場合に比して、透過性が良くなり、ペン先部11による書き込み内容の視認性が向上する。
【0023】
この略円板形状の先端部10aの直径d、従ってペン先部11の直径dは、望ましくはd=5〜10mmであり、d=8mmの場合が最も安定した書き込み動作を行うことが確認されている。ただし、この望ましい直径dは、先端部10aを構成する材料によって多少異なってくる。
【0024】
ペン先部11の凸曲面形状は、平面から見た場合に略円形状であり、側面から見た場合に、曲率はできるだけ大きい方がタッチパネル14への情報書き込みを効果的に行うことができる。曲率の限界としては、図3に示すように、その中心軸11aから2.5mm離れた位置で最大1mmまで後退するような曲率である。
【0025】
図2(A)に示すように、スタイラスペン本体10の先端部10aの略平面形状の表面は、持ち手部10bを含む、スタイラスペン本体10の他の部分の軸線10cの方向に対して傾斜している。傾斜角度θは、望ましくはθ=45〜90度であり、θ=60度前後であると使い易いことが確認されている。
【0026】
なお、スタイラスペン本体10の径及び全長は、この種のペンが一般的に有する径及び全長に準ずるものとする。変更態様においては、持ち手部10bを棒状ではなく、握り易い又はデザイン的に優れた任意の形状とすることが可能である。
【0027】
スタイラスペン本体10を作製する方法としては、図1の持ち手部10bに示すごとき棒材から所望の形状に削り出しを行って作製しても良いし、押し出し成型によってこのような形状に作製しても良い。
【0028】
なお、変更態様においては、スタイラスペン本体10の先端部10a及びその近傍のみを透明な材料で形成し、その後方に位置する持ち手部10bはその他の不透明材料、例えば不透明な樹脂材料、金属材料又は木工材料等で形成し、先端部10aと一体化することによってスタイラスペン本体10を作製しても良い。
【0029】
導電材料膜12は、本実施形態においては、電子共役系を有する導電性ポリマー(ポリピロール)を透明な樹脂膜の表面上に均一に複合、被覆して導電化したSTポリ(アキレス株式会社)を用いている。導電材料膜12としては、この他に種々の透明な導電膜を使用可能である。もちろん、無色又は有色のいずれであっても良い。本実施形態においては、この導電材料膜12を、スタイラスペン本体10のペン先部11の表面はもちろんのこと、先端部10aの他の部分の表面、さらに、導電材料部材13との電気的接続を行うために、先端部10a以外のスタイラスペン本体10の表面に密に被着されている。この導電材料膜12は、ペン先部11の表面全体及び導電材料部材13と良好な電気的接続が行える範囲に少なくとも被着されている必要がある。
【0030】
この被着は、ラミネート加工、印刷加工、粘着加工、接着加工等種々の後加工処理で実施可能である。接着加工の際に必要であれば、透明な樹脂接着剤を用いても良い。導電材料膜12と導電材料部材13との接触面積が大きくなれば、接触抵抗が低減されるため、可能な範囲で両者の接触面積を広めることが望ましい。
【0031】
変更態様においては、導電材料膜12に代えて、透明な導電材料層をスタイラスペン本体10のペン先部11の表面はもちろんのこと、先端部10aの他の部分の表面、さらに、導電材料部材13との電気的接続を行うために、先端部10a以外のスタイラスペン本体10の表面に堆積等により積層形成しても良い。
【0032】
導電材料部材13は、本実施形態においては、導電材料のワイヤをその一部表面が外部に露出するように、スタイラスペン本体10の表面上又はその表面に形成された溝内に固着して構成されている。ワイヤの断面形状は、図示のように本実施形態では矩形であるが、円形、楕円形又はその他の任意形状であっても良い。また、ワイヤ以外の部材を用いても良い。この導電材料部材13は、導電材料膜12と良好な電気的接続の出来る位置から、スタイラスペン操作者の手に接触するべく持ち手部10bまで伸長してスタイラスペン本体10上に形成されている。
【0033】
導電材料部材13を構成する導電材料としては、例えば金、銀、銅、アルミニウム、鉄若しくはその他導電性が良好な金属又は合金等の導電性金属材料が使用可能である。鉄等の磁性体材料を使用すれば、タブレット端末のカバーに付加されていることの多い永久磁石に吸着させて、このカバーにスタイラスペンを保持させることが可能となる。
【0034】
変更態様においては、導電材料膜12と導電材料部材13との両方を連続する導電材料層で形成するようにしても良い。
【0035】
図4は図1の実施形態におけるスタイラスペンの使用形態を説明している。
【0036】
操作者がスタイラスペン本体10の持ち手部10bを握ることによって、操作者の手が導電材料部材13に導通し、さらにペン先部11の導電材料膜12に導通する。この状態で、ペン先部11をタッチパネル14の表面に接触させることによって、書き込みが行われる。本実施形態においては、ペン先部11が凸曲面形状の表面から構成されており、タッチパネル14にある程度の接触面積で面接触することが可能となっている。これにより、タッチパネル14においては、複数の電極が静電容量(電荷)の変化を検知し、その重心位置が書き込み位置であると判別される。このように、本実施形態のスタイラスペンは、面接触しているので、タッチパネル14が投影型静電容量式の場合でも使用可能となっている。
【0037】
また、本実施形態のスタイラスペンにおいては、接触面が凸曲面形状であることから、タッチパネル14の表面に対するペン先部11の角度が多少変化しても静電容量(電荷)を正しく変化させることができるので、書き込みの自由度が大きくなる。
【0038】
さらに、本実施形態のスタイラスペンでは、先端部10a及び導電材料膜12が透明材料で形成されており、かつ先端部10aが略円板形状であると共に傾斜しているので、ペン先を視認しながら書き込みを行うことができる。その結果、細かい文字についても書き込みが非常に容易となり、使い勝手を大幅に向上させることができる。
【0039】
しかも、本実施形態のスタイラスペンは、構造が簡単であるため、壊れにくく、安価に量産が可能である。
【0040】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0041】
10 スタイラスペン本体
10a 先端部
10b 持ち手部
10c 軸線
11 ペン先部
11a 中心軸
12 導電材料膜
13 導電材料部材
14 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸曲面形状の表面からなるペン先部を先端部に有していると共に該先端部の後方に持ち手部を有しており、少なくとも該先端部が透明な材料で形成されている本体と、
少なくとも前記ペン先部上に被着された透明な第1の導電体と、
前記第1の導電体に電気的に接続されていると共に前記持ち手部まで伸長して前記本体上に形成されている第2の導電体と
を備えたことを特徴とするスタイラスペン。
【請求項2】
前記先端部が、一面に前記凸曲面形状の表面からなる前記ペン先部を、及び他面に略平面形状の表面をそれぞれ備えた略円板形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のスタイラスペン。
【請求項3】
前記先端部の前記略平面形状の表面が、前記本体の他の部分の軸線方向に対して傾斜しているか又は略垂直であることを特徴とする請求項2に記載のスタイラスペン。
【請求項4】
前記第1の導電体が、少なくとも前記ペン先部上に積層形成された導電材料層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスタイラスペン。
【請求項5】
前記第1の導電体が、少なくとも前記ペン先部上に被着された導電材料膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスタイラスペン。
【請求項6】
前記導電材料膜が、導電性ポリマーを樹脂膜の表面上に被覆した透明膜であることを特徴とする請求項5に記載のスタイラスペン。
【請求項7】
前記第2の導電体が、前記本体に固着され少なくとも一部が外部に露出している導電性金属材料部材であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のスタイラスペン。
【請求項8】
前記本体が、透明な樹脂材料で一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のスタイラスペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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