説明

スタンプ洗浄装置

【課題】電源を必要とすることなく、スタンプの印面を適切に洗浄することができるスタンプ洗浄装置を提供することである。
【解決手段】スタンプSの印面7を洗浄液に浸漬した状態で印面にブラシ11を当接し、スタンプSおよびブラシ11を相対的にブラッシング動作させて、印面7を洗浄するスタンプ洗浄装置1であって、スタンプSを保持するスタンプ保持機構5と、ブラシ11を保持するブラシ保持機構6と、ブラッシング動作を実施するためのハンドル操作子42と、ハンドル操作子42から入力した動力により、スタンプ保持機構5およびブラシ保持機構6の少なくとも一方に、ブラッシング動作させる動力変換機構43と、ブラッシング動作の動作時間を計測する機械的な計時機構120と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシを用いてスタンプの印面を洗浄するスタンプ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスタンプ洗浄装置として、印面がマスクを介して印象画像を露光した光硬化性樹脂で構成されたスタンプに対し、ブラシを円運動させてブラッシング動作を行うものが知られている(特許文献1参照)。
このスタンプ洗浄装置は、印面を洗浄液に浸漬した状態でスタンプを保持するスタンプ保持手段と、洗浄液に浸漬したブラシを保持するブラシ保持手段と、ブラシ保持手段にスタンプの印面をブラッシング動作させるモーター駆動のブラッシング運動手段と、ブラッシング動作の動作時間を設定可能な電気的なタイマーと、を備えている。
この場合、モーターを駆動させてブラシをブラッシング動作すると共に、モーターの駆動時間をタイマー制御することにより、ブラシに当接したスタンプの印面を適切に洗浄するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−316463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような、スタンプ洗浄装置では、モーターおよびタイマーにより駆動系および制御系を構成しているため、近くに電源のある場所でしか使用することができず、また装置が高価なものになってしまうという問題があった。さらに、洗浄液を用いるため、モーターやモーターの駆動回路を確実にシールする必要があり、構造が複雑になる問題があった。
【0005】
本発明は、電源を必要とすることなく、スタンプの印面を適切に洗浄することができるスタンプ洗浄装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスタンプ洗浄装置は、スタンプの印面を洗浄液に浸漬した状態で印面にブラシを当接し、スタンプおよびブラシを相対的にブラッシング動作させて、印面を洗浄するスタンプ洗浄装置であって、スタンプを保持するスタンプ保持手段と、ブラシを保持するブラシ保持手段と、ブラッシング動作を実施するためのハンドル操作子と、ハンドル操作子から入力した動力により、スタンプ保持手段およびブラシ保持手段の少なくとも一方に、ブラッシング動作させる動力変換手段と、ブラッシング動作の動作時間を計測する機械的な計時手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ユーザーがハンドル操作子を操作すると、動力変換手段を介して、ブラシ保持手段に保持したブラシと、スタンプ保持手段に保持したスタンプとが、相対的にブラッシング動作し、洗浄液に浸漬したスタンプの印面が洗浄される。その際、計時手段により、ブラッシング動作の動作時間を計測(計時)することで、過不足の生じないブラッシング動作、すなわち適切な洗浄を実施することができる。また、ハンドル操作子と機械的な計時手段とを用いるため、電気的な駆動源および制御系を必要としない。このため、使用場所に制約を受けることがなく、且つ装置を安価に作成することができる。
【0008】
この場合、ブラシおよびスタンプの印面を浸漬するように洗浄液を貯留する洗浄液槽を、更に備えたことが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、ブラシおよびスタンプの印面を、洗浄液槽に貯留した洗浄液に浸漬した状態でブラッシング動作することができ、予め洗浄液槽に洗浄液を貯留しておけば、使用場所が制約されることがない。また、洗浄液槽を備えることで、洗浄液を攪伴し、スタンプの印面の汚れの洗浄液への溶け込みを促進することができる。
【0010】
この場合、計時手段が、砂時計で構成されていることが、好ましい。
また、計時手段が、ぜんまい時計で構成されていることが、好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、ブラッシング動作時間を簡単に計測することができると共に、装置を安価に作成することができる。
【0012】
この場合、ハンドル操作子は、支軸を中心に回転自在に構成された回転体と、回転体の偏心位置に取り付けた摘み部と、を有していることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、摘み部を回転体に対して円運動させることにより、簡単にブラッシング動作の動力を入力することができる。すなわち、人間工学に即した無理のない操作(動作)で、スタンプの印面を適切に洗浄することができる。
【0014】
この場合、摘み部は、回転体に着脱自在に装着され、回転体には、摘み部の装着部が径方向に複数形成されていることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、例えば、大きいスタンプの場合には、ブラシと印面の接触面積が大きくなるため、摘み部を円運動させるには大きな力が必要となる。この場合、摘み部を回転体の径方向外側の装着部に装着して操作することにより、てこの原理により、小さい力でブラッシングすることができる。一方、小さいスタンプの場合には、ブラシと印面の接触面積が小さくなるため、摘み部を小さな力で円運動させることができる。この場合には、摘み部を回転体の径方向内側の装着部に装着して操作することにより、回転を速め短時間でブラッシングを完了させることができる。すなわち、回転体に対する摘み部の装着位置の変更により、スタンプの印面の大きさ等に対応して、適正な力加減となるように調整することができる。なお、操作性を考慮すると、回転体の回転速度は、1周/秒ないし0.5周/秒程度であることが好ましい。
【0016】
この場合、摘み部は、砂時計を有し、計時手段を兼ねていることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、摘み部は、計時手段である砂時計を有しているため、装置構成を簡単にすることができる。
【0018】
この場合、動力変換手段は、ハンドル操作子の支軸から動力を入力するギヤ列と、ギヤ列の出力ギヤに設けられ、ハンドル操作子の回転に伴って円運動する係合部材と、を有し、ブラシ保持手段は、係合部材に係合する係合受け部材を有していることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、回転体が回転することにより、係合部材が円運動し、この係合部材の円運動により、ブラシ保持手段が円運動する。したがって、単純な構成でブラシ保持手段(ブラシ)を、円運動させることができる。
ようにしてもよい。
【0020】
この場合、スタンプの印面が、マスクを介して印象画像を露光した光硬化性樹脂で構成されていることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、印面における硬化しない部分を、適切に掻き出し且つ洗浄液に良好に溶解させることができ、洗浄むらを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スタンプ洗浄装置の斜視図である。
【図2】スタンプ洗浄装置の分解斜視図である。
【図3】機構部の(a)は上側から見た斜視図であり、(b)は下側から見た斜視図である。
【図4】機構部の断面図である。
【図5】動力変換機構廻りの斜視図である。
【図6】第二実施形態にかかるスタンプ洗浄装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係るスタンプ洗浄装置を、スタンプ作成装置で作成したスタンプを洗浄する装置に適用した場合について説明する。このスタンプ作成装置は、印面を紫外線硬化樹脂で形成したスタンプ素材に、インクリボンに印字(印刷)した印章文字(絵柄を含む印章画像)をマスクとして紫外線を露光し、所望のスタンプを作成するものであり、この露光によりスタンプの印面は、印章文字の部分のみ硬化し、他の部分は未硬化のままとなる。そして、実施形態のスタンプ洗浄装置は、このスタンプの未硬化の部分をブラッシング動作により洗い流すものであり、洗浄が完了すると、スタンプの印面は硬化した印章文字の部分のみが凸状に残る。
【0024】
図1および図2に示すように、スタンプ洗浄装置1は、水道水などの洗浄液を貯留する洗浄液槽2と、洗浄液槽2の上端開口を着脱自在に閉蓋するように設けた機構部3と、から構成されている。洗浄液槽2には、貯留した洗浄液に浸清されるように、後述のブラシ保持機構(ブラシ保持手段)6に保持されたブラシ体4が収容されている。一方、機構部3には、スタンプSを保持する後述のスタンプ保持機構(スタンプ保持手段)5と、ブラッシング動作を実施するためのハンドル操作子42と、ハンドル操作子42から入力した動力により、ブラッシング動作させる動力変換機構(動力変換手段)43と、ブラッシング動作の動作時間を計測する機械的な計時機構(計時手段)120と、が組み込まれている。機構部3を洗浄液槽2に装着すると、これに保持されたスタンプSは、下向きに洗浄液槽2内に臨み、その印面7がブラシ体4に当接する。
【0025】
洗浄液槽2にブラシ体4を収容し、所定量の洗浄液を注いだ後、予めスタンプSをセットした機構部3を洗浄液槽2に閉蓋するように装着する。この状態で、ハンドル操作子42を操作して動力変換機構43を駆動させると、ブラシ体4はその当接姿勢を保持した状態で円運動する。このブラシ体4の円運動により、スタンプSの印面7がブラッシングされ、未硬化部分が掻き取られるようにして洗浄が行われる。所定時間経過後、ハンドル操作子42の操作を停止させたら、上記と逆の手順で機構部3を洗浄液槽2から取り外し、洗浄液槽2およびブラシ体4を簡単に洗って、洗浄作業を完了する。そして再度、洗浄液槽2に機構部3を装着して、これを保管する。
【0026】
図2に示すように、ブラシ体4は、ブラシ11と、ブラシ11を保持するブラシホルダー12と、ブラシホルダー12に組込んだ重り13と、で構成されている。ブラシ11は、全体として方形を為すブラシ本体14と、ブラシ本体14を植設した粘着シート(図示省略)と、で構成されており、ブラシホルダー12の上面に貼着されている。
【0027】
ブラシホルダー12は、ブラシ11が貼着されると共に、重り13が組み込まれた方形のホルダー本体21と、ホルダー本体21の一方の長辺部から三角形を為して延設した延設部22と、を有している。延設部22の上面には、後述する係合部材92(図5参照)の鰭片104(図3(b)参照)が係合するピン状突起(係合受け部材)23が突出形成されている。この場合、ピン状突起23の上端部は断面半球状に形成されており、ピン状突起23に対応する鰭片104の下端部は断面半円状に形成されている。洗浄液槽2に機構部3を装着すると、ピン状突起23に対し鰭片104が上下方向にオーバーラップし、続いて鰭片104が円運動を開始すると、ピン状突起23に鰭片104が係合する。その際、この両者が同位置にあると、ピン状突起23に対し鰭片104が当接するが、両者の先端形状によりピン状突起23が運動方向に逃げるため、機構部3の装着が円滑に行われる。
【0028】
また、ホルダー本体21および延設部22の下面には、相互に離間して3つのガイドピン24,24,24と、後述の一対の支持突条34,34に接触する一対の受け突条25,25と、が形成されている。3つのガイドピン24,24,24は、後述する洗浄液槽2の3つの円形ガイド溝33,33,33に係合して、ブラシホルダー(ブラシ11)12の円運動を案内する。また、一対の受け突条25,25は、一対の支持突条34,34に直交するように接触してブラシ体4を支持する。
【0029】
図2に示すように、洗浄液槽2は、上端が開放された透明な樹脂で構成され、機構部3側の辺がわずかに湾曲した平面視、略方形に形成されている。洗浄液槽2の内側には、貯留する洗浄液の水位線となる段部31が形成されている。この段部31まで洗浄液が満されると、ブラシ11およびこれに当接するスタンプSの印面7は、完全に洗浄液中に浸清され、且つブラシ体4が洗浄動作して洗浄液が波立っても、洗浄液が洗浄液槽2の上端に達することはない。
【0030】
洗浄液槽2の底面には、略三角形の盛上がり部32が形成され、盛上がり部32には相互に離間して3つの円形ガイド溝33,33,33が形成されている。各円形ガイド溝33は、同一形状をした円形の環状溝であり、この各円形ガイド溝33にブラシ体4の各ガイドピン24が係合する。機構部3の係合部材92を介して鰭片104が円運動すると、この鰭片104からブラシ体4のピン状突起23に運動力が伝達され、ブラシ11は、当接姿勢を保持した状態で、3つの円形ガイド溝33に案内されて円運動する。
【0031】
また、洗浄液槽2の底面には、盛上がり部32を横断して延びる一対の支持突条34,34が略平行に延設されている。各支持突条34は、盛上がり部32の上面からわずかに突出し、且つ円形ガイド溝33を逃げるように配設されている。洗浄液槽2にブラシ11を着座させると、この一対の支持突条34,34に、ブラシ体4の一対の受け突条25,25が直交するようにして接触する。すなわち、ブラシ体4はその下面に形成した受け突条25の部分で、この支持突条34に支持される。一方、洗浄液槽2の上端部には、これに装着した機構部3が係止される横長の係止溝35が形成されると共に、係止溝35に対向する位置に一対の小突起36,36が形成されている。
【0032】
次に図3ないし図5を参照して機構部3について説明する。機構部3は、洗浄液槽2を上側から閉塞する蓋状ケース41と、蓋状ケース41の一方の半部上面に設けたハンドル操作子42と、蓋状ケース41の一方の半部に内蔵した動力変換機構43と、蓋状ケース41の他方の半部に構成したスタンプ収容部44と、を備えている。
【0033】
蓋状ケース41は、3辺に突出させてフランジ部51を有すると共に、隔壁55を存して区画した操作子側ケース部56およびスタンプ側ケース部57を有するケース本体52と、操作子側ケース部56と共に動力変換機構43を収容するベース部53と、スタンプ側ケース部57と共にスタンプSを収容するスタンプ保持ケース部54と、から構成されている。
【0034】
フランジ部51は、洗浄液槽2の外形に対応する形状に形成されており、幅方向の一方の端部下面には、上記の係止溝35に内側から掛け止めされる横長の係止突起61が突設されており、他方の端部下面には、上記の小突起36に内側から係止する指掛け部63付きの掛止め片62が突設されている。掛止め片62は、ばね性を奏するように断面略「U」字状に折曲げ形成されており、指掛け部63近傍に設けた小穴(図示省略)が、上記の小突起36に係止されるようになっている。すなわち、係止突起61を係止溝35に掛け止めした状態で、掛止め片62を小突起36に係止することにより、蓋状ケース41が洗浄液槽2に装着される。また、指掛け部63を引き付けた状態で、逆の手順により蓋状ケース41を洗浄液槽2から外すようになっている。
【0035】
ケース本体52のスタンプ側ケース部57は、フランジ部51を残して形成したスタンプの投入開口71と、隔壁55の両端部から延びるリブ条の一対のブラケット部72と、を有し、この一対のブラケット部72にスタンプ保持ケース部54が回動自在に取り付けられている。スタンプ保持ケース部54は、天板の半部を切り欠いた形態を有し、平面視略「U」字状に形成されている。スタンプ保持ケース部54の正面には、ばね性を有するフック部73が一体に形成され、スナップインの形式で、フランジ部の内側に掛け止め(閉塞状態)されるようになっている。
【0036】
ところで、スタンプ保持機構5によりスタンプ保持ケース部54に下向きにセットされるスタンプSは、一の面に、上記のスタンプ作成装置にセットされるときに用いる円形位置決め穴81と、複数の矩形位置決め穴82と、を有している(図5参照)。そこで、実施形態のスタンプ保持機構5は、この円形位置決め穴81および複数の矩形位置決め穴82を利用して、スタンプSを保持するようになっている。
【0037】
スタンプ保持機構5は、隔壁55の上部に突設された円形位置決め穴81に対応する円形保持突起83と、隔壁55の下部に突設された複数の矩形位置決め穴82に対応する複数の矩形保持突起84と、スタンプSを挟んで円形保持突起83および複数の矩形保持突起84に対向するようにスタンプ保持ケース部54に組み込んだスタンプ押圧部材85と、で構成されている。スタンプ押圧部材85は、スタンプ保持ケース部54の天板部分に、ヒンジピン88を介して回動自在に取り付けた押圧部材本体86と、ヒンジピン88に巻回するように設けられ、押圧部材本体86を隔壁55側に向って付勢するねじりコイルばね87と、を有している。
【0038】
スタンプ保持機構5では、先ずスタンプ保持ケース部54を開放状態とし、下向きに把持したスタンプSを、正面から円形保持突起83および複数の矩形保持突起84に嵌め込むようにして仮セットする。次に、スタンプ保持ケース部54を閉方向に回動させ、スタンプ押圧部材85の下端部をスタンプSに突き当てるようにして、スタンプ保持ケース部54を閉塞する。スタンプ保持ケース部54をスナップインで閉塞すると、スタンプSはスタンプ押圧部材85により隔壁側に押圧され、円形保持突起83および複数の矩形保持突起84と、スタンプ押圧部材85とのより、挟持されるようにして不動に保持される。また、このようにしてセットされたスタンプSは、スタンプ保持ケース部54の切り欠き部分から視認できるようになっている。
【0039】
操作子側ケース部56は、上面が平坦に形成され、この部分にハンドル操作子42が設けられている。また、操作子側ケース部56の下方には、間隙を存してこれに平行にベース部53が取り付けられており、この操作子側ケース部56とベース部53との間隙に動力変換機構43が収容されている。
【0040】
図4および図5に示すように、動力変換機構43は、ハンドル操作子42の回転軸95(支軸)から動力を入力するギヤ列91と、ギヤ列91の出力ギヤ94に設けられ、ハンドル操作子42の回転に伴って円運動する係合部材92と、を有している。この場合、ギヤ列91は、ハンドル操作子42の回転軸95に固定された入力ギヤ93と、入力ギヤ93に噛み合う出力ギヤ94と、で構成されており、この出力ギヤ94が係合部材92の軸部101に固定されている。
【0041】
係合部材92は、ベース部53から突出しており、上部に出力ギヤ94を固定しベース部53に回転自在に支持された軸部101と、軸部101の下部にこれを囲繞するように配設した回転部102とで、一体に形成されている。回転部102は、軸部101の下端部から立ち上がって上方に延びる筒状の水返し部103と、水返し部103から斜め下方に延びる鰭片104と、を有している。そして、この鰭片104がブラシ体4に係合している。ハンドル操作子42により回転動力が入力されると、ギヤ列91を介して回転部102が回転し、鰭片104が回転部102の軸廻りに円運動(公転)し、ブラシ11を円運動させる。
【0042】
ハンドル操作子42は、中心部下面に回転軸95を突設した厚手の円板から成る回転体111と、回転体111の偏心位置に着脱自在に取り付けた摘み部112と、を有している。回転体111は、回転軸95の部分で、操作子側ケース部56に形成した軸受け部113に回転自在に支持されている。また、回転体111の上面には、その中心からの距離(半径方向の距離)が異なる位置に、摘み部112が装着される複数(2つ)の装着部114が形成されている。スタンプSの印面7が大きい場合には、摘み部112を径方向の外側に装着させ、逆にスタンプSの印面7が小さい場合には、摘み部112を径方向の内側に装着するようにする。
【0043】
摘み部112は、透明な樹脂等の素材で略円筒状に形成されており、その両端部には、回転体111の装着部114に差し込み式で装着するための装着突起116が形成されている。そして、摘み部112の内部には、計時機構120を構成する砂時計が組み込まれている。なお、実施形態のものでは、砂時計は2分計で構成されている。スタンプSをセットした機構部3を洗浄液槽2に装着した状態で、摘み部112を装着部114にセットすることで、洗浄時間の計測が開始される。そして、砂時計内の砂が落ちきった時点で、洗浄時間の計測が終了する。すなわち、ユーザーは、摘み部112を装着すると共に摘み部112を周回運動させて洗浄を開始し、砂が落ちきった時点で、洗浄を終了するようになっている。
【0044】
次に、図6を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、第一実施形態と異なる部分を主として説明する。このスタンプ洗浄装置1は、ブラシ保持機構6に保持されたブラシ体4を収容した洗浄液槽2と、スタンプ保持機構5、ハンドル操作子42、動力変換機構43、計時機構120が組み込まれ機構部3と、から構成されている。
【0045】
この場合の計時機構120は、いわゆるぜんまい時計であり、洗浄時間をセットする設定部121と、ぜんまい式の駆動部122と、洗浄時間の終了を報知する報知機構123と、で構成されている。設定部121は、回転体111から外れた上蓋130の端部に設けられており、ドーナッツ状に形成され、洗浄時間の目安となる目盛り付の計時板132と、計時板132の中央部に配設され、目盛りに目印を合わせることで、ぜんまいを巻いて洗浄時間を設定する設定部121を有している。駆動部122は、操作子側ケース部56に収容されており、設定部121により設定された時間駆動する。スタンプSをセットした機構部3を洗浄液槽2に装着した状態で、設定部121により洗浄時間をセットすることで、洗浄時間の計測が開始される。そして、報知機構123による報知音が鳴った時点で、洗浄時間の計測が終了する。すなわち、ユーザーは、設定部121をセットすると共に摘み部112を周回運動させて洗浄を開始し、報知音が鳴った時点で、洗浄を終了するようになっている。
【0046】
以上の構成によれば、ユーザーがハンドル操作子42を操作すると、動力変換機構43を介して、スタンプSに対してブラシ体4が、ブラッシング動作してスタンプSの印面7が洗浄される。また、ハンドル操作子42および機械的な計時機構120を用いるため、電気的な駆動源および制御系を必要としないため、使用場所に制約を受けることがなく、且つ装置を安価に作成することができる。
【0047】
なお、実施形態では、ブラシ体に円運動を行わせるようにしているが、楕円運動その他の周回運動をさせるようにしてもよい。また、ブラシ体4を固定とし、スタンプSを洗浄運動させる構造でもよい。一方、本発明のスタンプ洗浄装置1は、ゴム印等の一般的なスタンプSの洗浄にも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…スタンプ洗浄装置 2…洗浄液槽 5…スタンプ保持機構 6…ブラシ保持機構 7…印面 11…ブラシ 23…ピン状突起 42…ハンドル操作子 43…動力変換機構 91…ギヤ列 92…係合部材 111…回転体 120…計時機構 112…摘み部 S…スタンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンプの印面を洗浄液に浸漬した状態で印面にブラシを当接し、前記スタンプおよび前記ブラシを相対的にブラッシング動作させて、前記印面を洗浄するスタンプ洗浄装置であって、
前記スタンプを保持するスタンプ保持手段と、
前記ブラシを保持するブラシ保持手段と、
前記ブラッシング動作を実施するためのハンドル操作子と、
前記ハンドル操作子から入力した動力により、前記スタンプ保持手段および前記ブラシ保持手段の少なくとも一方に、前記ブラッシング動作させる動力変換手段と、
前記ブラッシング動作の動作時間を計測する機械的な計時手段と、を備えたことを特徴とするスタンプ洗浄装置。
【請求項2】
前記ブラシおよび前記スタンプの印面を浸漬するように前記洗浄液を貯留する洗浄液槽を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のスタンプ洗浄装置。
【請求項3】
前記計時手段が、砂時計で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスタンプ洗浄装置。
【請求項4】
前記計時手段が、ぜんまい時計で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスタンプ洗浄装置。
【請求項5】
前記ハンドル操作子は、
支軸を中心に回転自在に構成された回転体と、前記回転体の偏心位置に取り付けた摘み部と、を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のスタンプ洗浄装置。
【請求項6】
前記摘み部は、前記回転体に着脱自在に装着され、
前記回転体には、前記摘み部の装着部が径方向に複数形成されていることを特徴とする請求項5に記載のスタンプ洗浄装置。
【請求項7】
前記摘み部は、砂時計を有し、前記計時手段を兼ねていることを特徴とする請求項5または6に記載のスタンプ洗浄装置。
【請求項8】
前記動力変換手段は、
前記ハンドル操作子の前記支軸から動力を入力するギヤ列と、
前記ギヤ列の出力ギヤに設けられ、前記ハンドル操作子の回転に伴って円運動する係合部材と、を有し、
前記ブラシ保持手段は、前記係合部材に係合する係合受け部材を有していることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のスタンプ洗浄装置。
【請求項9】
前記スタンプの印面が、マスクを介して印象画像を露光した光硬化性樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のスタンプ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194772(P2011−194772A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65832(P2010−65832)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】