説明

ステアリングローリングコネクタ

【課題】ステアリングローリングコネクタにおいて、ロテータが中立位置に存在するときにのみセンサユニットを着脱可能とすることにある。
【解決手段】ロテータがステータに対して中立位置にあるとき、回動板16の凹部17は、第2の周壁22の嵌合部25に対応して位置している。スリーブ20が回転した場合、その回転に対してローター12の回転速度は変速するため凹部17は嵌合部25に対応しなくなる。このため、ロテータが中立位置にあるとき以外のセンサユニット50のステアリングローリングコネクタ10への組み付けが不可となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリング及びステアリングコラム間に設けられるステアリングローリングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリング及びステアリングコラム間にはステアリングローリングコネクタが設けられている。このステアリングローリングコネクタは、ステアリングが回転操作されたときに、ステアリングコラム側(車体側)と、ステアリングスイッチ又はエアバック装置との間の接続線が断線することを防止する。具体的には、ステアリングローリングコネクタは、車体側に固定されるステータと、ステアリングとともに回転するロテータと、ステータ及びロテータ間に形成される環状の収容部とを備える。この収容部には、フラットケーブルが巻付軸に巻き付けられた状態で収容されている。このフラットケーブルの一端部はステータ側のコネクタ部に接続され、他端部はロテータ側のコネクタ部に接続される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ステアリングとともにロテータが回転すると、フラットケーブルが巻付軸から巻き取られ又は巻き出される。これにより、ステアリングが回転操作された場合においても、フラットケーブルに引張力が加わること、ひいてはフラットケーブルが断線することが防止される。なお、フラットケーブルの長さによって、ステータに対するロテータの回転角度は制限される。
【0004】
図7に示すように、ステアリングローリングコネクタ100には、操舵角を検出するセンサユニット150が装着されている。このセンサユニット150は、ステアリングシャフトが挿通される円環状のギア151を有する。このギア151の回転を通じて操舵角が検出される。このギア151の内周には、ステアリングシャフト側に突出した凸部152が形成されている。
【0005】
ステアリングローリングコネクタ100は、ロテータ101及びステータ105を有する。また、ステアリングローリングコネクタ100は、ロテータ101とともに回転するスリーブ115を有する。このスリーブ115には、この凸部152に嵌合する嵌合部116が形成される。凸部152が嵌合部116に嵌合することで、ロテータ101の回転がスリーブ115を介してギア151に伝達される。これにより、ステアリングの操舵角が検出可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−120900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ステアリングローリングコネクタ100に、センサユニット150を組み付ける際には、センサユニット150及びステアリングローリングコネクタ100を中立状態とする必要がある。
【0008】
ステアリングローリングコネクタ100の中立状態とは、ロテータ101がステータ105に対して左右方向に同一の角度だけ回転操作可能な中立位置に存在している状態をいう。センサユニット150における中立状態とは、操舵角としてゼロが検出される中立位置にギア151が存在している状態をいう。
【0009】
しかし、上記構成においては、例えば部品交換時に、ロテータ101が中立位置から何れかの方向に360°×n(nは整数)回転した状態で、ステアリングローリングコネクタ100がセンサユニット150に装着されるおそれがある。この場合には、上記のように中立状態で組み付けられた場合と異なって、検出される操舵角がゼロの状態からのロテータ101の左右方向への最大の回転操作可能角度が異なる。従って、センサユニット150において予め想定される値以上の操舵角が検出される、いわゆるオーバーフロー故障が発生するおそれがある。
【0010】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロテータが中立位置に存在するときにのみセンサユニットが着脱可能となるステアリングローリングコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ステアリングシャフトとともに回転するセンサ用ギアの回転を通じてステアリングの操舵角を検出するセンサユニットが装着され、車体に固定的に取り付けられるステータと、前記ステアリングシャフトとともに中立位置から左右方向に同一角度だけ前記ステータに対して相対回転するロテータと、を備えたステアリングローリングコネクタにおいて、自身に形成される嵌合部及び前記センサ用ギアの一部が嵌合することで、前記ロテータとともに前記センサ用ギアと一体回転するスリーブと、前記スリーブに対して相対回転可能に装着されるローターと、前記スリーブ及び前記ローター間に設けられるとともに、前記スリーブの回転速度を変速して前記ローターに伝達する変速機構と、前記ローターに形成されるとともに、前記ロテータが中立位置に存在するときにのみ、前記嵌合部に対応して位置することで前記嵌合部及び前記センサ用ギアの一部の嵌合を可能とする凹部と、を備えたことをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、ロテータがステータに対して中立位置にあるとき、ローターの凹部は、スリーブの嵌合部に対応して位置する。スリーブが回転した場合、変速機構はスリーブの回転速度を変速してローターに伝達する。このため、ロテータが中立位置から回転したとき、ローターの凹部は、スリーブの嵌合部に対応しなくなる。このとき、ステアリングローリングコネクタに対するセンサユニットの組み付けが不可となる。従って、ロテータが中立位置に存在するときにのみステアリングローリングコネクタにセンサユニットが着脱可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリングローリングコネクタにおいて、前記変速機構は、前記ステータに対して固定的に取り付けられる内歯車と、前記ローターと一体回転する太陽歯車と、前記スリーブとともにステアリングシャフトを中心として公転しつつ、前記内歯車と噛み合うことで軸回転し、この軸回転を通じて前記太陽歯車を回転させる遊星歯車と、を有する遊星歯車機構であることをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、ロテータがステータに対して回転すると、ロテータとともにスリーブが回転する。これにより、スリーブとともに遊星歯車が公転する。このとき、遊星歯車は内歯車と噛み合うことで軸回転する。この軸回転により、太陽歯車、ひいてはローターを回転させる。このように、遊星歯車機構を通じて、スリーブの回転に対するローターの回転速度を変速させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステアリングローリングコネクタにおいて、ロテータが中立位置に存在するときにのみセンサユニットを着脱可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】センサユニット及びステアリングローリングコネクタの斜視図。
【図2】ロテータが中立位置に存在するときのセンサユニット及びステアリングローリングコネクタの上面図。
【図3】(a)及び(b)は、それぞれ異なる方向からみたステアリングローリングコネクタの分解斜視図。
【図4】第1〜第3のギアの噛み合いを示したステアリングローリングコネクタの斜視図。
【図5】スリーブ及びローター等の斜視図。
【図6】ロテータが中立位置から180°回転した位置に存在するときのセンサユニット及びステアリングローリングコネクタの上面図。
【図7】背景技術におけるセンサユニット及びステアリングローリングコネクタの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるステアリングローリングコネクタを具体化した一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1に示すように、ステアリングローリングコネクタ10には、操舵角を検出するセンサユニット50が装着されている。図2に示すように、センサユニット50は、ステアリングシャフトが挿通される円環状のセンサ用ギア51を有する。このセンサ用ギア51の回転を通じて操舵角の検出が可能となる。このギア51の内周には、ステアリングシャフト側に突出する一対の凸部52が形成されている。両凸部52は、ステアリングシャフトの軸を挟んで対向して位置している。
【0018】
図3(a)及び(b)に示すように、ステアリングローリングコネクタ10は、ステータ30と、サブステータ35と、ローター12と、スリーブ20と、第1〜第3のギア14a〜14cと、ロテータ40とを備える。ステータ30はサブステータ35と組み合わされた状態で、図3(a)において下方が開放した有底円筒状に形成されている。その底部31には、ステアリングシャフトが挿通される貫通孔32が形成されている。サブステータ35及びステータ30は、車体に固定的に取り付けられている。
【0019】
サブステータ35及びステータ30には、ロテータ40が相対回転可能に取り付けられる。ロテータ40は、サブステータ35におけるステータ30の反対側を覆う蓋部41を有する。この蓋部41の内側には、ステアリングシャフトが挿通される円筒部42が形成される。この円筒部42の先端側には上下方向に延びる軸通孔を有する軸受け部43が形成されている。
【0020】
円筒部42の先端側からスリーブ20が嵌め込まれる。このスリーブ20は、円板23と、その円板23の下面に形成される第1の周壁21と、その円板23の上面に形成される第2の周壁22と、を有する。円板23には、ステアリングシャフトが挿通される貫通孔24が形成されている。両周壁21,22は、ステアリングシャフトの軸方向からみて略円形に形成されている。
【0021】
図5に示すように、第2の周壁22には、その円周方向において一部が離間した嵌合部25が形成されている。嵌合部25は、ステアリングシャフトを中心として対向する位置に2つ設けられている。各嵌合部25は、センサユニット50の凸部52が上方から嵌合可能に形成されている。第2の周壁22は、ステータ30の貫通孔32を介して外部に露出する。このとき、円板23の周縁部が、ステータ30の内部における貫通孔32の周縁部に当接する。
【0022】
図3(b)に示すように、第1の周壁21には、同図の上下方向に延びる軸通孔を有する軸受け部26が形成されている。スリーブ20の第1の周壁21が円筒部42の先端に装着されると、両軸受け部26,43は上下方向に対応して位置する。この両軸受け部26,43の軸通孔間には第2のギア14bの軸18が挿通される。
【0023】
ステータ30における貫通孔32の内周縁部には、第1のギア14aが固定的に取り付けられる。この第1のギア14aは、第1の周壁21の外周に位置する。図4に示すように、第1のギア14aは歯車の一部が第2のギア14bと噛み合っている。
【0024】
また、第3のギア14cには、それと一体でスリーブ20側に円筒部19が形成されている。スリーブ20の貫通孔24には、図3(a)における下側から円筒部19が挿通される。このとき、第3のギア14cは第1のギア14aの内側に位置する。図4に示すように、第3のギア14cは、第2のギア14bと噛み合っている。
【0025】
すなわち、第1〜第3のギア14a〜14cは遊星歯車機構を構成している。詳しくは、遊星歯車機構において、第1のギア14aは内歯車であって、第2のギア14bは遊星歯車であって、第3のギア14cは太陽歯車である。
【0026】
図3(b)に示すように、ローター12は、円筒部15と、回動板16と、を有する。回動板16は円板状に形成されるとともに、その内面の中央に円筒部15が設けられる。ローター12の円筒部15は上記円筒部19と嵌合する。これにより、ローター12及び第3のギア14cが一体で回転する。図5に示すように、回動板16における周縁部は、第2の周壁22の上端に対応して位置する。
【0027】
また、回動板16には、その縁部がステアリングシャフト側に切り欠かれた凹部17が形成されている。この凹部17は、ステアリングシャフトを挟んで対向する位置に2つ設けられている。
【0028】
次に、ステアリングローリングコネクタ10の作用について説明する。
図2に示すように、ロテータ40がステータ30に対して中立位置にあるとき、回動板16の凹部17は、第2の周壁22の嵌合部25に対応して位置する。ここで、中立位置とは、上記背景技術においても説明したように、ロテータ40がステータ30に対して左右方向にそれぞれ同一の角度だけ回転操作可能な位置をいう。ロテータ40が中立位置にあるとき、センサユニット50の凸部52を、上方から嵌合部25に嵌め込むことが可能である。
【0029】
ロテータ40が回転すると、その回転に伴ってスリーブ20が回転する。図4に示すように、スリーブ20の回転に伴って、第2のギア14bが回転(第3のギア14cに対して公転)する。このとき、第2のギア14bは、ステータ30に固定される第1のギア14aと噛み合っているため自身の軸18を中心に自転する。第2のギア14bの自転によって、第2のギア14bと噛み合っている第3のギア14cはスリーブ20と同じ方向に回転する。このとき、第3のギア14cは、スリーブ20に対して変速回転する。第3のギア14cの回転に伴ってローター12は回転する。よって、結果的に、ローター12がスリーブ20に対して変速回転することになる。
【0030】
従って、図6に示すように、ロテータ40ひいてはスリーブ20が凸部52を介してセンサ用ギア51とともに中立位置から180°回転した場合、ローター12の回転角は180°未満となる。従って、図6の右上に拡大して示すように、回動板16の凹部17は、第2の周壁22の嵌合部25に対応しなくなる。この状態において、センサユニット50を取り外すべく、センサユニット50をステアリングローリングコネクタ10に対して離間する方向に引っ張ると、凸部52が回動板16の縁部に当接する。このため、ロテータ40が中立位置に存在しない場合におけるセンサユニット50の取り外しが防止される。これは、ロテータ40が中立位置になければ、ロテータ40の回転角が180°以上又は180°未満であっても同様である。
【0031】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ロテータ40がステータ30に対して中立位置にあるとき、回動板16の凹部17は、第2の周壁22の嵌合部25に対応して位置している。スリーブ20が回転した場合、その回転に対してローター12の回転速度は変速するため、凹部17は嵌合部25に対応しなくなる。このため、ロテータ40が中立位置にあるとき以外のセンサユニット50のステアリングローリングコネクタ10への組み付けが不可となる。これによって、ロテータ40が中立位置にない状態で、センサユニット50が誤って組み付けられることを防止でき、ひいてはセンサユニット50において予め想定される値以上の操舵角が検出される、いわゆるオーバーフロー故障を防止できる。
【0032】
また、センサユニット50を取り外す場合においても、ロテータ40が中立位置にあるとき以外では取り外すことが不可となる。このため、ユーザによってセンサユニット50が取り外されてロテータ40が回転させられた後に再び装着されることで、センサユニット50によって検出される操舵角と、ロテータ40のステータ30に対する回転角との間の対応関係にずれが生じることが抑制される。
【0033】
(2)ロテータ40がステータ30に対して回転すると、ロテータ40とともにスリーブ20が回転する。これにより、スリーブ20とともに第2のギア14bが公転する。このとき、第2のギア14bは第1のギア14aと噛み合うことで軸回転する。この軸回転により、第3のギア14c、ひいてはローター12を回転させることができる。このように、遊星歯車機構を通じて、スリーブ20の回転に対するローター12の回転速度を変速させることができる。
【0034】
特に、ステアリングローリングコネクタ10においては、ステアリングシャフトが挿通されるため、そのシャフトが挿通されるスペース(貫通孔24等)を避けて変速機構を構成する必要がある。このような設計上の制約に関わらず、上記遊星歯車機構を利用すれば、スリーブ20及びローター12間の変速を実現することができる。
【0035】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、第2のギア14bは1つであったが複数設けられていてもよい。例えば、ステアリングシャフトを中心として120°間隔で第2のギア14bが3つ設けられていてもよい。これにより、第3のギア14cへのトルク伝達時における第2のギアに加わる力を低減することができる。
【0036】
・上記実施形態においては、変速機構として遊星歯車機構を採用していた。しかし、スリーブの回転に対するローターの回転速度を変速させることが可能であれば、変速機構はこれに限らず、例えば平行歯車変速機構、ウォーム変速機構等であってもよい。
【0037】
・凸部52の数及び形状は上記実施形態に限らない。この凸部52の数及び形状に応じて凹部17及び嵌合部25の数及び形状が設定される。
【符号の説明】
【0038】
12…ローター、14a〜14c…第1〜第3のギア、17…凹部、20…スリーブ、25…嵌合部、30…ステータ、35…サブステータ、40…ロテータ、50…センサユニット、51…センサ用ギア、52…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトとともに回転するセンサ用ギアの回転を通じてステアリングの操舵角を検出するセンサユニットが装着され、車体に固定的に取り付けられるステータと、前記ステアリングシャフトとともに中立位置から左右方向に同一角度だけ前記ステータに対して相対回転するロテータと、を備えたステアリングローリングコネクタにおいて、
自身に形成される嵌合部及び前記センサ用ギアの一部が嵌合することで、前記ロテータとともに前記センサ用ギアと一体回転するスリーブと、
前記スリーブに対して相対回転可能に装着されるローターと、
前記スリーブ及び前記ローター間に設けられるとともに、前記スリーブの回転速度を変速して前記ローターに伝達する変速機構と、
前記ローターに形成されるとともに、前記ロテータが中立位置に存在するときにのみ、前記嵌合部に対応して位置することで前記嵌合部及び前記センサ用ギアの一部の嵌合を可能とする凹部と、を備えたステアリングローリングコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングローリングコネクタにおいて、
前記変速機構は、
前記ステータに対して固定的に取り付けられる内歯車と、
前記ローターと一体回転する太陽歯車と、
前記スリーブとともにステアリングシャフトを中心として公転しつつ、前記内歯車と噛み合うことで軸回転し、この軸回転を通じて前記太陽歯車を回転させる遊星歯車と、を有する遊星歯車機構であるステアリングローリングコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−51090(P2013−51090A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187815(P2011−187815)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)