説明

ステムスライド装置

【課題】押出プレスのステムスライド装置において、汎用性を有する流体圧シリンダを用いたステムのロック手段を有し、装置を小型化するとともに、コストを低減することができるステムスライド装置を提供する。
【解決手段】ステムスライド装置は、コンテナに装着したビレットを押圧するステム10が水平に取り付けられたステムスライド台13と、ステム上下動支持体11に取り付けられ、ステムスライド台13の側端部E1,E2が嵌合し上下に摺動されるガイド溝を形成したスライドガイド部材12a,12bと、スライドガイド部材に設けられ、ステムスライド台の側端部を押圧するロック手段とを備える。スライド台がガイド溝の下端に位置するとき、ステムスライド台の側端部を梃子による倍力機構で構成したロック手段により押し付けられ、ステムをコンテナの軸線位置に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出プレス装置に設けられたステムスライド装置に関し、特に、コンテナに装填したビレットを押圧するステムが水平に取り付けられたステムスライド台を、ビレット供給時に上昇させることができるステムスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属材料、例えば、アルミニウム又はその合金材料などによる押出材(ビレット)を押出プレス装置により押出す場合、油圧シリンダで駆動されるメインラムの先端部にステムが取り付けられており、ダイスにコンテナを押し付けた状態で、ビレットローダ上のビレットをメインラム先端のステムで押動し、前記コンテナのビレット収容内部に装填する。そして、メインラムをさらに油圧シリンダの駆動により前進させることにより、ビレットがステムにて強力に押圧される。そこで、ダイスの出口部から、成形された製品が押し出される。
【0003】
この従来型の押出プレス装置では、コンテナにビレットを装填するときに、ステムの先端は、このビレットの長さ分、後退させなければならないため、メインラムのストロークは、ビレット長に、ステムの長さを加えたものになっている。そこで、このメインラムのストロークを確保するには、従来型の押出プレス装置の全長が長大化していまい、メインラムを駆動する油圧シリンダ自体も大型化し、これに伴って、作動させる油量も多く必要となる。
【0004】
近年においては、押出プレス装置のコンパクト化が図られている。このコンパクト化により、押出プレス装置の省スペース化、省エネルギー化を達成することができる。このコンパクト化の一手法である、ショートストロークプレス方式と呼ばれる押出プレス装置が開発されている。従来型の押出プレス装置では、ビレットをコンテナ内に装填するために、ビレット供給用のスペースが必要であり、この長さ分だけ、メインラムのストロークが長くなっていた。そこで、このショートストロークプレス方式では、ビレット供給の仕方を工夫して、ビレット供給用のスペースの長さ分だけ、メインストロークの長さを短くしている。
【0005】
このショートストロークプレス方式によれば、押出プレス装置全体の機長を短くコンパクト化することができ、非押出時間(アイドルタイム)を短縮化でき、さらに、メインラム駆動用の油圧シリンダの作動油量を削減することができる。その結果、押出プレス装置の省スペース化、省エネルギー化を図ることができる。
このショートストロークプレス方式は、コンテナを基準においたビレットの供給方向で、フロントローディング型とリアローディング型の2種類に分類される。
【0006】
フロントローディング型は、ビレット供給時には、コンテナをステム側に移動させておき、移動後のコンテナ位置よりダイス側にビレット供給用のスペースを確保するものである。つまり、ダイスとステム先端との間に、ビレットが供給される。
この方式では、ビレットを空中チャージで供給するため、ビレットローダ装置の芯精度の維持が重要となるため、ビレットローダ装置の保守及び管理が必要となる。また、ビレットの径、曲がり、端面などの精度も要求される。そこで、実際には、コンテナの内径を大きくして対処している。しかし、この内径を大きくすることによって、製品へのブリスターの巻き込みの大きな要因になっている。
【0007】
もう一つの方式であるリアローディング型では、ビレットの供給時には、ビレット供給用スペースを確保するため、ステムを水平移動又は上昇移動させている。当初のステム位置からステムを水平又は上方に移動させ、ステムの側方又は下方において、コンテナのステム側にビレットを供給用のスペースを開けている。このスペースに、ビレットが供給される。(特許文献1、特許文献2参照)
【0008】
図4は、リアローディング型ショートストロークプレス方式が採用された押出プレス装置のステムが上昇移動するステムスライド装置を上方からみた構成を示している。このステムスライド装置は、ステム上下動支持体11、スライドガイド部材12a及び12b、ステムスライド台13、ステムクランプ部材14a及び14b、そして、油圧シリンダ17a及び17bで基本構成される。スライドガイド部材12a及び12bが、ステム上下動支持体11に固定され、スライドガイド部材12a及び12bと、ステム上下動支持体11との間にスライド溝が形成されている。このスライド溝内を、ステムスライド台13の側端部E1、E2が夫々上下に摺動できるようになっている。
【0009】
ステム10のステム基部が、ステムスライド台13にステムクランプ部材14a及び14bによりクランプされ、ステム10が水平に保たれて支持される。さらに、ステムスライド台13は、図示しないステム上下駆動手段の作動により、上下動(図4の紙面に直交する方向)される。さらに、図示しないメカストッパが、ステムスライド台13の下降限のために設けられている。
ステムスライド台13の側端部E1及びE2に対向するスライドガイド部材12a及び12bに、油圧シリンダ17a及び17bが取り付けられている。そして、この油圧シリンダ17a及び17bの駆動による押圧ロッド18a及び18bが設けられている。押圧ロッド17a及び17bは、ステムスライド台13が下降限に位置したことが検知されたとき、油圧シリンダ17a及び17bが作動されて、ステムスライド台13の側端部E1及びE2を押圧する。
【0010】
油圧シリンダ17a及び17bによりステムスライド台13の側端部E1及びE2を押圧することによって、ステムスライド台13の背面と、ステム上下動支持体11との間に生じていた隙間がなくなり、ステムスライド台13の背面がステム上下動支持体11に押し付けられる。このような構成により、ステムスライド台13を介してステム10がステム上下動支持体11に固着される。図4に示す符号15はステム上下動支持体11に取り付けられたガイドキーで、ステムスライド台13の背面に設けたキー溝16に嵌め合わされることで、ステム10が上下動しても押出プレス装置の軸心位置を確保する。(特許文献3参照)
【0011】
ところで、リアローディング型ショートストロークプレス方式の押出プレス装置のステムスライド装置において、上述したようなステムのロック手段を採用した場合には、油圧シリンダの設置位置が押出プレス装置中心部のステムやコンテナの高温部の近傍となり、パッキン寿命の観点から油圧シリンダには耐熱性が要求される。このために、油圧シリンダには汎用性を有する油圧シリンダを用いることができなかった。
また、ステムスライド台の側端部を油圧シリンダに連結した押圧ロッドで押動し、ステムをステム上下動支持体に押圧するようにした。このため、大きな出力の油圧シリンダが必要で、油圧シリンダを設けるためのスペースを要することからステムスライド装置が大型化するとともに、コストも高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−231110号公報
【特許文献2】特開平8−206727号公報
【特許文献3】特開2007−160329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ステムスライド装置において、汎用性を有する流体圧シリンダを用いたステムのロック手段を有し、装置を小型化するとともに、コストを低減することができるステムスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明のステムスライド装置では、コンテナに装着したビレットを押圧するステムが水平に取り付けられたステムスライド台と、ステム上下動支持体に取り付けられ、前記ステムスライド台の側端部が嵌合し上下に摺動されるガイド溝を形成したスライドガイド部材と、前記スライドガイド部材に設けられ、前記ステムスライド台の側端部を押圧するロック手段とを備えたステムスライド装置において、前記ステムスライド台の側端部を押圧するロック手段を、梃子による倍力機構で構成した。
【0015】
そして、前記ロック手段を動かすための流体圧シリンダを、前記梃子の一方の端部に設けた。
また、前記流体圧シリンダを空圧シリンダとした。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のステムスライド装置によれば、コンテナに装填したビレットを押圧するステムが水平に取り付けられたステムスライド台の側端部を、該ステムスライド台がステムガイド部材のガイド溝の下端に位置するとき、梃子による倍力機構を用いたロック手段の駆動により、前記ステムスライド台の側端部を押圧するようにしたので、ロック手段を駆動する流体圧シリンダをプレス装置の機側端に設けることができる。
【0017】
このため、ステムスライド台及びスライドガイド部材を小型化することができ、コストが低減される。また、流体圧シリンダをプレス装置の機側端に設けたので、シリンダの保全性が向上する。
さらに、ロック手段を梃子による倍力機構としたので、流体圧シリンダに出力の小さい空圧シリンダを用いても必要な押圧力を得ることができる。このため、ステムスライド装置のコストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のステムスライド装置の実施形態を説明する水平断面図である。
【図2】本発明のステムスライド装置の実施形態を説明する正面図である。
【図3】実施形態のステムスライド装置の押圧部の要部を説明する拡大図面である。
【図4】従来のステムスライド装置の構成を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図3を参照しながら、本発明のステムスライド装置の実施形態について説明する。本発明のステムスライド装置は、前述したリアローディング型ショートストロークプレス方式による押出プレス装置に適用されることを基礎とし、そのステムスライド装置の基本構成は、図4に示されたステムスライド装置と同様である。
図1に、本発明のステムスライド装置の実施形態が示されている。図1に示された実施形態のステムスライド装置は、図2に示されたステムスライド装置のステム軸の位置における水平断面で表示されている。なお、押出プレス装置の構成は公知であるので、説明を省略する。
【0020】
図1に示されたステムスライド装置は、図示しないメインシリンダの内部に設けたメインラムの先端に取り付けられたステム上下動支持体11、スライドガイド部材12a及び12b、ステムスライド台13、そして、ステムクランプ部材14a及び14bで基本構成されている。スライドガイド部材12a及び12bがステム上下動支持体11に固定され、スライドガイド部材12a及び12bと、ステム上下動支持体11との間にスライド溝が形成されている。このスライド溝内を、ステムスライド台13の両側端部E1、E2が夫々上下に摺動できるようになっている。
【0021】
ステム10のステム基部が、ステムスライド台13にステムクランプ部材14a及び14bによりクランプされ、ステム10が水平に保たれて支持される。さらに、ステムスライド台13は、図2に示すステム上下動駆動油圧シリンダ31の作動により、上下動(図1の紙面に直交する方向)される。図1のAにステムの上昇限位置を示している。
【0022】
そして、ステム上下動支持体11には、鉛直方向に延びたガイドキー15が配置されている。このガイドキー15は、ステム10を押出プレス装置の軸芯に沿って上方に案内するものであり、このガイドキー15を摺動するキー溝16が、ステムスライド台13のステム取り付けと反対側の面に設けられている。このキー溝16がガイドキー15に嵌合して案内されることにより、ステム10が上下動しても、ステム10が押出プレス装置の軸芯に対して横振れすることなく、ステム10の軸芯位置を確保することができる。
図2に示すように、メカストッパ33a及び33bがステムスライド台13の下降限のために設けられている。
【0023】
図1に示されたステムスライド装置のロック手段について説明する。ロック手段は、揺れ腕21a及び21b、軸受け22a及び22b、支軸23a及び23b、押圧ロッド24a及び24b、空圧シリンダ26a及び26bで基本構成されている。軸受け22a及び22bがスライドガイド部材12a及び12bに取り付けられている。軸受け22a及び22bと揺れ腕21a及び21bに支軸23a及び23bが挿通され、揺れ腕21a及び21bが軸支される。揺れ腕21a及び21bの一端には押圧ロッド24a及び24bがスライドガイド部材12a及び12bに設けたガイドブッシュ25内を摺動可能に設けられている。
【0024】
空圧シリンダ26a及び26bは、ヘッド側がステム上下動支持体11の側端部に、ロッド側が揺れ腕21a及び21bの他端にクレビスを介して取り付けられている。そして、空圧シリンダ26a及び26bの作動によりステムスライド台13の両側端部E1、E2を押圧ロッド24a及び24bで押圧する。
図3に、ステムスライド装置のロック手段の押圧部を示す。スライドガイド部材12a及び12bに設けたガイドブッシュ25内を摺動可能に設けた押圧ロッド24a及び24bは、ガイド溝29a〜29dが設けられガイド板28a〜28dに案内され軸方向に移動できる。
【0025】
ステムスライド台13の両側端部E1、E2を押圧ロッド24a及び24bでの押圧が解放されたとき(図3のBに揺れ腕の位置を示す)、圧縮コイルバネ27a及び27bにより押圧ロッド24a及び24bを元の位置に引き戻すことができる。
符号29a及び29bは、軸受け22a及び22bに取り付けられた支軸23a及び23bを固定するキープレートである。
【0026】
押圧ロッド24a及び24bがステムスライド台13の側端部E1及びE2を押圧することによって、ステムスライド台13の背面、とステム上下動支持体11の摺動面との間に生じていた隙間がなくなり、ステムスライド台13がステム上下動支持体11の摺動面に押し付けられ、結果として、ステム10の縦振れを修正できる。これにより、ステム10の軸芯と押出プレス装置の軸芯を一致させることができる。本発明において、ロック手段に空圧シリンダを用いる構成としたが、これに限られるものではなく、電動モータとボールネジ及びボールナットを用い回転運動を直線運動に変換する駆動機構が採用されても良い、
【0027】
本発明のステムスライド装置では、ステムを取り付けたステムスライド台の両側端部をロック手段に梃子を用いた倍力機構で構成した。このため、ロック手段を駆動する流体圧シリンダを高い温度環境下である押出プレス装置の中心部から、温度の低い機側端部に設けることができた。さらに、倍力機構の採用により流体圧シリンダを出力の大きな油圧シリンダからより出力の小さい空圧シリンダに置き換えることができ、ステムスライド装置の小型化とコストの低減を図ることができた。
【符号の説明】
【0028】
10 ステム
11 ステム上下動支持体
12a、12b スライドガイド部材
13 ステムスライド台
14a、14b ステムクランプ部材
15 ガイドキー
16 キー溝
21a、21b 揺れ腕
22a、22b 軸受け
23a、23b 支軸
24a、24b 押圧ロッド
26a、26b 空圧シリンダ
31 ステム上下動駆動油圧シリンダ
33a、33b メカストッパ
A ステム上昇限位置
B 揺れ腕の押圧解放位置
E1、E2 側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナに装着したビレットを押圧するステムが水平に取り付けられたステムスライド台と、ステム上下動支持体に取り付けられ、前記ステムスライド台の側端部が嵌合し上下に摺動されるガイド溝を形成したスライドガイド部材と、前記スライドガイド部材に設けられ、前記ステムスライド台の側端部を押圧するロック手段とを備えたステムスライド装置において、
前記ステムスライド台の側端部を押圧するロック手段を、梃子による倍力機構で構成したことを特徴とするステムスライド装置。
【請求項2】
前記ロック手段を動かすための流体圧シリンダを、前記梃子の一方の端部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のステムスライド装置。
【請求項3】
前記流体圧シリンダを空圧シリンダとした請求項1又は請求項2に記載のステムスライド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−214457(P2010−214457A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67139(P2009−67139)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】