説明

ステレオ音拡大処理プログラムおよびステレオ音拡大装置

【構成】 ゲーム装置はCPUを含み、CPUはゲームに必要な音についてのステレオの音声信号を生成する。CPUは、各音源で同時に再生されたステレオ音を各々の音源の定位に基づいて補正し、音量の補正された複数のステレオ音を2チャネルのステレオ音にミキシングする。次に、ミキシングしたステレオ音のLチャネルの音声信号(Lin)およびRチャネルの音声信号(Rin)のそれぞれを2系統に分離し(S21)、音像拡大信号(Lin−Rin)を生成する(S23)。続いて、音像拡大信号を遅延し(S25)、Linに遅延音像拡大信号を加算した加算信号を生成し(S27)、Rinから遅延音像拡大信号を減算した減算信号を生成する(S29)。そして、加算信号をLチャネル用のスピーカから出力し、減算信号をRチャネル用のスピーカから出力する(S31)。
【効果】 処理負担を軽減でき、中央に定位する音を低下させることなく、ステレオ音の音像を拡大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はステレオ音拡大処理プログラムおよびステレオ音拡大装置に関し、特にたとえば、複数の音源から出力されるステレオ音を同時再生する、ステレオ音拡大処理プログラムおよびステレオ音拡大装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ステレオスピーカの配置間隔が短い場合など、ステレオ感が得られないときには、2チャネルでのステレオ音の音像を拡大する方法として、2つのスピーカ間のクロストークをキャンセルすることが考えられる。しかし、クロストークをキャンセルする場合には、音像が中央付近に定位する音の音質が著しく低下することが知られている。このような問題を解決する方法が、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、一般的なクロストークキャンセルの手法として知られている方法を用い、中央に定位する音についてはクロストークキャンセルの対象とならないように配慮した回路が開示される。この回路を複数の音色のそれぞれに対して適用することにより、音像の拡大したステレオ出力が得られるようにしてある。
【0004】
また、特許文献2によれば、ステレオの左右の信号から、片方を加算し、片方を減算することによって得られた信号を、フィルタ処理し、このフィルタに依存した信号を遅延させ、さらに遅延信号を再びステレオの音声信号に加算および減算することで音像の拡大された音声出力を得られる装置が開示される。
【特許文献1】特許第3074813号
【特許文献2】特表平8−509104号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、複数の音色(音源)のそれぞれについてクロストークキャンセル処理を行うため、ソフトウェアで処理しようとする場合には、音源の数だけ処理が必要となり、処理コストが増大してしまう。
【0006】
また、特許文献2では、クロストークキャンセルよりも、より好ましい音像の拡大効果を得るために詳細な技術を開示しており、音像拡大効果装置と言うべきものである。そのため、原音への忠実さなど、音域の正確な再現よりも、ゲームの雰囲気を盛り上げるためのステレオ効果を得る目的においては、このままゲーム装置などへの転用はコストの面から好ましくない。また、周波数に応じた遅延処理を行うため、フィルタ処理を行わねばならず、処理コストがかかってしまう。さらには、ゲーム装置では、左右のスピーカの間隔が比較的狭いため、この技術をそのまま適用した場合には、定位が端へ行くほど、音量が大きくなってしまうという問題が依然として残ってしまう。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、ステレオ音拡大処理プログラムおよびステレオ音拡大装置を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、処理コストを少なくできる、ステレオ音拡大処理プログラムおよびステレオ音拡大装置を提供することである。
【0009】
この発明のその他の目的は、ステレオスピーカの配置間隔が狭い場合であっても、簡易な方法でステレオ感を得ることができる、ステレオ音拡大処理プログラムおよびステレオ音拡大装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、同時再生可能な複数のステレオ音を生成する音源、およびステレオ音を出力するためのスピーカを備えたステレオ音再生装置をステレオ音拡大装置として機能させるためのステレオ音拡大処理プログラムであって、ステレオ音再生装置のプロセサに、定位設定ステップ、音量補正ステップ、ミキシングステップ、および音像拡大ステップを実行させる。定位設定ステップは、複数のステレオ音のそれぞれについて左右のバランスを調整して音像の定位を設定する。音量補正ステップは、定位設定ステップによって設定された定位に基づいて音源から出力されるステレオ音の音量を補正する。ミキシングステップは、音量補正ステップによって音量が補正された複数のステレオ音をミキシングして2チャネルでステレオ出力する。そして、音像拡大ステップは、ミキシングステップによってミキシングされたステレオ出力の音像を拡大する。
【0011】
請求項1の発明では、ステレオ音再生装置(10:実施例で相当する参照符号。以下、同じ。)は、同時再生可能な複数のステレオ音を生成する音源およびステレオ音を出力するためのスピーカ(34L,34R)を備える。このステレオ音再生装置(10)のプロセサに、ステレオ音拡大処理プログラムを実行させることにより、ステレオ音拡大装置として機能させる。定位設定ステップは、複数のステレオ音のそれぞれについて左右にバランスを調整して音像の定位を設定する。音量補正ステップ(S13,S15)は、定位設定ステップによって設定された定位に基づいて音源から出力されるステレオ音の音量を補正する。ミキシングステップ(S3)は、音量補正ステップ(S13,S15)によって音量が補正された複数のステレオ音をミキシングして2チャネルでステレオ出力する。つまり、複数のステレオ音が1のステレオ音に統合される。音像拡大ステップ(S5)は、ミキシングステップ(S3)によってミキシングされたステレオ出力の音像を拡大する。
【0012】
請求項1の発明によれば、音源から出力される複数のステレオ音をミキシングして生成した1のステレオ音の音像を拡大するので、各ステレオ音の音像を拡大する場合に比べて処理コストを大幅に低減することができる。
【0013】
また、複数の音源から出力されるステレオ音の音量を定位に基づいて補正するので、音像を拡大したことに伴って発生する各ステレオ音の音量のばらつきがなく、出力するステレオ音に違和感を覚えることがない。
【0014】
請求項2の発明は請求項1に従属し、音像拡大ステップは、ミキシングステップのステレオ出力のうち、一方のチャネルの音声信号から他方のチャネルの音声信号を減算することにより、音像拡大信号を生成する音像拡大信号生成ステップ、音像拡大信号を遅延した遅延音像拡大信号を生成する遅延ステップ、一方のチャネルの音声信号に遅延音像拡大信号を加算した加算信号を生成する加算ステップ、他方のチャネルの音声信号から遅延音像拡大信号を減算した減算信号を生成する減算ステップ、および加算信号をステレオ出力の一方とし、減算信号をステレオ出力の他方として、音声出力する音声出力ステップを含む。
【0015】
請求項2の発明では、音像拡大ステップ(S5)は、音像拡大信号生成ステップ(S23)、遅延ステップ(S25)、加算ステップ(S27)、減算ステップ(S29)および音声出力ステップ(S31)を含む。音像拡大信号生成ステップ(S23)は、ミキシングステップ(S3)からステレオ出力のうち、一方のチャネルの音声信号から他方のチャネルの音声信号を減算して、音像拡大信号を生成する。遅延ステップ(S25)は、音像拡大信号を遅延して、遅延音像拡大信号を生成する。加算ステップ(S27)は、他方のチャンネルの音声信号が減算された側(一方)のチャネルの音声信号に遅延音像拡大信号を加算して、加算信号を生成する。減算ステップ(S29)は、減算される側(他方)のチャネルの音声信号から遅延音像拡大信号を減算して、減算信号を生成する。音声出力ステップ(S31)は、加算信号を一方のチャネルとし、減算信号を他方のチャネルとする、ステレオ音を音声出力する。
【0016】
請求項2の発明によれば、ミキシングされたステレオ音のうち、一方のチャネルの音声信号から他方の音声信号を減算した音像拡大信号を生成し、音像が中央付近に定位する音が音像拡大に使われないようにするので、音像が中央付近に定位する音の音質が低下するのを防止することができる。
【0017】
請求項3の発明は請求項1または2に従属し、音量補正ステップは、音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央を含む一定範囲内に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず、音源から出力されるステレオ音の音像の定位が一定範囲外に存在するとき、一定範囲から離れるに従って音量が小さくなるように当該ステレオ音の音量を補正する。
【0018】
請求項3の発明では、音量補正ステップ(S13,S15)は、音源から出力されステレオ音の音像の定位が中央を含む一定範囲内に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず(S13)、音源から出力されるステレオ音の音像の定位が一定範囲外に存在するとき、定位が一定範囲から離れるに従って音量が小さくなるように当該ステレオ音の音量を補正する(S15)。
【0019】
請求項3の発明によれば、音源から出力されるステレオ音の音量を補正するので、同レベルの音量のステレオ音をミキシングすることができる。つまり、音像拡大に伴ってミキシングするステレオ音の音量のばらつきを無くすことができるので、出力するステレオ音に違和感を覚えることがない。
【0020】
請求項4の発明は請求項1または2に従属し、音量補正ステップは、音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず、音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央以外に存在するとき、定位が中央から離れるに従って音量が小さくなるように当該ステレオ音の音量を補正する。
【0021】
請求項4の発明では、音量補正ステップ(S13,S15)は、音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず、音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央以外に存在するとき、音像の定位が中央から離れるに従って音量が小さくなるようにステレオ音の音量を補正する。
【0022】
請求項4の発明においても、請求項3の発明と同様に、音像の拡大に伴って発生するミキシングするステレオ音の音量のばらつきによる音の聞こえ具合の不自然さを無くすことができる。
【0023】
請求項5の発明は、同時再生可能な複数のステレオ音を生成する音源、複数のステレオ音のそれぞれについて左右のバランスを調整して音像の定位を設定する定位設定手段、定位設定手段によって設定された定位に基づいて音源から出力されるステレオ音の音量を補正する音量補正手段、音量補正手段によって音量が補正された複数のステレオ音をミキシングして2チャネルでステレオ出力するミキシング手段、およびミキシング手段によってミキシングされたステレオ出力の音像を拡大する音像拡大手段を備える、ステレオ音拡大装置である。
【0024】
請求項5の発明においても、請求項1の発明と同様に、処理コストを大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、すべての音源で生成される複数のステレオ音をミキシングしてから音像を拡大するので、処理コストを大幅に低減することができる。
【0026】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1を参照して、この発明のステレオ音拡大処理プログラムを実行し、ステレオ音拡大装置として機能するステレオ音再生装置としてのゲーム装置10の一例が示される。このゲーム装置10としては、ゲームボーイアドバンス(GAMEBOY ADVANCE :商品名)のような携帯型のゲーム装置などを適用することができる。ゲーム装置10はケース12を含み、このケース12の表面には、その略中央にカラーの液晶表示器(以下、「LCD」という。)14が設けられる。このLCD14には、ゲーム空間およびそのゲーム空間内に存在するプレイヤオブジェクト等のゲームキャラクタが表示されるとともに、必要に応じてメッセージが表示される。また、ケース12の表面には、操作ボタン16,18,20,22,24,26,28が設けられる。操作ボタン16,18および20はLCD14の左方に配置され、操作ボタン22および24はLCD14の右方に配置される。さらに、操作ボタン26および28は、ケース12の上側(LCD14の上方)の端面(天面)に配置される。
【0028】
操作ボタン16は、ディジタルジョイスティックとして機能する十字ボタンであり、4つの押圧部の1つを操作することによって、LCD14上に表示されたゲームキャラクタの移動方向を指示したり、カーソルを移動させたりすることができる。操作ボタン18は、プッシュボタンで構成されたスタートボタンであり、ゲーム開始を指示するため等に利用される。操作ボタン20は、プッシュボタンで構成されたセレクトボタンであり、ゲームモードの選択等に利用される。
【0029】
操作ボタン22は、プッシュボタンで構成されたAボタンであり、LCD14上に表示されたゲームキャラクタ(プレイヤオブジェクト)に打つ、投げる、つかむ、ジャンプする、飛び乗る、剣で斬る、話かけるなどの任意のアクションをさせることができる。操作ボタン24は、プッシュボタンで構成されたBボタンであり、セレクトボタン20で選択したゲームモードの変更やAボタン22で決定したアクションの取り消し等のために利用される。操作ボタン26は、プッシュボタンで構成された左押しボタン(Lボタン)であり、操作ボタン28は、プッシュボタンで構成された右押しボタン(Rボタン)である。操作ボタン26および操作ボタン28は、Aボタン22およびBボタン24と同様の操作をすることができ、また、Aボタン22およびBボタン24の補助的な操作をすることができる。
【0030】
また、ケース12の裏面上端部には、挿入口30が形成される。この挿入口30には、ゲームカートリッジ32が挿入される。図示は省略するが、挿入口30の奥部とゲームカートリッジ32の挿入方向先端部とには、それぞれコネクタ(図2参照)が設けられており、ゲームカートリッジ32が挿入口30に挿入されたとき、2つのコネクタが互いに接続される。このため、ゲームカットリッジ32がゲーム装置10のCPU40(図2参照)でアクセス可能となる。
【0031】
なお、この実施例では、ゲームカートリッジを用いるようにしてあるが、これに変えて、CD−ROM,DVDなどの光学式情報記録媒体、光磁気ディスクまたは磁気ディスクなどの種々の情報記録媒体を適用することも可能である。
【0032】
さらに、ケース12の裏面に固定的に設けられ、ケース12の天面から上方に突出する、スピーカ34Lおよびスピーカ34Rが設けられる。図1から分かるように、スピーカ34Lは操作ボタン26の背面に配置され、スピーカ34Rは操作ボタン28の背面に配置される。ただし、スピーカ34Lおよびスピーカ34Rは、ケース12内部に設けて、それらが配置される位置に対応する位置に音抜き孔をケース12に形成するようにしてもよい。たとえば、スタートボタン18とセレクトボタン20をAボタン22およびBボタン24の上方に設けるようにすれば、十字ボタン16の下方にスピーカ34Lを設け、Aボタン22およびBボタン24の下方にスピーカ34Rを設けることができる。このスピーカ34Lおよびスピーカ34Rは、ゲーム中にBGMやゲームキャラクタの音声或いは擬声音などのゲームに必要な音を出力する。この実施例では、スピーカ34Lはステレオ音の左チャネル(Lチャネル)の音声(音)を出力し、スピーカ34Rはステレオ音の右チャネル(Rチャネル)の音声(音)を出力する。
【0033】
なお、図示は省略するが、ケース12の天面側にはさらに、外部拡張コネクタが設けられ、ケース12の裏面側には、電池収容ボックスが設けられ、そして、ケース12の底面側には電源スイッチ、音量スイッチおよびイヤフォンジャックなどが設けられる。
【0034】
ゲーム装置10の電気的な構成は図2のように示される。この図2を参照して、ゲーム装置10には、上述したようにCPU40が設けられ、このCPU40は、コンピュータまたはプロセサなどとも呼ばれ、ゲーム装置10の全体制御を司る。CPU40ないしコンピュータには、内部バスを介して、上述したLCD14、操作部42およびワークメモリ(WRAM)44が接続されるとともに、コネクタ46、送受信バッファ48およびサウンド制御回路50等も接続される。
【0035】
LCD14にはCPU40から表示データが与えられて、ゲーム画像が表示される。なお、図示は省略しているが、CPU40にはたとえばVRAMおよびLCDコントローラ等が接続されていて、CPU40の指示の下、VRAMに背景画像データやプレイヤオブジェクト等のオブジェクト画像データなどを含むゲーム画像データが描画される。そして、LCDコントローラは、CPU40の指示に従ってVRAMに描画されたゲーム画像データ(表示データ)を読み出し、LCD14に背景やオブジェクト等を含むゲーム画面(表示画面)等を表示する。
【0036】
操作部42は上述した各操作ボタン16,18,20,22,24,26,28を含み、これら各操作ボタンの操作に応じた操作入力信号(または操作入力データ)がCPU40に与えられる。したがって、CPU40は操作部42を通して与えられたプレイヤ(プレイヤ)の指示に従った処理を実行する。
【0037】
WRAM44は書込み読出し可能なメモリであって、CPU40の作業領域またはバッファ領域として用いられる。送受信バッファ48は、たとえば、多人数用ゲームの通信プレイ等の際に、送受信データを一時的に蓄積しておくためのものであり、外部拡張コネクタ52に接続される。このコネクタ52に、図示しない通信ケーブルを用いて他のゲーム装置10と接続することによって、複数のゲーム装置10の間でデータ通信が可能になる。
【0038】
サウンド制御回路50は、上述したスピーカ34Lおよびスピーカ34Rのそれぞれに接続される。このサウンド制御回路50は、CPU40から与えられるディジタルの音声信号をアナログの音声信号(Lチャネルの音声信号およびRチャネルの音声信号)に変換して、スピーカ34Lおよびスピーカ34Rに出力する。したがって、ゲームに必要な音が出力される。また、サウンド制御回路50は、CPU40からの指示に従って、出力する音の音量を調整したり、出力する音にエコーをかけたりする。
【0039】
また、ゲームカートリッジ32にはROM54およびRAM56が内蔵されており、ROM54とRAM56とは互いにバスで接続されるとともに、コネクタ58に接続される。したがって、上述したように、ゲームカートリッジ32がゲーム装置10に装着されて、コネクタ46とコネクタ58とが接続されると、CPU40はROM54およびRAM56に電気的に接続される。したがって、CPU40は、たとえばROM54の所定の領域から所定のプログラムデータを読み出してWRAM44に展開したり、RAM56から所定のバックアップデータを読み出してWRAM44に書き込んだり、ゲームの進行状況に応じてWRAM44に生成したゲームデータ等をRAM56の所定の領域に書き込んで保存したりすることができる。
【0040】
なお、RAM56としては、不揮発性メモリであるフラッシュメモリを適用することができるが、他の不揮発性メモリとして、たとえば強誘電体メモリ(FeRAM)やEEPROM等を適用することもできる。また、電池を電源とするSRAMやDRAM等を用いることもできる。
【0041】
図3は、WRAM44のメモリマップの一例を示す図解図である。ただし、図3においては、音声(音)出力のために必要なプログラム(音再生プログラム)やデータ等のみを示し、音再生以外のゲームに必要なプログラムやデータ等は省略してある。この図3を参照して、WRAM44には、プログラム記憶領域440およびゲームデータ記憶領域442を含む。プログラム記憶領域440には、ステレオ音拡大処理プログラムを含む音再生プログラムが記憶される。この音再生プログラムは、初期設定プログラム440a、音源再生プログラム440b、チャネル定位設定プログラム440c、チャネル音量補正プログラム440d、ミキシングプログラム440e、左右音声分離プログラム440f、音像拡大信号生成プログラム440g、音像拡大信号遅延プログラム440h、音像拡大信号加減算プログラム440iおよびステレオ音声出力制御プログラム440jなどによって構成される。
【0042】
初期設定プログラム440aは、操作部42(操作ボタン16,18,20,22,24,26,28)の初期値を設定したり、複数チャネル(この実施例では16個のチャネル)の音源から出力される音(この実施例では、ステレオ音)についての音像の定位や当該ステレオ音の音量の初期値を設定したり、後述するバッファ(442c,442d)を初期化したりするためのプログラムである。音源再生プログラム440bは、後述する波形データ442aを用いて、音演奏データ442bの楽譜データに従って音を鳴らす(再生する)ためのプログラムである。チャネル定位設定プログラム440cは、各音源から出力されるステレオ音の左右のバランスを調整して、音像の定位を設定するためのプログラムである。これは、ゲームキャラクタ(たとえば、サウンドオブジェクト)が、プレイヤの操作またはコンピュータ(CPU40)の処理に従って、ゲーム画面上を移動し、そのゲームキャラクタに対応するチャネル(音源)の位置が変化し、音像の定位も変化するためである。
【0043】
チャネル音量補正プログラム404dは、チャネル定位設定プログラム440cに従って設定された各音源から出力されるステレオ音についての音像の定位に基づいて、各音源から出力されるステレオ音の音量を補正するためのプログラムである。この音量補正については、後で詳細に説明するため、ここでの詳細な説明は省略する。ミキシングプログラム440eは、チャネル音量補正プログラム404dに従って音量を補正された各音源の出力(ステレオ出力)を2チャネルのステレオ出力にミキシングするためのプログラムである。つまり、このミキシングプログラム440eは、同時再生する複数のステレオ音を1のステレオ音に統合する。
【0044】
左右音声分離プログラム440fは、ミキシングプログラム440eに従ってミキシングされたステレオ出力、すなわちLチャネルの音声信号およびRチャネルの音声信号のそれぞれを2系統に分離するためのプログラムである。後述するように、Lチャネルの音声信号およびRチャネルの音声信号は、それぞれ、音声出力のためにそのまま利用されるとともに、音像拡大信号の生成のために利用される(図4参照)。音像拡大信号生成プログラム440gは、音像拡大信号を生成するためのプログラムであり、具体的には、左右音声分離プログラム440fによって分離されたLチャネルの音声信号およびRチャネルの音声信号を用いて音像拡大信号を生成する。具体的には、音像拡大信号(クロストークキャンセル信号)は、Lチャネルの音声信号およびRチャネルの音声信号のいずれか一方から他方を減算して生成される。この実施例では、Lチャネルの音声信号(Lin)からRチャネルの音声信号(Rin)が減算される(図4参照)。
【0045】
音像拡大信号遅延プログラム440hは、音像拡大信号生成プログラム440gに従って生成された音像拡大信号を所定時間だけ遅延させるためのプログラムである。ここで、所定時間は、2つのスピーカ(この実施例では、34L,34R)の配置間隔(距離)で予め設定される。音像拡大信号加減算プログラム440iは、音像拡大信号遅延プログラム440hに従って遅延された音像拡大信号(遅延音像拡大信号)を、Lチャネルの音声信号およびRチャネルの音声信号のうち、音像拡大信号の生成時に減算された音声信号に加算し、音像拡大信号の生成時に減算した音声信号から減算するためのプログラムである。上述したように、この実施例では、音像拡大信号は、Lチャネルの音声信号からRチャネルの音声信号を減算して生成するため、遅延音像拡大信号は、Lチャネルの音声信号に加算され、Rチャネルの音声信号から減算される。
【0046】
ステレオ音声出力制御プログラム440jは、音像拡大信号加減算プログラム440iで加減算された音声信号をステレオ音声としてスピーカ34Lおよび34Rから出力するためのプログラムである。この実施例では、音像拡大信号加減算プログラム440iに従ってLチャネルの音声信号に遅延音像拡大信号を加算した信号(加算信号)をLチャネルとし、音像拡大信号加減算プログラム440iに従ってRチャネルの音声信号から遅延音像拡大信号を減算した信号(減算信号)をRチャネルとするステレオ音声を出力する。
【0047】
データ記憶領域442には、波形データ442aおよび音楽演奏データ442b等のデータが記憶される。また、データ記憶領域442には、定位データバッファ442cおよびサウンド出力バッファ442d等のバッファ領域が設けられる。
【0048】
波形データ442aは、音源を鳴らすための複数のデータ(音色データ)であり、たとえば、楽器のパート毎の音色データやオーケストラの音色データである。音楽演奏データ442bは、各チャネルについての演奏データ(チャネル1演奏データ,チャネル2演奏データ,チャネル3演奏データ,…)であり、各演奏データは譜面データである。この譜面データは、複数の音符データによって構成される。
【0049】
定位データバッファ442cは、チャネル定位設定プログラム440cに従って設定された各チャネルの定位を記憶(一時記憶)するための領域である。サウンド出力バッファ442dは、図2に示したCPU40の作業領域ないしバッファ領域として使用され、ミキシングプログラム440e、左右音声分離プログラム440f、音像拡大信号生成プログラム440g、音像拡大信号遅延プログラム440h、および音像拡大信号加減算プログラム440iの各々を実行する場合に使用または生成される音声信号が一時記憶される。
【0050】
このような構成のゲーム装置10では、ゲーム中に、ゲームに必要な音(ステレオ音)をスピーカ34Lおよびスピーカ34Rから出力する。これは、仮想ゲーム空間の奥行き感やゲームの臨場感を表現するためである。このためには、スピーカ34Lから出力される音声信号をプレイヤの左耳に到達させ、スピーカ34Rから出力される音声信号をプレイヤの右耳に到達させる必要がある。しかし、実際には、スピーカ34Lから出力される音声信号がプレイヤの右耳に到達し、また、スピーカ34Rから出力される音声信号がプレイヤの左耳に到達する。いわゆるクロストークが発生する。
【0051】
このようなクロストークを除去(キャンセル)する方法はすでに周知であるが、一般的なクロストークキャンセル回路を用いた場合には、中央付近に定位する音像の音質が低下するという欠点がある。このような欠点を改善したクロストークキャンセル回路では、中央付近に定位する音をクロストークキャンセルの対象とならないようにしてある。また、ステレオの左右の信号から、片方を加算し、片方を減算することによって得られた信号を、フィルタ処理し、このフィルタに依存した信号を遅延させ、さらに遅延信号を再びステレオの音声信号に加算および減算することで音像の拡大された音声出力を実現する方法もある。
【0052】
しかし、前者の方法では、中央に定位する音像の音質の低下を防止することはできるが、ゲーム装置10のように、複数の音源から音を同時再生する場合には、各音源から出力される音の各々について、別個独立にクロストークキャンセル処理を実行するようにしてある。このため、クロストークをソフト的にキャンセルするようにすると、処理負担(処理コスト)が増大してしまう。また、後者の場合には、周波数に応じた遅延処理を行うために、フィルタ処理を行わなければならず、前者と同様に、処理コストが増大してしまう。したがって、このような処理をゲーム装置10にそのまま適用した場合には、音声出力以外のゲーム処理の実行に影響を及ぼしてしまう。また、上述のような処理をハード的に実行するようにした場合には、回路規模が膨大となり、ゲーム装置10自体が複雑になってしまい、さらには、コストアップとなってしまう。つまり、ゲーム装置10に適用することは妥当でない。
【0053】
そこで、この実施例では、中央に定位する音像の音質を低下させることなく、簡単な処理で、クロストークをキャンセルして、ステレオ音の音像を拡大できるようにしてある。以下、具体的に説明する。
【0054】
図4はこの実施例における音像拡大処理の機能的な構成(回路70)を示す回路図である。この図4を参照して、この回路70では、Lチャネルの音声信号(Lin)が入力端子P1に入力され、Rチャネルの音声信号(Rin)が入力端子P2に入力される。ただし、このLチャネルの音声信号およびRチャネルの音声信号は、音を鳴らす全ての(複数の)音源で同時に再生されたステレオ音をミキシングした結果得られたステレオ出力(1のステレオ音)である。
【0055】
Lチャネルの音声信号は、加算器72および加算器76のそれぞれにそのまま入力される。つまり、Lチャネルの音声信号は2系統に分離される。一方、Rチャネルの音声信号は、加算器72に反転入力されるとともに、加算器78にそのまま入力される。つまり、Rチャネルの音声信号もまた、2系統に分離される。加算器72では、入力されたLチャネルの音声信号と反転入力されたRチャネルの音声信号とが加算される。つまり、Lチャネルの音声信号からRチャネルの音声信号が減算され、音像拡大信号(Lin−Rin)が生成される。加算器72の出力信号すなわち音像拡大信号は、遅延回路74で遅延され、遅延された音像拡大信号(遅延音像拡大信号)は、加算器76に入力されるとともに、加算器78に反転入力される。
【0056】
加算器76では、Lチャネルの音声信号と遅延音像拡大信号(Lin−Rin)´(「´」は遅延を意味する。)とが加算される。また、加算器78では、Rチャネルの音声信号と反転入力された遅延音像拡大信号とが加算される。つまり、Rチャネルの音声信号から遅延音像拡大信号が減算される。加算器76の出力信号すなわちLチャネルの音声信号と遅延音像拡大信号とを加算した信号(加算信号:Lin+(Lin−Rin)´)は、Lチャネルの音声信号(Lout)として出力端子P3から出力される。また、加算器78の出力信号すなわちRチャネルの音声信号から遅延音像拡大信号を減算した信号(減算信号:Rin−(Lin−Rin)´)は、Rチャネルの音声信号(Rout)として出力端子P4から出力される。
【0057】
たとえば、図5に示すように、音像が左に定位している音(ステレオ音)の場合に、たとえば、波形100で示されるLチャネルの音声信号(Lin)が入力端子P1に入力され、波形102で示されるRチャネルの音声信号(Rin)が入力端子P2に入力されたと仮定する。また、図5に示す回路70では、出力端子P3に変えてスピーカ80L(図1,図2の34Lに相当する。)が設けられ、出力端子P4に変えてスピーカ80R(図1,図2の34Rに相当する。)が設けられている。
【0058】
上述したように、加算器72では、音像拡大信号が生成され、出力される。この音像拡大信号は、波形104で示される。つまり、波形100から、反転された波形102を減算すると、波形104が生成される。このような波形104で示される音像拡大信号は遅延回路74で遅延された後、加算器76に入力されるとともに、加算器78に反転入力される。したがって、加算器76では、波形106で示すような加算信号が生成され、スピーカ80Lから出力される。また、加算器78では、波形108で示すような減算信号が生成され、スピーカ80Rから出力される。ここで、波形108の期間dは、遅延回路74で音像拡大信号を遅延する所定時間に相当する。したがって、スピーカ80Lから出力される音声信号のクロストーク成分は、スピーカ80Rから出力される音声信号によってキャンセルされ、当該クロストーク成分についてのボリュームが低下する。したがって、プレイヤには、スピーカ80Lがスピーカ80L´の位置に存在するかのように、音声信号が広がって聴こえる。つまり、ステレオ音の音像が拡大される。
【0059】
なお、図5に示すスピーカ80L(34L)から出力される音声信号のように、同じ波形が遅延回路74における遅延分だけずれて加算されるため、コムフィルタとして働き、音質が劣化することが考えられる。しかし、遅延回路74での遅延が十分に小さいとき(この実施例では、スピーカ34Lとスピーカ34Rとの間が10.5cm程度であり、遅延する所定時間は0.0625msとしてある。)、コムフィルタの影響の出始める周波数が高くなるため(この実施例では、8kHzあたりから)、音質に与える影響は小さくなる。したがって、フィルタ等での音質補正が不要である。
【0060】
また、図示は省略するが、音像が右に定位している音(ステレオ音)の場合には、図5に示したように、音像が左に定位している場合とは逆に、スピーカ80Rの位置が右にずれた位置に存在するかのように音が聞こえ、ステレオ音が広がって聴こえる。つまり、音像が拡大される。
【0061】
このように、ステレオ音の音像を、スピーカ80Lおよびスピーカ80Rの外側に定位させることができる。したがって、加算器76および加算器78の出力を、それぞれ、ゲーム装置10に設けられるスピーカ34Lおよびスピーカ34Rに与えるようによれば、ゲームに必要な音が広がって聴こえるのである。
【0062】
また、図6に示すように、音像が中央に定位している音(ステレオ音)の場合に、たとえば、波形110で示されるLチャネルの音声信号(Lin)が入力端子P1に入力され、波形112で示されるRチャネルの音声信号(Rin)が入力端子P2に入力されたと仮定する。ただし、波形110および波形112は同じである。なお、図6においても、図5に示した場合と同様に、出力端子P3および出力端子P4に変えて、スピーカ80Lおよびスピーカ80Rが設けられる。
【0063】
加算器72では、Lチャネルの音声信号からRチャネルの音声信号が減算され、波形114で示される音像拡大信号が生成され、出力される。つまり、音像拡大信号は、±0である。したがって、加算器72から何も出力されていない状態と同じである。このため、加算器76からは、入力されたLチャネルの音声信号がそのまま出力され、加算器78からも、入力されたRチャネルの音声信号がそのまま出力されることになる。このため、音像が中央に定位しているステレオ音は、原音のまま中央に定位して聞こえ、音質が低下することはない。
【0064】
ここで、図7(A)に示すように、入力されるステレオ音の音量が一定の場合には、音の定位が中央から左または右に移動する(ずれる)に従って、出力される(再生される)ステレオ音の音量は大きくなってしまう。したがって、何ら手当てしない場合には、各音源から出力されたステレオ音の定位によって各ステレオ音の音量にばらつきが発生してしまい、ミキシングした後のステレオ音に音像拡大処理を施したステレオ音を聞くプレイヤは違和感を覚えてしまう。
【0065】
このため、この実施例では、ミキシングする前に、各音源で再生されるステレオ音のそれぞれを、その音像の定位に応じて補正し、補正した音量の各ステレオ音をミキシングするようにしてある。
【0066】
具体的には、図7(B)に示す補正グラフに従って、音源で再生されたステレオ音の音量を補正するようにしてある。図7(B)に示すように、ステレオ音の音像の定位が中央を含む一定範囲a内に設定されている場合には、当該ステレオ音の音量を調整(補正)しない。しかし、ステレオ音の音像の定位が一定範囲a外に設定されている場合には、音像の定位が外側に向かうに従って線形的に小さくなるように当該ステレオ音の音量が小さくなるように補正する。ただし、一定範囲aの中心は定位の中央と一致する。
【0067】
ただし、この実施例では、ステレオ音の音像の定位が一定範囲a外に設定される場合には、当該ステレオ音の音量の補正は、数1に従った演算処理で行われる。具体的には、この数1の演算処理は、図3に示したチャネル音量補正プログラム440dを実行することにより、行われる。
【0068】
[数1]
補正後の音量=補正前の音量×(1−α)
α=傾きb×偏り (0≦α≦1)
ただし、数1において、αは音の減衰量であり、偏りはAからL方向(左側)への定位のずれ量である。
【0069】
なお、ステレオ音の音像の定位が一定範囲a外であり、R方向(右側)にずれている場合には、補正後の音量は、その偏り(ずれ量)と傾きの絶対値とを用いることにより、数1に従って算出することができる。
【0070】
上述したように、この実施例では、一定範囲aは或る程度の幅を持たせるようにしてあるが、この一定範囲aと傾きbを変化させることにより、補正のかけ具合を変化させることができる。
【0071】
ただし、図8(A)に示すように、一定範囲aを無くし、傾きbで示す直線に従って、定位が中央から離れるに従って音量が小さくなるように、ステレオ音の音量を補正することができる。この場合には、定位が中央に存在するときのみ、ステレオ音の音量が調整さない。
【0072】
また、図7(A)に示したように、入力される音の音量を一定した場合に出力される音の特性を考慮して、たとえば、図8(B)に示すように、2次曲線(頂点が定位の中央上に存在し、下向きに開放する2次曲線)に従って音量を補正するようにしてもよい。かかる場合も図8(A)に示した場合と同様に、定位が中央に存在するときのみ、ステレオ音の音量を調整せずに、定位が中央から離れるに従ってステレオ音の音量が小さくなるように補正される。
【0073】
さらに、この実施例では、ステレオ音の音像の定位が一定範囲a外では、その定位に応じた補正後の音量を算出するようにしてあるが、予め定位に応じた補正後の音量を算出して、定位に対応した補正後の音量を記述したテーブルを記憶しておき、当該テーブルに従って補正後の音量を求めるようにすることもできる。かかる場合には、チャネル音量補正プログラム440dを実行することにより、各チャネルの定位に応じた補正後の音量がテーブルから取得されることになる。
【0074】
具体的には、図2に示したCPU40が図9に示す音再生処理のフロー図を実行する。なお、図示は省略するが、音再生処理は、ゲームのプログラマや開発者によって予め決定されるタイミングやプレイヤの操作タイミング等に応じて実行される。
【0075】
図9を参照して、音再生処理を開始すると、ステップS1a,S1b,…,S1pで、各チャネルについての処理を実行する。この実施例のゲーム装置10では、16個の音源(チャネル)が設けられており、各音源について処理が実行される。具体的には、チャネル1について示すように、ステップS11で、当該チャネル(ここでは、チャネル1)の定位が所定の範囲(一定範囲a)内であるかどうかを判断する。ステップS11で“YES”であれば、つまり定位が一定範囲a内であれば、ステップS13で、音量補正(調整)を行わず、ステップS3に進む。しかし、ステップS11で“NO”であれば、つまり定位が一定範囲a外であれば、ステップS15で、音量を定位に応じて演算により補正して、ステップS3に進む。ステップS15では、上述したように、数1に従って補正後の音量が算出される。このように、ステップS11−S15に示す処理が各チャネルについて実行され、各チャネルについて音量の補正(調整)されたステレオ音が出力される。
【0076】
ステップS3では、各チャネルから出力される(同時再生される)ステレオ音を2チャネルのステレオ音にミキシングする。そして、ステップS5で、後述する音像拡大および音出力処理(図10参照)を実行して、音再生処理を終了する。
【0077】
なお、この実施例では、チャネルの定位が一定範囲a内に存在する場合には、ステップS13で、音量補正を行わないようにしてあるが、これは分かり易く示すためであり、実際には、ステップS13においては何ら処理を施さないようにしてある。
【0078】
図10は音像拡大および音出力処理を示すフロー図である。この図10を参照して、CPU40は、音像拡大および音出力処理を開始すると、ステップS21で、ミキシングされたステレオ音の音声出力、すなわちLチャネルの音声信号(Lin)およびRチャネルの音声信号(Rin)を、それぞれ2系統に分離する。次のステップS23では、音像拡大信号(Lin−Rin)を生成する。次いで、ステップS25で、音像拡大信号を遅延し、ステップS27で、加算信号(Lin+(Lin−Rin)´)を生成し、ステップS29で、減算信号(Rin−(Lin−Rin)´)を生成する。ただし、(Lin−Rin)´は、遅延音像拡大信号である。そして、ステップS31で、音再生処理を実行して、音像拡大および音出力処理からリターンする。ステップS31では、サウンド制御回路50を介して、加算信号をLチャネル用のスピーカ34Lから出力し、減算信号をRチャネル用のスピーカ34Rから出力する。
【0079】
なお、ステップS31では、加算信号をLチャネルの音声信号としてサウンド制御回路50(図2)に出力するとともに、減算信号をRチャネルの音声信号としてサウンド制御回路50に出力するのである。したがって、スピーカ34Lおよびスピーカ34Rからステレオ音のゲーム音楽(音)が出力される。
【0080】
この実施例によれば、複数の音源から出力されるステレオ音を2チャネルのステレオ音にミキシングし、ミキシングしたステレオ音に音像拡大処理を施すので、処理負担を軽減することができる。すなわち、処理コストを大幅に削減することができる。
【0081】
また、この実施例によれば、各音源から出力されるステレオ音の音量を各々の定位に基づいて補正するので、定位によって音源の音量にばらつきがなく、ミキシングしたステレオ音の音像を拡大しても、違和感を覚えることはない。すなわち、臨場感のあるゲーム音声ないしゲーム音楽を聴くことができる。
【0082】
さらに、この実施例によれば、ミキシングしたステレオ音のうち、一方のチャネルの音声信号から他方のチャネルの音声信号を減算して音像拡大信号を生成するので、中央付近に定位する音像のステレオ音の音質が低下するのを防止することができる。
【0083】
なお、上述の実施例では、携帯型のゲーム装置についてのみ説明したが、これに限定される必要はない。たとえば、家庭用のビデオゲーム装置やゲーム機能を有する携帯電話機などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1はこの発明の音像拡大装置として機能するゲーム装置の一例を示す図解図である。
【図2】図2は図1に示すゲーム装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】図3は図2に示すゲーム装置に設けられるWRAMのメモリメモリマップを示す図解図である。
【図4】図4はこの発明の音像拡大処理の機能的な構成を示す回路図である。
【図5】図5は図4に示す回路に音像が左に定位しているステレオ音を入力した場合に出力されるステレオ音を示す図解図である。
【図6】図6は図4に示す回路に音像が中央に定位しているステレオ音を入力した場合に出力されるステレオ音を示す図解図である。
【図7】図7は一定の音量の音で音源を再生した場合に、出力される音の音量と定位との関係を示すグラフおよびその音量を定位に応じて補正するための補正グラフを示す図解図である。
【図8】図8は音源を再生した音の音量を補正する補正グラフの他の例を示す図解図である。
【図9】図9は図2に示すCPUの音再生処理を示すフロー図である。
【図10】図10は図2に示すCPUの音像拡大および音出力処理を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0085】
10 …ゲーム装置
14 …LCD
32 …ゲームカートリッジ
34L,34R …スピーカ
40 …CPU
42 …操作部
44 …WRAM
54 …ROM
56 …RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時再生可能な複数のステレオ音を生成する音源、およびステレオ音を出力するためのスピーカを備えたステレオ音再生装置をステレオ音拡大装置として機能させるためのステレオ音拡大処理プログラムであって、
前記ステレオ音再生装置のプロセサに、
前記複数のステレオ音のそれぞれについて左右のバランスを調整して音像の定位を設定する定位設定ステップ、
前記定位設定ステップによって設定された定位に基づいて前記音源から出力されるステレオ音の音量を補正する音量補正ステップ、
前記音量補正ステップによって音量が補正された複数のステレオ音をミキシングして2チャネルでステレオ出力するミキシングステップ、および
前記ミキシングステップによってミキシングされたステレオ出力の音像を拡大する音像拡大ステップを実行させる、ステレオ音拡大処理プログラム。
【請求項2】
前記音像拡大ステップは、前記ミキシングステップの前記ステレオ出力のうち、一方のチャネルの音声信号から他方のチャネルの音声信号を減算することにより、音像拡大信号を生成する音像拡大信号生成ステップ、前記音像拡大信号を遅延した遅延音像拡大信号を生成する遅延ステップ、前記一方のチャネルの音声信号に前記遅延音像拡大信号を加算した加算信号を生成する加算ステップ、前記他方のチャネルの音声信号から前記遅延音像拡大信号を減算した減算信号を生成する減算ステップ、および前記加算信号をステレオ出力の一方とし、前記減算信号をステレオ出力の他方として、音声出力する音声出力ステップを含む、請求項1記載のステレオ音拡大処理プログラム。
【請求項3】
前記音量補正ステップは、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央を含む一定範囲内に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が前記一定範囲外に存在するとき、前記一定範囲から離れるに従って音量が小さくなるように当該ステレオ音の音量を補正する、請求項1または2記載のステレオ音拡大処理プログラム。
【請求項4】
前記音量補正ステップは、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央以外に存在するとき、定位が中央から離れるに従って音量が小さくなるように当該ステレオ音の音量を補正する、請求項1または2記載のステレオ音拡大処理プログラム。
【請求項5】
同時再生可能な複数のステレオ音を生成する音源、
前記複数のステレオ音のそれぞれについて左右のバランスを調整して音像の定位を設定する定位設定手段、
前記定位設定手段によって設定された定位に基づいて前記音源から出力されるステレオ音の音量を補正する音量補正手段、
前記音量補正手段によって音量が補正された複数のステレオ音をミキシングして2チャネルでステレオ出力するミキシング手段、および
前記ミキシング手段によってミキシングされたステレオ出力の音像を拡大する音像拡大手段を備える、ステレオ音拡大装置。
【請求項6】
前記音像拡大手段は、前記ミキシング手段の前記ステレオ出力のうち、一方のチャネルの音声信号から他方のチャネルの音声信号を減算することにより、音像拡大信号を生成する音像拡大信号生成手段、前記音像拡大信号を遅延した遅延音像拡大信号を生成する遅延手段、前記一方のチャネルの音声信号に前記遅延音像拡大信号を加算した加算信号を生成する加算手段、前記他方のチャネルの音声信号から前記遅延音像拡大信号を減算した減算信号を生成する減算手段、および前記加算信号をステレオ出力の一方とし、前記減算信号をステレオ出力の他方として、音声出力する音声出力手段を含む、請求項5記載のステレオ音拡大装置。
【請求項7】
前記音量補正手段は、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央を含む一定範囲内に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が前記一定範囲外に存在するとき、前記一定範囲から離れるに従って音量が小さくなるように当該ステレオ音の音量を補正する、請求項5または6記載のステレオ音拡大装置。
【請求項8】
前記音量補正手段は、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央に存在するとき、当該ステレオ音の音量を補正せず、前記音源から出力されるステレオ音の音像の定位が中央以外に存在するとき、定位が中央から離れるに従って音量が小さくなるように当該ステレオ音の音量を補正する、請求項5または6記載のステレオ音拡大装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−94275(P2006−94275A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279088(P2004−279088)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000233778)任天堂株式会社 (1,115)
【Fターム(参考)】