説明

ステンレスの着色方法及びステンレス用着色処理液

【課題】有害なクロム化合物を使用することがなく、簡単な装置で処理することができ、色むらが少なく、処理費用の低廉なステンレスの着色方法及びステンレス用着色処理液を提供する。
【解決手段】処理液準備工程として、過マンガン酸カリウム水溶液と硝酸コバルト水溶液と硝酸カリウム水溶液とを用意し、これら3種類の水溶液を等容量づつ混合したステンレス用着色処理液を調製する。次に、着色工程として、SUS304板を大気雰囲気下、300°Cで1時間の熱処理を行った後、50°Cに加温したステンレス用着色処理液中に浸漬する。最後に洗浄工程として、着色工程において着色されたステンレス板を水洗する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレスの着色方法及びそれに用いられるステンレス用着色処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレスは錆び難く、長年にわたって金属光沢が保たれるため、建材、浴槽、シンク、食器、調理器等、生活に密着した金属として広く使用されている。しかし、消費者の好みの多様化にともない、ステンレス特有の金属光沢ではなく、着色された表面にしたいという需要が生じてきた。こうした、需要者の好みの多様化に対応すべく、従来から、ステンレス表面を着色する技術が提案されている。
【0003】
こうしたステンレスの着色方法として、例えば、ステンレスをクロム酸溶融塩に浸漬してステンレス表面に酸化皮膜を形成させる方法が知られている。
【0004】
しかし、ステンレスをクロム酸溶融塩に浸漬して着色する方法では、有害なクロム酸塩を用いるため、環境問題を引き起こすおそれある。また、クロム酸塩を溶融しなければならないため、処理のために多くのエネルギーを消費することとなる。
【0005】
また、スパッタリング装置を用いてステンレスの表面に金属やセラミックの皮膜を形成させる方法も知られている。
【0006】
しかし、この方法では、高価なスパッタリング装置を必要とするため、処理費用が高騰化するという問題があった。また、ステンレスを真空系の中に入れなければならないため、大きなステンレス板の処理や大量生産には不向きであった。
【0007】
また、湿式法によるステンレスの着色方法としては、ステンレスの表面をクロム酸−硫酸混合溶液によって処理を行い、着色する方法が知られている。
【0008】
例えば、特許文献1では、ステンレスをクロム酸−硫酸混合溶液中に浸漬し、ステンレスの表面に数百〜数千Å厚みの酸化膜を形成させて発色させる方法が提示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平9−209033号公報
【0010】
また、特許文献2では、ステンレスをクロム酸−硫酸混合溶液中に浸漬し、さらに、ステンレスを電解酸化し、ステンレス表面に着色皮膜を形成させる方法が提示されている。
【0011】
【特許文献2】特開平7−252690号公報
【0012】
しかし上記特許文献1及び特許文献2に記載されたステンレスの着色方法では、有害なクロム化合物を使用するため、環境汚染の問題を生ずるおそれがある。
【0013】
また、発明者もステンレスの着色方法について長年研究を行っており、ステンレスの低電流密度電解による着色方法を提案している(特許文献3)。
【0014】
【特許文献3】特公平5−2750号公報
【0015】
この方法は、過マンガン酸イオン、モリブデンイオン及び亜硝酸イオンのいずれかのイオンと、コバルトイオンとを含有する水溶液中にステンレスを浸漬し、ステンレスに1〜20A/m2という微小電流を通じてカソード分極させて着色する方法である。
【0016】
この方法によれば、クロム酸を用いることなくステンレスを着色することができるため、クロムによる環境汚染のおそれがない。また、電解時間をコントロールすることにより、青、緑、赤、黒等、いろいろな色に着色させることができる。さらには、必要とされる薬品の濃度が希薄であるため、薬品に要するコストも低廉である。
【0017】
しかし、この方法では、色むらが発生しないようにステンレスを着色するためには、電解時間や電解溶液の濃度や温度等の条件をある程度厳密に管理する必要があり、着色工程の管理が難しいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、有害なクロム化合物を使用することがなく、簡単な装置で処理することができ、色むらが少なく、処理費用の低廉なステンレスの着色方法及びステンレス用着色処理液を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のステンレスの着色方法は、過マンガン酸イオンと、2価のコバルトイオンと、硝酸イオンとが混合されたステンレス用着色処理液を用意する処理液準備工程と、該ステンレス用着色処理液中にステンレスを浸漬して該ステンレスの表面を着色する着色工程と、該着色工程によって着色された該ステンレスを洗浄する洗浄工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明のステンレスの着色方法では、まず処理液準備工程において過マンガン酸イオンと、2価のコバルトイオンと、硝酸イオンとが混合されて、ステンレス用着色処理液が用意される。そして、着色工程において、ステンレス用着色処理液中にステンレスが浸漬され、ステンレスが着色される。こうして得られた着色皮膜を分析したところ、コバルトとマンガンが多量に検出された。着色皮膜の詳細な生成機構については明らかではないが、ステンレス用着色処理液中に存在する2価のコバルトイオンが過マンガン酸イオンによって徐々に酸化され、酸化マンガンと酸化コバルトとの複合酸化物が生成して過飽和状態となり、ステンレス上でその複合酸化物が析出したものと考えられる。この際、硝酸イオンが存在することにより、密着性が良くて均質な色の着色皮膜が形成される。こうして、着色されたステンレスは、洗浄工程によって洗浄され、表面に付着している余分なステンレス用着色処理液が洗い流される。
【0021】
このステンレスの着色方法では、クロム化合物を用いていないため、クロムによる環境汚染のおそれがない。
【0022】
また、ステンレス用着色処理液に入れられる薬品も低濃度で着色可能であるため、薬品に要する費用が低廉で、環境に対する負荷も小さい。
【0023】
さらに、ステンレスを単にステンレス用着色処理液中に浸漬するだけで着色できるため、きわめて簡単な装置で処理を行うことができる。
【0024】
また、着色工程における浸漬時間をコントロールすることによって、黄金色、青、ワインレッド等、いろいろな色に着色させることができ、色むらも少ない。
【0025】
本発明において着色させるステンレスの種類については特に限定されず、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレスのいずれのステンレスであっても着色させることができる。
【0026】
また、処理液準備工程におけるステンレス用着色処理液の仕込み濃度は、過マンガン酸イオンが過マンガン酸カリウム換算で0.01Kg〜10Kg/m3の範囲とされており、コバルトイオンが硝酸コバルト換算で0.1〜100Kg/m3の範囲とされており、硝酸イオンが硝酸コバルト換算で0.01Kg〜10Kg/m3の範囲とされていることが好ましい。
【0027】
ステンレス用着色処理液の仕込み濃度がそれらの範囲未満である場合には、着色に長時間を要することとなり、作業性が悪くなる。また、ステンレス用着色処理液の仕込み濃度がそれらの範囲以上である場合には、色むらができやすくなる。
【0028】
本発明における着色工程においてステンレス上に形成される着色皮膜に含まれるマンガンとコバルトの重量比は、着色液中の過マンガン酸イオンとコバルトイオンの比率を変えることによってコントロールすることができる。着色皮膜に含まれるマンガンとコバルトの重量比はマンガン/コバルト<2とされていることが好ましい。着色皮膜中のマンガン/コバルトの比率が2以上となると、着色皮膜が剥離しやすくなるからである。
【0029】
本発明における着色工程において、ステンレス用着色処理液中に不溶性電極を浸漬し、着色しようとするステンレスと該不溶性電極との間に電流を流し、ステンレスをカソード分極させながら着色させることもできる。こうであれば、単にステンレス用着色処理液中にステンレスを浸漬して着色する場合よりも、着色むらをより少なくすることができ、着色に要する時間も短縮させることができる。なお、不溶性電極としては白金等の貴金属の他、ステンレスを用いることもできる。また、着色しようとするステンレス側の電流密度は0.01〜20A/m2とすることが好ましい。発明者の試験結果によれば、この範囲において色むらの特に少ない均質な着色を行うことができた。
【0030】
また、ステンレスは着色工程の前に加熱処理が施されていることが好ましい。発明者らの試験結果によれば、ステンレスを着色工程前に予め加熱処理をしておくことにより、極めて均質で色むらのなく、密着性に優れた着色皮膜をステンレス上に形成させることができる。これは、ステンレスの加熱処理によってステンレス表面に緻密な酸化皮膜が形成され、さらにその上に着色皮膜が形成されることによるものと考えられる。特に好ましい加熱処理の温度範囲は、150〜500°Cである。
【0031】
また、ステンレスは着色工程の前に2価のコバルトイオンを含む溶液中で陽極処理がなされていることも好ましい。こうであっても、極めて均質で色むらがなく、密着性に優れた着色皮膜をステンレス上に形成させることができる。この理由は、ステンレスの陽極処理によって2価のコバルトイオンが3価のコバルトイオンに酸化され、ステンレス表面に緻密な酸化コバルト皮膜が形成されることによるものと考えられる。
【0032】
また、着色工程におけるステンレス用着色処理液は、40°C〜90°Cに加温されていることが好ましい。発明者らの試験結果によれば、ステンレス用着色処理液の温度を高くすると着色は速くなるが色むらが生じ易く、ステンレス用着色処理液の温度を低くすると着色は遅くなるが色むらが生じ難くなる。着色工程におけるステンレス用着色処理液が40°C〜90°Cの範囲であれば、着色工程を迅速に行うことができるとともに、色むらも生じ難い。
【0033】
また、ステンレス用着色処理液は、処理液準備工程において所定の養生時間を経過した後、着色工程で使用されることが好ましい。発明者の試験結果によれば、処理液準備工程において所定の養生時間を経過したステンレス用着色処理液は、着色工程におけるステンレスの着色を迅速に行うことができる。この原因は、養生時間を経過している間にステンレス用着色処理液中にコバルトとマンガンの複合酸化物が生成するためであると考えられる。
【0034】
本発明のステンレス着色方法において、ステンレスの表面に部分的にマスキングをしておき、ステンレス用着色処理液とステンレスとが直接接触しない領域を設ければ、ステンレスの表面に着色パターンを描くことが可能となる。この場合において、マスキング剤としてポリ桂皮酸系フォトレジスト等の光硬化型樹脂を用いることもできる。こうであれば、スクリーン印刷等でステンレス上にマスキング剤を塗布し、紫外線等で硬化させ、未露光部分をデベロッパーによって溶解剥離させることにより、容易に着色パターンを描くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
<処理液準備工程>
次の3種類の水溶液を用意し、これら3種類の水溶液を等容量づつ混合したステンレス用着色処理液1を調製する。
過マンガン酸カリウム水溶液・・1.0Kg/m3
硝酸コバルト水溶液・・・・・・0.6Kg/m3
硝酸カリウム水溶液・・・・・・0.6Kg/m3
【0037】
<着色工程及び洗浄工程>
SUS304板材を矩形状に切り出し、電気炉に入れ、大気雰囲気下、300°Cで1時間の熱処理を行う。ステンレス用着色処理液1をビーカーに入れ、ウオーターバスにより50°Cに加温し、熱処理したステンレス板をステンレス用着色処理液1中に所定の時間浸漬する。その後ステンレス板を取り出し、水洗し、乾燥させて着色されたステンレス板を得た。
【0038】
(結果)
上記工程によって着色されたステンレス板は、着色工程における浸漬時間によって色が異なった。すなわち、4時間の浸漬では黄金色となり、5時間の浸漬で青色となり、6時間の浸漬でワインレッド色となった。また、目視によってはっきりと認識できるような色むらは生じず、粘着テープによる180度剥離試験によって剥がれることはなかった。また、6時間の浸漬によりワインレッド色となったステンレスについて、還元剤を含んだ希酸によって着色皮膜のみを溶解し、原子吸光法によって分析した。その結果、コバルトとマンガンが主成分として検出され、その比率はマンガン/コバルト=0.4(重量比)であった。
【実施例2】
【0039】
<処理液準備工程>
次の2種類の水溶液を用意し、等容量づつ混合したもをビーカーに入れ、50°Cで7時間保つことにより、ステンレス用着色処理液2を調製する。
過マンガン酸カリウム水溶液・・1.0Kg/m3
硝酸コバルト水溶液・・・・・・1.0Kg/m3
【0040】
<着色工程及び洗浄工程>
SUS304板材を矩形状に切り出し、電気炉に入れ、大気雰囲気下、300°Cで1時間の熱処理を行う。ステンレス用着色処理液2をビーカーに入れ、ウオーターバスにより50°Cに加温し、熱処理したステンレス板をステンレス用着色処理液2中に所定の時間浸漬する。その後ステンレス板を取り出し、水洗し、乾燥させて着色されたステンレス板を得た。
【0041】
(結果)
上記工程によって着色されたステンレス板は、4時間の浸漬では黄金色となり、5時間の浸漬で青色となり、6時間の浸漬でワインレッド色となった。また、目視によってはっきりと認識できるような色むらは生じなかった。また、皮膜ステンレス上に形成された着色皮膜を実施例1の場合と同様の方法で分析したところ、コバルトとマンガンが主成分として検出された。
【実施例3】
【0042】
SUS304板材を矩形状に切り出し、電気炉に入れ、大気雰囲気下、300°Cで15分間の熱処理を行う。そして、熱処理したステンレス板の表面にポリ桂皮酸系フォトレジストを塗布し、乾燥後、写真のネガフィルムを密着させて光照射を行った。そして、デベロッパーによって未露光部分のフォトレジストを除去し、実施例1と同様の工程を行った。
【0043】
(結果)
上記工程によって着色されたステンレス板は、ネガフィルムを忠実に再現した着色パターンが形成された。また、着色の色は、4時間の浸漬では黄金色となり、5時間の浸漬で青色となり、6時間の浸漬でワインレッド色となり、目視によってはっきりと認識できるような色むらは生じなかった。また、皮膜ステンレス上に形成された着色皮膜を実施例1の場合と同様の方法で分析したところ、コバルトとマンガンが主成分として検出された。
【実施例4】
【0044】
SUS304板材を矩形状に切り出したものを2枚用意し、1.0Kg/m3の濃度の硝酸コバルト水溶液中に、互いに平行に対面させ、一部が溶液上に突出する状態で浸漬する。そして、ガルバノスタットにより5A/m2の電流密度で1時間電解を行い、アノード側のステンレス板に酸化皮膜を形成させる。こうして表面に酸化皮膜が形成されたアノード側のステンレス板に対して、以下に示す工程を行った
<処理液準備工程>
次の3種類の水溶液を用意し、これら3種類の水溶液を等容量づつ混合することにより、ステンレス用着色処理液4を調製する。
過マンガン酸カリウム水溶液・・0.6Kg/m3
硝酸コバルト水溶液・・・・・・0.6Kg/m3
硝酸カリウム水溶液・・・・・・0.6Kg/m3
【0045】
<着色工程及び洗浄工程>
ステンレス用着色処理液4をビーカーに入れ、ウオーターバスにより50°Cに加温し、上記陽極酸化によって酸化皮膜が形成されたステンレス板をステンレス用着色処理液4中に所定の時間浸漬する。その後ステンレス板を取り出し、水洗し、乾燥させて着色されたステンレス板を得た。
【0046】
(結果)
上記工程によって着色されたステンレス板は、着色工程における浸漬時間によって色が異なった。すなわち、4時間の浸漬では黄金色となり、5時間の浸漬で青色となり、6時間の浸漬でワインレッド色となり、目視によって認識できるような色むらは生じなかった。また、粘着テープによる180度剥離試験によって剥がれることはなかった。さらに、6時間の浸漬によりワインレッド色となったステンレスについて、還元剤を含んだ希酸によって着色皮膜のみを溶解し、原子吸光法によって分析した結果、コバルトとマンガンが主成分として検出され、その比率はマンガン/コバルト=1.2(重量比)であった。
【実施例5】
【0047】
<処理液準備工程>
次の3種類の水溶液を用意し、これら3種類の水溶液を等容量づつ混合したステンレス用着色処理液5を調製する。
過マンガン酸カリウム水溶液・・1.0Kg/m3
硝酸コバルト水溶液・・・・・・0.6Kg/m3
硝酸カリウム水溶液・・・・・・0.6Kg/m3
【0048】
<着色工程及び洗浄工程>
ステンレス用着色処理液5をビーカーに入れ、ウオーターバスにより50°Cに加温する。そして、矩形状に切り出した2枚のSUS304板材を互いに平行に対面ながら、ステンレス用着色処理液中に浸漬する。そして、ガルバノスタットを用い、カソード側の電流密度が0.5A/m2となるように設定して定電流電解を行う。その後ステンレス板を取り出し、水洗し、乾燥させて着色されたステンレス板を得た。
【0049】
(結果)
上記工程によって着色されたステンレス板は、着色工程における定電流電解時間によって色が異なった。すなわち、2時間では黄金色となり、3時間で青色となり、4時間でワインレッド色となった。この時間は、実施例1において行った、単なる浸漬処理の時間の約半分であり、ステンレスのカソード分極により、着色工程の迅速化が可能であることが分かった。また、目視によってはっきりと認識できるような色むらが生ずることもなく、粘着テープによる180度剥離試験によって剥がれることはなかった。さらに、6時間の浸漬によりワインレッド色となったステンレスについて、還元剤を含んだ希酸によって着色皮膜のみを溶解し、原子吸光法によって分析した結果、コバルトとマンガンが主成分として検出され、その比率はマンガン/コバルト=0.8(重量比)であった。
【0050】
なお、上記実施例1〜5において、過マンガン酸カリウムと硝酸コバルトの比率を変化させることにより、着色皮膜中のマンガンとコバルトの割合を変化させることもできる。その場合において着色皮膜中のマンガン/コバルト(重量比)が2以上となると、粘着テープによる180度剥離試験によって着色皮膜の剥離が生じた。なお、上記実施例1〜5では2価のコバルトイオン源として硝酸コバルトを用いたが、硝酸コバルトの替わりに硫酸コバルトを用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、色むらの少ない着色ステンレスを簡単な装置で、有害なクロム化合物を用いることなく、低廉な価格で供給することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過マンガン酸イオンと、2価のコバルトイオンと、硝酸イオンとが混合されたステンレス用着色処理液を用意する処理液準備工程と、
該ステンレス用着色処理液中にステンレスを浸漬して該ステンレスの表面を着色する着色工程と、
該着色工程によって着色された該ステンレスを洗浄する洗浄工程とを備えることを特徴とするステンレスの着色方法。
【請求項2】
処理液準備工程におけるステンレス用着色処理液の仕込み濃度は、過マンガン酸イオンが過マンガン酸カリウム換算で0.01Kg〜10Kg/m3の範囲とされており、コバルトイオンが硝酸コバルト換算で0.1〜100Kg/m3の範囲とされており、硝酸イオンが硝酸コバルト換算で0.01Kg〜10Kg/m3の範囲とされていることを特徴とする請求項1記載のステンレスの着色方法。
【請求項3】
着色工程においてステンレス上に形成される着色皮膜に含まれるマンガンとコバルトの重量比はマンガン/コバルト<2とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のステンレスの着色方法。
【請求項4】
着色工程においてステンレス用着色処理液中に不溶性電極を浸漬し、着色しようとするステンレスと該不溶性電極との間に電流を流し、該ステンレスをカソード分極させながら着色させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のステンレスの着色方法。
【請求項5】
着色しようとするステンレスに流す電流の電流密度は、0.01〜20A/m2の範囲とされていることを特徴とする請求項4記載のステンレスの着色方法。
【請求項6】
ステンレスは着色工程の前に加熱処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のステンレスの着色方法。
【請求項7】
ステンレスの加熱処理は150〜500°Cの範囲でなされることを特徴とする請求項6記載のステンレスの着色方法。
【請求項8】
ステンレスは着色工程の前に2価のコバルトイオンを含む溶液中で陽極処理がなされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のステンレスの着色方法。
【請求項9】
着色工程におけるステンレス用着色処理液は、40°C〜90°Cに加温されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のステンレスの着色方法。
【請求項10】
ステンレス用着色処理液は、処理液準備工程において所定の養生時間を経過した後、着色工程で使用されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のステンレスの着色方法。
【請求項11】
ステンレスは着色工程前に着色不要とされる部分がマスキングされていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載のステンレスの着色方法。
【請求項12】
過マンガン酸イオンと2価のコバルトイオンと硝酸イオンとを含む水溶液であることを特徴とするステンレス用着色処理液。
【請求項13】
過マンガン酸イオンの濃度は過マンガン酸カリウム換算で0.01Kg〜10Kg/m3の範囲とされており、コバルトイオンの濃度は硝酸コバルト換算で0.1〜100Kg/m3の範囲とされており、硝酸イオンの濃度は硝酸コバルト換算で0.01Kg〜10Kg/m3の範囲とされていることを特徴とする請求項12記載のステンレス用着色処理液。

【公開番号】特開2006−28573(P2006−28573A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207977(P2004−207977)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504273461)
【出願人】(504273450)株式会社紅雲製作所 (1)
【Fターム(参考)】