説明

ステープラ

【課題】 大量の紙等を小さな力で綴ることができ、且つ、スムーズに綴ることができるフラットタイプのステープラを提供する。
【解決手段】 ステープラ1は、回動可能なクリンチ部を有するベース部2と、ベース部2の後端近傍に主軸によって回動可能に軸着されたマガジン部3と、ベース部2の後端近傍に回動可能に取り付けられてマガジン部3の上方に配置され且つ前端近傍に押刃を有する押し下げ部5と、ベース部2に固定され前端上方近傍にハンドル軸65が摺動するガイドレール73を有するハンドル支持部材7と、押し下げ部5と押刃が配置された位置の上方で連結軸により軸着され且つハンドル支持部材7のガイドレール73に摺動可能なハンドル軸65によって軸着されたハンドル部6とを備え、ハンドル部6は、ハンドル軸65を可動支点、ハンドル部6の後端近傍を力点、連結軸を作用点とする梃子の原理によって押し下げ部5を降下させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綴針の先端部が平らとなるフラットタイプのステープラに関する。
【背景技術】
【0002】
紙を綴るための文具であるステープラは事務用品として欠かせないものであり、ステープラに関して多くの提案がなされている。このステープラには、紙を綴った場合に針の先端部が湾曲した状態となるタイプと、紙を綴った場合に針の先端部が平らとなるフラットタイプとがある。
【0003】
一般的なフラットタイプのステープラは、クリンチャを有するベース部と、針を収容するマガジンと、ベース部の一端近傍に回動自在に軸着されたハンドルと、このハンドルの先端部に配置されハンドルの回動に伴いマガジン内の綴針をクリンチャに向けて打ち出す押刃と、クリンチャ囲繞部を有し、クリンチャに対してクリンチャ囲繞部を相対的に昇降移動させるテーブルと、テーブルのクリンチ動作に関連して所定のタイミングでクリンチャ囲繞部の下降動作を許容するように摺動可能としたスライダと、ハンドルに固定されハンドルの回動によりスライダを摺動させるスライダ押し部材とを備えるものである。
【0004】
このようなステープラは、ハンドルとベース部を同時に把持してハンドルとベース部の距離を近づけると、スライダ押し部材がスライダを摺動させるため、テーブルとスライダの係止状態が外れてテーブルが下降し、押刃とクリンチャの間で針が押圧されて先端が折れ曲がり、紙等を綴ることができるものである。
【0005】
そして、実公昭63−43027号公報(特許文献1)や実公平2−48229号公報(特許文献2)では、クリンチャを回動可能な二つの部材から形成したステープラの提案がなされている。これらのステープラは、ハンドルとベース部の距離を近づけると、クリンチャの上部が平坦面となるようにクリンチャが回動し、針の先端を平らに折り曲げるものである。
【0006】
又、ステープラの中には上述したような手に把持した状態で用いるものと卓上型のものとがある。この卓上型のステープラは、基本構造は手に把持した状態で用いるものと略同一であるが、手に把持した状態で用いるものと比較して大型であり、ベース部を机等に載置した状態のまま体重を掛けてハンドル部材を降下させるため、大量の紙を綴ることができる。
【特許文献1】実公昭63−43027号公報
【特許文献2】実公平2−48229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フラットタイプのステープラは、スライダが摺動してクリンチャ囲繞部が下降する場合、急激にクリンチャ囲繞部が下降するため、クリンチ時に衝撃が発生してクリンチし難いといった問題点があった。
【0008】
又、卓上型のステープラにおいては、大量の紙を綴るために大きな力が必要となり、クリンチに必要な力を軽減するためにハンドル部を大きくして梃子の原理を利用して紙を綴る場合、ハンドル部が大きすぎるためにステープラのバランスが悪くなってハンドル部に強い力を掛けるとステープラの後端が浮き上がるといった問題点もあった。更に、ステープラのバランスを改善するためにベース部を大きく形成した場合、ステープラが大型になるという問題点もあった。
【0009】
本発明は、上述したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、大量の紙等を小さな力で綴ることができ、且つ、スムーズに綴ることができる卓上型又はハンドタイプのステープラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステープラは、回動可能なクリンチ部を有するベース部と、該ベース部の後端近傍に主軸によって回動可能に軸着されたマガジン部と、前記ベース部の後端近傍に回動可能に取り付けられてマガジン部の上方に配置され且つ前端近傍に押刃を有する押し下げ部と、前記ベース部に固定され前端上方近傍にハンドル軸が摺動するガイドレールを有するハンドル支持部材と、前記押刃が配置された位置の上方で前記押し下げ部に連結軸によって軸着され且つ前記ハンドル支持部材のガイドレールに摺動可能なハンドル軸によって軸着されたハンドル部とを備え、該ハンドル部は、前記ハンドル軸を可動支点、前記ハンドル部の後端近傍を力点、前記連結軸を作用点とする梃子の原理によって前記押し下げ部を降下させることを特徴とするものである。
【0011】
又、前記ハンドル支持部材のガイドレールは、前下方に向かって延設する昇降誘導部と、該昇降誘導部の下端から前方僅かに上方に向かって延設するクリンチ誘導部とを有しているものである。
【0012】
更に、前記ガイドレールの直上に樹脂製のガイド部材を有し、該ガイド部材の下方の面は、前記ガイドレールの昇降誘導部と断面形状を略同一とする昇降誘導面及びクリンチ誘導部と断面形状を略同一とするクリンチ誘導面を備え、前記ガイドレールの上縁から前記ガイド部材の下方の面が前記ガイドレール内に僅かに突出するように配置されて、前記ハンドル軸を前記ガイド部材の下方の面に沿って摺動させるものである。
【発明の効果】
【0013】
ステープラを、ハンドル部を押し下げ部と押刃が配置された位置の上方で連結軸により軸着し、且つ、ハンドル支持部材のガイドレールに摺動可能なハンドル軸によって軸着することによって、ハンドル軸を支点、ハンドル部の後端近傍を力点、連結軸を作用点とする梃子の原理によって押し下げ部を降下させる構造とすることにより、梃子の原理を利用しているため荷重低減比であるアシスト比を最適に確保できると共に、支点、力点、作用点の位置関係を常に一定とすることができるため、クリンチ時のアシスト比を常に一定とすることができる。
【0014】
又、ハンドル支持部材のガイドレールを、前下方に向かって延設する昇降誘導部と、該昇降誘導部の下端から前方僅かに上方に向かって延設するクリンチ誘導部とを有する形状とすることにより、クリンチの時に必要な押し下げ距離をアシスト比を一定に保ったまま確保することができる。
【0015】
更に、ハンドル軸を樹脂製のガイド部材に沿って摺動させることにより、金属の摩耗を防止することができると共に摩擦力も弱まるため、弱い力でクリンチできると共にステープラの耐久性を上げることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態のステープラ1は、回動可能なクリンチ部10を有するベース部2と、ベース部2の上方に配置されるフロント・ローディングタイプのマガジン部3と、マガジン部3の上方に配置される押し下げ部5と、ベース部2に固定され前端上方近傍にガイドレール73を有するハンドル支持部材7と、このハンドル支持部材7によって押し下げ部5の上方に配置されるハンドル部6とを備えるものである。
【0017】
又、ステープラ1のマガジン部3及び押し下げ部5は、ベース部2の後端近傍に主軸25によって回動可能に軸着され、ハンドル部6は、ハンドル支持部材7のガイドレール73に沿って摺動可能なハンドル軸65により前端近傍が軸着されると共にハンドル軸65よりも僅かに後方が連結軸66により押し下げ部5の前端上方近傍に軸着されるものである。そして、このハンドル部6は、ハンドル支持部材7に軸着された部分を可動支点とし、後端部を力点とし、押し下げ部5に軸着された部分を作用点とする梃子の原理によって押し下げ部5を下降させるものである。
【0018】
又、ハンドル支持部材7のガイドレール73は、前下方に向かって延設する昇降誘導部73aと、昇降誘導部73aの下端から前方僅かに上方に向かって延設するクリンチ誘導部73bとを有しているものである。
【0019】
更に、ガイドレール73の直上に樹脂製のガイド部材75を有し、ガイド部材75の下方の面は、ガイドレール73の昇降誘導部73aと断面形状を略同一とする昇降誘導面75a及びクリンチ誘導部73bと断面形状を略同一とするクリンチ誘導面75bを備え、ガイドレール73の上縁からガイド部材75の下方の面がガイドレール73内に僅かに突出するように配置されて、ハンドル軸65をガイド部材75の下方の面に沿って摺動させるものである。
【0020】
又、マガジン部3と押し下げ部5の間に押刃46を有する板バネ45と、緩衝バネ49が配置されており、板バネ45にはベース部2が備えるクリンチ部10のスライダ13に形成された摺動支持部13aと係止するスライダ押し部47を備え、板バネ45が撓むことによってスライダ押し部47が後方に移動して摺動支持部13aを後方に移動させ、スライダ13が後方に摺動してクリンチを可能とするものである。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。図1乃至図3に示すように、本実施例のステープラ1は、二枚から六十枚程の紙束を綴る卓上型でフラットタイプのステープラであり、回動可能なクリンチ部10を有するベース部2と、ベース部2の上方に配置されるフロント・ローディングタイプのマガジン部3と、マガジン部3の上方に配置される押し下げ部5と、ベース部2に固定され前端上方近傍にガイドレール73を有するハンドル支持部材7と、このハンドル支持部材7によって押し下げ部5の上方に配置されるハンドル部6とを備えるものである。
【0022】
又、ステープラ1のマガジン部3及び押し下げ部5は、ベース部2の後端近傍に主軸25によって回動可能に軸着され、ハンドル部6は、ハンドル支持部材7のガイドレール73に沿って摺動可能なハンドル軸65により前端近傍が軸着されると共にハンドル軸65よりも僅かに後方が連結軸66により押し下げ部5の前端上方近傍に軸着されるものである。そして、このハンドル部6は、ハンドル支持部材7に軸着された部分を可動支点とし、後端部を力点とし、押し下げ部5に軸着された部分を作用点とする梃子の原理によって押し下げ部5を下降させるものである。
【0023】
更に、ステープラ1は、マガジン部3と押し下げ部5の間に、図4に示すように、押刃46を備える板バネ45と、押しバネで形成された緩衝バネ49とが配置され、この板バネ45から下方に延設させるように形成したスライダ押し部47が、ベース部2に設けたクリンチ部10が備えるスライダ13を後方に摺動させることによってクリンチ部10の降下を許容し、綴針を押刃46と可動クリンチャ15との間でクリンチして先端を水平に折り曲げるものである。
【0024】
そして、ベース部2は、ステープラ1の台座となる台座部材11と、台座部材11の後端近傍に主軸25によって回動可能に軸着されたクリンチ部10とから形成されるものである。
【0025】
この台座部材11は、本実施例におけるステープラ1の土台となる部材であり、マガジン部3や押し下げ部5が後端近傍で回動可能に軸着され、図5に示すように、細長方形状の平板と、この平板の両側稜線部から垂直に立ち上がる側壁とから形成されている。
【0026】
この台座部材11の側壁は、後端側を高く先端側に進むにつれて低く形成され、前端近傍に係止穴11aを有し、後端近傍には軸穴11bを有している。この係止穴11aは、図1及び図2に示したように、後述するテーブル14の停止爪14dが貫挿するものであり、軸穴11bは、図5に示したように、クリンチ部10等を軸着する主軸25が貫挿するものである。
【0027】
又、台座部材11の平板の前端近傍には、図4に示した係止部材23が固定されている。この係止部材23は、方形状の平板の前端稜線部から上方に突出するクリンチャ係止部23aと、平板の両側後端近傍の稜線部から垂直に突出するスライダ係止部23bとから形成されている。そして、クリンチャ係止部23aは、後述する可動クリンチャ15と係止して下方から可動クリンチャ15を上方に回動させるものであり、スライダ係止部23bは、スライダ13と係止することによりクリンチ部10を下降不能とし、スライダ13が後方に摺動するとスライダ13との係止状態が外れクリンチ部10を下降可能とするものである。
【0028】
更に、台座部材11の平板の先端部近傍には、押しバネで形成されたテーブル付勢バネ20の一端が係着され、後方近傍には板バネによって形成されたマガジン付勢バネ22の一端が係着されているものである。
【0029】
クリンチ部10は、図4及び図5に示したように、台座部材11に主軸25によって回動可能に軸着されたスライダ保持部材12と、スライダ保持部材12に配置され前後に摺動可能なスライダ13と、スライダ保持部材12に嵌合されたテーブル14と、スライダ保持部材12の先端近傍に配置された可動クリンチャ15及び可動クリンチャ15を保持するクリンチャ保持部材16と、スライダ保持部材12の先端に固定されたテーブル先端カバー部材18とを備えるものである。
【0030】
スライダ保持部材12は、スライダ13及びテーブル14が配置されるものであり、細長方形状の平板と、この平板の両側稜線部から垂直に立ち上がった側壁とから形成され、主軸25によって後端が台座部材11に回動可能に軸着されているものである。又、このスライダ保持部材12の側壁は、図6に示すように、後端が後上方に向かって斜めに形成され、前端近傍から中央近傍にかけて複数の軸固定穴12aを有し、後端近傍には軸穴12bを有しているものである。この軸固定穴12aは、後述する摺動支持軸17が固定されるものであり、軸穴12bは、図5に示した主軸25が貫挿されるものである。
【0031】
又、スライダ保持部材12は、図4に示したように、平板の先端近傍に台座部材11に固定された係止部材23のスライダ係止部23bが貫挿する貫挿穴を有し、平板の後端近傍には、後述するスライダ13のバネ係着突起13dとの間で引張バネが係着されるバネ係着突起12dを有しているものである。
【0032】
スライダ13は、クリンチ部10の下降動作を許容するものであり、このスライダ13は、図5に示したように、細長で略方形状の平板と、この平板の両側稜線部から垂直に立ち上がった側壁と、側壁の後端近傍の位置で平板の両側稜線部から垂直に立ち上がった摺動支持部13aとから形成されている。又、スライダ13の平板は、摺動支持部13aが形成されている後方側の幅が側壁が形成されている前方側の幅よりも広く形成されており、摺動支持部13aは側壁よりも外側に形成されているものである。このように摺動支持部13aが形成された位置の平板が幅広に形成されているのは、図4に示したように、後述する板バネ45のスライダ押し部47がスライダ13の両側壁の外方に位置しているため、このスライダ押し部47と摺動支持部13aを係止させるにはスライダ13の側壁よりも摺動支持部13aが外方に位置している必要があるからである。
【0033】
そして、摺動支持部13aの前端面である後述するスライダ押し部47が係止する面は、曲面形状とされている。このように摺動支持部13aの前端面が曲面形状とされているのは、本実施例のステープラ1が二枚から六十枚程の紙束を綴るものであり、後述するマガジン部3の前端下方が紙束の上面に接触する位置が紙束の枚数によって異なるため、板バネ45のスライダ押し部47が後方に移動を開始する位置にも差ができる。
【0034】
よって、テーブル14上に載置される紙束の厚さに関わらずクリンチするタイミングを略同一とするには、テーブル14上に載置される紙束の厚みに、スライダ押し部47がスライダ13を後方に摺動させるタイミングが左右されないようにする必要がある。そこで、摺動支持部13aの前端面であるスライダ押し部47が係止する面を、綴る紙束の厚みに対応した曲面形状とすることにより、テーブル14上に載置される紙束の厚さによってスライダ押し部47と板バネ45のスライダ押し部47が接触する位置を変化させ、スライダ押し部47が後方に移動するタイミングが略同一となるようにしているものである。
【0035】
又、スライダ13は、図5に示したように、側壁の先端近傍から中央近傍にかけて前後方向に長い複数の軸可動穴13bを有し、平板の後端近傍には貫挿穴13cを有しているものである。この軸可動穴13bは、摺動支持軸17が貫挿されるものであって、軸可動穴13bの前後方向の長さは、スライダ13の摺動可能な距離と略同一の長さとされるものであり、貫挿穴13cは、スライダ保持部材12のバネ係着突起12dが貫挿されるものである。
【0036】
このように軸可動穴13bに摺動支持軸17を貫挿させているのは、本実施例のステープラ1は卓上型であるため、手で把持して用いるステープラと比較して大型であり、このような大型のステープラの場合、スライダ13の摺動する距離が大きくなるため、スライダ13が摺動時に揺動して滑らかに後方に摺動できない場合や、スライダ13の平板とテーブル14の間の摩擦によってクリンチ時の荷重が増したりすることがある。しかし、軸可動穴13bに摺動支持軸17を貫挿させてスライダ13の摺動を摺動支持軸17に補助させることにより、摺動時に傾いたりすることがなく、スライダ13の平板とテーブル14の間に間隙を作ることもできるため摩擦も軽減できるからである。
【0037】
更に、スライダ13の平板の後端近傍には、図4に示したように、バネ係着突起13dが形成されているものである。そして、引張バネが、バネ係着突起13dとスライダ保持部材12のバネ係着突起12dとの間に係着され、スライダ13を前方に付勢しているものである。
【0038】
そして、クリンチ部10は、スライダ13が前方に位置している場合、スライダ13の平板の下面に係止部材23のスライダ係止部23bが係止して下降不能とされているが、スライダ13が後方に摺動し、平板の前端が係止部材23のスライダ係止部23bよりも後方にきた場合にはスライダ係止部23bとスライダ13の平板の下面との係止が外れ、下降可能となるものである。
【0039】
テーブル14は、綴る紙等が載置されるものであって、図6に示したように、方形状の平板と、この平板の前端稜線部から前下方に向かって斜めに形成された前壁と、平板の前端近傍の両側稜線部から垂下した側壁とを有し、スライダ保持部材12に嵌合されているものである。
【0040】
又、テーブル14は、平板の先端近傍に形成されたクリンチャ囲繞部14aと、クリンチャ囲繞部14aの後方近傍の両側端から外方に突出するように形成された停止突起14bと、後端近傍に形成された切欠き14cとを有し、先端部近傍の裏面には図示しないがバネ付け突起を有している。
【0041】
このクリンチャ囲繞部14aは、可動クリンチャ15を保持するクリンチャ保持部材16の外形状と略同一形状とされる開口であり、クリンチャ保持部材16の上端近傍が嵌合されるものである。又、停止突起14bは、クリンチ部10が下降動作する場合に台座部材11の側壁の上辺と係止してクリンチ部10の下降動作を停止させるものである。更に、切欠き14cは、後述する板バネ45のスライダ押し部47が陥入するものであり、バネ付け突起は、図4に示したテーブル付勢バネ20の端部が係着されるものである。
【0042】
更に、テーブル14の側壁の前端近傍には、停止爪14dが形成されており、この停止爪14dは、図1及び図2に示したように、台座部材11の係止穴11aに貫挿され、クリンチ部10が図4に示したテーブル付勢バネ20によって上方へ回動した場合に、係止穴11aの上端とこの停止爪14dが係止してクリンチ部10の上方への回動を停止させるものである。
【0043】
可動クリンチャ15は、図6に示したように、クリンチャ保持部材16に回動可能に軸着された状態でテーブル14のクリンチャ囲繞部14aに配置されるものであり、厚肉細長で略矩形状の二つのクリンチ部材により形成されているものである。このクリンチ部材は、図5に示したように、上方にレールが形成された押しつけ面を有し、綴針の先端が押しつけられた場合に綴針の先端をレールに沿って折り曲げるものである。
【0044】
そして、可動クリンチャ15は、スライダ13と係止部材23のスライダ係止部23bが係止しているためクリンチ部10が下降不能の場合には、クリンチャ保持部材16の内部に収納されており、スライダ13と係止部材23のスライダ係止部23bの係止が外れてクリンチ部10が下降した時には、係止部材23のクリンチャ係止部23aと先端が接触して上方に押し上げられることにより、クリンチャ保持部材16の内部で回動し、押しつけ面がテーブル14の上面と平行にされるものである。
【0045】
又、可動クリンチャ15は、テーブル14の平板上面における前後方向の軸と垂直に交わる横方向の軸に対して約9度回転させた状態でクリンチャ保持部材16に取付けられているものである。
【0046】
このように可動クリンチャ15を横方向の軸に対して僅かに回転させた状態でクリンチャ保持部材16に取付けるのは、本実施例におけるステープラ1が二枚から六十枚程の紙を綴るものであるため、横方向の軸と平行に可動クリンチャ15を取付けると、六十枚程の厚い紙束を綴る脚の長い綴針を用いて二枚から二十五枚程の薄い紙束を綴った場合に綴針の脚が長すぎることによって先端が交差してしまうおそれがあり、このように足の長い綴針を用いて少ない枚数の紙を綴った場合でも先端が交差することを防止するためのものである。
【0047】
そして、可動クリンチャ15を横方向の軸に対して僅かに回転させた状態でクリンチャ保持部材16に取付けることにより、従来では二枚から三十枚の紙束を綴るときと、三十枚から六十枚の紙束を綴るときで脚の長さの異なる綴針を使用する必要があったが、常に同じ綴針を用いて連続クリンチが可能となるものである。
【0048】
クリンチャ保持部材16は、幅が広い幅広部と幅が狭い幅狭部を備えた横断面を鉤型形状とする二枚の板を備えるものである。そして、一方の板の幅広部と他方の板の幅狭部が対向するように配置され、二枚の板の間に可動クリンチャ15が回動可能に軸着されるものである。又、幅広部の幅は可動クリンチャ15の押しつけ面の長手方向の長さと略同一とされるものである。
【0049】
更に、クリンチャ保持部材16は、可動クリンチャ15を保持した場合、可動クリンチャ15がテーブル14の横方向の軸に対して約9度回転させた状態となるようテーブル14のクリンチャ囲繞部14aに僅かに回転させた状態で取付けられており、可動クリンチャ15は、二つのクリンチ部材が回動した場合、押しつけ面と直交する面の先端部近傍が重なり合うようクリンチャ保持部材16に軸着されるものである。
【0050】
テーブル先端カバー部材18は、開口を備えた平板により形成され、図4に示したように、この開口にテーブル付勢バネ20を貫挿させるものである。そして、このテーブル先端カバー部材18は、スライダ保持部材12の先端に配置され、テーブル14の先端部近傍の裏面側を塞ぐものである。
【0051】
テーブル付勢バネ20は、押しバネで形成されたものであって、台座部材11の平板の前端近傍に一端が固定され、テーブル先端カバー部材18の開口を貫挿して他端がテーブル14のバネ付け突起に固定されたものであり、クリンチ部10を上方に付勢すると共にクリンチ部10の下降時の衝撃を吸収するものである。
【0052】
マガジン付勢バネ22は、台座部材11の平板の後端近傍に一端が固定され、他端が後述するマガジン本体31の裏面に近接して配置された板バネであり、マガジン部3を上方に付勢しているものである。
【0053】
そして、本実施例のマガジン部3は、図7に示すように、摺動可能なマガジン本体31と、マガジン本体31が収納されるマガジン収納部32と、マガジン本体31の後端を係止或いは開放するマガジン本体係止機構とを備えるものであり、マガジン本体31を前方に引き出すことによって綴針を収納するフロント・ローディングタイプである。尚、マガジン本体31に収納される綴針は、クラウンとこのクラウンの両端から垂下する両脚とを備えるコの字型であり、複数の綴針が連結されて綴針の束としてマガジン本体31に収納されるものである。
【0054】
マガジン本体31は、綴針の幅よりも僅かに大きな幅に形成された細長方形状の平板と、この平板の両側稜線部から垂直に立ち上がる側壁と、この側壁の先端部を略垂直に内側に折り曲げて形成された前方壁と、平板の後端両側稜線部近傍に側壁と平行な二本の切り込みが形成されこの二本の切り込みの間に位置する平板を垂直に立ち上げて形成された後方壁とを備え、前方壁近傍にはマガジン本体31をマガジン収納部32から引き出すときに把持される把持部材38が取付けられているものである。又、マガジン本体31の両側壁の中央近傍には後述するマガジン蓋36のストッパ36dと係止する開口が形成されている。
【0055】
又、図8に示すように、マガジン本体31は、平板の前端と前方壁の間に形成された打出し口31aと、側壁の後端近傍の上方に形成された後端係止溝31bと、後端係止溝31bの後端から後下方に斜めに延設したテーパー部31eとを有している。この打出し口31aは、マガジン本体31に収納された綴針が押刃46によって下方に打ち出される場合に貫通する穴であり、後端係止溝31b及びテーパー部31eは、後述する後端係止部材55を係止又は動作を誘導するものである。
【0056】
更に、マガジン本体31は、平板に固定爪31dやバネ係止突起31cを備えている。この固定爪31dは、後述する摺動補助部材33の平板に形成された貫挿穴33aを貫挿して貫挿穴33aの後端と係止するものであり、バネ係止突起31cは、摺動補助部材33のバネ係止突起33bとの間に装着される引張バネの一端が係着されるものである。
【0057】
摺動補助部材33は、マガジン本体31に収納された綴針の摺動や針押し機構が有する針押し部材41の摺動を補助すると共にマガジン本体31の打出し口31aに詰まった針を取り除く時に使用されるものである。そして、摺動補助部材33は、綴針の幅よりも僅かに小さな幅とされた細長方形状の平板と、この平板の稜線部から垂直に立ち上がった側壁と、平板の前端から垂直に立ち上がった前方係止壁33cとを備えるものである。尚、摺動補助部材33の側壁の前端は前方係止壁33cよりも前方に突出しており、側壁の前端上方はテーパー状或いは曲線状に形成されているものである。
【0058】
又、摺動補助部材33は、平板に貫挿穴33aやバネ係止突起33bを有し、この貫挿穴33aは、マガジン本体31の平板に形成された固定爪31dが貫挿するものであり、バネ係止突起33bは、引張バネの一端が装着されるものである。更に、摺動補助部材33の先端部近傍には、前方係止壁33cに装着される摺動ツマミ37が固定されているものである。
【0059】
そして、摺動補助部材33は、マガジン本体31の平板上に摺動補助部材33の平板を重ねるように配置され、貫挿穴33aにマガジン本体31の固定爪31dが貫挿し、マガジン本体31及び摺動補助部材33のバネ係止突起31c,33bに引張バネが装着されることによってマガジン本体31内で前方に付勢されているものである。又、マガジン本体31の側壁と摺動補助部材33の側壁の間には間隙が形成されており、この間隙に綴針の脚や後述する針押し部材41の側壁が陥入することによって、綴針や針押し部材41が摺動補助部材33に沿って摺動するものである。
【0060】
更に、押刃46がマガジン本体31内に収納された綴針の束の先頭を下方へ打ち下ろす場合、押刃46が綴針の束の先頭に位置する綴針を下方に押し下げるため、摺動補助部材33の側壁の前端上方と押刃46との間で綴針の束にせん断力が働き、先頭の綴針が綴針の束から分断され、摺動補助部材33の側壁の前端上方に位置するテーパー状或いは曲線状部分に沿って綴針が下方へ送られるものであり、押刃46が更に下方へ押し込まれると、綴針はマガジン本体31内側と摺動補助部材33の側壁の前端との間で保持されながら下方へ送られるものである。この時、摺動補助部材33は、引っ張りバネにより常に前方へ付勢されている為、綴針の厚みが異なるもの(0.5mm〜0.7mm)を使用しても、引っ張りバネの付勢により保持力が調節され針詰まりを起こす確率を低くすることができる。尚、仮に針詰まりが生じた場合においても、摺動ツマミ37を前後に動かすことによって打出し口31aに詰まった綴針等を容易に取り除くことができるものである。
【0061】
マガジン収納部32は、図7に示したように、マガジン本体31が摺動するマガジン受け部材35と、マガジン受け部材35が嵌合されるマガジン蓋36とから形成され、マガジン受け部材35とマガジン蓋36に囲まれた空間に針押し機構を備えるものである。この針押し機構とは、マガジン本体31に収納された綴針をマガジン本体31の前端に押しつける機構である。
【0062】
マガジン受け部材35は、細長方形状の平板と、この平板の両側稜線部から垂直に立ち上がった側壁とを有し、側壁の前端よりも平板の前端の方が前方に突出して形成されている。又、側壁は、後端近傍に軸穴を有し、主軸25によって台座部材11と回動可能に軸着している。更に、この側壁の中央近傍にはマガジン蓋36のストッパ36dが貫挿する開口を備えている。
【0063】
マガジン蓋36は、図9に示したように、細長方形状の平板と、この平板の両側稜線部から垂下する側壁とを有し、平板の前端は側壁の前端よりも前方に突出して形成され、側壁の後端は平板の後端よりも突出して形成され、マガジン受け部材35の側壁をマガジン蓋36の側壁で挟持するようにマガジン受け部材35に嵌合されているものである。又、側壁の先端よりも前方に突出した平板の先端部は、マガジン本体31をマガジン収納部32に収納した場合、把持部材38の上方に位置するものである。
【0064】
又、マガジン蓋36の平板は、前端近傍の中央から後端近傍の中央まで形成された切抜き36aを備え、この切抜き36aは、後述する針押し部材41の摺動支持片41aが摺動するものである。更に、マガジン蓋36の側壁の中央近傍にはストッパ36dが形成されており、このストッパ36dがマガジン本体31の側壁に形成された開口と係止してマガジン本体31が前方に勢いよく飛び出すことを防止している。
【0065】
更に、マガジン蓋36は、平板の前端に突出した押刃係止突起36cを有し、図8に示したように、前端近傍にはバネ支持部材44が固定され、後端近傍にはバネ係着部36bを有し、側壁の後端近傍には主軸25が貫挿する軸穴を有しているものである。そして、押刃係止突起36cは、押し下げ部5に取付けられた板バネ45の押刃46と係止するものであり、バネ係着部36bは、コイルバネ43の一端が係着されるものである。
【0066】
又、図4に示したように、マガジン蓋36の平板の上面前端近傍には押しバネで形成された緩衝バネ49が配置されている。この緩衝バネ49は、押し下げ部5を上方に付勢すると共に、クリンチ時の衝撃を和らげ、クリンチ動作がスムーズに行える効果を備えている。
【0067】
針押し機構は、図8に示したように、マガジン本体31に収納された綴針を前端に押しつける針押し部材41と、針押し部材41を付勢するコイルバネ43とを備えるものである。そして、針押し部材41は、矩形状の平板と、この平板の稜線部から垂下する側壁と、側壁の下端から内側に向かって垂直に折れ曲がった折り返し部と、平板の後端近傍に形成された摺動支持片41aとから形成され、摺動補助部材33を跨ぐようにマガジン本体31に摺動可能に装着されているものである。
【0068】
コイルバネ43は、引張バネであって、一端がマガジン蓋36の後端近傍に形成されたバネ係着部36bに係着され、マガジン蓋36の先端近傍に設けたバネ支持部材44で折り返して他端が針押し部材41に係着されるものである。
【0069】
そして、この針押し機構は、コイルバネ43の弾性力によって針押し部材41を前方側に付勢するものであり、マガジン本体31に綴針が収納されている場合には、針押し部材41が綴針をマガジン本体31の前端に押しつけることにより綴針を常に前端に位置させるものである。
【0070】
マガジン本体係止機構は、マガジン収納部32の後端近傍に配置され、マガジン本体31の後端係止溝31bを係止する後端係止部材55を備えるものである。この後端係止部材55は、図10に示すように、後方に配置される略方形状の後方板101と、後方板101の左側端縁から前方に突出するように形成され主軸25が貫挿する軸穴102aを備える把持部102と、後方板101の前面略中央に形成された後端係止部103と、後端係止部103の両側端近傍の位置に配置された軸着部104とを備えるものである。
【0071】
この後端係止部103は、対向して配置される二枚のL字板111と、このL字板111を角部近傍で連結する連結部112とから形成され、L字板111の後端縁及び連結部112の後端面が後方板101に接続されている。又、L字板111の前端近傍には図8に示した係止軸106が貫挿する係止軸穴111aが形成され、後方下端近傍には主軸25が貫挿する軸穴111bが形成されているものである。又、軸着部104は、前端がU字型に形成され、このU字部に主軸25が貫挿するものである。
【0072】
この後端係止部材55は、図9に示したように、L字板111と軸着部104の間にマガジン受け部材35及びマガジン蓋36の両側壁の後端近傍が位置し、左側の軸着部104と把持部102の間に図示しないが後述する押し下げ部材51及び台座部材11の後端近傍が位置するようにマガジン収納部32の後端近傍に配置され、図8に示したように、主軸25によってマガジン収納部32に回動可能に軸着されているものである。
【0073】
又、二枚のL字板111の間には、二つのコイル部を有するねじりコイルバネ115が二つのコイル部を主軸25が貫挿するように配置され、L字板111の係止軸穴111aには、係止軸106が両端を係止軸穴111aから僅かに外方に突出するように貫挿されているものである。更に、ねじりコイルバネ115は、一端が係止軸106と、他端がマガジン受け部材35の平板の後端と係止しており、後端係止部材55を前方側に回動させるよう付勢しているものである。
【0074】
そして、このマガジン本体係止機構は、マガジン本体31がマガジン収納部32内に収納されている場合、マガジン本体31の後端係止溝31bと係止軸106の両端が係止してマガジン本体31を摺動不能としているが、把持部102を主軸25を中心に上方に回動させると、マガジン本体31の後端係止溝31bと係止軸106の両端の係止が外れ、針押し機構による前方への付勢力によって前方に摺動するものである。この時、マガジン本体31は、図9に示したマガジン蓋36のストッパ36dによって所定の位置でブレーキを掛けられるため、前方に勢いよく飛び出すことはなく、ストッパ36dによって停止した後に把持部材38を把持して引き出すことによってマガジン本体31を前方に突出させることができるものである。
【0075】
又、マガジン本体31が前方に突出している状態からマガジン収納部32内に収納された場合、図8に示したマガジン本体31のテーパー部31eと係止軸106の両端が接触し、テーパー部31eに係止軸106が誘導されてマガジン本体31の後端係止溝31bと再び係止し、マガジン本体31の摺動を不可とするものである。
【0076】
そして、押し下げ部5は、図2に示したように、マガジン部3の上方に位置し主軸25によって回動可能に軸着される押し下げ部材51と、押し下げ部材51の前端に位置し後述するハンドル部6と連結するハンドル連結部材52とを備えるものである。
【0077】
この押し下げ部材51は、図11に示すように、方形状の平板と、平板の両側縁から後方に垂下する二枚の側壁とから形成されている。又、側壁の後端は平板の後端よりも後方に突出しており、後端近傍に主軸25が貫挿する軸穴51aを有し、平板の底面には、押刃46を備えた板バネ45が取付けられ、この板バネ45の前端近傍に押しバネで形成された緩衝バネ49が配置されている。そして、この板バネ45と緩衝バネ49がマガジン蓋36との間で押し下げ部材51を上方に付勢するものである。
【0078】
又、ハンドル連結部材52は、ハンドル部6と押し下げ部5を連結するためのものであり、方形状の平板と、この平板から垂下する二枚の側壁とから形成され、側壁の前端は平板の前端よりも前方に突出しており、この突出部は上方に後述する連結軸66が貫挿する軸穴52aを備えているものである。このハンドル連結部材52は、押し下げ部材51の前端近傍にハンドル連結部材52の平板を押し下げ部材51の平板に重ねるように配置され、後述する連結軸66によってハンドル部6と連結されるものである。
【0079】
そして、板バネ45は、前端の押刃46や後端近傍のスライダ押し部47が一体形成されたものであり、押刃46は、図9に示したマガジン蓋36の押刃係止突起36cと係止する開口を備え、ステープラ1を使用した場合、マガジン本体31の先端部に位置する綴針を図8に示した打出し口31aから下方の可動クリンチャ15に向けて打ち出すものである。
【0080】
又、スライダ押し部47は、板バネ45の両側稜線部から斜め後方に向かって突出するように形成され、スライダ13と係止する後端は外方に折り曲げられて板曲部47aを形成している。そして、スライダ押し部47は、図12に示すように、スライダ13の側壁の外側に位置するように配置され、スライダ押し部47の板曲部47aは、スライダ13の摺動支持部13aと接しており、板バネ45がマガジン蓋36と押し下げ部材51との間で加圧されて撓んだ場合、この撓みによってスライダ押し部47の先端部が後方に移動してスライダ13の摺動支持部13aと係止しスライダ13を後方に摺動させるものである。
【0081】
そして、板バネ45が撓み始める上下の位置はテーブル14上に載置される紙束の厚みによって変化するため、テーブル14上に載置される紙束の厚みによってスライダ押し部47の後端が後方に移動する位置が異なるが、上述したようにスライダ13の摺動支持部13aの前端面が曲面形状に形成されているため、スライダ押し部47がスライダ13の押し込みを開始するタイミングは同一となり、クリンチのタイミングが一定となるものである。
【0082】
ハンドル支持部材7は、ハンドル部6を支持するものであり、図13に示すように、下方に位置し台座部材11に固定される固定部71と、固定部71の前上方であってステープラ1の前端近傍に位置するハンドル支持部72とを備え、ハンドル支持部72には、ハンドル軸65が摺動するガイドレール73が形成されているものである。そして、二枚の対称形状のハンドル支持部材7がステープラ1の両側に対向して配置され、台座部材11の両側壁の下方に固定部71が螺着されているものである。
【0083】
このガイドレール73は、ハンドル軸65が貫挿する略円弧形状のものであって、上縁は、ハンドル支持部72の略中央部から前下方に延設する昇降誘導部73aと、昇降誘導部73aの下端から前方やや上方に延設するクリンチ誘導部73bとを備えるものである。
【0084】
又、対向して配置された二枚のハンドル支持部材7の内側であって、ガイドレール73の近傍には、ハンドル軸65の動作を支持するガイド部材75が配置されているものである。このガイド部材75は、樹脂によって形成され、図14に示すように、ガイドレール73の昇降誘導部73aと略同一の断面形状とされた昇降誘導面75aと、クリンチ誘導部73bと略同一の断面形状とされたクリンチ誘導面75bとを下方に備え、上方は曲面形状とされたものである。そして、このガイド部材75は、図12に示したように、ガイドレール73の昇降誘導部73aと昇降誘導面75a、クリンチ誘導部73bとクリンチ誘導面75bが夫々近接し、ガイドレール73の上縁からガイド部材75の下方の面がガイドレール73内に僅かに突出するようにハンドル支持部材7に固定されているものである。
【0085】
ハンドル部6は、図13に示したように、ハンドル軸65によってハンドル支持部材7に係着されるハンドル部材61と、ハンドル部材61の前端近傍を補強する補強部材62と、図3に示した押し下げ部5に連結軸66によって連結される押し下げ部連結部材63とを備えるものである。又、連結軸66は、図12に示したように、押し下げ部5の前端近傍である押刃46の上方に位置し、ハンドル軸65は連結軸66よりも前方に位置しているものである。そして、ハンドル部6は、ハンドル軸65を支点とし、連結軸66を力点とし、ハンドル部材61の先端部を力点とした梃子の原理により、押し下げ部5を下方に降下させるものである。
【0086】
このハンドル部材61は、図13に示したように、方形状の平板と、この平板の両側縁から垂下する側壁とから形成され、平板の前端近傍は上方に折り曲げられて折り曲げ部が形成され、側壁の前端は平板の前端よりも前方に突出しており、この側壁の前端にはハンドル軸65が貫挿する軸穴61aが形成され、ハンドル支持部材7のガイドレール73にハンドル軸65によって軸着されているものである。
【0087】
又、補強部材62は、方形状の平板と、平板の両側縁から垂下する側壁と、平板の後端縁が下方に折り曲げられて形成された折り曲げ部とを備え、ハンドル部材61の側壁の外方に補強部材62の側壁を重ねるようにハンドル部材61の前端近傍に配置され、ハンドル部材61の折り曲げ部と補強部材62の折り曲げ部を固定することによりハンドル部材61に固定されているものである。この補強部材62は、ハンドル軸65及び連結軸66が位置しクリンチ時に強い負荷の掛かるハンドル部材61の前端近傍を補強しているものである。
【0088】
更に、押し下げ部連結部材63は、図4に示したように、方形状の平板と、平板の両側縁から垂下する側壁と、平板の前後端縁が折り曲げられて形成された折り曲げ部とを備え、側壁の前下端近傍に連結軸66が貫挿する軸穴を備えるものである。そして、この押し下げ部連結部材63は、補強部材62の下方に配置され、平板の後端側の折り曲げ部が補強部材62の折り曲げ部と共にハンドル部材61の折り曲げ部に固定されているものである。
【0089】
又、押し下げ部連結部材63は、押し下げ部5のハンドル連結部材52を跨ぐように配置されており、ハンドル連結部材52の内側には、図3に示したようにコイル部を二つ有するねじりコイルバネ69が配置され、連結軸66が押し下げ部連結部材63の軸穴とハンドル連結部材52の軸穴とねじりコイルバネ69のコイル部を貫挿して各部材を連結しているものであり、ねじりコイルバネ69がハンドル部6を上方に付勢しているものである。
【0090】
次に、本実施例のステープラ1の動作に関して述べる。図12に示したように、ハンドル部6を開放した状態でテーブル14上に綴る紙等を載置し、図15に示すように、ハンドル部6に上方から力を加えると、ハンドル軸65がガイドレール73内をガイド部材75の昇降誘導面75aに沿って前下方に摺動し、連結軸66が下がるため、押し下げ部5は連結軸66によって押し下げられ、又、マガジン部3も押し下げ部5によって押し下げられて、マガジン部3の前端下方がクリンチ部10のテーブル14と接する。この状態の時には、マガジン部3と押し下げ部材51の間に配置された板バネ45や緩衝バネ49は収縮していない。
【0091】
テーブル14とマガジン部3の前端下方が接した後、更に、ハンドル部6に上方から力を加えると、図16に示すように、ハンドル軸65はガイドレール73内をガイド部材75のクリンチ誘導面75bに沿って前方に摺動し、連結軸66を更に降下させる。この時、係止部材23のスライダ係止部23bとスライダ13が係止していることによりクリンチ部10は下降しないため、マガジン蓋36と押し下げ部材51に挟持されて板バネ45及び緩衝バネ49が収縮し、押刃46が綴針のクラウンが紙面と接するまで綴針を押し下げる。又、板バネ45と一体形成されているスライダ押し部47の先端部が後方に移動しスライダ13の摺動支持部13aと係止してスライダ13を後方に摺動させる。
【0092】
更にハンドル部6に上方から力を加えると、図17に示すように、ハンドル軸65はガイドレール73内の前端近傍で停止し、連結軸66が更に降下するため、板バネ45のスライダ押し部47とスライダ13の摺動支持部13aが係止してスライダ13が後方に摺動し、スライダ13と係止部材23の係止が外れてクリンチ部10が降下し、板バネ45の押刃46と可動クリンチャ15が近接して綴針をクリンチする。
【0093】
又、このクリンチの時、スライダ13と係止部材23の係止状態が外れてテーブル14が急に降下するためハンドル部6にも衝撃が伝わるが、緩衝バネ49が衝撃を吸収することによりハンドル部6に伝わる衝撃は小さくなる。
【0094】
その後、ハンドル部6を開放すると、ハンドル部6は、連結軸66に取付けられたねじりコイルバネ69の力によって上方に回動し、押し下げ部5は、板バネ45と緩衝バネ49の力によって上昇し、マガジン部3はマガジン付勢バネ22によって上昇し、クリンチ部10は、板バネ45のスライダ押し部47とスライダ13の摺動支持部13aとの間の係止が外れるためテーブル付勢バネ20の力によって上昇し、スライダ13は、引っ張りバネの付勢力により元の位置に摺動し、図12に示したように、各部材が元の位置に復帰するものである。
【0095】
本実施例のステープラ1によれば、ハンドル部6を押し下げ部5と押刃46が配置された位置の上方で連結軸66により軸着し、且つ、ハンドル支持部材7のガイドレール73にハンドル軸65によって軸着することによって、ハンドル軸65を可動支点とし、ハンドル部6の後端近傍を力点、連結軸66を作用点とする梃子の原理によって押し下げ部5を降下させる構造とすることにより、梃子の原理を利用しているため荷重低減比であるアシスト比を最適に確保できると共に、支点、力点、作用点の相互距離関係を常に一定とすることができるため、クリンチ時のアシスト比を常に一定とすることができるものである。
【0096】
又、ハンドル支持部材7のガイドレール73を、前下方に向かって延設する昇降誘導部73aと、該昇降誘導部73aの下端から前方僅かに上方に向かって延設するクリンチ誘導部73bとを有する形状とすることにより、クリンチの時に必要な押し下げ距離をアシスト比を一定に保ったまま確保することができる。
【0097】
更に、ハンドル軸65を樹脂製のガイド部材75に沿って摺動させることにより、金属の摩耗を防止することができると共に摩擦力も弱まるため、弱い力でクリンチできると共にステープラの耐久性を上げることもできる。
【0098】
又、マガジン部3と押し下げ部5との間であって、前端近傍の位置に緩衝バネ49を配置することにより、フラットタイプのステープラにおいて特有のスライダ13と係止部材23の係止が外れてクリンチ部10が急激に降下する時に生じる衝撃を緩和することができる。
【0099】
尚、上記実施例は、フラットタイプの卓上型ステープラであるが、ハンドタイプのステープラであっても軽い力で確実に綴ることができるものである。又、本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、実施例において述べた技術を様々な製品に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施例に係るステープラを左前方から見た斜視図。
【図2】本発明の実施例に係るステープラを右後方から見た斜視図。
【図3】本発明の実施例に係るステープラの背面図。
【図4】本発明の実施例に係るステープラの断面図。
【図5】本発明の実施例に係るステープラにおいて一部の部材を取り除いたベース部の斜視図。
【図6】本発明の実施例に係るステープラのクリンチ部の斜視図。
【図7】本発明の実施例に係るステープラにおけるマガジン本体が突出した場合のマガジン部の斜視図。
【図8】本発明の実施例に係るステープラにおけるマガジン部の断面図。
【図9】本発明の実施例に係るステープラにおけるマガジン部の斜視図。
【図10】本発明の実施例に係るステープラにおける後端係止部材の斜視図。
【図11】本発明の実施例に係るステープラにおける押し下げ部の斜視図。
【図12】本発明の実施例に係るステープラの動作を説明する断面図。
【図13】本発明の実施例に係るステープラにおけるハンドル部材及びハンドル支持部材並びに台座部材の斜視図。
【図14】本発明の実施例に係るステープラにおけるガイド部材の斜視図。
【図15】本発明の実施例に係るステープラの動作を説明する断面図。
【図16】本発明の実施例に係るステープラの動作を説明する断面図。
【図17】本発明の実施例に係るステープラの動作を説明する断面図。
【符号の説明】
【0101】
1 ステープラ 2 ベース部
3 マガジン部 5 押し下げ部
6 ハンドル部 7 ハンドル支持部材
10 クリンチ部 11 台座部材
11a 係止穴 11b 軸穴
12 スライダ保持部材 12a 軸固定穴
12b 軸穴 12d バネ係着突起
13 スライダ 13a 摺動支持部
13b 軸可動穴 13c 貫挿穴
13d バネ係着突起 14 テーブル
14a クリンチャ囲繞部 14b 停止突起
14c 切欠き 14d 停止爪
15 可動クリンチャ 16 クリンチャ保持部材
17 摺動支持軸 18 テーブル先端カバー部材
20 テーブル付勢バネ 22 マガジン付勢バネ
23 係止部材 23a クリンチャ係止部
23b スライダ係止部 25 主軸
31 マガジン本体 31a 打出し口
31b 後端係止溝 31c バネ係止突起
31d 固定爪 31e テーパー部
32 マガジン収納部 33 摺動補助部材
33a 貫挿穴 33b バネ係止突起
33c 前方係止壁 35 マガジン受け部材
36 マガジン蓋 36a 切抜き
36b バネ係着部 36c 押刃係止突起
36d ストッパ 37 摺動ツマミ
38 把持部材 41 針押し部材
41a 摺動支持片 43 コイルバネ
44 バネ支持部材 45 板バネ
46 押刃 47 スライダ押し部
47a 板曲部 49 緩衝バネ
51 押し下げ部材 51a 軸穴
52 ハンドル連結部材 52a 軸穴
55 後端係止部材 61 ハンドル部材
61a 軸穴 62 補強部材
63 押し下げ部連結部材 65 ハンドル軸
66 連結軸 69 ねじりコイルバネ
71 固定部 72 ハンドル支持部
73 ガイドレール 73a 昇降誘導部
73b クリンチ誘導部 75 ガイド部材
75a 昇降誘導面 75b クリンチ誘導面
101 後方板 102 把持部
102a 軸穴 103 後端係止部
104 軸着部 106 係止軸
111 L字板 111a 係止軸穴
111b 軸穴 112 連結部
115 ねじりコイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能なクリンチ部を有するベース部と、該ベース部の後端近傍に主軸によって回動可能に軸着されたマガジン部と、前記ベース部の後端近傍に回動可能に取り付けられてマガジン部の上方に配置され且つ前端近傍に押刃を有する押し下げ部と、前記ベース部に固定され前端上方近傍にハンドル軸が摺動するガイドレールを有するハンドル支持部材と、前記押刃が配置された位置の上方で前記押し下げ部に連結軸によって軸着され且つ前記ハンドル支持部材のガイドレールに摺動可能なハンドル軸によって軸着されたハンドル部とを備え、
該ハンドル部は、前記ハンドル軸を可動支点、前記ハンドル部の後端近傍を力点、前記連結軸を作用点とする梃子の原理によって前記押し下げ部を降下させることを特徴とするステープラ。
【請求項2】
前記ハンドル支持部材のガイドレールは、前下方に向かって延設する昇降誘導部と、該昇降誘導部の下端から前方僅かに上方に向かって延設するクリンチ誘導部とを有していることを特徴とする請求項1に記載のステープラ。
【請求項3】
前記ガイドレールの直上に樹脂製のガイド部材を有し、該ガイド部材の下方の面は、前記ガイドレールの昇降誘導部と断面形状を略同一とする昇降誘導面及びクリンチ誘導部と断面形状を略同一とするクリンチ誘導面を備え、前記ガイドレールの上縁から前記ガイド部材の下方の面が前記ガイドレール内に僅かに突出するように配置されて、前記ハンドル軸を前記ガイド部材の下方の面に沿って摺動させることを特徴とする請求項2に記載のステープラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−142937(P2009−142937A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322550(P2007−322550)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(301033282)プラスステーショナリー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】