説明

ストリングのためのバッファ層

薄いバッファ層(303)は、マルチフィラメント(401)で包まれたストリング上でギャップを満たし、被覆するために利用される。バッファ層被覆物のポリマーは、被覆工程の間に、前記フィラメントの間の全てのギャップを満たすための高い溶融流れ(低い粘度)を有しており、前記フィラメントは基礎のコア材料上で被覆によって固定されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリングのためのバッファ層に関している。
【背景技術】
【0002】
本願は米国仮出願第60/866,199号の優先権を主張し、これは参照によりこれによって組み込まれる。
【0003】
スポーツ用品(例えばテニスラケット)、または楽器で用いられるストリングは一般的に、その耐久性、回転、触感などを改善するために一番外側の表面に薄い層が被覆される。ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、及び他のポリマーがストリングを被覆するために用いられている。純ナイロン6よりも良好な物理的特性を有している、クレイ及びカーボンナノチューブ強化ナイロン6ナノ複合材料のようなナノ複合材料は、他の機能性を有する高く耐久力のあるストリング被覆材料となる潜在能力がある。高いアスペクト比を有するナノサイズのクレイ粒子を用いる前記強化高分子複合材料は、1980年代から研究されている(特許文献1を参照)。ストリングは一般的に、コアフィラメント、前記コアフィラメント上のラッピングフィラメント、及び被覆材の多層構造を有するポリマー材料である。多層構造を有する前記ストリングに対して、被覆材料は、基材を調和させ、及び前記ラッピングフィラメントの間のギャップにそれらが浸透することを可能にするために、所定の温度で良好な溶融流れ特性を有することが必要とされる。ナノ複合材料の粘度は、同一の温度で純ナイロン6より高い。このようにして、前記ナノ複合材料は、前記ラップフィラメント間の前記ギャップに容易には浸透し得ない。図1はラッピングフィラメント上に被覆されたナイロン6/クレイナノ複合材料の断面図のSEM画像を示している。前記ナノ複合材料は、前記ギャップを連続的に充填していないことがわかる。多くの欠陥が前記ストリング上に残っており、これは前記ストリングの許されない耐久性をもたらすだろう。前記ギャップは、ボールがヒットする高いインパクトの間に、被覆物の欠落または許されない耐久性をもたらすだろう。さらに、前記ギャップの生成に起因して、被覆物は同様に、前記ストリングの前記コア材料上に前記フィラメントを固定できない。図2は、前記ストリングの高インパクト試験の後のフィラメント及び被覆から欠落した材料を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,739,007号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高分子ナノ複合材料は、純高分子材料よりも高い物理的/機械的特性を有しているにも関わらず、それらは通常的に、押出成形または被覆工程の間に高い粘度または溶融流れを有している。この問題を解決するために、薄いバッファ層は、多重フィラメントで包まれたストリングを被覆するために用いられ、前記ギャップを満たす。前記バッファ層被覆物のポリマーは、前記フィラメントの間の前記ギャップを満たすための被覆工程の間に高い溶融流れ(低い粘度)を有しており、及び前記フィラメントは被覆によって基礎のコア材料上に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ラッピングフィラメント上に被覆されたナイロン6/クレイナノ複合材料の断面図のSEM画像を示している。
【図2】ストリングに高インパクトテストを実施した後のフィラメント及び被覆から欠落した材料のSEM画像を示している。
【図3A】コアフィラメントを取り囲むラッピングフィラメントの断面図を示している。
【図3B】前記ラップフィラメント上に適用されたバッファ層を示している。
【図3C】前記バッファ層上に適用された被覆を示している。
【図4】本発明の他の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(実施例1)ナイロン6バッファ層を有する被覆システム
図3Aは、小径マルチフィラメント302で包まれた一つのモノフィラメントコア301からなる被覆対象のストリングの断面を図示している。UBE Industries Inc.から得られうる(製品名:UBE SF 1018A)のような純ナイロン6ペレットが溶融される。前記バッファ層被覆物303は220℃から270℃の範囲の温度で押出成形工程によって塗布される。前記バッファ層303の厚さは10から100マイクロメートルでありうる。前記マルチフィラメント302の間の前記ギャップは、前記純ナイロン6被覆によって完全に満たされる。
【0008】
耐摩耗性被覆304はそれから、240℃から280℃の範囲の温度で押出成形工程によって被覆される(図3C)。ナイロン6/クレイまたはナイロン6/カーボンナノチューブナノ複合材料は、前記耐磨耗性被覆材料304として用いられうる。その場重合で作られた前記ナイロン6ナノ複合材料は4%のナノクレイ充填物を含有しうる。溶融混合工程によって作り出された他のナイロン6ナノ複合材料は同様に、前記耐磨耗被覆304のために利用されうる。前記クレイを除くと、カーボンナノチューブ、SiO及びAlのようなセラミック粒子、またはガラス粒子は、ナイロン6ナノ複合材料を作るために利用されうる。前記ナイロン6ナノ複合材料は、柔軟性と耐久性を強化するためにゴム重合調整剤によって修飾されうる。前記耐摩耗性被覆の前記厚さは、1から100マイクロメートルでありうる。
【0009】
(実施例2)ナイロン11バッファ層の被覆システム
図3Aを再度参照すると、被覆のための前記ストリングは、小径マルチフィラメント302で包まれた一つのモノフィラメントコア301である。純ナイロン11はARKEMA Inc.から得られうる。ナイロン11は220℃を越える温度で良好な溶融流れを有している。良好なインパクト強さ及びせん断強さは同様に、ナイロン11を良好なバッファ層材料とさせている。図3Bにおいて、前記バッファ層被覆303は190℃から270℃の範囲の温度で押出成形工程によって塗布される。
【0010】
前記バッファ層303の前記厚さは、10から100マイクロメートルでありうる。前記マルチフィラメント302の間の前記ギャップは、前記純ナイロン11被覆で完全に満たされる。
【0011】
図3Cを参照すると、耐磨耗被覆304はそれから、240℃から280℃の範囲の温度で押出成形工程によって被覆される。ナイロン6/クレイまたはナイロン6/カーボンナノチューブナノ複合材料は前記耐摩耗性被覆材料304として利用されうる。その場重合で作られた前記ナイロン6ナノ複合材料は、4%のナノクレイ充填物を含有しうる。溶融混合工程で作られた他のナイロン6ナノ複合材料は同様に、前記耐摩耗性被覆304のために利用されうる。前記ナイロン6ナノ複合材料は同様に、前記柔軟性及び耐久性を強化するためにゴム重合調整剤によって修飾されうる。前記耐摩耗性被覆304の前記厚さは、1から100マイクロメートルでありうる。
【0012】
前記ストリング上に被覆物を堆積するための前記押出成形工程を除いては、噴き付け、ディッピング、スピンコーティング、ブラッシング、塗布、及び浸漬工程が、ストリングの前記表面上に被覆物を堆積するために利用されうる。ナイロン6ナノ複合材料は、190℃より高い温度で溶融され、前記ストリング上に被覆物を堆積するために押出成形される。ナイロン6ナノ複合材料は、ギ酸のような溶媒で溶解され、及び室温で、または段階的な温度で、前記ストリング上に被覆物を堆積するために、噴き付けられ、ディッピングされ、スピンコーティングされ、ブラッシングされ、塗布され、または浸漬されうる。前記溶媒はそれから、蒸発法のような事後工程によって取り除かれる。
【0013】
図4は、本発明の他の実施形態を図示している。本質的に、図3Cの前記被覆されたストリング構造はそれから、小径マルチフィラメント401で再び被覆される。層303と類似のバッファ層被覆物402が190℃から270℃の範囲の温度で押出成形によって塗布される。前記バッファ層402の厚さは、10から100マイクロメートルでありうる。前記マルチフィラメント401の間のギャップは、前記純ナイロン11被覆物によって完全に満たされる。耐磨耗被覆403はそれから、240℃から280℃の範囲の温度で押出成形工程によって被覆される。ナイロン6/クレイまたはナイロン6/カーボンナノチューブナノ複合材料は前記耐摩耗性被覆材料403として用いられうる。その場重合で作られた前記ナイロン6ナノ複合材料は、4%ナノクレイ充填物を含有しうる。溶融混合工程により作られた他のナイロン6ナノ複合材料は同様に、前記耐摩耗性被覆403のために利用されうる。前記ナイロン6ナノ複合材料は同様に、前記柔軟性と耐久性を強化させるためにゴム重合調整剤によって修飾されうる。前記耐摩耗性被覆403の前記厚さは、1から100マイクロメートルでありうる。
【符号の説明】
【0014】
301 モノフィラメントコア
302 小径マルチフィラメント
303 バッファ層
401 小径マルチフィラメント
402 バッファ層被覆物
403 被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリングのための被覆物であって、
コアフィラメントであって、前記コアフィラメントより小径の複数のラッピングフィラメントで包まれたコアフィラメントと、
前記ラッピングフィラメントの間と、前記ラッピングフィラメントと前記コアフィラメントとの間のギャップを充填しているバッファ層被覆物と、
前記バッファ層被覆物、ラッピングフィラメント、及びコアフィラメントを覆う外部被覆物と、
を備えている被覆物。
【請求項2】
前記バッファ層被覆物は、ポリマーを備えている請求項1に記載の被覆物。
【請求項3】
前記バッファ層被覆物は、ナイロンを備えている請求項1に記載の被覆物。
【請求項4】
前記バッファ層被覆物は、ナイロン6を備えている請求項3に記載の被覆物。
【請求項5】
前記バッファ層被覆物は、ナイロン11を備えている請求項3に記載の被覆物。
【請求項6】
前記外部被覆は、ナイロン及びクレイナノ粒子の複合材料を備えている請求項3に記載の被覆物。
【請求項7】
前記外部被覆物は、ナイロン及びカーボンナノチューブの複合材料を備えている請求項3に記載の被覆物。
【請求項8】
前記外部被覆物は、調節剤をさらに備えている請求項6に記載の被覆物。
【請求項9】
ストリングを被覆するための方法であって、
第1の直径を有しているコアフィラメントを、前記第1の直径より小さい第2の直径を有している一つ以上のラッピングフィラメントで包む段階と、
前記一つ以上のラッピングフィラメントの間のギャップ、及び前記ラッピングフィラメントと前記コアフィラメントの間のギャップ内に溶融ナイロンを押出成形させる段階と、
前記一つ以上のラッピングフィラメント及び前記ギャップ内の前記溶融ナイロンを被覆するように、前記ストリングの外周上に被覆物を押出成形させる段階と、
を備えている方法。
【請求項10】
前記溶融ナイロンは、ナイロン6を備えている請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融ナイロンは、ナイロン11を備えている請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記被覆物は、ナイロン及びクレイナノ粒子の複合材料を備えている請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記被覆物は、ナイロン及びカーボンナノチューブの複合材料を備えている請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記被覆物は、ナイロン及びセラミック粒子の複合材料を備えている請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記被物覆は、ナイロン及びガラス粒子の複合材料を備えている請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記被覆物は、1から100マイクロメートル厚さである請求項9に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の被覆物であって、
前記外部被覆の周りに包まれた他の複数のラッピングフィラメントと、
前記他の複数のラッピングフィラメントの間のギャップを満たす他のバッファ層被覆物と、
前記他のバッファ層被覆物の一面を覆う他の外部被覆と、
をさらに備えている被覆。
【請求項18】
前記被覆物は、ナイロン及びガラス粒子の複合材料を備えている請求項3に記載の被覆。
【請求項19】
前記被覆物は、ナイロン及びセラミック粒子の複合材料を備えている請求項3に記載の被覆。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−510400(P2010−510400A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537390(P2009−537390)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/084973
【国際公開番号】WO2008/061229
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】