説明

ストリームデータからの信号の前進及び後退再生

データストリームが、可変長エンコーディングスキームでエンコードされた再生可能な信号データを備えるセグメントを含む。各セグメントは、そのセグメントにおける信号データの長さに関する第1及び第2の情報をも含む。それは、その特定のセグメントにおける信号データの開始及び末尾に対して所定の相対的な位置に格納される。再生の間、再生の前進方向及び後退方向がそれぞれ選択されるとき、特定のセグメントに隣接する次の後続又は先行セグメントにアクセスするために、アクセス位置が計算される。アクセス位置は、それぞれ前進方向又は後退方向が選択されるかどうかに応じて、特定のセグメントからの第1の情報又はその特定のセグメントに先行する隣接セグメントからの第2の情報に基づき計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶媒体に含まれるストリームデータからの信号の再生に一般的に関する。特に、斯かる媒体にデータのストリームを格納する方法及び装置、斯かるストリームを再生する方法及び装置、並びに斯かるストリームを運ぶ媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、格納されたストリームデータを再生する技術を記載する。音声又は映像データ等の信号データを含む格納されたストリームデータは、信号の時間的な連続再生のためのものである(intended)。定期的に配置されるサンプリング時間において取られる、信号の標本の集合等の従来の非圧縮ストリームデータにおいては、所与のサイズのデータフレームが、所定の持続時間の信号を表す。しかしながら、そのストリームを表すのに必要なデータ量を削減するため、データはしばしば可変長圧縮を用いて圧縮される。圧縮されたデータは、フレームに格納され、所定の持続時間のデータを表すが、その長さは、圧縮の量と圧縮後のデータ自身とに依存する。通常、フレームの長さはフレームヘッダ内に示される。これは、正規の順番(order)にフレームを検索(navigate through)することを容易にする。しかしながら、ストリームの再生において任意の、しかし正規の順番でない順番、例えば、逆順(reverse order)にフレームを取得することは難しい。
【0003】
特許文献1は、MP3ストリームが可変長データフレームとヘッダとを含むことを記載する。ヘッダは、互いに一定間隔を置いて発生し、必ずしも直後にフレームの開始(start of a frame)が続くものではない。代わりに、各ヘッダが関連するフレームの開始へのポインタを含む。この場合、ヘッダ間の間隔は固定される(固定ビットレートモード)。そして、ヘッダからヘッダへ一定間隔ジャンプし、かつデータフレームの開始位置を決めるためヘッダからのポインタを使用することにより、前進再生及び後退再生を実現することが可能である。しかしながら、斯かる技術は、編集(フレームの追加又は削除)を複雑にする。ヘッダとフレームとの固定された関係が欠如する場合(可変ビットレートモード)には、取得(retrieval)もまた複雑になる。更に、ヘッダ間の間隔が変化する場合、逆再生(reverse play)する間に問題が生じる。
【0004】
特許文献1は、各フレームが隣接する次のフレームの開始から所定の間隔を空けた位置で開始するよう、そのストリームを一時的に格納することにより、如何にしてこの問題が解決されることができるかを記載する。こうして、フレームの開始アドレスは、ストリームの内容に関する情報なしに前もって算出されることができ、このことは、検索することなく任意の順にフレームを取得することを可能にする。しかしながら、この技術は、追加的な記憶容量(storage space)と、ストリームが再生可能にされる前の格納されたデータストリームを事前処理するための時間とを必要とする。
【0005】
考えられる(possible)別の技術は、フレームの開始アドレスの表を蓄積し、任意の順にフレームの位置を決めるのにこれらのアドレスを用いることである。しかしながら、この技術は、ストリームが編集されるとき(つまり、例えば、フレームがストリームから削除されるか又はストリームに追加されるとき)、その表が更新されなければならないということを意味する。
【特許文献1】PCT特許出願WO 02/086894号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、本発明の目的は、フレームの開始又は開始アドレスの表の検索を必要とすることなく、記憶媒体に含まれるデータのストリームを、任意に選択可能な再生方向へ簡略化して再生することを提供することである。
【0007】
より詳細には、本発明の目的は、再生の間全く検索が必要とされないよう、記憶媒体に含まれるデータのストリームを再生する方法及び装置を提供することである。
【0008】
より詳細には、本発明の別の目的は、再生の間全く検索が必要とされなくなるよう、記憶媒体に含まれるデータのストリームを格納する方法及び装置を提供することである。更に、本発明の別の目的は、再生の間全く検索が必要とされなくなるよう、ストリームが格納される記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特許請求の範囲に記載される方法、装置及び記憶媒体を提供する。本発明によれば、長さ情報の2つの項目が、ストリームデータを格納するストリームの可変長セグメントに含まれる:第1の情報は、ストリームデータの開始に対して所定の(即ち、ストリームデータ依存の)位置にあるセグメントに格納され、第2の情報は、ストリームデータの末尾に対して所定の位置にあるフレームに格納される。セグメントは、例えば、信号データを伴う可変長フレームを含むフレーム又はフレームのグループであり、信号データを伴うフレームの長さに関する情報を備えるフレームにより後続される。
【0010】
前進再生の間、第1の情報は、次のセグメントの開始位置を決めるために読み出され、使用される。後退再生の間、特定のフレームがアクセスされると、隣の(next)先行セグメントの末尾が、その「隣の先行セグメント」から第2の情報を取得するためにアクセスされ、「隣の先行セグメント」の開始位置を決めるために使用される。好ましくは、ストリームが前進方向又は後退方向に再生される間、ストリームデータはレンダリングされる(例えば、映像データとして表示され、又は音声データとして聴覚的に再生される)。しかしながら、本書において使用される「再生(replay)」という用語は、同時のレンダリングに限定されるものではない。例えば、データの再生の後に、その場でレンダリングされることなく再生されたそのデータを格納することが続くことも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における、これら及び他の目的並びに有利な側面は、以下の図面を用い、非限定的な例示を介して一層詳細に説明されることになる。
【0012】
図1は、ストリーム再生装置を示す。その装置は、カスケード結合される、記憶デバイス10(例えば、テープドライブ又はディスクドライブ)、読み出し制御デバイス12、デコーダ14及びレンダリングデバイス16を含む。動作時において、読み出し制御デバイス12は、データのストリームを表す、格納済みデータから選択されたデータを取得するため、記憶デバイス10にアドレスを送信する。記憶デバイス10は、アドレス指定された(addressed)データを取得し、それを読み出し制御デバイス12に送る。制御デバイスは、エンコードされたストリームデータをデコーダ14に送信する。デコーダは、ストリームデータをデコードし、そのデコードされたデータをレンダリングデバイス16に渡す。レンダリングデバイスは、例えば音声信号又は映像信号の形式でそのデータをレンダリングする。
【0013】
図2は、記憶デバイス10に格納されるストリーム20を象徴的に(symbolically)示す。データは、フレーム22a−dに格納され、通常の再生の間における再生の時間的なシーケンスに従って左から右へ表現されている。図示されるように、フレーム22a−dは、エンコードされたデータに基づき互いに異なる長さを持つことができる。例えば、音声ストリームの場合、各フレームは、音声信号の所定の時間間隔に対応することができる。そのフレーム長は、その時間間隔の間に、圧縮されたデータを含む音声信号を表すのに必要なデータ量に依存する。
【0014】
各フレーム22a−dは、フレーム22a−dの開始と末尾とに対して所定の間隔の位置にそれぞれ格納される、2つのレングスコード(length code)を含む。フレームの開始と第1のレングスコードの格納位置との所定の関係は、矢印24で表される(symbolized)。フレームの末尾と第2のレングスコードの格納位置との所定の関係は、矢印26で表される。説明のために、フレームの開始位置と終了位置との間に固定サイズの隙間(gap)が示されるが、フレームは通常、先行フレーム22a−dの末尾と各フレーム22a−dの開始とが直接隣接して格納されることは理解されるであろう。
【0015】
レングスコードは、長さをバイトで直接表す数字、又はより大きなユニット、例えば、32若しくは64ビットワードの観点からの長さといった、いずれの形式をも取ることもできる。また、変換表において長さのエントリを参照するレングスコードが使用されること等もできる。同様に、ジャンプアドレスとそのジャンプアドレスが格納されるアドレスとの差から間接的に長さが続く(follow)よう、絶対ジャンプアドレスが使用されることもできる。信号データの開始と終了との間での任意の所定の位置関係が使用されることができる。例えば、いずれかの信号データに常に先行又は後続する固定長の情報項目の直前又は直後といった位置関係である。好ましくは、所定の位置関係は、任意のレングスコードとそのレングスコードにより表現される信号データとの間に、他のレングスコードにより表現される他の信号データが存在しないよう選択される。これは、信号データとレングスコードとを伴うストリームの自己完結型の密着したセグメントを追加又は削除することにより編集することを容易にする。
【0016】
追加的な実施形態において、ストリーム20は、信号データを伴うフレームと補助的なデータを伴うフレームとを含む様々なタイプのフレームから構成されることができる。この場合、少なくともフレームの第2のレングスコードが、専用のフレームに格納されることができ、それは、信号データを伴う次なるフレームの末尾のちょうど前に毎回起こる。本実施形態において、第1のレングスコードは、信号データの各フレームのヘッダ、又は別々のフレームに同様に格納されることができる。また、第2のレングスコードを伴うフレームにより後続される、信号データを伴う可変長フレームのグループが使用されることができる。しかし、斯かるフレームがない場合、そのグループの異なるフレーム間でレングスコードを伴うことになる。こうして、グループを含むセグメントを一度に越えるジャンプが実現されることができる。
【0017】
フレームは(信号データとレングスとを両方備えるフレームであるか又は信号データとレングスコードとを別々に備えるフレームの混合であるかに関係なく)、暗号化と復号化とのブロックにグループ分けされることができる。好ましくは、可変長フレームを可変個数含むことができる固定長のブロックが使用される。この場合、好ましくは、信号データがブロックに含まれるとき、両方のレングスコードも同様にブロックに含まれることが確実にされる。こうして、編集(ブロックの追加及び削除)が、再生性(reproducibility)に影響を与えることなくブロックレベルで行われることができる。
【0018】
図3は、ストリームの再生のフローチャートを示す。第1のステップ31において、読み出し制御デバイス12は、現在のフレーム22a−dの開始位置を決定し、方向制御信号(例えば、ユーザ制御入力より受信される)を検出する。第2のステップ32において、読み出し制御デバイスは、前進再生又は後退再生が必要かどうかを検査する。方向制御信号が前進再生読み出しを示す(signal)とき、制御デバイス12は、第3のステップの第1バージョン33aを実行する。そこでは、制御デバイスが、現在のフレーム22a−dに含まれる第1のレングスコードを、その現在のフレーム22a−dの開始に対して所定の位置から読み出す。方向制御信号が後退再生を示すとき、読み出し制御デバイス12は、第3のステップの第2バージョン33bを実行する。そこでは、制御デバイスが、現在のフレーム22a−dに直接に先行するフレーム22a−dに含まれる第2のレングスコードを、その現在のフレーム22a−dに直接に先行するフレームの末尾に対して所定の位置から読み出す。現在のフレームの開始と、それに直接に先行するフレームの末尾との間には一定の関係があるので、現在のフレームの開始とそれに直接に先行するフレームに含まれる第2のレングスコードの位置との間にも所定の関係が存在する。この関係は、第2のレングスコードを取得するのに使用されることができる。
【0019】
第4のステップ34において、読み出し制御デバイス12は、現在のフレームとなることになる次のフレームの開始位置を決定するため、取得されたレングスコードを使用する。即ち、選択された再生方向に応じて、次の後続フレーム又は現在のフレームに対して直接に先行するフレームの開始位置を決定するため、第1又は第2のレングスコードを用いる。読み出し制御デバイス12は、このフレームを読み出し、そのフレームからエンコードされたデータを、デコーダ14にデコード処理のため与える。この後、フローチャートは第1のステップから繰り返す。
【0020】
これは、通常の速度での再生の場合である。より高速での再生が必要とされるときは、フレームをスキップする必要があるかもしれない。その場合、読み出し制御デバイス12は、フレームのうち選択されたものからのみエンコードされたデータを読み出す。
【0021】
図4は、データのストリームを格納する装置を示す。装置は、ストリームソース40、エンコーダ42、書き込み制御ユニット44及び記憶デバイス46を含む。動作時には、ソース40は、ストリームを提供する。エンコーダ42は、可変長のフレームにおけるストリームをエンコードし、フレームデータと長さデータとを書き込み制御デバイス44に出力する。書き込み制御デバイス44は、記憶デバイス46がそのフレームデータだけでなく、各フレームが伴う少なくとも2つのレングスコードを格納することをもたらす。第1のレングスコードは、そのフレームの開始に対して所定の位置にあり、第2のレングスコードは、そのフレームの末尾に対して所定の位置にある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ストリーム再生装置を示す図である。
【図2】ストリームを象徴的に示す図である。
【図3】ストリームを読み出す方法のフローチャートを示す図である。
【図4】ストリーム格納装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データのストリームにエンコードされた信号を再生する再生装置であって、
記憶媒体からデータを読み出すための前記記憶媒体へのインタフェースであって、該記憶媒体が可変長のデータのセグメントを格納し、各特定のセグメントは、可変長エンコーディングスキームでエンコードされた前記ストリームからの再生可能な信号データを含み、前記特定のセグメントに含まれる前記信号データの長さに関する第1及び第2の情報が、前記特定のセグメントにおける前記信号データの開始と末尾とに対して所定の相対的な位置に格納される、インタフェースと、
再生の方向の選択を受信する制御入力と、
前進方向及び後退方向がそれぞれ選択されるとき、特定のセグメントに隣接する次の後続セグメント又は先行セグメントにアクセスするための前記記憶媒体におけるアクセス位置を計算するようなされるアクセス位置計算ユニットであって、該計算ユニットが、前記前進方向又は前記後退方向がそれぞれ選択されるかどうかに応じて、前記特定のセグメントからの前記第1の情報又は前記特定のセグメントに先行する前記隣接セグメントからの前記第2の情報に基づき前記アクセス位置を計算する計算ユニットとを有する装置。
【請求項2】
選択可能な再生方向に信号データを再生するため、記憶媒体に格納されたストリームデータから前記信号データを読み出す方法であって、前記ストリームデータが、可変長のセグメントのシーケンスとして前記記憶媒体に格納され、各特定のセグメントは、可変長エンコーディングスキームでエンコードされた再生可能な信号データを有し、前記特定のセグメントに含まれる前記信号データの長さに関する第1及び第2の情報が、前記特定のセグメントにおける前記信号データの開始と末尾とに対して所定の相対的な位置に格納され、前記方法は、前進再生方向及び後退再生方向にそれぞれ再生する間のアクセス位置を計算するのに隣接するセグメントにアクセスするため、前記第1及び第2の情報を取得することを有する方法。
【請求項3】
再生可能な信号データを含むストリームデータを記憶媒体に格納する方法であって、前記ストリームデータが、可変長のセグメントのシーケンスを有し、各セグメントは、可変長エンコーディングスキームでエンコードされた信号データを有し、前記方法が、前記特定のセグメントにおける各特定のセグメントでの前記信号データの長さに関する第1及び第2の情報を、前記各特定のセグメントにおける前記信号データの開始及び末尾に対して所定の相対的な位置にそれぞれ格納することを有する方法。
【請求項4】
個別に復号化可能な所定長のブロックで前記ストリームを暗号化し、各ブロックに前記セグメントの1以上となる番号をそれぞれ含めることを有し、前記それぞれの番号が、前記セグメントの長さに応じて選択され、各特定のブロックは、前記特定のブロックにおけるすべてのセグメントの前記第1及び第2の情報を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各セグメントに複数のフレームを格納し、信号データを備える可変長の第1のフレームと、前記第2の情報を備え前記第1のフレームに続く第2のフレームとを含めることを有する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
再生可能な信号データを含むストリームデータを記憶媒体に格納する装置であって、前記ストリームデータが、可変長のセグメントのシーケンスを有し、各セグメントは、可変長エンコーディングスキームでエンコードされた信号データを有し、前記装置が、前記特定のセグメントにおける各特定のセグメントでの前記信号データの長さに関する第1及び第2の情報を、前記特定のセグメントにおける前記信号データの開始及び末尾に対して所定の相対的な位置にそれぞれ格納するようなされる装置。
【請求項7】
時間連続的な再生に関する信号データを含むストリームデータを運ぶ媒体であって、前記ストリームが、可変長のセグメントのシーケンスを有し、各セグメントは、可変長エンコーディングスキームでエンコードされた信号データを有し、各特定のセグメントが、前記特定のセグメントにおける前記信号データの長さに関する第1及び第2の情報を、前記特定のセグメントの前記信号データの開始及び末尾に対して所定の相対的な位置にそれぞれ含む媒体。
【請求項8】
個別に復号化可能な暗号化された所定長のブロックを有し、それぞれ前記セグメントの個別の番号を含み、各ブロックが、前記ブロックに含まれるすべてのセグメントの第1及び第2の情報を含む、請求項7に記載の媒体。
【請求項9】
各セグメントに複数のフレームを有し、各セグメントにおける前記フレームが、信号データを備える可変長の第1のフレームと、前記第2の情報を備え前記第1のフレームに続く第2のフレームとを含む、請求項7に記載の媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−509457(P2007−509457A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536226(P2006−536226)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052049
【国際公開番号】WO2005/041190
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】