説明

ストレイナー装置

【課題】構造が簡単でコスト低減できるとともに、摩耗等によるガタも生じにくく小さな力で容易且つ安定して操作でき、スナッピーにも負担を掛けず、優れた操作感を維持できるストレイナー装置を提供せんとする。
【解決手段】操作レバー4の基端側をベース体2に軸部60を介して回動可能に枢支し、スナッピー保持体3における操作レバー4の軸部60よりも下側部位に一端側5aが回動可能に連結され且つ操作レバー4の基端部40から先端側に所定距離離間した途中位置に他端側5bが同じく回動可能に連結されるリンク5を設け、操作レバー4が上方へ回動することによりリンク5を介してスナッピー保持体3がベース体2に対して上方へ引き上げられ、操作レバー4が下方へ回動することにより同じくリンク5を介してスナッピー保持体3が下方へ押し下げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スネアドラムのスナッピー端部を支持するとともにドラムヘッドに対するスナッピーの接触/非接触状態を切り換えるためのストレイナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スネアドラムは、上側ドラムヘッド及び下側ドラムヘッドがフープを介して胴本体の両端面を塞ぐように設けられ、これらドラムヘッドの張りを調整するためのヘッド調整装置が上側フープと下側フープとを連結するように等角度間隔をおいて複数個設けられており、胴本体の180°対向する位置に設けたストレイナー装置により複数本のスナッピーワイヤよりなるスナッピーを下側ドラムヘッドに接触/非接触するように切り換え可能に保持したものである。
【0003】
このようなスナッピーを保持するためのストレイナー装置としては、従来、胴本体の外周面に固定されたベース体と、このベース体に対して上下移動自在に取付けられたスナッピー保持体と、このスナッピー保持体を前記ベース体に対して進退移動させ前記スナッピーの可動側端部を下側ドラムヘッドに対して接触または非接触させるスイッチ機構と、前記スナッピー保持体を同じく前記ベース体に対して進退移動させ前記スナッピーの張力を微調整する張力調整ねじ等で構成されたものが提供されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
特にスナッピー保持体を移動させてスナッピーの接触/非接触を切り換えるスイッチ機構については、上記特許文献1ではカム機構として、スイッチレバーを回動させると円形カムが移動し、カム孔を介してスライドプレートがスナッピー保持体とともに下降し、スイッチレバーを逆に回動させると、円形カムおよびカム孔を介してスライドプレートがスナッピー保持体とともに引上げられる機構が提案されている。しかしながら、このようなカム機構はカム孔との間に集中荷重が作用して摩耗等によりガタが生じやすく、操作感が低下する原因となる。また接触/非接触時の位置姿勢が機構上不安定となり、上昇(接触)の状態におけるスイッチレバーの移動許容量が少なく、少しのレバーの移動で容易に非接触状態になってしまう構造であった。
【0005】
また、特許文献2ではスイッチ機構をリンク機構としており、スイッチを上方へ操作すると回動するスイッチに連結されたリンクが上端に連結されたスナッピー保持体の軸を上方へ押し上げる方向へ移動し、間接的にスライド部材を介してスナッピーを接触状態とする機構が提案されている。しかし、このリンク機構は、レバーに連結されたリンクを押し上げてスナッピー保持体を上方向に移動させるものであり、押し上げ当初に軸からスナッピー保持体に作用する斜め方向の力が大きいため、上記カム機構と同様、ガタが生じやすく操作感が低下する原因となるほか、同じく押し上げ当初に斜め方向に作用することから操作に必要な力が大きくなり操作者に負担を与えることとなる。
【0006】
また、スナッピー保持体を上下移動させる代わりに、レバー部材に張設ロッドを設け、切替レバーを時計方向に所定角度回動させると張設ロッドが下降して胴本体に接近しスナッピー連結部材を緊張状態から解放し、アーム部材の斜面の後端側に接触する結果、スナッピーが緊張状態から解放されて自重により下降するような機構が提案されている(特許文献3参照)。しかし、このような機構は構造が複雑であるとともにスナッピー紐に張設ロッドが直接当接するのでスナッピー紐の負担も大きくなるといった問題があった。
【0007】
【特許文献1】実開平7−39093号公報
【特許文献2】特開2005−331922号公報
【特許文献3】特開2005−227660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、構造が簡単でコスト低減できるとともに、摩耗等によるガタも生じにくく小さな力で容易且つ安定して操作でき、スナッピーにも負担を掛けず、優れた操作感を維持できるストレイナー装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の課題解決のために、ドラムの胴本体側に固定されるベース体と、該ベース体に対して上下スライド自在に係合され、且つ下端側にスナッピーが連結されるスナッピー保持体と、該スナッピー保持体を前記ベース体に対して上下スライド移動させ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して接触/非接触状態に切り換えるための操作レバーとを備えたストレイナー装置であって、前記操作レバーの基端側を、前記ベース体に軸部を介して回動可能に枢支するとともに、前記スナッピー保持体における前記操作レバーの軸部よりも下側部位に一端側が回動可能に連結され、且つ前記操作レバーの基端部から先端側に所定距離離間した途中位置に他端側が同じく回動可能に連結されるリンクを設け、前記操作レバーが上方へ回動することにより前記リンクを介してスナッピー保持体がベース体に対して上方へ引き上げられ、前記操作レバーが下方へ回動することにより同じくリンクを介してスナッピー保持体が下方へ押し下げられることを特徴とするストレイナー装置を構成した。
【0010】
ここで、前記リンクを外側に湾曲して設けるとともに、前記操作レバーの上方への回転動作に伴い、前記リンク他端側の操作レバーとの連結点が、前記リンク一端側の前記スナッピー保持体との連結点と前記操作レバー基端側の枢支点とを通る仮想線上のデッドポイントを超えてベース体中心軸側へ移動し、スナッピーから前記リンクを介して受ける反発力の方向が変化して操作レバーが戻らない安定姿勢となるように構成することが好ましい。
【0011】
また、前記ベース体の内部に、縦方向に沿って前記スナッピー保持体を係合状態でスライド可能に案内する案内溝を形成し、該案内溝内部に弾性部材を突設するとともに前記スナッピー保持体の前記案内溝に対向する側面に前記弾性部材を上下方向に相対移動可能に受け入れる縦長の凹溝を設け、前記操作レバーが上方へ回転して前記連結点が前記デッドポイントとなる位置で、前記弾性部材が前記凹溝の下端壁に当接して変形し、前記連結点がデッドポイントを超えた前記安定姿勢で、前記弾性部材の変形が一部または全て回復した状態で前記凹溝の下端壁に当接し、前記操作レバーが下方へ回転してスナッピー保持体が押し下げられた下方位置で、前記弾性部材が前記凹溝の上端壁に当接してなるものが好ましい。
【0012】
また、前記ベース体の内部に、縦方向に沿って前記スナッピー保持体を係合状態でスライド可能に案内する案内溝を形成するとともに、該案内溝に連通して外側方に開口する縦溝を設け、前記スナッピー保持体の移動に伴い前記縦溝内を前記リンクが回動しながら移動するように構成することが好ましい。
【0013】
さらに、前記スナッピー保持体の下側部位に、前記縦溝内部に向けて突起するブラケット片を設け、該ブラケット片に前記リンクの一端側を回動可能に連結することが好ましい。
【0014】
また、前記スナッピー保持体を、下端側にスナッピーが止着されるスナッピー保持部材と、該スナッピー保持部材に対し張力調整ボルトを介して上下に相対移動可能に外装されるとともに前記リンク一端側が回動可能に連結されるスライド部材とより分割構成することが好ましい。
【0015】
また、前記スライド部材を、前記張力調整ボルトを貫通させる通孔が設けられた上壁を有するとともに一側方及び下方にわたり開放された収納溝を有する断面視略コ字形の合成樹脂製の部材で構成するとともに、該コ字形に開放された収納溝内に前記スナッピー保持部材を上下に相対移動可能に係合し、さらに該スライド部材の前記開放された一側方と反対側の側壁に前記リンクの一端側が連結されるブラケット片を突設することが好ましい。
【0016】
前記スナッピー保持部材に対し、上方から前記スライド部材の通孔を貫通し、且つ両者を互いに離間する方向に付勢するコイルスプリングを介装した張力調整ボルトを螺合し、該張力調整ボルトの回転により両者の上下相対位置を微調整可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上にしてなる本願発明に係るストレイナー装置によれば、操作レバーとリンクによる簡単な構造でスイッチ機構を安価に提供できるとともに、操作レバーを上方に回動させる場合、該レバーに連結されたリンクによりスナッピー保持体をほぼ真上方向に引き上げることができ、従来のリンク機構により斜め上に押し上げる構造のものとは違い、少ない力で容易に操作でき、スナッピー保持体とベース体との間にガタが生じることもなく優れた操作感を維持できる。そしてスナッピー接触状態においては、レバーが誤って少し移動しても許容量が大きく容易に非接触状態にはならず、接触状態を安定して維持できる。また、反対に操作レバーを下方に回動させる場合も、リンクによりスナッピー保持体をほぼ真下に押し下げることができ、重力も作用してスナッピー保持体はスムーズに下降することとなる。
【0018】
また、リンクを外側に湾曲して設けるとともに、操作レバーの上方への回転動作に伴い、前記リンク他端側の操作レバーとの連結点が、前記リンク一端側の前記スナッピー保持体との連結点と前記操作レバー基端側の枢支点とを通る仮想線上のデッドポイントを超えてベース体中心軸側へ移動し、スナッピーから前記リンクを介して受ける反発力の方向が変化して操作レバーが戻らない安定姿勢となるように構成したので、スナッピー接触状態において演奏中に誤って操作レバーに手が触れても簡単にはレバーが下がらず安心して演奏に集中できるとともに、上方へ回動させる際の操作感、安定感が著しく向上する。
【0019】
また、前記ベース体の内部に、縦方向に沿って前記スナッピー保持体を係合状態でスライド可能に案内する案内溝を形成し、該案内溝内部に弾性部材を突設するとともに前記スナッピー保持体の前記案内溝に対向する側面に前記弾性部材を上下方向に相対移動可能に受け入れる縦長の凹溝を設け、前記操作レバーが上方へ回転して前記連結点が前記デッドポイントとなる位置で、前記弾性部材が前記凹溝の下端壁に当接して変形し、前記連結点がデッドポイントを超えた前記安定姿勢で、前記弾性部材の変形が一部または全て回復した状態で前記凹溝の下端壁に当接し、前記操作レバーが下方へ回転してスナッピー保持体が押し下げられた下方位置で、前記弾性部材が前記凹溝の上端壁に当接してなるので、操作レバーを上げてデッドポイントを過ぎるとスナッピー保持体が若干下がって安定姿勢となるが、弾性部材が下端壁に当接しているためにガタつかず演奏に影響を与えることがない。また、デッドポイントで弾性部材が変形した後に回復して前記安定姿勢となるため、再度弾性部材を変形させなければ操作レバーが下がらないことから演奏中に誤って操作レバーに手が触れても簡単にはレバーが下がらず安心して演奏に集中できるとともに、上方へ回動させる際の操作感、安定感がさらに向上する。また、操作レバーを下方に回転させてスナッピー保持体が押し下げられたスナッピー非接触状態の下方位置においても弾性部材が上端壁に当接しているためガタづかず演奏に影響を与えることがない。
【0020】
また、ベース体の内部に、縦方向に沿って前記スナッピー保持体を係合状態でスライド可能に案内する案内溝を形成するとともに、該案内溝に連通して外側方に開口する縦溝を設け、前記スナッピー保持体の移動に伴い前記縦溝内を前記リンクが回動しながら移動するように構成したので、結果的に簡単な構造でスナッピー保持体をスムーズに移動させるリンク機構を実現でき、外観性も向上する。
【0021】
また、スナッピー保持体の下側部位に、縦溝内部に向けて突起するブラケット片を設け、該ブラケット片に前記リンクの一端側を回動可能に連結したので、ブラケット片やリンク連結部が外部から隠れ、優れた外観性を維持できる。
【0022】
また、スナッピー保持体を、下端側にスナッピーが止着されるスナッピー保持部材と、該スナッピー保持部材に対し張力調整ボルトを介して上下に相対移動可能に外装されるとともに前記リンク一端側が回動可能に連結されるスライド部材とより分割構成したので、スナッピー接触後の張りの微調整の機構をこれら部材間を相対移動させる簡単な構造で実現できる。
【0023】
また、スライド部材を、張力調整ボルトを貫通させる通孔が設けられた上壁を有するとともに一側方及び下方にわたり開放された収納溝を有する断面視略コ字形の合成樹脂製の部材で構成するとともに、該コ字形に開放された収納溝内に前記スナッピー保持部材を上下に相対移動可能に係合し、さらに該スライド部材の前記開放された一側方と反対側の側壁に前記リンクの一端側が連結されるブラケット片を突設したので、当該合成樹脂製のスライド部材によりスナッピー保持体がベース体に対して摩擦抵抗が少なくスムーズに移動できるとともに、該スライド部材の収納溝に係合するスナッピー保持部材も相対位置をスムーズに微調整できる。
【0024】
また、スナッピー保持部材に対し、上方から前記スライド部材の通孔を貫通し、且つ両者を互いに離間する方向に付勢するコイルスプリングを介装した張力調整ボルトを螺合し、該張力調整ボルトの回転により両者の上下相対位置を微調整可能としたので、張力調整ボルトを回転させる際、コイルスプリングの付勢力により張力調整ボルト、スライド部材及びスナッピー保持部材がガタつかず安定した一体的姿勢のまま徐々に上下相対位置を微調整でき、スムーズな操作感を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明に係るストレイナー装置の全体構成を示す斜視図、図3は該ストレイナーをドラム胴本体に取り付けた使用状態を示す説明図であり、図1〜9は第1実施形態、図10〜14は第2実施形態を示し、図中符号1はストレイナー装置、2はベース体、3はスナッピー保持体、4は操作レバー、5はリンクをそれぞれ示している。
【0027】
まず、図1〜9に基づき、第1実施形態を説明する。
【0028】
ストレイナー装置1は、図1〜図3に示すように、ドラムの胴本体100側に固定されるベース体2と、該ベース体2に対して上下スライド自在に係合され、且つ下端側にスナッピー102が連結されるスナッピー保持体3と、該スナッピー保持体3をベース体2に対して上下スライド移動させ、スナッピー102をドラムヘッド101に対して接触/非接触状態に切り換えるための操作レバー4とを備えている。
【0029】
そして、図5及び図9にも示すように、操作レバー4の基端側をベース体2に軸部60を介して回動可能に枢支するとともに、前記スナッピー保持体3における操作レバー4の軸部60よりも下側部位に一端側5aが回動可能に連結され、且つ操作レバー4の基端部40から先端側に所定距離離間した途中位置に他端側5bが同じく回動可能に連結されるリンク5を設け、図9の状態から操作レバー4が上方へ回動することにより、リンク5を介してスナッピー保持体3がベース体2に対して上方へ引き上げられ、逆に図5の状態から操作レバー4が下方へ回動することにより、同じくリンク5を介してスナッピー保持体3が下方へ押し下げられるように構成されていることを特徴とする。
【0030】
なお、本発明に係るストレイナー装置1は、従来からのスネアドラムに広く用いることができ、本実施形態のようにドラム胴本体に直接取付けてもよいし、或いは胴本体から離して設けたフローティングタイプとしてもよい。また、ストレイナー装置1により保持するスナッピー(響き線、Snare Wire)も従来公知のものを広く適用できる。本例では図3に示すように一対のスネアプレート103の間に金属製のコイル等からなるスナッピーワイヤ104を複数本平行に設け、スネアプレート103に取付けられたテープまたは紐105をドラムヘッド縁部のフープ106に開設されているスリットを通して引き出し、スナッピー保持体3の下端部に止着したものであり、スネアプレート103がスナッピーワイヤ104とともに下側ドラムヘッド101に接触する「内面当たり」タイプを例示しているが、スナッピーの構造、張り方は何ら限定されず、スナッピーワイヤの端部とスネアプレートがフープの外側に引き出された「全面当たり」タイプとしてもよい。
【0031】
ベース体2は、図8にも示すように2つ割りの金属製の分割ハウジング20、21を合着して構成され、合着された内部に縦方向に沿ってスナッピー保持体3を係合状態でスライド可能に案内する案内溝22が形成されている。また、該案内溝22に連通して外側方に開口する縦溝23が設けられており、この縦溝23内をスナッピー保持体3の上下移動に伴いリンク5が回動しながら移動するように構成されている。ベース体2は金属製とされているが強度を有すれば樹脂その他の素材で構成してもよい。また2つ割りの分割ハウジングで構成する以外にケース本体と蓋とからなる構造やその他の構造を採用することも勿論可能である。
【0032】
図6に示すように、縦溝23を構成している各分割ハウジング20,21の溝内壁における互いに対向する上側位置には、筒状部24,25が内方に突設され、分割ハウジング20から筒状部24,25を貫通し他方の分割ハウジング21に螺合される取付ボルト27、及び他のボルト27A,27Bにより、分割ハウジング20,21が互いに合着されると同時に、筒状部24の先端開口部に段差状に形成された凹部28内に操作レバー4基端側の筒状摺動部26を係入させて筒状部24,25間に挟み込むことにより該操作レバー4基端側を回動可能に枢支する軸部60が構成されている。このような軸部60により操作レバー4は安定かつスムーズに回動可能となるが、このような軸部60は縦溝23内に設ける以外に、例えばベース体2の外側に設けてもよい。
【0033】
スナッピー保持体3は、下端側にスナッピー紐105を止着するスナッピー止着部70を設けたスナッピー保持部材7と、該スナッピー保持部材に対し張力調整ボルト71を介して上下に相対移動可能に外装されるとともに前記リンク一端側が回動可能に連結されるスライド部材8とより分割構成されている。これにより操作レバー4の操作でスナッピーをドラムヘッドに接触させた状態において、さらに上記張力調整ボルト71を回してその張り具合を微調整できるように構成されている。
【0034】
スナッピー保持部材7は、金属製の略直方体形状の本体下端に左右に延びるスナッピー止着部70を設けた略T字形状に構成されており、スナッピー止着部70にはスナッピー紐を挟み込んで止着する止着プレート76が2本の締付け角ボルト77,77により固定されている。また、上方から軸方向に沿って張力調整ボルト71が挿通される有底のボルト挿通孔72が形成され、内部に後述するスライド部材8の上壁80を上方から貫通した張力調整ボルト71が螺合するナット75が挿着されている。スナッピーを保持する強度があれば合成樹脂その他の素材で構成することもできる。
【0035】
より詳しくは、ボルト挿通孔72の上端開口部には、対面するスライド部材8の上壁80内面に当接して両者の間を押し広げるように付勢する第1のコイルスプリング73が装着される第1の拡径空間S1が形成されている。また、途中部には、前記ナット75を回転不能に装着できるとともに該ナット75を上方に付勢する第2のコイルスプリング74が装着される第2の拡径空間S2が側方に開口して形成されており、張力調整ボルト71を回転させる際、コイルスプリング73,74の付勢力により張力調整ボルト71、スライド部材8及びスナッピー保持部材7がガタつかず安定した一体的姿勢のまま徐々に上下相対位置を微調整できるように構成されている。尚、ナット75を設けることなく、ボルト挿通孔72に直接張力調整ボルト71が螺合する雌ネジ部を形成して構成することも可能である。
【0036】
一方のスライド部材8は、合成樹脂の成形体であり、一側方及び下方にわたって開放される収納溝81が設けられることにより断面視略コ字形に構成されており、その上壁80には、収納溝81内に係合したスナッピー保持部材7に螺合する張力調整ボルト71を上方から通すための通孔80aが穿設されている。また、スライド部材8の前記開放された一側方と反対方向の側壁82の下側部位には、リンク5の一端側5aが連結されるブラケット片83が突設されており、該ブラケット片83及びリンク5の少なくとも一端側がベース体2の縦溝23内を上下に移動することとなる。スライド部材8は、金属その他の素材で構成することもできるが、本例のように合成樹脂製とすることで軽量化やベース体2との摺動性能の向上を図ることが好ましい。
【0037】
スライド部材8のブラケット片83と操作レバー4の途中位置には、それぞれリンク5の一端側5a及び他端側5bがそれぞれ回動可能に枢支される軸部61,62が設けられている。各軸部61,62は、ブラケット片83及び操作レバー4に対してT字状に2方向に突設されており、外側に湾曲した同一形状の2本のリンク5,5が、各々同じ側に突出した軸部間を連結するように設けられている。リンク5は2本で構成する以外に、1本のみで構成したものや3本以上で構成してもよい。
【0038】
リンク5は上記のとおり外側に湾曲した形状に構成されているため、操作レバー4を上方へ回転させた際には、リンク他端側5bの操作レバー4との連結点(軸部62)が、リンク一端側5aのブラケット片83との連結点(軸部61)と操作レバー基端側の枢支点である軸部60とを通る仮想線上のデッドポイントを超えてベース体中心軸側へ移動し、スナッピー102からリンク5を介して受ける反発力の方向が変化して操作レバー4が戻らない安定姿勢となる。これは湾曲形状によりリンク5が軸部60に当接せずに逃げるため可能となるが、湾曲形状以外でも可能であり、くの字に屈曲した形状や軸部60を逃がす形状、例えば溝等を設けたものでもよい。
【0039】
ベース体2の分割ハウジング20の外面側には、取付台29が一体的に設けられており、胴本体100に形成した通孔100aに内面側から取付ネジ107を挿通して前記取付台29のネジ孔29aに螺合することで該ベース体2、すなわちストレイナー装置1が胴本体100の表面上に固定される。また、該ストレイナー装置1とドラムヘッド中心に対して180度対称の位置には、調整機構等を有しない図4に示すストレイナー11が同じく胴本体100表面上に固定される。ストレイナー装置1のスナッピー止着部70及びストレイナー11に構成されている同様の止着部には、フープ106のスリットより引き出されたスナッピー102両端のスナッピー紐105がそれぞれ止着され、スナッピー102がドラムヘッド101表面上に張設される。このように本例ではストレイナー装置1でスナッピーの接触/非接触の切り替え操作や微調整の機能を担うように構成したが、ストレイナー11にも微調整機能を備えさせたものや、ストレイナー11の代わりに同じくストレイナー装置1を設けることもできる。
【0040】
本例では、一方に設けたストレイナー装置1の操作レバー4でスナッピー102の張り状態(接触/非接触)の切り換えが行われる。スナッピー102の音響効果を使用せずに演奏するときは操作レバー4によりスナッピー保持部材7を下方向に移動させてドラムヘッド101に対し非接触状態とし、音響効果を使用したいときは操作レバー4によりスナッピー保持部材7を上方向に移動させてスナッピー102の張力を大きくしてドラムヘッド101に接触させる。この接触状態において、さらに張力調整ボルト71を回してスナッピー保持部材7の上下位置を微調整し、スナッピー102の微妙な張力調整を行うことができる。
【0041】
次に、図10〜14に基づき、第2実施形態を説明する。
【0042】
本実施形態のストレイナー装置1は、図10に示すように、スナッピー保持体3をスライド案内する案内溝22内部に弾性部材92がスナッピー保持体3に向けて突設され、かつ該スナッピー保持体3の前記案内溝22に対向する側面に、弾性部材92を上下方向に相対移動可能に受け入れる縦長の凹溝85が設けられたものである。より詳しくは、図12、13に示すように、分割ハウジング20側の案内溝22底面に弾性部材92が一部突出するように嵌合する嵌合穴90が形成され、該嵌合穴90に設けたネジ孔91に螺合するビス93により弾性部材92が嵌合穴90に固定されている。また、スナッピー保持体3を構成しているスライド部材8の側面に凹溝85が形成され、該凹溝85内に弾性部材92を受け入れた状態でスナッピー保持体3が上下に移動することとなる。弾性部材92は、好ましくはゴムや熱可塑性エラストマーよりなる部材が用いられるが、弾性変形するものであればその他合成樹脂発泡体や皮、繊維などからなる部材でもよい。
【0043】
そして、操作レバー4を上方へ回転して連結点(軸部62)がリンク一端側のブラケット片83との連結点(軸部61)と操作レバー基端側の枢支点である軸部60とを通る仮想線上のデッドポイントとなる位置では、図14(a)に示すように弾性部材92が凹溝下端壁85bに当接して変形する。さらに、連結点(軸部62)がデッドポイントを超えた安定姿勢では、図14(b)に示すように弾性部材92の変形が一部または全て回復した状態で凹溝下端壁85bに当接する。これにより、安定姿勢においてガタつかずに演奏に影響を与えることがなく、再度弾性部材92を変形させなければ操作レバー4が下がらないことから演奏中に誤って操作レバーに手が触れても簡単にはレバーが下がらないこととなる。なお、本実施形態では、スナッピー保持体3、より具体的にはスライド部材8の側壁82の上方位置に、前記安定姿勢における操作レバー4またはリンク他端側5bに当接する弾性体84が突設されており、これにより前記安定姿勢において操作レバー4自体あるいはリンク5自体がガタつくことも未然に防止でき、演奏に影響を与えることがないように構成されている。
【0044】
また、操作レバー4が下方へ回転してスナッピー保持体3が押し下げられた下方位置では、図14(c)に示すように弾性部材92が凹溝上端壁85aに当接してなるので、ガタづかず、演奏に影響を与えることもない。その他の構造ならびに変形例については、基本的に上記第1実施形態と同じであるので、同一構造については同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、例えば操作レバーを胴本体面に平行に横方向に設けるのではなく外方向に設けたものなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係るストレイナー装置を示す斜視図。
【図2】同じくストレイナー装置を示す正面図。
【図3】同じくストレイナー装置の使用状態を示す説明図。
【図4】スナッピーの他端側を支持するストレイナーを示す平面図。
【図5】同じくストレイナー装置を示す左右の縦断面図。
【図6】同じくストレイナー装置を示す前後の縦断面図。
【図7】同じくストレイナー装置のスナッピー保持体を示す斜視図。
【図8】同じくストレイナー装置の横断面図。
【図9】操作レバーを下げた状態のストレイナー装置を示す左右の縦断面図。
【図10】本発明の第2実施形態に係るストレイナー装置を示す前後の縦断面図。
【図11】同じくストレイナー装置を示す左右の縦断面図。
【図12】同じくストレイナー装置の横断面図。
【図13】同じくストレイナー装置のスライド部材と分割ハウジングの分解斜視図。
【図14】(a)〜(c)は同じくストレイナー装置の操作レバーを上下回転させたときの弾性部材の作用を示す説明図。
【符号の説明】
【0047】
1 ストレイナー装置 2 ベース体
3 スナッピー保持体 4 操作レバー
5 リンク 5a 一端側
5b 他端側 7 スナッピー保持部材
8 スライド部材 11 ストレイナー
20,21 分割ハウジング 22 案内溝
23 縦溝 24,25 筒状部
26 筒状摺動部 27 取付ボルト
27A,27B ボルト 28 凹部
29 取付台 29a ネジ孔
40 基端部 60,61,62 軸部
70 スナッピー止着部 71 張力調整ボルト
72 ボルト挿通孔 73,74 コイルスプリング
75 ナット 76 止着プレート
77 角ボルト 80 上壁
80a 通孔 81 収納溝
82 側壁 83 ブラケット片
84 弾性体 85 凹溝
85a 凹溝上端壁 85b 凹溝下端壁
90 嵌合穴 91 ネジ孔
92 弾性部材 93 ビス
100 胴本体 100a 通孔
101 下側ドラムヘッド 102 スナッピー
103 スネアプレート 104 スナッピーワイヤ
105 スナッピー紐 106 フープ
107 取付ネジ S1 拡径空間
S2 拡径空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムの胴本体側に固定されるベース体と、該ベース体に対して上下スライド自在に係合され、且つ下端側にスナッピーが連結されるスナッピー保持体と、該スナッピー保持体を前記ベース体に対して上下スライド移動させ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して接触/非接触状態に切り換えるための操作レバーとを備えたストレイナー装置であって、前記操作レバーの基端側を、前記ベース体に軸部を介して回動可能に枢支するとともに、前記スナッピー保持体における前記操作レバーの軸部よりも下側部位に一端側が回動可能に連結され、且つ前記操作レバーの基端部から先端側に所定距離離間した途中位置に他端側が同じく回動可能に連結されるリンクを設け、前記操作レバーが上方へ回動することにより前記リンクを介してスナッピー保持体がベース体に対して上方へ引き上げられ、前記操作レバーが下方へ回動することにより同じくリンクを介してスナッピー保持体が下方へ押し下げられることを特徴とするストレイナー装置。
【請求項2】
前記リンクを外側に湾曲して設けるとともに、前記操作レバーの上方への回転動作に伴い、前記リンク他端側の操作レバーとの連結点が、前記リンク一端側の前記スナッピー保持体との連結点と前記操作レバー基端側の枢支点とを通る仮想線上のデッドポイントを超えてベース体中心軸側へ移動し、スナッピーから前記リンクを介して受ける反発力の方向が変化して操作レバーが戻らない安定姿勢となるように構成した請求項1記載のストレイナー装置。
【請求項3】
前記ベース体の内部に、縦方向に沿って前記スナッピー保持体を係合状態でスライド可能に案内する案内溝を形成し、該案内溝内部に弾性部材を突設するとともに前記スナッピー保持体の前記案内溝に対向する側面に前記弾性部材を上下方向に相対移動可能に受け入れる縦長の凹溝を設け、前記操作レバーが上方へ回転して前記連結点が前記デッドポイントとなる位置で、前記弾性部材が前記凹溝の下端壁に当接して変形し、前記連結点がデッドポイントを超えた前記安定姿勢で、前記弾性部材の変形が一部または全て回復した状態で前記凹溝の下端壁に当接し、前記操作レバーが下方へ回転してスナッピー保持体が押し下げられた下方位置で、前記弾性部材が前記凹溝の上端壁に当接してなる請求項2記載のストレイナー装置。
【請求項4】
前記ベース体の内部に、縦方向に沿って前記スナッピー保持体を係合状態でスライド可能に案内する案内溝を形成するとともに、該案内溝に連通して外側方に開口する縦溝を設け、前記スナッピー保持体の移動に伴い前記縦溝内を前記リンクが回動しながら移動するように構成した請求項1〜3の何れか1項に記載のストレイナー装置。
【請求項5】
前記スナッピー保持体の下側部位に、前記縦溝内部に向けて突起するブラケット片を設け、該ブラケット片に前記リンクの一端側を回動可能に連結してなる請求項4記載のストレイナー装置。
【請求項6】
前記スナッピー保持体を、下端側にスナッピーが止着されるスナッピー保持部材と、該スナッピー保持部材に対し張力調整ボルトを介して上下に相対移動可能に外装されるとともに前記リンク一端側が回動可能に連結されるスライド部材とより分割構成してなる請求項1〜5の何れか1項に記載のストレイナー装置。
【請求項7】
前記スライド部材を、前記張力調整ボルトを貫通させる通孔が設けられた上壁を有するとともに一側方及び下方にわたり開放された収納溝を有する断面視略コ字形の合成樹脂製の部材で構成するとともに、該コ字形に開放された収納溝内に前記スナッピー保持部材を上下に相対移動可能に係合し、さらに該スライド部材の前記開放された一側方と反対側の側壁に前記リンクの一端側が連結されるブラケット片を突設してなる請求項6記載のストレイナー装置。
【請求項8】
前記スナッピー保持部材に対し、上方から前記スライド部材の通孔を貫通し、且つ両者を互いに離間する方向に付勢するコイルスプリングを介装した張力調整ボルトを螺合し、該張力調整ボルトの回転により両者の上下相対位置を微調整可能とした請求項7記載のストレイナー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−151296(P2009−151296A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302266(P2008−302266)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507353360)株式会社サカエリズム楽器 (5)