ストレス強度演算方法、及びストレス強度演算装置
【課題】被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単且つ正確に、しかも短時間で算出することのできるストレス強度演算方法、及びストレス強度演算装置を提供する。
【解決手段】前眼部Aにフラッシュ光を照射する光源2と、前眼部Aを撮像する撮像装置4と、撮像装置4で撮像した前眼部Aの画像に基づき虹彩径Di及び瞳孔径Dpを算出する虹彩/瞳孔径演算部11と、虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの割合からストレス強度αを算出するストレス強度演算部13とを備え、ストレス強度演算部13は、瞳孔対光反応前の虹彩径Diと瞳孔径Dpから算出した初期相対瞳孔径比ε0と、瞳孔対光反応後の最大縮瞳の相対瞳孔最小径比ε1と、設定時間経過後の複数の相対瞳孔径比ε2,ε3,ε4とを加算及び/又は乗算して、ストレス強度αを算出する。
【解決手段】前眼部Aにフラッシュ光を照射する光源2と、前眼部Aを撮像する撮像装置4と、撮像装置4で撮像した前眼部Aの画像に基づき虹彩径Di及び瞳孔径Dpを算出する虹彩/瞳孔径演算部11と、虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの割合からストレス強度αを算出するストレス強度演算部13とを備え、ストレス強度演算部13は、瞳孔対光反応前の虹彩径Diと瞳孔径Dpから算出した初期相対瞳孔径比ε0と、瞳孔対光反応後の最大縮瞳の相対瞳孔最小径比ε1と、設定時間経過後の複数の相対瞳孔径比ε2,ε3,ε4とを加算及び/又は乗算して、ストレス強度αを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞳孔対光反応を利用して被検者のストレス強度を調べるストレス強度演算方法、及びストレス強度演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会には、多様なストレス(負担)が存在し、又、ストレスを引き起こす原因(ストレッサー)も多岐にわたっており、更に、ストレスの感じ方にも個人差がある。ストレスを引き起こす原因として代表的なものは、(1)温度、騒音等の物理的ストレッサ、(2)酸素欠乏、薬害、栄養不足等の化学的ストレッサ、(3)病原菌等による病気の生物的ストレッサ、(4)人間関係、精神的苦痛、怒り、不安、憎しみ、緊張等の精神的ストレッサがある。
【0003】
又、人が受ける精神的ストレスを評価するに際しては、精神的ストレスの指標となる生体内物質(ホルモン等)の分泌量から評価する技術が知られている。例えば特許文献1(特許第3420027号公報)や特許文献2(特許第3838038号公報)には、唾液中のクロモグラニンA濃度やコチゾール濃度を指標としてストレスを評価する技術が開示されている。
【0004】
又、特許文献3(特開2002−168860号公報)には、唾液中のαアミラーゼを指標としてストレスを評価する技術が開示されている。更に、特許文献4(特開2000−131318号公報)には、唾液、血液、或いは尿中のコルチゾール、アドレナリン 、副腎皮質刺激ホルモン、サイロキシン(T4)の濃度を指標としてストレスを評価する技術が開示されている。
【0005】
一方、特許文献5(特開2006−305260号公報)には、人の表情を撮像し、その画像データからストレス度を算出する技術が開示されている。
【0006】
更に、特許文献6(特開2005−143684号公報)には、目の部分を覆って顔に装着される立体マスク部と、少なくとも一方の目の眼球と対向するように立体マスク部の内側面に配置される瞳孔撮像手段及び光刺激手段と、瞳孔撮像手段及び前記光刺激手段と接続してこれらを制御すると共に、瞳孔撮像手段から送られる撮像を記録し、該撮像に基づいて瞳孔の縮瞳及び散瞳に関する演算解析を行う制御解析手段とを備えたリラックス感評価用瞳孔対光反応計測具が開示されている。
【特許文献1】特許第3420027号公報
【特許文献2】特許第3838038号公報
【特許文献3】特開2002−168860号公報
【特許文献4】特開2000−131318号公報
【特許文献5】特開2006−305260号公報
【特許文献6】特開2005−143684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1〜4に開示されている技術では、生体内物質の分泌を指標としてストレスを評価しようとしているため、体液を採取した後に分析を行わなければならならず、調査結果が出るまでに長時間を要する問題がある。又、被検者から血液、唾液、尿等の体液を採取しなげばならず、被検者に負担を掛けることになる。
【0008】
一方、上記特許文献5に開示されている技術では、被検者の顔全体を取り込み、特徴部分を抽出した後、ストレス度を判定するようにしているため、大型コンピュータを用いた大がかりな画像処理を必要とし、製品コストが高くなる問題がある。
【0009】
更に、上記特許文献6に開示されている技術は、ストレス強度を簡単で、且つ短時間に算出することができる利点を有しているが、種々のパラメータをどのように選択し、どのように処理すれば、ストレス強度を適切に評価できるかについては、十分な検討がなされていなかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単且つ正確に、しかも短時間で算出することのできるストレス強度演算方法、及びストレス強度演算装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のストレス強度演算方法は、瞳孔対光反応による虹彩径に対する瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算方法において、瞳孔対光反応前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出する第1ステップと、瞳孔対光反応後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出する第2ステップと、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出する第3ステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明によれば、第1ステップにより求めた、瞳孔対光反応前の虹彩径に対する瞳孔径の割合から算出した初期相対瞳孔径比と、第2ステップにより求めた、瞳孔対光反応後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に算出した、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合とに基づいてストレス強度を算出するようにしたので、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単に且つ正確に、しかも短時間で算出することができる。
【0013】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定する第4ステップを備えることが好ましい。これによれば、ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するようにしたので、被検者のストレス度を客観的に評価することができる。
【0014】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることが好ましい。これによれば、判定しきい値を、被検者データに基づいて設定するようにしたので、被検者のストレス度をより正確に評価することができる。
【0015】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記第2ステップで算出する前記反応後相対瞳孔径比には、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比とが含まれていることが好ましい。これによれば、反応後相対瞳孔径比を複数の経過時間において算出するようにしたので、瞳孔径の相対変化をより正確に計測することができる。
【0016】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることが好ましい。これによれば、微小時間を、0.23〜0.43秒の間で定められた時間に設定することで、ストレス強度をより適切に反映したパラメータを得ることができる。
【0017】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することが好ましい。これによれば、ストレス強度を、初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出するようにしたので、ストレス強度をより適切に且つ大きな変化量で表すことができる。
【0018】
一方、本発明のストレス強度演算装置は、前眼部にフラッシュ光を照射する光源と、該前眼部を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像した前記前眼部の画像に基づき虹彩径及び瞳孔径を算出する虹彩/瞳孔径演算部と、前記虹彩/瞳孔径演算部で算出した前記虹彩径と前記瞳孔径とに基づき該虹彩径に対する該瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算部とを備えるストレス強度演算装置において、前記ストレス強度演算部は、前記フラッシュ光を照射する前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出し、該フラッシュ光照射後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出し、前記初期相対瞳孔径比と設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出することを特徴とする。
【0019】
上記発明によれば、瞳孔対光反応前の虹彩径に対する瞳孔径の割合から算出した初期相対瞳孔径比と、瞳孔対光反応後であって最大縮瞳時から縮瞳回復状態にかけての虹彩径に対する瞳孔径の割合から設定時間毎に算出した反応後相対瞳孔径比とに基づいてストレス強度を算出するようにしたので、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単に且つ正確に、しかも短時間で算出することができる。
【0020】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記ストレス強度演算部で算出した前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するストレス度判定演算部を備えることが好ましい。これによれば、ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するようにしたので、被検者のストレス度を客観的に評価することができる。
【0021】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることが好ましい。これによれば、判定しきい値を、被検者データに基づいて設定するようにしたので、被検者のストレス度をより正確に評価することができる。
【0022】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記ストレス強度演算部で算出する前記反応後相対瞳孔径比は、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比を含むことが好ましい。これによれば、反応後相対瞳孔径比を複数の経過時間において算出するようにしたので、瞳孔径の相対変化をより正確に計測することができる。
【0023】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることが好ましい。これによれば、微小時間を、0.23〜0.43秒の間で定められた時間に設定することで、ストレス強度をより適切に反映したパラメータを得ることができる。
【0024】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することが好ましい。これによれば、ストレス強度を、初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出するようにしたので、ストレス強度をより適切に大きな変化量で表すことができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明のストレス強度演算方法及びストレス強度演算装置によれば、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単に且つ正確に、しかも短時間で算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1にストレス強度演算装置の構成図を示す。
【0027】
ストレス強度演算装置1は、被検者の前眼部A(図2参照)にフラッシュ光を照射するフラッシュ光源2と、前眼部Aからの反射光を90°方向へ反射させるハーフミラー3と、ハーフミラー3の反射方向に対設して前眼部Aを撮像するCCD等の撮像素子を内蔵する撮像手段としての撮像装置4と、演算処理部5とを有している。尚、符号6は固視光源である。
【0028】
演算処理部5は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備える周知のマイクロコンピュータで構成されており、ROMにはストレス強度及びストレス度を演算するプログラム、及び、後述するストレス度判定基本値SLo等の各種固定データが記憶されている。CPUはROMに記憶されているプログラムに従い、撮像装置4で撮像した前眼部Aの画像に基づき虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの割合から相対瞳孔径比(Dp/Di)εを演算し、その結果に基づいて被検者のストレス強度α、及びストレス度βを演算する。
【0029】
演算処理部5には、ストレス強度α、及びストレス度βを演算する機能として、瞳孔/虹彩径演算部11、記憶手段12、ストレス強度演算部13、ストレス度判定演算部14を備えている。
【0030】
瞳孔/虹彩径演算部11は、撮像装置4で撮像した前眼部Aの画像に基づき、設定時間毎に、その輝度差から虹彩Iの輪郭エッジと瞳孔Pの輪郭エッジとをそれぞれ抽出し、虹彩Iの輪郭エッジから虹彩径Di(図2参照)を算出し、瞳孔Pの輪郭エッジから瞳孔径Dp(図2参照)を算出する。
【0031】
記憶手段12はRAMの一部の領域、或いは不揮発性メモリで構成されており、瞳孔/虹彩径演算部11で求めた虹彩径Diと瞳孔径Dpとを順次格納する。
【0032】
ストレス強度演算部13は、記憶手段12に格納されている設定時間毎の虹彩径Di、及び瞳孔径Dpを読込み、虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの割合から相対瞳孔径比(Dp/Di)εを算出すると共に、設定時間毎に算出した相対瞳孔径比εを加算及び/又は乗算してストレス強度αを算出する。
【0033】
ストレス度判定演算部14は、ストレス強度演算部13で算出したストレス強度αとストレス判定しきい値SLαとを比較して、被検者のストレス度βを判定する。このストレス度判定しきい値SLαは、予め設定されているストレス度判定基本値SLoを被検者の固有値kで補正して設定される(SLα←k・SLo)。この固有値kは、被検者の体重、身長、年齢、性別等の被検者データに基づいて設定される。そして、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLα以下のとき(α≦SLα)、軽度のストレス、或いはストレス無しと判定し、又、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLαより高いとき(α>SLα)、中度或いは重度のストレスと判定する。尚、ストレス度判定しきい値を複数設定すれば、被検者のストレス度をより細密に峻別することができる。
【0034】
図4に、前眼部Aのフラッシュ光照射前とフラッシュ光照射後の相対瞳孔径比εの変化を示す。前眼部Aにフラッシュ光を照射すると、瞳孔Pは、瞳孔対光反応により縮瞳し、その後、縮瞳回復となる。
【0035】
ところで、縮瞳は副交感神経に支配され、縮瞳回復(散瞳)は交感神経に支配されている。ストレスを感じている状態では、交感神経の働きが副交感神経の働きよりも相対的に優位になることが知られており、このような交感神経優位の状態では、縮瞳回復時間の短縮、縮瞳回復速度(VD)の増大等の解析パラメータの変化が表れる。従って、このような解析パラメータの変化を追跡することで、ストレス強度αを算出し、算出したストレス強度αに基づいて、被検者のストレス度βを客観的に評価することができる。
【0036】
本実施形態では、フラッシュ光が照射されても殆ど変化しない虹彩径Diを基準とし、この虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの相対的な変化を設定時間毎に算出することで、被検者のストレス強度α、及びストレス度βを算出する。具体的には、図4に示すように、虹彩径Diと瞳孔径Dpとを経過時間t0〜t4の5回計測し、その各々で相対瞳孔径比εを算出している。以下、計測時期と経過時間との関係について説明する。
【0037】
経過時間t0は、フラッシュ光を照射する直前或いはほぼ同時であり、このときに算出する初期相対瞳孔径比ε0は、平常時の瞳孔径Dpと虹彩径Diとの比となる。
【0038】
経過時間t1は、フラッシュ光を照射した後の最大縮瞳時であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを相対瞳孔最小径比ε1としている。
【0039】
経過時間t2は、最大縮瞳後、微小時間経過した時(0.23〜0.43秒の間で定められた時間で、本実施形態では、0.33秒に設定されている)であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを第1期反応後相対瞳孔径比ε2としている。
【0040】
経過時間t3は、経過時間t2から更に微小時間経過した時(0.23〜0.43秒の間で定められた時間で、本実施形態では、0.33秒に設定されている)であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを第2期反応後相対瞳孔径比ε3としている。
【0041】
経過時間t4は、第2期反応後相対瞳孔径比ε3を算出した後、すなわち、経過時間t3から更に上記微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時(本実施形態では、1.5倍=0.495秒に設定されている)であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを第3期反応後相対瞳孔径比ε4としている。
【0042】
次に、図3に示すフローチャートに従い、ストレス強度演算装置1を用いて行われるストレス強度α、及びストレス度βの算出手順について説明する。
【0043】
ステップS1:検査者等が、被検者の体重、身長、年齢、性別等の、ストレス度判定基本値SLoを補正するための固有値kを設定する際に必要とする被検者データを入力する。
【0044】
ステップS2:被検者の前眼部Aをストレス強度演算装置1の検査窓(図示せず)に押し当てさせて、固視光源6を注視させる。そして、そのときの前眼部Aを撮像装置4にて撮像する。演算処理部5の瞳孔/虹彩径演算部11は、撮像装置4にて撮像した前眼部Aのデータ(初期画像データ)を読込み、虹彩Iの輪郭エッジと瞳孔Pの輪郭エッジとをそれぞれ抽出し、虹彩Iの輪郭エッジから虹彩径Diを算出し、瞳孔Pの輪郭エッジから瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(図4の経過時間t0)。
【0045】
ステップS3:フラッシュ光源2を点灯させて前眼部Aにフラッシュ光を照射する。すると、瞳孔Pが瞳孔対光反応し、最初に副交感神経の作用により縮瞳され、次いで、交感神経の作用により徐々に縮瞳回復(散瞳)する。
【0046】
ステップS4:瞳孔/虹彩径演算部11において、瞳孔対光反応後の瞳孔径Dpの変化を追跡し、先ず、最大縮瞳時の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(経過時間t1)。次いで、最大縮瞳後、微小時間経過した時(本実施形態では、0.33秒)の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(経過時間t2)。その後、経過時間t2から更に微小時間経過した時(本実施形態では、0.33秒)の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(経過時間t3)。そして、更に、経過時間t3から上記微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時(本実施形態では、1.5倍=0.495秒)の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する。
【0047】
ステップS5:ストレス強度演算部13において、記憶手段12に格納されている各経過時間t0〜t4における各虹彩径Diと瞳孔径Dpとをそれぞれ読込み、それらの比から初期相対瞳孔径比ε0、相対瞳孔最小径比ε1、第1期反応後相対瞳孔径比ε2、第2期反応後相対瞳孔径比ε3、第3期反応後相対瞳孔径比ε4を算出する。そして、この各相対瞳孔径比ε0〜ε4を加算及び/又は乗算して、ストレス強度αを算出する(α←Σ(ε0,ε1,ε2,ε3,ε4))。
【0048】
このように、本実施形態では、瞳孔対光反応前の相対瞳孔径比ε0と、瞳孔反応後の相対瞳孔径比ε1〜ε4との5つのパラメータを加算及び/又は乗算してストレス強度αを算出するようにしたので、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることもなく、簡単で且つ短時間にストレス強度を算出することができる。又、意識に左右されない副交感神経と交感神経とに支配されている瞳孔の変化に基づいているので、ストレス強度を客観的に評価することができる。
【0049】
ステップS6:ストレス度判定演算部14において、ストレス強度演算部13で算出したストレス強度αとストレス判定しきい値SLαとを比較する。ストレス判定しきい値SLαは、予め設定されているストレス度判定基本値SLoを被検者の固有値kで補正して設定されているため、個別に適切なストレス度βを判定することができる。そして、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLα以下のとき(α≦SLα)は、ストレス度βは軽度或いは無しと判定する。又、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLαより高いとき(α>SLα)は、ストレス度βは中度或いは重度と判定する。
【0050】
本実施形態では、被検者の前眼部Aにフラッシュ光を照射した後、おおよそ2秒後には1回の測定が終了するため、優れた迅速性を有し、且つ被検者に安心感を与えることができる。
【0051】
図5〜図12に、ストレス強度演算装置1を用いて算出した被検者毎のストレス強度αと、同一の被検者に対して行ったアンケートとの比較結果を示す。
【0052】
非喫煙者であるK、Y、M、Kaの4名を被験者として、図5に示すようなスケジュールで、各被験者に周知のクレペリン検査によるストレスを付加し、その過程において瞳孔収縮(ストレス強度)測定を計4回行った。又、その際、図6に示すようなアンケートを実施し、被検者の自覚しているストレス強度を集計した。
【0053】
また、喫煙者であるS−1,S−2の2名を被験者として、図7に示すようなスケジュールで、各被験者にクレペリン検査によるストレスを付加し、その過程において瞳孔収縮(ストレス強度)測定を計3回行った。又、その際、図8に示すようなアンケートを実施し、被検者の自覚しているストレス強度を集計した。
【0054】
図9は、上記各試験において、ストレス強度演算装置1を用いて、被検者(K,M,Y,Ka、S−2,S−1)のストレス強度を計測した結果(瞳孔対光反応前の相対瞳孔径比ε0と、瞳孔反応後の相対瞳孔径比ε1〜ε4との5つのパラメータを加算によって算出したもの)が示されている。図10は、各被検者にアンケートを実施して、被検者が自覚しているストレス強度を集計した結果が示されている。
【0055】
その結果、図9に示す、ストレス強度演算装置1を用いて計測した、各被験者のストレス強度の変化は、図10に示す、アンケートにより得られた各被検者の自覚ストレスの強度とほぼ同じ変化を示している。従って、ストレス強度演算装置1を用いて計測したストレス強度αは、実際のストレスと強い相関を有していることが解り、ストレス強度演算装置1を用いて計測したストレス強度により、被検者のストレスを客観的に評価することができる。
【0056】
又、図11は、ストレス強度演算部13において算出した初期相対瞳孔径比ε0、相対瞳孔最小径比ε1、第1期反応後相対瞳孔径比ε2、第2期反応後相対瞳孔径比ε3、第3期反応後相対瞳孔径比ε4を乗算して、各被検者のストレス強度αを算出したものである(α←ε0・ε1・ε2・ε3・ε4・108)。この場合においても、上述した図9と同様に、各被検者のストレス強度αは自覚によるストレスと強い相関が得られている。更に、各相対瞳孔径比ε0,ε1,ε2,ε3,ε4を乗算することで、図9に示す特性よりも大きな変化量となり、ストレス度をより正確に評価することができる。
【0057】
又、図12は、ストレス強度演算部13において算出した各相対瞳孔径比ε0,ε1,ε2,ε3,ε4を、加算及び乗算して各被検者のストレス強度αを算出したものである(α←ε0・ε1・{(ε2+ε3+ε4)/3}・104)。この場合においても、上述した図9と同様に、各被検者のストレス強度αは自覚によるストレスと強い相関が得られている。
【0058】
尚、測定する前眼部Aは片目であっても良いが、両目を測定することでより測定精度をより高くすることができる。
【0059】
次に、K,M,Y氏について、図5と同様な手順によりクレペリン試験を行い、クレペリン試験前、クレペリン試験の途中、クレペリン試験の終了時に、それぞれ瞳孔収縮測定によるストレス強度、アンケート調査による自覚疲労度、クロモグラニンAの測定によるストレス強度を調べた。クロモグラニンAの測定は、試験者から採取した唾液を検体にして、「ヒトChromogranin A EIAキット」(商品名、株式会社矢内原研究所製)を用いて行った。
【0060】
瞳孔収縮測定によるストレス強度は、5つのパラメータε0,ε1,ε2,ε3,ε4を、加算によって算出した。また、それぞれの測定値は、クレペリン試験前の測定値を0として補正した値で評価した。図13は瞳孔収縮測定によるストレス強度の測定結果を示し、図14はアンケート調査による自覚疲労度の測定結果を示し、図15はクロモグラニンAの測定結果を示す。
【0061】
これらの結果から、瞳孔収縮測定によるストレス強度の測定結果は、自覚疲労度の測定結果や、クロモグラニンAの測定結果と、比較的高い相関を有していることがわかる。
【0062】
更に、K,Y氏について、図5と同様な手順によりクレペリン試験を行い、クレペリン試験後にガムを喫食させてリラックスさせた。そして、クレペリン試験前、クレペリン試験の途中、クレペリン試験の終了時、ガム喫食後に、それぞれ瞳孔収縮測定によるストレス強度、アンケート調査による自覚疲労度、クロモグラニンAの測定によるストレス強度を調べた。
【0063】
それぞれの測定値は、クレペリン試験前の測定値を0として補正した値で評価した。図16は瞳孔収縮測定によるストレス強度(5つのパラメータε0,ε1,ε2,ε3,ε4を、加算によって算出したもの)の測定結果を示し、図17はアンケート調査による自覚疲労度の測定結果を示し、図18はクロモグラニンAの測定結果を示す。
【0064】
これらの結果から、瞳孔収縮測定によるストレス強度の測定結果は、自覚疲労度の測定結果や、クロモグラニンAの測定結果と、比較的高い相関を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によるストレス強度演算装置を、例えば自動車や電車などの車両に搭載すれば、運転者のストレス強度の変化をモニタ、及び記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のストレス強度演算装置を示す構成図である。
【図2】被検者の前眼部を示す説明図である。
【図3】ストレス強度及びストレス度の算出手順を示すフローチャートである。
【図4】瞳孔対光反応による相対瞳孔径比の変化を示すタイムチャートである。
【図5】非喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加した際のスケジュール表である。
【図6】非喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加したときに調査したアンケートの内容を示す説明図である。
【図7】喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加した際のスケジュール表である。
【図8】喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加したときに調査したアンケートの内容を示す説明図である。
【図9】ストレス付加実験における同ストレス強度演算装置により測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図10】同実験における自覚疲労度によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図11】本発明のストレス強度演算装置の他の態様により、測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図12】本発明のストレス強度演算装置の別の態様により、測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図13】別の実験における本発明のストレス強度演算装置を用いて測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図14】同実験における自覚疲労度によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図15】同実験におけるクロモグラニンAの測定によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図16】更に別の実験における本発明のストレス強度演算装置を用いて測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図17】同実験における自覚疲労度によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図18】同実験におけるクロモグラニンAの測定によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 ストレス強度演算装置
2 フラッシュ光源
4 撮像装置
5 演算処理部
11 瞳孔径演算部
11 虹彩径演算部
12 記憶手段
13 ストレス強度演算部
14 ストレス度判定演算部
α ストレス強度
β ストレス度
ε 相対瞳孔径比
ε0 初期相対瞳孔径比
ε1 相対瞳孔最小径比
ε2 第1期反応後相対瞳孔径比
ε3 第2期反応後相対瞳孔径比
ε4 第3期反応後相対瞳孔径比
A 前眼部
Di 虹彩径
Dp 瞳孔径
I 虹彩
P 瞳孔
SLα ストレス度判定しきい値
SLo ストレス度判定基本値
k 固有値
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞳孔対光反応を利用して被検者のストレス強度を調べるストレス強度演算方法、及びストレス強度演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会には、多様なストレス(負担)が存在し、又、ストレスを引き起こす原因(ストレッサー)も多岐にわたっており、更に、ストレスの感じ方にも個人差がある。ストレスを引き起こす原因として代表的なものは、(1)温度、騒音等の物理的ストレッサ、(2)酸素欠乏、薬害、栄養不足等の化学的ストレッサ、(3)病原菌等による病気の生物的ストレッサ、(4)人間関係、精神的苦痛、怒り、不安、憎しみ、緊張等の精神的ストレッサがある。
【0003】
又、人が受ける精神的ストレスを評価するに際しては、精神的ストレスの指標となる生体内物質(ホルモン等)の分泌量から評価する技術が知られている。例えば特許文献1(特許第3420027号公報)や特許文献2(特許第3838038号公報)には、唾液中のクロモグラニンA濃度やコチゾール濃度を指標としてストレスを評価する技術が開示されている。
【0004】
又、特許文献3(特開2002−168860号公報)には、唾液中のαアミラーゼを指標としてストレスを評価する技術が開示されている。更に、特許文献4(特開2000−131318号公報)には、唾液、血液、或いは尿中のコルチゾール、アドレナリン 、副腎皮質刺激ホルモン、サイロキシン(T4)の濃度を指標としてストレスを評価する技術が開示されている。
【0005】
一方、特許文献5(特開2006−305260号公報)には、人の表情を撮像し、その画像データからストレス度を算出する技術が開示されている。
【0006】
更に、特許文献6(特開2005−143684号公報)には、目の部分を覆って顔に装着される立体マスク部と、少なくとも一方の目の眼球と対向するように立体マスク部の内側面に配置される瞳孔撮像手段及び光刺激手段と、瞳孔撮像手段及び前記光刺激手段と接続してこれらを制御すると共に、瞳孔撮像手段から送られる撮像を記録し、該撮像に基づいて瞳孔の縮瞳及び散瞳に関する演算解析を行う制御解析手段とを備えたリラックス感評価用瞳孔対光反応計測具が開示されている。
【特許文献1】特許第3420027号公報
【特許文献2】特許第3838038号公報
【特許文献3】特開2002−168860号公報
【特許文献4】特開2000−131318号公報
【特許文献5】特開2006−305260号公報
【特許文献6】特開2005−143684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1〜4に開示されている技術では、生体内物質の分泌を指標としてストレスを評価しようとしているため、体液を採取した後に分析を行わなければならならず、調査結果が出るまでに長時間を要する問題がある。又、被検者から血液、唾液、尿等の体液を採取しなげばならず、被検者に負担を掛けることになる。
【0008】
一方、上記特許文献5に開示されている技術では、被検者の顔全体を取り込み、特徴部分を抽出した後、ストレス度を判定するようにしているため、大型コンピュータを用いた大がかりな画像処理を必要とし、製品コストが高くなる問題がある。
【0009】
更に、上記特許文献6に開示されている技術は、ストレス強度を簡単で、且つ短時間に算出することができる利点を有しているが、種々のパラメータをどのように選択し、どのように処理すれば、ストレス強度を適切に評価できるかについては、十分な検討がなされていなかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単且つ正確に、しかも短時間で算出することのできるストレス強度演算方法、及びストレス強度演算装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のストレス強度演算方法は、瞳孔対光反応による虹彩径に対する瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算方法において、瞳孔対光反応前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出する第1ステップと、瞳孔対光反応後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出する第2ステップと、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出する第3ステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明によれば、第1ステップにより求めた、瞳孔対光反応前の虹彩径に対する瞳孔径の割合から算出した初期相対瞳孔径比と、第2ステップにより求めた、瞳孔対光反応後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に算出した、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合とに基づいてストレス強度を算出するようにしたので、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単に且つ正確に、しかも短時間で算出することができる。
【0013】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定する第4ステップを備えることが好ましい。これによれば、ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するようにしたので、被検者のストレス度を客観的に評価することができる。
【0014】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることが好ましい。これによれば、判定しきい値を、被検者データに基づいて設定するようにしたので、被検者のストレス度をより正確に評価することができる。
【0015】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記第2ステップで算出する前記反応後相対瞳孔径比には、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比とが含まれていることが好ましい。これによれば、反応後相対瞳孔径比を複数の経過時間において算出するようにしたので、瞳孔径の相対変化をより正確に計測することができる。
【0016】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることが好ましい。これによれば、微小時間を、0.23〜0.43秒の間で定められた時間に設定することで、ストレス強度をより適切に反映したパラメータを得ることができる。
【0017】
本発明のストレス強度演算方法においては、前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することが好ましい。これによれば、ストレス強度を、初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出するようにしたので、ストレス強度をより適切に且つ大きな変化量で表すことができる。
【0018】
一方、本発明のストレス強度演算装置は、前眼部にフラッシュ光を照射する光源と、該前眼部を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像した前記前眼部の画像に基づき虹彩径及び瞳孔径を算出する虹彩/瞳孔径演算部と、前記虹彩/瞳孔径演算部で算出した前記虹彩径と前記瞳孔径とに基づき該虹彩径に対する該瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算部とを備えるストレス強度演算装置において、前記ストレス強度演算部は、前記フラッシュ光を照射する前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出し、該フラッシュ光照射後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出し、前記初期相対瞳孔径比と設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出することを特徴とする。
【0019】
上記発明によれば、瞳孔対光反応前の虹彩径に対する瞳孔径の割合から算出した初期相対瞳孔径比と、瞳孔対光反応後であって最大縮瞳時から縮瞳回復状態にかけての虹彩径に対する瞳孔径の割合から設定時間毎に算出した反応後相対瞳孔径比とに基づいてストレス強度を算出するようにしたので、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単に且つ正確に、しかも短時間で算出することができる。
【0020】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記ストレス強度演算部で算出した前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するストレス度判定演算部を備えることが好ましい。これによれば、ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するようにしたので、被検者のストレス度を客観的に評価することができる。
【0021】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることが好ましい。これによれば、判定しきい値を、被検者データに基づいて設定するようにしたので、被検者のストレス度をより正確に評価することができる。
【0022】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記ストレス強度演算部で算出する前記反応後相対瞳孔径比は、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比を含むことが好ましい。これによれば、反応後相対瞳孔径比を複数の経過時間において算出するようにしたので、瞳孔径の相対変化をより正確に計測することができる。
【0023】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることが好ましい。これによれば、微小時間を、0.23〜0.43秒の間で定められた時間に設定することで、ストレス強度をより適切に反映したパラメータを得ることができる。
【0024】
本発明のストレス強度演算装置においては、前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することが好ましい。これによれば、ストレス強度を、初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出するようにしたので、ストレス強度をより適切に大きな変化量で表すことができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明のストレス強度演算方法及びストレス強度演算装置によれば、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることなく、ストレス強度を簡単に且つ正確に、しかも短時間で算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1にストレス強度演算装置の構成図を示す。
【0027】
ストレス強度演算装置1は、被検者の前眼部A(図2参照)にフラッシュ光を照射するフラッシュ光源2と、前眼部Aからの反射光を90°方向へ反射させるハーフミラー3と、ハーフミラー3の反射方向に対設して前眼部Aを撮像するCCD等の撮像素子を内蔵する撮像手段としての撮像装置4と、演算処理部5とを有している。尚、符号6は固視光源である。
【0028】
演算処理部5は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備える周知のマイクロコンピュータで構成されており、ROMにはストレス強度及びストレス度を演算するプログラム、及び、後述するストレス度判定基本値SLo等の各種固定データが記憶されている。CPUはROMに記憶されているプログラムに従い、撮像装置4で撮像した前眼部Aの画像に基づき虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの割合から相対瞳孔径比(Dp/Di)εを演算し、その結果に基づいて被検者のストレス強度α、及びストレス度βを演算する。
【0029】
演算処理部5には、ストレス強度α、及びストレス度βを演算する機能として、瞳孔/虹彩径演算部11、記憶手段12、ストレス強度演算部13、ストレス度判定演算部14を備えている。
【0030】
瞳孔/虹彩径演算部11は、撮像装置4で撮像した前眼部Aの画像に基づき、設定時間毎に、その輝度差から虹彩Iの輪郭エッジと瞳孔Pの輪郭エッジとをそれぞれ抽出し、虹彩Iの輪郭エッジから虹彩径Di(図2参照)を算出し、瞳孔Pの輪郭エッジから瞳孔径Dp(図2参照)を算出する。
【0031】
記憶手段12はRAMの一部の領域、或いは不揮発性メモリで構成されており、瞳孔/虹彩径演算部11で求めた虹彩径Diと瞳孔径Dpとを順次格納する。
【0032】
ストレス強度演算部13は、記憶手段12に格納されている設定時間毎の虹彩径Di、及び瞳孔径Dpを読込み、虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの割合から相対瞳孔径比(Dp/Di)εを算出すると共に、設定時間毎に算出した相対瞳孔径比εを加算及び/又は乗算してストレス強度αを算出する。
【0033】
ストレス度判定演算部14は、ストレス強度演算部13で算出したストレス強度αとストレス判定しきい値SLαとを比較して、被検者のストレス度βを判定する。このストレス度判定しきい値SLαは、予め設定されているストレス度判定基本値SLoを被検者の固有値kで補正して設定される(SLα←k・SLo)。この固有値kは、被検者の体重、身長、年齢、性別等の被検者データに基づいて設定される。そして、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLα以下のとき(α≦SLα)、軽度のストレス、或いはストレス無しと判定し、又、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLαより高いとき(α>SLα)、中度或いは重度のストレスと判定する。尚、ストレス度判定しきい値を複数設定すれば、被検者のストレス度をより細密に峻別することができる。
【0034】
図4に、前眼部Aのフラッシュ光照射前とフラッシュ光照射後の相対瞳孔径比εの変化を示す。前眼部Aにフラッシュ光を照射すると、瞳孔Pは、瞳孔対光反応により縮瞳し、その後、縮瞳回復となる。
【0035】
ところで、縮瞳は副交感神経に支配され、縮瞳回復(散瞳)は交感神経に支配されている。ストレスを感じている状態では、交感神経の働きが副交感神経の働きよりも相対的に優位になることが知られており、このような交感神経優位の状態では、縮瞳回復時間の短縮、縮瞳回復速度(VD)の増大等の解析パラメータの変化が表れる。従って、このような解析パラメータの変化を追跡することで、ストレス強度αを算出し、算出したストレス強度αに基づいて、被検者のストレス度βを客観的に評価することができる。
【0036】
本実施形態では、フラッシュ光が照射されても殆ど変化しない虹彩径Diを基準とし、この虹彩径Diに対する瞳孔径Dpの相対的な変化を設定時間毎に算出することで、被検者のストレス強度α、及びストレス度βを算出する。具体的には、図4に示すように、虹彩径Diと瞳孔径Dpとを経過時間t0〜t4の5回計測し、その各々で相対瞳孔径比εを算出している。以下、計測時期と経過時間との関係について説明する。
【0037】
経過時間t0は、フラッシュ光を照射する直前或いはほぼ同時であり、このときに算出する初期相対瞳孔径比ε0は、平常時の瞳孔径Dpと虹彩径Diとの比となる。
【0038】
経過時間t1は、フラッシュ光を照射した後の最大縮瞳時であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを相対瞳孔最小径比ε1としている。
【0039】
経過時間t2は、最大縮瞳後、微小時間経過した時(0.23〜0.43秒の間で定められた時間で、本実施形態では、0.33秒に設定されている)であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを第1期反応後相対瞳孔径比ε2としている。
【0040】
経過時間t3は、経過時間t2から更に微小時間経過した時(0.23〜0.43秒の間で定められた時間で、本実施形態では、0.33秒に設定されている)であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを第2期反応後相対瞳孔径比ε3としている。
【0041】
経過時間t4は、第2期反応後相対瞳孔径比ε3を算出した後、すなわち、経過時間t3から更に上記微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時(本実施形態では、1.5倍=0.495秒に設定されている)であり、このときに算出する相対瞳孔径比εを第3期反応後相対瞳孔径比ε4としている。
【0042】
次に、図3に示すフローチャートに従い、ストレス強度演算装置1を用いて行われるストレス強度α、及びストレス度βの算出手順について説明する。
【0043】
ステップS1:検査者等が、被検者の体重、身長、年齢、性別等の、ストレス度判定基本値SLoを補正するための固有値kを設定する際に必要とする被検者データを入力する。
【0044】
ステップS2:被検者の前眼部Aをストレス強度演算装置1の検査窓(図示せず)に押し当てさせて、固視光源6を注視させる。そして、そのときの前眼部Aを撮像装置4にて撮像する。演算処理部5の瞳孔/虹彩径演算部11は、撮像装置4にて撮像した前眼部Aのデータ(初期画像データ)を読込み、虹彩Iの輪郭エッジと瞳孔Pの輪郭エッジとをそれぞれ抽出し、虹彩Iの輪郭エッジから虹彩径Diを算出し、瞳孔Pの輪郭エッジから瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(図4の経過時間t0)。
【0045】
ステップS3:フラッシュ光源2を点灯させて前眼部Aにフラッシュ光を照射する。すると、瞳孔Pが瞳孔対光反応し、最初に副交感神経の作用により縮瞳され、次いで、交感神経の作用により徐々に縮瞳回復(散瞳)する。
【0046】
ステップS4:瞳孔/虹彩径演算部11において、瞳孔対光反応後の瞳孔径Dpの変化を追跡し、先ず、最大縮瞳時の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(経過時間t1)。次いで、最大縮瞳後、微小時間経過した時(本実施形態では、0.33秒)の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(経過時間t2)。その後、経過時間t2から更に微小時間経過した時(本実施形態では、0.33秒)の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する(経過時間t3)。そして、更に、経過時間t3から上記微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時(本実施形態では、1.5倍=0.495秒)の虹彩径Diと瞳孔径Dpを算出し、これらの径Di,Dpを記憶手段12に格納する。
【0047】
ステップS5:ストレス強度演算部13において、記憶手段12に格納されている各経過時間t0〜t4における各虹彩径Diと瞳孔径Dpとをそれぞれ読込み、それらの比から初期相対瞳孔径比ε0、相対瞳孔最小径比ε1、第1期反応後相対瞳孔径比ε2、第2期反応後相対瞳孔径比ε3、第3期反応後相対瞳孔径比ε4を算出する。そして、この各相対瞳孔径比ε0〜ε4を加算及び/又は乗算して、ストレス強度αを算出する(α←Σ(ε0,ε1,ε2,ε3,ε4))。
【0048】
このように、本実施形態では、瞳孔対光反応前の相対瞳孔径比ε0と、瞳孔反応後の相対瞳孔径比ε1〜ε4との5つのパラメータを加算及び/又は乗算してストレス強度αを算出するようにしたので、大型コンピュータを必要とせず、しかも、被検者に負担をかけることもなく、簡単で且つ短時間にストレス強度を算出することができる。又、意識に左右されない副交感神経と交感神経とに支配されている瞳孔の変化に基づいているので、ストレス強度を客観的に評価することができる。
【0049】
ステップS6:ストレス度判定演算部14において、ストレス強度演算部13で算出したストレス強度αとストレス判定しきい値SLαとを比較する。ストレス判定しきい値SLαは、予め設定されているストレス度判定基本値SLoを被検者の固有値kで補正して設定されているため、個別に適切なストレス度βを判定することができる。そして、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLα以下のとき(α≦SLα)は、ストレス度βは軽度或いは無しと判定する。又、ストレス強度αがストレス度判定しきい値SLαより高いとき(α>SLα)は、ストレス度βは中度或いは重度と判定する。
【0050】
本実施形態では、被検者の前眼部Aにフラッシュ光を照射した後、おおよそ2秒後には1回の測定が終了するため、優れた迅速性を有し、且つ被検者に安心感を与えることができる。
【0051】
図5〜図12に、ストレス強度演算装置1を用いて算出した被検者毎のストレス強度αと、同一の被検者に対して行ったアンケートとの比較結果を示す。
【0052】
非喫煙者であるK、Y、M、Kaの4名を被験者として、図5に示すようなスケジュールで、各被験者に周知のクレペリン検査によるストレスを付加し、その過程において瞳孔収縮(ストレス強度)測定を計4回行った。又、その際、図6に示すようなアンケートを実施し、被検者の自覚しているストレス強度を集計した。
【0053】
また、喫煙者であるS−1,S−2の2名を被験者として、図7に示すようなスケジュールで、各被験者にクレペリン検査によるストレスを付加し、その過程において瞳孔収縮(ストレス強度)測定を計3回行った。又、その際、図8に示すようなアンケートを実施し、被検者の自覚しているストレス強度を集計した。
【0054】
図9は、上記各試験において、ストレス強度演算装置1を用いて、被検者(K,M,Y,Ka、S−2,S−1)のストレス強度を計測した結果(瞳孔対光反応前の相対瞳孔径比ε0と、瞳孔反応後の相対瞳孔径比ε1〜ε4との5つのパラメータを加算によって算出したもの)が示されている。図10は、各被検者にアンケートを実施して、被検者が自覚しているストレス強度を集計した結果が示されている。
【0055】
その結果、図9に示す、ストレス強度演算装置1を用いて計測した、各被験者のストレス強度の変化は、図10に示す、アンケートにより得られた各被検者の自覚ストレスの強度とほぼ同じ変化を示している。従って、ストレス強度演算装置1を用いて計測したストレス強度αは、実際のストレスと強い相関を有していることが解り、ストレス強度演算装置1を用いて計測したストレス強度により、被検者のストレスを客観的に評価することができる。
【0056】
又、図11は、ストレス強度演算部13において算出した初期相対瞳孔径比ε0、相対瞳孔最小径比ε1、第1期反応後相対瞳孔径比ε2、第2期反応後相対瞳孔径比ε3、第3期反応後相対瞳孔径比ε4を乗算して、各被検者のストレス強度αを算出したものである(α←ε0・ε1・ε2・ε3・ε4・108)。この場合においても、上述した図9と同様に、各被検者のストレス強度αは自覚によるストレスと強い相関が得られている。更に、各相対瞳孔径比ε0,ε1,ε2,ε3,ε4を乗算することで、図9に示す特性よりも大きな変化量となり、ストレス度をより正確に評価することができる。
【0057】
又、図12は、ストレス強度演算部13において算出した各相対瞳孔径比ε0,ε1,ε2,ε3,ε4を、加算及び乗算して各被検者のストレス強度αを算出したものである(α←ε0・ε1・{(ε2+ε3+ε4)/3}・104)。この場合においても、上述した図9と同様に、各被検者のストレス強度αは自覚によるストレスと強い相関が得られている。
【0058】
尚、測定する前眼部Aは片目であっても良いが、両目を測定することでより測定精度をより高くすることができる。
【0059】
次に、K,M,Y氏について、図5と同様な手順によりクレペリン試験を行い、クレペリン試験前、クレペリン試験の途中、クレペリン試験の終了時に、それぞれ瞳孔収縮測定によるストレス強度、アンケート調査による自覚疲労度、クロモグラニンAの測定によるストレス強度を調べた。クロモグラニンAの測定は、試験者から採取した唾液を検体にして、「ヒトChromogranin A EIAキット」(商品名、株式会社矢内原研究所製)を用いて行った。
【0060】
瞳孔収縮測定によるストレス強度は、5つのパラメータε0,ε1,ε2,ε3,ε4を、加算によって算出した。また、それぞれの測定値は、クレペリン試験前の測定値を0として補正した値で評価した。図13は瞳孔収縮測定によるストレス強度の測定結果を示し、図14はアンケート調査による自覚疲労度の測定結果を示し、図15はクロモグラニンAの測定結果を示す。
【0061】
これらの結果から、瞳孔収縮測定によるストレス強度の測定結果は、自覚疲労度の測定結果や、クロモグラニンAの測定結果と、比較的高い相関を有していることがわかる。
【0062】
更に、K,Y氏について、図5と同様な手順によりクレペリン試験を行い、クレペリン試験後にガムを喫食させてリラックスさせた。そして、クレペリン試験前、クレペリン試験の途中、クレペリン試験の終了時、ガム喫食後に、それぞれ瞳孔収縮測定によるストレス強度、アンケート調査による自覚疲労度、クロモグラニンAの測定によるストレス強度を調べた。
【0063】
それぞれの測定値は、クレペリン試験前の測定値を0として補正した値で評価した。図16は瞳孔収縮測定によるストレス強度(5つのパラメータε0,ε1,ε2,ε3,ε4を、加算によって算出したもの)の測定結果を示し、図17はアンケート調査による自覚疲労度の測定結果を示し、図18はクロモグラニンAの測定結果を示す。
【0064】
これらの結果から、瞳孔収縮測定によるストレス強度の測定結果は、自覚疲労度の測定結果や、クロモグラニンAの測定結果と、比較的高い相関を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によるストレス強度演算装置を、例えば自動車や電車などの車両に搭載すれば、運転者のストレス強度の変化をモニタ、及び記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のストレス強度演算装置を示す構成図である。
【図2】被検者の前眼部を示す説明図である。
【図3】ストレス強度及びストレス度の算出手順を示すフローチャートである。
【図4】瞳孔対光反応による相対瞳孔径比の変化を示すタイムチャートである。
【図5】非喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加した際のスケジュール表である。
【図6】非喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加したときに調査したアンケートの内容を示す説明図である。
【図7】喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加した際のスケジュール表である。
【図8】喫煙者を対象とした被検者にストレスを付加したときに調査したアンケートの内容を示す説明図である。
【図9】ストレス付加実験における同ストレス強度演算装置により測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図10】同実験における自覚疲労度によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図11】本発明のストレス強度演算装置の他の態様により、測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図12】本発明のストレス強度演算装置の別の態様により、測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図13】別の実験における本発明のストレス強度演算装置を用いて測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図14】同実験における自覚疲労度によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図15】同実験におけるクロモグラニンAの測定によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図16】更に別の実験における本発明のストレス強度演算装置を用いて測定したストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図17】同実験における自覚疲労度によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【図18】同実験におけるクロモグラニンAの測定によるストレス強度の変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 ストレス強度演算装置
2 フラッシュ光源
4 撮像装置
5 演算処理部
11 瞳孔径演算部
11 虹彩径演算部
12 記憶手段
13 ストレス強度演算部
14 ストレス度判定演算部
α ストレス強度
β ストレス度
ε 相対瞳孔径比
ε0 初期相対瞳孔径比
ε1 相対瞳孔最小径比
ε2 第1期反応後相対瞳孔径比
ε3 第2期反応後相対瞳孔径比
ε4 第3期反応後相対瞳孔径比
A 前眼部
Di 虹彩径
Dp 瞳孔径
I 虹彩
P 瞳孔
SLα ストレス度判定しきい値
SLo ストレス度判定基本値
k 固有値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞳孔対光反応による虹彩径に対する瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算方法において、
瞳孔対光反応前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出する第1ステップと、
瞳孔対光反応後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出する第2ステップと、
前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出する第3ステップとを備えることを特徴とするストレス強度演算方法。
【請求項2】
請求項1記載のストレス強度演算方法において、
前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定する第4ステップを備えることを特徴とするストレス強度演算方法。
【請求項3】
前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることを特徴とする請求項2記載のストレス強度演算方法。
【請求項4】
前記第2ステップで算出する前記反応後相対瞳孔径比には、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比とが含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のストレス強度演算方法。
【請求項5】
前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることを特徴とする請求項4記載のストレス強度演算方法。
【請求項6】
前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のストレス強度演算方法。
【請求項7】
前眼部にフラッシュ光を照射する光源と、該前眼部を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像した前記前眼部の画像に基づき虹彩径及び瞳孔径を算出する虹彩/瞳孔径演算部と、前記虹彩/瞳孔径演算部で算出した前記虹彩径と前記瞳孔径とに基づき該虹彩径に対する該瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算部とを備えるストレス強度演算装置において、
前記ストレス強度演算部は、前記フラッシュ光を照射する前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出し、該フラッシュ光照射後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出し、前記初期相対瞳孔径比と設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出することを特徴とするストレス強度演算装置。
【請求項8】
請求項7記載のストレス強度演算装置において、
前記ストレス強度演算部で算出した前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するストレス度判定演算部を備えることを特徴とするストレス強度演算装置。
【請求項9】
前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることを特徴とする請求項8記載のストレス強度演算装置。
【請求項10】
前記ストレス強度演算部で算出する前記反応後相対瞳孔径比は、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のストレス強度演算装置。
【請求項11】
前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることを特徴とする請求項10記載のストレス強度演算装置。
【請求項12】
前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することを特徴とする請求項7〜11のいずれか1つに記載のストレス強度演算装置。
【請求項1】
瞳孔対光反応による虹彩径に対する瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算方法において、
瞳孔対光反応前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出する第1ステップと、
瞳孔対光反応後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出する第2ステップと、
前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出する第3ステップとを備えることを特徴とするストレス強度演算方法。
【請求項2】
請求項1記載のストレス強度演算方法において、
前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定する第4ステップを備えることを特徴とするストレス強度演算方法。
【請求項3】
前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることを特徴とする請求項2記載のストレス強度演算方法。
【請求項4】
前記第2ステップで算出する前記反応後相対瞳孔径比には、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比とが含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のストレス強度演算方法。
【請求項5】
前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることを特徴とする請求項4記載のストレス強度演算方法。
【請求項6】
前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のストレス強度演算方法。
【請求項7】
前眼部にフラッシュ光を照射する光源と、該前眼部を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像した前記前眼部の画像に基づき虹彩径及び瞳孔径を算出する虹彩/瞳孔径演算部と、前記虹彩/瞳孔径演算部で算出した前記虹彩径と前記瞳孔径とに基づき該虹彩径に対する該瞳孔径の割合からストレス強度を算出するストレス強度演算部とを備えるストレス強度演算装置において、
前記ストレス強度演算部は、前記フラッシュ光を照射する前の前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合から初期相対瞳孔径比を算出し、該フラッシュ光照射後であって、瞳孔対光反応による最大縮瞳時からの設定経過時間毎に、前記虹彩径に対する前記瞳孔径の割合を算出し、前記初期相対瞳孔径比と設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とに基づきストレス強度を算出することを特徴とするストレス強度演算装置。
【請求項8】
請求項7記載のストレス強度演算装置において、
前記ストレス強度演算部で算出した前記ストレス強度と予め設定した判定しきい値とを比較して、ストレス度を判定するストレス度判定演算部を備えることを特徴とするストレス強度演算装置。
【請求項9】
前記判定しきい値は、被検者データに基づいて設定されることを特徴とする請求項8記載のストレス強度演算装置。
【請求項10】
前記ストレス強度演算部で算出する前記反応後相対瞳孔径比は、最大縮瞳時に算出した相対瞳孔最小径比と、最大縮瞳後微小時間経過時に算出した第1期反応後相対瞳孔径比と、該第1期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間経過時に算出した第2期反応後相対瞳孔径比と、該第2期反応後相対瞳孔径比を算出した後、該微小時間の1.0〜2.0倍の間のいずれかの経過時に算出した第3期反応後相対瞳孔径比を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のストレス強度演算装置。
【請求項11】
前記微小時間は、0.23〜0.43秒の間で定められた時間であることを特徴とする請求項10記載のストレス強度演算装置。
【請求項12】
前記ストレス強度は、前記初期相対瞳孔径比と、設定時間毎に算出した前記反応後相対瞳孔径比とを加算及び/又は乗算して算出することを特徴とする請求項7〜11のいずれか1つに記載のストレス強度演算装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−212179(P2008−212179A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49471(P2007−49471)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【出願人】(599172874)アイリテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【出願人】(599172874)アイリテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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