ストレッチャ
【課題】患者を手術台と検査機器との間で簡易かつ迅速に搬送する。
【解決手段】車台上に設置された天板4とを具備したストレッチャ1において、手術台5に離脱可能かつスライド可能に装着された患者Aを乗せるテーブル8bが手術台上でスライドする際に、テーブルを天板上へと案内する案内部が天板に設けられ、天板における手術台に接続する側と検査機器11に接続する側には天板に乗ったテーブルの端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ16,17が設けられ、第一のストッパは、天板が手術台に接続された時に天板下に没入可能であり、手術台との接続が解かれた後に天板上に突出可能とされ、第二のストッパは、天板が検査機器に接続された時に天板下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板上に突出可能とされる。従来のように手術台を患者ごと移動させる必要がなく患者を手術台と検査機器との間で速やかに且つ安全に搬送することができる。
【解決手段】車台上に設置された天板4とを具備したストレッチャ1において、手術台5に離脱可能かつスライド可能に装着された患者Aを乗せるテーブル8bが手術台上でスライドする際に、テーブルを天板上へと案内する案内部が天板に設けられ、天板における手術台に接続する側と検査機器11に接続する側には天板に乗ったテーブルの端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ16,17が設けられ、第一のストッパは、天板が手術台に接続された時に天板下に没入可能であり、手術台との接続が解かれた後に天板上に突出可能とされ、第二のストッパは、天板が検査機器に接続された時に天板下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板上に突出可能とされる。従来のように手術台を患者ごと移動させる必要がなく患者を手術台と検査機器との間で速やかに且つ安全に搬送することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を手術台とMRI(核磁気共鳴画像法)装置等の検査機器との間で往復移送するためのストレッチャに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば脳腫瘍を除去する外科手術では、手術台上での患者に対する施術と、MRI装置等の検査機器による脳内検査とを繰り返し行って、脳内から腫瘍を全部摘出する必要がある。このような手術では、患者を手術台と検査機器との間で幾度か移動させる必要がある。
【0003】
従来、このような作業をできるだけ患者に負担を掛けないように行うため、また、手術に支障を来たさないようにするため、手術台自体又は手術台のテーブルをテーブル上の患者ごと検査機器まで搬送するようにしている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−232969号公報
【特許文献2】特開2007−301064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手術台を患者ごと検査機器まで搬送する方法は、手術台や患者が重いのでその搬送に手間と時間が掛かるという問題がある。手術室と検査機器とが離れている場合は、この作業はさらに面倒になる。
【0006】
また、従来の手術台のテーブルを検査機器まで搬送する方法は、テーブルと検査機器との間を結ぶレールを床上に敷設し、このレール上でテーブルを移動させるようになっているので、可動範囲は広がるがテーブルの移動経路が固定されるという問題があり、また、レール等を設置することから装置コスト、医療コストが高くなるという問題もある。
【0007】
患者を手術台からストレッチャに乗せ替えて検査機器まで搬送するようにすれば上記問題点は解決するが、通常のストレッチャを用いるのでは患者や看護人等に多大な負担を強いるという問題がある。
【0008】
したがって、本発明は上記不具合を解消することができるストレッチャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、床面上を転動可能な車輪(2)で支えられた車台(3)と、この車台(3)上に設置された天板(4)とを具備したストレッチャにおいて、手術台(5)に離脱可能かつスライド可能に装着された患者(A)を乗せるテーブル(8)が上記手術台(5)上でスライドする際に、このスライドするテーブル(8)を上記天板(4)上へと案内する案内部(12)が上記天板(4)に設けられ、上記天板(4)における上記手術台(5)に接続する側と検査機器(11)に接続する側には上記天板(4)に乗った上記テーブル(8)の端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ(16,17)が設けられ、上記第一のストッパ(16)は、上記天板(4)が上記手術台(5)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、上記手術台(5)との接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされ、上記第二のストッパ(17)は、上記天板(4)が上記検査機器(11)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされたストレッチャ(1)を採用する。
【0010】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載のストレッチャ(1)において、上記第一のストッパ(16)に連結片(21)が固定され、この連結片(21)が上記手術台(5)に連結された時にこの連結片(21)を介して上記第一のストッパ(16)を上記天板(4)下に没入させ、上記連結片(21)が上記手術台(5)から離反した時にこの連結片(21)を介して上記第一のストッパ(16)を上記天板(4)上に突出させるようにしたものとすることができる。
【0011】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載のストレッチャ(1)において、上記検査機器(11)に向かって突出する接触子(27a)が設けられ、この接触子(27a)が上記検査機器(11)の一部に接触すると、この接触子(27a)に連動して上記第二のストッパ(17)が上記天板(4)下に没入するようにしたものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、床面上を転動可能な車輪で支えられた車台(3)と、この車台(3)上に設置された天板(4)とを具備したストレッチャにおいて、手術台(5)に離脱可能かつスライド可能に装着された患者(A)を乗せるテーブル(8)が上記手術台(5)上でスライドする際に、このスライドするテーブル(8)を上記天板(4)上へと案内する案内部が上記天板(4)に設けられ、上記天板(4)における上記手術台(5)に接続する側と検査機器に接続する側には上記天板(4)に乗った上記テーブル(8)の端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ(16,17)が設けられ、上記第一のストッパ(16)は、上記天板(4)が上記手術台(5)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、上記手術台(5)との接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされ、上記第二のストッパ(17)は、上記天板(4)が上記検査機器(11)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされたストレッチャ(1)であることから、従来のように手術台(5)を患者(A)ごと移動させる必要がない。従って、患者(A)を手術台(5)と検査機器(11)との間で簡易かつ迅速に搬送することができ、手術及び検査を円滑に行うことができる。また、ストレッチャ(1)上において第一と第二のストッパ(16,17)でテーブル(8)を挟むことができるので、患者(A)の搬送中にストレッチャ(1)上でテーブル(8)が妄りに動かないようにしたり、ストレッチャ(1)から脱落したりしないようにすることができる。さらに、第一と第二のストッパ(16,17)は天板(4)に対し出没可能であるから、テーブル(8)を手術台(5)と検査機器(11)との間で円滑に移し替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るストレッチャの平面図である。
【図2】ストレッチャの正面図である。
【図3】ストレッチャの左側面図である。
【図4】ストレッチャの右側面図である。
【図5】ストレッチャを手術台に接続し又はMRI装置に接続した状態を示す平面図である。
【図6】手術台のテーブルが天板上に乗った状態で示すストレッチャの正面図である。
【図7】手術台のテーブルが天板上に乗った状態で示すストレッチャの左側面図である。
【図8】ストレッチャと手術台との接続状態を示す部分切欠平面図である。
【図9】ストレッチャと手術台との接続状態を示す部分切欠正面図である。
【図10】ストレッチャのMRI装置側における詳細を示す部分切欠平面図である。
【図11】ストレッチャのMRI装置側における詳細を示す部分切欠正面図である。
【図12】(A)患者がテーブル上に乗った状態の手術台の斜視図、(B)は手術台にストレッチャを接近させた状態の斜視図、(C)ストレッチャを手術台に接続した状態の斜視図である。
【図13】(D)患者をテーブルごとストレッチャ上に乗せ替えた状態の斜視図、(E)は患者をテーブルごとストレッチャ上に乗せ替えた後、ストレッチャと手術台との連結を解き、ストレッチャをMRI装置へと搬送する状態を示す斜視図、(F)はストレッチャをMRI装置に接続した状態の斜視図、(G)はストレッチャからテーブルを患者ごとMRI装置内へと移動させる状態を示す斜視図である。
【図14】(H)はMRI装置による検査後に患者をテーブルごとストレッチャ上に戻した状態を示す斜視図、(I)は第二のストッパをストレッチャの天板上に突出させ、テーブルを第一のストッパと共に挟んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して発明を実施するための一形態について説明する。
【0015】
図1乃至図4に示すように、このストレッチャ1は、手術室や検査室の床面上を転動可能な複数個の車輪2で支えられた車台3と、この車台3上に設置された天板4とを具備する。
【0016】
手術室の床面上には、図12(A)に示すように、手術台5が設置される。手術台5は、一般的な構造を有した公知のもので、手術室の床面に接する基台6と、基台6から起立するコラム7と、コラム7上に設置されるテーブル8とを具備する。
【0017】
コラム7は基台6内に設けられた図示しない駆動源からの動力によって少なくとも上下方向での伸縮動が可能であり、このコラム7の伸縮動に伴ってテーブル8は昇降動作可能である。
【0018】
テーブル8は手術される患者Aを乗せるための板であり、固定部8aと、固定部8a上に乗せられたスライド部8bとを有する。固定部8aはコラム7上に固定される。スライド部8bは固定部8a上でテーブル8の少なくとも長手方向にスライド自在であり、固定部8a外へとスライドして手術台5から離脱可能である。また、スライド部8bは、図示しないロック装置により固定部8a上の所定位置に固定可能である。スライド部8bには、図5及び図6に示すように、固定部8aに接する箇所にローラ9が多数設けられ、これによりスライド部8bは固定部8aとストレッチャ1の天板4との間を円滑にスライド可能である。
【0019】
例えば、脳外科手術の場合、患者Aは手術台5のテーブル8上に乗せられ、図5及び図6に示すように頭部固定具10によって患者Aの頭部がテーブル8上の定位置に固定される。例えば脳腫瘍の摘出の場合は、術者による手術中、脳腫瘍の摘出が適正に行われたかどうか手術中に幾度か検査機器によって検査される。この検査機器としては一般にMRI装置が用いられる。MRI装置11は手術室の床面又は手術室に連なる検査室の床面上に設置される。
【0020】
図1ないし図5に示すように、ストレッチャ1の天板4には、上記テーブル8のスライド部8bが固定部8a上でスライドする際に、このスライドするスライド部8bを天板4上へと案内する案内部12が設けられる。
【0021】
この案内部12は、具体的には天板4の長手方向に沿った左右両側の凸条によって構成される。テーブル8のスライド部8bは天板4上へとスライドする際に、左右の凸条によって規制されつつスライド部8bの中心線が天板4の中心線に合致するように天板4上に移動する。
【0022】
案内部12の端の近傍からは、案内部12と反対側に受容片13,13が各々突出する。受容片13,13の内面には各々斜面が形成される。
【0023】
一方、手術台5のテーブル8の固定部8a側には、上記受容片13,13の斜面に接しうる斜面を有する凸片14,14が設けられる。各凸片14,14には、固定部8aを円滑に移動させることができるように、ローラ15が設けられる。
【0024】
これにより、図8及び図9に示すように、ストレッチャ1を手術台5に近づけてストレッチャ1の受容片13,13間にテーブル8の固定部8aの凸片14,14を差し込むようにすると、ストレッチャ1がテーブル8に対して幅方向で位置決めされる。
【0025】
上記天板4における手術台5に接続する側と検査機器であるMRI装置11に接続する側すなわち天板4の長手方向の両端には、天板4に乗ったテーブル8のスライド部8bの端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ16,17が設けられる。
【0026】
第一と第二のストッパ16,17は、各々二枚の板片で形成され、天板4の上表面に対して出没可能である。天板4上に患者Aごと乗り移ったテーブル8のスライド部8bは、両側すなわち手術台5に接続する側とMRI装置11に接続する側とから第一と第二のストッパ16,17によって挟まれることにより、ストレッチャ1によって搬送される際に天板4上での移動や天板4からの脱落が防止される。
【0027】
なお、第一と第二のストッパ16,17は、各々二枚の板片のみならず一枚の板片であってもよいし、三枚以上の板片であってもよい。また、板片でなく単なる突起であってもよい。
【0028】
また、天板4の両側には、第一と第二のストッパ16,17である板片が出入りする孔16a,17aが各々形成される。
【0029】
第一のストッパ16は、天板4が手術台5に接続された時に天板4の孔16aを通って天板4下に没入可能であり、手術台5との接続が解かれた後に孔16aを通って天板4上に突出可能に構成される。
【0030】
具体的には、第一のストッパ16は、図8及び図9に示すように、車台3の天板4下に垂直に固定された二本のレール18に各々噛み合うスライダ19に取付けられる。スライダ19がレール18に沿って上下方向にスライドすると、第一のストッパ16はスライダ19と共に移動し、孔16aを通って天板4上に突出したり、天板4下に没したりする。スライダ19とレール18との間には、滑りを良くするために必要に応じてローラ20が介装される。
【0031】
また、第一のストッパ16には各々連結片21が固定される。連結片21は車台3の側壁の穴3aを手術台5側へと貫通して伸び、その先端には手術台5に引掛けるための爪21aが上向きに形成される。側壁の穴3aは縦長に形成される。連結片21は、天板4にスプリング22を介して連結されることにより、スライダ19及び第一のストッパ16と共に常時上方向に付勢される。スプリング22によって引っ張られることで、第一のストッパ16は孔16aを通して天板4上に常時突出しようとする。また、爪21aも常時上方向に付勢される。
【0032】
これにより、図8及び図9に示すように、ストレッチャ1を手術台5に近づけて上記受容片13,13間に凸片14を押し込み、ストレッチャ1の一端を手術台5のテーブル8の一端に接触させたうえで、テーブル8を降下させると、テーブル8の固定部8aに連結片21の爪21aが食い込むことになる。さらにテーブル8を降下させ続けると、スプリング22の付勢力に抗してスライダ19がレール18に沿って降下し、第一のストッパ16が孔16aから天板4下に没し、連結片21もその爪21aがテーブル8の固定部8aに食い込んだ状態で穴3a内を降下する。第一のストッパ16等が所定位置まで降下した後、テーブル8の降下を停止させると、テーブル8の固定部8aの上面がストレッチャ1の天板4の上面に連なる。これによりストレッチャ1と手術台5との接続が完了し、手術台5上に乗ったテーブル8のスライド部8bをストレッチャ1の天板4上に円滑に移動させることができ、又はストレッチャ1の天板4上に乗ったテーブル8のスライド部8bを手術台5上に戻すことができる。
【0033】
また、上記接続状態において、逆にテーブル8を上昇させると、テーブル8の固定部8aと爪21aとの噛み合いが解かれ、ストレッチャ1は手術台5から離れることができ、第一のストッパ16はスプリング22の付勢力によって天板4上に突出する。
【0034】
第二のストッパ17は、天板4が上記検査機器であるMRI装置11に接続された時に天板4下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板4上に突出可能に構成される。
【0035】
具体的には、第二のストッパ17は、図7及び図10に示すように、天板4下の車台3に垂直に固定されたレール23に滑り子24を介して噛み合う。第二のストッパ17は、滑り子24を介しレール23に沿って上方向にスライドすると孔17aから天板4上に突出し、下方向にスライドすると天板4下に没する。
【0036】
第二のストッパ17には取っ手25が取付けられ、作業者がこの取っ手25を持って操作することで第二のストッパ17は上下方向にスライド可能である。
【0037】
図10及び図11に示すように、車台3の天板4下には、第二のストッパ17の下端に接離可能にカム片26が設けられる。カム片26はスライド棒27に固定される。スライド棒27は天板4の下方において天板4の長手方向に沿ってスライド可能である。図11中、二点鎖線で示すように、スライド棒27が天板4の長手方向の一端側へとスライドした位置にあるとすると、カム片26も同様な位置にあって第二のストッパ17を天板4の上方へと突出させる。実線で示すように、スライド棒27が天板4の長手方向の他端側へとスライドすると、カム片26も同様にスライドし、第二のストッパ17を天板4の下方へと没入させる。
【0038】
上記スライド棒27のスライド運動を案内する案内片28,29が、車台3における天板4の長手方向の一端下と、第二のストッパ17の下方とに各々固定される。
【0039】
スライド棒27は一方の案内片28を貫通して天板4外へと突出し、その突出端にはMRI装置11の一部である筐体等に接触しうる接触子27aが設けられる。また、スライド棒27は他方の案内片29内に挿入され、この案内片29とスライド棒27の後端との間に収納されたスプリング30によって、その接触子27aを天板4外へと突出させる方向に常時付勢される。
【0040】
これにより、図6及び図11に示すように、ストレッチャ1をMRI装置11に近づけて接触子27aをMRI装置11の筐体等に接触させると、スプリング30の付勢力に抗するようにスライド棒27がスライドし天板4の内方へ引っ込む。これに連動してカム片26が第二のストッパ17の直下から離脱し、第二のストッパ17は支えを失って自重で落下し、案内片29に当たって停止する。これにより、第二のストッパ17は天板4下に没する。第二のストッパ17が天板4下に没することにより、ストレッチャ1とMRI装置11との接続が完了し、天板4上のテーブル8のスライド部8bはMRI装置11内へと円滑に移動可能になる。
【0041】
なお、図10及び図11に示すように、天板4の端の左右両側には、MRI装置11の筐体等に接触可能に突起31が設けられる。突起31には、テーブル8のスライド部8bのスライドを円滑に行うためにローラ32が設けられる。
【0042】
上記とは逆に、作業者が取っ手25を持って第二のストッパ17を天板4上へと持ち上げると、カム片26が第二のストッパ17による押圧を解かれ、スプリング30の弾性によってスライド棒27と共に二点鎖線で示す元の位置に復帰し、接触子27aが再び天板4外へと突出して停止する。そして、作業者が取っ手25から手を離して第二のストッパ17を解放すると、第二のストッパ17がカム片26に当たって停止し、天板4上に突出した姿勢を保つ。
【0043】
次に、上記構成のストレッチャの作用について説明する。
【0044】
(1)図12(A)に示すように、手術台5のテーブル8のスライド部8b上に患者Aが乗せられ、この患者Aの例えば頭部に対し脳腫瘍を摘出する外科手術が行われる。
【0045】
(2)手術がある程度進行すると、脳腫瘍の摘出状況を検査するために手術が中断され、図12(B)に示すように、ストレッチャ1が手術台5の近傍へ搬送される。
【0046】
(3)図12(B)に示すように、ストレッチャ1が手術台5に近づけられ、図8及び図9に示すように、受容片13,13間に凸片14が押し込まれると、ストレッチャ1の一端が手術台5のテーブル8の一端に接触して停止する。そこで、テーブル8を降下させると、テーブル8の固定部8aに連結片21の爪21aが食い込む。さらに、テーブル8を降下させ続けると、スプリング22の付勢力に抗してスライダ19がレール18に沿って降下し、第一のストッパ16が天板4の孔16aから天板4下に没し、連結片21もその爪21aがテーブル8の固定部8aに食い込んだ状態で穴3a内を降下する。
【0047】
第一のストッパ16等が所定位置まで降下した後、テーブル8の降下を停止させると、図12(C)に示すように、テーブル8のスライド部8bの上面がストレッチャ1の天板4の上面に連なる。これにより、ストレッチャ1と手術台5との接続が完了する。
【0048】
(4)図13(D)に示すように、作業者によってテーブル8のスライド部8bが患者Aを乗せたままで手術台5上からストレッチャ1の天板4上へ移し替えられる。その際、スライド部8bはストレッチャ1の左右の案内部12によっても案内される。
【0049】
(5)上記テーブル8にストレッチャ1が接続された状態において、手術台5のコラム7の伸び操作によってテーブル8が上昇すると、図9中二点鎖線で示すように、テーブル8の固定部8aと爪21aとの噛み合いが解かれ、ストレッチャ1は手術台5から分離可能になり、図13(E)に示すように、第一のストッパ16はスプリング22の付勢力によって天板4上に突出する。
【0050】
(6)図13(E)に示すように、天板4上に乗り移ったテーブル8のスライド部8bは、ストレッチャ1の天板4上においてその長手方向の両側から第一と第二のストッパ16,17によって挟まれる。これにより、スライド部8bはストレッチャ1によって搬送される際に、天板4上での移動や天板からの脱落が防止される。
【0051】
(7)図13(F)、図6及び図11に示すように、ストレッチャ1がMRI装置11に近づけられ、接触子27aがMRI装置11の一部である筐体等に接触すると、スプリング30の付勢力に抗するようにスライド棒27がスライドし天板4の内方側へ引っ込む。これに連動してカム片26が第二のストッパ17の直下から離脱し、第二のストッパ17は支えを失って自重で落下し、案内片29に当たって停止する。これにより、図13(F)に示すように、第二のストッパ17は天板4下に没する。
【0052】
かくて、ストレッチャ1とMRI装置11との接続が完了する。
【0053】
(8)図13(G)に示すように、第二のストッパ17が天板4下に没することにより、天板4上のテーブル8のスライド部8bはMRI装置11内へと円滑に移動可能になる。
【0054】
スライド部8bがMRI装置11内で停止した後、スライド部8b上の患者Aの頭部がMRI装置11によって画像診断され、脳腫瘍の除去具合が検査され確認される。
【0055】
(9)図14(H)に示すように、天板4上のテーブル8のスライド部8bが患者AごとMRI装置11外に引き出され、ストレッチャ1の天板4上へと戻される。
【0056】
(10)作業者によってストレッチャ1がMRI装置11から引き離されたうえで、図11中二点鎖線で示す如く、作業者によって取っ手25が持ち上げられると、第二のストッパ17が天板4上へと上昇し、また、カム片26から離れる。カム片26はスプリング30の弾性によってスライド棒27と共に元の位置に復帰し、図14(I)のごとく接触子27aが再び天板4外へと突出して停止する。また、作業者が取っ手25から手を離して第二のストッパ17を解放すると、第二のストッパ17の下端がカム片26に当たって停止し、天板4上に突出した姿勢を保つ。
【0057】
(11)天板4上に乗り移ったテーブル8のスライド部8bは、再び図13(E)に示すように、ストレッチャ1の天板4上においてその長手方向の両側から第一と第二のストッパ16,17によって挟まれる。これにより、スライド部8bはストレッチャ1によって搬送される際に、天板4上での移動や天板4からの脱落が防止される。
【0058】
(12)ストレッチャ1上のスライド部8b及び患者Aは、図12(B)〜(C)、図13(D)に示した操作と逆の操作によって、図12(A)のごとく再び手術台1上に戻され、手術が再開される。
【0059】
その後、MRI装置による画像診断が必要になる都度、上記(2)〜(12)の操作が繰り返される。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば上記実施の形態では患者の頭部の施術について説明したが他の部位の施術についても適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…ストレッチャ
2…車輪
3…車台
4…天板
5…手術台
8…テーブル
11…検査機器
12…案内部
16…第一のストッパ
17…第二のストッパ
21…連結片
27a…接触子
A…患者
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を手術台とMRI(核磁気共鳴画像法)装置等の検査機器との間で往復移送するためのストレッチャに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば脳腫瘍を除去する外科手術では、手術台上での患者に対する施術と、MRI装置等の検査機器による脳内検査とを繰り返し行って、脳内から腫瘍を全部摘出する必要がある。このような手術では、患者を手術台と検査機器との間で幾度か移動させる必要がある。
【0003】
従来、このような作業をできるだけ患者に負担を掛けないように行うため、また、手術に支障を来たさないようにするため、手術台自体又は手術台のテーブルをテーブル上の患者ごと検査機器まで搬送するようにしている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−232969号公報
【特許文献2】特開2007−301064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手術台を患者ごと検査機器まで搬送する方法は、手術台や患者が重いのでその搬送に手間と時間が掛かるという問題がある。手術室と検査機器とが離れている場合は、この作業はさらに面倒になる。
【0006】
また、従来の手術台のテーブルを検査機器まで搬送する方法は、テーブルと検査機器との間を結ぶレールを床上に敷設し、このレール上でテーブルを移動させるようになっているので、可動範囲は広がるがテーブルの移動経路が固定されるという問題があり、また、レール等を設置することから装置コスト、医療コストが高くなるという問題もある。
【0007】
患者を手術台からストレッチャに乗せ替えて検査機器まで搬送するようにすれば上記問題点は解決するが、通常のストレッチャを用いるのでは患者や看護人等に多大な負担を強いるという問題がある。
【0008】
したがって、本発明は上記不具合を解消することができるストレッチャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、床面上を転動可能な車輪(2)で支えられた車台(3)と、この車台(3)上に設置された天板(4)とを具備したストレッチャにおいて、手術台(5)に離脱可能かつスライド可能に装着された患者(A)を乗せるテーブル(8)が上記手術台(5)上でスライドする際に、このスライドするテーブル(8)を上記天板(4)上へと案内する案内部(12)が上記天板(4)に設けられ、上記天板(4)における上記手術台(5)に接続する側と検査機器(11)に接続する側には上記天板(4)に乗った上記テーブル(8)の端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ(16,17)が設けられ、上記第一のストッパ(16)は、上記天板(4)が上記手術台(5)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、上記手術台(5)との接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされ、上記第二のストッパ(17)は、上記天板(4)が上記検査機器(11)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされたストレッチャ(1)を採用する。
【0010】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載のストレッチャ(1)において、上記第一のストッパ(16)に連結片(21)が固定され、この連結片(21)が上記手術台(5)に連結された時にこの連結片(21)を介して上記第一のストッパ(16)を上記天板(4)下に没入させ、上記連結片(21)が上記手術台(5)から離反した時にこの連結片(21)を介して上記第一のストッパ(16)を上記天板(4)上に突出させるようにしたものとすることができる。
【0011】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載のストレッチャ(1)において、上記検査機器(11)に向かって突出する接触子(27a)が設けられ、この接触子(27a)が上記検査機器(11)の一部に接触すると、この接触子(27a)に連動して上記第二のストッパ(17)が上記天板(4)下に没入するようにしたものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、床面上を転動可能な車輪で支えられた車台(3)と、この車台(3)上に設置された天板(4)とを具備したストレッチャにおいて、手術台(5)に離脱可能かつスライド可能に装着された患者(A)を乗せるテーブル(8)が上記手術台(5)上でスライドする際に、このスライドするテーブル(8)を上記天板(4)上へと案内する案内部が上記天板(4)に設けられ、上記天板(4)における上記手術台(5)に接続する側と検査機器に接続する側には上記天板(4)に乗った上記テーブル(8)の端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ(16,17)が設けられ、上記第一のストッパ(16)は、上記天板(4)が上記手術台(5)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、上記手術台(5)との接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされ、上記第二のストッパ(17)は、上記天板(4)が上記検査機器(11)に接続された時に天板(4)下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板(4)上に突出可能とされたストレッチャ(1)であることから、従来のように手術台(5)を患者(A)ごと移動させる必要がない。従って、患者(A)を手術台(5)と検査機器(11)との間で簡易かつ迅速に搬送することができ、手術及び検査を円滑に行うことができる。また、ストレッチャ(1)上において第一と第二のストッパ(16,17)でテーブル(8)を挟むことができるので、患者(A)の搬送中にストレッチャ(1)上でテーブル(8)が妄りに動かないようにしたり、ストレッチャ(1)から脱落したりしないようにすることができる。さらに、第一と第二のストッパ(16,17)は天板(4)に対し出没可能であるから、テーブル(8)を手術台(5)と検査機器(11)との間で円滑に移し替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るストレッチャの平面図である。
【図2】ストレッチャの正面図である。
【図3】ストレッチャの左側面図である。
【図4】ストレッチャの右側面図である。
【図5】ストレッチャを手術台に接続し又はMRI装置に接続した状態を示す平面図である。
【図6】手術台のテーブルが天板上に乗った状態で示すストレッチャの正面図である。
【図7】手術台のテーブルが天板上に乗った状態で示すストレッチャの左側面図である。
【図8】ストレッチャと手術台との接続状態を示す部分切欠平面図である。
【図9】ストレッチャと手術台との接続状態を示す部分切欠正面図である。
【図10】ストレッチャのMRI装置側における詳細を示す部分切欠平面図である。
【図11】ストレッチャのMRI装置側における詳細を示す部分切欠正面図である。
【図12】(A)患者がテーブル上に乗った状態の手術台の斜視図、(B)は手術台にストレッチャを接近させた状態の斜視図、(C)ストレッチャを手術台に接続した状態の斜視図である。
【図13】(D)患者をテーブルごとストレッチャ上に乗せ替えた状態の斜視図、(E)は患者をテーブルごとストレッチャ上に乗せ替えた後、ストレッチャと手術台との連結を解き、ストレッチャをMRI装置へと搬送する状態を示す斜視図、(F)はストレッチャをMRI装置に接続した状態の斜視図、(G)はストレッチャからテーブルを患者ごとMRI装置内へと移動させる状態を示す斜視図である。
【図14】(H)はMRI装置による検査後に患者をテーブルごとストレッチャ上に戻した状態を示す斜視図、(I)は第二のストッパをストレッチャの天板上に突出させ、テーブルを第一のストッパと共に挟んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して発明を実施するための一形態について説明する。
【0015】
図1乃至図4に示すように、このストレッチャ1は、手術室や検査室の床面上を転動可能な複数個の車輪2で支えられた車台3と、この車台3上に設置された天板4とを具備する。
【0016】
手術室の床面上には、図12(A)に示すように、手術台5が設置される。手術台5は、一般的な構造を有した公知のもので、手術室の床面に接する基台6と、基台6から起立するコラム7と、コラム7上に設置されるテーブル8とを具備する。
【0017】
コラム7は基台6内に設けられた図示しない駆動源からの動力によって少なくとも上下方向での伸縮動が可能であり、このコラム7の伸縮動に伴ってテーブル8は昇降動作可能である。
【0018】
テーブル8は手術される患者Aを乗せるための板であり、固定部8aと、固定部8a上に乗せられたスライド部8bとを有する。固定部8aはコラム7上に固定される。スライド部8bは固定部8a上でテーブル8の少なくとも長手方向にスライド自在であり、固定部8a外へとスライドして手術台5から離脱可能である。また、スライド部8bは、図示しないロック装置により固定部8a上の所定位置に固定可能である。スライド部8bには、図5及び図6に示すように、固定部8aに接する箇所にローラ9が多数設けられ、これによりスライド部8bは固定部8aとストレッチャ1の天板4との間を円滑にスライド可能である。
【0019】
例えば、脳外科手術の場合、患者Aは手術台5のテーブル8上に乗せられ、図5及び図6に示すように頭部固定具10によって患者Aの頭部がテーブル8上の定位置に固定される。例えば脳腫瘍の摘出の場合は、術者による手術中、脳腫瘍の摘出が適正に行われたかどうか手術中に幾度か検査機器によって検査される。この検査機器としては一般にMRI装置が用いられる。MRI装置11は手術室の床面又は手術室に連なる検査室の床面上に設置される。
【0020】
図1ないし図5に示すように、ストレッチャ1の天板4には、上記テーブル8のスライド部8bが固定部8a上でスライドする際に、このスライドするスライド部8bを天板4上へと案内する案内部12が設けられる。
【0021】
この案内部12は、具体的には天板4の長手方向に沿った左右両側の凸条によって構成される。テーブル8のスライド部8bは天板4上へとスライドする際に、左右の凸条によって規制されつつスライド部8bの中心線が天板4の中心線に合致するように天板4上に移動する。
【0022】
案内部12の端の近傍からは、案内部12と反対側に受容片13,13が各々突出する。受容片13,13の内面には各々斜面が形成される。
【0023】
一方、手術台5のテーブル8の固定部8a側には、上記受容片13,13の斜面に接しうる斜面を有する凸片14,14が設けられる。各凸片14,14には、固定部8aを円滑に移動させることができるように、ローラ15が設けられる。
【0024】
これにより、図8及び図9に示すように、ストレッチャ1を手術台5に近づけてストレッチャ1の受容片13,13間にテーブル8の固定部8aの凸片14,14を差し込むようにすると、ストレッチャ1がテーブル8に対して幅方向で位置決めされる。
【0025】
上記天板4における手術台5に接続する側と検査機器であるMRI装置11に接続する側すなわち天板4の長手方向の両端には、天板4に乗ったテーブル8のスライド部8bの端部に各々対向しうる第一と第二のストッパ16,17が設けられる。
【0026】
第一と第二のストッパ16,17は、各々二枚の板片で形成され、天板4の上表面に対して出没可能である。天板4上に患者Aごと乗り移ったテーブル8のスライド部8bは、両側すなわち手術台5に接続する側とMRI装置11に接続する側とから第一と第二のストッパ16,17によって挟まれることにより、ストレッチャ1によって搬送される際に天板4上での移動や天板4からの脱落が防止される。
【0027】
なお、第一と第二のストッパ16,17は、各々二枚の板片のみならず一枚の板片であってもよいし、三枚以上の板片であってもよい。また、板片でなく単なる突起であってもよい。
【0028】
また、天板4の両側には、第一と第二のストッパ16,17である板片が出入りする孔16a,17aが各々形成される。
【0029】
第一のストッパ16は、天板4が手術台5に接続された時に天板4の孔16aを通って天板4下に没入可能であり、手術台5との接続が解かれた後に孔16aを通って天板4上に突出可能に構成される。
【0030】
具体的には、第一のストッパ16は、図8及び図9に示すように、車台3の天板4下に垂直に固定された二本のレール18に各々噛み合うスライダ19に取付けられる。スライダ19がレール18に沿って上下方向にスライドすると、第一のストッパ16はスライダ19と共に移動し、孔16aを通って天板4上に突出したり、天板4下に没したりする。スライダ19とレール18との間には、滑りを良くするために必要に応じてローラ20が介装される。
【0031】
また、第一のストッパ16には各々連結片21が固定される。連結片21は車台3の側壁の穴3aを手術台5側へと貫通して伸び、その先端には手術台5に引掛けるための爪21aが上向きに形成される。側壁の穴3aは縦長に形成される。連結片21は、天板4にスプリング22を介して連結されることにより、スライダ19及び第一のストッパ16と共に常時上方向に付勢される。スプリング22によって引っ張られることで、第一のストッパ16は孔16aを通して天板4上に常時突出しようとする。また、爪21aも常時上方向に付勢される。
【0032】
これにより、図8及び図9に示すように、ストレッチャ1を手術台5に近づけて上記受容片13,13間に凸片14を押し込み、ストレッチャ1の一端を手術台5のテーブル8の一端に接触させたうえで、テーブル8を降下させると、テーブル8の固定部8aに連結片21の爪21aが食い込むことになる。さらにテーブル8を降下させ続けると、スプリング22の付勢力に抗してスライダ19がレール18に沿って降下し、第一のストッパ16が孔16aから天板4下に没し、連結片21もその爪21aがテーブル8の固定部8aに食い込んだ状態で穴3a内を降下する。第一のストッパ16等が所定位置まで降下した後、テーブル8の降下を停止させると、テーブル8の固定部8aの上面がストレッチャ1の天板4の上面に連なる。これによりストレッチャ1と手術台5との接続が完了し、手術台5上に乗ったテーブル8のスライド部8bをストレッチャ1の天板4上に円滑に移動させることができ、又はストレッチャ1の天板4上に乗ったテーブル8のスライド部8bを手術台5上に戻すことができる。
【0033】
また、上記接続状態において、逆にテーブル8を上昇させると、テーブル8の固定部8aと爪21aとの噛み合いが解かれ、ストレッチャ1は手術台5から離れることができ、第一のストッパ16はスプリング22の付勢力によって天板4上に突出する。
【0034】
第二のストッパ17は、天板4が上記検査機器であるMRI装置11に接続された時に天板4下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板4上に突出可能に構成される。
【0035】
具体的には、第二のストッパ17は、図7及び図10に示すように、天板4下の車台3に垂直に固定されたレール23に滑り子24を介して噛み合う。第二のストッパ17は、滑り子24を介しレール23に沿って上方向にスライドすると孔17aから天板4上に突出し、下方向にスライドすると天板4下に没する。
【0036】
第二のストッパ17には取っ手25が取付けられ、作業者がこの取っ手25を持って操作することで第二のストッパ17は上下方向にスライド可能である。
【0037】
図10及び図11に示すように、車台3の天板4下には、第二のストッパ17の下端に接離可能にカム片26が設けられる。カム片26はスライド棒27に固定される。スライド棒27は天板4の下方において天板4の長手方向に沿ってスライド可能である。図11中、二点鎖線で示すように、スライド棒27が天板4の長手方向の一端側へとスライドした位置にあるとすると、カム片26も同様な位置にあって第二のストッパ17を天板4の上方へと突出させる。実線で示すように、スライド棒27が天板4の長手方向の他端側へとスライドすると、カム片26も同様にスライドし、第二のストッパ17を天板4の下方へと没入させる。
【0038】
上記スライド棒27のスライド運動を案内する案内片28,29が、車台3における天板4の長手方向の一端下と、第二のストッパ17の下方とに各々固定される。
【0039】
スライド棒27は一方の案内片28を貫通して天板4外へと突出し、その突出端にはMRI装置11の一部である筐体等に接触しうる接触子27aが設けられる。また、スライド棒27は他方の案内片29内に挿入され、この案内片29とスライド棒27の後端との間に収納されたスプリング30によって、その接触子27aを天板4外へと突出させる方向に常時付勢される。
【0040】
これにより、図6及び図11に示すように、ストレッチャ1をMRI装置11に近づけて接触子27aをMRI装置11の筐体等に接触させると、スプリング30の付勢力に抗するようにスライド棒27がスライドし天板4の内方へ引っ込む。これに連動してカム片26が第二のストッパ17の直下から離脱し、第二のストッパ17は支えを失って自重で落下し、案内片29に当たって停止する。これにより、第二のストッパ17は天板4下に没する。第二のストッパ17が天板4下に没することにより、ストレッチャ1とMRI装置11との接続が完了し、天板4上のテーブル8のスライド部8bはMRI装置11内へと円滑に移動可能になる。
【0041】
なお、図10及び図11に示すように、天板4の端の左右両側には、MRI装置11の筐体等に接触可能に突起31が設けられる。突起31には、テーブル8のスライド部8bのスライドを円滑に行うためにローラ32が設けられる。
【0042】
上記とは逆に、作業者が取っ手25を持って第二のストッパ17を天板4上へと持ち上げると、カム片26が第二のストッパ17による押圧を解かれ、スプリング30の弾性によってスライド棒27と共に二点鎖線で示す元の位置に復帰し、接触子27aが再び天板4外へと突出して停止する。そして、作業者が取っ手25から手を離して第二のストッパ17を解放すると、第二のストッパ17がカム片26に当たって停止し、天板4上に突出した姿勢を保つ。
【0043】
次に、上記構成のストレッチャの作用について説明する。
【0044】
(1)図12(A)に示すように、手術台5のテーブル8のスライド部8b上に患者Aが乗せられ、この患者Aの例えば頭部に対し脳腫瘍を摘出する外科手術が行われる。
【0045】
(2)手術がある程度進行すると、脳腫瘍の摘出状況を検査するために手術が中断され、図12(B)に示すように、ストレッチャ1が手術台5の近傍へ搬送される。
【0046】
(3)図12(B)に示すように、ストレッチャ1が手術台5に近づけられ、図8及び図9に示すように、受容片13,13間に凸片14が押し込まれると、ストレッチャ1の一端が手術台5のテーブル8の一端に接触して停止する。そこで、テーブル8を降下させると、テーブル8の固定部8aに連結片21の爪21aが食い込む。さらに、テーブル8を降下させ続けると、スプリング22の付勢力に抗してスライダ19がレール18に沿って降下し、第一のストッパ16が天板4の孔16aから天板4下に没し、連結片21もその爪21aがテーブル8の固定部8aに食い込んだ状態で穴3a内を降下する。
【0047】
第一のストッパ16等が所定位置まで降下した後、テーブル8の降下を停止させると、図12(C)に示すように、テーブル8のスライド部8bの上面がストレッチャ1の天板4の上面に連なる。これにより、ストレッチャ1と手術台5との接続が完了する。
【0048】
(4)図13(D)に示すように、作業者によってテーブル8のスライド部8bが患者Aを乗せたままで手術台5上からストレッチャ1の天板4上へ移し替えられる。その際、スライド部8bはストレッチャ1の左右の案内部12によっても案内される。
【0049】
(5)上記テーブル8にストレッチャ1が接続された状態において、手術台5のコラム7の伸び操作によってテーブル8が上昇すると、図9中二点鎖線で示すように、テーブル8の固定部8aと爪21aとの噛み合いが解かれ、ストレッチャ1は手術台5から分離可能になり、図13(E)に示すように、第一のストッパ16はスプリング22の付勢力によって天板4上に突出する。
【0050】
(6)図13(E)に示すように、天板4上に乗り移ったテーブル8のスライド部8bは、ストレッチャ1の天板4上においてその長手方向の両側から第一と第二のストッパ16,17によって挟まれる。これにより、スライド部8bはストレッチャ1によって搬送される際に、天板4上での移動や天板からの脱落が防止される。
【0051】
(7)図13(F)、図6及び図11に示すように、ストレッチャ1がMRI装置11に近づけられ、接触子27aがMRI装置11の一部である筐体等に接触すると、スプリング30の付勢力に抗するようにスライド棒27がスライドし天板4の内方側へ引っ込む。これに連動してカム片26が第二のストッパ17の直下から離脱し、第二のストッパ17は支えを失って自重で落下し、案内片29に当たって停止する。これにより、図13(F)に示すように、第二のストッパ17は天板4下に没する。
【0052】
かくて、ストレッチャ1とMRI装置11との接続が完了する。
【0053】
(8)図13(G)に示すように、第二のストッパ17が天板4下に没することにより、天板4上のテーブル8のスライド部8bはMRI装置11内へと円滑に移動可能になる。
【0054】
スライド部8bがMRI装置11内で停止した後、スライド部8b上の患者Aの頭部がMRI装置11によって画像診断され、脳腫瘍の除去具合が検査され確認される。
【0055】
(9)図14(H)に示すように、天板4上のテーブル8のスライド部8bが患者AごとMRI装置11外に引き出され、ストレッチャ1の天板4上へと戻される。
【0056】
(10)作業者によってストレッチャ1がMRI装置11から引き離されたうえで、図11中二点鎖線で示す如く、作業者によって取っ手25が持ち上げられると、第二のストッパ17が天板4上へと上昇し、また、カム片26から離れる。カム片26はスプリング30の弾性によってスライド棒27と共に元の位置に復帰し、図14(I)のごとく接触子27aが再び天板4外へと突出して停止する。また、作業者が取っ手25から手を離して第二のストッパ17を解放すると、第二のストッパ17の下端がカム片26に当たって停止し、天板4上に突出した姿勢を保つ。
【0057】
(11)天板4上に乗り移ったテーブル8のスライド部8bは、再び図13(E)に示すように、ストレッチャ1の天板4上においてその長手方向の両側から第一と第二のストッパ16,17によって挟まれる。これにより、スライド部8bはストレッチャ1によって搬送される際に、天板4上での移動や天板4からの脱落が防止される。
【0058】
(12)ストレッチャ1上のスライド部8b及び患者Aは、図12(B)〜(C)、図13(D)に示した操作と逆の操作によって、図12(A)のごとく再び手術台1上に戻され、手術が再開される。
【0059】
その後、MRI装置による画像診断が必要になる都度、上記(2)〜(12)の操作が繰り返される。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば上記実施の形態では患者の頭部の施術について説明したが他の部位の施術についても適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…ストレッチャ
2…車輪
3…車台
4…天板
5…手術台
8…テーブル
11…検査機器
12…案内部
16…第一のストッパ
17…第二のストッパ
21…連結片
27a…接触子
A…患者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を転動可能な車輪で支えられた車台と、この車台上に設置された天板とを具備したストレッチャにおいて、手術台に離脱可能かつスライド可能に装着された患者を乗せるテーブルが上記手術台上でスライドする際に、このスライドするテーブルを上記天板上へと案内する案内部が上記天板に設けられ、上記天板における上記手術台に接続する側と検査機器に接続する側には上記天板に乗った上記テーブルの端部に各々対向しうる第一と第二のストッパが設けられ、上記第一のストッパは、上記天板が上記手術台に接続された時に天板下に没入可能であり、上記手術台との接続が解かれた後に天板上に突出可能とされ、上記第二のストッパは、上記天板が上記検査機器に接続された時に天板下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板上に突出可能とされたことを特徴とするストレッチャ。
【請求項2】
請求項1に記載のストレッチャにおいて、上記第一のストッパに連結片が固定され、この連結片が上記手術台に連結された時にこの連結片を介して上記第一のストッパを上記天板下に没入させ、上記連結片が上記手術台から離反した時にこの連結片を介して上記第一のストッパを上記天板上に突出させるようにしたことを特徴とするストレッチャ。
【請求項3】
請求項1に記載のストレッチャにおいて、上記検査機器に向かって突出する接触子が設けられ、この接触子が上記検査機器の一部に接触すると、この接触子に連動して上記第二のストッパが上記天板下に没入するようにしたことを特徴とするストレッチャ。
【請求項1】
床面上を転動可能な車輪で支えられた車台と、この車台上に設置された天板とを具備したストレッチャにおいて、手術台に離脱可能かつスライド可能に装着された患者を乗せるテーブルが上記手術台上でスライドする際に、このスライドするテーブルを上記天板上へと案内する案内部が上記天板に設けられ、上記天板における上記手術台に接続する側と検査機器に接続する側には上記天板に乗った上記テーブルの端部に各々対向しうる第一と第二のストッパが設けられ、上記第一のストッパは、上記天板が上記手術台に接続された時に天板下に没入可能であり、上記手術台との接続が解かれた後に天板上に突出可能とされ、上記第二のストッパは、上記天板が上記検査機器に接続された時に天板下に没入可能であり、接続が解かれた後に天板上に突出可能とされたことを特徴とするストレッチャ。
【請求項2】
請求項1に記載のストレッチャにおいて、上記第一のストッパに連結片が固定され、この連結片が上記手術台に連結された時にこの連結片を介して上記第一のストッパを上記天板下に没入させ、上記連結片が上記手術台から離反した時にこの連結片を介して上記第一のストッパを上記天板上に突出させるようにしたことを特徴とするストレッチャ。
【請求項3】
請求項1に記載のストレッチャにおいて、上記検査機器に向かって突出する接触子が設けられ、この接触子が上記検査機器の一部に接触すると、この接触子に連動して上記第二のストッパが上記天板下に没入するようにしたことを特徴とするストレッチャ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−245094(P2011−245094A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122649(P2010−122649)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
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