説明

スナゴケを用いた緑化シート

【課題】
土壌や砂状を使用しないで、容易に屋上や壁面、法面を緑化可能とするシート状の緑化物を提供する。
【解決手段】
ガラス繊維を織り込んでなるガラスクロスシート材に塗布したゴム系樹脂上にスナゴケを生育させてなるスナゴケを用いた緑化シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナゴケを用いた緑化シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコケ植物を用いた緑化材として、例えば、特開2009-72185号公報に開示のものが知られている。同公報の開示は、発明名称「コケ植物を用いた緑化用材料とその製造方法並びに緑化工法」に係り、「極めて短時間で下地材へのコケの固着を安定的に行なうことの出来る緑化用材料を提供・・・更に、緑化工事現場でも工事面や下地材へのコケの固着を速やかに行なうことの出来る工法の提供」を目的として(同公報明細書段落番号0006参照)、「スナゴケ又はスナゴケにハイゴケやフデゴケを混生させた混生物を用いたコケ植物(3)を、砂状物(2a)と耐水性接着剤(2b)とが混合されて排水性に富んだ下地材(2)の表面、又は、水硬化性有機高分子多孔質接着剤(15)の表面に固着する」構成により(同公報要約書解決手段の記載参照)、「緑化工事現場で容易にコケ植物の固着作業を行なうことができ、しかも安定的に固着保持され・・・・予め時間を掛けて下地材に保持させる従来法に比して極めて容易にコケ植物を用いた緑化工事を行なうことが可能」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0016ないし0022参照)。
【0003】
しかしながら、特開2009-72185号公報に開示のものは、下地材を必須とし、かつ、その下地材としては、「砂状物として、泥状の土壌や粘土状の土壌以外の適宜の粒度分布を有する微細な砂状物」を前提とするものであり、土等を一定の厚さに盛り込み、所定の厚さの体積を有し、過重な力等が加わると砂状物が崩れ落ちる危険あり、その取扱いには慎重に移動しなければならない等不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-72185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、土壌や砂状を使用しないで、容易に屋上や壁面、法面を緑化可能とするシート状の緑化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、スナゴケを用いた緑化シートにおいて、ガラス繊維を織り込んでなるガラスクロスシート材に塗布したゴム系樹脂上にスナゴケを生育させてなることを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は。前記請求項1に係るスナゴケを用いた緑化シートにおいて、ガラス繊維を織り込んでなるガラスクロスシート材にゴム系防水樹脂を塗布し、その上に粉砕したスナゴケを散布し、所定のコーティングの後、養生して発芽させたことを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1又は2に係るスナゴケを用いた緑化シートにおいて、前記ガラスクロスシートは、厚さが0.23mm程度で、その上に3〜5mm程度の前記ゴム系防水樹脂を塗布し、スナゴケ育成前において全体としての厚さが6mm程度以下であることを特徴とする。
そして、本願請求項4に係る発明は、スナゴケを用いた緑化シートにおいて、タイルカーペットに塗布したゴム系樹脂上にスナゴケを生育させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るスナゴケを用いた緑化シートによれば、次のような効果を有する。
(1)取扱いに容易で、かつ、取り置きにも広い場所を要することのない。
(2)スナゴケは乾燥に強いので、保管に際しては、維持が容易である。
(3)スナゴケは、乾燥状態ではいわば休眠状態となり、緑化の必要な場所にこのシートを布設して水分を補給することにより生育し、緑化を可能とする。
(4)生育後も水分補給がなければ所定の乾燥の後、休眠状態にはいるので、保存維持に極めて容易である。
(5)シート状であるので適宜い切り分けることができ、任意の形で切って、任意の形を緑化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シート1をスナゴケを用いた緑化シート1の水分補給が充分な場合の概略模式図であり、同(b)は、その場合の部分を拡大した模式図、
【図2】図2(a)は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シート1のスナゴケが乾燥により、葉を閉じて筆状の茎だけが残った状態を示す概略模式図であり、同(b)は、葉を閉じて筆状の茎だけが残った状態の部分を拡大した模式図、
【図3】図3は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを作成するための、厚さ0.23mmの上記シート材を幅300mm、長さ600mmに切り取った状態を示す図、
【図4】図4は、同シート材に二液性ウレタン塗膜防水樹脂「プルーフロンエコ」を塗布した状態を示す図、
【図5】図5(a)は、Mサイズ、Sサイズのスナゴケが表面が見えなくなる程度に散布された状態の概略図であり、図5(b)は、その部分拡大概略図
【図6】図6は、ローラで圧力を掛けてMサイズのスナゴケを樹脂に固着される様子を示す概略図、
【図7】図7は、水で薄めたコーティング材を吹き付けている様子を示す概略図、
【図8】図8は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートが休眠状態にある場合に巻き込んで保存する様子の概略図、
【図9】図9は、同休眠状態にある本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを複数枚を重ねて保存する様子を示す概略図、
【図10】図10は、本実施例2に係るスナゴケを用いた緑化シートに使用するタイルカーペットの構造を示す図、
【図11】図11は、本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10の作成におけるウレタン塗膜防水樹脂の塗布作業の概略を示す図、
【図12】図12は、Mサイズ、Sサイズの二種類の粉砕スナゴケを散布する状態の概略を示す図、
【図13】図13は、ローラで圧力を掛けてMサイズ、Sサイズのスナゴケを樹脂に固着される様子を示す概略図、
【図14】図14は、水で薄めたコーティング材を吹き付けている様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るスナゴケを用いた緑化シートを実施するための最良の形態である実施例1に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを作成するためには、次の「ガラスクロスシート材」、「ウレタン塗膜防水樹脂」、「コーティング材」、「スナゴケ」を必要とする。なお、これらの材料は、本発明の目的ないしは作用効果を勘案して、これらの材料に限定されるものではなく、必要な限度でその形状、材質等の性質を適宜変更することを妨げない。
【0011】
(ガラスクロスシート材)
本実施例1に係るスナゴケを利用した緑化シートを作成する際のシート地としては、ユニチカ製FRP用処理クロス製品(品番M200K104H)又は防水・床材用目止め処理クロス製品(品番H201MC107F)を使用した。
FRP用処理クロス製品(品番M200K104H)は、厚さ0.23mmで、206(g/m2)の質量のもので、タテ糸、ヨコ糸それぞれ135.0テックス(単位長さ1000mあたりの糸の重さが1g=1テックス)の合撚糸ガラス長繊維が交互に織り込まれ、樹脂含浸させる場合に脱泡しやすくするために目があいている平織シートで、25mmの間にタテ糸19本、ヨコ糸が18本の糸密度(本/25mm)のものであり、樹脂の含浸、接着性を考慮したカップリング処理が施されている。
【0012】
また、防水・床材用目止め処理クロス製品(品番H201MC107F)は、厚さ0.17mmで、210(g/m2)の質量のもので、タテ糸、ヨコ糸それぞれ67.5テックス(単位長さ1000mあたりの糸の重さが1g=1テックス)の合撚糸ガラス長繊維が交互に織り込まれ、樹脂含浸の際の脱泡を容易にする目のあいた平織シートで、25mmの間にタテ糸42本、ヨコ糸が32本の糸密度(本/25mm)のものであり、このクロス製品は、縦方向・横方向の引張強さがそれぞれ1,850(N/25mm)、1,450(N/25mm)のものであり(ただし、N=0.102kgf)、取扱いに際し、タテ糸・ヨコ糸の織目のズレやほつれが発生しないように目止め処理がされたものである。
これらのガラスクロスシート材は、ガラス樹脂であるため、劣化に強く,悪環境下でも腐らず、以下の樹脂が塗布されることによって強度上も優れたものとなる。
【0013】
(ウレタン塗膜防水樹脂)
次に、本実施例1に係るスナゴケを利用した緑化シートを作成する際の樹脂として、日本特殊塗料製二液性ウレタン塗膜防水樹脂「プルーフロンエコ」を使用した。同樹脂は、いわゆるゴム系樹脂で、日本ウレタン建材工業会の「環境対応型ウレタン防水材システム」認定を取得する環境対応仕様の製品で、人体や動物に有害な鉛やクロムを含まず、厚生労働省、文部科学省、国土交通省が建材や建築工事への使用を規制しているホルムアルデヒドやトルエン等の規制対象物質や環境ホルモンの疑いのある可塑剤を使用しない樹脂であり、工法的には、下地処理を必要とせず、従来ウレタン塗膜防水材を使用できなかった塗膜を可能とした樹脂である。また、主材及び硬化剤の二液からなる速硬化タイプで強力な密着力と弾性に富み、高耐久性、高耐候性に優れ、紫外線で劣化しない、伸縮に強い、防水に優れる等の特徴を有する樹脂である。
【0014】
(コーティング材)
本実施例1に係るスナゴケを利用した緑化シートを作成する際のコーティング材としては、緑化促進・法面侵食防止・飛砂防止剤として使用される栗田工業製クリコート(登録商標)C−710を使用した。同コーティング材は、合成樹脂エマルジョンを主成分とする。
【0015】
(スナゴケ)
キボウシゴケ科シモフリゴケ属の苔植物で、砂等の極めて水はけの良い場所でも適度の日光ににより生育し、成長しても最大2〜3cm程度に延びるだけで、個々の根から不規則的に枝分かれし、各枝に杉の葉状に細かな葉がつき、水分補給がない時は、枯れたような状態でも生き続け、少しでも水分が補給されると、生育が再開される。すなわち、乾燥すると葉を閉じて筆状になり、水分を含むと葉が広がって緑となり、全体としては、緑の絨毯が敷き詰められた観の群落を形成する。水分状態に対応して植物の形を変えることができ、乾燥しやすい立地での生育を可能とする特徴を有する。
【0016】
(本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートの概略)
図1、図2は、本発明に係るスナゴケを用いた緑化シートを作成するため概略図であり、そのうち、図1(a)は、実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シート1をスナゴケを用いた緑化シート1の水分補給が充分な場合の概略模式図であり、同(b)は、その場合の部分を拡大した模式図である。また、図2(a)は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シート1のスナゴケが乾燥により、葉を閉じて筆状の茎だけが残った状態を示す概略模式図であり、同(b)は、葉を閉じて筆状の茎だけが残った状態の部分を拡大した模式図である。図1(a)(b)において、符号1は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シート1、2は、同シート1上に生育されるスナゴケであり、図2(a)(b)において、符号1は、同シート、3は、スナゴケの茎を示す。
【0017】
なお、上述するように、図1(a)は、水分を補給した場合の本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シート写真から模式的に表した図であり、図2(a)は、乾燥して筆状態の茎だけが残った実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シート写真を模式的に表した図であり、実際には、それらの印象等が若干異なるので、理解容易のため基礎となった同写真を別途提出する。
【0018】
(本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートの作成)
図3〜図7は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを作成する要領を示す概略図である。
(1)まず、上述のガラスクロスシート材を用意する。同シート材は、通常幅1040mm長さ120m程度のロール状に巻き込まれた状態から必要な大きさに切り込んで使用する。本実施例1においては、幅300mm、長さ600mm(このサイズのシート材は5.5枚で1.0m2となる)の大きさに切ったシート材を使用した。図3は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを作成するための、厚さ0.23mmの上記シート材を幅300mm、長さ600mmに切り取った状態を示す図であり、図3では、比較的大きなメッシュで示しているが、実際は、裏側が漸く透けて見える程度のメッシュのもの,あるいは、およそ1mm間隔のメッシュである。図3において、符号4はシート材であり、符号5は、メッシュ状ガラスクロス繊維
【0019】
(2)このような所定形のガラスクロスシート材に上述の主材・硬化剤からなる二液性ウレタン塗膜防水樹脂「プルーフロンエコ」の主材、硬化剤を塗布5分程度前に主材:硬化剤を1:2の割合で混合した後、前記シート材に3〜5mmの厚さに塗布する。二液性ウレタン塗膜防水樹脂「プルーフロンエコ」は、本来的には、防水を目的としたゴム系の樹脂なので、成型後もひび割れ等の恐れがなく安定した使用ができる。図4は、同シート材に二液性ウレタン塗膜防水樹脂「プルーフロンエコ」を塗布した状態を示す図であり、図4において、6は、塗布されるゴム系樹脂である。
【0020】
(3)次いで、上記育成されたスナゴケを粉砕機に掛け、その後、篩に掛けて、(a)3〜7mm以上のスナゴケ(Mサイズ)、(b)3mm以下のスナゴケ(Sサイズ)に分け、このMサイズのスナゴケを8割程度、また、上記Sサイズのスナゴケを2割程度の比率として分けておき、最初に,上記Mサイズのスナゴケを約30cmの高さから散布する。次いで、残りのSサイズのスナゴケ2割を同散布する。
この粉砕スナゴケは、1.0m2当たり上記Mサイズ、Sサイズのスナゴケを合わせて200g程度の散布量となる程度、すなわち、上記幅300mm、長さ600mmのサイズのシート材を5.5枚程度の大きさに対し、Mサイズ、Sサイズ合わせて、合計200g程度の粉砕スナゴケ(M8割、S2割程度)を散布する。
【0021】
上記のMサイズのスナゴケは、粉砕されたとはいえ、各枝に杉の葉状に細かな葉がついたものであり、散布時の落下状態では、落下の際の空気抵抗のため、枝部分が下となり、葉部分が上となって(いわゆる「パラシュート状に」)落下するために、根本の茎部分が上記樹脂に食い込むように落下し、スナゴケが本来生育している状態を容易に保つ状態で付着(定着)することとなる。
【0022】
図5(a)は、Mサイズ、Sサイズのスナゴケが表面が見えなくなる程度に散布された状態の概略図であり、図5(b)は、その部分拡大概略図であり、図7(a)(b)において、符号7は、散布される粉砕スナゴケである。
(4)散布が終了後、表面をローラで圧力を掛ける。圧力程度は、Mサイズスナゴケが樹脂に埋没しないで固着されているのが分かる程度で充分である。
図6は、ローラで圧力を掛けてMサイズのスナゴケを樹脂に固着される様子を示す概略図であり、符号4は、前記シート、7は、前記散布された粉砕スナゴケ、8は、ローラである。
【0023】
(5)次いで、前記コーティング材クリコート(登録商標)C−710を水で3倍に薄め(水3:コーティング材1)、表面をコーティングする。コーティングは、水で薄めたコーティング材をスプレー手段で吹き付けて行うもので、樹脂表面に充分に行き渡れば良い。本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートは、前記ガラスクロスシート材の厚さが、0.23mm程度で、前記ゴム系防水樹脂を3〜5mm程度に塗布するので、この状態では、スナゴケ育成前において、全体としての厚さが6mm程度以下となり、スナゴケ育成前においては、全体としての厚さが6mm程度以下となり、薄くて処理し易いものである。
図7は、水で薄めたコーティング材を吹き付けている様子を示す概略図であり、符号9は、スプレー器である。
【0024】
(6)コーティングが終了したら,養生を行う。養生は、室温25℃以上、湿度90%以上の暗所環境で約3ヶ月程度行い、スナゴケを発芽させる。発芽したスナゴケは、茎が樹脂に固着され、シート上に生育することとなる。
そこで、シート上に生育された本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを緑化の必要な箇所に貼り付ければスナゴケによる緑化が可能となる。様々な形に切り込んで適宜の場所に貼り付けることで、例えば、垂直の壁や山型状の屋根等にも容易に貼り付けて緑化することができる。
【0025】
また、スナゴケを利用するものであるから、生育後であっても、水分補給をしなければ、スナゴケは、枯れたような状態となる休眠状態となるが、それでも生き続け、少しでも水分が補給されると、生育が再開される。すなわち、乾燥すると葉を閉じて筆状になり、そのままの状態で休眠状態となる。そして、水分が補給されると、葉が広がって緑となり、全体としては、緑の絨毯が敷き詰められた観の群落を形成する。
【0026】
この休眠状態は、冷暗所等保存状態が良ければ4、5年間もの長期にわたる保存が可能であり、その間は、例えば、図8に示すように、各シートを巻き込んで保存したり、図9に示すように、複数枚のシート重ねて保存することもでき、保存に容易であり、また、緑化が必要な時には、保存状態から、適宜に切り込んで適宜の場所に貼れば、当該場所の緑化に寄与することとなる。図8は、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートが休眠状態にある場合に巻き込んで保存する様子の概略図であり、図9は、同休眠状態にある本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを複数枚を重ねて保存する様子を示す概略図である。
【実施例2】
【0027】
上記実施例1では、ガラスクロスシート材として、ユニチカ製FRP用処理クロス製品(品番M200K104H)又は防水・床材用目止め処理クロス製品(品番H201MC107F)を使用したが、これは、ガラスクロスシート材に限るものではない。他のシート材、例えば、タイルカーペット材を使用するものであっても良い。
本願発明者は、実施例2として、上記ガラスクロスシート材に替えて、タイルカーペット材にスナゴケを用いたタイルカーペットスナゴケ緑化シートを検討した。
【0028】
本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シートに使用されるタイルカーペットとは、正方形のタイル状にカッティングされたカーペット(例えば、500mm×500mm×厚さ6.2mm)であって、店舗や事務所に床面につなぎ合わせて敷き詰めて床全面に布設することによって1枚のカーペットを敷き詰めたと同じようにすることができる。また、床面の寸法に合わせて最終的には、一部を床形状に合わせて切り込むことにより、全面布設を可能とする。広く大きな布設スペースであっても、端から順次敷き詰めて行き、最終的に500mm以下のスペースに対して、タイルカーペットを残された形状に合わせて切り込むことにより、容易に床全体に敷き詰めることができる。
【0029】
図10は、本実施例2に係るスナゴケを用いた緑化シートに使用するタイルカーペットの構造を示す図である。図10において、11は、タイルカーペット、12は、裏面ラバー(ゴム)、13は、該ラバー12上に形成されるパッキング材、14は、該パッキング材13に埋め込まれたパイル糸であり、通常この種のタイルカーペット11は、裏面ラバー12として、所定厚さのゴム材からなり、また、前記パッキング材13としては、ガラス不織布を塩化ビニル樹脂で固められたものを使用し、さらに、前記パイル糸14としては、ループ状の100%ポリプロピレン原着撚糸を使用し、通常パイル長3.5mm長程度で、全体の厚さとしては、6.2mm程度に形成される。また、パイル密度(単位面積当りのパイル本数)としては、1/10G×10.5ST程度のものを用いた。ここで、1/10Gとは、1/10ゲージ、すなわち、1インチの間に10本のパイルがあることを示し、また、10.5STとは、10.5ステッチ、すなわち、1インチの間に10.5本のパイルがあることを意味する。
【0030】
このようなタイルカーペット11を用意し、本実施例2に係るスナゴケを用いた緑化シートを作成する。上記タイルカーペット11を使用する以外は、上記実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートと同じウレタン塗膜防水樹脂、粉砕スナゴケ、コーティング材を用いる。
しかし、本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10は、スナゴケを生育させた後に、複数の本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10をつなぎ合わせて広く敷き詰めて行く必要があることから、接合端にウレタン塗膜防水樹脂やスナゴケ、コーティング材ははみ出すようでは、隙間なく複数の本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10をつなぎ合わせて広く敷き詰めて行くことができない。そこで、本実施れ2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10を作成する際には、この端部の処理に工夫を凝らした。
【0031】
図11は、本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10の作成におけるウレタン塗膜防水樹脂の塗布作業の概略を示す図である。
図11において、11は、前記タイルカーペット、15は、作業台、16は、当該作業台15に開閉可能に設けられた枠、17は、前記枠16内の開口部、18は、前記ウレタン塗膜防水樹脂であり、19は、該ウレタン塗膜防水樹脂18を入れた容器である。
【0032】
前記枠16は、寸法が当該タイルカーペット11の大きさの開口部17を有し、当該開口部17に当該タイルカーペット11は隙間なく収まる。そして、前記タイルカーペット11を当該開口部17内に隙間なく納まると、該枠16の表面が前記タイルカーペット11の表面より若干高い(3〜5mm程度高くなる程度)寸法を有する。
【0033】
(1)まず、前記枠16を持ち上げて、前記タイルカーペット11を前記作業台15上に載置したら、前記枠16を閉じて、前記枠16の開口部17内に前記タイルカーペット11がぴったり収まるように載置する。次いで、前記ウレタン塗膜防水樹脂18を前記容器19から流し込み前記枠16と同一の面一となるように塗布する。すなわち、本実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートにおいて用いた主材・硬化剤からなる二液性ウレタン塗膜防水樹脂「プルーフロンエコ」の主材、硬化剤を塗布5分程度前に主材:硬化剤を1:2の割合で混合した後、前記タイルカーペット11の上に3〜5mmの厚さになるように、前記枠16と面一の高さに塗布する。
【0034】
(2)次いで、上記実施例1に係るスナゴケを用いた緑化シートを作成したと同様に、育成されたスナゴケを粉砕機に掛け、その後、篩に掛けて、(a)3〜7mm以上のスナゴケ(Mサイズ)、(b)3mm以下のスナゴケ(Sサイズ)に分け、このMサイズのスナゴケを8割程度、また、上記Sサイズのスナゴケを2割程度の比率として分けておき、最初に,上記Mサイズのスナゴケを約30cmの高さから散布する。次いで、残りのSサイズのスナゴケ2割を同散布する。
【0035】
図12は、Mサイズ、Sサイズの二種類の粉砕スナゴケを散布する状態の概略を示す図であり、図12において、符号7は、上記実施例1に係るスナゴケを緑化シートを作成した同様の散布される粉砕スナゴケであり、20は、篩である。上述するように、粉砕スナゴケは、1.0m2当たり上記Mサイズ、Sサイズのスナゴケを合わせて200g程度の散布量となる程度、すなわち、上記幅300mm、長さ600mmのサイズのシート材を5.5枚程度の大きさに対し、Mサイズ、Sサイズ合わせて、合計200g程度の粉砕スナゴケ(M8割、S2割程度)を散布する点では、上記実施例1に係るスナゴケを利用する緑化シートの作成の場合と同様である。
【0036】
(3)粉砕スナゴケ7の散布が終了後、散布された前記タイルカーペット11の表面をローラで圧力を掛ける。圧力程度は、Mサイズスナゴケが樹脂に埋没しないで固着されているのが分かる程度で充分である。
図13は、ローラで圧力を掛けてMサイズ、Sサイズのスナゴケを樹脂に固着される様子を示す概略図であり、符号11は、前記タイルカーペットシート、7は、前記散布された粉砕スナゴケ、8は、ローラ,15は、作業台である。
【0037】
(4)次いで、上記実施例1に係るスナゴケを利用する緑化シート作成の場合と同様に、前記コーティング材クリコート(登録商標)C−710を水で3倍に薄め(水3:コーティング材1)、表面をコーティングする。
本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10も、前記タイルカーペット11の厚さが、6.2mm程度で、前記ゴム系防水樹脂を3〜5mm程度に塗布するので、この状態では、スナゴケ育成前において、全体としての厚さが10mm程度となる。
【0038】
図14は、水で薄めたコーティング材を吹き付けている様子を示す概略図であり、符号9は、スプレー器、15は,作業台、21は、コーティング剤である。
(5)コーティング処理が終了したら,スナゴケの養生を行う。養生は、上記実施例1に係るスナゴケを利用する緑化シートと同様、室温25℃以上、湿度90%以上の暗所環境で約3ヶ月程度行い、スナゴケを発芽させる。
発芽したスナゴケは、茎が樹脂内に入り込んで生育され、前記タイルカーペット11の表面に生育することとなる。
【0039】
そこで、スナゴケが表面に生育された本実施例2に係るタイルカーペットスナゴケ緑化シート10を緑化の必要な箇所に順次つなぎ合わせれば、上記実施例1に係るスナゴケを利用する緑化シートと同様にスナゴケによる緑化が可能となる。広大な床面をスナゴケのよるカーペットとすることもでき、ビルの屋上等の緑化に利用できる。
【0040】
また、上記タイルカーペットスナゴケ緑化シートは、実施例1に係るスナゴケを利用する緑化シートと同様に、生育後であっても、水分補給をしなければ、スナゴケは、枯れたような状態となる休眠状態を維持し、その後、水分が補給されると、生育が再開される。すなわち、乾燥すると葉を閉じて筆状になり、そのままの状態で休眠状態となる。そして、水分が補給されると、葉が広がって緑となり、全体としては、緑の絨毯が敷き詰められた観の群落を形成する。
この休眠状態は、実施例1に係るスナゴケを利用する緑化シート同様に冷暗所等保存状態が良ければ4、5年間もの長期にわたる保存が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、屋上緑化等の緑化事業に利用される。
【符号の説明】
【0042】
1:緑化シート
2:スナゴケ
3:スナゴケ2の茎
4:シート材
5:メッシュ状ガラスクロス繊維
6:塗布されるゴム系樹脂
7:散布される粉砕スナゴケ
8:ローラ
9:スプレー器
10 タイルカーペットスナゴケ緑化シート
11 タイルカーペット
12 裏面ラバー
13 パッキング材
14 パイル糸
15 作業台
16 枠
17 開口部
18 ウレタン塗膜防水樹脂
19 容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を織り込んでなるガラスクロスシート材に塗布したゴム系樹脂上にスナゴケを生育させてなることを特徴とするスナゴケを用いた緑化シート。
【請求項2】
前記スナゴケを用いた緑化シートは、ガラス繊維を織り込んでなるガラスクロスシート材にゴム系防水樹脂を塗布し、その上に粉砕したスナゴケを散布し、所定のコーティングの後、養生して発芽させたことを特徴とする請求項1に記載のスナゴケを用いた緑化シート。
【請求項3】
前記ガラスクロスシートは、厚さが0.23mm程度で、その上に3〜5mm程度の前記ゴム系防水樹脂を塗布し、スナゴケ育成前において全体としての厚さが6mm程度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスナゴケを用いた緑化シート。
【請求項4】
タイルカーペットに塗布したゴム系樹脂上にスナゴケを生育させてなることを特徴とするスナゴケを用いた緑化シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−170430(P2012−170430A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37930(P2011−37930)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511049277)
【Fターム(参考)】