説明

スナップ硬化調合済み目地材

目地材システムは、硬化抑制、予備湿潤、硬化型の調合済み目地材と、硬化開始剤とを含む。硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材は、調合済み、硬化型の目地材ベースと、硬化型の目地材の石こう成分の化学的水和を妨げるカルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤とを含む。目地材ベースは、炭酸カルシウムを含まない。硬化開始剤は、化学的水和反応を再開するためにミョウバンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調合済み目地材に関する。特に、所定の時間内に即時かつ信頼性よく化学的に硬質化する目地材に関する。
【背景技術】
【0002】
石こうウォールボードでできた壁は、従来、ウォールボードパネルをスタッドに取り付け、パネル間の目地を、目地材と呼ばれる特別に処方した組成物により充填およびコートすることにより構築される。湿潤目地材(乾燥型、テーピング等級)が、ウォールボードパネルの隣接端により形成される目地内に配置され、補強紙テープを、目地材と共に目地に埋め込んでから、乾燥させる。目地材を乾燥するとき、第2の目地材(上塗りまたは仕上げ等級)を、目地に適用し、同じく乾燥させる。目地材の第3の適用が通常必要であり、乾燥後、軽く磨き、装飾材料(塗料、テクスチャまたは壁紙)で従来通り仕上げてから、壁に適用する場合がある。2つの等級の目地材を用いる代わりに、テープの埋め込みと仕上げコートの両方に用いられる汎用目地材が市販されている。ファイバーガラス補強テープを用いる場合は、目地材の適用前に壁に適用し、化学硬化型の目地材と共に用いる。テーピング工程については、硬化型の目地材は、ファイバーガラステープに適用されてから、テープを貫通する。
【0003】
従来、目地材は全て、フィラー、バインダーおよび増粘剤を含有する。テーピング等級の目地材は、概して、上塗り等級よりも多くのバインダーを含有する。従来のフィラーは、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物(石こう)および硫酸カルシウム半水和物(焼き石こう)である。硫酸カルシウム半水和物は、米国特許第3,297,601号明細書に開示された通り、硬化型の目地材にのみ用いられる。現在の建設施工においては、概して、炭酸カルシウムか石こうフィラーのいずれかを含有する調合済み予備湿潤乾燥型の目地材を用いるのが好ましい。調合済み、予備湿潤、乾燥型の目地材は、空中浮遊塵、散らかった床および作業空間という現場で粉末材料を水と混合する、平滑な混合物を得るための塊排除ならびに余計な時間という問題を排除するという簡便さのために好ましい。しかしながら、これらの従来の乾燥型の目地材は、乾燥中、収縮してしまい、平滑な壁表面を得るのをさらに難しくさせ、乾燥型の目地材のコートはそれぞれ、追加のコートを適用できる前に完全に乾燥しなければならない。
【0004】
乾燥型の目地材の欠点を回避するために、硬化型の目地材は、元々、低収縮性を有していて、硬化後再コートでき、建設をより迅速にすることができる。粉末硬化型の目地材は、使用時に、現場で水とドリルミックスする必要があるという欠点を有する。粉末目地材の現場でのドリルミックスは、過剰の塵を生成して散らかり、平滑な混合物を得るために塊を排除するのは難しく、調合済み目地材を用いるのに比べて、より時間を必要とする。参考文献として本明細書に援用される米国特許第5,746,822号明細書の先行技術は、調合済み硬化型の目地材を開示している。硬化防止剤は、硫酸カルシウム半水和物の硫酸カルシウム二水和物への化学変換を中断するのに有用である。化学硬化プロセスを中断する能力によって、粉末でなく調合済み形態にある硬化型の目地材を製造することが可能となる。硬化防止剤の使用により、調合済み硬化目地材において中断された硬化反応は、硬化活性剤の添加の際に回復させることができる。好ましい調合済み予備湿潤製品の利点は、このように、硬化型の目地材の収縮と再コートの利点と共に製品に組み込まれている。米国特許第5,746,822号明細書には、湿潤硫酸カルシウム半水和物、従来の目地材バインダーおよび増粘剤ならびにセメント系ベースのための硬化防止剤を含む予備混合セメント系成分を備えた二成分組成物が記載されている。他の成分、硫酸亜鉛等の硬化活性剤が、硬化防止剤により前に中断された化学硬化反応を再開する。硫酸亜鉛は、遅効性の硬化開始剤である。比較的大量に用いても、硫酸亜鉛により活性化された目地材は、十分に化学的に硬質化するのに長い時間を要す。適用者は、後のコートの適用まで、目地材コートが十分に固まり、硬質化するまで、場合によっては、翌日まで、待たなければならない。
【0005】
ミョウバンは、硫酸カルシウム半水和物系の化学硬化促進剤として知られている。それは、か焼石こうと水の混合物における硬化水和反応を促進する。しかしながら、ミョウバンは、炭酸カルシウムの存在により過剰に発泡するため、滅多に使われない。炭酸カルシウムは、他の原材料の天然起源混入物としてか、添加された成分として存在し得る。目地材において、この種の発泡によって、強度の損失と表面クレーター形成を生じる。また、発泡からの劇的な体積膨張により、目地材が、混合容器からあふれ出て膨張する可能性があり、目地材をウォールボード表面に適用した後も膨張が続く場合、仕上がり目地が膨張して、見苦しい凸の継目加工(クラウン継目)を形成する可能性がある。先行技術の教示は、炭酸カルシウムを含有するスタッコにおけるミョウバンの使用を避ける示唆をしているが、この問題の何らかの他の解決策の示唆は避けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの利点の少なくとも1つは、顧客に調合済み目地材として受け渡しが可能な添加剤および別個の硬化開始剤と共に処方された硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材を含む目地材システムにより実現される。本発明は、迅速で、強固な硬化作用を過剰の発泡なしで与えるために、潜在的な硬化開始剤の使用を、炭酸カルシウムなしで製造された予備湿潤、硬化型の目地材と組み合わせるものである。
【0007】
硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材は、調合済み硬化型の目地材ベースと、硬化型の目地材の石こう成分の化学的水和を妨げるカルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤とを含む。目地材ベースは、炭酸カルシウムを含まない。硬化開始剤は、化学的水和反応を再開するためにミョウバンを含む。
【0008】
意外にも、硬化防止剤を添加した調合済み硬化型の目地材と共に、硬化開始剤として、過剰の発泡なしで、ミョウバンを用いることができることを見出した。目地材システムは、目地材ベースにおいて、カルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤、硬化開始剤としてミョウバンおよび限られた量の炭酸カルシウムの組み合わせを用いる。この特徴の組み合わせは、長持ちする硬化防止を与えて、調合済み機能性、ミョウバン硬化開始剤の添加の際の即時硬化開始、および目地材を過剰に発泡させることのない平滑かつクリーム状のテクスチャを与える。
【0009】
過剰の発泡の問題を生じない硬化開始剤としてミョウバンを使用できることはいくつかの利点を与える。硬化および硬質化の程度は、先行技術の亜鉛化合物に比べ、ミョウバン硬化開始剤を用いると、かなり早く、より強い。これによって、「スナップ硬化」が可能となり、目地材は迅速に硬化し、壁または天井パネルに適用した後即座に再コートまたは磨くことができる。この組成は、さらに、先行技術においては得られなかった望ましいスナップ硬化性能を与えながら、実質的に泡のない目地材を製造できるという利点を有する。また、ミョウバンによって、先行技術の硫酸亜鉛を用いるときよりも、はるかに硬化活性剤の使用が少なく、硬化活性剤を予備湿潤、硬化型のベースに、より簡単に組み込むことができる。使用量の減少により、重量および現場で必要とされる硬化活性剤の量を大幅に少なくでき、それほどかさ張らない濃縮形態で硬化開始剤を販売することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
調合済み状態で優れた貯蔵寿命および活性化剤を添加した後の迅速な硬化時間を有する硬化型の目地材のための目地材システムが開発された。このシステムは、硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材と、目地材システムを用いるときに添加される別個の部分のミョウバンとを含む。
【0011】
硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材は、セメント系硬化反応が不活性化、防止または停止された調合済み、硬化型の目地材ベースである。予備湿潤、硬化型の目地材の1つの主な成分は、未硬化状態の調合済み水硬性ベースを維持する長期硬化防止剤である。水の存在は、通常、遅延添加剤により制御された硬化時間において0.1〜5時間以内に硫酸カルシウム半水和物を水和するであろう。調合済みセメント系組成物において長期硬化防止効果を与えることが知見された添加剤は、カルシウムを含まないリン酸塩である。特に、(1)亜鉛ヘキサメタリン酸および(2)トリポリリン酸カリウムは、長期硬化防止効果を与えることがわかっており、(3)ピロリン酸四ナトリウムは、最も長く続く硬化防止効果を与える。他の有効な硬化防止剤としては、(4)トリポリリン酸ナトリウム、(5)リン酸モノアンモニウムおよび(6)リン酸二水素カリウムが挙げられる。通常、硬化防止効果は、水を除く組成物合計重量を基準として、約0.1〜約2重量%の範囲の量での低レベルのリン酸塩添加剤により得られる。ある実施形態において、リン酸塩添加剤は、水を除く組成物合計重量を基準として、約0.1〜約0.6%の量で存在する。リン酸塩硬化防止剤は、任意で、リン酸のカルシウム塩を除くリン酸の水溶性塩である。本明細書で用いる「カルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤」という用語は、硬化防止目地材のカルシウム塩を確実に除く。
【0012】
リン酸塩硬化防止剤は、従来の硬化遅延添加剤の代わりに、またはこれに加えて用いられる。有用な硬化遅延剤の一例は、SUMA硬化遅延剤等のたんぱく性遅延剤である。目地材ベースのある実施形態は、約0.02%〜1%の遅延剤を用い、一方、ある実施形態では、乾燥成分の重量を基準として0.02%〜.1%を用いる。硬化遅延剤は、任意の有用な量で、単独または互いに組み合わせて用いられる。従来の硬化遅延剤の添加は、カルシウムを含まないリン酸塩により得られるような長期の硬化防止への影響は少ないが、硬化開始剤を用いて水和反応を再開すると、従来の硬化遅延剤は、調合済み硬化型の目地材の硬化時間を制御する補助となる。
【0013】
目地材ベースの他の主な成分は、硫酸カルシウム半水和物フィラーのような石こう成分である。硫酸カルシウム半水和物のアルファ結晶形態は、カルシウムを含まないリン酸塩を含有する未硬化の調合済み組成物の長期保守に好ましいことが分かっている。概して、乾燥目地材ベースの少なくとも約20重量パーセント(20%)は、硫酸カルシウム半水和物であり、乾燥成分の約99重量パーセント(99%)まで、より好ましくは、60%〜約90%の範囲であってよい。ベータ結晶形態および/またはアルファとベータ形態の混合物をはじめとする硫酸カルシウム半水和物の他の形態も有用である。
【0014】
炭酸カルシウムは、粉末石こう、新たに採掘された硫酸カルシウム源に存在することが知られている。炭酸カルシウムは、汚染物質として硫酸カルシウム半水和物中に存在することが多い。多くの用途について、炭酸カルシウムは、不活性フィラーであり、問題がない。しかしながら、炭酸カルシウムと水がミョウバンと結合すると、過剰の発泡をはじめとする悪影響が観察されている。ミョウバン活性剤と共に目地材ベースを用いるには、硫酸カルシウム半水和物は、炭酸カルシウムを実質的に含まないことが重要である。炭酸カルシウムが「実質的にを含まない」硫酸カルシウム半水和物とは、半水和物が、2重量%未満の炭酸カルシウムを含むことを意味する。硫酸カルシウム半水和物のある実施形態は、1%未満、さらには0.5%未満の炭酸カルシウムを含む。少なくとも一実施形態において、硫酸カルシウム半水和物は炭酸カルシウムを含まない。
【0015】
炭酸カルシウムが、目地材ベースにないとき、ある実施形態において、不活性フィラーは、任意で、膨張剤として用いられる。好ましい不活性フィラーはタルクである。炭酸カルシウムとほぼ同じ密度であるため、炭酸カルシウムは、等量のタルクに置き換えることができ、その結果、目地材ベースの密度が僅かだけ変化する。他のフィラーでもよいが、目地材ベース中における他の成分の相対量はまた、所望の目地材密度を維持するのに調整が必要であろう。
【0016】
目地材ベースを製造する際、他の従来の目地材成分を組成物に組み込んでよい。ラテックスエマルジョンバインダーが、目地材業界の当業者に周知される重要な成分である。従来のラテックスバインダーのいずれを用いてもよく、ポリ酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニルエマルジョンが好ましい。存在する場合、ラテックスバインダーは、水を添加する前の組成物の約0.5重量%〜約15重量%の範囲であり、ある実施形態においては、1%〜約8%を用いる。スプレー乾燥バインダーの使用も考えられる。
【0017】
目地材ベースは、1つ以上の増粘剤を含むのが概して好ましい。従来のセルロース増粘剤、例えば、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびこれらの混合物を、本発明の目地材に用いてよい。セルロース増粘剤の量は、存在する場合、添加した水を含まない合計組成物成分の約0.1重量%〜約3重量%、好ましくは、0.3〜1重量%の範囲であってよい。他の増粘剤を、セルロース増粘剤の代わりに、またはそれに加えて用いるであろうことが考えられる。
【0018】
本発明の目地材ベースはまた、アタパルガスクレイ等の非レベリング剤も含有していてよい。この成分は、非レベリング、滑り、水保持を与える。アタパルガスクレイは、良好な作業特性を有する目地材を与えることがわかっており、アタパルガスクレイの使用は、米国特許第3,297,601号明細書によれば、調合済み硬化目地材の長期の懸濁および安定性を補助する。概して、非レベリング剤の量は、存在する場合、水を添加する前のベース組成物の約1重量%〜約10重量%、好ましくは、2重量%〜7重量%の範囲である。海泡石、ベントナイトおよびモンモリロナイト等の他のクレイも、クレイに加えて、またはその代わりに目地材ベースに用いてよい。
【0019】
従来の調合済み目地材は、乾燥時の耐亀裂性を与えるために、珪藻土、マイカ、タルクまたは絹雲母等のフィラーを含有することが多い。これらの成分は、マイカやタルクなしで、良好な耐亀裂性を有する本発明の目地材ベースからは省くことができるが、改善された滑りおよび作業性を与えるには、処方中に少量のマイカまたはタルクを含むのが望ましいであろう。本発明の目地材ベースに用いるとき、マイカまたはタルクは、水を加える前の組成物の約2重量%〜約15重量%であってよい。
【0020】
本発明の目地材は、7〜8の範囲のpHを有するのが好ましい。場合によっては、pHを下げるために、クエン酸等の添加剤を用いることが必要となる場合もある。概して、pH制御添加剤は、目地材組成物の0.1〜1重量%の範囲の量で存在してよい。
【0021】
目地材によく使われる追加の成分を、本発明の目地材システムに用いることが考えられる。これらに限られるものではないが、保湿剤、フィラー、湿潤剤、カオリン、消泡剤および可塑剤を任意で含むこれらの成分も、本発明の目地材ベースに有用である。
【0022】
軽量の調合済み目地材が望ましい場合には、米国特許第4,454,267号明細書の開示に従って、軽量特性は、膨張パーライトを目地材ベースに組み込むことにより与えることができる。膨張パーライトは、目地材ベースに組み込むべき場合には、好ましくは、100メッシュスクリーンを通過するであろう粒径を有していなければならないことは業界で周知されている。調合済み目地材において、膨張パーライトは、任意で処理して、水に感度のないものとする、または未コートのままとする。膨張パーライトを処理すると有利な場合には、膨張パーライトを水に感度のないものとするのにいくつかのやり方があり、そのうちの1つは、米国特許第4,525,388号明細書に開示されている。他の方法は、膨張パーライトをシリコーンまたはシロキサン化合物で処理するものであるが、他の材料を用いて、それを水に感度のないもの(すなわち、はっ水性)とさせてもよい。特別に処理された膨張パーライトは、Silbrico Corporation等の供給業者から市販されている。
【0023】
所望の軽量特性を達成するために、膨張パーライトは、水を除く調合済みセメント系目地材における全成分の少なくとも約3重量%の量で存在させなければならない。膨張パーライトは、水を除く目地材における全成分の約5重量%〜約10重量%の量で存在するのが特に好ましい。
【0024】
水は、所望の粘度の目地材を製造するのに選択された量で添加する。本発明のある実施形態は、200〜400のブラベンダー単位のブラベンダー粘度を対象としている。測定は、タイプAプローブおよび250cmgのトルクヘッドを用いることに基づく。
【0025】
調合済み目地材を調製するとき、保管中の湿潤媒体における微生物の成長を制御する必要がある。微生物を低減する1つの方法は、目地材ベースにショックを与えて、接触により殺す殺生物剤を導入することによる。接触殺生物剤の例としては、家庭用漂白剤(6%水性次亜塩素酸ナトリウム)または、次亜塩素酸リチウムまたはカルシウム等の水泳用プールのショック処理用化学物質が挙げられる。これらの添加剤は、製造時に、目地材ベースに存在する実質的に全ての微生物を殺すであろうが、それらは、その後の微生物成長を防止しないであろう。
【0026】
MERGAL174および/またはFUNGITROL158をはじめとする従来の缶入り防腐剤が、微生物成長の連続的な抑制に用いられる。それらは、接触殺処理と組み合わせて、またはその代わりに用いることができる。防腐剤の組み合わせも考えられる。
【0027】
目地材システムの第2の成分はミョウバンである。この成分は、予備湿潤、硬化型の目地材を活性化して、硫酸カルシウム半水和物/水の水和反応を再開して、目地材を化学的に硬化する役割を果たす。「ミョウバン」とは、二硫酸アルミニウムをはじめとする任意の硫酸アルミニウム、カリウムとアルミニウムの硫酸複塩およびアルミニウムとアンモニアの硫酸複塩を意味する。ミョウバンの水和形態も考えられる。用いる活性剤の量は、ミョウバンを用いると減じることができる。ミョウバンは、調合済み目地材100グラムを基準として、約0.5グラム〜約2グラムの量で用いられる。
【0028】
本発明の調合済みセメント系組成物は、使用時に、硬化作用を開始するために、硬化活性剤を添加すると、硬化型の目地材として機能することができる。促進剤は、リン酸塩硬化防止剤の影響を回避し、硫酸カルシウム半水和物を、水和させ、化学的に硬化および硬質化させることができる。硬化開始剤を、湿潤混合目地材へ添加した後、水和反応が生じ(硫酸カルシウム半水和物は、硫酸カルシウム二水和物となる)、数分または数時間の間に硬質硬化物品が製造される。
【0029】
実施例1
表1の成分を用いて、予備湿潤、硬化抑制、硬化型の調合済み目地材を製造した。No.1ショック剤とは、水泳プールで一般的に用いられる乾燥次亜塩素酸カルシウムショック剤を指す。漂白剤とは、次亜塩素酸ナトリウムの約6%の水溶液である家庭用漂白剤を指す。漂白剤とプールショックは両方共接触殺生物剤として用いられる。
【0030】
【表1】

【0031】
上記組成物の両方について、目地材ベースは、乾燥成分を秤量し、それらを容器において混合することにより製造した。乾燥成分は、硫酸カルシウム半水和物、炭酸カルシウムまたはタルク、パーライト、増粘剤および遅延剤を含んでいた。
【0032】
水を秤量し、第2の容器に入れた。本実施例については、ターゲットブラベンダー粘度は250であった。残りの湿潤成分もまた秤量し、水に加えた。湿潤成分は、ラテックスエマルジョンと防腐剤を含んでいた。
【0033】
湿潤および乾燥成分を混合して、調合済み目地材を形成した。目地材の硬化は、後に、表1に示した量のミョウバンを加えるまで、抑制した。
【0034】
目地材の硬化時間について試験した。データは表2に示す。ビカット硬化時間とは、本明細書に参考文献として援用されるASTM C−472を参照する。ビカット硬化時間は、ミョウバンを調合済み目地材に加えたとき開始された。100グラムの調合済み目地材の試料を、所定量のミョウバンと混合した。試料を、アクリルシート上に注いでパテを形成した。300グラムのビカット針を、パテの中心と外縁間の中間に、パテ表面に垂直に置いた。針をパテ表面に保持し、開放して、その自重で自由落下させた。針がパテの下部まで貫通できなかったときの硬化時間を求めた。
【0035】
再コート硬化時間は、目地材が、再コート中の変形に耐えるのに十分固化するまでの時間あった。硬化型の目地材が水和して、反応が進むにつれ、温度は上昇する。温度が高ければ高いほどより早い硬化時間を反映している。
【0036】
【表2】

【0037】
従来の目地材と、本発明の目地材を比較すると、本発明の目地材だと、同じ硬化開始化合物、すなわち、ミョウバンを用いても、より早い硬化時間が得られることが分かる。このことは、再コート硬化時間、ビカット硬化時間およびビカット温度により確認される。
【0038】
さらに、混合中、平滑かつクリーム状である改善された製品が得られる。混合中、発泡せず、製品の膨張がない。
【0039】
調合済み目地材の特定の実施形態を示し、説明してきたが、当業者であれば、変更および修正が、そのより広い対応において、本発明から逸脱することなく行ってよいことが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミョウバンと、
カルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤と、
水と、
硫酸カルシウム半水和物を含む硬化型の目地材ベースとを含む目地材システムであって、前記目地材ベースが、追加の炭酸カルシウムを有さず、前記硫酸カルシウム半水和物が、約2重量%未満の炭酸カルシウムを含む、目地材システム。
【請求項2】
前記硫酸カルシウム半水和物が、硫酸カルシウム半水和物の重量当たり0.5%未満の炭酸カルシウムである請求項1に記載の目地材システム。
【請求項3】
前記硫酸カルシウム半水和物が、実質的に炭酸カルシウムを含まない請求項1に記載の目地材システム。
【請求項4】
前記ベースが、水を加える前、前記ベース組成物の約1重量%〜約15重量%の範囲の量で存在するラテックスエマルジョンバインダーをさらに含む請求項1に記載の目地材システム。
【請求項5】
前記ラテックスエマルジョンバインダーが、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、スチレンアクリル、スチレンブタジエンおよびこれらの混合物からなるエマルジョンまたはスプレー乾燥粉末の群から選択される化合物の1つを含む請求項4に記載の目地材システム。
【請求項6】
前記ベースが、水を添加する前の前記ベース組成物の約1重量%〜約10重量%の範囲で存在する非レベリング剤をさらに含む請求項1に記載の目地材システム。
【請求項7】
前記非レベリング剤が、海泡石、ベントナイト、モンモリロナイト、アタパルガスクレイおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項6に記載の目地材システム。
【請求項8】
前記カルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤、前記水および前記硬化型の目地材ベースを予備混合して、硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材を形成する請求項1に記載の目地材システム。
【請求項9】
ミョウバンと、カルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤と、硫酸カルシウム半水和物と、水とを含む硬化型の目地材ベースを含み、
前記目地材ベースが、追加の炭酸カルシウムを有さず、前記硫酸カルシウム半水和物が、約2重量%未満の炭酸カルシウムを含む、目地材。
【請求項10】
硫酸カルシウム半水和物と、水と、カルシウムを含まないリン酸塩硬化防止剤とを含む硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材ベースであって、追加の炭酸カルシウムを有さず、前記硫酸カルシウム半水和物が、約2重量%未満の炭酸カルシウムを含む前記目地材ベースを取得し、
前記硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材ベースを、別個の部分のミョウバンと共にパッケージングし、
前記硬化抑制、予備湿潤、硬化型の目地材ベースおよび前記ミョウバンをブレンドすることを含む目地材の製造方法。

【公表番号】特表2013−518795(P2013−518795A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551953(P2012−551953)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/023210
【国際公開番号】WO2011/096925
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】