説明

スパウト付きパウチの製法及びスパウト付きパウチ

【課題】機械生産に適した異形のスパウト付きパウチの製法及びスパウト付きパウチを提供することを課題とする。
【解決手段】サイドシール部31を有するパウチ本体1の上端部にスパウト2が装着されたスパウト付きパウチの製法であって、サイドシール部31における外側領域である切り離し片40,41を切り離すための切離線50,51をサイドシール部31に形成した後、切り離し片40,41が切り離されていない状態のパウチ本体1にスパウト2を装着する。更に、スパウト2から内容物を充填し、該スパウト2にキャップ23を装着した後に、切り離し片40,41を切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を取り出すためのスパウトが装着されたスパウト付きパウチの製法及びスパウト付きパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスパウト付きパウチは、略矩形のパウチ本体の上端部にスパウトが装着されたものであって、該スパウトは、両側部と底部がヒートシールされて上端部が開口する三方シール状態のパウチ本体に挿入され、パウチ本体の上端部をヒートシールにより封着すると同時にパウチ本体に固着される。このようなスパウト付きパウチは一般には装置を使用して大量生産される。例えば、下記特許文献1のように、三方シール状態のパウチ本体をその上端部(開口する側)が前側になるようにしてベルトコンベアで順次供給する。その際、パウチ本体の両側縁を左右一対のガイド壁でガイドすることでパウチ本体の左右方向の位置決めを行う。このように位置決めされた状態のパウチ本体を順次供給することにより、スパウト装着工程と内容物充填工程を行い、内容物が充填されたスパウト付きパウチを製造する。
【0003】
ところで、スパウトを有しないパウチにおいては、下記特許文献2記載のようにサイドシール部に側方に開口する凹部が形成された異形のパウチも提案されている。このパウチでは、サイドシール部を形成する際もしくはその後において凹部を形成するものであり、何れにしても、上端部を封着する前の三方シール状態において既に凹部を形成しておくというものである。
【0004】
しかしながら、このような側部に凹部を有するパウチをパウチ本体として使用してスパウト付きパウチを製造することは困難である。即ち、パウチ本体の側部に予め凹部を形成したとすると、そのパウチ本体をベルトコンベアで搬送する際に、側部の凹凸形状によってパウチ本体の左右方向の正確な位置決めが困難となり、しかも、凹凸形状が搬送中にガイド壁にひっかかるなどして搬送不良も生じやすい。
【0005】
尚、下記特許文献3記載のように、パウチの隅部に注出口部を形成するために収容空間を横断するハーフカットラインを形成すると共にそのハーフカットラインにつながるようにカットラインをサイドシール部に形成して、注出口部を形成する開封時にカットラインによって摘み片が形成されるようにしたものも提案されている。しかしながら、この構成もスパウトを有しないものであって、スパウトを使用するのではなく、パウチの一部を破断することによって注出口部を形成するタイプである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−305792号公報
【特許文献2】実開昭59−162440号公報
【特許文献3】特開2008−81144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、機械生産に適した異形のスパウト付きパウチの製法及びスパウト付きパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係るスパウト付きパウチの製法は、サイドシール部を有するパウチ本体の上端部にスパウトが装着されたスパウト付きパウチの製法であって、サイドシール部における外側領域を切り離すための切離線をサイドシール部に形成した後、前記外側領域が切り離されていない状態のパウチ本体にスパウトを装着することを特徴とする。
【0009】
該製法にあっては、サイドシール部に切離線を形成してはいるものの外側領域は切り離さずにスパウトを装着するので、切離線を形成していない従来のパウチ本体と同様にガイド壁等で左右方向の位置決めを正確に行ってスパウトを正確な位置に装着することができる。
【0010】
また、内容物充填前にサイドシール部の外側領域を切り離してもよいが、スパウトから内容物を充填し、該スパウトにキャップを装着した後に、前記外側領域を切り離すことが好ましい。内容物充填後に外側領域を切り離すことにより、スパウト装着工程と内容物充填工程とを一連の流れで行うことができ、効率よく製造することができる。
【0011】
また、本発明に係るスパウト付きパウチは、サイドシール部を有するパウチ本体の上端部にスパウトが装着されたスパウト付きパウチであって、サイドシール部における外側領域を切り離すための切離線がサイドシール部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
該スパウト付きパウチにおいては、外側領域を切り離した後に出荷することもでき、また、外側領域を切り離さずに残した状態のままで出荷することもできる。後者の場合には、例えば外側領域をキャンペーン応募用の領域としておき、消費者が購入後にそれを切り離して応募するということもできる。
【0013】
また、サイドシール部にはヒートシールされていない中空の非接着領域が設けられ、該非接着領域には内側のみから視認可能な内側表示部が設けられ、該非接着領域を開口させて内側表示部を視認できるように前記切離線が非接着領域を通って形成されていることが好ましい。
【0014】
この場合には、消費者が購入後に外側領域を切り離すことによって初めて内側表示部を視認できるので、例えば内側表示部として「当たり」や「はずれ」といった内容にしたりポイントを表示したりすることで販売促進効果が得られる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、外側領域が切り離されていない状態のパウチ本体にスパウトを装着することにより、スパウトを装着する際におけるパウチ本体の左右方向の位置決めを、切離線を有しない一般的な構造と同様に、正確に行うことができて既存の装置への適用も含めて機械生産に適している。そして、スパウト装着後に切離線によって外側領域を切り離すことで、異形のスパウト付きパウチを容易に製造することができ、その形態から店頭において目立ちやすく、パウチ本来の膨らみ形状と相まって従来にはない立体感を演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態におけるスパウト付きパウチを示す正面図。
【図2】同実施形態におけるスパウト付きパウチの使用状態を示す正面図。
【図3】同実施形態におけるスパウト付きパウチの一製造工程を示す平面図。
【図4】本発明の他の実施形態におけるスパウト付きパウチを示す正面図。
【図5】同実施形態におけるスパウト付きパウチの使用状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかるスパウト付きパウチとその製法について図1乃至図3を参酌しつつ説明する。図1に示すスパウト付きパウチは、表裏一対のシート片の周縁部をヒートシールすることにより種々の内容物を収納可能な袋状に形成されたパウチ本体1と、該パウチ本体1の上端部に取り付けられて内容物の充填及びその取り出しに使用されるスパウト2と備えている。
【0018】
パウチ本体1は、底部及びサイドにガセットを有しない平パウチであって、上下方向に長い略長方形状に形成されてその周縁部がヒートシールされたものである。図1において多数のドットを付している領域がヒートシールされたシール部である。即ち、パウチ本体1のシール部は、底部シール部30と、左右一対のサイドシール部31と、スパウト2が装着されている上端シール部32とからなる。
【0019】
左右一対のサイドシール部31は、底部シール部30や上端シール部32よりもその幅が広く形成されており、上下方向に沿って幅一定に形成されている。従って、内容物を充填する収容空間は正面視において縦長の長方形となっている。そして、左右一対のサイドシール部31には、サイドシール部31の外側領域を切り離し片40,41として、その内側に位置するパウチ本体1の主部から側方(外方)に切り離すための切離線50,51が形成されている。本実施形態において左右の切離線50,51は互いに左右非対称であって、切り離される切り離し片40,41のサイズもまた異なっている。即ち、向かって右側のサイドシール部31には、パウチ本体1の上縁から下縁まで達するようにサイドシール部31の全長に亘って切離線50が形成されている。該右側の切離線50は、上下方向に沿って一直線状ではなく、左右に蛇行した形状となっている。より詳細には、パウチ本体1の外面即ち表側のシート片の外面には表側表示部60(二点鎖線で示す)として模様が印刷により形成されており、該表側表示部60に沿うように切離線50が形成されている。本実施形態では表側表示部60として円や多角形を描いているので、切離線50はその円や多角形に沿って部分的に円弧状や凸状(先細り凸状)等となっている。また、向かって左側のサイドシール部31には、パウチ本体1の側縁の一部を切り欠いて側方に開口する凹部を形成するように、上下方向の中途部に切離線51が形成されている。左側の切離線51も右側のそれと同様に表側表示部60に沿うようにして形成されている。
【0020】
尚、切離線50,51は、厚み方向の途中までカットされたハーフカットのものや、厚み方向に貫通するものの所々において不連続となった各種のミシン目など、種々の形態を採用可能であって、何れにしても手で切断できる形態のものとする。
【0021】
ここで、パウチ本体1を構成するシートとしては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリアミドフィルム等よりなる外層と、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンやメタロセン系ポリエチレン等の熱融着性樹脂よりなる内層とを備えた多層ラミネートフィルムが使用され、また、エチレンビニルアルコール共重合体やアルミニウム箔、酸化ケイ素等の無機物を蒸着したフィルム等のような、ガスバリア性フィルム等を更に積層したものも好適であり、特にガスバリア性フィルムとしてアルミニウム箔を積層したものが好ましい。
【0022】
前記スパウト2は、パウチ本体1を構成するシートの内面にヒートシール可能な合成樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン等の熱融着性樹脂)から形成されており、一般には成形により一体的に形成される。該スパウト2は、パウチ本体1の左右方向中央部に装着されており、具体的には、パウチ本体1の上端部において表裏一対のシート片に狭持されるようにヒートシールにより固着される取付部20と、該取付部20からパウチ本体1の外部即ち上方に突出するように形成された口部21と、取付部20からパウチ本体1の内部(収容空間)即ち下方に突出するように形成された内方延在部22とを備えている。尚、取付部20は、中央から両側部にかけて徐々に前後方向の厚みが薄くなった横断面視略舟形の形状となっている。また、口部21には、その上端開口を封止するためのキャップ23が螺着されると共に、その下側には上下一対の矩形の鍔部25,26が形成されている。
【0023】
以上のように構成されたスパウト付きパウチは、図1に示すように左右の切り離し片40,41を切り離していない状態で出荷することも、また、図2に示すように、左右の切り離し片40,41を切離線50,51で切り離した後に出荷することもできる。前者の場合には、例えば購入した消費者が自ら切り離し片40,41を切り離すことで、切り離し前後におけるパウチの形状変化を楽しむことができる。また、後者の場合には、出荷前あるいは店頭等に並ぶ前に予め切り離し片40,41を切り離すのであるが、切離線50,51が形成されているので手で容易に切り離すことができ、それによって簡単に異形のパウチを形成することができる。本実施形態においては表側表示部60に沿って切離線50,51が形成されているので、切り離し後においては、図2に示すように、表側表示部60の一部がパウチの外形となって現れることになる。従って、一般的な模様のみの場合と比して、店頭等において極めて目立ちやすく、パウチ本来が持つ膨らみ形状と相まって表側表示部60の模様を立体的に表現することができるのである。このように立体的な表現が可能であることから、表側表示部60として各種のキャラクターを印刷してキャラクター商品とすることも好適である。
【0024】
一方、このスパウト付きパウチは、上端部が開口した三方シール状態のパウチ本体1にスパウト2を差し込んでパウチ本体1の上端部を封着すると共にスパウト2を固着し、その後、スパウト2から内容物を充填した後にキャップ23を装着するのであるが、このスパウト2をパウチ本体1に装着する前に予めパウチ本体1に例えばダイカッター(打ち抜き)やトムソン刃等により切離線50,51を形成しておく。そして、切離線50,51を形成したパウチ本体1を図3のようにベルトコンベア100に載置してスパウト充填工程へと順次供給していく。図3においても図1と同様に多数のドットを付している部分がシール部であり、開口している上端部1aが前側を向くようにベルトコンベア100上に寝かせた状態で載せて、両側に立設しているガイド壁101でパウチ本体1の左右方向の位置決めを行いながら搬送する。この供給段階では切り離し片40,41が切り離されていないので、通常形状の場合と同様にガイド壁101で正確に左右方向の位置決め並びに左右方向のセンター出しを行うことができると共に、パウチ本体1の側縁が凹凸形状ではないので側縁がひっかかって搬送不良が起こるということもない。その後、図示しない吸着部材でパウチ本体1を吸着してその上端部1aが上方を向く起立姿勢へと姿勢変化させ、キャップ23を装着していないスパウト2を上方からパウチ本体1の左右方向(幅方向)中央位置に差し込んで上端部1aの封着及びスパウト2の装着を行い、これにより上端シール部32が形成される。引き続いて、スパウト2の例えば上下の鍔部25,26間を図示しない保持部材で保持して吊り下げ状態で搬送しながら、スパウト2から内容物を充填し、更にキャップ23を装着して、図1のような完成状態となる。このようにスパウト2の装着前にパウチ本体1に予め切離線50,51を形成しておき、切り離し片40,41を切り離さない状態でスパウト2を装着することにより、既存の充填機等を利用して高速生産することができる。
【0025】
尚、一般には切り離した後の切り離し片40,41は廃棄されることとなるが、例えば、キャンペーン用の応募券として使用することもできる。
【0026】
また、サイドシール部31にヒートシールされていない中空の非接着領域を設け、該非接着領域を切離線50,51が横断や縦断するようにしてもよい。例えば、図4及び図5においてもシール部を多数のドットを付して示しているが、そのサイドシール部31にそれぞれ非接着領域70を形成している。該非接着領域70においては表裏一対のシート片同士がヒートシールされていない。そして、該非接着領域70には外側からは視認できず内側のみから視認可能な内側表示部(図示省略)が設けられている。該内側表示部としては、キャンペーン用として「あたり」や「はずれ」等の文字やポイントなどを使用できる。この文字やポイントはレーザー印字等で印字することができる。
【0027】
右側及び左側のサイドシール部31にはそれぞれ略長方形の非接着領域70が形成され、該非接着領域70を通るように切離線50,51が形成されている。右側の切離線50は、その非接着領域70を通過する部分が外側凸の形状(例えば円弧状)となっている。従って、図5のように、右側の切り離し片40を切り離して非接着領域70を開口させると該非接着領域70は二分されて、パウチ本体1の非接着領域70には非接着状態の外側凸部71が形成され、該外側凸部71における表裏のシート片を開くことにより内側表示部を見ることができる。また、左側の切離線51は、その非接着領域70を通過する部分が内側凸の形状(例えば円弧状)となっている。従って、左側の切り離し片41を切り離すと右側の場合と同様に非接着領域70が二分され、切り離された切り離し片41は非接着領域70の一部からなる非接着部41aと接着状態の接着部41bとを有することになる。そして、切り離した切り離し片41の非接着部41aにおける表裏のシート片を開くことにより非接着部41aの内側表示部を見ることができる。この場合、左側の切り離し片41はそれ自体に内側表示部が形成されているので応募券として使用するのに適している。このように、内側表示部は、右側のようにパウチ本体1に残るように形成しても、左側のように切り離される切り離し片41に位置するように形成してもよく、また両者にそれぞれ設けるようにしてもよい。尚、凸の形状は、円弧状に限らず、矩形や三角形等とすることもできる。
【0028】
また、収容空間を区画するシール部の内側ラインについても、図1のように一直線状とする他、図4及び図5のように切離線50,51の形成に合わせて内側に膨出させてもよい。
【0029】
更に、上記実施形態では、左右両側にそれぞれ切離線50,51を形成したが、片側のみ形成してもよい。また、左右の一方あるいは両方に、上下に独立した複数の切離線及び切り離し片を形成してもよい。無論、非接着領域70を形成する場合においては、その形状や個数、位置等も任意である。
【0030】
尚、上記実施形態では、平パウチを例にして説明したが、サイドガセットや底部ガセットを有する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 パウチ本体
2 スパウト
20 取付部
21 口部
22 内方延在部
23 キャップ
25 鍔部
26 鍔部
30 底部シール部
31 サイドシール部
32 上端シール部
40 切り離し片(外側領域)
41 切り離し片(外側領域)
41a 非接着部
41b 接着部
50 切離線
51 切離線
60 表側表示部
70 非接着領域
71 外側凸部
100 ベルトコンベア
101 ガイド壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドシール部を有するパウチ本体の上端部にスパウトが装着されたスパウト付きパウチの製法であって、
サイドシール部における外側領域を切り離すための切離線をサイドシール部に形成した後、前記外側領域が切り離されていない状態のパウチ本体にスパウトを装着することを特徴とするスパウト付きパウチの製法。
【請求項2】
スパウトから内容物を充填し、該スパウトにキャップを装着した後に、前記外側領域を切り離す請求項1記載のスパウト付きパウチの製法。
【請求項3】
サイドシール部を有するパウチ本体の上端部にスパウトが装着されたスパウト付きパウチであって、
サイドシール部における外側領域を切り離すための切離線がサイドシール部に形成されていることを特徴とするスパウト付きパウチ。
【請求項4】
サイドシール部にはヒートシールされていない中空の非接着領域が設けられ、該非接着領域には内側のみから視認可能な内側表示部が設けられ、該非接着領域を開口させて内側表示部を視認できるように前記切離線が非接着領域を通って形成されている請求項3記載のスパウト付きパウチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−285158(P2010−285158A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137898(P2009−137898)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】