説明

スピニングリールのロータ交換部品

【課題】スピニングリールにおいて、ベールの変形による不具合が生じないようなロータ交換部品を提供する。
【解決手段】ロータ交換部品60は、ベールを有する釣り糸案内機構に代えて第1ロータアーム32に取り付け可能な交換部品であって、第1ベール支持部材70とラインローラ71を挟んで配置可能であり、ラインローラ71より大径であり先端が完結しているカバー部材74を備えている。カバー部材74は、ラインローラ71取付側と逆側の端面が径方向外方に全周にわたって環状に突出した大径部74bと、大径部74bから先端が略球形状に突出して完結するように形成された突出部74aと、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータ交換部品、特に、第1及び第2ベール支持部材を含む釣り糸案内機構を有するロータを、ベールを有さないベールレスリールにするためのスピニングリールのロータ交換部品に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールのロータには、釣り糸をスプールに案内する釣り糸案内機構が設けられている。釣り糸案内機構は、ロータの第1及び第2ロータアームに設けられている。釣り糸案内機構は、第1ロータアームに連結された第1ベール支持部材と、第1ベール支持部材に第1端が固定された固定軸と、固定軸に回転自在に装着されるラインローラと、固定軸の第2端に設けられた固定軸カバーと、第2ロータアームに設けられた第2ベール支持部材と、固定軸カバーと前記第2ベール支持部材とを連結する線材形状の細長いベールと、を有している(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成の釣り糸案内機構は、釣り糸をスプールに案内する糸巻取姿勢と、釣り糸をスプールから放出する際に邪魔にならないようにした糸開放姿勢とに揺動自在に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−176714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のスピニングリールの釣り糸案内機構には、細長いベールが設けられている。このように細長いベールが設けられていると、遠方の釣り場に釣りに行くときに釣り用品や衣類等の他のものとともにスピニングリールを旅行鞄に詰め込むと、ベールが他のものから押圧された変形することがある。特に大型のリールでは、ベールも大きくなるので、鞄にスピニングリールを詰め込んだときに変形する確率が高くなる。ベールが変形すると、ベールがスプールに接触してベールをうまく揺動できなくなるという不具合が生じることがある。
【0006】
本発明の課題は、スピニングリールにおいて、ベールの変形による不具合が生じないようなロータ交換部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係るスピニングリールのロータ交換部品は、スピニングリールのロータの第1及び第2ロータアームに設けられ、第1ロータアームに連結された第1ベール支持部材と、第1ベール支持部材に第1端が固定された固定軸と、固定軸に回転自在に装着されるラインローラと、固定軸の第2端に設けられた固定軸カバーと、第2ロータアームに設けられた第2ベール支持部材と、固定軸カバーと第2ベール支持部材とを連結するベールと、を有する釣り糸案内機構に代えて少なくとも第1ロータアームに取り付け可能なスピニングリールのロータ交換部品であって、第1ベール支持部材とラインローラを挟んで配置可能であり、ラインローラより大径であり先端が完結しているカバー部材を備えている。カバー部材は、ラインローラ取付側と逆側の端面が径方向外方に全周にわたって環状に突出した大径部と、大径部から先端が略球形状に突出して完結するように形成された突出部と、を有している。
【0008】
この交換部品では、通常の釣り糸案内機構を有するロータにおいて、第2ベール支持部材とベールと固定軸と固定軸カバーとを外し、固定軸を第1ベール支持部材に固定してラインローラを支持するとともにカバー部材を固定軸カバーに代えて固定する。このカバー部材はラインローラより大径であるとともに、先端が完結した形状であるので、固定軸カバーの機能を果たせるとともに、釣り糸がラインローラから外れにくくなる。ここでは、釣り糸案内機構の第2ベール支持部材とそれに連結されたベールを外し、さらに第1ベール支持部材側でベールが連結された固定軸カバーを外し、固定軸でカバー部材を取り付けることによりベールレスのスピニングリールを実現できる。このため、ベールがなくなってベールの変形による不具合が生じなくなる。
【0009】
また、カバー部材の先端部が略球形状に形成された滑らかな突出部となっているので、釣り糸の巻き取りを阻害する方向や、あるいはカバー部材から糸落ちしてしまう方向に向くことがなくなる。
【0010】
発明2に係るスピニングリールのロータ交換部品は、発明1に記載の部品において、固定軸に代えて第1ベール支持部材に第1端を固定可能であり、ラインローラを回転自在に装着可能な軸部材をさらに備え、カバー部材は、定軸カバーに代えて軸部材の第2端に一体で設けられる。
【0011】
この交換部品では、通常の釣り糸案内機構を有するロータにおいて、第2ベール支持部材とベールと固定軸カバーと固定軸とを外し、固定軸に代えて軸部材を第1ベール支持部材に固定してラインローラを支持し、軸部材と一体形成されたカバー部材を固定軸カバーに代えて設ける。このカバー部材はラインローラより大径であるとともに、先端が完結した形状であるので、固定軸カバーの機能を果たせるとともに、釣り糸がラインローラから外れにくくなる。ここでは、釣り糸案内機構の第2ベール支持部材とそれに連結されたベールを外し、さらに第1ベール支持部材側でベールが連結された固定軸カバーと固定軸とを外し、軸部材とカバー部材とを取り付けることによりベールレスのスピニングリールを実現できる。このため、ベールがなくなってベールの変形による不具合が生じなくなる。
【0012】
発明3に係るスピニングリールのロータ交換部品は、発明1に記載の部品において、カバー部材は、固定軸カバーに代えて固定軸に装着可能である。この場合には、カバー部材を固定軸カバーに代えて固定する。
【0013】
発明4に係るスピニングリールのロータ交換部品は、発明1から3のいずれかに記載のスピニングリールのロータ交換部品において、カバー部材は、大径部の基端からラインローラに向かって滑らかに縮径しかつ傾斜が徐々に緩くなるように形成された傾斜部をさらに有している。
【0014】
発明5に係るスピニングリールのロータ交換部品は、発明1から4のいずれかに記載の部品において、第2ロータアームの先端に第2ベール支持部材に代えて第1端が装着可能であり、第2端が完結しているバランス部材をさらに備える。この場合には、第2ベール支持部材やベールの質量及び重心に見合うようにバランス部材を配置することにより、第2ベール支持部材やベールが無くなることによるロータの回転バランスの低下を抑えることができる。
【0015】
発明6に係るスピニングリールのロータ交換部品は、発明5に記載の交換部品において、バランス部材は、第2端が前記第1端より質量が大きくなるように形成されている。この場合には、バランス部材の重心が第2端側に移動するので、第2端がリールの前方を向くように配置することにより、ロータの回転バランスの低下をさらに抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、釣り糸案内機構の第2ベール支持部材とそれに連結されたベールを外し、さらに第1ベール支持部材側でベールが連結された固定軸カバーと固定軸とを外し、固定軸でカバー部材を取り付けることによりベールレスのスピニングリールを実現できる。このため、ベールがなくなってベールの変形による不具合が生じなくなる。
【0017】
さらに、カバー部材の先端部が略球形状に形成された滑らかな突出部となっているので、釣り糸の巻き取りを阻害する方向や、あるいはカバー部材から糸落ちしてしまう方向に向くことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールの側面図。
【図2】前記スピニングリールの側面断面図。
【図3】ベールレス型の釣り糸案内機構の分解斜視図。
【図4】前記釣り糸案内機構の拡大側面断面図。
【図5】前記釣り糸案内機構の拡大側面図。
【図6】バランス部材の平面図
【図7】バランス部材の分解斜視図。
【図8】前記ベールレス型の釣り糸案内機構に代えてベールを有する別の釣り糸案内機構が装着されたスピニングリールの側面図。
【図9】その図4に相当する図。
【図10】他の実施形態の図4に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールは、図1及び図2に示すように、釣り糸を前方に繰り出すリールであって、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0020】
リール本体2は、リールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に延びる竿取付脚2bとを有している。リールボディ2aは、図2に示すように内部に空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。リールボディ2aの前部には、前方に突出する筒状部2cが設けられている。
【0021】
ロータ3は、図2に示すように、円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とを有している。円筒部30と第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とは、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。
【0022】
円筒部30の前部には、図2に示すように、前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス部33aが形成されている。ボス部33aの中心部には面取り部12bに回転不能に係止される小判形状の貫通孔33bが形成されており、この貫通孔33bをピニオンギアの前部12a及びスプール軸15が貫通している。前壁33の前部にナット13が配置されており、ナット13の内部には、スプール軸15を回転自在に支持する軸受35が配置されている。
【0023】
円筒部30の内側において、リールボディ2aの筒状部2cの内部にはロータ3の逆転を常時禁止するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51を有している。
【0024】
第1ロータアーム31は、図1から図3に示すように、円筒部30から外方に凸に湾曲して前方に延びており、円筒部30との接続部は円筒部30の周方向に広がり湾曲している。第1ロータアーム31の先端の外周側には、後述するロータ交換部品60が装着されたベールレス型の釣り糸案内機構76が揺動自在に装着されている。第2ロータアーム32は、図1及び図2に示すように、円筒部30から外方に凸に湾曲して前方に延びている。第2ロータアーム32は、円筒部30から外方に凸に湾曲して前方に延びており、円筒部30との接続部は円筒部30の周方向に広がり湾曲している。第2ロータアーム32の先端外周側には、ロータ交換部品60を構成するバランス部材72が相対移動不能に装着されている。
【0025】
バランス部材72は、図6及び図7に示すように、第2ロータアーム32の先端部に第1端の装着部72aが着脱自在に装着されており、第2端側の突出部72bが前方を向くようにボルト部材62によって相対移動不能に固定されている。バランス部材72の突出部72bは、球状に丸められて完結しており、第2端側が第1端側より質量が大きくなるように装着部72aに対して突出部72bの厚みが厚く形成されている。バランス部材72の装着部72aと突出部72bとの間には、重心を第2端側に偏倚させるための円形孔72cが形成されている。ここでは、釣り糸案内機構76を含む第1ロータアーム31側の重量より軽くなりやすい第2ロータアーム32側にバランス部材72が設けられているので、ロータ3の回転バランスの低下を抑えることができる。
【0026】
釣り糸案内機構76は、図1及び図2に示す糸案内姿勢とそれから反転した糸開放姿勢との間で揺動自在である。
【0027】
釣り糸案内機構76は、図1から図3に示すように、第1ロータアーム31の先端にのみ糸案内姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着された第1ベール支持部材70と、第1ベール支持部材70に第1端が固定された軸部材73(図3参照)と、軸部材73に回動自在に支持され周面に釣り糸を案内するローラが形成されたラインローラ71と、軸部材73の第2端に配置され、釣り糸をラインローラ71に導くカバー部材74とを有している。この軸部材73とカバー部材74とバランス部材72とにより、本発明の一実施形態によるロータ交換部品60が構成されている。
【0028】
第1ベール支持部材70は、図3から図5に示すように、たとえばクロムメッキにより形成された金属皮膜により外側面が覆われたアルミニウム合金製の部材である。このクロムメッキにより表面が硬質になり、釣り糸の接触による外側面の傷付きを防止できる。第1ベール支持部材70の外側面の先端側には、固定ボルト77の頭部が収納される第1収納凹部70a(図4参照)が形成されている。また、第1ベール支持部材70の基端側には、第1ベール支持部材70を第1ロータアーム31に取り付けるための取付ボルト79の頭部が収納される円形の第2収納凹部70b(図3及び図4参照)が形成されている。
【0029】
図8及び図9に示す通常のベールを有するスピニングリールの釣り糸案内機構46の固定軸43と固定軸カバー44と第2ベール支持部材42とベール45と取り外した後に、固定軸43を軸部材73に、固定軸カバー44をカバー部材74に、第2ベール支持部材42をバランス材72に交換することにより、ロータ交換部品60によってベールレス形の釣り糸案内機構76を実現できる。
【0030】
軸部材73は、図3及び図4に示すように、カバー部材74と一体成形されている。軸部材73は、カバー部材74を第1ベール支持部材70に固定するとともに、ラインローラ71を回転自在に支持するために設けられている。軸部材73は、カバー部材74の基端部より小径に形成されラインローラ71を支持する支持部73aと、支持部73aの先端に形成された係止部73bとを有している。係止部73bは、第1ベール支持部材70に形成された係止溝70c(図3及び図4参照)係合し、これらの係合によりカバー部材74及び軸部材73と第1ベール支持部材70との回り止めがなされる。
【0031】
カバー部材74は、図3から図5に示すように、軸部材73と一体成形され、軸部材73の第2端に第1ベール支持部材70と間隔を隔てて設けられ、ラインローラ71取付側と逆側の端面が径方向外方に全周にわたって環状に突出した大径部74bと、大径部74bの先端が略球形状に突出して完結するように形成された突出部74aと、大径部74bの基端から軸部材73に装着されたラインローラ71に向かって滑らかに縮径するように形成された傾斜部74cとを有している。このようなカバー部材74では、釣り糸を略球形状の突出部74aから大径部74bに引っ掛け、テーパ状の傾斜部74cを介してラインローラ71に釣り糸を案内するようになっている。
【0032】
ラインローラ71は、図3及び図4に示すように、軸方向に間隔を隔てて配置された2つの軸受78a、78bにより軸部材73に回転自在に支持されている。ラインローラ71は、軸方向の中心に形成された小径のガイド溝71aを挟んで第1筒部71bと第2筒部71cとが形成されている。第1筒部71bは、カバー部材74内に入り込んでおり、第2筒部71cより小径である。第2筒部71cは、第1ベール支持部材70の先端外周部と対向して配置されている。ラインローラ71の内部には、軸受78a、78bを装着するための図示しないカラーやスペーサやワッシャが装着されている。
【0033】
ここでは、釣り糸案内機構76を含む第1ロータアーム31側の重量より軽くなりやすい第2ロータアーム32側に第1バランス部材72が設けられているので、ロータ3の回転バランスの低下を防止できる。
【0034】
釣り糸案内機構76の動作について説明する。
【0035】
キャスティング時には、釣り糸案内機構76を糸開放姿勢に反転させる。これにより第1ベール支持部材70が揺動する。この状態で釣竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っ掛けながらキャスティングする。すると、釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。この状態でハンドル1を糸巻取方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が糸巻取方向に回転し、釣り糸案内機構76が図示しないベール反転機構により糸巻取位置に復帰し、釣り糸を略球形状の突出部74aから大径部74bに引っ掛け、テーパ状の傾斜部74cを介してラインローラ71に移動してスプール4に巻き付けられる。
【0036】
スプール4は、図2に示すように、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されている。スプール4は、前後方向に沿って配置されたスプール軸15に着脱自在に装着可能なものである。
【0037】
スプール4は、たとえばアルミニウム合金を鍛造成形して得られた大小2段の円筒状の部材である。スプール4は、外周面に釣り糸を巻き付け可能な筒状の糸巻胴部4aと、糸巻胴部4aの前後に設けられた大径の前後の前フランジ部4b及び後フランジ部4cと、後フランジ部4cから後方に延びる筒状のスカート部4dとを有している。
【0038】
ロータ駆動機構5は、図2に示すように、ハンドル1が連結されたハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は前後方向に配置され筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、それぞれ軸受14a、14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。ピニオンギア12の前部12aには所定長さの平行な面取り部が形成されている。この面取り部は、ロータ3及びロータ3の糸繰り出し方向の回転を禁止するワンウェイクラッチ51をピニオンギア12に回転不能に連結するために形成されている。
【0039】
オシレーティング機構6は、図2に示すように、トラバースカム方式の機構であり、スプール4の中心部に連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸15の下方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22は、リール本体2に回転不能かつ軸方向移動自在に支持されている。スライダ22にはスプール軸15の基端部が回転不能に固定されている。したがって、スプール軸15もリール本体2に対して回転不能である。中間ギア23は、ピニオンギア12に噛み合っている。
【0040】
また、ロータ3は、図1から図5に示すベールレス型の釣り糸案内機構76と、図8に示すベール45を有する別の釣り糸案内機構46とが相互に交換可能である。
【0041】
釣り糸案内機構46は、図8及び図9に示すように、釣り糸案内機構76に代えて、第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32の先端にそれぞれ糸案内姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着された第1ベール支持部材70及び第2ベール支持部材42と、第1ベール支持部材70に一端が固定された固定軸43と、固定軸43に回動自在に支持され周面に釣り糸を案内するローラが形成されたラインローラ71と、固定軸43の他端に第1ベール支持部材70と間隔を隔てて設けられ釣り糸をラインローラ71に導く固定軸カバー44と、第2ベール支持部材42と少なくとも固定軸43及び固定軸カバー44のいずれかと、に両端が固定されスプール4の周方向外方に湾曲して配置され釣り糸をラインローラ71に導くベール45とを有している。
【0042】
固定軸43の先端には、第1ベール支持部材70に形成された係止溝70cに係止される第1係止部43bが形成されている。固定軸43の基端には、大径の頭部43cと頭部43c近接して配置された第2係止部43dとが形成されている。固定軸カバー44には、固定軸43の第2係止部43dに回転不能に係合する係止孔44dが形成されている。
【0043】
第2ベール支持部材42は、第2ロータアーム32の先端内周側に揺動自在に装着されている。ラインローラ71と第2ベール支持部材42との間には、線材を略U状に湾曲させた形状のベール45が固定されている。固定軸43は、固定軸カバー44と一体成形されており、さらに、固定軸カバー44は、略U状に湾曲させた形状のベール45と、たとえば鍛造により一体形成されている。
【0044】
このようなベール45を有する釣り糸案内機構46からベールレス型の釣り糸案内機構76に交換する動作について説明する。
【0045】
まず、釣り糸案内機構46のうち第1ベール支持部材70を残した状態で、第2ベール支持部材42、ラインローラ71、固定軸43、固定軸カバー44及びベール45を取り外す。そして、釣り糸案内機構46の固定軸43、固定軸カバー44及びベール45に代えて、釣り糸案内機構76の軸部材73、カバー部材74を装着する。具体的には、カバー部材74と一体の軸部材73の外周にラインローラ71を装着した状態で、軸部材73の係止部73bを第1ベール支持部材70の係止溝70cに係止し、固定ボルト77を締結することによってラインローラ71、軸部材73、カバー部材74のユニットを第1ベール支持部材70に固定する。そして、第2ベール支持部材42に代えて、バランス部材72を第2ロータアーム32の先端に相対移動不能に固定する。
【0046】
ここでは4、釣り糸案内機構46の第2ベール支持部材42とそれに連結されたベール45を外し、さらに第1ベール支持部材側でベールが連結された固定軸カバー44と固定軸43とを外し、軸部材73とカバー部材74とを取り付けることによりベールレスのスピニングリールを実現できる。このため、ベールがなくなってベールの変形による不具合が生じなくなる。
【0047】
また、カバー部材74は略球形状に形成された滑らかな突出部74aを有しているので、ベールを有する釣り糸案内機構46の固定軸43、固定軸カバー44及びベール45を取り外し、ベールレス型の釣り糸案内機構76の軸部材73、カバー部材74を交換する場合でも、釣り糸の巻き取りを阻害する方向や、あるいはカバー部材74から糸落ちしてしまう方向に向くことがなくなる。したがって、ベールレス型の釣り糸案内機構76のカバー部材74を、ベール45を有する釣り糸案内機構46の固定軸カバー44と交換した場合でも、釣り糸をスムーズに案内できる。
【0048】
さらに、カバー部材74は、ラインローラ71取付側と逆側の端面が径方向外方に突出した大径部74bを有しているので、ラインローラ71に案内された釣り糸がカバー部材74側に移動しても、移動した釣り糸が径方向外方に突出した大径部74bによって移動が規制されるので、カバー部材74からの糸落ちをさらに防止することができる。
【0049】
また、カバー部材74は、大径部74bの基端からラインローラ71に向かってテーパ状に滑らかに縮径した傾斜部74cを有しているので、釣り糸をラインローラ71にスムーズに案内できる。さらに、カバー部材74は、略球形状に形成された滑らかな突出部74aを介して、釣り糸を大径部74bに容易に引っ掛けることができる。
【0050】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、軸部材73とカバー部材74とが一体成形されていたが、図10に示すように、釣り糸案内機構176において、軸部材173とカバー部材174とを別体に形成してもよい。軸部材173は、カバー部材174が一体形成されていないため、大径の頭部173cと、頭部173cに近接して配置されたカバー部材と回転不能に係合する第2係止部173dと、を有している。軸部材173は前記実施形態と同様に固定ボルト77により第1ベール支持部材70に固定される。カバー部材174は、前記実施形態と同様な突出部174a,大径部174b及び傾斜部174cに加えて、第2係止部173dと回転不能に係合する長円形の係合孔174dを有している。
【0051】
ここでは、軸部材173とカバー部材174とを異なる材質の部材で形成できるとともに、軸部材173及びカバー部材174の加工が容易になる。なお、軸部材173とカバー部材174とを別体に形成した場合には、図10に示す釣り糸案内機構176の軸部材173と図9に示す釣り糸案内機構46の固定軸43と共用化できるので、ロータ交換部品160は、カバー部材174とバランス部材72とだけで構成される。
【0052】
(b) 前記実施形態では、ロータ交換部品としてバランス部材72を設けたが、バランス部材72を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0053】
3 ロータ
31 第1ロータアーム
32 第2ロータアーム
42 第2ベール支持部材
43 固定軸
44 固定軸カバー
45 ベール
46 釣り糸案内機構(ベールを有する)
60,160 ロータ交換部品
70 第1ベール支持部材
71 ラインローラ
72 バランス部材
73,173 軸部材
74,174 カバー部材
74a 突出部
76,176 釣り糸案内機構(ベールレスの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピニングリールのロータの第1及び第2ロータアームに設けられ、前記第1ロータアームに連結された第1ベール支持部材と、前記第1ベール支持部材に第1端が固定された固定軸と、前記固定軸に回転自在に装着されるラインローラと、前記固定軸の第2端に設けられた固定軸カバーと、前記第2ロータアームに設けられた第2ベール支持部材と、前記固定軸カバーと前記第2ベール支持部材とを連結するベールと、を有する釣り糸案内機構に代えて少なくとも前記第1ロータアームに取り付け可能なスピニングリールのロータ交換部品であって、
前記第1ベール支持部材と前記ラインローラを挟んで配置可能であり、前記ラインローラより大径であり先端が完結しているカバー部材、を備え、
前記カバー部材は、前記ラインローラ取付側と逆側の端面が径方向外方に全周にわたって環状に突出した大径部と、前記大径部から先端が略球形状に突出して完結するように形成された突出部と、を有している、スピニングリールのロータ交換部品。
【請求項2】
前記固定軸に代えて前記第1ベール支持部材に第1端を固定可能であり、前記ラインローラを回転自在に装着可能な軸部材をさらに備え、
前記カバー部材は、前記固定軸カバーに代えて前記軸部材の第2端に一体で設けられる、請求項1に記載のスピニングリールのロータ交換部品。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記固定軸カバーに代えて前記固定軸に装着可能である、請求項1に記載のスピニングリールのロータ交換部品。
【請求項4】
前記カバー部材は、大径部の基端からラインローラに向かって滑らかに縮径しかつ傾斜が徐々に緩くなるように形成された傾斜部をさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のスピニングリールのロータ交換部品。
【請求項5】
前記第2ロータアームの先端に前記第2ベール支持部材に代えて第1端が装着可能であり、第2端が完結しているバランス部材をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のスピニングリールのロータ交換部品。
【請求項6】
前記バランス部材は、前記第2端が前記第1端より質量が大きくなるように形成されている、請求項5に記載のスピニングリールのロータ交換部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−39137(P2013−39137A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234527(P2012−234527)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2007−340403(P2007−340403)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】