説明

スピニングリールの釣り糸案内機構

【課題】スピニングリールにおいて、固定軸を第1ベール支持部材に固定する固定ボルトを緩みにくくする。
【解決手段】この釣り糸案内機構は、第1ベール支持部材40と、固定軸43と、ガイドローラ41と、固定軸カバー44と、固定ボルト46と、回り止め部材47と、を備えている。固定軸43は、支持部43cと、支持部43cの先端部に形成され第1ベール支持部材40に係合する係止部43dと、を有し、第1ベール支持部材40に相対回転不能に固定されている。固定軸カバー44は固定軸43の先端側に配置されている。固定ボルト46は、非円形頭部46aを有し、固定軸43を第1ベール支持部材40に固定する。回り止め部材47は、第1ベール支持部材40に着脱自在に装着され、非円形頭部46aの外周部に接触して固定ボルトを回り止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り糸案内機構、特に、第1ロータアームと、第1ロータアームと対向して配置された第2ロータアームとを有するロータに設けられ、釣り糸をスプールに案内するスピニングリールの釣り糸案内機構に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り糸を前方に繰り出すスピニングリールには、釣り糸が巻き付けられるスプールが前後方向に沿って配置されている。このスプールに釣り糸を案内して巻き付けるためにロータが設けられている。ロータは、リール本体に前後軸回りに回転自在に装着されており、ハンドルの回転に連動して回転する。ロータは、ハンドルの回転に連動して回転するピニオンギアの先端に一体回転可能に連結された有底筒状の連結部と、連結部の後部の対向する位置から連結部と間隔を隔てて前方に延びる第1及び第2ロータアームを有している。この第1及び第2ロータアームの先端に、釣り糸をスプールに案内する糸案内姿勢と、それから揺動した糸開放姿勢とに揺動自在に釣り糸案内機構が設けられている。
【0003】
従来の釣り糸案内機構は、第1及び第2ロータアームにそれぞれ揺動自在に連結された第1及び第2ベール支持部材と、第1ベール支持部材に固定ボルトにより固定された固定軸と、固定軸に回転自在に支持されたラインローラと、固定軸と別体で形成された固定軸カバーと、固定軸カバーと一体成形され第2ベール支持部材と連結されたベールと、を有している(たとえば、特許文献1参照)。固定ボルトは第1ベール支持部材を貫通して固定軸の先端にねじ込まれており、円形の頭部を有している。第1ベール支持部材の表面には固定ボルトの頭部を収納して釣り糸が頭部に引っ掛かるのを防止するために円形の凹部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−42740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
釣り糸案内機構では、糸巻取姿勢の状態で獲物がかかって釣り糸を巻き取るとき、釣り糸はラインローラに案内されてスプールに巻き取られる。このとき、釣り竿を上下にしゃくりながら巻き取ると、釣り糸の張力が大きく変化し、釣り糸を案内するラインローラに作用する負荷が変動する。ラインローラに作用する負荷の変動は、ドラグの作動の有無によっても生じることがある。このような負荷の変動によりラインローラを支持する固定軸がたわんだり元に戻ったりして僅かに揺れることがある。
【0006】
従来の釣り糸案内機構では、固定軸が揺れると、固定軸にねじ込まれている固定ボルトに振動が伝わる。振動が固定ボルトに伝達されると、振動により固定ボルトが緩むおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、スピニングリールの釣り糸案内機構において、固定軸を第1ベール支持部材に固定する固定ボルトを緩みにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明1に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、第1ロータアームと、第1ロータアームと対向して配置された第2ロータアームと、を有するロータに設けられ、釣り糸をスプールに案内する機構である。この釣り糸案内機構は、第1ベール支持部材と、固定軸と、ラインローラと、固定軸カバーと、固定部材と、回り止め部材と、を備えている。第1ベール支持部材は第1ロータアームに揺動自在に装着されている。固定軸は、支持部と、支持部の先端部に形成され第1ベール支持部材に係合する係止部と、を有し、第1ベール支持部材に相対回転不能に固定されている。ラインローラは、固定軸の支持部に回転自在に支持され、釣り糸を案内する。固定軸カバーは固定軸の先端側に配置されている。固定部材は、非円形の外周部を有し、固定軸に螺合して固定軸を第1ベール支持部材に固定する。回り止め部材は、第1ベール支持部材に着脱自在に装着され、非円形の外周部に接触して固定部材を回り止め可能な部材である。
【0009】
このスピニングリールの釣り糸案内機構では、非円形の外周部を有する、例えばナットやボルトなどの固定部材により固定軸が第1ベール支持部材に固定されている。この固定軸にラインローラが回転自在に支持され釣り糸をスプールに案内している。ここでは、固定部材の非円形の外周部には、回り止め部材が接触して固定部材が回り止めされている。このため、固定軸を第1ベール支持部材に固定する固定部材が緩みにくくなる。
【0010】
発明2に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、発明1に記載の機構において、固定軸は雌ねじ部を有し、固定部材は、非円形の外周部としての非円形頭部を有し、雌ねじ部に螺合する固定ボルトである。また、第1ベール支持部材は、少なくとも1つのねじ込み穴を有し、回り止め部材は、第1ベール支持部材のねじ込み穴にねじ込まれ、固定部材を回り止めする回り止めボルトである。そして、第1ベール支持部材は、外側面から固定ボルトの非円形頭部及び回り止めボルトが突出しないように、固定ボルト及び回り止めボルトを収納可能な凹部を有している。
【0011】
この場合には、固定ボルトの非円形頭部と回り止めボルトとが凹部に収納されるので、第1ベール支持部材の外側面からそれらが突出しなくなり、糸ふけしても釣り糸が第1ベール支持部材の外側面に引っ掛かりにくくなる。
【0012】
発明3に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、発明1に記載の機構において、固定軸は雄ねじ部を有し、固定部材は雄ねじ部に螺合する固定ナットである。また、第1ベール支持部材は、少なくとも1つのねじ込み穴を有し、回り止め部材は、第1ベール支持部材のねじ込み穴にねじ込まれ、固定部材を回り止めする回り止めボルトである。そして、第1ベール支持部材は、外側面から固定ナットの非円形の外周部及び回り止めボルトが突出しないように、固定ナット及び回り止めボルトを収納可能な凹部を有している。
【0013】
発明4に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、発明3に記載の機構において、回り止めボルトは、すり割り付きのホローセットスクリューである。この場合には、頭部を有さないホローセットスクリューにより固定部材を回り止めできるので、その分だけ回り止め部材を配置するスペースを小さくすることができ、回り止め部材を配置しても、第1ベール支持部材が大型化しにくくなる。しかも、ホローセットスクリューが六角穴付きではなく、すり割り付きであるので、サイズが小さいものであっても工具により回したときの変形を抑えることができる。
【0014】
発明5に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、発明2から4のいずれかに記載の機構において、第1ベール支持部材の凹部は非円形である。また、第1ベール支持部材は2つのねじ込み穴を有し、2つのねじ込み穴は、非円形凹部内に固定部材の中心から同じ半径位置に回り止めボルトが非円形の外周部に接触可能に間隔を隔てて配置されている。
【0015】
この場合には、たとえば、6角形や8角形などの正多角形の非円形部を有する固定部材を用いれば、2つのねじ込み穴の固定部材の中心からの中心角を、正多角形の各片の中心角と異ならせることにより、より非円形部の多くの位相で固定部材を回り止めできる。
【0016】
発明6に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、発明4又は5に記載の機構において、第2ロータアームに揺動自在に装着された第2ベール支持部材と、固定軸カバーと第2ベール支持部材とを連結するベールと、をさらに備える。この場合には、ベールが設けられているので、キャスティング後に釣り糸をラインローラに容易に案内できる。
【0017】
発明7に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、発明1から6のいずれかに記載の機構において、非円形部は、正N(N=3から10の整数)角形であり、先端面に工具を係止可能な工具係止部を有する。この場合には、固定部材に市販のボルト部材を使用できるので、固定部材のコストを削減できる。
【0018】
発明8に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、発明7に記載の機構において、非円形部は、正N角形の各片に回り止め部材の外周面に係合するように凹んで形成された回り止め凹部を有している。この場合には、固定部材の外周面に係合するように凹んで形成された回り止め凹部に回り止め部材の外周面が係合するので、固定部材を確実に回り止めできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、固定部材の非円形部の外周面には、回り止め部材が接触して固定部材が回り止めされている。このため、固定軸を第1ベール支持部材に固定する固定部材が緩みにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールの側面図。
【図2】その側面断面図。
【図3】ハンドル把手の断面図。
【図4】ベールアームの分解斜視図。
【図5】第1ベール支持部材の平面図。
【図6】固定軸カバー付近のベールアームの断面拡大図。
【図7】スプールの断面図。
【図8】スプールの分解斜視図。
【図9】ドラグつまみ組立体の断面図。
【図10】その分解斜視図。
【図11】他の実施形態の図5に相当する図。
【図12】さらに他の実施形態の図5に相当する図。
【図13】さらにまた他の実施形態の図5に相当する図。
【図14】その実施形態の図6に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2において、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、ハンドル組立体1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、スプール4に釣り糸を巻き付けるものであり、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、外周面に釣り糸を巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。なお、ハンドル組立体1は、図1に示すリール本体2の左側と、リール本体2の右側とのいずれにも装着可能である。
【0022】
ハンドル組立体1は、図1に示すように、ハンドル軸10の先端に装着されるハンドルアーム8と、ハンドルアーム8の先端に装着されたハンドル把手9とを備えている。
【0023】
〔ハンドル把手の構成〕
ハンドル把手9は、図3に示すように、ハンドルアーム8の先端にカシメ固定された把手軸18に回転自在に装着されている。把手軸18の基端側には、把手軸18の軸方向の位置決め及びハンドル把手9を固定するための大径部95が形成されている。
【0024】
ハンドル把手9は、把手軸18の外周側に装着される筒状の装着部90と、装着部90の外周面に接着により固定された略球状の把手部91とを有している。装着部90は、たとえば、ステンレス合金やアルミニウム合金等の金属製の部材である。装着部90の内周部には、ハンドル把手9を把手軸18で回転自在に支持するための1対の軸受94a,94bが軸方向に間隔を隔てて装着されている。装着部90の先端側外周面には、キャップ96を固定するための雄ねじ部90aが形成されている。また、把手軸18の先端には、ハンドル把手9を把手軸18に抜け止めするための抜け止めボルト97がねじ込まれている。抜け止めボルト97は、装着部90の先端側に形成された軸受94b装着用の装着穴90b内で軸受94bを介して装着部90を把手軸18に対して抜け止めしている。装着部90の把手部91の接着部分には、たとえば環状の接着剤溜まり90cが形成されている。
【0025】
把手部91は、たとえば、炭素繊維強化樹脂製であり、薄肉の中空部材である。把手部91は、ハンドルアーム8側に配置され外周面が略球状に形成された第1把手92と、ハンドルアーム8と逆側に配置され外周面が第1把手92より大径となる部分を一部に有する略球状に形成された第2把手93とを有している。第1把手92の内周面は筒状に形成されており、装着部90の外周面に接着されている。第1把手92と第2把手93とは、把手部91の外周部の最外径部M付近と、内周部の最外径部Mと同一軸方向位置付近と、で重ね合わされて接着により一体化されている。第1把手92は、把手軸18の軸芯Xから離反した位置を中心として球状に形成されている。
【0026】
第2把手93の外周面は、第1把手92との接合部分からキャップ96側にかけて点Pの位置まで第1把手92と同じ半径で球状に形成され、点Pからキャップ96が装着される部分まで、第1把手92より大径の球状に形成されている。第2把手93の内周面は、キャップの外周面に僅かな隙間をあけて筒状に形成されている。第2把手93の内周部93aには、水抜き孔93bが形成されている。水抜き孔93bは、キャップ96装着時にキャップ96で塞がれて水が入りにくい位置に形成されている。第2把手93の大径の球状部分は、軸芯Xを中心に球状に形成されている。
【0027】
キャップ96は、アルミニウム合金製の鍔96a付き筒状の部材である。キャップ96と第2把手93の内周部93aとの間には、液体が把手部91内に入るのを防止するための、たとえばOリングからなるシール98が装着されている。シール98は、キャップ96に形成された環状溝96bに装着されている。環状溝96bは、水抜き孔93bより鍔96aに接近する位置に形成されている。
【0028】
リール本体2は、図1及び図2に示すように、開口2dを有する、例えばアルミニウム合金製のリールボディ2aと、開口2dを塞ぐようにリールボディ2aに着脱自在に装着された、例えばアルミニウム合金製の蓋部材2bと、リールボディ2aから斜め上前方に延びる竿取付脚2cとを有している。リールボディ2aは、内部に空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル組立体1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。
【0029】
ロータ駆動機構5は、図2に示すように、ハンドル組立体1のハンドル軸10が固定されたメインギア軸11aとともに回転するメインギア11と、このメインギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、リールボディ2aに間隔を隔てて装着された軸受14a,14bに、よりリールボディ2aに回転自在に支持されている。
【0030】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸15の下方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23は、ピニオンギア12に噛み合っている。
【0031】
スプール軸15は、ピニオンギア12の中心部を貫通して配置されている。スプール軸15は、ピニオンギア12の内部をオシレーティング機構6により前後に往復移動する。スプール軸15は、中間部がナット13内に装着された軸受16により、後部がピニオンギア12の後部内周面により、回転自在かつ軸方向移動自在に支持されている。スプール軸15がピニオンギア12と相対回転しながら前後移動するときに、ピニオンギア12にスプール軸15がかじりつくのを防止するために、スプール軸15の表面には、無電解Niメッキが施されている。スプール軸15の先端には、互いに平行な面で構成された回り止めのための係止面15aと、ドラグ調整用の雄ねじ部15bとが形成されている。
【0032】
〔ロータの構成〕
ロータ3は、図2に示すように、筒状の連結部30と、連結部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31,32とを有するロータ本体33と、ロータ本体33に揺動自在に装着されたベールアーム(釣り糸案内機構の一例)34と、を有している。連結部30と両ロータアーム31,32と有するロータ本体33は、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。
【0033】
連結部30の前部には前壁30aが形成されており、前壁30aの中央部にはボス部30bが形成されている。ボス部30bの中心部には貫通孔30cが形成されており、この貫通孔30cをピニオンギア12の前部12a及びスプール軸15が貫通している。前壁30aの前部にナット13が配置されている。
【0034】
第1ロータアーム31は、連結部30から外方に凸に湾曲して前方に延びており、連結部30の周方向に広がり湾曲している。第2ロータアーム32は、連結部30から外方に凸に湾曲して前方に延びており、連結部30との接続部は連結部30の周方向に広がり湾曲している。なお、第2ロータアーム32には、軽量化のために開口(図示せず)が形成されている。
【0035】
〔ベールアームの構成〕
ベールアーム34は、第1及び第2ロータアーム31,32の先端に糸解放姿勢と糸巻き取り姿勢との間で揺動自在に装着されている。ベールアーム34は、図示しないベール反転機構により糸解放姿勢と糸巻き取り姿勢とに振り分けて付勢されている。
【0036】
ベールアーム34は、図2及び図4に示すように、第1ロータアーム31の先端の外周側に揺動自在に装着された第1ベール支持部材40と、第2ロータアーム32の先端の外周側に揺動自在に装着された第2ベール支持部材42と、第1ベール支持部材40の先端装着されたラインローラ41と、を有している。また、ベールアーム34は、第1ベール支持部材40の先端に固定され第1ベール支持部材40に片持ち支持された固定軸43と、固定軸43の先端側に配置された固定軸カバー44と、固定軸カバー44と第2ベール支持部材とを連結するベール45と、を有している。さらにベールアーム34は、固定軸43を第1ベール支持部材40に固定する固定ボルト(固定部材の一例)46と、固定ボルト46を回り止めする回り止め部材47と、を有している。
【0037】
第1ベール支持部材40は、図4から図6に示すように、たとえばクロムメッキにより形成された金属皮膜により外側面が覆われたアルミニウム合金製の部材である。このクロムムメッキにより表面が硬質になり、釣り糸の接触による外側面の傷付きを防止できる。第1ベール支持部材40の外側面の先端側には、固定ボルト46の頭部(非円形部の一例)46aが収納される第1収納凹部(非円形凹部の一例)40aが形成されている。また基端側には、第1ベール支持部材40を第1ロータアーム31に取り付けるための取付ボルト49の頭部49aが収納される円形の第2収納凹部40bが形成されている。第1収納凹部40aは、大小2つの円をつないだような概ね雨滴形状に凹んで形成されている。第1収納凹部40aの大径の円の中心C1には、固定ボルト46が貫通する貫通孔40cが形成されている。また、小径の円の中心C2には、回り止め部材47がねじ込まれるねじ込み穴40dが形成されている。さらに、内側面には、ラインローラ41が配置される円形の第3収納凹部40eが形成されている。
【0038】
固定軸43は、固定軸カバー44と別体で形成されている。固定軸43は、固定軸カバー44を第1ベール支持部材40に固定するとともに、ラインローラ41を回転自在に支持するために設けられている。固定軸43は大径の頭部43aと、頭部43aに続いて頭部43aより小径に形成された第1係止部43bと、ラインローラ41を支持する支持部43cと、支持部43cの先端に形成された第2係止部43dと、を有している。固定軸43の先端部には、固定ボルト46が螺合する雌ねじ部43eが形成されている。第1係止部43bは、固定軸カバー44に係合し、第2係止部43dは、第1ベール支持部材40に係合し、これらの係合により固定軸カバー44と固定軸43と第1ベール支持部材40の回り止めがなされる。
【0039】
固定ボルト46は、非円形の頭部(非円形部の一例)46aを有しており、この実施形態では、頭部46aは、8角形の各片を円弧状に凹ませた8つの回り止め凹部46bを有している。回り止め凹部46bは、回り止め部材47が係合可能な円弧で形成されている。したがって、その円弧の中心は回り止め部材47の中心である小径の円の中心C2と実質的に一致するように形成されている。頭部46aの表面には、直径に沿ってドライバーなどの工具を係止するためのすり割り(工具係止部の一例)46cが形成されている。固定ボルト46により固定軸43を固定する際には、回り止め凹部46bが回り止め部材47に係合可能な位置まで固定ボルト46を締め付ける。
【0040】
回り止め部材47は、たとえば、すり割り47aが基端に形成されたホローセットスクリューであり、一般のボルトのように大径の頭部を有していない円柱状のボルトである。回り止め部材47は、ねじ込み穴40dの底部までねじ込まれて第1収納凹部40aに固定される。
【0041】
ここでは、頭部を有さないホローセットスクリューにより固定ボルト46を回り止めできるので、その分だけ回り止め部材47を配置するスペースを小さくすることができ、回り止め部材47を配置しても、第1ベール支持部材が大型化しにくくなる。しかも、ホローセットスクリューが六角穴付きではなく、すり割り付きであるので、サイズが小さいものであっても工具により回したときの変形を抑えることができる。
【0042】
また、非円形の頭部46aを有する固定ボルト46により固定軸43が第1ベール支持部材40に固定されている。この固定軸43にラインローラ41が回転自在に支持され釣り糸をスプール4に案内している。ここでは、固定ボルト46の非円形の頭部46aの外周面には、回り止め部材47が接触して固定ボルト46が回り止めされている。このため、固定軸43を第1ベール支持部材40に固定する固定ボルト46が緩みにくくなり、固定ボルト46の緩みに起因する不具合、たとえば、ラインローラ41のがたつきの発生を抑えることができる。スピニングリールの場合、ラインローラ41ががたついたり位置が不安定になったりすると、糸ヨレが生じる原因になったり糸噛みが生じる原因になったりする。
【0043】
固定軸カバー44は、図4に示すように、略U状に湾曲させた形状のベール45と、たとえば鍛造により一体形成されている。固定軸カバー44には、固定軸43を装着可能な大きく装着凹部44aが形成され、装着凹部44aの底部には、第1係止部43bが係合するスロット44bが形成されている。ベール45の先端は、第2ベール支持部材42にカシメ固定されている。
【0044】
ラインローラ41は、軸方向に間隔を隔てて配置された2つの軸受48a,48bにより固定軸43に回転自在に支持されている。ラインローラ41は、軸方向の中心に形成された小径のガイド溝41aを挟んで第1筒部41bと第2筒部41cとが形成されている。第1筒部41bは、固定軸カバー44内に入り込んでおり、第2筒部41cより小径である。第2筒部41cは、第1ベール支持部材40の先端に形成された円形の第3収納凹部40e内に入り込んでいる。ラインローラ41の内部には、軸受48a,48bを装着するためのカラーやスペーサやワッシャが装着されている。
【0045】
図2に示すように、ロータ3の連結部30の内部にはロータ3の逆転を禁止するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51を有している。この逆転防止機構50は、ロータ3の糸繰り出し方向の逆転を常時禁止しており、逆転を許可する状態をとることはない。
【0046】
〔スプールの構成〕
スプール4は、図2に示すように、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端に装着されている。スプール4は、図7に示すように、外周に釣り糸が巻かれる、たとえばアルミニウム合金製の糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後部に一体で形成されたスカート部4bと、糸巻き胴部4aの前端に一体形成された前フランジ部4cとを有している。スプール4の内部には、設定されたドラグ力がスプール4に作用するようにスプール4を制動するドラグ機構60と、ドラグ作動時に発音するドラグ発音機構85と、が収納されている。
【0047】
糸巻き胴部4aは、円筒状の部材であり、外周面はスプール軸15と平行な周面で構成されている。糸巻き胴部4aは、釣り糸が巻き付けられる筒状部4dと、筒状部4dの内周面に一体形成された円板状の支持壁部4eと、支持壁部4eの内周側に形成された筒状の軸支部4fと、を有している。
【0048】
スカート部4bは、糸巻き胴部4aの後方から径方向に延びる後フランジ部4hと、後フランジ部4hの外周側から後方に筒状に延びる円筒部4iと、を有している。この円筒部4iの内側にロータ3の連結部30が配置されている。
【0049】
前フランジ部4cの外周面には、釣り糸を糸巻き胴部4aからスムーズに放出するための金属製のスプールリング20が装着されている。スプールリング20は、先広がりの傾斜面20aを有している。スプールリング20は、リング固定部材19により前フランジ部4cに固定されている。リング固定部材19は、前フランジ部4cから前方に突出する筒状の雌ねじ部4jに螺合している。
【0050】
図7及び図8に示すように、糸巻き胴部4aの内部において、支持壁部4eの前方には、ドラグ機構60を収納するためのドラグ収納筒部52が一体回転可能に装着されている。ドラグ収納筒部52の前方には、軸支部4fとでスプール4をスプール軸15に対して回転自在に支持するための支持筒部53が装着されている。
【0051】
ドラグ収納筒部52の内部には、ドラグ機構60の後述する摩擦部62が収納されている。ドラグ収納筒部52は、周方向に間隔を隔てて形成された複数(たとえば、8つ)の半円形の係止凹部52aを内周面に有している。また、スプール4の支持壁部4eに形成された複数(例えば4つ)の係合孔4gに係合する周方向に間隔を隔てて形成された複数(たとえば、4つ)の係合突起52bを後面に有している。これにより、ドラグ収納筒部52は、スプール4と一体回転する。
【0052】
支持筒部53は、糸巻き胴部4aの筒状部4dの内周面に嵌合する装着筒部53aと、装着筒部53aの内周面に一体形成された円形壁部53bと、円形壁部53bの内周側に形成された筒状の軸支部53cと、を有している。装着筒部53aの前側外周面53eは、後側外周面53fより大径に形成されて筒状部4dの内周面に嵌合している。この前側外周面53eには、筒状部4dと支持筒部53との隙間から液体の支持筒部53の後方へ浸入するのを防止するためにOリング54が装着されている。Oリング54は、支持筒部53の前側外周面53eに形成された環状溝53dに装着されている。装着筒部53aの後面は、ドラグ収納筒部52の前面に接触している。支持筒部53は、その前方でスプール4内部に装着された線材製の抜け止めばね55によりドラグ収納筒部52とともに抜け止めされている。抜け止めばね55は、糸巻き胴部4aの前面とリング固定部材19の後面との隙間でスプール4内に保持されている。
【0053】
スプール軸15の外周面には、スプール4をスプール軸15に対して回転自在に支持するための2つの軸受58a,58bが装着される第1支持部56及び第2支持部57が嵌め込まれている。第1支持部56は、スプール軸15に回転可能に装着されている。第1支持部56は、鍔部56aと鍔部56aより小径の筒部56bとを有する鍔付き円筒状の部材である。第1支持部56は、ドラグつまみ組立体61と摩擦部62との間に、両者に接触して配置されている。第1支持部56の筒部56bの外周面には、軸受58aの内輪がカシメ固定されている。軸受58aの外輪は、支持筒部53の軸支部53cに装着されている。これにより、第1支持部56の筒部56bの外周面に対して軸受58aを簡単に抜け止めできる。
【0054】
第2支持部57は、スプール軸15の前側部分に形成された係止面15aの後部に固定されている。第2支持部57は、小径部57aと大径部57bとを有する大小二段の段付き筒状の部材である。小径部57aには、軸受58bの内輪が装着されている。軸受58bの外輪は、糸巻き胴部4aの軸支部4fに装着されている。大径部57bには、互いに平行な面で構成された第1係止面57cと、第1係止面と直交する第2係止面57dと、が形成されている。この第1係止面57cを貫通するように配置された止めねじ59により、第2支持部57はスプール軸15に回転不能に固定されている。止めねじ59は、すり割り付きのホローセットスクリューを用いたものであり、第1係止面57cを通って係止面15aを貫通するねじ孔にねじ込まれる。
【0055】
このような構成のスプール4の支持構造では、糸巻き胴部4aの支持壁部4eの前方に支持筒部53を設け,支持筒部53に軸受58aを配置したので、軸支部4fに2つの軸受を並べる従来の構成に比べて、2つの軸受58a,58bの軸方向の間隔を広くすることができる。このため、スプール4の支持間隔が広くなり、スプール4のがたつきを抑えることができる。
【0056】
〔ドラグ機構の構成〕
ドラグ機構60は、図7及び図8に示すように、スプール4の糸繰り出し方向への回転を制動してスプール4にドラグ力を作用させるための機構である。ドラグ機構60は、スドラグ力を手で調整するためのドラグつまみ組立体61と、ドラグつまみ組立体61によりにスプール4側に押圧されてドラグ力が調整される、たとえば4枚のドラグ座金62a〜62dを有する摩擦部(ドラグ摩擦部の一例)62と、を備えている。
【0057】
〔ドラグつまみ組立体の構成〕
ドラグつまみ組立体61は、図9及び図10に示すように、第1部材66及び第1部材66に対して相対回転する第2部材67を有するつまみ部63と、つまみ部63とスプール4との隙間をシールする第1シール部材64と、第1部材66と第2部材67との隙間をシール第2シール部材65と、第1部材66と第2部材67との相対回転により発音するつまみ発音機構68(図10)と、を有している。
【0058】
つまみ部63は、第1及び第2部材66,67に加えて第1及び第2部材66,67を軸方向移動不能かつ回転自在に連結する連結部材74をさらに有している。
【0059】
第1部材66は、リング状の鍔部66aと、鍔部66aより小径の円筒部66bとを有する鍔付き筒状の、例えばアルミニウム合金等の金属製の部材である。第1部材66は、スプール軸15に回転不能かつ軸方向移動自在に設けられている。鍔部66aの前端面には、つまみ発音機構68を構成する音出し円板69が一体回転可能に設けられている。
【0060】
音出し円板69は、合成樹脂製の部材であり、その前面には、周方向に間隔を隔てて多数の音出し凹部69aが形成されている。音出し円板69の後面には、鍔部66aに形成された複数の連結孔66eに嵌合する複数の連結突起69bが形成されている。これにより音出し円板69は、第1部材66に対して回り止めされる。
【0061】
円筒部66bの内周部には、スプール軸15の係止面15aに回転不能に係合する長円状の係止スロット66cが形成されている。円筒部66bの外周面の第1シール部材64の装着部分の後部には、環状溝66dが形成されている。この円筒部66bの後端面が第1支持部56を介して摩擦部62のドラグ座金62aに当接する。
【0062】
第2部材67は、第1部材66に対向して配置され、第1部材66と相対回動自在に設けられている。第2部材67は、スプール軸15に螺合するとともに、鍔部66aを覆うように第1部材66に向けて筒状に突出する部材である。第2部材67は、つまみ体71と、つまみ体71に回転不能かつ軸方向移動自在に装着され、スプール軸15に螺合するナット部72と、ナット部72と第1部材66との間に圧縮状態で配置されたコイルばねからなるばね部材73とを有している。
【0063】
つまみ体71は、円板部75aと、円板部75aより小径の筒状の突出部75bと、を有する合成樹脂製のつまみ本体75と、つまみ本体75の前面に固定された金属製の円板状のカバー部76と、カバー部76の前面に径方向に沿って固定された金属製の操作つまみ77と、を有している。
【0064】
つまみ本体75の円板部75aの背面側からは、4本のボルト部材80a〜80dが挿入され,カバー部76を貫通して操作つまみ77にねじ込まれている。これにより、カバー部76と操作つまみ77がつまみ本体75に固定される。
【0065】
突出部75bは、第1部材66の鍔部66aを覆うように第1部材66に向けて筒状に突出している。突出部75bで覆われた第1部材66の鍔部66aは、突出部75bの内周面に装着された連結部材74により抜け止めされている。これにより、第1部材66と第2部材67とが相対回転自在かつ軸方向移動不能に連結される。つまみ本体75の内周部には、ナット部72が軸方向移動自在かつ一体回転可能に収納されるナット収納部75cが形成されている。
【0066】
カバー部76は、つまみ本体75の円板部75aの前面及び外周面の一部を覆うように形成されている。この結果、ドラグつまみ組立体61の機構部分を構成する合成樹脂製のつまみ本体75はスプール4内に隠れて外部に露出しなくなる。カバー部76の前面は、中心部分に向けて徐々に厚みが薄くなるように凹んでいる。操作つまみ77は、カバー部76の直径に沿って配置され、前方に突出している。
【0067】
連結部材74は、弾性を有する金属線材を折り曲げて形成された部材である。連結部材74は、略正方形の角に相当する4つの角部74aを有するC字状のばね部材である。連結部材74は、突出部75bの内周面に形成された環状溝に角部74aが係止されることにより突出部75bの内周面に装着されている。連結部材74は、角部74aの間の3つの円弧部74bが鍔部66aの後面に接触することにより、鍔部66aを抜け止めしている。
【0068】
ナット部72は、たとえば六角ナットであり、スプール軸15の先端外周面に形成された雄ねじ部15bに螺合し、つまみ本体75の回動に応じてばね部材73を圧縮する。
【0069】
第1シール部材64は、たとえば合成ゴム製の円板状の部材である。第1シール部材64は、スプール4の支持筒部53の装着筒部53aの内周面と第1部材66の円筒部66bの外周面との間に配置されている。第1シール部材64は、環状溝66dに装着された止め輪70により後方への移動を規制されている。第1シール部材64は、内周面が第1部材66の円筒部66bに装着され、外周部が支持筒部53の装着筒部53aの内周面に接触している。第1シール部材64の内部には、たとえばステンレス合金製の円板状の補強板81が埋設されている。補強板81は、第1シール部材64の成形時に金型内に挿入され、インサート成形されている。第1シール部材64の外周部には、装着筒部53aの内周面に接触する先細り断面のリップ部64aが形成されている。リップ部64aは前方に向けて傾斜している。また、径方向の途中には、前方に突出する断面三角形状の環状突起部64bが形成されている。この環状突起部64bが第2シール部材65の背面に接触する。また、第1シール部材64のリップ部64aの前面も第2シール部材65の外周面の後端部に接触している。
【0070】
第2シール部材65は、たとえば、合成ゴム製の有底筒状の部材である。第2シール部材65は、第1シール部材64と第2部材67との間に配置されている。第2シール部材65は、第2部材67のつまみ本体75の突出部75bの外周面に接触可能な筒状の接触部65aと、接触部65aの内周側に形成され突出部75bの後端面に係合する環状凹部65bと、第1部材66の円筒部66bの外周面に装着される円板部65cと、を有している。
【0071】
このような構成のドラグつまみ組立体61では、第1部材66と第2部材67との間に配置された2シール部材65が、第2部材67の突出部75bの外周面に接触する筒状の接触部65aを有しており、この第2シール部材65により第1部材66と第2部材67との隙間がシールされる。また、スプール4と第1部材66との間に配置された第1シール部材64によりスプール4と第1部材66との間がシールされる。ここでは、第2シール部材65が筒状の接触部65aで第2部材67のつまみ本体75の突出部75bの外周面に接触している。このため、第1シール部材64と第2シール部材65とを一体形成した場合に、第1シール部材64に水圧が作用して押し下げられても、第2シール部材65が変形しにくくなる。このため、2つのシール部材64,65に水圧が作用しても、第1部材66と第2部材67との間からドラグつまみ組立体の内部に液体が流入しにくくなる。しかも、第1シール部材と第2シール部材と別体であるので、第1シール部材64が変形しても第2シール部材65はより変形しにくくなり、ドラグつまみ組立体61の内部に液体がさらに流入しにくくなる。
【0072】
つまみ発音機構68は、図10に示すように、音出し凹部69aを有す音出し円板69と、つまみ本体75に進退自在に装着された打撃ピン(打撃部材の一例)82と、打撃ピン82を音出し凹部69aに向けて付勢するコイルバネ83とを有している。打撃ピン82は、中央部分が大径で先端及び後端が小径でさらに先端が半球状に丸められたピンであり、ドラグ操作時に第2部材67と第1部材66とが相対回転すると、音出し凹部69aとの衝突を繰り返して発音する。
【0073】
〔摩擦部の構成〕
摩擦部62のドラグ座金62aは、図8に示すように、第1部材66に第1支持部56を介して接触し、かつスプール軸15に対して回転不能な金属製の円板部材である。ドラグ座金62bは、スプール4に対して一体回転可能な金属製の円板部材である。ドラグ座金62cは、ドラグ座金62aと同様にスプール軸15に対して回転不能な金属製の円板部材である。ドラグ座金62dは、スプール4及びスプール軸15に対して回転自在なたとえばフェルト製又はグラファイト製の円板部材である。ドラグ座金62a,62cの中心部には、スプール軸15の先端側に形成された係止面15aに係合する長円形の係止スロット62eが形成されている。ドラグ座金62bの外周面には、径方向外方に突出する複数(たとえば8つ)の耳部62fが形成されている。この耳部62fは、ドラグ収納筒部52の内周面に周方向に間隔を隔てて配置され、軸方向に沿って形成された複数の係止凹部52aに係止されている。これにより、ドラグ座金62bは、スプール4に対して一体回転可能になっている。
【0074】
ドラグ座金62a〜62dは、支持筒部53を支持する第1支持部56により抜け止めされている。したがって、支持筒部53の前方に配置された抜け止めばね55を外さないと、ドラグ座金62a〜62dは着脱できない。
【0075】
ドラグ発音機構85は、ドラグの作動によりスプール軸15とスプール4とが相対回転すると発音する機構である。ドラグ発音機構85は、図8に示すように、スプール4の後フランジ部4hの背面に装着されスプール4と一体回転する第1発音部材86と、第1発音部材86に対して打撃を繰り返し第2発音部材87と、を有している。
【0076】
第1発音部材86は、鍔付き円筒形状であり、内周面に円弧状の多数の音出し凹部86aが形成された金属製の部材である。第1発音部材86の後面には銘版88が配置され、銘版88とともに、第1発音部材86は後フランジ部4hの背面にねじ止めされている。
【0077】
第2発音部材87は、音出し凹部86aに向けて進退する2つの打撃ピン87aと、2つの打撃ピン87aを音出し凹部86aに向けて付勢する2つのばね部材87bと、を有している。打撃ピン87aは、第2支持部57の第2係止面57dに回転不能に係合する筒状の収納部材89に収納されている。収納部材89は、打撃ピン87aを進退可能に収納する2つの収納溝89cを有する厚肉円筒状の収納本体部89aと、収納本体部89aにねじ止めされて収納溝89cを塞ぐとともに、第2係止面57dに係合する円板状のカバー89bと、を有している。収納本体部89aの2つの収納溝89cは、収納本体部89aの外周面に開口しており、開口側の2つの収納溝89cの間隔が狭くなるように形成されている。カバー89bの内周面には、第2係止面57dに係合する係止スロット89dが形成されている。収納部材89と、スプール4の支持壁部4eとの間にはワッシャ101が配置されている。
【0078】
カバー89bの後面には、第2支持部57の第1係止面57cに係合する、たとえば合成樹脂製の3枚のスプール位置調整ワッシャ102と、スプール4の後方への移動を規制する2枚の規制ワッシャ103,104とが装着されている。規制ワッシャ103,104は、スプール軸15の係止面15aに係合する係止スロット103a,104aが内周部に形成されており、スプール軸15に対して回転不能である。規制ワッシャ104は、段付きワッシャであり、規制ワッシャ103とで第3シール部材105を保持している。第3シール部材105の外周部は、第1発音部材86の内周面に接触している。第3シール部材105は、スプール4の後面から摩擦部62を含むスプール4内部への液体の流入を防止するために設けられている。
【0079】
〔リールの操作及び動作〕
釣りを行う前に魚の大きさや種類に合わせてドラグ力を調整する。ドラグ力を調整するには、ドラグつまみ組立体61を回す。ドラグつまみ組立体61をたとえば時計回りに回すと、スプール軸15に螺合するナット部72によりばね部材73を介して第1部材66が摩擦部62側に押圧される。これによりドラグ力が大きくなる。このとき、第1部材66と第2部材67との相対回転により打撃ピン82が音出し凹部69aへの衝突を所定間隔で繰り返し、歯切れがよい軽快なクリック音が発生する。
【0080】
キャスティング時には、ベールアーム34を糸開放姿勢に反転させる。これにより第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42が揺動する。この状態で釣り竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っかけながら釣り竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。この状態でハンドル組立体1を糸巻取方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が糸巻取方向に回転し、ベールアーム34がベール反転機構(図示せず)により糸巻取位置に復帰し、釣り糸がベール45からラインローラ41に移動してスプール4に巻き付けられる。
【0081】
釣りを行っているときに、大きな魚がかかってラインローラ41への負荷が大きくなると、負荷の変動により第1ベール支持部材40に片持ち支持された固定軸43が僅かに傾いて振動することがある。このような場合に、本実施形態では、固定軸43を第1ベール支持部材40に固定するための固定ボルト46が回り止め部材47により回り止めされているので、固定ボルト46が緩みにくくなる。
【0082】
釣りを行った後にスピニングリールを真水が入ったバケツなどに浸けて洗浄する場合、水圧により第1シール部材64が後方に押し下げられて変形することがある。第1シール部材64で第1部材66と第2部材67との隙間をシールしようとすると、第1シール部材64の変形によりその隙間からドラグつまみ組立体61の内部に液体が流入するおそれがある。しかし、本実施形態では、第2部材の突出部75bの外周面に接触する筒状の接触部65aを第2シール部材65に設けたので、第1シール部材64が水圧により変形しても、ドラグつまみ組立体61の内部に液体が浸入しにくい。このため、ドラグつまみ組立体61の内部からスプール軸15の外周部を通って摩擦部62に液体が流入しにくくなり、摩擦部62の濡れによるドラグ力の変動が生じにくくなる。
【0083】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、固定ボルト46として八角形の頭部46aの各片に回り止め凹部46bを設けた特殊なボルト部材を用いたが、固定ボルト46は回り止め可能な非円形の頭部を有するものであれば、どのような形態でもよい。特に、頭部が正N(N=3から10の整数)形であると、市販のボルト部材を使用できるので、固定ボルトのコストを削減できる。
【0084】
図11において、固定ボルト146は、六角形の頭部(非円形部の一例)146aを有する六角ボルトである。回り止め部材47は、前記実施形態と同様なホローセットスクリューであり、六角の各片に接触して固定ボルトを回り止めする。
【0085】
(b)前記実施形態では、頭部を有さないホローセットスクリューで回り止め部材を構成したが、頭部を有するボルト部材で回り止め部材を構成してもよい。なお、回り止め部材は非円形の頭部に係合するものであればどのようなものでもよく、頭部に係合する板状の部材であってもよい。
【0086】
図12において、固定ボルト46は、前記実施形態と同様である。回り止め部材247は、円形の頭部247aを有する丸頭小ネジである。また、回り止め部材247がねじ込まれるねじ込み穴240dが第1ベール支持部材240の第1収納凹部(非円形凹部の一例)240a内の2箇所に設けられている。2つのねじ込み穴240dは、八角形の頭部247aの各片の中心角β(45度)と異なる中心角α(たとえば、30度から90度の範囲)となるような同一半径位置に形成されている。第1収納凹部240aは、大径の円と小径の2つの円とを直線で結んだような形状の凹部である。この大径の円の中心に固定ボルト46が貫通する貫通孔240cが形成され、2つの小径の円の中心に2つのねじ孔249dが形成されている。
【0087】
2つのねじ込み穴240dのうち使用していないねじ込み穴(図12では、左側のねじ込み穴240d)を塞ぐためのカバー部材248が第1収納凹部240a内の頭部246a配置部分の外側に装着されている。カバー部材248は、回り止め部材247により第1収納凹部240aに固定されている。したがって、カバー部材248には、回り止め部材247が貫通する貫通孔248aがねじ込み穴240dに対向可能な位置にねじ込み穴240dより大径に形成されている。カバー部材248は、第1収納凹部240a及び頭部246aの回り止め凹部246bに係合する外形形状を有する板状部材であり、この実施形態では、回り止め部材247とともに、頭部246aの回り止め部材としても機能している。したがって、カバー部材248だけで回り止めする場合には、回り止め部材247の頭部247aを回り止め凹部246bに係合させないでもよい。
【0088】
このような構成の実施形態では、第1収納凹部240a内の2箇所のいずれかで回り止めできるので、より細かな位相で頭部246aを回り止めできる。なお、左側のねじ込み穴240dで回り止めする場合、カバー部材248を表裏反転させて使用する。
【0089】
(c)前記実施形態では、ベール45を有する釣り糸案内機構を例に本発明を説明したが、本発明は、ロータに設けられた全ての釣り糸案内機構に適用でき、たとえば、ベールを有さないベールレスの釣り糸案内機構にも適用できる。
【0090】
(d)前記実施形態では、回り止め部材47の外周面に係合するように回り止め凹部46bを円弧状に凹んで形成したが、回り止め凹部の形状は前記実施形態に限定されず、たとえば、V字状に形成してもよいし、台形形状に形成してもよい。
【0091】
(e)前記実施形態では、固定軸43と固定軸カバー44とが別体であったが、固定軸と固定軸カバーとが一体のベールアームにも本発明を適用できる。
【0092】
(f)前記実施形態では、固定部材として固定ボルトを例に本発明を説明したが、固定部材はナットでもよい。
【0093】
図13及び図14において、ベールアームにおいて、第1ベール支持部材340と、固定軸343と、固定ナット(固定部材の一例)346以外の構成は、前述した図5及び図6の実施形態と同様な構成であるため説明を省略する。
【0094】
第1ベール支持部材340は、図13及び図14に示すように、たとえばクロムメッキにより形成された金属皮膜により外側面が覆われたアルミニウム合金製の部材である。このクロムムメッキにより表面が硬質になり、釣り糸の接触による外側面の傷付きを防止できる。第1ベール支持部材340の外側面の先端側には、第1収納凹部(非円形凹部の一例)340aが形成されている。第1収納凹部340aは、固定ナット346の外周部(非円形部の一例)346aを収納可能であるとともに、外周部346aを係止して固定ナット346を回すための工具(例えば、ソケットレンチ)を装着可能な大きさである。また基端側には、第1ベール支持部材340を第1ロータアーム31に取り付けるための取付ボルト49の頭部49aが収納される円形の第2収納凹部340bが形成されている。
【0095】
第1収納凹部340aは、大小2つの円をつないだような概ね雨滴形状に凹んで形成されている。第1収納凹部340aの大径の円の中心C3には、固定ナット346に螺合する固定軸343の雄ねじ部343eが貫通する貫通孔340cが形成されている。なお、第1収納凹部340aの大径の部分の直径は、図5及び図6に示す実施形態の第1収納凹部40aの直径より工具を装着できるようにするために大きくなっている。また、小径の円の中心C2には、回り止め部材47がねじ込まれるねじ込み穴340dが形成されている。さらに、内側面には、ラインローラ41が配置される円形の第3収納凹部340eが形成されている。
【0096】
固定軸343は、固定軸カバー44と別体で形成されている。固定軸343は、固定軸カバー44を第1ベール支持部材340に固定するとともに、ラインローラ41を回転自在に支持するために設けられている。固定軸343は大径の頭部343aと、頭部343aに続いて頭部343aより小径に形成された第1係止部343bと、ラインローラ41を支持する支持部343cと、支持部343cの先端に形成された第2係止部343dと、を有している。固定軸343の先端部には、固定ナット346が螺合する雄ねじ部343eが貫通孔340cを貫通して第1収納凹部340aの底面から突出するように形成されている。第1係止部343bは、固定軸カバー44に係合し、第2係止部343dは、第1ベール支持部材340に係合し、これらの係合により固定軸カバー44と固定軸343と第1ベール支持部材340の回り止めがなされる。
【0097】
固定ナット346は、例えば袋ナットであり、非円形の外周部346aを有している。外周部346aは、たとえば正N(N=3から10の整数)角形であり、この実施形態では六角形である。外周部346aの辺には、回り止め部材47が接触可能である。
【0098】
なお、図5及び図6の実施形態のように正N角形の辺を円弧状に凹ませたものでもよい。また、この実施形態では、非円形の外周部346aが工具係止部346cを兼ねている。したがって、工具係止用のすり割りは形成されていない。しかし、外周部346aは、非円形の外形であればよく、すり割りや六角孔等の工具係止部を外周部346aと別に設けても良い。
【0099】
固定ナット346により固定軸343を固定する際には、正N角形の外周部346aの各辺のいずれかが回り止め部材47に係合可能な位置まで工具を用いて固定ナット346を締め付ける。そして、回り止め部材47をねじ込むことにより固定ナット346が回り止めされる。
【0100】
このような実施形態でも、前記実施形態と同様な作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0101】
3 ロータ
31 第1ロータアーム
32 第2ロータアーム
34 ベールアーム
40,240,340 第1ベール支持部材
40a,240a,340a 第1収納凹部
40d,240d ねじ込み穴
41 ラインローラ
42 第2ベール支持部材
43,343 固定軸
43e 雌ねじ部
44 固定軸カバー
45 ベール
46,146 固定ボルト
46a,146a 頭部
46b 回り止め凹部
46c すり割り
47,247 回り止め部材
343e 雄ねじ部
346 固定ナット
346a 外周部
346c 工具係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ロータアームと、前記第1ロータアームと対向して配置された第2ロータアームと、を有するロータに設けられ、釣り糸をスプールに案内するスピニングリールの釣り糸案内機構であって、
前記第1ロータアームに揺動自在に装着された第1ベール支持部材と、
支持部と、前記支持部の先端部に形成され前記第1ベール支持部材に係合する係止部と、を有し、前記第1ベール支持部材に相対回転不能に固定された固定軸と、
前記固定軸の支持部に回転自在に支持され、前記釣り糸を案内するラインローラと、
前記固定軸の先端側に配置された固定軸カバーと、
非円形の外周部を有し、前記固定軸に螺合して前記固定軸を前記第1ベール支持部材に固定する固定部材と、
前記第1ベール支持部材に着脱自在に装着され、前記非円形の外周部に接触して前記固定部材を回り止め可能な回り止め部材と、
を備えた、スピニングリールの釣り糸案内機構。
【請求項2】
前記固定軸は雌ねじ部を有し、
前記固定部材は、前記非円形の外周部としての非円形頭部を有し、前記雌ねじ部に螺合する固定ボルトであり、
前記第1ベール支持部材は、少なくとも1つのねじ込み穴を有し、
前記回り止め部材は、前記第1ベール支持部材のねじ込み穴にねじ込まれ、前記固定部材を回り止めする回り止めボルトであり、
前記第1ベール支持部材は、外側面から前記固定ボルトの非円形頭部及び前記回り止めボルトが突出しないように、前記固定ボルト及び前記回り止めボルトを収納可能な凹部を有している、
請求項1に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。
【請求項3】
前記固定軸は雄ねじ部を有し、
前記固定部材は前記雄ねじ部に螺合する固定ナットであり、
前記第1ベール支持部材は、少なくとも1つのねじ込み穴を有し、
前記回り止め部材は、前記第1ベール支持部材のねじ込み穴にねじ込まれ、前記固定部材を回り止めする回り止めボルトであり、
前記第1ベール支持部材は、外側面から前記固定ナットの非円形の外周部及び前記回り止めボルトが突出しないように、前記固定ナット及び前記回り止めボルトを収納可能な凹部を有している、
請求項1に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。
【請求項4】
前記回り止めボルトは、すり割り付きのホローセットスクリューである、請求項2又は3に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。
【請求項5】
前記第1ベール支持部材の凹部は非円形であり、
前記第1ベール支持部材は2つのねじ込み穴を有し、前記2つのねじ込み穴は、前記非円形凹部内に前記固定部材の中心から同じ半径位置に前記回り止めボルトが前記非円形の外周部に接触可能に間隔を隔てて配置されている、請求項2から4のいずれかに記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。
【請求項6】
前記第2ロータアームに揺動自在に装着された第2ベール支持部材と、
前記固定軸カバーと前記第2ベール支持部材とを連結するベールと、をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。
【請求項7】
前記非円形の外周部は、正N(N=3から10の整数)角形であり、先端面に工具を係止可能な工具係止部を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。
【請求項8】
前記非円形の外周部は、前記正N角形の各片に前記回り止め部材の外周面に係合するように凹んで形成された回り止め凹部を有している、請求項7に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−105672(P2012−105672A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42902(P2012−42902)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【分割の表示】特願2008−260688(P2008−260688)の分割
【原出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】